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特開2023-143314半導体発光装置、基台、半田付き基台、及び、半導体発光装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143314
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】半導体発光装置、基台、半田付き基台、及び、半導体発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0237 20210101AFI20230928BHJP
【FI】
H01S5/0237
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050628
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】四郎園 啓希
(72)【発明者】
【氏名】林 茂生
(72)【発明者】
【氏名】川口 靖利
(72)【発明者】
【氏名】馬場 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 哲
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA08
5F173MB02
5F173MC04
5F173MD12
5F173MD52
5F173MD63
5F173MD84
(57)【要約】
【課題】液状の半田が半導体レーザバーの長手方向の側面からはみ出すことを抑制できる半導体発光装置等を提供する。
【解決手段】配線部材10を有する基台2と、半導体レーザバー3と、配線部材10と半導体レーザバー3との間に配置された半田4と、を備え、配線部材10の半導体レーザバー3側の面には、半田4との界面である接続領域10aと、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bとが含まれ、接続領域10aは、上面視において、長手方向における半導体レーザバー3の側面S3の内側に位置し、ブロック領域10bの少なくとも一部は、上面視において、接続領域10aと側面S3との間に位置し、長手方向におけるブロック領域10bの内側部分は、側面S3よりも内側に位置し、半田4は、上面視においてリア端面S2から外側に延伸するリア側延伸部4aを有し、かつ、一対の側面S3から外側には延伸していない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線部材を有する基台と、
長手方向に沿って並べられた複数の利得領域を有する端面発光型の半導体レーザバーと、
前記配線部材と前記半導体レーザバーとの間に配置された半田と、を備え、
前記半導体レーザバーは、光を出射する端面であるフロント端面と、前記フロント端面とは反対側の端面であるリア端面と、前記長手方向の端面である側面とを有し、
前記半導体レーザバーは、ジャンクションダウン方式で前記基台に接続され、
前記配線部材の前記半導体レーザバー側の面には、前記半田との界面である接続領域と、前記半田に対する接触角が90度より大きいブロック領域とが含まれ、
前記接続領域は、上面視において、前記長手方向における前記側面の内側に位置し、
前記ブロック領域の少なくとも一部は、上面視において、前記接続領域と前記側面との間に位置し、
前記長手方向における前記ブロック領域の内側部分は、前記側面よりも内側に位置し、
前記半田は、上面視において前記リア端面から外側に延伸するリア側延伸部を有し、かつ、前記側面から外側には延伸していない、
半導体発光装置。
【請求項2】
前記配線部材は、第1接続部材と、前記第1接続部材の上方に位置する一対のブロック部材とを有し、
前記一対のブロック部材の各々の上面の少なくとも一部が、前記ブロック領域であり、
前記第1接続部材は、上面視において、前記一対のブロック部材の間に前記接続領域を有する、
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記配線部材は、同一面に設けられた第1接続部材と一対のブロック部材とを有し、
前記第1接続部材の上面の少なくとも一部が、前記接続領域であり、
前記一対のブロック部材は、前記長手方向における前記接続領域の一方の外側と他方の外側とに位置し、
前記一対のブロック部材の上面の少なくとも一部が、前記ブロック領域である、
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記配線部材は、ブロック部材を有し、
前記接続領域と前記ブロック領域とは、前記ブロック部材の上面に含まれている、
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記配線部材は、ブロック部材と、前記ブロック部材の上に位置する第2接続部材とを有し、
前記第2接続部材の上面の少なくとも一部が、前記接続領域であり、
前記ブロック部材の上面の少なくとも一部が、前記ブロック領域であり、
前記ブロック領域は、前記長手方向における前記接続領域の両外側に位置している、
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記接続領域の高さ位置は、前記ブロック領域の高さ位置より低い、
請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
断面視において、前記半田と前記半導体レーザバーとの界面の幅は、前記半田と前記配線部材との界面の幅より大きい、
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
断面視において、前記ブロック部材の下面内端と前記複数の利得領域のうち前記ブロック部材に最も近い利得領域の外端とを結ぶ直線と、前記半導体レーザバーの下面とのなす角は、45度未満である、
請求項2又は3に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
断面視において、前記接続領域の外端と前記複数の利得領域のうち前記接続領域の外端に最も近い利得領域の外端とを結ぶ直線と、前記半導体レーザバーの下面とのなす角は、45度未満である、
請求項4に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
断面視において、前記ブロック領域の内端と前記複数の利得領域のうち前記ブロック領域に最も近い利得領域の外端とを結ぶ直線と、前記半導体レーザバーの下面とのなす角は、45度未満である、
請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記半導体レーザバーの下面外端と前記ブロック領域の内端とを結ぶ直線と、前記半導体レーザバーの下面とのなす角は、45度未満である、
請求項2~5にのいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記上面視において、前記接続領域は、前記半導体レーザバーの前記リア端面から外側に延伸する接続領域延伸部を有し、
前記半田の前記リア側延伸部は、前記接続領域延伸部と接続されており、
前記半導体レーザバーの短手方向において、前記半田の前記リア側延伸部の高さは、前記半導体レーザバーから離れるにしたがって、いったん高くなった後に低くなっている、
請求項1~11のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項13】
前記長手方向における前記一対のブロック部材の内側部分の間隔は、前記フロント端面側より前記リア端面側の方が大きい、
請求項2又は3に記載の半導体発光装置。
【請求項14】
上面視において、前記長手方向における前記接続領域の幅は、前記フロント端面側より前記リア端面側の方が大きい、
請求項1~13のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項15】
上面視において、前記ブロック領域は、前記半導体レーザバーの直下の部分から前記リア端面側の外方に延伸し、前記半導体レーザバーの前記側面における前記リア端面側の端部は、前記ブロック領域に重なっている、
請求項1~14のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項16】
上面視において、前記半田の前記リア側延伸部は、前記半導体レーザバーの前記側面近傍で前記リア端面側に向かって凹む凹部を有する、
請求項1~15のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項17】
上面視において、前記凹部は、前記長手方向に沿って周期的に複数形成されている、
請求項16に記載の半導体発光装置。
【請求項18】
さらに、前記半導体レーザバーは、前記基台側に、電極パッドと、前記長手方向における前記電極パッドの外側両端端部に設けられた一対のレーザ側ブロック部材とを有し、
前記一対のレーザ側ブロック部材の各々の表面は、前記半田に対する接触角が90度より大きい、
請求項1~17のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項19】
上面視において、前記一対のレーザ側ブロック部材の内端間の間隔は、前記フロント端面側より前記リア端面側の方が大きい、
請求項18に記載の半導体発光装置。
【請求項20】
上面視において、前記ブロック領域は、前記接続領域よりも前記フロント端面側に、フロント側ブロック領域を含む、
請求項1~19のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項21】
前記半田は、AuSnからなり、
前記ブロック領域は、Pt、SiO又はNiOの表面であり、
前記接続領域は、Auの表面である、
請求項2又は3に記載の半導体発光装置。
【請求項22】
前記半田は、AuSnからなり、
前記ブロック領域は、Ptの表面であり、
前記接続領域は、Auの表面である、
請求項4又は5に記載の半導体発光装置。
【請求項23】
前記接続領域の近傍において、前記配線部材の少なくとも一部と前記半田とが組成遷移領域を介して一体化している、
請求項2又は3に記載の半導体発光装置。
【請求項24】
前記半導体レーザバーは、窒化物半導体材料によって構成されており、
前記半導体レーザバーは、前記長手方向に反っている、
請求項1~23のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項25】
配線部材を有する直方体の基台であって、
前記配線部材の上面には、接続領域とブロック領域とが含まれ、
前記ブロック領域は、上面視において、前記長手方向における前記接続領域の外側に位置し、
前記接続領域は、半田に対する接触角が90度より小さく、
前記ブロック領域は、半田に対する接触角が90度より大きい、
基台。
【請求項26】
前記ブロック領域は、前記長手方向における前記接続領域の両外側に一対存在し、
一対の前記ブロック領域は、上面視において、前記基台の短手方向の一方側に寄せて配置されており、
前記長手方向における一対の前記ブロック領域の内側部分の間隔は、前記一方側よりも前記一方側とは反対側の方が大きい、
請求項25に記載の基台。
【請求項27】
配線部材を有する直方体の基台と、
前記配線部材の上面に配置された半田と、を有し、
前記配線部材の上面は、前記半田との界面であって半田に対する接触角が90度より小さい接続領域と、半田に対する接触角が90度より大きいブロック領域とを含み、
前記ブロック領域は、上面視において、前記長手方向における前記接続領域の両外側に位置する、
半田付き基台。
【請求項28】
前記ブロック領域は、上面視において、前記長手方向における前記接続領域の両外側に一対存在し、
前記半田は、上面視において、前記基台の短手方向の一方側に寄せて配置されており、
前記長手方向における一対の前記ブロック領域の内側部分の間隔は、前記一方側から遠ざかるにしたがって広くなっている、
請求項27に記載の半田付き基台。
【請求項29】
配線部材を有する基台を準備する第1工程と、
前記配線部材の上に半田を配置する第2工程と、
前記半田の上に、端面発光型の半導体レーザバーをジャンクションダウンで配置し、前記半導体レーザバーを押さえ付けながら加熱して前記半田を溶融し、前記半田により前記半導体レーザバーを前記基台に接合する第3工程と、を含み、
前記半導体レーザバーは、長手方向に沿って並べられた複数の利得領域を有し、
前記半導体レーザバーは、光を出射する端面であるフロント端面と、前記フロント端面とは反対側の端面であるリア端面と、前記長手方向の端面である側面とを有し、
前記第1工程では、第1接続部材とブロック部材とを順に形成することで前記配線部材を形成し、
前記配線部材の上面には、前記半田に対する接触角が90度より小さい接続領域と、前記長手方向における前記接続領域の両外側に位置し且つ前記半田に対する接触角が90度より大きいブロック領域とが含まれており、
前記第2工程において、前記半田は、前記接続領域上に配置され、
前記第3工程において、前記半田は、前記リア端面から外側に延伸し、且つ、前記側面から外側には延伸しない、
半導体発光装置の製造方法。
【請求項30】
配線部材を有する基台を準備する第1工程と、
前記配線部材の上に半田を配置する第2工程と、
前記半田の上に、端面発光型の半導体レーザバーをジャンクションダウンで配置し、前記半導体レーザバーを押さえ付けながら加熱して前記半田を溶融し、前記半田により前記半導体レーザバーを前記基台に接合する第3工程と、を含み、
前記半導体レーザバーは、長手方向に沿って並べられた複数の利得領域を有し、
前記半導体レーザバーは、光を出射する端面であるフロント端面と、前記フロント端面とは反対側の端面であるリア端面と、前記長手方向の端面である側面とを有し、
前記第1工程では、ブロック部材と第2接続部材とを順に形成することで前記配線部材を形成し、
前記配線部材の上面には、前記半田に対する接触角が90度より小さい接続領域と、前記長手方向における前記接続領域の両外側に位置し且つ前記半田に対する接触角が90度より大きいブロック領域とが含まれており、
前記第2工程において、前記半田は、前記接続領域上に配置され、
前記第3工程において、前記半田は、前記リア端面から外側に延伸し、且つ、前記側面から外側には延伸せず、
前記第2接続部材の少なくとも一部と前記半田とが組成遷移領域を介して一体化している、
半導体発光装置の製造方法。
【請求項31】
前記第3工程では、前記基台を加熱しながら、前記半導体レーザバーの前記リア端面よりも外側の領域に存在する前記半田に加熱用のレーザ光を照射し、
前記第3工程において、前記半田の前記リア端面に近い部分の温度は、前記半田の前記フロント端面に近い部分の温度よりも高い、
請求項29又は30に記載の半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザバーを備える半導体発光装置、半導体レーザバー等が接合される基台、半導体レーザバー等が接合される半田付き基台、及び、半導体レーザバーを備える半導体発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ素子は、民生分野や産業分野を問わず、様々な分野の製品の光源に用いられている。例えば、半導体レーザ素子は、ディスプレイやプロジェクタ等の画像表示装置の光源、自動車のヘッドランプの光源、又は、レーザ加工装置等の産業機器の光源等に用いられている。
【0003】
中でも、プロジェクタ又はレーザ加工装置の光源に用いられる半導体レーザ素子については、光出力が1ワットを大きく超える高出力化が要求されている。この場合、1つのエミッタ(発光部)から高出力のレーザ光を出射させると、レーザ光が出射するフロント端面の光密度が高くなりすぎて、フロント端面にCOD(Catastrophic Optical Damage)が発生するおそれがある。
【0004】
そこで、1つの半導体レーザ素子から高出力でレーザ光を出射させるために、複数のエミッタを有するマルチエミッタ構造の半導体レーザ素子が提案されている。この種の半導体レーザ素子は、例えば、複数のエミッタに対応する複数の利得領域を有する長尺状の半導体レーザバーとして構成される(例えば、特許文献1)。
【0005】
半導体レーザバーは、サブマウント等の基台を介してヒートシンク又は冷却装置等の設置部材に設置される。これにより、半導体レーザバーと設置部材との間の熱膨張差による半導体レーザバーへの応力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-158945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体レーザバーは、半田によってサブマウント等の基台に接合される。例えば、半導体レーザバーは、ジャンクションダウン方式により基台に接合される。半導体レーザバーを半田によって基台に接合する場合、基台に予め半田が形成された半田付き基台を用いて半導体レーザバーと基台とを接合することが考えられる。具体的には、半導体レーザバーを半田付き基台に載置して、半導体レーザバーを押さえ付けながら半田付き基台を加熱することで半田を溶融させて半導体レーザバーと基台とを半田で接合する。
【0008】
このとき、加熱により溶融して液状になった半田は、半導体レーザバーで押し付けられることになるので、液状の半田が基台の所定の位置からはみ出してしまうことがある。具体的には、半導体レーザバーと基台との間から半田がはみ出すことがある。
【0009】
例えば、溶融した半田は、半導体レーザバーで押さえ付けられることで、半導体レーザバーの短手方向に流動して半導体レーザバーのフロント端面からはみ出すことがある。半導体レーザバーのフロント端面(光出射端面)から半田がはみ出すと、半田がフロント端面に乗り上がって光路を妨害するおそれがある。そこで、半導体レーザバーのフロント端面に半田が付着しないようにするために、フロント端面が基台から少しはみ出すような状態で半導体レーザバーを基台に配置することが考えられる。これにより、溶融した半田が半導体レーザバーの短手方向に流動して基台と半導体レーザバーとの間からはみ出したとしても、半導体レーザバーのフロント端面に乗り上がって光路を妨害することを抑制することができる。なお、フロント端面及びその反対側のリア端面は、共振器を構成する誘電体反射膜を形成するので、半田がはみ出してもpn接合部分が短絡してリークが発生する恐れはない。
【0010】
また、半導体レーザバーで押さえ付けられた半田は、半導体レーザバーの長手方向に流動して半導体レーザバーの側面からはみ出すこともある。半導体レーザバーの長手方向の側面には通常被膜を形成しないので、半導体レーザバーの側面から半田がはみ出すと、その側面に半田が付着して半導体レーザバーのpn接合が短絡するおそれがある。そこで、半導体レーザバーの長手方向の側面に半田が付着しないようにするために、半導体レーザバーの長手方向の両端部の各々に、利得領域が存在しない非活性領域を設けて、その非活性領域には半田を形成しないという技術が知られている。
【0011】
しかしながら、半導体レーザバーの長手方向の両端部に非活性領域を形成して半導体レーザバーの側面から半田がはみ出すことを確実に防止しようとすると、非活性領域の長さをかなり長くしなければならない。この結果、半導体レーザバーの長手方向の長さが長くなってしまい、基台に実装された半導体レーザバーを備える半導体発光装置の全体サイズが大きくなってしまう。一方、非活性領域の長さを短くしすぎると、半導体レーザバーの側面から半田がはみ出してしまい、結局、半導体レーザバーの側面に半田が付着してpn接合が短絡するおそれがある。
【0012】
このように、非活性領域を長くすることなく、半導体レーザバーの長手方向の側面から半田がはみ出すことを抑制することは難しい。
【0013】
本開示は、このような課題を解決するものであり、半導体レーザバーを基台に接合する際に、液状の半田が半導体レーザバーの長手方向の側面からはみ出すことを抑制できる半導体発光装置、基台、半田付き基台及び半導体発光装置の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本開示に係る半導体発光装置の一態様は、配線部材を有する基台と、長手方向に沿って並べられた複数の利得領域を有する端面発光型の半導体レーザバーと、前記配線部材と前記半導体レーザバーとの間に配置された半田と、を備え、前記半導体レーザバーは、光を出射する端面であるフロント端面と、前記フロント端面とは反対側の端面であるリア端面と、前記長手方向の端面である側面とを有し、前記半導体レーザバーは、ジャンクションダウン方式で前記基台に接続され、前記配線部材の前記半導体レーザバー側の面には、前記半田との界面である接続領域と、前記半田に対する接触角が90度より大きいブロック領域とが含まれ、前記接続領域は、上面視において、前記長手方向における前記側面の内側に位置し、前記ブロック領域の少なくとも一部は、上面視において、前記接続領域と前記側面との間に位置し、前記長手方向における前記ブロック領域の内側部分は、前記側面よりも内側に位置し、前記半田は、上面視において前記リア端面から外側に延伸するリア側延伸部を有し、かつ、前記側面から外側には延伸していない。
【0015】
また、本開示に係る基台の一態様は、配線部材を有する直方体の基台であって、前記配線部材の上面には、接続領域とブロック領域とが含まれ、前記ブロック領域は、上面視において、前記長手方向における前記接続領域の外側に位置し、前記接続領域は、半田に対する接触角が90度より小さく、前記ブロック領域は、半田に対する接触角が90度より大きい。
【0016】
また、本開示に係る半田付き基台の一態様は、配線部材を有する直方体の基台と、前記配線部材の上面に配置された半田と、を有し、前記配線部材の上面は、前記半田との界面であって半田に対する接触角が90度より小さい接続領域と、半田に対する接触角が90度より大きいブロック領域とを含み、前記ブロック領域は、上面視において、前記長手方向における前記接続領域の両外側に位置する。
【0017】
また、本開示に係る半導体発光装置の製造方法の一態様は、配線部材を有する基台を準備する第1工程と、前記配線部材の上に半田を配置する第2工程と、前記半田の上に、端面発光型の半導体レーザバーをジャンクションダウンで配置し、前記半導体レーザバーを押さえ付けながら加熱して前記半田を溶融し、前記半田により前記半導体レーザバーを前記基台に接合する第3工程と、を含み、前記半導体レーザバーは、長手方向に沿って並べられた複数の利得領域を有し、前記半導体レーザバーは、光を出射する端面であるフロント端面と、前記フロント端面とは反対側の端面であるリア端面と、前記長手方向の端面である側面とを有し、前記第1工程では、第1接続部材とブロック部材とを順に形成することで前記配線部材を形成し、前記配線部材の上面には、前記半田に対する接触角が90度より小さい接続領域と、前記長手方向における前記接続領域の両外側に位置し且つ前記半田に対する接触角が90度より大きいブロック領域とが含まれており、前記第2工程において、前記半田は、前記接続領域上に配置され、前記第3工程において、前記半田は、前記リア端面から外側に延伸し、且つ、前記側面から外側には延伸しない。
【0018】
また、本開示に係る半導体発光装置の製造方法の他の一態様は、配線部材を有する基台を準備する第1工程と、前記配線部材の上に半田を配置する第2工程と、前記半田の上に、端面発光型の半導体レーザバーをジャンクションダウンで配置し、前記半導体レーザバーを押さえ付けながら加熱して前記半田を溶融し、前記半田により前記半導体レーザバーを前記基台に接合する第3工程と、を含み、前記半導体レーザバーは、長手方向に沿って並べられた複数の利得領域を有し、前記半導体レーザバーは、光を出射する端面であるフロント端面と、前記フロント端面とは反対側の端面であるリア端面と、前記長手方向の端面である側面とを有し、前記第1工程では、ブロック部材と第2接続部材とを順に形成することで前記配線部材を形成し、前記配線部材の上面には、前記半田に対する接触角が90度より小さい接続領域と、前記長手方向における前記接続領域の両外側に位置し且つ前記半田に対する接触角が90度より大きいブロック領域とが含まれており、前記第2工程において、前記半田は、前記接続領域上に配置され、前記第3工程において、前記半田は、前記リア端面から外側に延伸し、且つ、前記側面から外側には延伸せず、前記第2接続部材の少なくとも一部と前記半田とが組成遷移領域を介して一体化している。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、半導体レーザバーの長手方向の側面から半田がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバーの側面にリークが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施の形態1に係る半導体発光装置の上面図である。
図2図2は、実装の形態1に係る半導体発光装置の正面図である。
図3A図3Aは、図1のIIIA-IIIA線における実施の形態1に係る半導体発光装置の断面図である。
図3B図3Bは、図1のIIIB-IIIB線における実施の形態1に係る半導体発光装置の断面図である。
図3C図3Cは、図1のIIIC-IIIC線における実施の形態1に係る半導体発光装置の断面図である。
図4図4は、半導体レーザバーが接合される前の実施の形態1に係る基台の構成を示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係る半導体発光装置の拡大断面図である。
図6図6は、実施の形態1に係る半田付き基台の構成を示す図である。
図7図7は、実施の形態1に係る半田付き基台を作製する方法を説明するための図である。
図8図8は、実施の形態1に係る半田付き基台に半導体レーザバーを実装する方法を説明するための図である。
図9図9は、実施の形態1に係る半田付き基台に半導体レーザバーを実装するときの応用例を説明するための図である。
図10A図10Aは、実施の形態1の変形例1に係る半導体発光装置の上面図である。
図10B図10Bは、図10AのXB-XB線における実施の形態1の変形例1に係る半導体発光装置の断面図である。
図10C図10Cは、図10AのXC-XC線における実施の形態1の変形例1に係る半導体発光装置の断面図である。
図10D図10Dは、図10AのXD-XD線における実施の形態1の変形例1に係る半導体発光装置の断面図である。
図11図11は、実施の形態1の変形例1に係る半導体発光装置の他の例を示す断面図である。
図12図12は、実施の形態1の変形例2に係る半導体発光装置及び半導体レーザバーを実装するための基台の構成を示す図である。
図13図13は、実施の形態1の変形例2に係る半田付き基台の構成を示す図である。
図14図14は、実施の形態1の変形例3に係る、半導体発光装置、半導体レーザバーを実装するための基台、及び、半導体レーザバーの構成を示す図である。
図15図15は、実施の形態1の変形例4に係る半導体発光装置及び半導体レーザバーを実装するための基台の構成を示す図である。
図16図16は、実施の形態1の変形例5に係る半導体発光装置の断面図である。
図17図17は、実施の形態1の変形例5に係る他の半導体発光装置の断面図である。
図18図18は、実施の形態2に係る半導体発光装置の上面図である。
図19図19は、実装の形態2に係る半導体発光装置の正面図である。
図20A図20Aは、図18のXXA-XXA線における実施の形態2に係る半導体発光装置の断面図である。
図20B図20Bは、図18のXXB-XXB線における実施の形態2に係る半導体発光装置の断面図である。
図20C図20Cは、図18のXXC-XXC線における実施の形態2に係る半導体発光装置の断面図である。
図21図21は、半導体レーザバーが接合される前の実施の形態2に係る基台の構成を示す図である。
図22図22は、実施の形態2に係る半導体発光装置の拡大断面図である。
図23図23は、実施の形態2に係る半田付き基台の構成を示す図である。
図24図24は、実施の形態2に係る半田付き基台を作製する方法を説明するための図である。
図25図25は、実施の形態2に係る半田付き基台に半導体レーザバーを実装する方法を説明するための図である。
図26A図26Aは、実施の形態2の変形例1に係る半導体発光装置の上面図である。
図26B図26Bは、図26AのXXVIB-XXVIB線における実施の形態2の変形例1に係る半導体発光装置の断面図である。
図26C図26Cは、図26AのXXVIC-XXVIC線における実施の形態2の変形例1に係る半導体発光装置の断面図である。
図26D図26Dは、図26AのXXVID-XXVID線における実施の形態2の変形例1に係る半導体発光装置の断面図である。
図27図27は、実施の形態2の変形例2に係る半導体発光装置及び半導体レーザバーを実装するための基台の構成を示す図である。
図28図28は、実施の形態3に係る半導体発光装置の上面図である。
図29図29は、実装の形態3に係る半導体発光装置の正面図である。
図30A図30Aは、図28のXXXA-XXXA線における実施の形態3に係る半導体発光装置の断面図である。
図30B図30Bは、図28のXXXB-XXXB線における実施の形態3に係る半導体発光装置の断面図である。
図30C図30Cは、図28のXXXC-XXXC線における実施の形態3に係る半導体発光装置の断面図である。
図31図31は、半導体レーザバーが接合される前の実施の形態3に係る基台の構成を示す図である。
図32図32は、実施の形態3に係る半導体発光装置の拡大断面図である。
図33図33は、実施の形態3に係る半田付き基台の構成を示す図である。
図34図34は、実施の形態3に係る半田付き基台を作製する方法を説明するための図である。
図35図35は、実施の形態3に係る半田付き基台に半導体レーザバーを実装する方法を説明するための図である。
図36A図36Aは、実施の形態3の変形例に係る半導体発光装置の上面図である。
図36B図36Bは、図36AのXXXVIB-XXXVIB線における実施の形態3の変形例に係る半導体発光装置の断面図である。
図36C図36Cは、図36AのXXXVIC-XXXVIC線における実施の形態3の変形例に係る半導体発光装置の断面図である。
図36D図36Dは、図36AのXXXVID-XXXVID線における実施の形態3の変形例に係る半導体発光装置の断面図である。
図37図37は、実施の形態3の変形例に係る半導体発光装置の拡大断面図である。
図38図38は、変形例1に係る半導体発光装置の上面図である。
図39図39は、変形例1に係る半導体発光装置の断面図である。
図40図40は、変形例1に係る基台の上面図である。
図41図41は、変形例2に係る半田付き基台の上面図及び半導体発光装置の上面図である。
図42図42は、変形例3に係る半田付き基台の上面図及び半導体発光装置の上面図である。
図43図43は、変形例4に係る半導体発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0022】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺・角度等は必ずしも一致していないし、角度も正確に図示されていないことがある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0023】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合にも適用される。
【0024】
(実施の形態1)
[半導体発光装置]
まず、実施の形態1に係る半導体発光装置1の構成について、図1図2図3A図3B及び図3Cを用いて説明する。図1は、実施の形態1に係る半導体発光装置1の上面図である。図2は、実装の形態1に係る半導体発光装置1の正面図である。図3A図3B及び図3Cは、それぞれ、図1のIIIA-IIIA線、IIIB-IIIB線及びIIIC-IIIC線における実施の形態1に係る半導体発光装置1の断面図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、半導体発光装置1は、配線部材10を有する基台2と、半導体レーザバー3と、半田4とを備える。基台2と半導体レーザバー3とは、半田4を介して接合されている。具体的には、半田4は、基台2と半導体レーザバー3との間に介在している。つまり、半田4は、基台2の上に配置され、半導体レーザバー3は、半田4の上に配置されている。具体的には、半田4は、基台2の配線部材10の上に配置されている。したがって、半田4は、配線部材10と半導体レーザバー3との間に配置されている。
【0026】
半田4は、基台2と半導体レーザバー3とを接合するための接合部材の一例である。本実施の形態において、半田4は、基台2の配線部材10と半導体レーザバー3とを接合している。これにより、配線部材10と半導体レーザバー3とが電気的に接続される。
【0027】
半田4は、例えば、AuSn系又はSnAuCu系の鉛フリー半田であるが、これに限るものではない。半田4は、鉛(Pb)を用いた鉛半田であってもよい。また、半田4は、高温半田であってもよいし、低温半田であってもよい。本実施の形態において、半田4は、AuSn半田である。具体的には、半田4として、AuSn共晶半田を用いた。
【0028】
半導体レーザバー3は、レーザ光を出射する長尺状の半導体レーザ素子の一例である。本実施の形態において、半導体レーザバー3は、半導体レーザバー3の長手方向に沿って並べられた複数の利得領域を有する端面発光型の半導体レーザ素子である。具体的には、半導体レーザバー3は、複数の利得領域に対応する複数のエミッタを有するマルチエミッタ構造の半導体レーザ素子であり、複数本のレーザ光を出射する。
【0029】
半導体レーザバー3は、基板と、基板の上に形成された半導体積層構造体とを有する。例えば、半導体レーザバー3は、GaN系半導体レーザ又はGaAs系半導体レーザ等である。本実施の形態において、半導体レーザバー3は、GaN系半導体レーザであり、成長基板であるGaN基板と、GaN基板の上に形成された窒化物半導体材料によって構成された半導体積層構造体とを備える。具体的には、半導体積層構造体は、GaN基板の上に形成されたn型半導体層と、n型半導体層の上に形成された活性層と、活性層の上に形成されたp型半導体層とを備える。n型半導体層とp型半導体層との間に形成された活性層は、pn接合部となる。
【0030】
図2に示すように、p型半導体層は、例えば、複数の光導波路として複数のリッジ部3aを有する。複数のリッジ部3a(光導波路)は、複数の利得領域に対応している。複数のリッジ部3aは、平行に形成されており、また、半導体レーザバー3の長手方向に直交する方向に延在している。p型半導体層の上面は、リッジ部3a上を除いて、SiN又はSiO2等からなる絶縁膜3bで覆われている。つまり、絶縁膜3bは、リッジ部3aの上方に開口部を有する。また、p型半導体層の上には、p側電極が形成され、GaN基板の裏面(半導体積層構造体が形成された面とは反対側の面)には、n側電極が形成されている。p側電極は、例えば、リッジ部3aの上に形成されている。
【0031】
また、半導体レーザバー3は、パッド電極5を有する。パッド電極5は、半導体レーザバー3のp側電極上に形成されている。パッド電極5は、全てのリッジ部3aをまたぐように長尺状に形成されている。パッド電極5は、金属材料によって構成されている。パッド電極5は、単一の金属層によって構成されていてもよいし、複数の金属層によって構成されていてもよい。一例として、パッド電極5は、p側電極から離れる方向に、Ti層、Pt層、Au層の順に積層された3層構造である。
【0032】
図1に示すように、半導体レーザバー3は、レーザ光を出射する端面であるフロント端面S1と、フロント端面S1とは反対側の端面であるリア端面S2と、半導体レーザバー3の長手方向の端面である一対の側面S3とを有する。半導体レーザバー3の光導波路は、フロント端面S1とリア端面S2とを共振器反射ミラーとしている。したがって、フロント端面S1及びリア端面S2は、共振器端面となる。
【0033】
半導体レーザバー3は、ジャンクションダウン方式(フェイスダウン方式)で基台2に接続されている。つまり、半導体レーザバー3は、パッド電極5側の面(p側電極側の面)が基台2に向くように配置されて基台2に実装されている。
【0034】
また、図1及び図3Bに示すように、本実施の形態において、半導体レーザバー3は、フロント端面S1が基台2の前端面から少しはみ出すような状態で基台2に実装されている。これにより、半導体レーザバー3を基台2に実装する際、加熱により溶融して液状になった半田4が半導体レーザバー3の短手方向に流動して基台2と半導体レーザバー3との間からはみ出したとしても、液状の半田4は、半導体レーザバー3の突出部分の基台2側の面にとどまることになる。したがって、液状の半田4がフロント端面S1に乗り上がって半導体レーザバー3のフロント端面S1に半田4が付着することを抑制できるので、半田4によるフロント端面S1でのレーザ光の光路妨害を防止できる。
【0035】
基台2は、半導体レーザバー3が実装されるサブマウントである。基台2は、全体として直方体である。一例として、基台2は、矩形の平板状である。図1図3Cに示すように、基台2は、配線部材10と、支持体20とを有する。
【0036】
支持体20は、基台2の本体を構成している。支持体20は、絶縁体であり、例えば、AlN、SiC又はダイヤモンド等の高熱伝導材料によって構成されている。これにより、半導体レーザバー3で発生する熱を支持体20によって効率よく放熱させることができる。つまり、支持体20は、ヒートシンクとして機能する。支持体20の形状は、直方体であり、一例として、矩形の平板状である。したがって、支持体20の上面は、矩形の平面である。
【0037】
配線部材10は、支持体20の上方に形成されている。具体的には、配線部材10は、支持体20の上面に形成されている。配線部材10の少なくとも一部は、半田4に接続されている。つまり、半田4は、配線部材10と半導体レーザバー3との間に介在している。
【0038】
配線部材10は、配線本体11とブロック部材12とを有する。本実施の形態では、配線本体11とブロック部材12とをこの順に形成することで配線部材10が構成されている。
【0039】
配線本体11は、単一の導電層によって構成されていてもよいし、複数の導電層によって構成されていてもよい。本実施の形態において、配線本体11は、複数の金属層によって構成されている。具体的には、配線本体11は、第1金属層11aと、第1金属層11aの上に形成された第2金属層11bと、第2金属層11bの上に形成された第3金属層11cとの3層構造である。
【0040】
第1金属層11aは、例えば、TiからなるTi層又はAuからなるAu層である。一例として、第1金属層11aの厚さは、0.5μmである。第1金属層11aは、例えば、支持体20と配線本体11との密着性を向上させるために形成された密着層として機能する。したがって、第1金属層11aは、支持体20との密着性に優れた金属材料によって構成するとよい。第1金属層11aは、配線本体11の最下層である。
【0041】
第2金属層11bは、例えば、PtからなるPt層である。一例として、第2金属層11bの厚さは、0.2μmである。第2金属層11bは、不要な金属の拡散を抑制するためのバリア層として機能する。本実施の形態において、第2金属層11bは、半田4に含まれるSnが拡散することを抑制する。第2金属層11bは、配線本体11の中間層であり、第1金属層11aと第3金属層11cとの間に配置されている。
【0042】
第3金属層11cは、例えば、AuからなるAu層である。一例として、第3金属層11cの厚さは、1.0μmである。第3金属層11cは、配線本体11の最上層である。図3Aに示すように、本実施の形態では、配線本体11における半田4の下方部分に、第3金属層11cが存在していない。
【0043】
詳細は後述するが、これは、半導体レーザバー3を半田4で配線部材10に接合する際に、AuSnからなる半田4の組成成分であるSnがAu層である第3金属層11cに拡散してAuとSnとが合金化し、組成遷移領域としてAuSn層の合金化層11c1が形成され、第3金属層11cが半田4の一部となって半田4と一体化したからである。このため、半田4によって半導体レーザバー3と基台2とが接合された後では、第3金属層11cと半田4とが一体化した合金化層11c1を含む半田4は、配線本体11の第2金属層11bと接合しているように見える。
【0044】
一方、半導体レーザバー3が配線部材10に接合される前の基台2である基台200については、図4に示すように、配線部材210の配線本体211の第3金属層11cには組成遷移領域(合金化層11c1)が形成されておらず、配線部材210の配線本体211は、全領域において、第1金属層11aと第2金属層11bと第3金属層11cとの3層構造になっている。図4は、半導体レーザバー3が接合される前の基台200の構成を示す図である。図4において、(a)は、基台200の上面図であり、(b)は、(a)のb-b線における断面図である。
【0045】
基台2及び基台200において、第1金属層11a、第2金属層11b及び第3金属層11cは、例えば、めっき法によって形成されためっき膜であるが、これに限らない。例えば、第1金属層11a、第2金属層11b及び第3金属層11cは、蒸着法等のめっき法以外の方法によって形成されてもよい。また、本実施の形態において、配線本体11は、支持体20側からTi/Pt/Au又はAu/Pt/Auの3層構造になっているが、これに限らない。例えば、配線本体11は、支持体20側からTi/Pt/Au/Pt/Auの5層構造であってもよい。
【0046】
図4の(a)に示すように、基台200において、配線本体211は、第1配線本体111と第2配線本体112とに分離されている。第1配線本体111と第2配線本体112とは、半導体レーザバー3の表面電極と裏面電極とに接続される配線部材である。さらに第1配線部材111と第2配線部材112から電源供給部にワイヤボンディング等で容易に接続できるように、それぞれが配置される。例えば図4の(a)では、上面視で左右方向に電源供給部が形成できるように配置されている。もちろん、リア端面S2側(上面視で上側)に、第1配線部材111と第2配線部材112とが並んで配置されていても良い。
【0047】
図1に示す基台2における配線本体11は、基台200における配線本体211と同様の形状である。つまり、配線本体11は、互いに分離された第1配線本体111と第2配線本体112とによって構成されている。
【0048】
図1に示すように、半導体レーザバー3は、第1配線本体111の上に配置されている。したがって、図3Aに示すように、半導体レーザバー3と第1配線本体111とは半田4によって接合されている。また、図1に示すように、第2配線本体112と半導体レーザバー3とは、配線ワイヤの一例である金ワイヤ6によって接続されている。ワイヤボンディングは、半導体レーザバー3の利得領域(リッジ部)に対応するように行う。すなわち、半導体レーザバー3の長手方向に並ぶ利得領域に対応して、金ワイヤ6もその長手方向に平行に並べて配置される。このようにワイヤボンディングすることで、半導体レーザバー3の長手方向で均一に発光させることが可能となる。また、金ワイヤ6は、隣り合う利得領域の間に配置されているとよい。これにより、ワイヤボンディング時の応力による不良発生を低減できる。本実施の形態では、複数本の金ワイヤ6が第2配線本体112と半導体レーザバー3とを架張するようにワイヤボンディングされているが、これに限らない。例えば、金ワイヤ6は、半導体レーザバー3の長手方向で均一な発光が得られるのであれば、1本であってもよいし、2本であってもよい。なお、金ワイヤ6ではなく、金以外の材料によって構成された配線ワイヤを用いてもよい。
【0049】
第1配線本体111及び第2配線本体112には、電力が供給される。本実施の形態では、第1配線本体111には、給電ワイヤ7aがワイヤボンディングされており、第2配線本体112には、給電ワイヤ7bがワイヤボンディングされている。給電ワイヤ7aに供給された電力は、第1配線本体111及び半田4を介して半導体レーザバー3のパッド電極5(p側電極)に供給される。一方、給電ワイヤ7bに供給された電力は、第2配線本体112及び金ワイヤ6を介して半導体レーザバー3のn側電極に供給される。ここで、第2配線本体112は、金ワイヤ6の長さを短くするために、半導体レーザバー3に沿ってリア端面S2側に、かつ第1配線本体111と離間して配置される。一方、レーザ光の光路を考えると、フロント端面S1側には金ワイヤ6を配置することができないので、給電ワイヤ7aおよび7bは、基台200の長手方向端部付近に形成される。よって、第2配線本体112は、基台200のリア側と長手方向端部に沿うL字型をしている。本実施の形態では、複数本の給電ワイヤがワイヤボンディングされているが、太い1本のワイヤでもよいし、変形しにくい金属配線部材が半田付けされていてもよい。
【0050】
図2及び図3Aに示すように、ブロック部材12は、配線本体11の上に配置されている。具体的には、ブロック部材12は、配線本体11の第3金属層11cの上に配置されている。本実施の形態において、ブロック部材12は、半導体レーザバー3の長手方向において対向するように一対形成されている。一対のブロック部材12は、半導体レーザバー3の長手方向における一対の端部と重なる位置に形成されている。半田4は、一対のブロック部材12の間に存在している。
【0051】
一対のブロック部材12は、いずれも第1配線本体111の上に配置されている。各ブロック部材12は、第1配線本体111の幅方向の一方の端部から他方の端部にわたって形成されている。本実施の形態において、各ブロック部材12の上面視形状は、矩形状である。一例として、ブロック部材12の上面視形状は、縦1.25mmで、横0.3mmの長方形である。また、ブロック部材12の厚さは、例えば、0.2μmである。
【0052】
ブロック部材12は、導電層によって構成されている。本実施の形態において、ブロック部材12は、金属層である。具体的には、ブロック部材12は、PtからなるPt層である。Pt層であるブロック部材12は、例えば蒸着法によって配線本体11の上面に形成されている。ただし、ブロック部材12の形成方法は、蒸着法に限るものではない。また、ブロック部材12を金属ブロックとし、金属ブロックであるブロック部材12を導電性接着剤又は絶縁性接着剤で配線本体11に接合してもよい。また、ブロック部材12の長手方向の外側部分に離間して、給電ワイヤ7aおよび7bが配置されている。
【0053】
このように、本実施の形態において、配線本体11とブロック部材12とは、いずれも導電性を有するが、これに限らない。例えば、ブロック部材12は、絶縁材料によって構成されていてもよい。具体的には、ブロック部材12は、酸化シリコン(SiO)からなる酸化シリコン膜であってもよいし、酸化ニッケル(NiO)からなる酸化ニッケル膜であってもよい。
【0054】
図2図3Cに示すように、配線部材10の半導体レーザバー3側の面には、接続領域10a(接続部)と、ブロック領域10b(ブロック部)とが含まれている。つまり、配線部材10の上面には、接続領域10aとブロック領域10bとが含まれている。
【0055】
配線部材10の接続領域10aは、配線部材10と半田4との界面である。接続領域10aは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における半導体レーザバー3の側面S3の内側に位置している。具体的には、接続領域10aは、半導体レーザバー3の一対の側面S3の間に位置している。
【0056】
図3Aに示すように、半導体レーザバー3と配線部材10とが半田4で接合された後では、配線部材10における半田4との界面は、配線本体11の第2金属層11bと半田4との接続面になっている。つまり、接続領域10aは、第2金属層11bの上面の一部である。具体的には、第2金属層11bはPt層であるので、接続領域10aは、Ptの表面である。このように、本実施の形態では、配線本体11の第2金属層11bが半田4に接続されている。つまり、第2金属層11bは、半田4に接続する接続部材(第1接続部材)になっている。
【0057】
なお、半導体レーザバー3が配線部材10に接合される前の基台200については、図4に示すように、半田4が接続される領域に、配線部材210の配線本体211の第3金属層11cが存在している。このため、基台200において、半田4が接続される予定である接続領域10cは、第3金属層11cの上面の一部である。つまり、基台200において、接続領域10cは、半田4が配置される半田配置領域である。この場合、接続領域10cは、半田4に対する接触角が90度より小さくなっている。つまり、液状の半田4に対する接続領域10cの接触角は90度よりも小さい鋭角になっている。本実施の形態において、第3金属層11cはAu層であるので、基台200における接続領域10cは、Auの表面である。また、ブロック部材12は、Pt、SiO又はNiOによって構成されているので、ブロック領域10bは、Pt、SiO又はNiOの表面である。これにより、接続領域10cとブロック領域10bとの濡れ性の差を容易に実現することができる。
【0058】
図2及び図3Aに示すように、第3金属層11cの上に形成される一対のブロック部材12は、第2金属層11b(第1接続部材)の上方に位置している。つまり、第2金属層11bの上面は、半田4に接しているだけではなく、第3金属層11cにも接している。このように、第2金属層11bの上面には、半田4に接続される接続領域10aと第3金属層11cに接続される領域とが含まれている。
【0059】
また、上記のように、半田4は、一対のブロック部材12の間に形成されている。したがって、半田4に接続される第2金属層11b(第1接続部材)は、上面視において、一対のブロック部材12の間に接続領域10aを有している。つまり、接続領域10aは、一対のブロック部材12の間に位置している。
【0060】
配線部材10のブロック領域10bは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの外側に位置している。また、ブロック領域10bの少なくとも一部は、接続領域10aと半導体レーザバー3の側面S3との間に位置している。
【0061】
ブロック領域10bは、半田4に対する接触角が90度より大きい。つまり、液状の半田4に対するブロック領域10bの接触角は、90度よりも大きい鈍角になっている。本実施の形態において、ブロック領域10bは、ブロック部材12の上面である。上記のように、ブロック部材12は、Pt層であるので、ブロック領域10bは、Ptの表面である。なお、ブロック部材12がSiO又はNiOによって構成されている場合、ブロック領域10bは、SiO又はNiOの表面である。
【0062】
本実施の形態において、配線部材10は、一対のブロック部材12を有するので、ブロック領域10bも一対存在する。一対のブロック領域10bの一方は、半導体レーザバー3の長手方向において、接続領域10aの一方側に存在している。また、一対のブロック領域10bの他方は、半導体レーザバー3の長手方向において、接続領域10aの他方側に存在している。つまり、ブロック領域10bは、半導体レーザバー3の長手方向において、接続領域10aの両外側に一対存在している。
【0063】
半導体レーザバー3の側面S3は、ブロック領域10bの上方に位置している。つまり、半導体レーザバー3の側面S3は、上面視において、ブロック領域10bと重なっている。具体的には、半導体レーザバー3の一対の側面S3の一方は、一対のブロック領域10bの一方の上方に位置しており、半導体レーザバー3の一対の側面S3の他方は、一対のブロック領域10bの他方の上方に位置している。
【0064】
半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック領域10bの内側部分は、上面視において、半導体レーザバー3の側面S3よりも内側に位置している。具体的には、半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック部材12の内側の側面が、半導体レーザバー3の側面S3よりも内側に位置している。
【0065】
本実施の形態では、一対のブロック領域10bの対向部分が半導体レーザバー3の一対の側面S3の間に位置している。つまり、一対のブロック部材12の対向する両側面は、一対の側面S3の間に位置している。
【0066】
一方、半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック領域10bの外側部分は、上面視において、半導体レーザバー3の側面S3よりも外側に位置している。具体的には、半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック部材12の外側の側面が、半導体レーザバー3の側面S3よりも外側に位置している。
【0067】
また、図1及び図4に示すように、一対のブロック領域10bの各々は、上面視において、半導体レーザバー3の直下の部分からリア端面S2側の外方に延伸している。また、半導体レーザバー3の各側面S3におけるリア端面S2側の端部は、上面視において、ブロック領域10bに重なっている。
【0068】
一対のブロック領域10bは、上面視において、基台2の短手方向の一方側に寄せて配置されている。つまり、一対のブロック領域10bは、基台2の短手方向の片側に偏在している。本実施の形態において、一対のブロック領域10bは、第1配線本体111の上方に位置しており、半導体レーザバー3のフロント端面S1側(半導体発光装置1の前方側)に寄せて配置されている。
【0069】
図2及び図3Aに示すように、配線部材10と半導体レーザバー3との間に介在する半田4は、一対のブロック領域10b(ブロック部材12)の間に存在しており、半導体レーザバー3の長手方向においては、半導体レーザバー3の側面S3から外側には延伸していない。つまり、半田4は、半導体レーザバー3の側面S3から外側にははみ出していない。
【0070】
一方、図1図3B及び図3Cに示すように、配線部材10と半導体レーザバー3との間に介在する半田4は、半導体レーザバー3の短手方向においては、半導体レーザバー3のリア端面S2から外側にはみだしている。具体的には、半田4は、上面視において半導体レーザバー3のリア端面S2から外側に延伸するリア側延伸部4aを有する。
【0071】
図示されていないが、半導体レーザバー3のフロント端面S1及びリア端面S2は、SiOxやAlOxやTiOxなどの誘電体からなる被膜が形成されている。これらの被膜は、各種半田に対する接触角が90度より大きい。よって、半田4のリア側延伸部4aは、半導体レーザバー3のリア端面S2から外側にはみだしているが、リア端面S2には接していない。また、図1に示すように、半田4のリア側延伸部4aは、半導体レーザバー3の側面S3にも接していない。
【0072】
図1に示すように、半田4と配線部材10との界面である接続領域10aは、上面視において、半導体レーザバー3のリア端面S2から外側に延伸する接続領域延伸部10a1を有する。図3Bに示すように、半田4のリア側延伸部4aは、接続領域10aの接続領域延伸部10a1と接続されている。
【0073】
本実施の形態において、接続領域延伸部10a1に存在するリア側延伸部4aの高さは、一定ではない。具体的には、図3Bに示すように、リア側延伸部4aの高さは、半導体レーザバー3の短手方向において、半導体レーザバー3から離れるにしたがって、いったん高くなった後に低くなっている。
【0074】
図3Aに示すように、配線部材10と半導体レーザバー3との間に介在する半田4は、一対のブロック部材12の間に存在するとともに、その一部がブロック部材12の上面に乗り上がっている。このため、半田4は、配線本体11と半導体レーザバー3との間だけではなく、ブロック部材12と半導体レーザバー3との間にも介在している。したがって、図3Aに示される断面視において、半田4と半導体レーザバー3との界面の幅W1は、半田4と配線部材10との界面の幅W2より大きくなっている。
【0075】
また、本実施の形態における半導体発光装置1では、半導体レーザバー3の長手方向の両端部の各々に、利得領域が存在しない非活性領域が設けられている。この非活性領域は、レーザ光は出射する部分と同じ半導体積層構造によって構成されているが、絶縁膜によって半田4とは絶縁されており、電流が流れない。このため、非活性領域からは発熱がなく、直下の基台200との間に半田4等の熱伝導部材がなくても熱的な問題は少ない。本実施の形態における半導体レーザバー3では、この非活性領域の長さが従来技術よりも短くなっている。
【0076】
この場合、本実施の形態における半導体発光装置1では、図5の断面視において、半導体レーザバー3の下面外端とブロック領域10bの内端(ブロック部材12の上面内端)とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ1は、45度未満である。
【0077】
また、ブロック部材12の下面内端と複数の利得領域3cのうちブロック部材12に最も近い利得領域3cの外端とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ2は、45度未満である。
【0078】
次に、実施の形態1に係る半導体発光装置1の製造方法について説明する。具体的には、半田4によって半導体レーザバー3と基台2の配線部材10とを接合する方法について説明する。
【0079】
本実施の形態では、支持体20に予め半田4が形成された半田付き基台201を用いて半導体レーザバー3を実装している。そこで、まず、半田付き基台201の構成について、図6を用いて説明する。図6は、実施の形態1に係る半田付き基台201の構成を示す図である。図6において、(a)は、半田付き基台201の上面図であり、(b)は、(a)のb-b線における断面図である。
【0080】
図6に示すように、半田付き基台201は、図4に示される基台200の配線部材210に半田4が配置された構成になっている。具体的には、半田付き基台201は、配線部材210を有する直方体の支持体20(基台)と、配線部材210の上面に配置された半田層である半田4とを備える。半田4は、蒸着又は印刷等によって所定形状に形成することができる。
【0081】
配線部材210は、配線本体211と、ブロック部材12とを有する。配線本体211は、第1金属層11aと第2金属層11bと第3金属層11cとの3層構造になっている。また、配線本体211は、上記の半導体発光装置1における配線部材10の配線本体11と同様に、互いに分離された第1配線本体111と第2配線本体112とによって構成されている。
【0082】
半田付き基台201において、配線部材210の上面は、半田4との界面である接続領域10cである。具体的には、接続領域10cは、配線本体211における第3金属層11cの上面の一部である。第3金属層11cはAu層であるので、半田付き基台201における接続領域10cは、Auの表面である。この場合、接続領域10cは、半田4に対する接触角が90度より小さくなっている。つまり、接続領域10cは、半田4に対する濡れ性が高くなっている。
【0083】
配線部材210のブロック部材12は、上記の半導体発光装置1における配線部材10のブロック部材12と同じである。半田付き基台201においても、ブロック部材12の上面がブロック領域10bになっている。したがって、ブロック領域10bの半田4に対する接触角は90度より大きい。このように、半田付き基台201では、ブロック領域10bの半田4に対する接触角が、接続領域10cの半田4に対する接触角よりも大きくなっている。
【0084】
ブロック領域10bは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10cの両外側に位置している。半田付き基台201には、一対のブロック部材12が設けられているので、ブロック領域10bも一対存在している。具体的には、ブロック領域10bは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10cの両外側に一対存在している。
【0085】
また、半田4は、上面視において、基台200の短手方向の一方側に寄せて配置されている。つまり、半田4は、基台2の短手方向の片側に偏在している。本実施の形態において、半田4は、第1配線本体111の上方に位置している。
【0086】
そして、図6に示される半田付き基台201を用いて半導体発光装置1を製造する際、まず、図7に示すようにして、半田付き基台201を作製する。図7は、実施の形態1に係る半田付き基台201を作製する方法を説明するための図である。なお、図7において、左図は、上面図であり、右図は、断面図である。
【0087】
まず、図7の(a)~(c)に示すように、第1工程として、配線部材210を有する基台200を準備する。本実施の形態では、配線本体211及びブロック部材12を含む配線部材210が形成された基台200を作製する。この第1工程では、半導体レーザバー3を実装したときに半田4に接続される第1接続部材とブロック部材12とを順に形成することで配線部材210を形成する。本実施の形態では、半田4に接続される第1接続部材として第2金属層11bが含まれる配線部材210を形成する。
【0088】
具体的には、まず、図7の(a)に示すように、支持体20を準備する。本実施の形態では、AlNからなる直方体の支持体20を準備した。
【0089】
次いで、図7の(b)に示すように、支持体20の上面に、第1金属層11aと第2金属層11bと第3金属層11cとからなる配線本体211を所定の形状で形成する。本実施の形態では、第1金属層11a、第2金属層11b及び第3金属層11cとして、それぞれ、Au層、Pt層及びAu層をめっき法により形成した。なお、配線本体211は、第1配線本体111と第2配線本体112とに分離されている。
【0090】
次いで、図7の(c)に示すように、配線本体211の上に、一対のブロック部材12を形成する。具体的には、配線本体211の第3金属層11cの上に、所定の間隔をあけて対向するようにして、所定形状の一対のブロック部材12を形成する。本実施の形態において、一対のブロック部材12の各々は、矩形板状であり、上面視形状が、半導体レーザバー3の短手方向に長尺をなす長方形である。また、一対のブロック部材12は、配線本体211における第1配線本体111及び第2配線本体112のうち第1配線本体111の上に形成されている。なお、本実施の形態では、ブロック部材12としてPt層を形成した。
【0091】
このようにして、配線本体211とブロック部材12とで構成された配線部材210が形成された基台200を作製することができる。
【0092】
次に、図7の(d)に示すように、第2工程として、基台200の配線部材210の上面に所定形状の半田4を配置する。具体的には、半田4は、配線本体211の第3金属層11cの上に形成されている。第3金属層11cは、配線本体211の最上層であり、半田4が接続される接続領域10cである。つまり、半田4は、接続領域10cの上に配置される。
【0093】
また、第2工程では、半田4は、一対のブロック部材12の間に形成されている。つまり、半田4は、一対のブロック部材12で挟まれることになる。本実施の形態において、半田4は、矩形板状であり、上面視形状が、半導体レーザバー3の長手方向に長尺をなす長方形である。本実施の形態では、AuSn層(Au80%)である半田4を蒸着法により形成した。また、半田4の厚さは、ブロック部材12の厚さよりも厚くしている。
【0094】
以上により、配線本体211及びブロック部材12を有する配線部材210の上面に半田4が形成された半田付き基台201が完成する。
【0095】
次に、図8に示すように、第3工程として、半田付き基台201に半導体レーザバー3を実装する。図8は、半田付き基台201に半導体レーザバー3を実装する方法を説明するための図である。なお、図8において、左図は、上面図であり、右図は、断面図である。
【0096】
第3工程では、まず、図8の(a)に示すように、半田付き基台201の半田4の上に半導体レーザバー3をジャンクションダウンで配置し、次いで、図8の(b)に示すように、半導体レーザバー3を押さえ付けながら加熱して半田4を溶融させる。その後、溶融して液状になった半田4が硬化することで、半田4によって半導体レーザバー3を基台2に接合することができる。一例として、半田付き基台201を250℃まで加熱し、その後、半田付き基台201に半導体レーザバー3をジャンクションダウンで配置し、半田付き基台201の加熱温度を320℃として10秒保持し、その後、降温する。その後、図8の(c)に示すように、金ワイヤ6と給電ワイヤ7a及び7bとをワイヤボンディングする。これにより、半導体発光装置1が完成する。
【0097】
この第3工程では、図8の(b)に示すように、溶融して液状になった半田4は、半導体レーザバー3で押し付けられることになる。このため、液状の半田4は、半導体レーザバー3からの押圧によって、半導体レーザバー3と配線部材210との間で押し広げられることになる。
【0098】
ここで、半田4が接触する接触面の濡れ性が低いと、液状の半田4は、広がりが阻害(ブロック)される。本実施の形態では、半田4が接続される接続領域10aの両外側には、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bが存在している。つまり、接続領域10aは、半田4に対して濡れ性が低い一対のブロック領域10bで挟まれている。これにより、接続領域10aから半導体レーザバー3の長手方向に広がる液状の半田4をブロック領域10bではじくことができるので、液状の半田4が半導体レーザバー3の長手方向に広がることを抑制できる。この結果、一対のブロック領域10bによってはじかれた液状の半田4の広がりは、半導体レーザバー3の短手方向(基台2の短手方向)に向けて促されることになる。つまり、液状の半田4の流れの向きを半導体レーザバー3の側面S3に向かう方向から半導体レーザバー3のリア端面S2に向かう方向へと変えることができる。このようにして、半導体レーザバー3の長手方向に流動する半田4を半導体レーザバー3の短手方向に向けて逃がすことができるので、半導体レーザバー3の側面S3から半田4がはみ出すことを抑制できる。
【0099】
特に、本実施の形態では、ブロック領域10bを上面に有する厚みのある一対のブロック部材12によって半田4を挟んでいるので、半導体レーザバー3の長手方向に流動する半田4は、低い濡れ性で液状の半田4の広がりを規制しているだけではなく、一対のブロック部材12の厚みによっても、液状の半田4が半導体レーザバー3の長手方向に移動することを物理的に規制している。具体的には、一対のブロック部材12の各々の内側の側面によって液状の半田4をせき止めることができる。つまり、一対のブロック部材12は、液状の半田4の流れを止めるストッパとしても機能している。これにより、半導体レーザバー3の長手方向の側面S3から半田4がはみ出すことを効果的に抑制できる。なお、一対のブロック部材12では、上面(ブロック領域10b)だけではなく側面も濡れ性が低くなっている。
【0100】
一方、半導体レーザバー3からの押圧によって半導体レーザバー3の短手方向に流動する半田4及び一対のブロック領域10b(ブロック部材12)によって半導体レーザバー3の短手方向に逃がされた半田4は、半導体レーザバー3のリア端面S2からはみ出すことになる。したがって、第3工程において、半田4には、半導体レーザバー3のリア端面S2から外側に延伸したリア側延伸部4aが形成される。
【0101】
このとき、本実施の形態では、半導体レーザバー3のリア端面S2からはみ出した半田4の下面の濡れ性が高くなっている。このため、リア側延伸部4aは、一部が盛り上がった状態に形成され、はみ出す方向に向かって距離が伸びにくい。具体的には、リア側延伸部4aの高さは、半導体レーザバー3の短手方向において、半導体レーザバー3から離れるにしたがって、いったん高くなった後に低くなる。
【0102】
また、第3工程では、図9に示すように、半田付き基台201を加熱しながら半田4に加熱用のレーザ光を照射するとよい。具体的には、まず、図9の(a)に示すように、半田4の上に半導体レーザバー3が配置された半田付き基台201をヒータ300で加熱し、次いで、図9の(b)に示すように、半田付き基台201をヒータ300で加熱しながら、半導体レーザバー3のリア端面S2よりも外側の領域に存在する半田4に加熱用のレーザ光を局所的に照射する。これにより、半田4における半導体レーザバー3のリア端面S2側に近い部分(後端部)の温度が、半田4における半導体レーザバー3のフロント端面S1に近い部分(前端部)の温度よりも高くなる。
【0103】
そして、図9の(c)に示すように、加熱用のレーザ光を照射し続けると、半田4は後端部の温度が前端部の温度よりも高い状態が維持される。液状の半田4は、温度が高い方が高い流動性を有する。このため、加熱用のレーザ光により後端部が加熱された液状の半田4には、後方側に向かう流れが発生する。これにより、液状の半田4は、半導体レーザバー3のリア端面S2から後方側に一層はみ出しやすくなる。
【0104】
このように、半田付き基台201を加熱しながら半田4の後端部に加熱用のレーザ光を局所的に照射することで、半田4に、一部が盛り上がったリア側延伸部4aを容易に形成することができる。なお、半田4の後端部を加熱するときのレーザ光の照射条件は、一例として、レーザ光としては波長が808nmのCWレーザ光を用い、レーザ光の出力を1W/cmとし、照射領域を1mm×10mm×10umとし、照射時間を0.5秒とし、有効吸収率を10%とし、想定温度差を20℃とした。
【0105】
また、本実施の形態では、図8の(a)に示すように、半田付き基台201の配線本体211の最上層である第3金属層11cに半田4が接して配置されている。そして、第3金属層11cは、Au層であり、半田4は、AnSn層である。このため、第3工程において、半導体レーザバー3を押さえ付けながら半田付き基台201を加熱して半田4を溶融させたときに、AuSn層である半田4は、Au層である第3金属層11cの上で溶融することになる。このとき、半田4の組成成分であるSnが第3金属層11cに拡散して第3金属層11cのAuを侵食するので、図8の(b)に示すように、AuとSnとが合金化して第3金属層11cが組成遷移領域であるAuSn層の合金化層11c1になる。つまり、半田4の下方に位置する第3金属層11cがAuSn層の合金化層11c1になる。これにより、配線部材210の一部である第3金属層11cと半田4とが組成遷移領域(合金化層11c1)を介して一体化することになる。したがって、半導体発光装置1における配線部材10と半田4との接合強度を向上させることができるので、半導体レーザバー3と基台2とを強固に接合することができる。
【0106】
このとき、本実施の形態では、第3工程において、半田付き基台201における半田4が配置された部分の第3金属層11cの全体が、AuSn層の合金化層11c1になっている。つまり、半田4が配置された部分の第3金属層11cの厚み方向の全体が半田4の一部になっている。したがって、第3工程によって、半田4は、半田4が配置された部分の第3金属層11cが合金化した合金化層11c1を取り込んだ状態となり、第2金属層11bと接合しているように見える。これにより、半田4が接続された第2金属層11bを含む配線本体11が形成される。
【0107】
以上説明したように、本実施の形態に係る半導体発光装置1は、配線部材10を有する基台2と、半導体レーザバー3と、配線部材10と半導体レーザバー3との間に配置された半田4と、を備えている。そして、配線部材10の半導体レーザバー3側の面には、半田4との界面である接続領域10aと、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bとが含まれており、接続領域10aは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における半導体レーザバー3の側面S3の内側に位置しており、ブロック領域10bの少なくとも一部は、上面視において、接続領域10aと半導体レーザバー3の側面S3との間に位置し、半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック領域10bの内側部分は、半導体レーザバー3の側面S3よりも内側に位置している。つまり、半導体レーザバー3の長手方向において、接続領域10aの側方に、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bが存在している。
【0108】
具体的には、本実施の形態における半導体発光装置1において、配線部材10は、半田4が接続する第1接続部材として第2金属層11bを含む配線本体11と、配線本体11の上方に位置するブロック部材12とを有しており、ブロック部材12の上面の少なくとも一部がブロック領域10bであり、第1接続部材である第2金属層11bの上面の少なくとも一部が接続領域10aである。
【0109】
このような構成の半導体発光装置1は、配線部材210を備える基台200を用いて作製することができる。具体的には、半田4に対する接触角が90度より小さい接続領域10cと半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bとを上面に含む配線部材210を備える基台200を用いることで、半田4を介して半導体レーザバー3を配線部材210に接合することができる。
【0110】
本実施の形態では、基台200に予め半田4が形成された半田付き基台201を用いて、半導体レーザバー3を配線部材210に接合している。具体的には、接続領域10cとブロック領域10bとを上面に含む配線部材210とこの配線部材210の接続領域10cに配置された半田4とを備える半田付き基台201を用いて、半導体レーザバー3を半田4を介して配線部材210に接合している。
【0111】
そして、基台200又は半田付き基台201を用いて半導体レーザバー3を実装する際、溶融して液状になった半田4によって、基台200又は半田付き基台201の配線部材210と半導体レーザバー3とが接合される。
【0112】
このとき、本実施の形態では、半導体レーザバー3の長手方向において、半田4が接続される接続領域10aの側方に、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10b(ブロック部材12の上面)が存在している。つまり、接続領域10aの側方には、半田4に対して濡れ性が低いブロック領域10bが存在している。
【0113】
これにより、溶融して液状になった半田4が半導体レーザバー3で押さえ付けられて広がっていってブロック領域10bに到達したときに、液状の半田4は、半田4に対する濡れ性が低いブロック領域10bではじかれることになる。つまり、半導体レーザバー3の長手方向に広がる液状の半田4をブロック領域10bではじくことができる。これにより、液状の半田4が半導体レーザバー3の長手方向に広がることを抑制できる。したがって、半導体レーザバー3の側面S3から外側に液状の半田4がはみ出して延伸することを抑制できる。この結果、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着することで側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる。
【0114】
また、本実施の形態において、ブロック領域10bではじかれた半田4は、半導体レーザバー3のリア端面S2からはみ出すことになる。これにより、半田4の後方部分にリア側延伸部4aが形成されることになる。半導体レーザバー3のリア端面S2には、半田4に対して濡れ性の低い材料からなるリア端面コート膜が形成されている。このため、このリア側延伸部4aは、半導体レーザバー3の側面S3には接しない。したがって、半導体レーザバー3のリア端面S2からはみ出した半田4が側面S3に回り込んで側面S3のpn接合が短絡することを抑制できる。
【0115】
さらに、半導体レーザバー3のリア端面S2から半田4がはみ出してリア側延伸部4aが形成されることで、半田4が外気に触れる面積が大きくなるので、半導体レーザバー3で発生する熱を後方側から効率的に放熱させることができる。
【0116】
また、本実施の形態における半導体発光装置1において、ブロック領域10bは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの両外側の各々に存在している。つまり、上面視において、半田4が接続される接続領域10aは、一対のブロック領域10bの間に存在している。具体的には、接続領域10aは、上面がブロック領域10bである一対のブロック部材12の間に位置している。同様に、基台200又は半田付き基台201において、半田4が配置される接続領域10cは、一対のブロック領域10b(ブロック部材12)の間に存在している。
【0117】
この構成により、一対のブロック領域10b(ブロック部材12)が、半田4が形成されていない部位として、半導体レーザバー3の長手方向の両端部付近に存在させることができる。これにより、半田4の中央部付近から半導体レーザバー3の一対の側面S3の各々に向かって広がった液状の半田4が、半田4の端部付近の広がりに影響を及ぼすことを抑制できる。したがって、液状の半田4が半導体レーザバー3の長手方向に広がることを一層抑制することができる。特に、本実施の形態のように、ブロック領域10b(ブロック部材12)を1つではなく複数設けることで、その効果が一層大きくなる。
【0118】
また、本実施の形態における半導体発光装置1において、ブロック領域10bは、上面視で、半導体レーザバー3の直下の部分からリア端面S2側の外方に延伸しており、また、半導体レーザバー3の側面S3におけるリア端面S2側の端部は、上面視で、ブロック領域に重なっている。
【0119】
この構成により、加熱溶融して液状になった半田4は、半導体レーザバー3の長手方向に広がろうとしても、半導体レーザバー3の側面S3に到達しにくくなる。これにより、半導体レーザバー3のリア端面S2からはみ出した半田4が半導体レーザバー3の側面S3まで回り込むことを効果的に抑制することができる。
【0120】
また、本実施の形態における半導体発光装置1では、図3Aに示すように、半田4と半導体レーザバー3との界面の幅W1が、半田4と配線部材10との界面の幅W2よりも大きくなっている。
【0121】
この構成により、半導体レーザバー3にブロック部材12を設ける場合と比べて、半導体発光装置1を小型化できるとともに、半導体レーザバー3等の部品の取り扱いが容易になる。
【0122】
また、本実施の形態における半導体発光装置1では、図5に示すように、半導体レーザバー3の下面外端とブロック領域10bの内端(ブロック部材12の上面内端)とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ1は、45度未満になっている。
【0123】
この構成により、基台200又は半田付き基台201を用いて半導体レーザバー3を実装する際に、加熱により溶融した半田4がブロック部材12からはみ出すことを抑制できる。
【0124】
また、本実施の形態における半導体発光装置1では、図5に示すように、ブロック部材12の下面内端と複数の利得領域のうちブロック部材12に最も近い利得領域3cの外端とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ2は、45度未満になっている。
【0125】
この構成により、最も外側に位置する利得領域3cからの放熱を十分に行うことができる。つまり、最も外側に位置する利得領域3cの熱を、他の利得領域3cと遜色なく放熱させることができる。
【0126】
(実施の形態1の変形例1)
次に、実施の形態1の変形例1について、図10A図10Dを用いて説明する。図10Aは、実施の形態1の変形例1に係る半導体発光装置1Aの上面図である。図10Bは、図10AのXB-XB線における断面図であり、図10Cは、図10AのXC-XC線における断面図であり、図10Dは、図10AのXD-XD線における断面図である。
【0127】
上記実施の形態1に係る半導体発光装置1では、半田付き基台201における配線部材210と半導体レーザバー3とを半田4によって接合する際、配線部材210の第3金属層11cのうちの半田4の下方に位置する部分が合金化して合金化層11c1になった。この結果、半導体発光装置1では、半導体レーザバー3と基台2とを接合する半田4は、配線部材10の配線本体11における第2金属層11bに接続されていた。つまり、上記実施の形態1では、配線本体11の第2金属層11bが半田4に接続される接続部材(第1接続部材)であり、半田4と配線部材10との界面である接続領域10aは、第2金属層11bの上面であった。
【0128】
一方、本変形例に係る半導体発光装置1Aでは、図10A図10Dに示すように、半田付き基台201における配線部材210と半導体レーザバー3とが半田4によって接合される際に、配線部材210の第3金属層11cのうちの半田4の下方に位置する部分が合金化しておらず、残っている。この結果、半導体レーザバー3と基台2Aとを接合するAuSn層である半田4は、配線部材10Aの配線本体11Aにおける第3金属層11cと接続されている。したがって、本変形例において、半導体レーザバー3と基台2Aとを接合する半田4は、配線部材10Aの配線本体11Aにおける第3金属層11cと接続されている。つまり、本変形例では、配線本体11Aの第3金属層11cが半田4に接続される接続部材(第1接続部材)であり、半田4と配線部材10Aとの界面である接続領域10aは、配線部材10Aの第3金属層11cの上面である。具体的には、第3金属層11cは、Au層であるので、接続領域10aは、Auの表面である。半田4としてAuSnではなくSnを使用しない半田を使った場合、第3金属層11cは合金化せずに残ることになる。
【0129】
本変形例でも、ブロック部材12は、Pt層であるので、ブロック領域10bは、Ptの表面である。これにより、接続領域10aとブロック領域10bとの濡れ性の差を容易に実現することができる。また、ブロック領域10bは、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの両外側に位置している。
【0130】
なお、上記以外の構成については、本変形例に係る半導体発光装置1Aと上記実施の形態1に係る半導体発光装置1とは、基本的には同様の構成である。
【0131】
したがって、本変形例に係る半導体発光装置1Aは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様の効果を奏する。例えば、本変形例でも、ブロック領域10bによって半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる等の効果を奏する。
【0132】
なお、本変形例における半導体発光装置1Aでは、半田4の下方に存在する第3金属層11cが全く合金化していないが、これに限らない。例えば、図11に示す半導体発光装置1Bのように、配線部材10Bの配線本体11Bにおける第3金属層11cのうち、半田4の下方に存在する部分の一部が、合金化層11c1になっていてもよい。具体的には、加熱時間を少なく、もしくは加熱温度を低くすることにより、第3金属層11cの厚み方向の半導体レーザバー3側の上層部のみが合金化層11c1になってもよい。図11に示す半導体発光装置1Bでも、半導体レーザバー3と基台2Bとを接合する半田4は、配線部材10Bの配線本体11Bにおける第3金属層11cと接続されている。つまり、半田4と配線部材10Bとの界面である接続領域10aは、半田4と第3金属層11cとの界面である。
【0133】
(実施の形態1の変形例2)
次に、実施の形態1の変形例2について、図12を用いて説明する。図12は、実施の形態1の変形例2に係る半導体発光装置1C及び半導体レーザバー3を実装するための基台200Cの構成を示す図である。図12において、(a)は、半導体レーザバー3を実装する際に用いられる基台200Cの上面図であり、(b)は、本変形例に係る半導体発光装置1Cの上面図であり、(c)は、(b)のc-c線における断面図であり、(d)は、(b)のd-d線における断面図である。なお、図12に示す半導体発光装置1Cにおいて、金ワイヤ6、給電ワイヤ7a及び7bは、省略している。
【0134】
図12の(b)~(c)に示すように、本変形例に係る半導体発光装置1Cは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様に、配線本体11とブロック部材12Cとで構成された配線部材10Cを有する基台2Cと、半導体レーザバー3と、配線部材10Cと半導体レーザバー3とを接合する半田4とを備えている。
【0135】
また、図12の(a)に示すように、本変形例に係る基台200Cは、上記実施の形態1に係る基台200と同様に、配線本体11と一対のブロック部材12Cとで構成された配線部材210Cと、配線部材210Cを支持する支持体20とを備える。
【0136】
上記実施の形態1に係る半導体発光装置1では、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック部材12の内側部分の間隔は、一定になっていたが、本変形例に係る半導体発光装置1Cでは、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック部材12Cの内側部分の間隔が一定になっていない。
【0137】
具体的には、図12に示すように、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック部材12Cの内側部分の間隔は、半導体レーザバー3のフロント端面S1側より半導体レーザバー3のリア端面S2側の方が大きくなっている。このため、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック領域10bの内側部分の間隔は、フロント端面S1側である一方側よりもリア端面S2側である他方側(一方側とは反対側)の方が大きくなっている。
【0138】
また、ブロック部材12C(ブロック領域10b)の内側部分の間隔がこのように変化することで、本変形例における半導体発光装置1Cでは、図12の(b)に示すように、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの幅は、フロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっている。同様に、本変形例における基台200Cでは、図12の(a)に示すように、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10cの幅は、フロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっている。
【0139】
本変形例において、各ブロック部材12Cの上面視形状は台形であり、一対のブロック部材12Cは、台形のテーパ部分(傾斜部分)が互いに対向するように配置されている。したがって、一対のブロック部材12C(ブロック領域10b)の内側部分の間隔は、半導体レーザバー3のフロント端面S1からリア端面S2側に向かって漸次大きくなっている。同様に、接続領域10a及び10cの幅も、半導体レーザバー3のフロント端面S1からリア端面S2側に向かって漸次大きくなっている。
【0140】
なお、上記以外の構成については、本変形例に係る半導体発光装置1Cと上記実施の形態1に係る半導体発光装置1とは、基本的には同様の構成である。
【0141】
したがって、本変形例に係る半導体発光装置1C及び基台200Cは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1及び基台200と同様の効果を奏する。例えば、本変形例においても、ブロック領域10bによって半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる等の効果を奏する。
【0142】
また、本変形例に係る半導体発光装置1C及び基台200Cでは、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック部材12C(ブロック領域10b)の内側部分の間隔が半導体レーザバー3のフロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっている。
【0143】
液状の半田4は、半導体レーザバー3で押さえ付けられて広がったときにブロック領域10bで反射するような力が加わる。このとき、一対のブロック領域10bの内側部分の間隔が一定でない場合には、液状の半田4は、一対のブロック領域10bの内側部分の間隔が広い方に押し広げられることになる。本変形例では、一対のブロック領域10bの内側部分の間隔は、半導体レーザバー3のフロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっている。したがって、半導体レーザバー3で押さえ付けられて広がった液状の半田4は、一対のブロック領域10bの内側部分の間隔が広いリア端面S2側に向けて押し広げられることになる。つまり、半導体レーザバー3の側面S3に向かって進行する成分の液状の半田4の流れの向きを半導体レーザバー3のリア端面S2の方向へと変える効果を促進させることができる。これにより、半導体レーザバー3の長手方向に流動する成分の半田4をさらに効果的に半導体レーザバー3の短手方向に向けて逃がすことができるので、半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを一層抑制できる。
【0144】
また、本変形例に係る半導体発光装置1C及び基台200Cでは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10a及び10cの幅が、半導体レーザバー3のフロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっている。
【0145】
この構成により、接続領域10a及び10cの両外側に存在するブロック領域10bの長手方向の幅を、フロント端面S1側の幅<リア端面S2側の幅の関係を満たすように容易に実現することができる。
【0146】
なお、接続領域10a及び10cの幅を、フロント端面S1側の幅<リア端面S2側の幅の関係を満たすようにすることで、上記実施の形態1のように、半導体レーザバー3を配置する前の半田4の上面視形状が長方形であっても(つまり、溶融前の半田4の長手方向の幅が一定であっても)、液状の半田4がブロック領域10bでブロックされた結果、接続領域10aの長手方向の幅を一対のブロック領域10bの内側部分の幅と同じにすることができる。
【0147】
ただし、基台200に予め半田4を形成する場合、図13に示される半田付き基台201Cのように、半導体レーザバー3の長手方向における半田4の幅を、フロント端面S1側の幅<リア端面S2側の幅の関係を満たすようにするとよい。例えば、半田4の上面視形状を、フロント端面S1側の幅とリア端面S2側の幅とが同じである長方形ではなく、リア端面S2側の幅がフロント端面S1側の幅よりも大きい台形にするとよい。
【0148】
これにより、溶融して液状になった半田4が半導体レーザバー3によって押さえ付けられたときに、半導体レーザバー3の長手方向に流動する半田4を半導体レーザバー3の短手方向に向けてより効果的に逃がすことができる。したがって、半導体レーザバー3の側面S3から半田4がはみ出すことを一層抑制できる。
【0149】
(実施の形態1の変形例3)
次に、実施の形態1の変形例3について、図14を用いて説明する。図14は、実施の形態1の変形例3に係る、半導体発光装置1D、半導体レーザバー3Dを実装するための基台200C、及び、半導体レーザバー3Dの構成を示す図である。図14において、(a)は、本変形例に係る半導体発光装置1Dの上面図であり、(b)は、(a)のb-b線における断面図であり、(c)は、本変形例における基台200の上面図であり、(d)は、本変形例に係る半導体レーザバー3Dをパッド電極5側(p側電極側)から見たときの平面図である。なお、図14に示す半導体発光装置1Dにおいて、金ワイヤ6、給電ワイヤ7a及び7bは、省略している。
【0150】
図14の(a)及び(b)に示すように、本変形例に係る半導体発光装置1Dは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様に、配線本体11及びブロック部材12で構成された配線部材10を有する基台2と、半導体レーザバー3Dと、配線部材10と半導体レーザバー3Dとを接合する半田4とを備えている。なお、図14の(c)に示すように、本変形例に係る基台200は、上記実施の形態1に係る基台200と同じ構成である。
【0151】
上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と本変形例に係る半導体発光装置1Dとは、半導体レーザバー3Dの構成が異なる。具体的には、図14の(b)及び(d)に示すように、本変形例に係る半導体レーザバー3Dは、上記実施の形態1に係る半導体レーザバー3に対して、さらに、基台2と対向する側に、一対のレーザ側ブロック部材8を備えている。
【0152】
一対のレーザ側ブロック部材8は、半導体レーザバー3Dの長手方向におけるパッド電極5の外側両端部に設けられている。具体的には、一対のレーザ側ブロック部材8の一方は、パッド電極5の両端部の一方に積層されており、一対のレーザ側ブロック部材8の他方は、パッド電極5の両端部の他方に積層されている。
【0153】
一対のレーザ側ブロック部材8の各々の表面は、半田4に対する接触角が90度より大きくなっており、ブロック領域10bと同様に、液状の半田4に対する濡れ性が低い。つまり、本変形例における半導体発光装置1Dは、ブロック領域10bを第1ブロック領域とすると、レーザ側ブロック部材8の表面は、第2ブロック領域となる。また、ブロック部材12を第1ブロック部材とすると、レーザ側ブロック部材8は、第2ブロック部材である。一例として、レーザ側ブロック部材8は、Pt層である。
【0154】
レーザ側ブロック部材8は、単一層で構成されていてもよいし、複数層で構成されていてもよい。レーザ側ブロック部材8が複数層で構成されている場合、レーザ側ブロック部材8の最上層をPt層とすることで、レーザ側ブロック部材8の表面の接触角を90度より大きくすることができる。また、レーザ側ブロック部材8は、パッド電極5の一部であってもよい。
【0155】
なお、上記以外の構成については、本変形例に係る半導体発光装置1Dと上記実施の形態1に係る半導体発光装置1とは、基本的には同様の構成である。
【0156】
したがって、本変形例に係る半導体発光装置1Dは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様の効果を奏する。例えば、本変形例においても、ブロック領域10bによって液状の半田4をはじくことができるので、半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制できる等の効果を奏する。
【0157】
また、本変形例に係る半導体発光装置1Dでは、さらに、半導体レーザバー3Dに、半田4に対する接触角が90度より大きい表面を有する一対のレーザ側ブロック部材8が設けられている。
【0158】
この構成により、ブロック部材12(ブロック領域10b)だけではなく、一対のレーザ側ブロック部材8によっても液状の半田4をはじくことができる。これにより、半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを一層抑制できる。したがって、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることをさらに抑制できる。
【0159】
また、図示しないが、一対のレーザ側ブロック部材8の内端間の間隔は、半導体レーザバー3のフロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっているとよい。これにより、半導体レーザバー3の長手方向に流動する半田4を効果的に半導体レーザバー3の短手方向に向けて逃がすことができるので、半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことをさらに抑制できる。
【0160】
なお、本変形例は、以下の実施の形態2、3にも適用することができる。
【0161】
(実施の形態1の変形例4)
次に、実施の形態1の変形例4について、図15を用いて説明する。図15は、実施の形態1の変形例4に係る半導体発光装置1E及び半導体レーザバー3を実装するための基台200Eの構成を示す図である。図15において、(a)は、本変形例に係る基台200Eの上面図であり、(b)は、本変形例に係る半導体発光装置1Eの上面図であり、(c)は、本変形例に係る半導体発光装置1Eの正面図である。なお、図15に示す半導体発光装置1Eにおいて、金ワイヤ6、給電ワイヤ7a及び7bは、省略している。
【0162】
図15の(b)及び(c)に示すように、本変形例に係る半導体発光装置1Eは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様に、配線本体11とブロック部材12Eとで構成された配線部材10Eを有する基台2Eと、半導体レーザバー3と、配線部材10Eと半導体レーザバー3とを接合する半田4とを備えている。
【0163】
また、図15の(a)に示すように、本変形例に係る基台200Eは、上記実施の形態1に係る基台200と同様に、配線本体11と一対のブロック部材12Eとで構成された配線部材210Eと、配線部材210Eを支持する支持体20とを備える。
【0164】
上記実施の形態1に係る半導体発光装置1及び基台200では、一対のブロック部材12は連結されておらず、一対のブロック部材12の各々は分離されて島状に形成されていたが、本変形例に係る半導体発光装置1E及び200Eでは、図15に示すように、一対のブロック部材12Eは、連結部12aによって連結されている。
【0165】
具体的には、連結部12aは、一対のブロック部材12Eにおけるフロント端面S1側の部分を連結している。このため、本変形例では、上面視において、ブロック領域10bは、接続領域10aよりもフロント端面S1側に、連結部12aの上面であるフロント側ブロック領域10b1を含んでいる。連結部12aは、ブロック部材12Eと同じ材料で構成されており、また、ブロック部材12Eと同じ厚さである。したがって、連結部12aの上面であるフロント側ブロック領域10b1は、半田4に対する濡れ性が低くなっている。
【0166】
なお、上記以外の構成については、本変形例に係る半導体発光装置1Eと上記実施の形態1に係る半導体発光装置1とは、基本的には同様の構成である。
【0167】
したがって、本変形例に係る半導体発光装置1Eは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様の効果を奏する。例えば、本変形例でも、ブロック領域10bによって半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる等の効果を奏する。
【0168】
また、本変形例における半導体発光装置1Eでは、ブロック領域10bは、接続領域10aよりもフロント端面S1側に、フロント側ブロック領域10b1を含んでいる。
【0169】
この構成により、液状の半田4を半導体レーザバー3のリア端面S2側に効果的に逃がすことができるので、半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを一層抑制できる。しかも、ブロック領域10bがフロント側ブロック領域10b1を含んでいることで、フロント端面S1から半田4がはみ出すことを抑制できるので、フロント端面S1からはみ出した半田4によって半導体レーザバー3から出射するレーザ光がけられてしまうことを抑制することもできる。
【0170】
なお、本変形例は、以下の実施の形態2、3にも適用することができる。
【0171】
(実施の形態1の変形例5)
次に、実施の形態1の変形例5について、図16を用いて説明する。図16は、実施の形態1の変形例5に係る半導体発光装置1Fの断面図である。なお、図16では、半導体レーザバー3のリッジ部3a及び絶縁膜3bは省略している。
【0172】
図16に示すように、本変形例に係る半導体発光装置1Fは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様に、配線本体11及びブロック部材12で構成された配線部材10を有する基台2と、半導体レーザバー3と、配線部材10と半導体レーザバー3とを接合する半田4とを備えている。
【0173】
上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と本変形例に係る半導体発光装置1Fとは、半導体レーザバー3の形態が異なる。具体的には、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1では、半導体レーザバー3に反りが発生していなかったのに対して、本変形例に係る半導体発光装置1Fでは、半導体レーザバー3に反りが発生している。
【0174】
長尺状の半導体レーザバー3は、長手方向に反りが発生しやすい。特に、本変形例のように、GaN系半導体材料等の窒化物半導体材料によって構成された半導体レーザバー3は、GaAs系半導体材料によって構成された半導体レーザバーと比べて、反りが大きくなる。
【0175】
このため、窒化物半導体材料によって構成された半導体レーザバー3の反りを押さえようとすると、より大きな力を半導体レーザバー3にかけることになり、半導体レーザバー3にダメージを与えてしまう。
【0176】
一方、基台200又は半田付き基台201を用いて半導体レーザバー3を配線部材210に接続する際、半導体レーザバー3の反りを押さえようとして半導体レーザバー3を強く押し込むと、液状の半田4が半導体レーザバー3の側面S3からはみ出しやすくなってしまう。
【0177】
この点、本変形例に係る半導体発光装置1Fでは、配線部材210に、半田4に対する濡れ性が低いブロック領域10bが存在しているので、半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制できる。
【0178】
そこで、図16に示すように、本変形例に係る半導体発光装置1Fでは、半導体レーザバー3を基台2に実装する際に半導体レーザバー3を押さえ付ける力を弱くして、半導体レーザバー3に多少の反りを残した状態で反りを矯正して、半導体レーザバー3と配線部材10とを半田4で接合している。
【0179】
これにより、長手方向の反りが大きくなりやすい窒化物半導体材料によって構成された半導体レーザバー3を用いたとしても、半導体レーザバー3に大きなダメージを与えることなく、半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制することができる。
【0180】
一例として、共振器長が0.9mmで、長手方向の長さ(バー長)が10mmで、基板厚さが100μmのGaN系の半導体レーザバー3を用いた場合、反りを矯正しなかったときの半導体レーザバー3の反り量(端部と中央部との高さの最大差)は、18μm程度である。つまり、押圧前の半導体レーザバー3の反り量は18μmである。この場合、押圧後の反り量が9μm程度となるように半導体レーザバー3に押圧を付与して反りを矯正するとよい。
【0181】
なお、図16では、半導体レーザバー3は、パッド電極5側が凹となるように(つまり上に凸となるように)反っていたが、図17に示される半導体発光装置1Fのように、パッド電極5側が凸となるように(つまり下に凸となるように)反っていてもよい。図16において、半導体レーザバー3の反り量は、図17における半導体レーザバー3の反り量と同等である。
【0182】
また、本変形例は、以下の実施の形態2、3にも適用することができる。
【0183】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る半導体発光装置1Gの構成について、図18図19図20A図20B及び図20Cを用いて説明する。図18は、実施の形態2に係る半導体発光装置1Gの上面図である。図19は、実装の形態2に係る半導体発光装置1Gの正面図である。図20A図20B及び図20Cは、それぞれ、図18のXXA-XXA線、XXB-XXB線及びXXC-XXC線における実施の形態2に係る半導体発光装置1Gの断面図である。
【0184】
図18図20Cに示すように、実施の形態2に係る半導体発光装置1Gは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様に、配線本体11及びブロック部材12Gで構成された配線部材10Gを有する基台2Gと、半導体レーザバー3と、配線部材10Gと半導体レーザバー3とを接合する半田4とを備えている。
【0185】
上記実施の形態1に係る半導体発光装置1では、配線本体11の上に一対のブロック部材12が設けられていた。具体的には、一対のブロック部材12は、配線本体11を構成する複数の金属層のうち半田4が接続される接続部材(第1接続部材)である第2金属層11bに積層された第3金属層11cの上に設けられていた。
【0186】
これに対して、本実施の形態に係る半導体発光装置1Gでは、配線本体11と一対のブロック部材12Gとは、同一面に設けられている。具体的には、配線本体11と一対のブロック部材12Gとは、いずれも支持体20の上面に設けられている。このため、第1配線本体111は、ブロック部材12Gを迂回する形で、半田4と給電ワイヤ7aとの接続領域とをつないでいる。また、基台2Gの面積をできるだけ少なくする望ましい構成においては、第2配線本体112は、第1配線本体111が迂回する方のブロック部材12G近傍においては、半導体レーザバー3に沿った部分に存在しない構成をとることがある。この場合、第2配線本体112と半導体レーザバー3とを架橋する金ワイヤ6は一部平行ではない構成をとる。
【0187】
また、本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、配線本体11を構成する複数の金属層のうち半田4が接続される接続部材(第1接続部材)は第2金属層11bであり、配線部材10Gの第2金属層11bの上面の少なくとも一部が、半田4と配線部材10Gとの界面である接続領域10aになっている。そして、本実施の形態でも、一対のブロック部材12Gは、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの両外側に位置しており、また、一対のブロック部材12Gの上面の少なくとも一部が、ブロック領域10bである。
【0188】
図20Aに示すように、半導体発光装置1Gでは、同一平面に配置された配線本体11とブロック部材12Gとについて、配線本体11の高さが、ブロック部材12Gの高さよりも低くなっている。つまり、ブロック部材12Gの高さは、配線本体11の高さよりも高くなっている。また、配線本体11における第2金属層11bの上面である接続領域10aの高さ位置は、ブロック部材12Gの上面であるブロック領域10bの高さ位置より低い。
【0189】
なお、上記以外の構成については、本実施の形態に係る半導体発光装置1Gと上記実施の形態1に係る半導体発光装置1とは、基本的には同様の構成である。
【0190】
また、本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、半導体レーザバー3を半田4で配線部材10Gに接合する際に、半田4に接触する第3金属層11cが合金化層11c1となって半田4と一体化して配線本体11における半田4の下方部分に第3金属層11cが存在していないが、図21に示すように、半導体レーザバー3が配線部材10Gに接合される前の基台200Gについては、半田4が接続される領域に、配線部材210Gの配線本体211の第3金属層11cが存在している。図21は、半導体レーザバー3が接合される前の基台200Gの構成を示す図である。図21において、(a)は、基台200Gの上面図であり、(b)は、(a)のb-b線における断面図である。
【0191】
図21に示すように、本実施の形態に係る基台200Gは、上記実施の形態1に係る基台200と同様に、配線本体11と一対のブロック部材12Gとで構成された配線部材210Gと、配線部材210Gを支持する支持体20とを備える。
【0192】
また、図22に示すように、本実施の形態における半導体発光装置1Gにおいても、上記実施の形態1と同様に、半導体レーザバー3の下面外端とブロック領域10bの内端(ブロック部材12Gの上面内端)とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ1は、45度未満になっている。さらに、ブロック部材12Gの下面内端と複数の利得領域3cのうちブロック部材12Gに最も近い利得領域3cの外端とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ2も、上記実施の形態1と同様に、45度未満になっている。これにより、上記実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0193】
次に、実施の形態2に係る半導体発光装置1Gの製造方法について説明する。具体的には、半田4によって半導体レーザバー3と基台2Gの配線部材10Gとを接合する方法について説明する。
【0194】
本実施の形態でも、図23に示すように、支持体20に予め半田4が形成された半田付き基台201Gを用いて半導体レーザバー3を実装している。図23は、実施の形態2に係る半田付き基台201Gの構成を示す図である。図23において、(a)は、半田付き基台201Gの上面図であり、(b)は、(a)のb-b線における断面図である。
【0195】
図23に示すように、本実施の形態に係る半田付き基台201Gは、図21に示される基台200Gに半田4が配置された構成になっている。具体的には、半田付き基台201Gは、配線本体211とブロック部材1G2とで構成された配線部材210Gが形成された直方体の支持体20(基台)と、配線部材210Gの上面に配置された半田4とを備える。配線部材210Gの上面は、半田4との界面である接続領域10cである。配線部材210Gの配線本体211と一対のブロック部材12Gとは、同一面に設けられている。
【0196】
そして、図23に示される半田付き基台201Gを用いて半導体発光装置1Gを製造する際、まず、図24に示すようにして、半田付き基台201Gを作製する。図24は、実施の形態2に係る半田付き基台201Gを作製する方法を説明するための図である。なお、図24において、左図は、上面図であり、右図は、断面図である。
【0197】
まず、図24の(a)~(c)に示すように、第1工程として、配線部材210Gを有する基台200Gを準備する。具体的には、配線本体211及びブロック部材12Gを含む配線部材210Gが形成された基台200Gを作製する。上記実施の形態1と同様に、この第1工程では、半導体レーザバー3を実装したときに半田4に接続される第1接続部材とブロック部材12Gとを順に形成することで配線部材210Gを形成する。本実施の形態でも、半田4に接続される第1接続部材として第2金属層11bが含まれる配線部材210Gを形成する。
【0198】
具体的には、まず、図24の(a)に示すように、支持体20を準備する。次いで、図24の(b)に示すように、支持体20の上面に、第1金属層11aと第2金属層11bと第3金属層11cとからなる配線本体211を所定の形状で形成する。このとき、配線本体211には、一対のブロック部材12Gを形成するための一対の開口部211aを形成する。次いで、図24の(c)に示すように、支持体20の上面に、一対のブロック部材12Gを形成する。つまり、一対のブロック部材12Gを、配線本体211と同一面に形成する。具体的には、配線本体211に形成された一対の開口部211aの各々に、Pt層であるブロック部材12Gを形成する。このようにして、配線本体211とブロック部材12Gとで構成された配線部材210Gが形成された基台200Gを作製することができる。
【0199】
次に、図24の(d)に示すように、第2工程として、基台200Gの配線部材210Gの上面に所定形状の半田4を配置する。具体的には、半田4は、配線本体211の第3金属層11c(接続領域10c)の上に形成されている。一例として、半田4は、矩形板状であり、上面視形状が、半導体レーザバー3の長手方向に長尺をなす長方形である。本実施の形態では、AuSn層(Au80%)である半田4を蒸着法により形成した。以上により、配線本体211の上面に半田4が形成された半田付き基台201Gが完成する。
【0200】
次に、図25に示すように、第3工程として、半田付き基台201Gに半導体レーザバー3を実装する。図25は、半田付き基台201Gに半導体レーザバー3を実装する方法を説明するための図である。なお、図25において、左図は、上面図であり、右図は、断面図である。
【0201】
第3工程では、上記実施の形態1と同様に、まず、図25の(a)に示すように、半田付き基台201Gの半田4の上に半導体レーザバー3をジャンクションダウンで配置し、次いで、図25の(b)に示すように、半導体レーザバー3を押さえ付けながら加熱して半田4を溶融させる。その後、溶融して液状になった半田4が硬化することで、半田4によって半導体レーザバー3を基台2Gに接合することができる。一例として、上記実施の形態1と同様に、半田付き基台201Gを250℃まで加熱し、その後、半田付き基台201Gに半導体レーザバー3をジャンクションダウンで配置し、半田付き基台201Gの加熱温度を320℃として10秒保持し、その後、降温する。その後、図25の(c)に示すように、金ワイヤ6と給電ワイヤ7a及び7bとをワイヤボンディングする。これにより、半導体発光装置1Gが完成する。
【0202】
この第3工程では、図25の(b)に示すように、溶融して液状になった半田4は、半導体レーザバー3で押し付けられることになるので、液状の半田4は、半導体レーザバー3からの押圧によって半導体レーザバー3と配線部材210Gとの間で押し広げられることになる。このとき、本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、半田4が接続される接続領域10cの両外側に、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bが存在している。これにより、半導体レーザバー3の長手方向に広がる液状の半田4をブロック領域10bではじくことができるので、半導体レーザバー3の側面S3から半田4がはみ出すことを抑制できる。
【0203】
特に、本実施の形態では、半田4が接続される接続領域10cの高さ位置がブロック領域10bの高さ位置より低くなっている。つまり、ブロック領域10bの高さ位置は、接続領域10cの高さ位置よりも高くなっている。具体的には、一対のブロック部材12Gの厚みが配線本体211の厚みよりも厚くなっている。
【0204】
この構成により、一対のブロック部材12Gの各々の内側の側面によって液状の半田4をせき止めることができ、液状の半田4が半導体レーザバー3の長手方向に広がろうとするときの抵抗力が増加する。これにより、液状の半田4が半導体レーザバー3の長手方向に広がることを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3から半田4がはみ出すことを一層抑制できる。
【0205】
なお、本実施の形態でも、上記実施の形態1と同様に、第3工程において、半田付き基台201Gをヒータ等で加熱しながら半田4の後端部に局所的に加熱用のレーザ光を照射してもよい。また、本実施の形態でも、第3工程において、半田4の下方に位置する第3金属層11cが合金化層11c1になるので、配線部材10Gと半田4との接合強度を向上させることができる。
【0206】
以上説明したように、本実施の形態に係る半導体発光装置1Gは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様に、配線部材10Gを有する基台2Gと、半導体レーザバー3と、配線部材10Gと半導体レーザバー3との間に配置された半田4と、を備えている。そして、配線部材10Gの半導体レーザバー3側の面には、半田4との界面である接続領域10aと、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bとが含まれており、接続領域10aは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における半導体レーザバー3の側面S3の内側に位置しており、ブロック領域10bの少なくとも一部は、上面視において、接続領域10aと半導体レーザバー3の側面S3との間に位置し、半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック領域10bの内側部分は、半導体レーザバー3の側面S3よりも内側に位置している。
【0207】
具体的には、本実施の形態における半導体発光装置1Gにおいて、配線部材10Gは、半田4が接続する第1接続部材として第2金属層11bを含む配線本体11と、配線本体11と同一面に設けられたブロック部材12Gとを有しており、ブロック部材12Gの上面の少なくとも一部がブロック領域10bであり、第1接続部材である第2金属層11bの上面の少なくとも一部が接続領域10aである。
【0208】
ここで、ブロック部材12Gの材料としてPtを用いているが、ブロック部材12Gの材料は導電性材料に限らない。ブロック部材12Gの材料は、SiOxやNiOx等の絶縁性材料であってもよい。
【0209】
このような構成の半導体発光装置1Gは、配線部材210Gを備える基台200Gを用いて作製することができる。本実施の形態では、上記のように、基台200Gに予め半田4が形成された半田付き基台201Gを用いて、半導体レーザバー3を半田4を介して配線部材210Gに接合している。
【0210】
そして、基台200G又は半田付き基台201Gを用いて半導体レーザバー3を実装する際、溶融して液状になった半田4によって、基台200G又は半田付き基台201Gの配線部材210Gと半導体レーザバー3とが接合される。
【0211】
このとき、本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、半導体レーザバー3の長手方向において、半田4が接続される接続領域10aの側方に、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10b(ブロック部材12Gの上面)が存在している。
【0212】
これにより、溶融して液状になった半田4は、半田4に対する濡れ性が低いブロック領域10bではじかれることになるので、液状の半田4が半導体レーザバー3の長手方向に広がることを抑制できる。したがって、半導体レーザバー3の側面S3から外側に液状の半田4がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる。
【0213】
(実施の形態2の変形例1)
次に、実施の形態2の変形例1について、図26A図26Dを用いて説明する。図26Aは、実施の形態2の変形例1に係る半導体発光装置1Hの上面図である。図26Bは、図26AのXXVIB-XXVIB線における断面図であり、図26Cは、図26AのXXVIC-XXVIC線における断面図であり、図26Dは、図26AのXXVID-XXVID線における断面図である。
【0214】
上記実施の形態2に係る半導体発光装置1Gでは、半田付き基台201Gにおける配線部材210Gと半導体レーザバー3とを半田4によって接合する際、配線部材210Gの第3金属層11cのうちの半田4の下方に位置する部分が合金化して合金化層11c1になった。この結果、半導体発光装置1Gでは、半導体レーザバー3と基台2とを接合する半田4は、配線部材10Gの配線本体11における第2金属層11bに接続されていた。つまり、上記実施の形態2では、配線本体11の第2金属層11bが半田4に接続される接続部材(第1接続部材)であり、半田4と配線部材10Gとの界面である接続領域10aは、第2金属層11bの上面であった。
【0215】
一方、本変形例に係る半導体発光装置1Hでは、図26A図26Dに示すように、配線部材10Hと半導体レーザバー3とが半田4によって接合される際に、配線部材10Hの第3金属層11cのうちの半田4の下方に位置する部分が合金化しておらず、残っている。この結果、半導体レーザバー3と基台2Hとを接合するAuSn層である半田4は、配線部材10Hの配線本体11Hにおける第3金属層11cと接続されている。したがって、本変形例において、半導体レーザバー3と基台2Hとを接合する半田4は、配線部材10Hの配線本体11Hにおける第3金属層11cと接続されている。つまり、本変形例では、配線本体11Hの第3金属層11cが半田4に接続される接続部材(第1接続部材)であり、半田4と配線部材10Hとの界面である接続領域10aは、配線部材10Hの第3金属層11cの上面である。具体的には、第3金属層11cは、Au層であるので、接続領域10aは、Auの表面である。
【0216】
本変形例でも、ブロック部材12Hは、Pt層であるので、ブロック領域10bは、Ptの表面である。これにより、接続領域10aとブロック領域10bとの濡れ性の差を容易に実現することができる。また、ブロック領域10bは、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの両外側に位置している。
【0217】
なお、上記以外の構成については、本変形例に係る半導体発光装置1Hと上記実施の形態2に係る半導体発光装置1Gとは、基本的には同様の構成である。
【0218】
したがって、本変形例に係る半導体発光装置1Hは、上記実施の形態2に係る半導体発光装置1Gと同様の効果を奏する。例えば、本変形例でも、ブロック領域10bによって半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる等の効果を奏する。
【0219】
なお、本変形例における半導体発光装置1Hでは、半田4の下方に存在する第3金属層11cが全く合金化していないが、これに限らない。例えば、配線部材10Hの配線本体11Hにおける第3金属層11cのうち、半田4の下方に存在する部分の一部が、合金化層11c1になっていてもよい。
【0220】
(実施の形態2の変形例2)
次に、実施の形態2の変形例2について、図27を用いて説明する。図27は、実施の形態2の変形例2に係る半導体発光装置1I及び半導体レーザバー3を実装するための基台200Iの構成を示す図である。図27において、(a)は、半導体レーザバー3を実装する際に用いられる基台200Iの上面図であり、(b)は、本変形例に係る半導体発光装置1Iの上面図であり、(c)は、(b)のc-c線における断面図であり、(d)は、(b)のd-d線における断面図である。なお、図27に示す半導体発光装置1Iにおいて、金ワイヤ6、給電ワイヤ7a及び7bは、省略している。
【0221】
図27の(b)~(c)に示すように、本変形例に係る半導体発光装置1Iは、上記実施の形態2に係る半導体発光装置1Gと同様に、配線本体11とブロック部材12Iとで構成された配線部材10Iを有する基台2Iと、半導体レーザバー3と、配線部材10Iと半導体レーザバー3とを接合する半田4とを備えている。
【0222】
また、図27の(a)に示すように、本変形例に係る基台200Iは、上記実施の形態2に係る基台200Gと同様に、配線本体11と一対のブロック部材12Iとで構成された配線部材210Iと、配線部材210Iを支持する支持体20とを備える。
【0223】
上記実施の形態2に係る半導体発光装置1Gでは、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック部材12Gの内側部分の間隔は、一定になっていたが、本変形例に係る半導体発光装置1Iでは、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック部材12Iの内側部分の間隔が一定になっていない。
【0224】
具体的には、図27に示すように、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック部材12Iの内側部分の間隔は、半導体レーザバー3のフロント端面S1側より半導体レーザバー3のリア端面S2側の方が大きくなっている。このため、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック領域10bの内側部分の間隔は、フロント端面S1側である一方側よりもリア端面S2側である他方側(一方側とは反対側)の方が大きくなっている。
【0225】
また、ブロック部材12I(ブロック領域10b)の内側部分の間隔がこのように変化することで、本変形例における半導体発光装置1Iでは、図27の(b)に示すように、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの幅は、フロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっている。同様に、本変形例における基台200Iでは、図27の(a)に示すように、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10cの幅は、フロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっている。
【0226】
本変形例において、各ブロック部材12Iの上面視形状は台形であり、一対のブロック部材12Iは、台形のテーパ部分(傾斜部分)が互いに対向するように配置されている。したがって、一対のブロック部材12I(ブロック領域10b)の内側部分の間隔は、半導体レーザバー3のフロント端面S1からリア端面S2側に向かって漸次大きくなっている。同様に、接続領域10a及び10cの幅も、半導体レーザバー3のフロント端面S1からリア端面S2側に向かって漸次大きくなっている。
【0227】
なお、上記以外の構成については、本変形例に係る半導体発光装置1Iと上記実施の形態2に係る半導体発光装置1Gとは、基本的には同様の構成である。
【0228】
したがって、本変形例に係る半導体発光装置1I及び基台200Iは、上記実施の形態2に係る半導体発光装置1G及び基台200Gと同様の効果を奏する。例えば、本変形例においても、ブロック領域10bによって半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる等の効果を奏する。
【0229】
また、本変形例に係る半導体発光装置1I及び基台200Iでは、半導体レーザバー3の長手方向における一対のブロック部材12I(ブロック領域10b)の内側部分の間隔が半導体レーザバー3のフロント端面S1側よりリア端面S2側の方が大きくなっている。
【0230】
この構成により、半導体レーザバー3で押さえ付けられて広がった液状の半田4は、一対のブロック領域10bの内側部分の間隔が広いリア端面S2側に向けて押し広げられることになる。つまり、半導体レーザバー3の側面S3に向かって進行する液状の半田4の流れの向きを半導体レーザバー3のリア端面S2の方向へと変える効果を促進させることができる。これにより、半導体レーザバー3の長手方向に流動する半田4をさらに効果的に半導体レーザバー3の短手方向に向けて逃がすことができるので、半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを一層抑制できる。
【0231】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る半導体発光装置1Jの構成について、図28図29図30A図30B及び図30Cを用いて説明する。図28は、実施の形態3に係る半導体発光装置1Jの上面図である。図29は、実装の形態3に係る半導体発光装置1Jの正面図である。図30A図30B及び図30Cは、それぞれ、図28のXXXA-XXXA線、XXXB-XXXB線及びXXXC-XXXC線における実施の形態3に係る半導体発光装置1Jの断面図である。
【0232】
図28図30Cに示すように、実施の形態3に係る半導体発光装置1Jは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様に、配線本体11Jとブロック部材12Jとで構成された配線部材10Jを有する基台2Jと、半導体レーザバー3と、配線部材10Jと半導体レーザバー3とを接合する半田4とを備えている。
【0233】
上記実施の形態1に係る半導体発光装置1では、配線本体11の上に一対のブロック部材12が設けられており、ブロック領域10bがブロック部材12の上面であった。具体的には、一対のブロック部材12は、配線本体11を構成する複数の金属層のうちの最上層の第3金属層11cの上に設けられていた。また、上記実施の形態1では、半田4が接続される接続部材(第1接続部材)である第2金属層11bの上面が接続領域10aであり、接続領域10aは、一対のブロック領域10b(ブロック部材12)の間に位置していた。
【0234】
これに対して、本実施の形態に係る半導体発光装置1Jでは、半田4が接続される接続領域10aとブロック領域10bとは、配線部材10Jのブロック部材12Jの上面に含まれている。一例として、ブロック部材12Jは、Pt層の単一層であり、配線本体11Jは、Au層の単一層である。したがって、配線部材10Jは、配線本体11Jとブロック部材12Jとの2層構造である。半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bは、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの両外側に位置している。
【0235】
なお、上記以外の構成については、本実施の形態に係る半導体発光装置1Jと上記実施の形態1に係る半導体発光装置1とは、基本的には同様の構成である。
【0236】
また、本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、半導体レーザバー3を半田4で配線部材10Jに接合する際に、半田4に接触する金属層が合金化層11c1となって半田4と一体化してその金属層が存在していないが、図31に示すように、半導体レーザバー3が配線部材10Jに接合される前の基台200Jについては、半田4が接続される領域に、配線部材210Jの一部として、ブロック部材12Jの上に金属層13が存在している。図31は、半導体レーザバー3が接合される前の基台200Jの構成を示す図である。図31において、(a)は、基台200Jの上面図であり、(b)は、(a)のb-b線における断面図である。
【0237】
図31に示すように、本実施の形態に係る基台200Jは、配線本体11Jとブロック部材12Jと金属層13とで構成された配線部材210Jと、配線部材210Jを支持する支持体20とを備える。
【0238】
また、図32に示すように、本実施の形態における半導体発光装置1Jでは、断面視において、半導体レーザバー3の下面外端と接続領域10aの外端とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ1は、45度未満になっている。
【0239】
この構成により、基台200J又は半田付き基台201Jを用いて半導体レーザバー3を実装する際に、加熱により溶融した半田4がブロック領域10bからはみ出すことを抑制できる。
【0240】
また、接続領域10aの外端と複数の利得領域3cのうち接続領域10aの外端に最も近い利得領域3cの外端とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ2は、45度未満になっている。
【0241】
この構成により、最も外側に位置する利得領域3cからの放熱を十分に行うことができる。つまり、最も外側に位置する利得領域3cの熱を、他の利得領域3cと遜色なく放熱させることができる。
【0242】
次に、実施の形態3に係る半導体発光装置1Jの製造方法について説明する。具体的には、半田4によって半導体レーザバー3と基台2Jの配線部材10Jとを接合する方法について説明する。
【0243】
本実施の形態でも、図33に示すように、支持体20に予め半田4が形成された半田付き基台201Jを用いて半導体レーザバー3を実装している。図33は、実施の形態3に係る半田付き基台201Jの構成を示す図である。図33において、(a)は、半田付き基台201Jの上面図であり、(b)は、(a)のb-b線における断面図である。
【0244】
図33に示すように、本実施の形態に係る半田付き基台201Jは、図31に示される基台200Jに半田4が配置された構成になっている。具体的には、半田付き基台201Jは、配線本体11Jとブロック部材12Jと金属層13とで構成された配線部材210Jが形成された直方体の支持体20(基台)と、配線部材210Jの上面に配置された半田4とを備える。配線部材210Jの上面は、半田4との界面である接続領域10cであり、本実施の形態では、金属層13の上面である。ブロック領域10bは、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10cの両外側に位置している。
【0245】
そして、図33に示される半田付き基台201Jを用いて半導体発光装置1Jを製造する際、まず、図34に示すようにして、半田付き基台201Jを作製する。図34は、実施の形態3に係る半田付き基台201Jを作製する方法を説明するための図である。なお、図34において、左図は、上面図であり、右図は、断面図である。
【0246】
まず、図34の(a)~(c)に示すように、第1工程として、配線部材210Jを有する基台200Jを準備する。具体的には、配線本体11J及びブロック部材12Jを含む配線部材210Jが形成された基台200Jを作製する。この第1工程では、配線本体11Jとブロック部材12Jと金属層13とを順に形成することで配線部材210Jを形成する。本実施の形態において、金属層13は、半田4に接続される接続部材(第2接続部材)である。
【0247】
具体的には、まず、図34の(a)に示すように、支持体20を準備する。次いで、図34の(b)に示すように、支持体20の上面に配線本体11Jを所定の形状で形成する。配線本体11Jは、第1配線本体111と第2配線本体112とで構成されている。次いで、図34の(c)に示すように、配線本体11Jの上面にブロック部材12Jを形成する。次いで、図34の(d)に示すように、ブロック部材12Jの上面に金属層13を形成する。このようにして、配線本体11J、ブロック部材12J及び金属層13を含む配線部材210Jが形成された基台200Jを作製することができる。なお、一例として、配線本体11JはAu層であり、ブロック部材12JはPt層であり、金属層13はAu層である。
【0248】
次に、図34の(e)に示すように、第2工程として、基台200Jの配線部材210Jの上面に所定形状の半田4を配置する。具体的には、半田4は、配線部材10Jの金属層13(接続領域10c)の上に配置される。ここで、金属層13と半田4とは同じマスクを用いて蒸着法で形成することにより、平面視で同じサイズにすることができる。一例として、半田4は、矩形板状であり、上面視形状が、半導体レーザバー3の長手方向に長尺をなす長方形である。また、AuSn層(Au80%)である半田4を蒸着法により形成した。以上により、半田4が形成された半田付き基台201Jが完成する。
【0249】
次に、図35に示すように、第3工程として、半田付き基台201Jに半導体レーザバー3を実装する。図35は、半田付き基台201Jに半導体レーザバー3を実装する方法を説明するための図である。なお、図35において、左図は、上面図であり、右図は、断面図である。
【0250】
第3工程では、上記実施の形態1と同様に、まず、図35の(a)に示すように、半田付き基台201Jの半田4の上に半導体レーザバー3をジャンクションダウンで配置し、次いで、図35の(b)に示すように、半導体レーザバー3を押さえ付けながら加熱して半田4を溶融させる。その後、溶融して液状になった半田4が硬化することで、半田4によって半導体レーザバー3を基台2Jに接合することができる。その後、図35の(c)に示すように、金ワイヤ6と給電ワイヤ7a及び7bとをワイヤボンディングする。これにより、半導体発光装置1Jが完成する。
【0251】
この第3工程では、図35の(b)に示すように、溶融して液状になった半田4は、半導体レーザバー3で押し付けられることになるので、液状の半田4は、半導体レーザバー3からの押圧によって半導体レーザバー3と配線部材10Jとの間で押し広げられることになるが、本実施の形態では、半田4が接続される接続領域10cの両外側が、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bであるので、半導体レーザバー3の側面S3から半田4がはみ出すことを抑制できる。
【0252】
また、本実施の形態では、図35の(a)に示すように、半田付き基台201Jの配線部材210Jの最上層である金属層13に半田4が接して配置されている。そして、金属層13は、Au層であり、半田4は、AnSn層である。このため、第3工程において、半導体レーザバー3を押さえ付けながら半田付き基台201Jを加熱して半田4を溶融させたときに、AuSn層である半田4は、Au層である金属層13の上で溶融することになる。このとき、半田4の組成成分であるSnが金属層13に拡散して金属層13のAuを侵食するので、図35の(b)に示すように、AuとSnとが合金化して金属層13が組成遷移領域であるAuSn層の合金化層11c1になる。つまり、半田4の下方に位置する金属層13の全体がAuSn層の合金化層11c1になる。これにより、半田4との接続部材(第2接続部材)である金属層13と半田4とが組成遷移領域(合金化層11c1)を介して一体化することになる。したがって、半導体発光装置1Jにおける配線部材10Jと半田4との接合強度を向上させることができるので、半導体レーザバー3と基台2とを強固に接合することができる。
【0253】
特にAu層である金属層13が合金化層11c1になる際、金属層13のAuが蒸着等によってPt層であるブロック部材12JのPtと強固に結合している場合には、半田4が溶けながら合金化するので、合金化層11c1が完成した時に、半田4との接続部材である金属層13(Au層)の底面の形状が維持されるので、半田4の広がりが抑制される(いわゆるピン止め効果)が発揮し、半田4が半導体レーザバー3の長手方向に広がることを一層抑制できる。
【0254】
なお、本実施の形態でも、上記実施の形態1と同様に、第3工程において、半田付き基台201Jをヒータ等で加熱しながら半田4の後端部に局所的に加熱用のレーザ光を照射してもよい。
【0255】
以上説明したように、本実施の形態に係る半導体発光装置1Jは、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1と同様に、配線部材10Jを有する基台2Jと、半導体レーザバー3と、配線部材10Jと半導体レーザバー3との間に配置された半田4と、を備えている。そして、配線部材10Jの半導体レーザバー3側の面には、半田4との界面である接続領域10aと、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10bとが含まれており、接続領域10aは、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向における半導体レーザバー3の側面S3の内側に位置しており、ブロック領域10bの少なくとも一部は、上面視において、接続領域10aと半導体レーザバー3の側面S3との間に位置し、半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック領域10bの内側部分は、半導体レーザバー3の側面S3よりも内側に位置している。
【0256】
具体的には、本実施の形態における半導体発光装置1Jにおいて、配線部材10Jは、ブロック部材12Jを有しており、接続領域10aとブロック領域10bとは、ブロック部材12Jの上面に含まれている。
【0257】
このような構成の半導体発光装置1Jは、配線部材210Jを備える基台200Jを用いて作製することができる。本実施の形態では、上記のように、基台200Jに予め半田4が形成された半田付き基台201Jを用いて、半導体レーザバー3を配線部材210Jに接合している。
【0258】
そして、基台200J又は半田付き基台201Jを用いて半導体レーザバー3を実装する際、加熱して液状になった半田4によって、基台200J又は半田付き基台201Jの配線部材210Jと半導体レーザバー3とが接合する。
【0259】
このとき、本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、半導体レーザバー3の長手方向において、半田4が接続される接続領域10aの側方に、半田4に対する接触角が90度より大きいブロック領域10b(ブロック部材12Jの上面)が存在している。
【0260】
これにより、半導体レーザバー3を実装する際、液状の半田4は、半田4に対する濡れ性が低いブロック領域10bではじかれることになるので、液状の半田4が半導体レーザバー3の長手方向に広がることを抑制できる。したがって、半導体レーザバー3の側面S3から外側に液状の半田4がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる。
【0261】
また、本実施の形態における半導体発光装置1Jでは、配線部材10Jがブロック部材12Jを有しており、接続領域10aとブロック領域10bとは、ブロック部材12Jの上面に含まれている。具体的には、本実施の形態では、濡れ性が低いブロック部材12J上に、蒸着等により強固に結合した接続部材である金属層13が形成されている。
【0262】
この構成により、いわゆるピン止め効果が発揮されるので、溶融したときの半田4の広がりを効果的に抑制することができる。
【0263】
(実施の形態3の変形例)
次に、実施の形態3の変形例について、図36A図36Dを用いて説明する。図36Aは、実施の形態3の変形例に係る半導体発光装置1Kの上面図である。図36Bは、図36AのXXXVIB-XXXVIB線における断面図であり、図36Cは、図36AのXXXVIC-XXXVIC線における断面図であり、図36Dは、図36AのXXXVID-XXXVID線における断面図である。
【0264】
上記実施の形態3に係る半導体発光装置1Jでは、半田付き基台201Jにおける配線部材210Jと半導体レーザバー3とを半田4によって接合する際、配線部材210Jの金属層13が合金化して合金化層11c1になった。この結果、半導体発光装置1Jでは、半導体レーザバー3と基台2とを接合する半田4は、配線部材10Jのブロック部材12Jに接続されていた。つまり、上記実施の形態3では、ブロック部材12Jが半田4に接続される接続部材(第2接続部材)であり、半田4と配線部材10Jとの界面である接続領域10aは、ブロック部材12Jの上面であった。
【0265】
一方、本変形例に係る半導体発光装置1Kでは、図36A図36Dに示すように、配線部材10Kと半導体レーザバー3とが半田4によって接合される際に、配線部材10Kの金属層13が合金化しておらず、残っている。つまり、配線部材10Kは、配線本体11Jと、配線本体11Jの上に形成されたブロック部材12Jと、ブロック部材12Jの上に形成された金属層13とを有する。この結果、半導体レーザバー3と基台2Kとを接合するAuSn層である半田4は、配線部材10Kの金属層13と接続されている。つまり、本変形例では、配線部材10Kの金属層13が半田4に接続される接続部材(第2接続部材)であり、半田4と配線部材10Kとの界面である接続領域10aは、配線部材10Kの3金属層13の上面である。具体的には、金属層13は、Au層であるので、接続領域10aは、Auの表面である。半田4としてAuSnではなくSnを使用しない半田を使った場合、第3金属層11cは合金化せずに残ることになる。
【0266】
本変形例でも、ブロック部材12Jは、Pt層であるので、ブロック領域10bは、Ptの表面である。これにより、接続領域10aとブロック領域10bとの濡れ性の差を容易に実現することができる。また、ブロック領域10bは、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの両外側に位置している。
【0267】
なお、上記以外の構成については、本変形例に係る半導体発光装置1Kと上記実施の形態3に係る半導体発光装置1Jとは、基本的には同様の構成である。
【0268】
したがって、本変形例に係る半導体発光装置1Kは、上記実施の形態3に係る半導体発光装置1Jと同様の効果を奏する。例えば、本変形例でも、ブロック領域10bによって半導体レーザバー3の側面S3から液状の半田4がはみ出すことを抑制できるので、半導体レーザバー3の側面S3に半田4が付着して側面S3のpn接合が短絡してリークが生じることを抑制できる等の効果を奏する。
【0269】
また、本変形例に係る半導体発光装置1Kにおいて、配線部材10Kは、ブロック部材12Jと、ブロック部材12Jの上に位置する金属層13(第2接続部材)とを有しており、金属層13の上面の少なくとも一部が、接続領域10aであり、ブロック部材12Jの上面の少なくとも一部が、ブロック領域10bであり、ブロック領域10bは、半導体レーザバー3の長手方向における接続領域10aの両外側に位置している。
【0270】
具体的には、本実施の形態では、濡れ性が低いブロック部材12J上に、蒸着等により強固に結合した第2接続部材である金属層13が形成されている。
【0271】
この構成により、いわゆるピン止め効果が発揮されるので、溶融したときの半田4の広がりを効果的に抑制することができる。
【0272】
また、図37に示すように、本変形例における半導体発光装置1Kでは、断面視において、半導体レーザバー3の下面外端と接続領域10aの外端とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ1は、45度未満になっている。
【0273】
この構成により、加熱により溶融した半田4がブロック領域10bからはみ出すことを抑制できる。
【0274】
また、ブロック領域10bの内端(本変形例では接続領域10aの外端でもある)と複数の利得領域3cのうち接続領域10aの外端に最も近い利得領域3cの外端とを結ぶ直線と、半導体レーザバー3の下面とのなす角θ2は、45度未満になっている。
【0275】
この構成により、最も外側に位置する利得領域3cからの放熱を十分に行うことができる。つまり、最も外側に位置する利得領域3cの熱を、他の利得領域3cと遜色なく放熱させることができる。
【0276】
なお、本変形例における半導体発光装置1Kでは、半田4の下方に存在する金属層13が全く合金化していないが、これに限らない。例えば、金属層13の一部が合金化層11c1になっていてもよい。
【0277】
(変形例)
以上、本開示に係る半導体発光装置等について、実施の形態1~3に基づいて説明したが、本開示は、上記の実施の形態1~3に限定されるものではない。
【0278】
例えば、上記実施の形態1に係る半導体発光装置1及び基台200において、半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック部材12(ブロック領域10b)の外側部分は、半導体レーザバー3の側面S3よりも外側に位置していたが、これに限らない。具体的には、図38及び図39に示される半導体発光装置1Lのように、基台2Lの配線部材10Lにおけるブロック部材12L(ブロック領域10b)については、半導体レーザバー3の長手方向の外側部分が、半導体レーザバー3の側面S3よりも内側に位置していてもよい。同様に、図40に示される基台200Lのように、半導体レーザバー3の長手方向におけるブロック部材12L(ブロック領域10b)の外側部分は、半導体レーザバー3の側面S3よりも内側に位置していてもよい。なお、図38は、変形例1に係る半導体発光装置1Lの上面図であり、図39は、変形例1に係る半導体発光装置1Lの断面図であり、図40は、変形例1に係る基台200Lの上面図である。
【0279】
また、上記実施の形態1において、半田付き基台201に形成された半田4の上面視形状は、切り欠き部が形成されていない長方形であったが、これに限らない。
【0280】
例えば、図41に示される半田付き基台201Mのように、半田4Mの上面視形状は、切り欠き部4Maが形成された長方形であってもよい。つまり、半田4Mには、半田が形成されていない部位が存在していてもよい。半導体レーザバー3を実装するときに、半導体レーザバー3により押しつぶされる半田4Mの多い領域に、言い換えるとリッジ部などの素子高さの高い部分に切り欠き部4Maを形成するとよい。また、切り欠き部4Maは、リア側に向かって半田4の流れが発生するように、半導体レーザバー3のリア端面S2側の長辺からフロント端面S1に向かって長尺状に延在するように形成されているとよい。また、半導体レーザバー3が中央部が上に反った形状を有している場合、半導体レーザバー3の端部ほど押しつぶす量が大きくなるため、切り欠き部4Maは、半田4Mの半導体レーザバー3の長手方向の両端部の各々近傍に形成するとよい。逆に半導体レーザバー3が中央部が下に反った形状を有している場合、切り欠き部4Maは長手方向の中央部に形成するとよい。また、切り欠き部4Maは、半田4Mがリア端面S2側の方向に進むにしたがって幅が大きくなっているとよい。図41に示される構成の半田付き基台201Mを用いて半導体レーザバー3を実装することで、溶融して液状になった半田4Mが半導体レーザバー3のリア端面S2側に向けて流動しやすくなる。これにより、図41に示される半導体発光装置1Mのように、半田4Mの後端部に、半導体レーザバー3のリア端面S2から外側に延伸したリア側延伸部4aを容易に形成することができる。
【0281】
また、図42に示される半田付き基台201Nのように、半田4Nの切り欠き部4Maは、半導体レーザバー3の長手方向に沿って周期的に複数形成されているとよい。特に、半導体レーザバー3を実装するときに、半導体レーザバー3には半田4Mの切り欠き部4Ma以外からの荷重がかかるため、切り欠き部4Maと半導体レーザバー3の利得領域とが重なるように配置されているとよい。半導体レーザバー3における利得領域は周期的に形成されているので、切り欠き部4Maはその周期の整数倍の周期性を持っていると、荷重の負荷が小さくなる。
【0282】
図42に示される構成の半田付き基台201Nを用いて半導体レーザバー3を実装することで、図42に示される半導体発光装置1Nのように、半田4Nに形成されるリア側延伸部4aは、上面視において、半導体レーザバー3の側面S3近傍でリア端面S2側に向かって凹む凹部を有することになる。具体的には、この凹部は、上面視において、半導体レーザバー3の長手方向に沿って周期的に複数形成される。例えば、リア側延伸部4aの後端部に、平面視形状が波型の凹凸部が形成される。また、同様に、この凹部も周期的に形成されていると効果が大きい。
【0283】
また、上記実施の形態1において、半導体発光装置1の基台2の支持体20は、絶縁体であったが、これに限らない。例えば、図43に示される半導体発光装置1Oのように、基台2Oの支持体20Oは、金属ブロック等の導電体であってもよい。これにより、支持体20Oの上面に形成された配線本体11と支持体20Oとが電気的に接続される。この場合、支持体20Oをプレート状の銅ブロックからなるアノード電極とし、さらにプレート状の銅ブロックからなるカソード電極9bを金バンプ9aを介して半導体レーザバー3のn側電極に接合してもよい。このとき、半導体レーザバー3には銅ブロックを実装する時の荷重がかかるため、金バンプ9aは、半導体レーザバー3の利得領域3cと重ならない位置に配置されているとよい。図43に示される半導体発光装置1Oの構成にすることで、金ワイヤ6、給電ワイヤ7a及び7bが不要になるとともに、半導体レーザバー3を一対の銅ブロックで挟むことができるので半導体レーザバー3で発生する熱を効果的に放熱させることができる。
【0284】
なお、図38図43の構成は、実施の形態1の各変形例、実施の形態2、3及び実施の形態2、3の各変形例にも適用することができる。
【0285】
その他、上記実施の形態1~3に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0286】
本開示に係る半導体発光装置は、様々な製品の光源に適用することができる。
【符号の説明】
【0287】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1J、1K、1L、1M、1N、1O 半導体発光装置
2、2A、2B、2C、2E、2G、2H、2I、2J、2K、2L、2O 基台
3、3D 半導体レーザバー
3a リッジ部
3b 絶縁膜
3c 利得領域
4、4M、4N 半田
4a リア側延伸部
4Ma 切り欠き部
5 パッド電極
6 金ワイヤ
7a、7b 給電ワイヤ
8 レーザ側ブロック部材
9a 金バンプ
9b カソード電極
10、10A、10B、10C、10E、10G、10H、10I、10J、10K、10L 配線部材
10a、10c 接続領域
10a1 接続領域延伸部
10b ブロック領域
10b1 フロント側ブロック領域
11、11A、11B、11H、11J 配線本体
11a 第1金属層
11b 第2金属層
11c 第3金属層
11c1 合金化層
12、12C、12E、12G、12H、12I、12J、12L ブロック部材
12a 連結部
13 金属層
20、20O 支持体
111 第1配線本体
112 第2配線本体
200、200C、200E、200G、200I、200J、200L 基台
201、201C、201G、201I、201J、201M、201N 半田付き基台
210、210C、210E、210G、210J、210I 配線部材
211 配線本体
211a 開口部
300 ヒータ
S1 フロント端面
S2 リア端面
S3 側面
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図27
図28
図29
図30A
図30B
図30C
図31
図32
図33
図34
図35
図36A
図36B
図36C
図36D
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43