IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイ・エム・エスの特許一覧

<>
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図1
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図2
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図3
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図4
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図5
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図6
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図7
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図8
  • 特開-補液ラインを含む血液透析装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143290
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】補液ラインを含む血液透析装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230928BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20230928BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20230928BHJP
   A61M 60/279 20210101ALI20230928BHJP
   A61M 60/37 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/36 127
A61M1/36 121
A61M1/16 115
A61M60/113
A61M60/279
A61M60/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050585
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中馬越 幸次
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩司
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD07
4C077EE01
4C077EE03
4C077GG02
4C077HH02
4C077HH13
4C077KK17
4C077KK27
(57)【要約】
【課題】 本発明は、前記接続ポートへの補液ラインの接続確認が、プライミング液が充填された血液回路のリークチェックがなされ、且つ、補液ラインへのプライミング液の充填工程を経た後に、自動的に行える、血液透析装置を提供する。
【解決手段】本発明の血液透析装置では、プライミング液としての前記透析液が充填された前記血液回路のリークチェックがなされ、且つ、補液ラインへのプライミング液の充填工程を経た後、補充液ポンプ140aが停止状態で装着されている補液ライン140へ透析液送液部により透析液を送液し、補液ラインへの透析液の送液最中の圧力センサ140cにより測定される液圧が上昇して所定値以上となる場合に、判定部により、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとが接続されている旨の判定がなされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化膜を内在する血液浄化器と、
血液を循環させる血液回路と、
前記血液浄化器に対して透析液を供給および排出する透析液回路と、
前記透析液を補充液として前記透析液回路から前記血液回路へ供給する回路であり、上流側補液ラインと、血液透析装置本体が有する接続ポートを介して前記上流側補液ラインに着脱可能に接続される下流側補液ラインと、を含む、補液ラインと、
前記下流側補液ラインが装着される補充液ポンプと、
前記補液ラインに前記透析液を送液する透析液送液部と、
前記上流側補液ラインに装着され、前記補液ラインの液圧を測定する圧力センサと、
前記補充液ポンプの動作、および前記透析液送液部の動作を制御する制御部と、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとの接続状態の判定をする判定部とを含む、制御装置とを含み、
プライミング液としての前記透析液が充填された前記血液回路のリークチェックがなされ、且つ、前記補液ラインへの前記プライミング液の充填工程を経た後、前記補充液ポンプが停止状態で装着されている前記補液ラインへ前記透析液送液部により前記透析液を送液し、前記補液ラインへの前記透析液の送液最中の前記圧力センサにより測定される液圧が上昇して所定値以上となる場合に、前記判定部により前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がなされる、血液透析装置。
【請求項2】
前記圧力センサよりも上流側で前記上流側補液ラインに装着され、前記上流側補液ラインの流路を開閉する補液流路開閉弁を含み、
前記制御部による前記補液流路開閉弁の開閉操作により、前記補充液ポンプよりもプライミング液の流れ方向上流側の流路を開放または閉塞された状態とすることができる、請求項1に記載の血液透析装置。
【請求項3】
前記液圧が前記所定値以上となるか否かを判定要素とする前記接続状態の判定を判定1、前記所定値を所定値I、前記判定要素を判定要素1と、各々、称することとし、
前記接続状態の判定は、前記判定1の後に行われ、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとの接続の良否を判定する判定2をさらに含み、
前記判定1において、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がされた場合に、前記制御部に前記補液流路開閉弁を閉状態とする制御をさせ、その後、前記判定部に前記判定2を行わせ、
前記判定2では、前記圧力センサにより測定される前記液圧が、所定時間T1中に所定値II以上に維持されるか否かを判定要素2として前記接続の良否の判定を行う、請求項2に記載の血液透析装置。
【請求項4】
前記所定時間T1中の前記液圧の変動幅が設定範囲内か否かを判定要素3とし、
前記判定2では、前記判定要素2及び前記判定要素3の両方に基づいて、前記接続の良否の判定を行う、請求項3に記載の血液透析装置。
【請求項5】
前記下流側補液ラインにおいて前記補充液ポンプよりも下流側に装着され、前記下流側補液ラインの流路を開閉する補充液クランプを含み、
前記補充液クランプを閉状態とした状態で、前記補液ラインへ前記透析液送液部により前記透析液を送液する、請求項1~4のいずれかの項に記載の血液透析装置。
【請求項6】
少なくとも前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がなされた後、前記制御部に、前記補充液クランプを開状態とする制御をさせ、その後、前記判定部に、前記補充液ポンプによる前記補液ラインの圧閉度の判定を行わせ、
前記圧力センサにより測定される前記液圧が、所定時間T2中、所定値III以上に維持されるか否かを判定要素4として、前記圧閉度の判定が行われる、請求項5に記載の血液透析装置。
【請求項7】
前記所定時間T2中の前記液圧の変動幅が設定範囲内か否かを判定要素5とし、
前記判定要素4及び前記判定要素5の両方に基づいて、前記圧閉度の判定が行われる、請求項6に記載の血液透析装置。
【請求項8】
前記血液透析装置は、報知器を備え、
前記接続状態の判定において、前記判定部により接続不良と判定された場合に、前記制御部は前記報知器を作動して報知する、請求項1~7のいずれかの項に記載の血液透析装置。
【請求項9】
前記血液透析装置は、報知器を備え、
前記圧閉度の判定において、前記判定部により前記圧閉度が不適と判定された場合に、前記制御部は前記報知器を作動して報知する、請求項6または7に記載の血液透析装置。
【請求項10】
血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法であって、
前記血液透析装置は、
血液浄化膜を内在する血液浄化器と、
血液を循環させる血液回路と、
前記血液浄化器に対して透析液を供給および排出する透析液回路と、
前記透析液を補充液として前記透析液回路から前記血液回路へ供給する回路であり、上流側補液ラインと、血液透析装置本体が有する接続ポートを介して前記上流側補液ラインに着脱可能に接続される下流側補液ラインと、を含む、補液ラインと、
前記下流側補液ラインが装着される補充液ポンプと、
前記補液ラインに前記透析液を送液する透析液送液部と、
前記上流側補液ラインに装着され、前記補液ラインの液圧を測定する圧力センサと、
前記補充液ポンプの動作、および前記透析液送液部の動作を制御する制御部と、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとの接続状態の判定をする判定部とを含む、制御装置とを含み、
前記制御装置はプライミング工程において、プライミング液としての前記透析液が充填された前記血液回路のリークチェックがなされ、且つ、前記補液ラインへの前記プライミング液の充填工程を経た後、前記補充液ポンプが停止状態で装着されている前記補液ラインへ前記透析液送液部により前記透析液を送液し、前記補液ラインへの前記透析液の送液最中の前記圧力センサにより測定される液圧が上昇して所定値以上となる場合に、前記判定部により前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がなされる、血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法。
【請求項11】
前記圧力センサよりも上流側で前記上流側補液ラインに装着され、前記上流側補液ラインの流路を開閉する補液流路開閉弁を含み、
前記制御部による前記補液流路開閉弁の開閉操作により、前記補充液ポンプよりもプライミング液の流れ方向上流側の流路を開放または閉塞された状態とすることができる、請求項10に記載の血液透析装置における補液ラインの接続状態の検出方法。
【請求項12】
前記液圧が前記所定値以上となるか否かを判定要素とする前記接続状態の判定を判定1、前記所定値を所定値I、前記判定要素を判定要素1と、各々、称することとし、
前記接続状態の判定は、前記判定1の後に行われ、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとの接続の良否を判定する判定2をさらに含み、
前記判定1において、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がされた場合に、前記制御部に前記補液流路開閉弁を閉状態とする制御をさせ、その後、前記判定部に前記判定2を行わせ、
前記判定2では、前記圧力センサにより測定される前記液圧が、所定時間T1中に所定値II以上に維持されるか否かを判定要素2として前記接続の良否の判定を行う、請求項11に記載の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法。
【請求項13】
前記所定時間T1中の前記液圧の変動幅が設定範囲内か否かを判定要素3とし、
前記判定2では、前記判定要素2及び前記判定要素3の両方に基づいて、前記接続の良否の判定を行う、請求項12に記載の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法。
【請求項14】
前記下流側補液ラインにおいて前記補充液ポンプよりも下流側に装着され、前記下流側補液ラインの流路を開閉する補充液クランプを含み、
前記補充液クランプを閉状態とした状態で、前記補液ラインへ前記透析液送液部により前記透析液を送液する、請求項10~13のいずれかの項に記載の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法。
【請求項15】
少なくとも前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がなされた後、前記制御部に、前記補充液クランプを開状態とする制御をさせ、その後、前記判定部に、前記補充液ポンプによる前記補液ラインの圧閉度の判定を行わせ、
前記圧力センサにより測定される前記液圧が、所定時間T2中、所定値III以上に維持されるか否かを判定要素4として、前記圧閉度の判定が行われる、請求項14に記載の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法。
【請求項16】
前記所定時間T2中の前記液圧の変動幅が設定範囲内か否かを判定要素5とし、
前記判定要素4及び前記判定要素5の両方に基づいて、前記圧閉度の判定が行われる、請求項15に記載の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法。
【請求項17】
前記血液透析装置は、報知器を備え、
前記接続状態の判定において、前記判定部により接続不良と判定された場合に、前記制御部は前記報知器を作動して報知する、請求項10~16のいずれかの項に記載の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法。
【請求項18】
前記血液透析装置は、報知器を備え、
前記圧閉度の判定において、前記判定部により前記圧閉度が不適と判定された場合に、前記制御部は前記報知器を作動して報知する、請求項15または16に記載の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補液ラインを含む血液透析装置、及び当該血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析装置は、血液浄化器、血液回路、透析液回路、血液透析装置本体(コンソールとも呼ばれる。)等を備えている。また、近年では、オンラインで行う血液透析濾過療法、急速補液等を行うために、血液回路に補液を注入するための補液ラインを更に備える場合がある。補液ラインの一端は、血液回路に接続されている。これらの回路は、治療前に組み立てられ、コンソールに接続または装着等される。補液ラインは、コンソールが有する接続ポートに接続される。そして、その後、各回路に対して、回路内の空気を除去し、且つ、回路内を洗浄するプライミングが行われる。
【0003】
コンソールの接続用ポート(採取口)に対する前記補液ラインの接続確認を自動的に行わせる技術として、前記接続ポートを含む流路において閉回路を形成し、当該閉回路内を複式ポンプで加圧させた後、当該閉回路内の液圧上昇を検出し、接続用ポートに対する補液ラインの接続状態を検出する方法が行われている(特許文献1参照)。接続用ポートへの補液ラインの接続が正常に接続されていない状態で、オンラインHDF(血液透析ろ過)/HF(血液ろ過)を行うと、補液ラインを介して血液回路へ送られるべき透析液(補充液)が供給できなくなるからである。補充液が血液回路に供給されないと、血液回路内の患者の血液から水分が過剰にろ過され、過除水になる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5681536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の、接続用ポートに対する補液ラインの接続が正常に行われているか否かの確認方法は、血液回路へ透析液を充填させるプライミング工程の前に行われる。しかし、血液回路にプライミング液が充填されていない状態で前記接続確認をする方法では、空気圧の測定となり圧力を安定させにくいため、誤検知が起こり易い。そのため、プライミング液が充填された前記血液回路のリークチェック後、しかも、自動的に、前記接続ポートへの補液ラインの接続状態の判定が行える血液透析装置への要望がある。
【0006】
本発明は、前記接続ポートと補液ラインとの接続状態の判定が、プライミング工程において、プライミング液が充填された血液回路のリークチェックがなされ、且つ、補液ラインへのプライミング液の充填工程を経た後に、自動的に行える、血液透析装置、及び前記血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一態様において、
血液浄化膜を内在する血液浄化器と、
血液を循環させる血液回路と、
前記血液浄化器に対して透析液を供給および排出する透析液回路と、
前記透析液を補充液として前記透析液回路から前記血液回路へ供給する回路であり、上流側補液ラインと、血液透析装置本体が有する接続ポートを介して前記上流側補液ラインに着脱可能に接続される下流側補液ラインと、を含む、補液ラインと、
前記下流側補液ラインが装着される補充液ポンプと、
前記補液ラインに前記透析液を送液する透析液送液部と、
前記上流側補液ラインに装着され、前記補液ラインの液圧を測定する圧力センサと、
前記補充液ポンプの動作、および前記透析液送液部の動作を制御する制御部と、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとの接続状態の判定をする判定部とを含む、制御装置とを含み、
プライミング液としての前記透析液が充填された前記血液回路のリークチェックがなされ、且つ、前記補液ラインへの前記プライミング液の充填工程を経た後、前記補充液ポンプが停止状態で装着されている前記補液ラインへ前記透析液送液部により前記透析液を送液し、前記補液ラインへの前記透析液の送液最中の前記圧力センサにより測定される液圧が上昇して所定値以上となる場合に、前記判定部により前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がなされる、血液透析装置に関する。
【0008】
本開示は、一態様において、血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法であって、
前記血液透析装置は、
血液浄化膜を内在する血液浄化器と、
血液を循環させる血液回路と、
前記血液浄化器に対して透析液を供給および排出する透析液回路と、
前記透析液を補充液として前記透析液回路から前記血液回路へ供給する回路であり、上流側補液ラインと、血液透析装置本体が有する接続ポートを介して前記上流側補液ラインに着脱可能に接続される下流側補液ラインと、を含む、補液ラインと、
前記下流側補液ラインが装着される補充液ポンプと、
前記補液ラインに前記透析液を送液する透析液送液部と、
前記上流側補液ラインに装着され、前記補液ラインの液圧を測定する圧力センサと、
前記補充液ポンプの動作、および前記透析液送液部の動作を制御する制御部と、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとの接続状態の判定をする判定部とを含む、制御装置とを含み、
前記制御装置はプライミング工程において、プライミング液としての前記透析液が充填された前記血液回路のリークチェックがなされ、且つ、前記補液ラインへの前記プライミング液の充填工程を経た後、前記補充液ポンプが停止状態で装着されている前記補液ラインへ前記透析液送液部により前記透析液を送液し、前記補液ラインへの前記透析液の送液最中の前記圧力センサにより測定される液圧が上昇して所定値以上となる場合に、前記判定部により前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がなされる、血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記接続ポートと補液ライン(下流側補液ライン)との接続状態の判定が、プライミング工程において、プライミング液が充填された血液回路のリークチェックがなされ、且つ、補液ラインへのプライミング液の充填工程を経た後に、自動的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一態様の血液透析装置の概略図である。
図2図2は、本発明の一態様の血液透析装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の一態様の血液透析装置におけるプライミング工程の流れを示すフロー図である。
図4図4は、本発明の一態様の検出方法における接続状態の適否の判定1を説明する血液透析装置の概略図である。
図5図5は、本発明の一態様の検出方法における接続状態の適否の判定2を説明する血液透析装置の概略図である。
図6図6は、本発明の一態様の検出方法のフローチャート図である。
図7図7は、本発明の別の一態様の血液透析装置において、補液ラインの圧閉度の適否の判定を説明する概略図である。
図8図8は、本発明の別の一態様の血液透析装置におけるプライミング工程の流れを示すフロー図である。
図9図9は、本発明の別の一態様の検出方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の本発明の血液透析装置、または本発明の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法(以下、「本発明の検出方法」とも言う)では、プライミング工程のうちの、プライミング液としての透析液が充填された血液回路のリークチェックがなされ、且つ、補液ラインへのプライミング液の充填工程を経た後に、血液透析装置本体の接続ポートと補液ライン(下流側補液ライン)との接続状態の判定を行うので、血液回路内にエアが充填された状態で前記接続状態の判定を行うよりも、補液ライン内の液圧が安定し易く、当該液圧の変化を確認しやすい。
【0012】
上記の本発明の血液透析装置、または本発明の検出方法において、好ましくは、
前記圧力センサよりも上流側で前記上流側補液ラインに装着され、前記上流側補液ラインの流路を開閉する補液流路開閉弁を含み、
前記制御部による前記補液流路開閉弁の開閉操作により、前記補充液ポンプよりもプライミング液の流れ方向上流側の流路を開放または閉塞された状態とすることができる。
かかる構成であれば、前記補液流路開放弁を閉塞することで、前記補液流路開放弁によりプライミング液の流れ方向下流側と上流側が分断されるため、上流側の圧力が下流側の圧力へ影響し無くすることができる。
【0013】
上記の本発明の血液透析装置、または本発明の検出方法において、好ましくは、
前記液圧が前記所定値以上となるか否かを判定要素とする前記接続状態の判定を判定1、前記所定値を所定値I、前記判定要素を判定要素1と、各々、称することとし、
前記接続状態の判定は、前記判定1の後に行われ、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとの接続の良否を判定する判定2をさらに含み、
前記判定1において、前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がされた場合に、前記制御部に前記補液流路開閉弁を閉状態とする制御をさせ、その後、前記判定部に前記判定2を行わせ、
前記判定2では、前記圧力センサにより測定される前記液圧が、所定時間T1中に所定値II以上に維持されるか否かを判定要素2として前記接続の良否の判定を行う。
かかる構成であれば、接続状態の判定精度が向上し、接続ポートと下流側補液ラインとの接続部位の僅かな緩みも検知し得る。
【0014】
上記の本発明の血液透析装置、または本発明の検出方法において、前記所定時間T1中の前記液圧の変動幅が設定範囲内か否かを判定要素3とし、好ましくは、前記判定2において、前記判定要素2及び前記判定要素3の両方に基づいて、前記接続の良否の判定を行う。かかる構成であれば、接続状態の判定精度がさらに向上する。
【0015】
上記の本発明の血液透析装置、または本発明の検出方法において、好ましくは、
前記下流側補液ラインにおいて前記補充液ポンプよりも下流側に装着され、前記下流側補液ラインの流路を開閉する補充液クランプを含み、
前記補充液クランプを閉状態とした状態で、前記補液ラインへ前記透析液送液部により前記透析液を送液する。
かかる構成であれば、圧力センサにより測定される液圧が所定値(所定値I)未満の場合に、それが、接続ポートへの下流側補液ラインの接続不良に起因するものであることの判断が一義的に行える。
【0016】
上記の本発明の血液透析装置、または本発明の検出方法において、好ましくは、
少なくとも前記接続ポートと前記下流側補液ラインとが接続されている旨の判定がなされた後、前記制御部に、前記補充液クランプを開状態とする制御をさせ、その後、前記判定部に、前記補充液ポンプによる前記補液ラインの圧閉度(「オクルージョン」とも呼ばれる。)の判定を行わせ、
前記圧力センサにより測定される前記液圧が、所定時間T2中、所定値III以上に維持されるか否かを判定要素4として、前記圧閉度の判定が行われる。
かかる構成であれば、補液ラインの補充液ポンプによる圧閉不足も検出できるので、オンラインHDFの実施において、補充液量が設定量よりも少なくなることを抑制できる。
【0017】
上記の本発明の血液透析装置、または本発明の検出方法において、前記所定時間T2中の前記液圧の変動幅が設定範囲内か否かを判定要素5とし、好ましくは、前記判定要素4及び前記判定要素5の両方に基づいて、前記圧閉度の判定が行われる。かかる構成であれば、圧閉度の判定精度が向上する。
【0018】
上記の本発明の血液透析装置または本発明の検出方法において、好ましくは、前記血液透析装置は、報知器を備え、前記接続状態の判定において、前記判定部により接続不良と判定された場合に、前記制御部は前記報知器を作動して報知する。かかる構成によれば、透析治療前の準備を行う作業者の注意負担を軽減できる。
【0019】
上記の本発明の血液透析装置または本発明の検出方法において、好ましくは、前記血液透析装置は、報知器を備え、前記圧閉度の判定において、前記判定部により前記圧閉度が不適と判定された場合に、前記制御部は前記報知器を作動して報知する。かかる構成によれば、透析治療前の準備を行う作業者の注意負担を軽減できる。
【0020】
以下、本発明の血液透析装置及び本発明の検出方法の好ましい実施態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(実施態様1)
図1は、本発明の血液透析装置の一態様の概略構成を示す図であり、図2は、図1に示した血液透析装置の構成を示すブロック図である。本態様の血液透析装置100は、腎不全患者や薬物中毒患者の血液を浄化するとともに、血液中の余分な水分を除去し、必要に応じて血液中に補充液として透析液を補充することができるように構成されている。
【0022】
血液透析装置100は、後で詳述するプライミング工程、脱血工程、補液工程、返血工程等の各工程を、回路内の透析液の流れを制御することで連続して自動的に行う自動透析装置である。本発明の血液透析装置を用いて行われる本発明の検出方法は、一態様において、プライミング工程において適用できる。
【0023】
図1等に示されるように、血液透析装置100は、血液浄化器120と、血液回路110と、オーバーフローライン113と、透析液回路130と、補液ライン140とを含む。また、血液透析装置100は、制御装置160と報知器150を含む血液透析装置本体(以下「コンソール」とも呼ぶ。)Cを含む。
【0024】
血液浄化器120としては、従来から公知のものであり、ダイアライザやヘモダイアフィルタが用いられる。筒状に形成された容器本体121の内部には、血液浄化膜として機能する、例えば、中空糸束(図示せず)が収納されている。この中空糸束により容器本体121内が中空糸の内側と外側とに区画されており、中空糸の内側は血液流路であり、中空糸の外側は透析液流路である。容器本体121には、血液回路110に連通する血液導入口122a及び血液導出口122bと、透析液回路130に連通する透析液導入口123a及び透析液導出口123bと、が形成される。
【0025】
血液回路110は、患者の血液を循環させるための回路であり、液体が流通可能な可撓性を有する透明な軟質のチューブを主体として構成されている。血液回路110は、動脈側ライン111と、静脈側ライン112とを含む。
【0026】
動脈側ライン111は、その一端が、血液浄化器120の血液導入口122aに接続され、その他端は、患者の血管(動脈)に穿刺される脱血用針(図示せず)を接続可能とする動脈側接続部111aを含む。
【0027】
動脈側ライン111には、動脈側気泡検知器111cと血液ポンプ111bとが装着される。動脈側気泡検知器111cは、血液ポンプ111bよりもより動脈側接続部111a側に配置され、動脈側ライン111内の気泡の有無を検出する。検出結果は、制御装置160の制御部161(図2参照)に伝達される。動脈側ライン111のうちの、例えば、血液ポンプ111bに装着される部分よりも下流側(血液浄化器120の血液導入口122aにより近い部分)には、補液ライン140の下流側端が接続される補液ライン接続用ポート111dが設けられている。
【0028】
血液ポンプ111bは、動脈側ライン111を構成するチューブをローラーでしごくことにより、動脈側ライン111の内部の血液やプライミング液等の液体を送出する。血液ポンプ111bは、制御装置160により制御されて、その回転方向、回転速度の変更が可能である。
【0029】
静脈側ライン112は、一端が、血液浄化器120の血液導出口122bに接続され、その他端は、患者の血管(静脈)に穿刺される返血用針(図示せず)を接続可能とする静脈側接続部112aを含む。
【0030】
静脈側ライン112は、更に、ドリップチャンバー112bを含み、静脈側ライン112には、静脈側気泡検知器112cと気泡検知器用クランプ112dとが装着される。ドリップチャンバー112bは、静脈側ライン112に混入した気泡や凝固した血液等を除去するため、一定量の血液を貯留する。静脈側気泡検知器112cは、ドリップチャンバー112bよりも下流側(静脈側接続部112a側)に配置され、チューブ内の気泡の有無を検出する。検出結果は、制御装置160の制御部161に伝達される。気泡検知器用クランプ112dは、静脈側気泡検知器112cよりも下流側(静脈側接続部112a側)に配置される。気泡検知器用クランプ112dは、静脈側気泡検知器112cによる気泡の検出結果に応じてその開閉が、制御装置160の制御部161により制御される。
【0031】
動脈側接続部111aと静脈側接続部112aは、人体を介することなく互いに直接接続する、いわゆる短絡状態(バイパス接続状態)にすることができるようになっている。
【0032】
オーバーフローライン(「排液ライン」とも呼ばれる。)113は、ドリップチャンバー112bに接続される。オーバーフローライン113には、自動プライミング用クランプ113aが装着される。オーバーフローライン113は、プライミング工程でプライミング液を排液するためのラインである。自動プライミング用クランプ113aは、制御装置160の制御部161により制御されて、オーバーフローライン113を閉塞した閉状態と、開放した開状態とに切り替えられる。
【0033】
対象者(透析患者)の動脈から取り出された血液は、血液ポンプ111bの正転駆動により動脈側ライン111を流通して血液浄化器120の血液流路に導入される。血液浄化器120に導入された血液は、血液浄化膜を介して、後述する透析液回路130を流通する透析液により浄化される。血液浄化器120において浄化された血液は、静脈側ライン112を流通して対象者の静脈に返血される。
【0034】
透析液回路130は、血液浄化器120に対して透析液を供給および排出するための回路である。本態様では、除水量制御方式として、いわゆるダブルチャンバーによる密閉容量制御方式を採用しており、透析液回路130は、当該ダブルチャンバーとして透析液チャンバー1331を含む透析液送液部133と、透析液チャンバー1331の給液収容部1331a(一方のチャンバー)を介して相互に接続された透析液供給ライン131aおよび透析液導入ライン132aと、透析液チャンバー1331の排液収容部1331b(他方のチャンバー)を介して相互に接続された透析液排出ライン131bおよび透析液導出ライン132bとを含む。この密閉回路から除水/逆濾過ポンプ135により透析液を排水し、除水量を制御する。
【0035】
透析液送液部133は、透析液導入ポンプ1332と、透析液排出ポンプ1333とをさらに含む。透析液導入ポンプ1332は、給液収容部1331a内の透析液を血液透析器120へ送り、透析液排出ポンプ1333は、血液透析器120から排出された透析液を排液収容部1331bに送る。透析液導入ポンプ1332および透析液排出ポンプ1333の制御により、血液浄化膜に陰圧又は陽圧をかけるように血液浄化器120に透析液を送ることができる。透析液導入ポンプ1332および透析液排出ポンプ1333は、例えば、ギアを回転して液体を送るギアポンプである。透析液導入ポンプ1332および透析液排出ポンプ1333は、制御装置160の制御部161により制御されて、その回転方向、回転速度の変更が可能である。
【0036】
透析液チャンバー1331は、透析液を一旦貯留するためのものであり、一定容量(例えば、300ml~500ml)の透析液を収容可能な硬質の容器で構成され、この容器の内部は軟質の隔膜(ダイアフラム)により給液収容部1331a及び排液収容部1331bに区画される。
【0037】
尚、透析液送液部133は、プライミング開始ボタンを押した後は、常に稼働しており、透析液回路130内において透析液を循環させている。また、透析液送液部133は、図1に示した構成に限定されず、2個以上の2小室に区分された定容量容器と複数のギアポンプとを含み、従来から公知の、密閉容量制御方式を構成する透析液送液部であってもよい。
【0038】
透析液回路130は、透析液導出ライン132bと透析液排液ライン131bとを接続するバイパスライン134を更に含み、バイパスライン134は除水/逆濾過ポンプ135を含む。
【0039】
除水/逆濾過ポンプ135は、バイパスライン134内の透析液を透析液排出ライン131b側に流通させる方向(除水方向)及び透析液導出ライン132b側に流通させる方向(逆濾過方向)に送液可能に駆動するポンプにより構成される。除水/逆濾過ポンプ135は、例えば、プランジャーを回転して液体を送るプランジャーポンプである。除水/逆濾過ポンプ135は、制御装置160の制御部161により制御されて、その回転方向、回転速度の変更が可能である。
【0040】
透析液供給ライン131aは、その一端が透析液供給装置(図示せず)に接続され、他端が給液収容部1331aに接続される。透析液供給ライン131aは給液収容部1331aへ新鮮な透析液を供給する。
【0041】
透析液回路130は、血液浄化器120へ新鮮透析液を供給する透析液導入ライン132aを含む。透析液導入ライン132aは、その一端が給液収容部1331aに接続され、他端が血液浄化器120の透析液導入口123aに接続されて、給液収容部1331aに収容された透析液を血液浄化器120の透析液流路に導入する。透析液導入ライン132aの途中には、その流路を開閉する電磁弁が、透析液導入流路開閉弁133aとして装着される。透析液導入流路開閉弁133aは、制御装置160の制御部161により、その開閉が制御される。また、透析液導入ライン132aの途中には、後述する上流側補液ライン140fの上流側端が接続されている。
【0042】
透析液導出ライン132bは、その一端が血液浄化器120の透析液導出口123bと接続され、他端が排液収容部1331bに接続されて、血液浄化器120から排出された透析液を排液収容部1331bに導出する。透析液導出ライン132bの途中には、その流路を開閉する電磁弁が、透析液導出流路開閉弁133bとして配置されている。透析液導出流路開閉弁133bは、制御装置160の制御部161により、その開閉が制御される。
【0043】
透析液排出ライン131bは、その一端が排液収容部1331bに接続され、他端から排液収容部1331bに収容された透析液の排液を排出する。
【0044】
制御部161による前記透析液送液部133の制御により、透析液供給装置(図示せず)から給液収容部1331aへの新鮮透析液の供給量と、排液収容部1331bに回収される使用済透析液の量とを同量とすることができる。例えば、透析液導入ポンプ1332と透析液排出ポンプ1333による送液量mlを同量とし、除水/逆濾過ポンプ135と後述する補充液ポンプ140aとを停止させた状態では、血液浄化器120に導入される透析液の流量と血液浄化器120から導出される透析液(排液)の量とが同量となる。
【0045】
[逆濾過]
除水/逆濾過ポンプ135を、透析液を逆濾過方向に流通させるように駆動させた場合には、排液収容部1331bから透析液排出ライン131bへ排出された排液の一部がバイパスライン134及び透析液導出ライン132bを通って再び排液収容部1331bに回収される。そのため、血液浄化器120から導出される透析液の量は、除水/逆濾過ポンプ135を駆動させていない場合に排液収容部1331bに回収されるべき量(即ち、透析液導入ライン132aを流通する透析液の量と等しい量)から、バイパスライン134を流通する透析液の量を減じた量となる。これにより、血液浄化器120から導出される透析液の量は、バイパスライン134を通って再び排液収容部1331bに回収される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン132aを流通する透析液の流量よりも少なくなる。即ち、除水/逆濾過ポンプ135を、透析液を逆濾過方向に流通させるように駆動させた場合は、血液浄化器120において、血液回路110に所定量の透析液が注入(逆濾過)される。
【0046】
[除水]
一方、除水/逆濾過ポンプ135を、透析液を除水方向に流通させるように駆動させた場合には、透析液導出ライン132bを流通する透析液の量は、除水/逆濾過ポンプ135を駆動させていない場合に排液収容部1331bに回収される透析液の量(即ち、透析液導入ライン132aを流通する透析液の量と等しい量)に、バイパスライン134を流通する透析液の量を加えた量となる。これにより、透析液導出ライン132bを流通する透析液の量は、バイパスライン134を通って透析液排液ライン131bに排出される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン132aを流通する透析液の量よりも多くなる。即ち、除水/逆濾過ポンプ135を、透析液を除水方向に流通させるように駆動させた場合は、血液浄化器120において、血液から所定量の除水が行われる。
【0047】
補液ライン140は、透析液を補充液またはプライミング液として、透析液回路130から血液回路110へ供給するためのラインである。透析液は、補充液供給源としての透析液回路130から供給される。補液ライン140は、コンソールCに内蔵された上流側補液ライン140fと、コンソールC外に配置される下流側補液ライン140gとを含む。上流側補液ライン140fは、透析液回路130のうちの、例えば、透析液導入ライン132aに連結されている。下流側補液ライン140gは、後述する血液透析装置100の組み立て時に、コンソールCが有する接続ポート140eを介して上流側補液ライン140fに接続される。
【0048】
上流側補液ライン140fには、上流側(補充液供給源側)から、上流側補液ライン140fの流路を開閉する電磁弁(補液流路開閉弁)140dと、上流側補液ライン140f内の液圧を測定する圧力センサ140cが、この順で装着される。下流側補液ライン140gには、上流側(補充液供給源側)から、補充液ポンプ140aと補充液クランプ140bとがこの順で装着される。
【0049】
血液浄化器120として限外濾過率が低いダイアライザや逆濾過が不可能な積層型ダイアライザ等を用いる場合は、逆濾過により血液回路110内に透析液を注入することが困難であるので、後述するプライミング工程や補液工程、返血工程において補液ライン140が用いられる。
【0050】
圧力センサ140cは、補液ライン140内の液圧を測定するためのものである。圧力センサ140cは、上流側補液ライン140fのうちの補充液ポンプ140aと補液流路開閉弁140dとの間の領域に配置されている。圧力センサ140cは、例えば、1秒間に数回程度の短い周期で補液ライン140内の圧力を継続して出力するように構成された周知のものである。圧力センサ140cによる出力結果は、制御装置160の判定部162に伝達され記録される。
【0051】
補充液ポンプ140aは、補充液またはプライミング液として補液ライン140内の透析液を血液回路110へ送液するためのポンプであり、回路をしごいて液体を送るローラーポンプである。補充液ポンプ140aは、制御装置160の制御部161により、その回転方向、回転速度の変更が可能である。
【0052】
補充液クランプ140bは、補充液ポンプ140aよりも下流側において、下流側補液ライン140gの流路を開閉するためのものである。補充液クランプ140bは、好ましくは、血液回路110内の血液の補液ライン140内への漏出を抑制するため、補液ライン140における血液回路との接続部分の近傍に装着される。補充液クランプ140bは、制御装置160の制御部161により、その開閉が制御される。
【0053】
血液透析装置100を組み立てる場合には、下流側補液ライン140gの一端を、動脈側ライン111の補液ライン接続用ポート111dへ接続し、下流側補液ライン140gにおける血液回路110との接続部の近傍に補充液クランプ140bを装着する。また、下流側補液ライン140gの他端を、接続ポート140eと接続し、下流側補液ライン140gのうちの補充液クランプ140bに装着された部分よりも上流側部分を、補充液ポンプ140aに装着する。
【0054】
報知器150は、制御装置160による制御を受けて、血液透析装置100に異常がある場合、医療従事者に異常を知らせる。例えば、後で詳述する判定部162による接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態の判定結果が制御部161に伝達され、判定結果が悪い場合(接続不良の場合)、報知器150が鳴る。
【0055】
制御装置160は、所定のプログラムに従って動作する情報処理装置(コンピュータ)により構成されており、図2に示されるように、制御部161と、判定部162と、を含む。制御装置160には、操作者が操作する操作ボタン163等が接続されている。操作ボタン163は、例えば、プライミング開始ボタン、透析開始ボタン等の各種設定ボタンである。
【0056】
制御部161は、血液透析装置100が備える各種ポンプ、各種クランプ、各種流路開閉弁等を作動させ、プライミング工程、透析工程等の各工程を制御する。また、制御部161は、血液透析装置100が正常に動作していない場合に、報知器150を作動する。
【0057】
判定部162は、例えば、圧力センサ140cで測定される補液ライン140の液圧に基づいて、接続用ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態の判定をする。当該接続状態の判定の詳細については、後で詳述する。
【0058】
制御装置160は、以下に説明する各工程の制御プログラムを実行することにより、血液透析装置100の動作を制御して運転する。各工程とは、プライミング工程、脱血工程、透析工程、補液工程、返血工程等である。
【0059】
プライミング工程では、血液回路110、血液浄化器120、透析回路130、および補液ライン140内の空気を抜き、洗浄して清浄化等する、準備工程である。脱血工程は、脱血用針および返血用針の穿刺後に患者の血液を血液回路110に充填させる工程である。透析工程は、脱血工程に続いて行われ血液を体外循環させながら透析して血液を浄化する工程である。補液工程は、補充液を血液回路に供給しながら、同時に供給した補充液と同量の水分を血液浄化器120にてろ過する工程であり、透析治療中において血圧低下時等に行う工程である。返血工程は、血液回路110内の血液を患者の体内に戻す工程である。
【0060】
ところで、透析工程において、接続用ポート140eと下流側補液ライン140gとが適切に接続されていない状態で透析を行うと、当該接続部位から補充液が漏れ、補液ライン140を介して血液回路110へ適正量の補充液が供給できなくなる。一方、制御装置160は、設定された補充液量に応じた量の水が、透析浄化器120からろ過されるので、適正量の補充液が血液回路110に供給されないと、血液回路110内の患者の血液から水分が過剰にろ過され、過除水になる恐れがある。
【0061】
本形態の血液透析装置100では、接続用ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態を、判定部162により判定をする検出方法が、プライミング液としての透析液が充填された血液回路110のリークチェックがなされ、且つ、補液ライン140へのプライミング液の充填工程を経た後に行われる。各種ラインへのプライミング液の充填は、従来から公知の方法で行える。
【0062】
次に、本発明の検出方法の一態様について、図1図6を用いて説明する。図3は、血液透析装置100のプライミング工程の流れを示すフロー図である。自動プライミングを開始する前のステップ10(図3参照)では、医療従事者が血液透析装置100の組み立てを行う。即ち、血液浄化器120に血液回路110及び透析液回路130を接続し、動脈側接続部111aと静脈側接続部112aとを接続する。下流側補液ライン140gについては、その一端を動脈側ライン111の補液ライン接続用ポート111dに接続し、他端を接続ポート140eに接続する。また、補充液ポンプ140aに装着する。また、各種回路を、血液透析装置本体Cに備え付けられた各種気泡検知器、各種流路開閉弁(電磁弁)や各種クランプに取り付ける。各種流路開閉弁や各種クランプは、開状態にある。
【0063】
図3に示すステップS20では、医療従事者がプライミング開始ボタンを操作して、例えば、自動制御でプライミング工程を開始する。プライミング開始ボタンを押すと、制御部161の内部設定機能で予め設定された、各種ポンプの流量、プライミング量、各種流路開閉弁(電磁弁)の開閉状態、各種クランプの開閉状態でプライミングが開始される。
【0064】
ステップS30では、プライミング液としての透析液を血液回路110に注入することで血液回路110内の空気を除去しつつ、血液回路110にプライミング液を充填する。血液回路110へのプライミング液の注入方法としては、血液浄化器120の逆濾過のしやすさに応じて、血液浄化器120を介して逆濾過透析液を注入する方法及び補液ライン140を介して血液回路110に透析液を注入する方法のいずれの方法を用いてもよい。
【0065】
図1には、補液ライン140を介して血液回路110にプライミング液として透析液を注入する方法が示されている。図1に示すように、各種流路開閉弁や各種クランプは、開状態とし、透析液導入ポンプ1332、透析液排出ポンプ1333を作動させるとともに、除水/逆濾過ポンプ135、補充液ポンプ140aおよび血液ポンプ111bを作動させる。血液ポンプ111bは、図1に示すように、透析時と逆回転、即ち、動脈側ライン111内の液体を透析時の血液の流れ方向上流側に送るように作動させる。
【0066】
例えば、透析液導入ポンプ1332及び透析液排出ポンプ1333の送液量を500ml/minとし、除水/逆濾過ポンプ135および補充液ポンプ140aの送液量を400ml/minとし、血液ポンプ111bの送液量を360ml/minとすることで、プライミング液としての透析液が、動脈側ライン111に直接送液され、オーバーフローライン113から排出される。このようにして、血液回路110、透析回路130、補液ライン140および血液浄化器120内の空気を除去しつつ洗浄し、血液回路110、透析回路130、補液ライン140および血液浄化器120内にプライミング液を充填する(ステップ30)。
【0067】
ステップ40では、血液回路110内がプライミング液で充填された状態で、血液回路110のリークチェック(接続状態検出)を行う。リークチェックの方法は従来から公知の方法で行える。例えば、自動プライミング用クランプ113aを閉状態として、血液浄化器120を介して又は補液ライン140を介してプライミング液を血液回路110に注入して、血液回路110内の液圧を上昇させる。そして、例えば、血液回路110の静脈側ライン112に装着された圧力センサー(図示せず)により測定される液圧に基づいて、血液回路110の接続状態、例えば、血液回路110と血液浄化器120の接続不良の発生の有無等を検出できる。
【0068】
ステップS50では、図4に示されるように、プライミング液としての透析液が充填された血液回路110のリークチェックと、補液ラインへのプライミング液としての透析液の充填工程を経た後、補充液ポンプ140aが停止状態で装着され、補液流路開閉弁140dが開状態であり、補充液ポンプ140aよりもプライミング液の流れ方向上流側の流路が透析回路130に対して開放された状態の、補液ライン140に対して、透析液を透析液送液部133により送液する。
【0069】
ステップS60では、例えば、ステップS50における透析液の送液最中に圧力センサ140cにより測定される液圧が上昇して所定値に達するか否かを判定要素(「判定要素1」とも言う。)として、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態を判定(「判定1」とも言う。)する。ステップS60において、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態の判定として、上記判定1のみを行ってもよいが、判定1において所定値に達した液圧のその後の安定性を観察することにより、より高い精度で、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態を判定する判定2を行うのが好ましい。接続ポート140eと下流側補液ライン140gとが接続されていても、当該接続部位に僅かな緩みがあると、そこから僅かながら透析液が漏れ出る恐れがある。透析時間は数時間と長いため、トータルの漏れ量は無視できない量となりうる場合がある。更に、所定値に達した液圧のその後の安定性を判定1の後に観察する判定2を行えば、透析液の漏れを防止できる。本発明では、血液回路110に非圧縮性流体である液体が充填された状態で接続状態の判定を行うので、空気圧よりも安定し易く且つ圧力変化に対する応答性が高い液圧に基づいて上記判定が行えることから、特に、判定2において、誤検知が起こり難く、適切な判定が行える。接続状態の判定の詳細は、後に、図6を用いて詳述する。
【0070】
ステップS60の後、各クランプおよび流路開閉弁を開状態として各回路内の圧力を開放し、プライミング工程を終了する。
【0071】
尚、図3を用いて説明した例では、プライミング工程において、血液回路110のリークチェック(ステップS40)の直後に、プライミング液としての前記透析液の充填工程を経た補液ライン140へ透析液を送液して補液ライン140内の液体を加圧し(ステップS50)、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態の判定(ステップS60)を行っているが、ステップS40の後、ステップS60の前に、必要に応じて、更に別の項目のチェックを行ってもよい。また、ステップS60後、必要に応じて、更に別の項目のチェックを行ってから、各回路内の圧力を開放し、プライミング工程を終了してもよい。
【0072】
次に、本発明の接続状態の判定方法の一態様について、図6のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0073】
血液回路110、血液浄化器120、透析液回路130、および補液ライン140にプライミング液を充填させ、血液回路120のリークチェックを経た後(図1参照)、図6に示すステップS51では、補液ライン140へ、透析液送液部133にて、透析液を送液する。この時、補充液ポンプ140a、血液ポンプ111b、および除水/逆濾過ポンプ135は停止した状態であり、補液流路開閉弁140dは開状態として、透析回路130から補液ライン140へ透析液を送液する。接続ポート140eと下流側補液ライン140gとが接続されていれば、既に補液ライン140内に透析液が満たされているので、圧力センサ140cにより測定される液圧は、補液ライン140への透析液の送液に伴い、上昇する。停止状態にある補充液ポンプ140aにより下流側補液ライン140gが押しつぶされて適切に閉塞していれば、図4に示されるように、圧力センサ140cにより測定される液圧は、補液ライン140のうちの、補充液ポンプ140aよりも上流側のラインL1における液圧として測定される。
【0074】
ステップS51において、透析液導入流路開閉弁133aは、閉状態および開状態のいずれであってもよいが、閉状態であり透析液導入流路開閉弁133aにより透析液導入ライン132aの流路が閉塞されていると好ましい。透析液導入流路開閉弁133aを閉状態として補液ライン140に透析液を送液すれば、より短時間で補液ライン140の液圧を上昇させることができ、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態の判定の準備段階に要する時間を短縮できる。
【0075】
図6に示されるように、補液ライン140に透析液が送液されている最中に圧力センサ140cにより測定される液圧が所定値I(例えば200mmHg)以上となるか否かを判定要素(判定要素1)として、下流側補液ライン140gと接続ポート140eとの接続状態の判定(判定1)する(ステップS61)。補液ライン140に透析液が送液されている最中に圧力センサ140cにより測定される液圧が、上昇して所定値I以上となる場合は、下流側補液ライン140gと接続ポート140eとが接続されていると判定し(ステップS62)、判定2のためのステップS64へ進む。所定値Iに達しない場合は、接続不良と判定し、その判定結果を得た制御部161は、報知器150を作動して、医療従事者に当該接続不良を報知し(ステップS63)、接続状態の判定1を終える。尚、判定1における接続不良には、例えば、下流側補液ライン140gと接続ポート140eとの接続部位の締め付けが螺合によりなされる形態の場合、螺合時における雄ネジと雌ネジの山部同士の乗り上げ等の螺合ミスがこれに含まれる。
【0076】
補液ライン140への透析液の送液時間は、特に制限はない。下流側補液ライン140gと接続ポート140eとが接続されていれば、圧力センサ140cにより測定される液圧は、透析液の供給により直ちに上昇傾向となり、例えば、透析液の供給開始から0.01~1.00秒程度のうちに、所定値Iに達する。
【0077】
尚、前記接続不良ではなく、停止状態にある補充液ポンプ140aによる下流側補液ライン140gの閉塞が不十分であることに起因して、圧力センサ140cにより測定される液圧が所定値Iに達しないこともあり得るが、判定部162により接続不良の判定がなされることにより、補充液ポンプ140aによる下流側補液ライン140gの圧閉不良の発見の機会が得られる。図4に示すように、補充液クランプ140bによって下流側補液ライン140gの流路が閉塞された状態で、補液ライン140への透析液の送液を行うのが好ましい。即ち、補液ライン140へのプライミング液の充填工程の後、補充液クランプ140bを閉状態として補充液クランプ140bにより下流側補液ライン140gの流路を閉塞してから、補液ライン140へ透析液送液部133により透析液を送液するのが好ましい。この場合、圧力センサ140cにより測定される液圧が所定値I未満の場合に、それが、接続ポート140eへの下流側補液ライン140gの接続不良に起因するものであることの判断が一義的に行える。
【0078】
ステップS64では、図5に示されるように、補液流路開閉弁140dを開状態から閉状態として補液流路開閉弁140dにより上流側補液ライン140fの流路を閉塞し、圧力センサ140cにより測定される液圧が安定するまでの所定時間待つ。ステップS51における透析液の供給や、ステップS64で補液流路開閉弁140dを閉状態とすることに起因して、補液ライン140を構成する可撓性チューブは内側からの加圧によりわずかながら膨張する。これに起因して、圧力センサ140cにより測定される液圧が安定するまでに時間を要する。次のステップS65では微小な圧力変化を検知するため、ステップS64を設けることにより、ステップS65における誤検知を防止できる。所定時間は、例えば10秒間に設定される。
【0079】
所定時間経過後、ステップS65では、圧力センサ140cにより測定される液圧が、所定時間T1中、所定値II以上に維持されているか否か(判定要素2)と、所定時間T1中の前記液圧の変動幅が設定範囲か否か(判定要素3)の両方に基づいて、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続の良否について判定をする(判定2)。
【0080】
圧力センサ140cにより測定される液圧が、例えば、所定時間T1(例えば、10秒間)、所定値II(例えば、150mmHg)以上に保たれ、且つ、液圧の変動幅が設定範囲内(例えば、20mmHg以内)であれば、接続が良好になされていると判定する(ステップS66)。液圧が所定値II(例えば、150mmHg)以上に維持されることと、その変動幅が設定範囲内(例えば、20mmHg以内)であること、のいずれか一方でも満たされない場合は、接続不良と判定する。その判定結果を得た制御部161は、報知器150を作動して、医療従事者に当該接続不良を報知し(ステップS67)、判定2を終える。尚、判定2における接続不良には、例えば、下流側補液ライン140gと接続ポート140eとの接続部位の締め付けが螺合によりなされる形態の場合、当該螺合による締め付けが緩い場合がこれに含まれる。
【0081】
尚、所定値IIは、ステップS51における補液ライン140への透析液の送液工程の前の液圧よりも高い値であり、補液ライン140を構成する可撓性チューブの弾性変形に起因する液圧低下を考慮して、通常、所定値Iよりも低い値に設定される。
【0082】
ステップS66の後、各クランプおよび流路開閉弁を開状態として、各回路内の圧力を開放し、プライミング工程を終了する。
【0083】
以上説明した、血液透析装置100及び本発明の一態様の検出方法によれば、下流側補液ライン140gと接続ポート140eとの接続状態の判定が、プライミング工程において、プライミング開始ボタンを押した後は常に稼働している透析液送液部133を利用して、自動的に行える。前記判定1では、下流側補液ライン140gと接続ポート140eとが接続がされているか否かの判定が、判定2では当該接続の良否の判定が行える。故に、血液透析装置100及び本発明の一態様の検出方法によれば、接続不良に起因する液漏れ等による過除水を抑制できる。しかも、上記接続状態の判定を、プライミング液としての透析液が充填された血液回路110のリークチェックがなされ、且つ、補液ライン140へのプライミング液の充填工程を経た後で行うので、圧力センサ140cにより安定した液圧測定が行え、誤検知が起こり難く、上記判定が適切に行える。
【0084】
(実施態様2)
図7に示す本発明の一態様の血液透析装置は、判定部により、補充液ポンプ140aによる補液ライン140の圧閉度について判定が行えること以外は、実施態様1の透析装置と同構成である。故に、本態様の血液透析装置の概略構成も図1に示したそれと同じであり、図7において、実施態様1の透析装置と同構成には、同じ部材番号を付して、その説明を省略する。また、本態様の血液透析装置の構成のブロック図も図2に示したそれと同じであるので、本態様の血液透析装置の構成のブッロック図は省略する。補充液ポンプ140aによる補液ライ140ンの圧閉度の判定の詳細は後述する。
【0085】
図8は、本発明の本態様の血液透析装置の補液ラインの接続状態の検出方法におけるプライミング工程の流れを示すフロー図であり、図9は、本態様の検出方法のフローチャートである。本態様の検出方法は、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態の判定の後、制御部161に、補充液クランプ140bを開状態とする制御をさせ(図7参照)、その後、判定部162に、補充液ポンプ140aによる補液ライン140の圧閉度の判定を行わせること以外は、実施態様1の検出方法と同じある。故に、図8および図9において、実施態様1の検出方法と同じステップには、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0086】
図8に示されるプライミング工程の流れを示すフロー図において、ステップS10~ステップS60までは、(実施態様1)のそれと同じである。本態様の検出方法では、接続ポート140eと下流側補液ライン140gとの接続状態の判定を行うステップS60の後、補充液ポンプ140aによる補液ライン140に対する圧閉度の判定をする(ステップS70)。
【0087】
図9は、本態様の検出方法のフローチャート図であるが、ステップS51~ステップS67までは、(実施態様1)のそれと同じである。本態様の検出方法では、判定2(ステップ65)において、接続良好と判定された場合は、圧閉度の判定を行うための次のステップS71に進む。
【0088】
図9に示されるように、ステップS71では、圧閉度の適否判定の準備段階として、制御部161による制御によって、補充液クランプ140bを閉状態から開状態として下流側補液ライン140gと血液回路110とを連通させ(図7参照)、ステップS72では、ラインL2の内圧(液圧)の安定化のために所定時間待つ。所定時間は、例えば10秒に設定される。補液流路開閉弁140dは閉状態にあるので、停止状態にある補充液ポンプ140aにより補液ライン140が閉塞されていれば、ラインL2は、その上流端が補液流路開閉弁140dにより閉塞され、下流端が補充液ポンプ140aにより閉塞された閉回路である。故に、圧力センサ140cにより測定される液圧の変化を所定時間観察することにより、補充液ポンプ140aによる補液ライン140による閉塞が適切に行われているか否かの判定(圧閉度の判定)が行える。
【0089】
所定時間経過後、ステップS73では、圧力センサ140cにより測定される液圧が、所定時間T2中、所定値III以上に維持されているか否か(判定要素4)と、所定時間T2中の前記液圧の変動幅が設定範囲か否か(判定要素5)の両方に基づいて、補充液ポンプ140aによる補液ライン140の圧閉度の適否の判定をする。
【0090】
例えば、圧力センサ140cにより測定される液圧が、所定時間T2(例えば、10秒間)、所定値III以上(例えば、150mmHg以上)に保たれ、且つ、液圧の変動幅が設定範囲内(例えば、20mmHg以内)であれば、圧閉度が適切であると判定し(ステップS74)、液圧が所定値III以上(例えば、150mmHg以上)に維持されること、およびその変動幅が設定範囲内(例えば、20mmHg以内)であること、のいずれか一方でも満たされない場合は、圧閉度が不適切であると判定する。その判定結果を得た制御部161は、報知器150を作動して、医療従事者に当該圧閉不良を報知し(ステップS75)、圧閉度の適否の判定を終える。
【0091】
尚、所定値IIIは、ステップS51における補液ライン140への透析液の送液工程の前の液圧よりも高い値であり、例えば、所定値IIと等しい値に設定される。
【0092】
ステップS74の後、各クランプおよび流路開閉弁を開状態として各回路内の圧力を開放し、プライミング工程を終了する。
【0093】
以上説明した、本態様の血液透析装置100及び本態様の検出方法によれば、下流側補液ライン140gと接続ポート140eとの接続状態の判定と、補液ライン140の補充液ポンプ140aによる圧閉度の判定が、プライミング工程において、プライミング開始ボタンを押した後は常に稼働している透析液送液部133を利用して、自動的に行え、故に、過除水やオンラインHDF時に補充液量が規定値よりも少なくなることを抑制できる。しかも、両判定を、プライミング液としての透析液が充填された血液回路110のリークチェックがなされ、且つ、補液ライン140へのプライミング液の充填工程を経た後で行うので、圧力センサ140cにより安定した液圧測定が行え、誤検知が起こり難く、上記両判定が適切に行える。
【0094】
また、本態様では、血液透析装置100が報知器150を備えており、補液ライン140の補充液ポンプ140aによる圧閉不足がある場合に、報知器150を作動して報知する。これにより、前記圧閉度が適正でない場合に、医療従事者に報知することができる。
【0095】
尚、実施態様1および実施態様2の説明に用いた図1、4、5、7において、補充液クランプ140b、透析液導入流路開閉弁133a、透析液導出流路開閉弁133b、動脈側気泡検知器111c、自動プライミング用クランプ113a、気泡検知器用クランプ112d、静脈側気泡検知器112cは、図示の都合上、血液透析装置本体Cの外に記載しているが、これらは、血液透析装置本体Cに内蔵され又は一体化されていてもよい。
【0096】
以上、本発明の血液透析装置及び本発明の検出方法の好ましい態様について、実施態様1および実施態様2を例にあげて説明したが、本発明は、上述した態様に制限されるものではなく、例えば、下記のように適宜変更可能である。
【0097】
実施態様1および実施態様2では、接続状態の判定において、好ましくは、判定1と判定2の両方を実施するが、本発明の血液透析装置及び本発明の検出方法の別の一態様では、接続状態の判定として、判定1だけを行ってもよい。
【0098】
本発明の検出方法における接続状態の判定において、判定1の実施後、判定2を行わずに、圧閉度の判定を行う場合、下流側補液ライン140gと接続ポート140eとが接続されている旨の判定がなされた後(図6、ステップS62)、補液流路開閉弁140dを閉状態として補液流路開閉弁140dにより下流側補液ライン140fの流路を閉塞し、必要に応じて補充液クランプ140bを開状態とし、好ましくは、所定時間待つことにより液圧の安定化を行ってから、圧閉度の判定を行う。
【0099】
実施態様1および実施態様2では、上記判定2が、好ましくは、判定要素2と判定要素3の両方に基づいて行われるが、本発明の血液透析装置及び本発明の検出方法の別の一態様では、判定2において、判定要素2だけから接続状態の適否の判定を行ってもよい。
【0100】
実施態様2では、圧閉度の判定が、好ましくは、判定要素4と判定要素5の両方に基づいて行われるが、本発明の血液透析装置及び本発明の検出方法の他の別の一態様では、判定要素4だけから圧閉度の判定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0101】
100 血液透析装置
110 血液回路
111 血液ポンプ
111d 補液ライン接続用ポート
113a 自動プライミング用クランプ
112d 気泡検知器用クランプ
120 血液浄化器
130 透析液回路
133 透析液送液部
133a 透析液導入流路開閉弁
133b 透析液導出流路開閉弁
134 バイパスライン
135 除水/逆濾過ポンプ
140 補液ライン
140a 補充液ポンプ
140b 補充液クランプ
140c 圧力センサ
140d 補液流路開閉弁
150 報知器
161 制御部
162 判定部
C コンソール(血液透析装置本体)
L1 ラインL1
L2 ラインL2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9