(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143341
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】カテーテルおよびカテーテルの動作方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20230928BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20230928BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/00 630
A61M25/092 510
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050664
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】小磯 智春
(72)【発明者】
【氏名】星田 綾季
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK47
4C160KL03
4C160MM38
4C267AA05
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB09
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB40
4C267BB42
4C267BB52
4C267CC19
4C267EE01
4C267HH08
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】利便性を向上させることが可能なカテーテルを提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係るカテーテルは、先端を含む可撓領域と、可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトと、シャフト内において軸方向に沿って延在しており、可撓領域を湾曲させる際に用いられる1または複数のワイヤと、を備えている。上記軸方向に直交する断面での基端領域の断面視において、ワイヤの中心点とシャフトの中心点とを含み、かつ、上記軸方向に平行な平面を仮想面とした場合に、ワイヤを用いて可撓領域が湾曲している状態において、可撓領域における先端が、仮想面から外れて位置する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端を含む可撓領域と、前記可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトと、
前記シャフト内において軸方向に沿って延在しており、前記可撓領域を湾曲させる際に用いられる1または複数のワイヤと
を備え、
前記軸方向に直交する断面での前記基端領域の断面視において、前記ワイヤの中心点と前記シャフトの中心点とを含み、かつ、前記軸方向に平行な平面を、仮想面とした場合に、
前記ワイヤを用いて前記可撓領域が湾曲している状態において、
前記可撓領域における前記先端が、前記仮想面から外れて位置する
カテーテル。
【請求項2】
前記シャフトの基端側に配置されたハンドルを更に備え、
前記ハンドルが、
前記ワイヤを用いて前記可撓領域を湾曲させる際に操作される第1操作部と、
前記第1操作部上において、前記仮想面を基準とした一方の面側に配置されており、所定の操作が行われる第2操作部と
を有しており、
前記可撓領域が湾曲している状態において、
前記先端の位置が、前記仮想面を基準として、前記第2操作部の配置側の方向に、シフトしている
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記先端における前記仮想面からのシフト距離が、5mm以上かつ35mm以下の範囲内である
請求項1または請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記可撓領域が湾曲している状態において、
前記可撓領域におけるカーブ径が、80mm以上かつ140mm以下の範囲内である
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記シャフト内において前記軸方向に沿って延在している複数の配線と、
前記可撓領域において前記軸方向に沿って配置された複数の電極と
を更に備え、
前記ワイヤとしての第1ワイヤおよび第2ワイヤがそれぞれ、同一の前記仮想面上に位置しており、
前記複数の電極のうちの、前記可撓領域の先端から前記軸方向に沿って3番目の電極の基端位置における前記断面視と、前記可撓領域の基端から前記軸方向に沿って3番目の電極の先端位置における前記断面視と、の各々において、
前記仮想面を基準として前記先端のシフト方向の側に配置されている、前記配線としての複数の第1配線の面積率を、第1面積率と定義すると共に、
前記仮想面を基準として前記先端の前記シフト方向とは反対側に配置されている、前記配線としての複数の第2配線の面積率を、第2面積率と定義した場合に、
前記第2面積率が、前記第1面積率よりも大きくなっている
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記シャフト内において前記軸方向に沿って延在していると共に、前記断面視において矩形状断面を有する板バネを、更に備え、
前記ワイヤとしての第1ワイヤおよび第2ワイヤがそれぞれ、同一の前記仮想面上に位置しており、
前記板バネにおける前記矩形状断面は、前記仮想面上の前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの中間点において、前記仮想面と直交する長軸を有している
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤを用いて、前記可撓領域が、前記仮想面に沿って双方向に湾曲可能に構成されている
請求項5または請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
先端を含む可撓領域と、前記可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトと、
前記シャフト内において軸方向に沿って延在しており、前記可撓領域を湾曲させる際に用いられる1または複数のワイヤと
を備え、
前記可撓領域が最大湾曲している状態において、
前記可撓領域における前記先端が、前記基端領域には向いていない
カテーテル。
【請求項9】
先端を含む可撓領域と、前記可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトを備えたカテーテルの動作方法であって、
前記シャフト内において軸方向に沿って延在する1または複数のワイヤを用いて、前記可撓領域を湾曲させる際に、
前記軸方向に直交する断面での前記基端領域の断面視において、前記ワイヤの中心点と前記シャフトの中心点とを含み、かつ、前記軸方向に平行な平面を、仮想面とした場合に、
前記可撓領域における前記先端を、前記仮想面から外れて位置させる
カテーテルの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カテーテルおよびカテーテルの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先端付近に電極を有する電気医療デバイスの一例として、電極がシャフトに設けられたカテーテル(電極カテーテル)が、挙げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カテーテルでは、使用する際の利便性を向上させることが求められている。利便性を向上させることが可能な、カテーテルおよびカテーテルの動作方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る第1のカテーテルは、先端を含む可撓領域と、可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトと、シャフト内において軸方向に沿って延在しており、可撓領域を湾曲させる際に用いられる1または複数のワイヤと、を備えている。上記軸方向に直交する断面での基端領域の断面視において、ワイヤの中心点とシャフトの中心点とを含み、かつ、上記軸方向に平行な平面を仮想面とした場合に、ワイヤを用いて可撓領域が湾曲している状態において、可撓領域における先端が、仮想面から外れて位置する。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る第2のカテーテルは、先端を含む可撓領域と、可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトと、シャフト内において軸方向に沿って延在しており、可撓領域を湾曲させる際に用いられる1または複数のワイヤと、を備えている。可撓領域が最大湾曲している状態において、可撓領域における先端が、基端領域には向いていない。
【0007】
本開示の一実施の形態に係るカテーテルの動作方法は、先端を含む可撓領域と、可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトを備えたカテーテルの動作方法であって、シャフト内において軸方向に沿って延在する1または複数のワイヤを用いて、可撓領域を湾曲させる際に、上記軸方向に直交する断面での基端領域の断面視において、ワイヤの中心点とシャフトの中心点とを含み、かつ、上記軸方向に平行な平面を仮想面とした場合に、可撓領域における先端を、仮想面から外れて位置させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施の形態に係るカテーテルの概略構成例を模式的に表す平面図である。
【
図2】
図1中に示したII-II線に沿った断面構成例を模式的に表す斜視図である。
【
図3】
図1中に示したIII-III線に沿った断面構成例を模式的に表す斜視図である。
【
図4】
図1中に示したIV-IV線に沿った断面構成例を模式的に表す斜視図である。
【
図5】
図1中に示したV-V線に沿った断面構成例を模式的に表す斜視図である。
【
図6】患者の心臓の断面構造について説明するための模式図である。
【
図7】比較例に係るカテーテルにおけるシャフトの先端付近の湾曲状態の一例を模式的に表す側面図である。
【
図8】実施の形態に係るカテーテルにおけるシャフトの先端付近の湾曲状態の一例を模式的に表す側面図である。
【
図9】実施の形態に係るカテーテルにおけるシャフトの先端付近の湾曲状態の一例を模式的に表す斜視図である。
【
図10】実施の形態に係るカテーテルにおけるシャフトの先端付近の湾曲状態の一例を模式的に表す他の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(アブレーション等を行う電極カテーテルの場合の例)
2.変形例
【0010】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係るカテーテル(電極カテーテル1)の概略構成例を、模式的に表した平面図(Z-X平面図)である。
【0011】
電極カテーテル1は、血管を通して患者の体内(例えば心臓の内部)に挿入され、不整脈などの検査または治療等に用いられるカテーテルである。具体的には、電極カテーテル1における後述する複数の電極を利用して、体内の患部付近での電位の測定、または、患部に対する焼灼(アブレーション)等が、行われる。
【0012】
なお、電極カテーテル1は、本開示における「カテーテル」の一具体例に対応している。本開示における「カテーテルの動作方法」は、本開示のカテーテルにおいて具現化されるため、以下併せて説明する。
【0013】
電極カテーテル1は、カテーテル本体としてのシャフト11(カテーテルシャフト)と、シャフト11の基端に装着されたハンドル12とを、備えている。
【0014】
(シャフト11)
シャフト11は、可撓性を有する管状構造(管状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延在している。シャフト11は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン等の合成樹脂により構成されている。
【0015】
シャフト11は、先端を含む可撓領域A1と、可撓領域A1の基端側に配置された基端領域A2とを有している。シャフト11は、後述する複数のルーメン(細孔,貫通孔)が内部に形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有している。ルーメンには、各種の細線(後述する導線またはプルワイヤ等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。なお、シャフト11におけるマルチルーメン構造の詳細構成例については、後述する(
図2~
図5)。
【0016】
シャフト11の先端付近(可撓領域A1)には、複数の電極(複数のリング状電極111および1つの先端電極110)が、軸方向(Z軸方向)に沿って所定の間隔をおいて配置されている。複数のリング状電極111はそれぞれ、シャフト11の外周面上に固定配置される。先端電極110は、シャフト11の最先端に固定配置されている。これらの電極は、シャフト11における後述するルーメン内に挿通された複数の導線を介して、ハンドル12と電気的に接続されている。
【0017】
リング状電極111および先端電極110はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。電極カテーテル1の使用時におけるX線に対する造影性を良好にするためには、白金またはその合金により構成されていることが好ましい。
【0018】
(ハンドル12)
ハンドル12は、電極カテーテル1の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。ハンドル12は、シャフト11の基端側に装着されたハンドル本体121と、回転操作部122とを有している。
【0019】
ハンドル本体121は、操作者が実際に握る部分(把持部)に相当し、軸方向(Z軸方向)に沿って延在する形状を有している。ハンドル本体121は、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)等の合成樹脂により構成されている。
【0020】
回転操作部122は、後述するプルワイヤを用いてシャフト11の可撓領域A1を湾曲させる際に、操作者による操作(回転操作)が行われる部分である。回転操作部122は、回転板41および調整摘み42を有している。
【0021】
回転板41は、その長手方向(Z軸方向)に垂直な回転軸(Y軸方向)を中心として、ハンドル本体121に対して回転自在に装着された部材である。回転板41は、上記した回転操作の際に操作者が実際に操作を行う部分に相当し、略円盤状の形状を有している。具体的には、
図1中の矢印d1a,d1bで示したように、Z-X平面内において回転板41を双方向に回転させる回転操作が、可能となっている。なお、回転板41は、例えば、ハンドル本体121と同様の材料(合成樹脂等)により構成されている。
【0022】
回転板41の側面には、一対の摘み41a,41bが設けられている。
図1の例では、回転板41の回転軸を中心として、摘み41a,41bが互いに点対称となる位置に配置されている。摘み41a,41bはそれぞれ、操作者が回転板41を回転操作させる際に、例えば片手の指で操作される(押される)部分に相当する。
【0023】
調整摘み42は、回転板41上において、X-Y平面(後述する仮想面)を基準とした一方の面側(
図1の例では、Y軸の正方向側である、回転板41の上面側)に配置されている。調整摘み42は、操作者による所定の操作が行われる部分であり、Z-X平面内で回転可能に構成されている。具体的には、調整摘み42は、回転板41の回転位置(シャフト11の可撓領域A1における湾曲状態)を固定化(保持)する際に、操作が行われる。つまり、操作者が調整摘み42をねじって、回転板41をハンドル本体121に固定することで、回転板41の回転位置が固定化される。
【0024】
なお、回転板41は、本開示における「第1操作部」の一具体例に対応している。調整摘み42は、本開示における「第2操作部」の一具体例に対応している。
【0025】
[シャフト11の詳細構成]
続いて、
図1に加えて
図2~
図5を参照して、シャフト11の詳細構成例(前述したマルチルーメン構造の詳細構成例)について、説明する。
【0026】
図2は、
図1中に示したII-II線に沿った断面構成例(X-Y断面構成例)を、模
式的に表した斜視図である。
図3は、
図1中に示したIII-III線に沿った断面構成
例(X-Y断面構成例)を、模式的に表した斜視図である。
図4は、
図1中に示したIV
-IV線に沿った断面構成例(X-Y断面構成例)を、模式的に表した斜視図である。図
5は、
図1中に示したV-V線に沿った断面構成例(X-Y断面構成例)を、模式的に表した斜視図である。なお、
図1に示したように、
図2~
図4ではそれぞれ、シャフト11の可撓領域A1での断面構成例を示し、
図5では、シャフト11の基端領域A2での断面構成例を、示している。
【0027】
ここで、
図2では、説明の便宜上、シャフト11の軸方向(Z軸方向)に直交する断面(X-Y断面)での(基端領域A2の)断面視において、後述する一対のプルワイヤ40a,40bの中心点と、シャフト11の中心点とを含み、かつ、シャフト11の軸方向(Z軸方向)に平行な平面(Z-X平面上)を、仮想面Svとして規定している。また、
図3~
図5においては、便宜上、一部の部材等についての符号の付与を、省略している。
【0028】
図2~
図5に示したように、シャフト11には、X-Y断面内の中央付近に配置された一対のルーメン61A,61Bと、ルーメン61A,61Bの外周側に略等方的に配置された複数(この例では6つ)のルーメン62A~62Fとが、設けられている。シャフト11は、可撓領域A1(
図2~
図4)では、2層構造の管状のチューブ60A,60Bを用いて、構成されている。一方、基端領域A2(
図5)では、シャフト11は、4層構造の管状のチューブ60D,60E,60F,60Gを用いて、構成されている。ルーメン61A,61B,62A~62Fはそれぞれ、最内層のチューブ(チューブ60Aまたはチューブ60G)内に、配置されている。なお、
図2~
図5の例では、ルーメン61A,61B,62A~62Fはそれぞれ、シャフト11内において、互いに離間して配置されている。
【0029】
シャフト11の外径は、例えば、1.0~4.0mm程度であり、シャフト11の軸方向の長さは、例えば、600~1500mm程度である。また、シャフト11(上記したチューブ60A~60G)の構成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)(登録商標)およびナイロン等の、熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、チューブ60Cとしては、熱可塑性樹脂のうち、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の、フッ素樹脂が用いられる。また、チューブ60Bが、例えば、外周側の層(ポリアミド等からなる層)と、内周側の層(SUS(ステンレス鋼)ブレードからなる層)と、を用いて構成されていてもよい。
【0030】
(ルーメン61A,61B)
ルーメン61A,61Bは、後述する一対のプルワイヤ40a,40bの中心点を通る直線Ax(X軸方向の第1直線)に沿って、後述する板バネ63を介して並んで配置されている。具体的には、直線Ax上のX軸の正方向に沿って、ルーメン61A,61Bの順に、配置されている。
図2~
図5の例では、ルーメン61A,61Bにはそれぞれ、後述する導線50等は挿通されていない。
【0031】
(ルーメン62A~62F)
ルーメン62Aは、直線Ax上におけるルーメン61Aの外周側に配置され、ルーメン62Bは、直線Ax上におけるルーメン61Bの外周側に配置されている。ルーメン62A,62B内には、プルワイヤ(操作用ワイヤ)40a,40bがそれぞれ挿通されている。
図2に示したように、プルワイヤ40a,40bはそれぞれ、同一の仮想面Sv上に位置している。ただし、各プルワイヤ40a,40bの中心が、同一の仮想面Sv上に位置している場合には限られず、例えば、プルワイヤ40a,40bのうちの一方の中心が、上下方向(Y軸方向)に多少ずれて位置していてもよい。
【0032】
プルワイヤ40a,40bはそれぞれ、シャフト11内において軸方向(Z軸方向)に沿って延在しており、シャフト11の可撓領域A1を湾曲させる際に用いられる。具体的には、詳細は後述するが、プルワイヤ40a,40bをそれぞれ用いることで、可撓領域A1が、仮想面Svに沿って双方向に湾曲可能に構成されている(
図2中の矢印d2a,d2b参照)。各プルワイヤ40a,40bの基端側は、ハンドル12内において、回転板41上の留め具によって、固定されている。一方、各プルワイヤ40a,40bの先端側は、シャフト11の先端付近(先端電極110内)にて、固定されている。
【0033】
ルーメン62Cは、ルーメン61Aの上方(Y軸の正方向側)に配置され、ルーメン62Dは、ルーメン61Bの上方に配置されている。ルーメン62Eは、ルーメン61Aの下方(Y軸の負方向側)に配置され、ルーメン62Fは、ルーメン61Bの下方に配置されている。
図2~
図5に示したように、ルーメン62C~62Fのうちの少なくとも一部のルーメンには、1または複数の導線(リード線)50が挿通されている。なお、各ルーメン62C~62F内における導線50の配置位置等の詳細については、後述する。
【0034】
各導線50は、シャフト11内において、軸方向(Z軸方向)に沿って延在している。各導線50における先端側は、先端電極110またはリング状電極111に対して、個別に電気的接続されている。各導線50の基端側は、シャフト11内からハンドル12内を介して、電極カテーテル1の外部へと接続可能となっている。
【0035】
ここで、プルワイヤ40a,40bはそれぞれ、本開示における「ワイヤ」(第1ワイヤまたは第2ワイヤ)の一具体例に対応している。また、導線50は、本開示における「配線」(第1配線または第2配線)の一具体例に対応している。
【0036】
(板バネ63)
上記した板バネ63は、シャフト11の可撓領域A1において、軸方向(Z軸方向)に沿って延在している。板バネ63は、シャフト11の断面視(X-Y断面の断面視)において、矩形状断面を有している。具体的には
図2に示したように、板バネ63の矩形状断面は、仮想面Sv上のプルワイヤ40a,40bの中間点において、仮想面Svと直交する長軸を有している。つまり、板バネ63の矩形状断面は、直線Ax(X軸方向)に沿った短軸を有していると共に、直線Ay(Y軸方向の第2直線:シャフト11の断面内において、直線Axと直交すると共にシャフト11の中心を通る直線)に沿った、長軸を有している。この矩形状断面を有する板バネ63が、シャフト11の可撓領域A1に設けられていることで、板バネ63の短軸方向(X軸方向)に沿って、可撓領域A1が湾曲し易くなっている(
図2中の矢印d2a,d2b参照)。
【0037】
板バネ63の軸方向(Z軸方向)に沿った長さは、例えば20~300mmの範囲内であり、好ましくは50~250mmの範囲内、好適な一例を示せば、175mmである。板バネ63の長軸方向(Y軸方向)に沿った幅Wは、例えば0.3~1.8mmの範囲内であり、好ましくは0.5~0.7mmの範囲内、好適な一例を示せば、0.65mmである。板バネ63の短軸方向(X軸方向)に沿った厚さtは、例えば0.04~0.13mmの範囲内であり、好ましくは0.06~0.1mmの範囲内、好適な一例を示せば、0.08mmである。
【0038】
シャフト11の外径Dに対する板バネ63の幅Wの値(W/D)は、例えば0.20~0.65の範囲内であり、好ましくは0.24~0.40の範囲内、好適な一例を示せば、0.325(W=0.65mm,D=2.0mm)である。(W/D)の値が0.20未満である場合には、可撓領域A1における形状変化の平面性を、十分に確保できなくなるおそれがある。一方、(W/D)の値が0.65を超える場合には、前述した回転操作時に、いわゆるウィップ現象が起こり易くなり、良好なトルク伝達性を発揮できなくなるおそれがある。
【0039】
また、D/(W・t)の値は、例えば20~45の範囲内であり、好ましくは25~45の範囲内、好適な一例を示せば、38.5(D=2.0mm,W=0.65mm,t=0.08mm)である。D/(W・t)の値が20未満である場合には、回転操作時にウィップ現象が起こり易くなり、良好なトルク伝達性を発揮できなくなるおそれがある。一方、D/(W・t)の値が45を超える場合には、上記した(W/D)の値が0.20以上の場合であっても、可撓領域A1における形状変化の平面性を、十分に確保できなくなるおそれがある。
【0040】
板バネ63の厚さtに対する幅Wの値(W/t)は、例えば4.0~8.5の範囲内であり、好ましくは6.0~8.5の範囲内、好適な一例を示せば、8.13(W=0.65mm,t=0.08mm)である。(W/t)の値が4.0~8.5の範囲内である板バネ63を、外径(D=W/0.65~W/0.20)の範囲内のシャフト11に配置することで、上記したD/(W・t)の値を、20~45の範囲内に容易に調整することができる。(W/t)の値が過小である板バネ63を使用した場合には、板バネ63をその短軸方向(X軸方向)に沿って湾曲させることが困難となり、可撓領域A1における形状変化の平面性を十分に確保できなくなるおそれがある。一方、(W/t)の値が過大である板バネ63を使用した場合には、良好なトルク伝達性を発揮できなくなるおそれがある。
【0041】
(導線50の配置位置等)
ここで、シャフト11における、上記した各ルーメン62C~62F内での導線50の配置位置等の詳細は、以下の通りである。
【0042】
まず、
図2に示した(II-II線に沿った)シャフト11の断面構成例では、ルーメ
ン62F内にのみ、複数(この例では6本)の導線50が配置されており、他のルーメン62C~62E内にはそれぞれ、導線50が配置されていない。
【0043】
一方、
図3に示した(III-III線に沿った)シャフト11の断面構成例では、ルーメン62C,62F内にそれぞれ、複数の導線50が配置されており、ルーメン62D,62E内にはそれぞれ、導線50が配置されていない。具体的には、
図3の例では、ルーメン62C,62F内にそれぞれ、6本の導線50が配置されている。
【0044】
図4に示した(IV-IV線に沿った)シャフト11の断面構成例では、ルーメン62
C,62E,62F内にそれぞれ、複数の導線50が配置されており、ルーメン62D内には、導線50が配置されていない。具体的には、
図4の例では、ルーメン62C内に6本の導線50が配置されており、ルーメン62E内に4本の導線50が配置されており、ルーメン62F内に6本の導線50が配置されている。
【0045】
図5に示した(V-V線に沿った)シャフト11の断面構成例では、ルーメン62C~62F内のいずれにおいても、複数の導線50が配置されている。具体的には、
図5の例では、ルーメン62C内に6本の導線50が配置されており、ルーメン62D内に4本の導線50が配置されており、ルーメン62E内に4本の導線50が配置されており、ルーメン62F内に6本の導線50が配置されている。
【0046】
このようにして、シャフト11の断面(X-Y断面)内での導線50の配置位置は、可撓領域A1(
図2~
図4参照)では、主に下方側(Y軸の負方向側)に偏っている一方、基端領域(
図5参照)では、概ね等方的となっている。これにより、詳細は後述するが、シャフト11の可撓領域A1が湾曲している状態(
図2中の矢印d2bのみ参照)において、シャフト11の先端の位置が、仮想面Svを基準として、上方側(Y軸の正方向側)にシフトすることになる(
図2中の矢印d3参照)。つまり、シャフト11の先端の位置が、(シャフト11の可撓領域A1の断面内において)導線50が相対的に少ない側(相対的に柔らかい構造側)、すなわち、上記した導線50の偏った配置位置とは逆側に、シャフト11の先端位置がシフトする。
【0047】
ここで、前述した複数の電極(複数のリング状電極111および1つの先端電極110)のうちの、以下の各電極の位置での断面視(X-Y断面の断面視)において、以下の各領域での導線50の面積率について、規定する。具体的には、上記した複数の電極のうちの、可撓領域A1の先端から軸方向(Z軸方向)に沿って3番目の電極の基端位置(第1位置)における断面視と、可撓領域A1の基端から軸方向に沿って3番目の電極の先端位置(第2位置)における断面視と、の各々において、上記した導線50の面積率について規定する。
【0048】
まず、例えば
図2に示したように、シャフト11の断面(X-Y断面)は、直線Ax,Ayによって、4つの領域に分割される。つまり、ルーメン62Cが含まれる第1領域と、ルーメン62Dが含まれる第2領域と、ルーメン62Eが含まれる第3領域と、ルーメン62Fが含まれる第4領域とに、4分割される。そして、仮想面Svを基準として、シャフト11の先端のシフト方向側(
図2中の矢印d3の方向側)に配置されている複数の導線50(第1配線)の面積率Rs1(第1面積率)と、そのシフト方向とは反対側に配置されている複数の導線50(第2導線)の面積率Rs2(第2面積率)とをそれぞれ、上記した第1位置および第2位置の各々において、定義する。すると、面積率Rs1,Rs2[%]はそれぞれ、以下の式にて規定される。この場合において本実施の形態では、上記した第1位置および第2位置の各々において、面積率Rs2が、面積率Rs1よりも大きくなっている(Rs2>Rs1という大小関係を満たしている)。なお、一例としては、導線50の3本分の面積の分だけ、面積率Rs2が面積率Rs1よりも大きくなっている。
【0049】
・Rs1=(上記した第1,第2領域内に位置する導線50の合計断面積/シャフト11の断面積)×100[%]
・Rs2=(上記した第3,第4領域内に位置する導線50の合計断面積/シャフト11の断面積)×100[%]
【0050】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
電極カテーテル1では、不整脈等の治療の際に、シャフト11における先端側が、血管を通して患者の体内に挿入される。このとき、電極カテーテル1の操作者による回転板41の回転操作に応じて、挿入されたシャフト11における先端付近(可撓領域A1)の形状が、両方向に変化する。
【0051】
具体的には、操作者の指によって摘み41aを操作することで、例えば
図1中の矢印d1a方向(右回り)に沿って回転板41を回転させた場合、シャフト11内でプルワイヤ40aが、基端側へ引っ張られる。その結果、シャフト11の先端付近が、
図1,
図2中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する。
【0052】
一方、操作者の指によって摘み41bを操作することで、例えば
図1中の矢印d1b方向(左回り)に沿って回転板41を回転させた場合、シャフト11内でプルワイヤ40bが、基端側へ引っ張られる。その結果、シャフト11の先端付近が、
図1,
図2中の矢印d2bで示した方向に沿って湾曲する。
【0053】
(B.シャフト11の湾曲動作の詳細)
続いて、
図6~
図10を参照して、本実施の形態の電極カテーテル1におけるシャフト11の湾曲動作の詳細について、比較例と比較しつつ説明する。
【0054】
図6は、患者の心臓90の断面構造について説明するための模式図である。
図7は、比較例に係るカテーテル(電極カテーテル101)におけるシャフト100の先端付近の湾曲状態の一例を、模式的に表した側面図(Y-Z側面)である。
図8は、本実施の形態の電極カテーテル1におけるシャフト11の先端付近の湾曲状態の一例を、模式的に表した側面図(Y-Z側面図)である。
図9は、本実施の形態の電極カテーテル1におけるシャフト11の先端付近の湾曲状態の一例を、模式的に表した斜視図である。
図10は、本実施の形態の電極カテーテル1におけるシャフト11の先端付近の湾曲状態の一例を、模式的に表した側面図(X-Y側面図)である。
【0055】
(B-1.冠状静脈洞口CSへの挿入動作について)
まず、例えば
図6に示した患者の心臓90において、一般的な電極カテーテルにおけるシャフトの先端付近を、いわゆる「α(アルファ)ループ」と呼ばれるアプローチ方法を用いて、冠状静脈洞口CS内へ挿入し、留置させる場合について考える。なお、
図6では、心臓90における各部位(大動脈AO、上大静脈SVC、下大静脈IVC、肺動脈PA、肺静脈PV、右心房RA、右心室RV、左心房LA、左心室LV、冠状静脈洞口CS)について、模式的に示している。
【0056】
このアプローチ方法では、具体的には、下大静脈IVC内から右心房RA内を経由した後、冠状静脈洞口CS内へと、シャフトの先端付近を挿入させる(
図9中に破線で示した矢印d9参照)。つまり、右心房RA内で、シャフトの先端付近を一旦ループさせた後、下大静脈IVCから少しずれた位置の冠状静脈洞口CS内へと、シャフトの先端付近を挿入させることになる。このため、このアプローチ方法は、一般的には難しい手技とされている。
【0057】
(B-2.比較例)
具体的には、比較例に係る一般的な電極カテーテル101では、例えば
図7に示したように、シャフト100の先端付近(可撓領域)が湾曲している状態において、可撓領域の先端位置(先端電極110付近の位置)が、シャフト100の基端領域(前述した仮想面Svに対応)から、ずれていない。言い換えると、シャフト100の可撓領域の先端位置が、以下説明する本実施の形態のシャフト11の場合とは異なり、Y軸方向に沿ってシフトしていない。
【0058】
このため、比較例の電極カテーテル101では、上記したアプローチ方法を行う際に、下大静脈IVCから少しずれた位置の冠状静脈洞口CS内に対して、シャフト100の先端付近を挿入させるのが困難となり、手技時間が長くなってしまうおそれがある。また、例えば、人手または熱硬化樹脂等よる、シャフト100の先端付近の形状のクセ付け(カーブ付け)を施す場合、クセ付けの手間(余分な工数)が掛かることになる。これらのことから、比較例の電極カテーテル101では、使用する際の利便性が損なわれるおそれがある。
【0059】
(B-3.本実施の形態)
これに対して本実施の形態の電極カテーテル1では、例えば
図8~
図10に示したように、シャフト11の先端付近(可撓領域A1)が湾曲している状態において(
図1,
図2,
図9中の矢印d2b参照)、比較例の電極カテーテル101の場合(
図7参照)とは異なり、以下のようになる。
【0060】
すなわち、シャフト11の可撓領域A1における先端位置が、前述した仮想面Sv(
図2参照)から外れて位置し、仮想面Svを基準として、Y軸の正方向側(ハンドル12上の前述した調整摘み42側)にシフトしている(
図2,
図8~
図10中の矢印d3参照)。また、可撓領域A1が最大湾曲している状態において、可撓領域A1における先端が、基端領域A2には向いていない状態となる。なお、「最大湾曲している状態」とは、可撓領域A1が湾曲可能な最大角度まで湾曲している状態を、意味している。具体的には、回転操作部122を最大可動域まで回転させた場合における、可撓領域A1の湾曲状態に対応している。また、「可撓領域A1における先端が、基端領域A2には向いていない」状態とは、以下のような状態を意味している。すなわち、まず、可撓領域A1を長さ方向に沿って10等分した際における、先端を含む部分を先端部とする。この先端部における基端側の断面の中心および先端を通る仮想直線が、基端領域A2と交わらない(接触しない)状態を、「可撓領域A1における先端が、基端領域A2には向いていない」状態として定義する。
【0061】
この際に、可撓領域A1の先端における仮想面Svからのシフト距離は、例えば5mm~35mmの範囲内であり、好ましくは10~25mmの範囲内、好適な一例を示せば、20mmである。なお、「シフト距離」とは、上記したように、シャフト11の可撓領域A1における先端位置が、仮想面Svを基準としてY軸の正方向側にシフトしている状態における、仮想面Svから可撓領域A1の先端位置までの最短距離を、意味している。また、可撓領域A1が湾曲している状態における、可撓領域A1でのカーブ径rは、例えば80mm~140mmの範囲内であり、好ましくは90~130mmの範囲内、好適な一例を示せば、120mmである。なお、「カーブ径r」とは、シャフト11の軸方向(Z軸方向)を基準として、可撓領域A1が180°まで湾曲している状態における、シャフト11の先端と、可撓領域A1を除くシャフト11との、最短距離を意味している。
【0062】
(C.作用・効果)
このようにして、本実施の形態の電極カテーテル1では、シャフト11の先端付近(可撓領域A1)が湾曲している状態において、可撓領域A1における先端位置が、仮想面Svから外れて(シフトして)位置することから、以下のようになる。
【0063】
すなわち、上記比較例の電極カテーテル101の場合とは異なり、上記したアプローチ方法を行う際に、下大静脈IVCから少しずれた位置の冠状静脈洞口CS内に対して、シャフト11の先端付近を容易に挿入させることができ、手技時間の短縮化が図られる。また、前述したシャフト11の断面内での導線50の配置位置(偏った配置位置)のみで、可撓領域A1の先端位置のシフト状態を実現していることから、前述したようなシャフト11の先端付近の形状のクセ付け(カーブ付け)も不要となり、余分な工数が削減される。その結果、本実施の形態では、上記比較例の場合等と比べ、電極カテーテル1を使用する際の利便性を向上させることが可能となる。
【0064】
本実施の形態では、シャフト11の可撓領域A1における先端位置が、仮想面Svを基準として、ハンドル12上の調整摘み42側にシフトすることから、以下のようになる。すなわち、シャフト11の先端側を患者の体内に挿入した状態においても、可撓領域A1が湾曲している状態での先端位置のシフト方向(
図2,
図8~
図10中の矢印d3参照)を、電極カテーテル1の操作者の手元側(ハンドル12上)にて、容易に把握することができる。その結果、本実施の形態では、電極カテーテル1を使用する際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0065】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0066】
例えば、上記実施の形態では、電極カテーテルの構成について具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えば、シャフトにおけるマルチルーメン構造の構成、および、電極の構成(リング状電極および先端電極の配置や形状、個数等)については、上記実施の形態で挙げた構成には限られず、他の構成としてもよい。また、上記実施の形態では、ハンドル(ハンドル本体および回転操作部)の構成についても具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。
【0067】
上記実施の形態では、シャフトにおける先端付近の形状が回転操作に応じて両方向に変化するタイプ(バイディレクションタイプ)の電極カテーテルを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、シャフトにおける先端付近の形状が回転操作に応じて片方向に変化するタイプ(シングルディレクションタイプ)の電極カテーテルであってもよく、この場合には、プルワイヤが1本のみ設けられることになる。
【0068】
上記実施の形態では、シャフト内に板バネが設けられている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、シャフト内に板バネが設けられていないようにしてもよい。
【0069】
上記実施の形態では、シャフトの先端付近の湾曲動作について、具体的に挙げて説明したが、湾曲動作の際におけるシャフトの形状、および、シャフトの先端のシフト態様(シフト方向およびシフト位置など)については、上記実施の形態で挙げて例には限られない。また、上記実施の形態では、アブレーション等を行う電極カテーテルの場合の例について説明したが、この場合の例には限られない。すなわち、例えば、血管を通して患者の体内(例えば心臓の内部)に挿入されて、電気的な除細動(心房細動の除去)を行うための電極カテーテル(除細動カテーテル)等においても、本開示を適用することが可能である。
【0070】
上記実施の形態で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0071】
また、これまでに説明した各種の構成例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0072】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0073】
本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
先端を含む可撓領域と、前記可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトと、
前記シャフト内において軸方向に沿って延在しており、前記可撓領域を湾曲させる際に用いられる1または複数のワイヤと
を備え、
前記軸方向に直交する断面での前記基端領域の断面視において、前記ワイヤの中心点と前記シャフトの中心点とを含み、かつ、前記軸方向に平行な平面を、仮想面とした場合に、
前記ワイヤを用いて前記可撓領域が湾曲している状態において、
前記可撓領域における前記先端が、前記仮想面から外れて位置する
カテーテル。
(2)
前記シャフトの基端側に配置されたハンドルを更に備え、
前記ハンドルが、
前記ワイヤを用いて前記可撓領域を湾曲させる際に操作される第1操作部と、
前記第1操作部上において、前記仮想面を基準とした一方の面側に配置されており、所定の操作が行われる第2操作部と
を有しており、
前記可撓領域が湾曲している状態において、
前記先端の位置が、前記仮想面を基準として、前記第2操作部の配置側の方向に、シフトしている
上記(1)に記載のカテーテル。
(3)
前記先端における前記仮想面からのシフト距離が、5mm以上かつ35mm以下の範囲内である
上記(1)または(2)に記載のカテーテル。
(4)
前記可撓領域が湾曲している状態において、
前記可撓領域におけるカーブ径が、80mm以上かつ140mm以下の範囲内である
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のカテーテル。
(5)
前記シャフト内において前記軸方向に沿って延在している複数の配線と、
前記可撓領域において前記軸方向に沿って配置された複数の電極と
を更に備え、
前記ワイヤとしての第1ワイヤおよび第2ワイヤがそれぞれ、同一の前記仮想面上に位置しており、
前記複数の電極のうちの、前記可撓領域の先端から前記軸方向に沿って3番目の電極の基端位置における前記断面視と、前記可撓領域の基端から前記軸方向に沿って3番目の電極の先端位置における前記断面視と、の各々において、
前記仮想面を基準として前記先端のシフト方向の側に配置されている、前記配線としての複数の第1配線の面積率を、第1面積率と定義すると共に、
前記仮想面を基準として前記先端の前記シフト方向とは反対側に配置されている、前記配線としての複数の第2配線の面積率を、第2面積率と定義した場合に、
前記第2面積率が、前記第1面積率よりも大きくなっている
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のカテーテル。
(6)
前記シャフト内において前記軸方向に沿って延在していると共に、前記断面視において矩形状断面を有する板バネを、更に備え、
前記ワイヤとしての第1ワイヤおよび第2ワイヤがそれぞれ、同一の前記仮想面上に位置しており、
前記板バネにおける前記矩形状断面は、前記仮想面上の前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの中間点において、前記仮想面と直交する長軸を有している
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のカテーテル。
(7)
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤを用いて、前記可撓領域が、前記仮想面に沿って双方向に湾曲可能に構成されている
上記(5)または(6)に記載のカテーテル。
(8)
先端を含む可撓領域と、前記可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトと、
前記シャフト内において軸方向に沿って延在しており、前記可撓領域を湾曲させる際に用いられる1または複数のワイヤと
を備え、
前記可撓領域が最大湾曲している状態において、
前記可撓領域における前記先端が、前記基端領域には向いていない
カテーテル。
(9)
先端を含む可撓領域と、前記可撓領域の基端側に配置された基端領域と、を有するシャフトを備えたカテーテルの動作方法であって、
前記シャフト内において軸方向に沿って延在する1または複数のワイヤを用いて、前記可撓領域を湾曲させる際に、
前記軸方向に直交する断面での前記基端領域の断面視において、前記ワイヤの中心点と前記シャフトの中心点とを含み、かつ、前記軸方向に平行な平面を、仮想面とした場合に、
前記可撓領域における前記先端を、前記仮想面から外れて位置させる
カテーテルの動作方法。
【符号の説明】
【0074】
1…電極カテーテル、11…シャフト、110…先端電極、111…リング状電極、12…ハンドル、121…ハンドル本体、122…回転操作部、40a,40b…プルワイヤ、41…回転板、41a,41b…摘み、42…調整摘み、50…導線、60A~60G…チューブ、61A,61B,62A~62F…ルーメン、63…板バネ、90…心臓、A1…可撓領域、A2…基端領域、Ax,Ay…直線、Sv…仮想面、Rs1,Rs2…面積率、r…カーブ径、AO…大動脈、SVC…上大静脈、IVC…下大静脈、PA…肺動脈、PV…肺静脈、RA…右心房、RV…右心室、LA…左心房、LV…左心室、CS…冠状静脈洞口、d1a,d1b,d2a,d2b,d3,d9…矢印。