(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143331
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】機械式駐車場
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
E04H6/42 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050651
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】岡 泰大
(57)【要約】
【課題】入庫が容易な機械式駐車場を提供する。
【解決手段】機械式駐車場は、乗降室において車両が収まるべき所定の収容領域からの車両のはみ出しを検知するための検知部と、収容領域からの車両のはみ出しが検知された場合に当該車両を浮かせてはみ出しが検知されない位置に載置させる載置位置調整機構140と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降室において車両が収まるべき所定の収容領域からの車両のはみ出しを検知するための検知部と、
前記収容領域からの車両のはみ出しが検知された場合に当該車両を浮かせてはみ出しが検知されない位置に載置させる載置位置調整機構と、
を備える機械式駐車場。
【請求項2】
前記載置位置調整機構は、前記収容領域内に進退可能な支持部材を含み、当該支持部材で車両を支持することによって当該車両を浮かせて載置位置を調整する請求項1に記載の機械式駐車場。
【請求項3】
前記支持部材は、車両の前側を支持可能な前側支持部材と、車両の後ろ側を支持可能な後ろ側支持部材と、を含み、
前記前側支持部材および前記後ろ側支持部材は、個別に車両の左右方向の位置を調整可能である請求項2に記載の機械式駐車場。
【請求項4】
前記載置位置調整機構は、前記支持部材によって車両のタイヤを支持する請求項2に記載の機械式駐車場。
【請求項5】
前記載置位置調整機構は、前記支持部材によって車両を持ち上げることにより、当該車両を浮かせる請求項2または3に記載の機械式駐車場。
【請求項6】
前記載置位置調整機構は、昇降可能に床下に配置され、前記収容領域からの車両のはみ出しが検知された場合に少なくとも前記支持部材が床上に上昇して車両の載置位置調整を行う請求項4に記載の機械式駐車場。
【請求項7】
前記乗降室において車両を載置可能であり、当該車両を前記乗降室から格納棚へ移動可能なパレットを備え、
前記載置位置調整機構は、前記乗降室においてパレット上に載置された車両の前記収容領域からのはみ出しが検知された場合に当該車両を前記パレットから浮かせてはみ出しが検知されない前記パレット上の位置に載置させる請求項1から5のいずれかに記載の機械式駐車場。
【請求項8】
前記乗降室において車両を載置可能であり、当該車両を乗降室から格納棚へ移動可能なパレットを備え、
前記載置位置調整機構は、前記パレットを昇降可能な移動機構をさらに含み、
前記載置位置調整機構は、前記乗降室においてパレット上に載置された車両の前記収容領域からのはみ出しが検知された場合に前記支持部材を前記収容領域内に進入させた状態で前記パレットを下降させることによって車両を前記パレットから浮かせてはみ出しが検知されない前記パレット上の位置に載置させる請求項2から4のいずれかに記載の機械式駐車場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車場に関する。
【背景技術】
【0002】
少ないスペースで多数の車両を効率的に駐車できる駐車場として、機械式駐車場が知られている。機械式駐車場は、一般に、利用者が車両に乗車または車両から降車するための乗降室と、地上または地下に設けられた格納棚と、を備える。機械式駐車場はエレベータなどの昇降装置によって乗降室と格納棚との間で車両を移動させる。
【0003】
機械式駐車場に駐車すべく乗降室に停車された車両が所定の収容領域からはみ出している場合、その車両が乗降室から格納棚に移動する際に周囲と干渉する虞がある。そこで機械式駐車場の乗降室には通常、車両が収まるべき所定の収容領域からのはみ出しを検知する検知部が設けられる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の機械式駐車場では、車両が収まるべき所定の収容領域に車両を停車させるために、センサで車の位置を検出し、誘導案内灯により「右へ」、「左へ」といった指示を表示して車両を誘導している。しかしながら、車幅が広い車両の場合、誘導があったとしても収容領域に収めるのが難しく、人によっては何度か入れ直ししてようやく収容領域に収められる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、入庫が容易な機械式駐車場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の機械式駐車場は、乗降室において車両が収まるべき所定の収容領域からの車両のはみ出しを検知するための検知部と、収容領域からの車両のはみ出しが検知された場合に当該車両を浮かせてはみ出しが検知されない位置に載置させる載置位置調整機構と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入庫が容易な機械式駐車場を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係る機械式駐車場の断面図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、乗降室に配置されたパレット32とその周辺を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)~(f)は、載置位置調整機構による載置位置調整を時系列で説明する図である。
【
図6】
図1の制御装置の機能および構成を示すブロック図である。
【
図7】車両を駐車する際の機械式駐車場における一連の処理を示すフローチャートである。
【
図8】格納処理時のはみ出し検知処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9(a)~(c)は、第1の実施の形態の第1の変形例に係る載置位置調整機構を説明する図である。
【
図10】
図10(a)、(b)は、第1の実施の形態の第2の変形例に係る載置位置調整機構を説明する図である。
【
図11】
図11(a)~(c)は、第1の実施の形態の第3の変形例に係る載置位置調整機構を説明する図である。
【
図12】
図12(a)、(b)は、第1の実施の形態の第4の変形例に係る載置位置調整機構を説明する図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る機械式駐車場の乗降室の平面図である。
【
図15】
図15(a)、(b)は、載置位置調整機構による載置位置調整を説明するための図である。
【
図16】パレット上における車両の位置に基づく載置位置調整について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る機械式駐車場10の正面図である。機械式駐車場10は、地上に設けられた建物104の地下に駐車室が設けられた地下式の機械式駐車場である。なお、機械式駐車場10は、駐車室が建物104の中に設けられた地上式の機械式駐車場であってもよい。
【0013】
機械式駐車場10は、乗降室12と、地下1階の駐車室であるB1F格納棚14と、地下2階の駐車室であるB2F格納棚16と、地下3階の駐車室であるB3F格納棚18と、複数のパレット32と、第1移載装置56と、複数の第2移載装置58と、リフトフレーム88と、断面が略矩形の昇降路96に沿って支柱として設けられた2本または4本のマスト90と、昇降装置94と、乗降室12の外側に設けられる操作盤28と、操作盤28と接続される制御装置30と、を備える。
【0014】
機械式駐車場10は、パレット32を用いたパレット式の駐車場である。パレット32は、平板状の部材であり、車両20が載置される上面32aは略矩形である。このパレット式の機械式駐車場10は、昇降装置94を用いて車両20が搭載された状態のパレット32を昇降させたり、あるいは第1移載装置56や第2移載装置58を使用して面方向に移動させたりすることにより、格納棚に車両20を駐車させる構成とされている。
【0015】
機械式駐車場10へ車両20を入れたり機械式駐車場10から車両20を取り出したりするための乗降室12は、建物104内に設けられている。乗降室12は昇降路96の上端に設けられる。乗降室12と昇降路96とは、パレット32が通過できる程度の大きさの開口26を介して連結される。昇降路96は、鉛直方向(Z方向)に沿って設けられる。昇降路96は、B1F格納棚14、B2F格納棚16、B3F格納棚18のそれぞれと連通する。
【0016】
リフトフレーム88は、平面視で略矩形であり、2本または4本のマスト90に昇降自在に支持される。昇降装置94は、昇降路96の下端に設置され、昇降路96に沿ってリフトフレーム88を昇降させる。なお、リフトフレーム88、2本または4本のマスト90、および昇降装置94には、本出願人が先に出願した特開2009-197417号公報に記載のリフトフレーム、2本または4本のマスト、昇降装置、をそれぞれ適用することができる。
【0017】
B1F格納棚14、B2F格納棚16、B3F格納棚18はそれぞれ複数の駐車スペースを含む。各駐車スペースは、パレット32を収容可能に構成される。駐車スペースは、パレットとともに車両20が駐車されうる1駐車領域(駐車の1単位)である。
【0018】
第1移載装置56は、リフトフレーム88の上部に設けられ、パレット32をX方向に移動させる。マスト90が2本の場合、第1移載装置56は、さらにパレット32をY方向へ移動させる。第1移載装置56により、パレットは、昇降路96と各格納棚との間を移動する。第2移載装置58は各駐車スペースに設けられており、パレット32をX方向またはY方向に移動させる。第2移載装置58により、パレット32は駐車スペースの間を移動する。第1移載装置56および第2移載装置58には、本出願人が先に出願した特公平7-29681号公報に記載の搬送装置を適用することができる。
【0019】
操作盤28は、ドライバなどの機械式駐車場10の利用者または機械式駐車場10の管理者に対するユーザインタフェースとしての機能を有する。操作盤28はタッチパネルを有する。操作盤28は、タッチパネルに入力された操作に応じて制御装置30に制御信号を送信するとともに、制御装置30からの制御信号を受信してタッチパネルに必要な情報を表示させる。
【0020】
制御装置30は、機械式駐車場10を統括的に制御する。例えば制御装置30は、操作盤28に入力された操作にしたがって車両の入出庫を制御する。
【0021】
図2は、乗降室12の平面図である。
図3は、乗降室12の斜視図である。乗降室12は平面視で略矩形であり、以下、X方向を乗降室12の左右方向、Y方向を乗降室12の前後方向とする。前後方向は車両が外部から乗降室12に進入する方向である。特に、入出庫口12bから乗降室12内を前後方向に見て、奥側を前、手前側(すなわち入出庫口12bが設けられている側)を後ろ、左側を左、右側を右とする
【0022】
乗降室12は、特に限定されないが図示の例では略直方体空間を囲む部屋であり、床12gと、天井12cと、四方の壁部12wと、乗降室扉24と、を含む。一方の壁部12wには入出庫口12bが形成されている。入出庫口12bには開閉可能な乗降室扉24が設けられる。
【0023】
床12gには、開口26が形成されている。開口26は、例えば平面視で略矩形状を有する。開口26は、平面視でパレット32に対して前後方向にも左右方向にも大きく形成されている。開口26の内側には、乗降室12に配置されたパレット32を環囲するように額縁部130が設けられる。額縁部130は、平面視において、開口26とパレット32との隙間を概ね塞ぐ。別の言い方をすると、額縁部130は、パレット32が通過できる程度の大きさのパレット開口34を定める。額縁部130によってパレット開口34を定めることで、パレット開口34を精度よく形成できる。
【0024】
額縁部130は、前固定額縁部131と、後ろ固定額縁部132と、左固定額縁部133と、右固定額縁部134と、を含む。特に限定されないが、これらは板状の部材である。
【0025】
前固定額縁部131は、開口26の周面と、乗降室12に配置されたパレット32とが前後方向に対向する2つの隙間のうちの前側の隙間41を平面視で概ね塞ぐようにX方向に延在する。後ろ固定額縁部132は、開口26の周面と、乗降室12に配置されたパレット32とが前後方向に対向する2つの隙間のうちの後ろ側の隙間42を平面視で概ね塞ぐようにX方向に延在する。前固定額縁部131および後ろ固定額縁部132は平面視でX方向に長い長方形状である。
【0026】
左固定額縁部133は、開口26の周面と、乗降室12に配置されたパレット32とが左右方向に対向する2つの隙間のうちの左側の隙間43を平面視で概ね塞ぐようにY方向に延在する。右固定額縁部134は、開口26の周面と、乗降室12に配置されたパレット32とが左右方向に対向する2つの隙間のうちの右側の隙間44を平面視で概ね塞ぐようにY方向に延在する。左固定額縁部133および右固定額縁部134は平面視でY方向に長い長方形状である。
【0027】
固定額縁部131,132,133,134の上面131a,132a,133a,134aは平坦であり、パレット32の上面32aや乗降室12の床12gの上面(すなわち床面)12hと実質的に同じ高さである。固定額縁部131,132,133,134の上面131a,132a,133a,134aは、乗降室12の床面の一部を構成していると捉えることもできる。
【0028】
機械式駐車場10はさらに、左はみ出しセンサ36と、右はみ出しセンサ38と、載置位置調整機構140と、を備える。
【0029】
左はみ出しセンサ36は、左検知面50からの車両のはみ出しを検知するためのセンサである。左はみ出しセンサ36は、例えば図示のように乗降室12の天井12cに取り付けられる。左はみ出しセンサ36は、例えば、所定の波長のレーザ光を発する投光部(不図示)と、その波長と同等の波長の光を検知するよう構成された受光部(不図示)と、を含む。投光部は、YZ平面に平行な左検知面50内にレーザ光を発する。投光部はこのレーザ光の経路をX方向を中心に回転させることによって、左検知面50の全体をレーザ光により走査する。
【0030】
乗降室12に進入しパレット32上で停車した車両の一部が左検知面50からはみ出すすなわち左検知面50を横切る場合を考える。左はみ出しセンサ36の投光部は左検知面50をレーザ光により走査する。そのようなレーザ光の一部は、はみ出している車両の一部によって反射される。反射されたレーザ光の一部は左はみ出しセンサ36に戻る。左はみ出しセンサ36の受光部はそのようにして戻ってきた反射光を検知し、左はみ出しセンサ36は制御装置30に検知結果を送信する。
【0031】
右はみ出しセンサ38は、右検知面64からの車両のはみ出しを検知するためのセンサであり、左はみ出しセンサ36と同様に構成される。
【0032】
左はみ出しセンサ36の左検知面50と右はみ出しセンサ38の右検知面64とで挟まれる領域が収容領域48である。パレット32を移動させると車両がずれる虞がある。そのため、より確実にパレット32からの車両のはみ出しを防止するために、収容領域48は図示の例のようにパレットの大きさよりも小さく設定されてもよい。つまり、はみ出しセンサ36,38は、検知面50,64がパレット32の左端、右端の長辺よりも内側(すなわちY方向におけるパレット32の中央側)を通るように設けられてもよい。いずれにせよ、収容領域48はパレット32の大きさを基に設定される。
【0033】
載置位置調整機構140は、収容領域48からのはみ出しが検知される場合、制御装置30からの制御信号に基づいて、車両の載置位置調整を行う。載置位置調整とは、収容領域48からはみ出している車両を一旦浮かせ、収容領域48からはみ出さない位置に載置させることをいう。車両を浮かせるとは、車両をパレット32に対して少なくともZ方向に相対的に移動させることによって車両をパレットから離す(すなわち車両がパレット32に接触しない状態にする)ことをいう。
【0034】
本実施の形態では、載置位置調整機構140が車両を支持するとともにパレット32を下降させることによって車両をパレット32から浮かせ、収容領域48からはみ出さない位置に車両を載置する。言い換えると、載置位置調整機構140が車両を支持するとともにパレット32を下降させることによって、車両をパレット32から離して車両とパレット32との相対位置を調整し、収容領域48からはみ出さない位置に車両を載置する。また、載置位置調整機構140は、特に限定しないが、車両を支持する際は車両のタイヤを支持するものとする。この場合、車両が傷つくことを抑止できる。
【0035】
図4(a)、(b)は、乗降室12に配置されたパレット32とその周辺を示す斜視図である。
図4(a)では、パレット32は上昇位置にあり、
図4(b)では、パレット32は第1下降位置にある。上昇位置は、車両をパレット32に乗り入れるときのパレット32の高さ位置である。第1下降位置については後述する。
【0036】
載置位置調整機構140は、それぞれ車両の左前、左後ろ、右前、右後ろを支持するための4つの車両支持部142と、4つの車両支持部142のそれぞれに対応して設けられる4つの駆動部144と、パレット32を昇降させるための昇降装置94(
図1参照)と、を含む。昇降装置94は、
図1を参照して説明したように、パレット32を格納棚に移動させるための昇降装置である。つまり、パレット32を格納棚に移動させるための昇降装置94が、載置位置調整機構140の昇降装置を兼ねている。車両支持部142および駆動部144は、左固定額縁部133および右固定額縁部134の下に配置される。なお、左固定額縁部133および右固定額縁部134に、車両支持部142および駆動部144の点検や修理を行うための開口を設けてもよい。この場合、点検や修理が容易になる。
【0037】
車両支持部142は、2本の棒状の支持部材146と、2本の支持部材146をZ方向まわりに回動自在に保持する保持部148と、2本の支持部材146を回動させる不図示の回動駆動部と、を含む。回動駆動部は、制御装置30からの制御信号に基づいて、2本の支持部材146を回動させる。これにより、車両支持部142は、退避形態と支持形態の2つの形態をとりうる。退避形態は、
図4(a)に示す形態であり、2本の支持部材146がY方向に一直線状に並んだ形態である。車両支持部142が退避形態をとるとき、車両支持部142はパレット32の昇降に干渉しない。支持形態は、
図4(b)に示す形態であり、2本の支持部材146がいずれもX方向に延在し、Y方向に互いに対して所定の間隔をあけて並んだ形態である。所定の間隔は、例えばタイヤサイズが比較的小さい軽自動車のタイヤの直径よりも狭い間隔であってもよい。
【0038】
駆動部144は、対応する車両支持部142を支持するとともに、X方向に移動させたり、Y方向に移動させたりする。つまり、駆動部144は、対応する車両支持部142ひいては支持部材146を、X方向に移動させたり、Y方向に移動させたりする。4つの駆動部144はそれぞれ、個別に、対応する車両支持部142ひいては支持部材146をX方向および/またはY方向に移動させる。
【0039】
詳しくは、駆動部144は、X方向駆動部150と、Y方向駆動部152と、を含む。X方向駆動部150は、制御装置30からの制御信号に基づいて、車両支持部142をX方向に直線的に動かす。Y方向駆動部152は、制御装置30からの制御信号に基づいて、X方向駆動部150を介して、車両支持部142をY方向に直線的に動かす。X方向駆動部150およびY方向駆動部152は、例えば、LMガイド(Linear Motion Guide)等のリニアガイドとモータとを適宜組み合わせて構成される。
【0040】
図5(a)~(f)は、載置位置調整機構140による載置位置調整を時系列で説明する図である。
図5(a)、(b)、(e)、(f)は乗降室12内のパレット32とその周辺を後方から前後方向に見た図であり、
図5(c)、(d)は乗降室12内のパレット32とその周辺を上方から見た図である。なお、
図5(a)~(f)では駆動部144の表示は省略している。
【0041】
図5(a)では、載置位置調整の開始前であるため、パレット32は上昇位置にある。車両支持部142は、パレット32の昇降に干渉しない退避形態をとっている。
【0042】
図5(b)では、載置位置調整が開始したため、パレット32を第1下降位置に下降させている。第1下降位置は、車両支持部142がタイヤを支持可能な高さ位置である。詳しくは、第1下降位置は、支持部材146が、パレット32よりも上側、かつ、タイヤの上下中央よりも下側に位置する高さ位置である。
【0043】
図5(c)では、車両支持部142をY方向に適宜移動させたことにより、車両支持部142(特にその保持部148)は対応するタイヤとX方向で対向している。なお、載置位置調整機構140は、例えばカメラなどの、車両のタイヤの位置を検出するための適宜のセンサを備えてもよい。
【0044】
図5(d)では、各車両支持部142の2本の支持部材146を回動させて支持形態をとらせ、さらに車両支持部142をパレット32に向かって適宜Y方向に移動させたことにより、各車両支持部142の2本の支持部材146は対応するタイヤとパレット32との間に入り込んでいる。
【0045】
図5(e)では、パレット32を第1下降位置よりも下方の第2下降位置に下降させている。これにより車両は、支持部材146に支持されるとともに、パレット32から浮き上がっている。第2下降位置は、例えばパレット32上のタイヤ止め(不図示)よりも車両が浮き上がる位置であってもよい。この状態で、車両支持部142を左右に移動させ、収容領域48からはみ出さない位置に車両を移動する。例えば左検知面50からの車両のはみ出しが検知されている場合は、はみ出しが検知されなくなるまで車両支持部142を右に移動させればよい。
【0046】
図5(f)では、収容領域48からはみ出さない位置に車両を載置し、車両支持部142を退避形態に戻している。以降は、詳しくは後述するように、格納処理を実行する。
【0047】
図6は、制御装置30の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0048】
制御装置30は、入庫時の制御を行う入庫処理部106と、出庫時の制御を行う出庫処理部108と、駐車状況保持部124と、を備える。入庫処理部106は、誘導処理部110と、載置位置調整処理部112と、格納処理部114と、を含む。
【0049】
駐車状況保持部124は、機械式駐車場10の駐車状況を保持する。特に駐車状況保持部124は、駐車スペースを特定するスペースIDと、その駐車スペースに車両が駐車されているか否かを示す情報と、その駐車スペースに車両が駐車されている場合はその車両を特定する車両IDと、を対応付けて保持する。
【0050】
車両入庫の際、利用者または管理者は乗降室12の外に入庫対象の車両を停車させて降車し、操作盤28に誘導開始の指示を入力する。操作盤28は誘導開始の指示を受け付けると、誘導開始信号を生成して制御装置30に送信する。
【0051】
誘導処理部110は、誘導開始信号を受信すると、不図示の扉開閉機構を制御して乗降室扉24を開き、音声や車両誘導案内灯(不図示)によって入庫対象の車両を乗降室12に配置されたパレット32の上に誘導する。
【0052】
車両が乗降室12に進入しパレット上で停車した後、利用者は降車し、操作盤28に格納開始の指示を入力する。操作盤28は格納開始の指示を受け付けると、格納要求信号を生成して制御装置30に送信する。
【0053】
載置位置調整処理部112は、不図示の扉開閉機構を制御して乗降室扉24を閉じる。また、載置位置調整処理部112は、はみ出しセンサ36,38からの検知結果を確認する。載置位置調整処理部112は、はみ出しが生じていない場合、載置位置調整は行わず、はみ出しが生じている場合、載置位置調整機構140を制御して載置位置調整を行う。
【0054】
格納処理部114は、駐車状況保持部124を参照し、車両が駐車されていない駐車スペースのスペースIDを選択する。格納処理部114は、昇降装置94、第1移載装置56および第2移載装置58を制御し、乗降室12から、選択したスペースIDによって特定される駐車スペースに、車両が載置されたパレット32を移動させる。
【0055】
格納処理部114は、昇降装置94を制御して車両が搭載されたパレット32を乗降室12から下降させる際、はみ出しセンサ36,38からの検知結果を所定の周期(例えば0.1秒周期)で確認する。格納処理部114は、パレット32の下降中にはみ出しが検知されると、パレット32の下降を停止させ、パレット32を乗降室12に戻す。この場合、載置位置調整処理部112が載置位置調整を行い、その後、格納処理部114がパレット32を移動させる。
【0056】
車両出庫の際、利用者は、操作盤28に、出庫対象の車両を特定する車両IDを入力する。操作盤28は入力された車両IDを含む出庫開始信号を生成して制御装置30に送信する。出庫処理部108は出庫開始信号を受けると、昇降装置94、第1移載装置56、第2移載装置58を制御して、出庫開始信号に含まれる車両IDによって特定される車両が搭載されたパレット32を格納棚から乗降室12に移動させる。
【0057】
続いて、以上の構成による機械式駐車場10の動作を説明する。
図7は、機械式駐車場10に車両を駐車する際の機械式駐車場10における一連の処理を示すフローチャートである。
【0058】
利用者は乗降室12の外に入庫対象の車両を停車させて降車し、操作盤28に誘導開始の指示を入力する。操作盤28は、利用者から誘導開始の指示を受け付ける(S10)。制御装置30は、乗降室扉24を開き(S12)、車両の乗降室12への誘導を開始する(S14)。利用者は、誘導にしたがって、乗降室12に配置されたパレット32の上に車両を停車させる。操作盤28は、利用者から格納開始の指示を受け付ける(S16)。制御装置30は、乗降室扉24を閉じ(S18)、はみ出しセンサ36,38からの検知結果に基づいて収容領域48からの車両のはみ出しが生じているか判定する(S20)。はみ出しが生じている場合(S20のY)、制御装置30は載置位置調整を行ってから(S22)、車両が載置されたパレット32を乗降室12から格納棚に移動させる格納処理を開始する(S24)。はみ出しが生じていない場合(S20のN)、制御装置30は載置位置調整を行わずに、格納処理を開始する(S24)。
【0059】
図8は、格納処理において車両が載置されたパレット32を乗降室12から格納棚に移動させる際のはみ出し検知処理を示すフローチャートである。
図8の処理は、パレット32が下降を開始すると実行される。パレット32の下降が終了している場合(S30のN)、はみ出し検知処理は終了する。パレット32が下降中の場合(S30のY)、制御装置30は、はみ出しセンサ36,38からの検知結果に基づいて収容領域48からの車両のはみ出しが生じているか判定する(S32)。はみ出しが生じていない場合(S32のN)、所定の時間待機してから処理をS30に戻す。はみ出しが生じている場合(S32のY)、制御装置30はパレット32を乗降室12に戻し(S34)、載置位置調整を実行し(S36)、処理が終了する。この場合、パレット32の下降が再開されると、
図8の処理が再度実行される。
【0060】
続いて、本実施の形態が奏する効果について説明する。本実施の形態によれば、少なくともパレット32上に車両が収まりさえすれば、収容領域48から車両がはみ出していても、載置位置調整機構140によってすなわち自動ではみ出しが解消される。これにより、車両の入庫、特に車幅が広い車両の入庫が容易になり、利用者の負担が軽減される。また、入庫のしやすさを考慮する必要がなくなるため余裕代を小さくでき、例えば、従来のパレットサイズのまま車幅制限を拡大できる。また、一般に停止精度が低い自動運転車の車幅制限を、手動運転車のそれと同程度にできる。
【0061】
乗降室12に停車させたときには車両が収容領域48からはみ出していなくても、格納処理を開始した後、例えば車両が載ったパレット32の下降を開始したときにはみ出すことがある。この場合、従来の機械式駐車場では、利用者を呼び戻して車両を入れ直しさせていた。しかしながら、通常、車両を入庫した利用者は、格納処理が開始する頃、すなわちパレット32の下降が開始する頃には、乗降室12の周辺から立ち去っており、したがって利用者が戻るまでに時間がかかり、次の利用者の入庫または出庫が長時間にわたって不可能になることがあった。これに対し本実施の形態によれば、格納処理におけるパレット32の下降中に収容領域48から車両がはみ出しても、載置位置調整機構140によってすなわち自動ではみ出しが解消される。これにより、従来の機械式駐車場のように利用者を呼び戻してはみ出しを解消する場合と比べ、次の利用者が入庫または出庫が不可能となる時間を短くできる。また、はみ出しを解消するためにその原因となっている車両の利用者を呼び出す必要がなくなり、利用者の負担が軽減する。
【0062】
本実施の形態によれば、載置位置調整機構140は、床下に配置されるため、載置位置調整機構140が入出庫の障害になることを避けられる。また、車両の衝突などによって載置位置調整機構140が故障することを避けられる。
【0063】
本実施の形態によれば、車両をパレット32から浮かせるための専用の昇降装置を必要としない。詳しくは、本実施の形態では、パレット32を格納棚に移動させるための昇降装置94を用いて、車両をパレット32から浮かせることができる。これにより、載置位置調整機能を有する機械式駐車場10を比較的低コストで実現できる。
【0064】
以上、本発明を第1の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0065】
(第1の実施の形態の第1の変形例)
図9(a)~(c)は、第1の実施の形態の第1の変形例に係る載置位置調整機構を説明する図である。
図9(a)~(c)は、第1の変形例の乗降室12内のパレット32とその周辺を右から左右方向に見た図である。
図9(a)、(b)では、パレット32は第1下降位置にあり、
図9(c)では、パレット32は第2下降位置にある。
図9(a)~(c)では、駆動部144と、車両支持部142の保持部148の表示は省略している。
【0066】
本変形例の車両支持部142は、第1の実施の形態のそれと異なり、支持部材146を1本のみ備える。支持部材146は、図示しない保持部148によって固定的に保持される。支持部材146は、X方向で対向する他の車両支持部142の支持部材146と別体であってもよいし、一体であっても(すなわち繋がっていても)よい。後者の場合、支持部材146は両持ち保持されるため、それを保持する保持部148にかかる負担を低減できる。
【0067】
Y方向における前側の支持部材146は、特に限定されないがX方向に垂直な断面が三角形であり、後ろ側ほど下側に位置する傾斜面146cを有する。Y方向における後ろ側の支持部材146は、特に限定されないがX方向に垂直な断面が三角形であり、前側ほど下側に位置する傾斜面146cを有する。傾斜面146cは、図示の例では平面状であるが、曲面状であってもよい。
【0068】
図9(a)では、車両支持部142は、支持部材146がパレット開口34からY方向に退避した退避位置にある。詳しくは、前側の支持部材146はパレット開口34から前方に退避し、後ろ側の支持部材146はパレット開口34から後方に退避している。車両支持部142が退避位置にあるとき、支持部材146はパレット32の昇降に干渉しない。
【0069】
図9(b)では、車両支持部142は、車両を支持可能な支持位置にある。支持位置は、支持部材146の傾斜面146cをタイヤに押し付けた位置である。詳しくは、Y方向における前側の車両支持部142の支持位置は、その支持部材146の傾斜面146cを車両の前側のタイヤに押し当てた位置であり、Y方向における後ろ側の車両支持部142の支持位置は、その支持部材146の傾斜面146cを車両の後ろ側のタイヤに押し付けた位置である。2つの支持部材146の傾斜面146cを前後からタイヤに押し当てることで、車両を支持できる。
【0070】
図9(c)では、パレット32を第2下降位置に下降させている。これにより、車両は支持部材146に支持されるとともに、パレット32から浮き上がっている。
【0071】
本変形例によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。加えて本変形例によれば、車両支持部142の構造が単純であるため、コストを低減できる。
【0072】
さらなる変形例として、前側および後ろ側の少なくとも一方の支持部材146は、X方向に垂直な断面が円形あるいはその他の形状であってもよく、したがって傾斜面146cを有していなくてもよい。
【0073】
(第1の実施の形態の第2の変形例)
図10(a)、(b)は、第1の実施の形態の第2の変形例に係る載置位置調整機構140を説明する図である。
図10(a)、(b)は、乗降室12内のパレット32とその周辺を示す平面図である。なお、
図10(a)では、パレット32は上昇位置にあり、
図10(b)ではパレット32は第1下降位置にある。
【0074】
保持部148は、2本の支持部材146を支持する。保持部148は、2本の支持部材146のうち、Y方向で対向する他の車両支持部142から遠い側の支持部材146(以下、支持部材146aともいう)を固定的に保持し、当該他の車両支持部142に近い側の支持部材146(以下、支持部材146bという)をZ方向まわりに回転自在に保持する。車両支持部142の図示しない回動駆動部が、制御装置30からの制御信号に基づいて、支持部材146bを回動させる。
【0075】
支持部材146aは、図示の例では、左右方向で対向する他の車両支持部142の支持部材146aと一体になっている、すなわちそれらは繋がっている。この場合、支持部材146aは両持ち保持されるため、それを保持する保持部148にかかる負担を低減できる。なお、支持部材146aは、左右方向で対向する他の車両支持部142の支持部材146aと別体であってもよい、すなわちそれらは繋がっていなくてもよい。
【0076】
図10(a)では、車両支持部142は退避形態をとるとともに、退避位置に退避している。詳しくは、Y方向における前側の2つの車両支持部142の支持部材146aはパレット開口34から前方に退避し、それらの支持部材146bはY方向に延在することによってパレット開口34から左右に退避している。Y方向における後ろ側の2つの車両支持部142の支持部材146aはパレット開口34から後方に退避し、それらの支持部材146bはY方向に延在することによってパレット開口34から左右に退避している。このとき車両支持部142の支持部材146a,146bはパレット32の昇降に干渉しない。したがって、パレット32を第1下降位置に下降させるまでは、車両支持部142を退避位置に退避させておけばよい。
【0077】
図10(b)では、車両支持部142をY方向に適宜移動させたことにより、車両支持部142(特にその保持部148)は対応するタイヤとY方向で対向し、支持部材146aは対応するタイヤに接触している。
【0078】
また
図10(b)では、車両支持部142が対応するタイヤとY方向で対向した後に支持部材146bを回動させたことにより、車両支持部142は支持形態をとっている。詳しくは、支持部材146aおよび支持部材146bがいずれもX方向に延在し、Y方向に互いに対して所定の間隔をあけて並んでいる。この状態でパレット32を第2下降位置に下降させれば、車両をパレット32から浮かせることができる。
【0079】
(第1の実施の形態の第3の変形例)
図11(a)~(c)は、
図10(a)~(c)は、第1の実施の形態の第3の変形例に係る載置位置調整機構140を説明する図である。
図11(a)~(c)は、乗降室12内のパレット32とその周辺を示す平面図である。なお、
図11(a)では、パレット32は上昇位置にあり、
図11(b)、(c)では、パレット32は第1下降位置にある。
【0080】
本変形例では、支持部材146aは、Y方向で対向する他の車両支持部142の支持部材146aと一体になっている、すなわちそれらは繋がっている。支持部材146bは、接続部147を介して支持部材146aに保持されている。支持部材146bは特に、Z方向周りに回動自在に保持されている。
【0081】
図11(a)では、車両支持部142は、支持部材146a,146bがパレット開口34からY方向に退避した退避位置にある。詳しくは、Y方向における前側の2つの車両支持部142の支持部材146a,146bはパレット開口34から前方に退避し、Y方向における後ろ側の2つの車両支持部142の支持部材146a,146bはパレット開口34から後方に退避している。このとき車両支持部142の支持部材146a,146bはパレット32の昇降に干渉しない。したがって、パレット32を第1下降位置に下降させるまでは、車両支持部142を退避位置に退避させておけばよい。
【0082】
図11(b)では、Y方向における前側の2つの車両支持部142の支持部材146bをZ方向まわりに回動させてY方向に延在させた上で、当該2つの車両支持部142をY方向に適宜移動させたことにより、支持部材146aが前側の車両のタイヤに接触している。Y方向における後ろ側の2つの車両支持部142についても同様に動かす。
【0083】
図11(c)では、車両支持部142の支持部材146bを回動させたことにより、車両支持部142は支持形態をとっている。詳しくは、支持部材146aおよび支持部材146bがいずれもX方向に延在し、Y方向に互いに対して所定の間隔をあけて並んでいる。この状態でパレット32を第2下降位置に下降させれば、車両をパレット32から浮かせることができる。
【0084】
(第1の実施の形態の第4の変形例)
図12(a)、(b)は、第1の実施の形態の第4の変形例に係る載置位置調整機構140を説明する図である。
図12(a)、(b)は、乗降室12内のパレット32とその周辺を後方から前後方向に見た図である。
【0085】
本変形例の額縁部130は、左可動額縁部135と、右可動額縁部136と、をさらに含む。左可動額縁部135および右可動額縁部136は、特に限定されないが、板状の部材である。左可動額縁部135は、隙間43において左固定額縁部133よりも内側すなわちパレット側に設けられる。右可動額縁部136は、隙間44において右固定額縁部134よりも内側すなわちパレット側に設けられる。
【0086】
可動額縁部135,136はそれぞれ、例えば図示しないヒンジを介して固定額縁部133,134に連結され、Y方向を中心に回動可能である。
【0087】
図12(a)では、額縁部130は車両を乗降室12に乗り入れるときの形態をとっている。詳しくは、可動額縁部135,136の上面135a、136aがパレット32の上面32aと実質的に同じ高さになっている。
【0088】
図12(a)では、額縁部130はパレット32を第1下降位置に下降させるときの形態をとっている。詳しくは、可動額縁部135,136を上側に回動させている。なお、可動額縁部135,136を下側に回動させてもよい。いずれにせよ、
図12(b)では可動額縁部135,136を回動させたことにより、X方向におけるパレット32と可動額縁部135,136との距離Lが、
図12(a)のときよりも長くなっている。
【0089】
ところで、パレット32を第1下降位置に下降させる時点では、収容領域48からの車両のはみ出しが生じている場合がある。したがって、パレット32を第1下降位置に下降させることにより、車両が額縁部130に接触するおそれがある。これに対し本変形例では、パレット32を第1下降位置に下降させる前に可動額縁部135,136を
図12(b)の状態にすることにより、車両と可動額縁部135,136との接触を抑止できる。
【0090】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態の載置位置調整では、車両を支持するとともにパレットを下降させることによって車両をパレットから浮かせた。第2の実施の形態の載置位置調整では、車両を持ち上げることによって車両をパレットから浮かせる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に具体的に説明する。
【0091】
図13は、第2の実施の形態に係る機械式駐車場10の乗降室12の平面図である。
図14は、
図13のA-A線断面図である。
【0092】
開口26は、平面視でパレット32に対して左右方向に大きく形成されている。開口26の周面と、乗降室12に配置されたパレット32とが左右方向に対向する2つの隙間43,44には、それらを平面視で概ね塞ぐようにY方向に延在する額縁部130が設けられる。
【0093】
額縁部130は、左固定額縁部133と、右固定額縁部134と、左可動額縁部135と、右可動額縁部136と、を含む。左固定額縁部133は隙間43において内側すなわちパレット側に設けられ、左可動額縁部135は隙間43において外側すなわち開口26の周面側に設けられる。右固定額縁部134は隙間44において内側すなわちパレット側に設けられ、右可動額縁部136は隙間44において外側すなわち開口26の周面側に設けられる。
【0094】
固定額縁部133,134および可動額縁部135,136はいずれも平面視でY方向に長い長方形状であり、それらの上面133a,134a,135a,136aは平坦であり、パレット32の上面32aや乗降室12の床12gの上面(すなわち床面)12hと実質的に同じ高さである。上面133a,134a,135a,136aは、乗降室12の床面の一部を構成していると捉えることもできる。
【0095】
固定額縁部133,134は、開口26の周面、言い換えると床12gに固定されている。可動額縁部135,136は、詳しくは後述するように、昇降可能である。
図13、14では、可動額縁部135,136が一番下まで下降した状態を示している。
【0096】
なお、額縁部130が可動額縁部135,136のみを含み、固定額縁部を含まない構成も考えられる。この場合、可動額縁部135,136だけで隙間43,44を概ね塞げばよい。
【0097】
載置位置調整機構140は、4つの車両支持部142と、4つの車両支持部142のそれぞれに対応して設けられる4つの駆動部144と、それらを昇降させる2つの昇降装置160と、を含む。すなわち、本実施の形態では、第1の実施の形態とは異なり、専用の昇降装置160を備える。
【0098】
パレット32の左側の2組の車両支持部142および駆動部144は、左可動額縁部135に支持される。パレット32の右側の2組の車両支持部142および駆動部144は、右可動額縁部136に支持される。可動額縁部135,136は、図示の例では、Y方向における内側(すなわちパレット32側)が開いた凹形の断面形状を有しており、その内側に2組の車両支持部142および駆動部144が収容される。
【0099】
昇降装置160は、制御装置30からの制御信号に基づいて、可動額縁部135,136ごと車両支持部142および駆動部144を昇降させる。
【0100】
車両支持部142は、2本の棒状の支持部材146と、2本の支持部材146を保持する保持部148と、を含む。保持部148は、2本の支持部材146を固定的に保持する。2本の支持部材146は、所定の間隔をあけて並列する。
【0101】
駆動部144は、車両支持部142をX方向に移動させたり、Y方向に移動させたり、回動させたりする。詳しくは、駆動部144は、X方向駆動部150と、Y方向駆動部152と、回動駆動部154と、を含む。X方向駆動部150は、制御装置30からの制御信号に基づいて、回動駆動部154を介して、車両支持部142をX方向に直線的に動かす。Y方向駆動部152は、制御装置30からの制御信号に基づいて、回動駆動部154およびX方向駆動部150を介して、車両支持部142をY方向に直線的に動かす。回動駆動部154は、制御装置30からの制御信号に基づいて、車両支持部142をZ方向を中心に回動させる。回動駆動部154は、例えば、モータにより構成される。
【0102】
図15(a)、(b)は、載置位置調整機構140による載置位置調整を説明するための図である。
図15(a)、(b)では、載置位置調整機構140を見やすくするためにパレット32の表示を省略している。また、
図15(a)、(b)では、駆動部144の表示も省略している。
【0103】
図15(a)は、可動額縁部135,136および4つの車両支持部142が下降位置にあるときを示し、
図15(b)は、可動額縁部135,136および4つの車両支持部142が第1上昇位置にあるときを示す。
【0104】
下降位置は、車両をパレット32に乗り入れるときの高さ位置である。下降位置は、第1の実施の形態における上昇位置に対応する。下降位置では、可動額縁部135,136の上面135a,136aが床面と実質的に同じ高さ位置になる。また、下降位置では、車両支持部142の全体が床下に位置する。
【0105】
第1上昇位置は、車両支持部142がタイヤを支持可能な高さ位置である。詳しくは、第1上昇位置は、支持部材146が、固定額縁部133,134やパレット32よりも上側、かつ、タイヤの上下中央よりも下側に位置する高さ位置である。第1上昇位置は、第1の実施の形態の第1下降位置に対応する。
【0106】
図15(b)では、車両支持部142を回動させたことにより、支持部材146はX方向に延在している。車両支持部142をY方向に適宜移動させて車両支持部142を対応するタイヤとX方向で対向させ、さらに車両支持部142をパレット32に向かってX方向に移動させることにより、車両支持部142の2本の支持部材146はタイヤとパレットとの間に入り込む。この状態で可動額縁部135,136および4つの車両支持部142をさらに上昇させると、車両は支持部材146に支持され、パレット32から持ち上がる。
【0107】
車両から持ち上がったら、車両支持部142を左右に移動させ、収容領域48からはみ出さない位置に車両を移動する。可動額縁部135,136および4つの車両支持部142を第1上昇位置まで下降させて、車両をパレット32に載置させる。
【0108】
以降は、それまでと反対の動きで車両支持部142を退避し、可動額縁部135,136および4つの車両支持部142を下降位置に下降させる。
【0109】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。加えて、本実施の形態によれば、額縁部130が可動額縁部135,136だけでなく固定額縁部133,134も含む場合は、少なくとも左右の可動額縁部135,136よりも内側に車両を載置しさえすれば、収容領域48から車両がはみ出していても自動ではみ出しが解消される。これにより、車両の入庫が極めて容易になる。
【0110】
以上、本発明を第2の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0111】
続いて、第1の実施の形態および第2の実施の形態の共通の変形例を説明する。
【0112】
(第1および第2の実施の形態に共通の第1の変形例)
実施の形態では特に言及しなかったが、載置位置調整において、距離センサなどの適宜のセンサを用いてパレット32上の車両の位置を特定し、それに基づいて、パレット32から浮かせた車両をはみ出しが検知されない位置に移動させればよい。
【0113】
図16は、パレット上における車両の位置に基づく載置位置調整について説明する図である。例えば、適宜のセンサによって、Y方向におけるパレット32の中心Cから、左の前輪タイヤ、右の前輪タイヤ、左の後輪タイヤおよび右の後輪タイヤのそれぞれまでの距離L1、L21、L3、L4を検出する。制御装置30は、距離L1=距離L2、距離L3=距離L4となるように、4つの駆動部144のそれぞれを制御すればよい。
【0114】
(第1および第2の実施の形態に共通の第2の変形例)
実施の形態では、車両の左右からのはみ出しを検知し、はみ出しが生じている場合に載置位置調整機構140によって自動ではみ出しを解消する場合について説明したが、これには限定されず、車両の前後からのはみ出しも検知し、前後からのはみ出しが生じている場合に載置位置調整機構140によって自動ではみ出しを解消するようにしてもよい。
【0115】
(第1および第2の実施の形態に共通の第3の変形例)
はみ出しセンサ36,38とは別に、パレット32の下降中のはみ出しを検知するための別のセンサが設けられてもよい。つまり、はみ出しセンサ36,38では、格納開始の指示を受けた直後に実施する載置位置調整のためにはみ出しを検知し、上述の別のセンサでは、下降中のパレット32からの車両のはみ出しを検知すればよい。
【0116】
(第1および第2の実施の形態に共通の第4の変形例)
実施の形態では、機械式駐車場10が検知部としてのはみ出しセンサ36,38を備え、それらからの検知結果に基づいて収容領域48からの車両のはみ出しが生じているか判定する場合について説明したが、これには限定されない。機械式駐車場10は、はみ出しセンサの代わりに例えばAIカメラを備え、AIカメラによって乗降室12を撮像し、得られた画像から、収容領域48からの車両のはみ出しが生じているか判定してもよい。
【0117】
(第1および第2の実施の形態に共通の第5の変形例)
AGV(Automatic Guided Vehicle)などの自動搬送車が車両を乗降室12に対して入出庫させる場合にも、本実施の形態の技術思想を適用できる。
【0118】
(第1および第2の実施の形態に共通の第6の変形例)
機械式駐車場10がパレット式の機械式駐車場である場合について説明したが、これに限られず、本実施の形態の技術的思想は乗降室12で所定のセンサによってはみ出し検知が行われる任意の機械式駐車場に適用できる。
【0119】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0120】
10 機械式駐車場、 12 乗降室、 36 左はみ出しセンサ、 38 右はみ出しセンサ、 140 載置位置調整機構、 142 車両支持部、 146 支持部材。