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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143349
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】冶具及び計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20230928BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050675
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503295448
【氏名又は名称】計測ネットサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】保坂 栄太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(57)【要約】
【課題】アンカーフレームの位置の検査の手間を削減することができる冶具及び計測システムを提供する。
【解決手段】建物の基礎2の複数のアンカーボルト4を支持するアンカーフレーム5に設置される設置部(本体部110)と、前記設置部(本体部110)に設けられ、光を反射可能なターゲット部130と、前記アンカーフレーム5の平面視中心に対する任意の計測位置(平面視中心)に、前記ターゲット部130を設定可能な設定部(第一部分111の後面、第二部分112の左面)と、を具備するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎の複数のアンカーボルトを支持するアンカーフレームに設置される設置部と、
前記設置部に設けられ、光を反射可能なターゲット部と、
前記アンカーフレームの平面視中心に対する任意の計測位置に、前記ターゲット部を設定可能な設定部と、
を具備する冶具。
【請求項2】
前記ターゲット部が前記計測位置に設定された状態で前記設置部を前記アンカーフレームに取り付け可能な取付部を具備する、
請求項1に記載の冶具。
【請求項3】
前記取付部は、
前記設置部に対して移動可能に設けられると共に、前記アンカーフレームの外縁に当接することで、前記アンカーフレームに取り付けられる、
請求項2に記載の冶具。
【請求項4】
前記アンカーフレームに対する前記ターゲット部の角度を調節可能な調節部を具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の冶具。
【請求項5】
前記ターゲット部の水平状態を確認可能な水準器を具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の冶具。
【請求項6】
前記設定部は、
第一方向における前記ターゲット部の位置を設定可能な第一設定部と、
前記第一方向に直交する第二方向における前記ターゲット部の位置を設定可能な第二設定部と、
を具備する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の冶具。
【請求項7】
建物の基礎の複数のアンカーボルトを支持するアンカーフレームの平面視中心に対する任意の計測位置に、光を反射可能なターゲット部を配置可能な冶具と、
前記ターゲット部に光を照射することで、前記ターゲット部の位置を計測可能な計測機器と、
前記計測機器の計測結果に基づいて、前記アンカーフレームの位置の検査を実行可能な制御装置と、
を具備する計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーフレームの位置の検査に用いられる冶具及び計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の基礎に、鉄骨柱等の構造体の固定に用いられるアンカーボルトを設けることが知られている。上記アンカーボルトは、1つの鉄骨柱の固定箇所に対して複数設けられる。複数の上記アンカーボルトは、アンカーフレームによって支持されている。このようなアンカーボルトを設置した場合、アンカーボルトの位置が適切であるか否かの検査を行うことが知られている。上記検査には、ターゲットまでの距離を計測可能な機器が使用される。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、測定点にターゲット装置を設置し、ターゲット装置にトータルステーションからの測距光を照射することで、測定点までの距離を計測する測量システムが記載されている。
【0004】
上述のような測量システムを用いてアンカーボルトの位置の検査を行う場合、複数のアンカーボルトの設置位置(アンカーフレームによって支持された複数のアンカーボルトの設置位置)ごとにターゲット装置を設置して計測を行う必要がある。このため、検査に手間がかかることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-189576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、アンカーフレームの位置の検査の手間を削減することができる冶具及び計測システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の基礎の複数のアンカーボルトを支持するアンカーフレームに設置される設置部と、前記設置部に設けられ、光を反射可能なターゲット部と、前記アンカーフレームの平面視中心に対する任意の計測位置に、前記ターゲット部を設定可能な設定部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記ターゲット部が前記計測位置に設定された状態で前記設置部を前記アンカーフレームに取り付け可能な取付部を具備するものである。
【0010】
請求項3においては、前記取付部は、前記設置部に対して移動可能に設けられると共に、前記アンカーフレームの外縁に当接することで、前記アンカーフレームに取り付けられるものである。
【0011】
請求項4においては、前記アンカーフレームに対する前記ターゲット部の角度を調節可能な調節部を具備するものである。
【0012】
請求項5においては、前記ターゲット部の水平状態を確認可能な水準器を具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記設定部は、第一方向における前記ターゲット部の位置を設定可能な第一設定部と、前記第一方向に直交する第二方向における前記ターゲット部の位置を設定可能な第二設定部と、を具備するものである。
【0014】
請求項7においては、建物の基礎の複数のアンカーボルトを支持するアンカーフレームの平面視中心に対する任意の計測位置に、光を反射可能なターゲット部を配置可能な冶具と、前記ターゲット部に光を照射することで、前記ターゲット部の位置を計測可能な計測機器と、前記計測機器の計測結果に基づいて、前記アンカーフレームの位置の検査を実行可能な制御装置と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、アンカーフレームの位置の検査の手間を削減することができる。
【0017】
請求項2においては、アンカーフレームに対して冶具がずれることを抑制することができる。
【0018】
請求項3においては、アンカーフレームに対する冶具の位置決めを行うことができる。
【0019】
請求項4においては、計測の精度を向上させることができる。
【0020】
請求項5においては、アンカーフレームに対するターゲット部の角度を調節する際の作業性を向上させることができる。
【0021】
請求項6においては、計測位置にターゲット部を位置させ易くすることができる。
【0022】
請求項7においては、アンカーフレームの位置の検査の手間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る計測システム及び建物の基礎を示した側面図。
図2】計測システムを示したブロック図。
図3】冶具を示した正面図。
図4】冶具及びアンカーボルトセットを示した平面図。
図5】冶具を示した平面図。
図6】(a)図6(b)におけるX2-X2拡大平面断面図。(a)図6(a)におけるX1-X1拡大側面断面図。
図7】計測システムを用いた計測の手順を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の一実施形態に係る計測システム1について説明する。以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0025】
計測システム1は、図1に示す建物の施工段階の建物の基礎2に設けられるアンカーボルト4(アンカーボルトセット3)の位置の検査を行うものである。以下では、まず建物の基礎2について説明する。
【0026】
基礎2は、鉄骨造の建物の構造体である鉄骨柱(不図示)を支持するものである。基礎2は、鉄筋コンクリートにより形成される。具体的には、基礎2は、当該基礎2の形状に応じて形成された型枠6の内部に所定の鉄筋(不図示)及びアンカーボルトセット3が配置された状態で、型枠6内にコンクリートが打設されることで形成される。基礎2には、アンカーボルトセット3が埋め込まれる。なお、図1では、型枠6の内部にアンカーボルトセット3を配置した状態であって、コンクリートを打設する前の状態を示している。
【0027】
アンカーボルトセット3は、基礎2に対する鉄骨柱の固定に用いられるものである。アンカーボルトセット3は、複数の鉄骨柱が設置される位置に対応するように、複数設置される。アンカーボルトセット3は、アンカーボルト4及びアンカーフレーム5を具備する。
【0028】
図1及び図4に示すアンカーボルト4は、鉄骨柱が固定される部材である。アンカーボルト4は、上下に長尺な円柱形状(棒形状)に形成されている。アンカーボルト4には、鉄骨柱を固定するためのナットが嵌合するおねじが形成されている。図4に示すように、アンカーボルト4は、1つの鉄骨柱に対して複数(本実施形態では4つ)設けられる。なお、アンカーボルト4の本数としては、上述した例に限定されず鉄骨柱の種類に応じて適宜設定可能である。複数のアンカーボルト4は、ベースプレートに固定されることで、下方から支持される。
【0029】
図1及び図4に示すアンカーフレーム5は、複数のアンカーボルト4の上部を支持するものである。アンカーフレーム5は、厚さ方向を上下方向に向けた、平面視矩形状の板形状に形成される。図例では、平面視略正方形状のアンカーフレーム5を示している。アンカーフレーム5は、平面視における中央部に矩形状の開口が形成されている。また、アンカーフレーム5には、複数のアンカーボルト4の上部が挿通される孔部が複数(本実施形態では4つ)形成されている。上記孔部に挿通されたアンカーボルト4の上部を適宜のナットにより締結することで、アンカーフレーム5はアンカーボルト4に固定される。アンカーフレーム5は、けがき部5aを有する。
【0030】
図4に示すけがき部5aは、アンカーフレーム5(アンカーボルトセット3)の平面視における中心の位置を示す目印である。本実施形態では、けがき部5aを、アンカーフレーム5の外縁における各辺の中央部に平面視略三角形状の切欠きを設けたことで形成している。図4に示すように、アンカーフレーム5の各辺のけがき部5aの頂点(平面視中心側を向く頂点)同士を結んだ仮想線(一点鎖線)の交点が、アンカーフレーム5の平面視中心を示す。
【0031】
なお、上記けがき部5aに代えて、又は加えて、アンカーフレーム5の表面に上記仮想線に沿う直線状のマーキングを設けるようにしてもよい。また、アンカーフレーム5の平面視中心を示す目印としては、上記けがき部5aや直線状のマーキングに限定されず、例えば適宜の図柄や凹凸等、種々の目印を採用可能である。
【0032】
基礎2は、型枠6内に打設されたコンクリートの硬化後、型枠6を解体することでが形成される。アンカーフレーム5は、コンクリートが硬化した後、基礎2に鉄骨柱を固定する前に、アンカーボルト4から取り外される。
【0033】
次に、図1から図6までを用いて、計測システム1の詳細について説明する。
【0034】
計測システム1は、計測対象であるアンカーフレーム5(アンカーボルトセット3)の位置の計測を行うことで、各アンカーボルト4の位置が適切であるか否かの検査を行うものである。計測システム1は、計測機器10、制御装置20、基準点用プリズム30、計測用プリズム40及び冶具100を具備する。
【0035】
図1及び図2に示す計測機器10は、光(光波)を用いて計測対象(後述する基準点用プリズム30、計測用プリズム40及びターゲット部130)の位置を計測可能なものである。計測機器10は、適宜の三脚等を用いて、基礎2の施工現場における任意の位置に設置される。計測機器10は、計測部11、入力部12、表示部13、記憶部14、制御部15及び通信部16を具備する。
【0036】
計測部11は、光波を照射すると共に、計測対象で反射した光波を検出する部分である。計測部11は、適宜の機構により、光波の照射方向を変更可能に設けられる。
【0037】
入力部12は、各種の情報を入力するためのものである。入力部12は、複数のボタンにより構成される。計測者は、入力部12を用いて計測機器10の各種操作を行うことができる。
【0038】
表示部13は、各種の情報を表示するものである。表示部13は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。表示部13には、計測機器10の操作のための情報が表示される。
【0039】
記憶部14は、各種のプログラムや、取得された各種の情報が記憶されるものである。記憶部14は、RAM、ROM等により構成される。また、記憶部14には、基礎2の図面データ等、計測機器10を用いた計測に用いられるデータが記憶されている。
【0040】
制御部15は、記憶部14に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部15は、CPUにより構成される。
【0041】
通信部16は、後述する制御装置20等の外部の機器との通信が可能なものである。通信部16は、例えばインターネットやブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、Wi‐Fi(登録商標)等の各種の通信手段を介して、外部の機器との情報のやりとりを行うことができる。
【0042】
制御装置20は、各種の情報の処理が可能なものである。制御装置20は、例えば建物の施工を管理する管理者の施設(例えば事務所等)に配置される。制御装置20としては、一般的なパーソナルコンピュータ等を用いることができる。制御装置20は、記憶部21、制御部22、通信部23、入力部24及び表示部25を具備する。
【0043】
記憶部21は、各種のプログラムや取得された各種の情報が記憶されるものである。記憶部21は、HDD、RAM、ROM等により構成される。
【0044】
制御部22は、記憶部21に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部22は、CPUにより構成される。
【0045】
通信部23は、計測機器10等の外部の機器との通信が可能なものである。通信部23は、例えばインターネット等の各種の通信手段を介して、外部の機器との情報のやりとりを行うことができる。
【0046】
入力部24は、各種の情報を入力するためのものである。入力部24は、キーボード、マウス等により構成される。
【0047】
表示部25は、各種の情報を表示するものである。表示部25は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。
【0048】
図1に示す基準点用プリズム30は、基礎2の施工現場において予め設定された基準点に設置されると共に、計測機器10の計測部11から照射された光波を反射可能なものである。基準点用プリズム30は、2つの基準点にそれぞれ配置される。なお、図例では、1つの基準点用プリズム30を示している。基準点用プリズム30は、例えば三脚等の適宜の支持部材により支持される。
【0049】
計測用プリズム40は、任意の計測対象(例えば、施工が完了した基礎2等)に配置されると共に、計測機器10の計測部11から照射された光波を反射可能なものである。計測用プリズム40は、作業者(計測者)の手によって支持されることで、計測対象に配置される。
【0050】
図3から図6までに示す冶具100は、アンカーフレーム5の位置を計測するためのものである。冶具100は、計測対象のアンカーフレーム5の上面に設置される。冶具100は、本体部110、スライド部120、ターゲット部130及び水準器140を具備する。
【0051】
本体部110は、冶具100の主たる構造体である。図3から図5までに示すように、本体部110は、平面視において略T字形状に形成される。また、本体部110は、厚さ方向を上下方向に向けた略板形状の部材により形成される。本体部110は、例えば金属材料により形成される。本体部110は、第一部分111及び第二部分112を具備する。
【0052】
第一部分111は、左右方向に延出する部分である。図4に示すように、第一部分111の左右寸法(長さ)は、アンカーフレーム5の左右寸法(一辺の長さ)よりも大きく形成される。第一部分111は、長孔111a及び高さ調節ボルト孔111bを有する。
【0053】
長孔111aは、第一部分111を上下に貫通すると共に、左右方向に長尺な形状の孔である。長孔111aは、第一部分111の左右方向両側に位置するように、一対形成される。一対の長孔111aは、第一部分111の両端部から、左右方向中心側に向かって延びるように形成される。
【0054】
高さ調節ボルト孔111bは、第一部分111を上下に貫通すると共に、後述する高さ調節ボルトに嵌合可能なめねじが形成された孔である。高さ調節ボルト孔111bは、一対の長孔111aと隣り合うように一対形成される。具体的には、高さ調節ボルト孔111bは、長孔111aよりも、第一部分111の左右方向中心側に位置するように形成される。
【0055】
第二部分112は、前後方向に延出する部分である。図5に示すように、第二部分112は、第一部分111の左右方向略中央部における後面から後方に延出するように形成される。第二部分112は、左面の左右位置が、第一部分111の左右方向中心に位置するように形成される。第二部分112の長さは、第一部分111の長さの概ね半分程度に形成される。第二部分112は、長孔112a及び高さ調節ボルト孔112bを有する。
【0056】
長孔112aは、第二部分112を上下に貫通すると共に、前後方向に長尺な形状の孔である。長孔112aは、第二部分112の後端部から、第一部分111側に向かって延びるように形成される。
【0057】
高さ調節ボルト孔112bは、第二部分112を上下に貫通すると共に、後述する高さ調節ボルトに嵌合可能なめねじが形成された孔である。高さ調節ボルト孔112bは、長孔112aよりも、第一部分111側に位置するように形成される。
【0058】
図4に示すように、上述の如き本体部110は、アンカーフレーム5に設置された状態で、第一部分111及び第二部分112が、アンカーフレーム5の左右両側及び後部にそれぞれ亘るように形成される。上記第一部分111及び第二部分112の形状(長さ寸法)は、第一部分111及び第二部分112が、アンカーフレーム5の左右両側及び後部にそれぞれ亘るように、アンカーフレーム5の形状(寸法)に応じて適宜設定可能である。
【0059】
また、以下では、図5に示す第一部分111の後面と、第二部分112の左面と、の交点を、「本体部110の平面視中心P」と称して説明する。
【0060】
図3から図6までに示すスライド部120は、第一部分111及び第二部分112の長さ方向に沿ってスライド可能に設けられる部分である。スライド部120は、第一部分111の左右両側と、第二部分112と、の三箇所にそれぞれ設けられる。
【0061】
以下では、第一部分111の右側に設けられるスライド部120に注目して、スライド部120の構成の詳細について説明する。スライド部120は、スライド本体部121、締結ボルト122及び高さ調節ボルト123を具備する。
【0062】
スライド本体部121は、スライド部120の主たる構造体である。スライド本体部121は、例えば金属材料により形成される。スライド本体部121は、内側部121a、外側部121b、開口部121c、締結ボルト孔121d及び高さ調節ボルト孔121eを具備する。
【0063】
内側部121aは、スライド本体部121の内側(左側)を構成する部分である。内側部121aは、平面視及び側面視において、略矩形状に形成される。
【0064】
外側部121bは、スライド本体部121の外側(右側)を構成する部分である。外側部121bは、平面視及び側面視において、略矩形状に形成される。図3に示すように、外側部121bの下端部は、内側部121aよりも下方に位置するように形成されている。これにより、スライド本体部121の下部には、段差が形成される。また、図5に示すように、外側部121bの幅寸法(前後寸法)は、内側部121aの前後寸法よりも大きく形成されている。また、外側部121bの幅寸法は、アンカーフレーム5の各辺のけがき部5aの幅寸法よりも大きく形成される(図4を参照)。
【0065】
図6に示す開口部121cは、スライド本体部121を左右方向に貫通するように開口する部分である。開口部121cには、第一部分111が挿通される。開口部121cは、概ね第一部分111の形状に対応した形状に形成される。第一部分111が開口部121cに挿通されることで、スライド部120は、第一部分111の長さ方向に沿ってスライドすることができる。
【0066】
図6(a)に示す締結ボルト孔121dは、後述する締結ボルト122に嵌合可能なめねじが形成された孔である。締結ボルト孔121dは、スライド本体部121の外側部121bの前面において、開口部121cと連通するように形成される。
【0067】
図6(b)に示す高さ調節ボルト孔121eは、後述する高さ調節ボルト123に嵌合可能なめねじが形成された孔である。高さ調節ボルト孔121eは、スライド本体部121の内側部121aを上下に貫通するように形成される。
【0068】
図6(a)に示す締結ボルト122は、第一部分111に対して、任意の位置でスライド部120を固定可能なものである。締結ボルト122には、締結ボルト孔121dのめねじに嵌合するおねじが形成されている。
【0069】
図6(b)に示す高さ調節ボルト123は、アンカーフレーム5に対するスライド部120の高さを調節可能なものである。高さ調節ボルト123には、高さ調節ボルト孔121eのめねじに嵌合するおねじが形成されている。
【0070】
図6(b)に示すように、高さ調節ボルト123は、スライド部120及び第一部分111の長孔111aを挿通するように設けられる。また、高さ調節ボルト123の下端部は、第一部分111の下面よりも下方に位置している。この状態では、冶具100をアンカーフレーム5に設置した場合、高さ調節ボルト123の下端部がアンカーフレーム5の上面に当接する。
【0071】
また、高さ調節ボルト123は、スライド部120の高さ調節ボルト孔121eだけではなく、本体部110の高さ調節ボルト孔111b(112b)にも挿通可能である。
【0072】
以下では、スライド部120のスライド及び高さ調節の手順について説明する。
【0073】
図6(a)に示すように、スライド部120は、開口部121cに第一部分111が挿通した状態で、第一部分111の長手方向に沿ってスライド可能である。なお、スライド部120は、長孔111aに挿通された高さ調節ボルト孔121eによって、長孔111aが形成された範囲を超える移動が規制される。
【0074】
図6(a)に示すように、スライド部120を任意の位置に移動させた状態で、締結ボルト122を締結ボルト孔121dに対してねじ込み、第一部分111を後方に押し付けることで、第一部分111に対してスライド部120を固定することができる。
【0075】
また、図6(b)に示すように、高さ調節ボルト123を操作することで、アンカーフレーム5に対するスライド部120(スライド本体部121)の高さを調節することができる。すなわち、高さ調節ボルト123と、スライド本体部121の高さ調節ボルト孔121eと、は互いにねじで嵌合されている。従って高さ調節ボルト123を、更に下方に突出するように所定方向に回転させれば(ねじ込めば)、スライド本体部121を上方に変位させることができる。また、高さ調節ボルト123を上記所定方向と逆の方向に回転させれば、スライド本体部121を下方に変位させることができる。
【0076】
本実施形態に係る冶具100は、このようにスライド本体部121の高さを調節することで、スライド本体部121に挿通された本体部110の端部(第一部分111の右端部)のアンカーフレーム5に対する高さを調節することができる。
【0077】
以上、第一部分111の右側に設けられたスライド部120の構成を説明した。ここで、図5に示す第二部分112に設けられたスライド部120は、上記第一部分111の右側に設けられたスライド部120と同様な構成である。また、第一部分111の左側に設けられたスライド部120は、左右反転させた点を除いて、上記右側のスライド部120と同様な構成である。従って、第二部分112のスライド部120及び第一部分111の左側のスライド部120の詳細な説明は省略する。
【0078】
図3及び図5に示すターゲット部130は、本体部110の平面視中心Pにおいて、計測機器10の計測部11から照射された光波を反射可能なものである。ターゲット部130は、反射部131及び支持部132を具備する。
【0079】
反射部131は、計測部11から照射された光波を反射する部分である。反射部131は、例えば、板形状の部材に、光波を反射可能なシート(反射シート)を貼ることで形成される。図3に示すように、反射部131の表面には、十字の目印が設けられている。以下では、上記十字の交点を、「反射部131の中心」と称して説明する。
【0080】
支持部132は、反射部131の向きを変更可能に、反射部131を支持するものである。支持部132は、上下方向に向く第一回転軸132a回りに反射部131を回転可能に形成される。また、支持部132は、水平方向に向く第二回転軸132b回りに反射部131を回転可能に形成される。支持部132は、本体部110の平面視中心Pに設けられる。
【0081】
具体的には、支持部132は、第一回転軸132aが平面視において本体部110の平面視中心Pと一致するように設けられる(図5を参照)。また、支持部132は、第一回転軸132aが、平面視において反射部131の十字の縦線と一致(重複)するように設けられ、第二回転軸132bが、側面視において反射部131の十字の横線と一致するように設けられている。これにより、反射部131を第一回転軸132a及び第二回転軸132b回りに回転した場合であっても、反射部131の中心は、平面視において本体部110の平面視中心Pと一致するように形成される。
【0082】
図5に示す水準器140は、本体部110(ターゲット部130)の傾斜(水平状態)を確認するものである。水準器140は、本体部110の上面に設けられる。本実施形態では、水準器140を、第二部分112における高さ調節ボルト孔112bの前方に設けている。水準器140は、平面視において略円形状とされている。本実施形態では、水準器140を、容器の内部に、液体及び気泡を封入した気泡管水準器とした例を示している。なお、水準器140としては、このような態様に限られず、例えばデジタル式やレーザ式等、種々の水準器を採用可能である。
【0083】
次に、上述の如き計測システム1を用いたアンカーボルト4(アンカーボルトセット3)の位置の検査の手順について説明する。本実施形態では、アンカーフレーム5に設置された冶具100のターゲット部130の位置を、計測機器10を用いて計測することで、アンカーフレーム5の位置、ひいては各アンカーボルト4の位置が適切であるか否かの検査を行う。
【0084】
アンカーボルト4の位置の計測は、図1に示すように、型枠6の内部にアンカーボルトセット3を配置した状態であって、コンクリートを打設する前に行われる。図7に示すように、アンカーボルト4の位置の計測においては、データ入力(ステップS10)、基準点計測(ステップS20)、ターゲット計測(ステップS30)及び計測結果出力(ステップS40)が順番に行われる。
【0085】
データ入力(ステップS10)は、計測の事前準備として、アンカーボルト4の位置の計測に用いるデータを制御装置20に入力する手順である。ステップS10で入力されるデータには、アンカーボルト4の設計上の設置位置(設計位置)を示す基礎2の図面データ(CADファイル)や、計測結果の出力に用いる図面の画像ファイル、計測対象となるアンカーフレーム5の座標のリスト(座標リストファイル)等が含まれる。なお、ステップS10において入力するデータとしては、上述したものに限定されず、必要に応じて種々のデータを採用可能である。
【0086】
上述したデータは、入力部24を用いて入力される。計測者は、制御装置20を用いて、図面データにおける座標の原点や、アンカーフレーム5の平面視中心の座標等の登録を行う。また、計測者は、図面データにおける基準点(基準点用プリズム30が設置される位置)の座標の登録を行う。
【0087】
計測者は、上記制御装置20に入力したデータを、計測機器10に入力する。上記データの入力は、例えばブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)等の通信手段による無線通信や適宜のケーブルを介した通信により実行可能である。
【0088】
基準点計測(ステップS20)は、施工現場の2つの基準点にそれぞれ配置された各基準点用プリズム30を用いて、基準点の位置を計測機器10に取得させる手順である。基準点計測を行う際、計測者は、計測機器10を施工現場における任意の位置に設置する。
【0089】
基準点計測において、計測者は、入力部を用いた操作を行うことで、各基準点用プリズム30に対してそれぞれ計測部11からの光波を照射し、各基準点までの距離のデータを制御部15に取得させる。また、制御部15は、上記各基準点までの距離のデータに基づいて、各基準点用プリズム30の位置(座標)のデータを取得する。
【0090】
また、制御部15は、計測により取得した各基準点用プリズム30の座標のデータと、図面データにおける登録された基準点の座標と、に基づいて、各座標の間の誤差の有無を判断する。制御部15は、上記誤差があった場合には、その旨を表示部25に表示可能である。
【0091】
ターゲット計測(ステップS30)は、アンカーフレーム5に設置された冶具100のターゲット部130の位置を計測する手順である。ターゲット計測は、計測対象のアンカーフレーム5上に冶具100を設置した状態で行われる。上記冶具100の設置は、例えば計測機器10の操作を行う計測者とは異なる者(作業者)によって行われる。
【0092】
以下では、冶具100を、アンカーフレーム5に設置する様子について説明する。
【0093】
まず、図3及び図4に示すように、作業者は、アンカーフレーム5の上面に冶具100を載置する。この際に、作業者は、アンカーフレーム5のけがき部5aを基準として、本体部110の平面視中心Pを、アンカーフレーム5の平面視中心に合わせる。
【0094】
具体的には、図4に示すように、作業者は、第一部分111の後面を、アンカーフレーム5の左右両側のけがき部5aの頂点に合わせると共に、第二部分112の左面を、アンカーフレーム5の後側のけがき部5aの頂点に合わせる。これにより、本体部110の平面視中心Pとアンカーフレーム5の平面視中心とが、平面視において一致する。
【0095】
次に、作業者は、各スライド部120を、外側部121bがアンカーフレーム5の外縁に当接するようにスライドさせると共に、締結ボルト122をねじ込むことで、各スライド部120を固定する(図6(a)、(b)を参照)。これにより、図3及び図4に示すように、アンカーフレーム5に対する冶具100の位置決めを行うことができる。また、アンカーフレーム5に設置した冶具100の位置がずれることを抑制することができる。
【0096】
ここで、図4に示すように、外側部121bは、第一部分111の後面又は第二部分112の左面をけがき部5aの頂点に合わせた状態で、外側部121bの幅方向の両端部が、けがき部5aよりも幅方向外側に位置するように形成されている。これにより、外側部121bがけがき部5aに嵌ることで、冶具100の位置がずれることを抑制することができる。
【0097】
次に、作業者は、本体部110(ターゲット部130)が水平となるように、アンカーフレーム5に対する本体部110の角度を調節する。具体的には、作業者は、水準器140を確認しながら、各スライド部120の高さ調節ボルト123を操作することで、本体部110の各端部の高さ位置を調節する。これにより、三点でアンカーフレーム5に対する本体部110の角度を調節する。
【0098】
ここで、仮に、冶具100とアンカーボルト4とが干渉することで、本体部110の平面視中心Pとアンカーフレーム5の平面視中心とを平面視において一致させることができない場合は、アンカーフレーム5の平面視中心に対して、本体部110の平面視中心Pを任意の方向に対してオフセットさせて、冶具100を設置するようにしてもよい。この場合は、オフセットした方向及び量を考慮して計測を行う。
【0099】
また、仮に、アンカーフレーム5の外径が小さく、スライド部120を平面視中心側に最大まで移動させた場合でも高さ調節ボルト123の下端部をアンカーフレーム5の上面に当接させられない場合は、本体部110の高さ調節ボルト孔111b(112b)を用いるようにしてもよい。すなわち、高さ調節ボルト孔111b(112b)に、高さ調節ボルト123を嵌合させた場合に、高さ調節ボルト123の下端部をアンカーフレーム5に当接させることができる場合には、この状態で高さ調節ボルト123の操作を行うことで、アンカーフレーム5に対する本体部110の角度を調節することができる。
【0100】
上述した作業を行うことで、ターゲット部130がアンカーフレーム5の平面視中心に位置すると共に、ターゲット部130が水平となるように、アンカーフレーム5に対して冶具100を設置することができる。また、作業者は、必要に応じてターゲット部130の反射部131を、計測機器10の方へ向ける。
【0101】
ターゲット計測において、計測者は、入力部を用いた操作を行うことで計測を行うアンカーフレーム5を指定する。また、計測者は、入力部を用いた操作を行うことで、アンカーフレーム5に設置された冶具100のターゲット部130に対して計測部11からの光波を照射し、ターゲット部130までの角度と距離のデータを制御部15に取得させる。制御部15は、ターゲット部130までの角度と距離のデータに基づいて、ターゲット部130の位置(座標)を取得する。
【0102】
上述したターゲット計測を行うことで、ターゲット部130の位置、ひいては計測対象のアンカーフレーム5の平面視中心の位置(座標)の計測を行うことができる。また、制御部15は、図面データにおける登録されたアンカーフレーム5の設計座標と、計測されたアンカーフレーム5の実測座標と、に基づいて、各座標の間の誤差(位置ずれ)の有無を判断や、位置ずれの量の算出を実行可能である。
【0103】
制御部15は、上記アンカーフレーム5の平面視中心の位置(座標)や、位置ずれの有無、位置ずれの量を含む計測結果を表示部25に表示可能である。また、制御部15は、上記指定されたアンカーフレーム5の計測が終了したことを示す表示を、表示部25に表示可能である。
【0104】
ターゲット計測において、計測者は、上述した計測を全ての計測対象のアンカーフレーム5に対して実行する。作業者は、ある計測対象のアンカーフレーム5の位置の計測が終了すれば、他の計測対象のアンカーフレーム5に冶具100を設置する。
【0105】
なお、上述した例では、計測者とは異なる作業者が、冶具100の設置を行う例を示したが、このような例に限定されない。例えば、計測者が冶具100の設置を行うようにしてもよい。本実施形態によれば、このようにアンカーフレーム5の位置の計測を一人で行うことができる。
【0106】
計測結果出力(ステップS40)は、ターゲット計測の計測結果を出力する手順である。計測結果出力は、例えば全ての計測対象のアンカーフレーム5の計測の終了後に実行される。上記計測結果は、例えば基礎2の図面の画像や表を用いて示される。
【0107】
上記計測結果は、表示部25に表示可能である。この場合は、計測結果のデータを計測機器10から制御装置20に送信し、制御装置20の表示部25に表示するようにしてもよい。また、制御装置20に接続された印刷機を用いて紙に出力するようにしてもよい。
【0108】
なお、上述した本実施形態に係る計測システム1による計測の内容は一例であり、計測システム1による計測としては上述した内容に限定されず、種々の変更が可能である。
【0109】
例えば、上述した例では、ターゲット計測(ステップS30)でのアンカーフレーム5位置ずれの有無を判断や、位置ずれの量の算出の処理を、計測機器10の制御部15に実行させた例を示したが、上述した内容には限定されない。例えば、制御装置20の制御部22に上記処理を実行させるようにしてもよい。
【0110】
上述の如き計測システム1を用いた計測を行うことで、アンカーボルト4の位置の検査の手間を削減することができる。すなわち、一般的なアンカーボルト4の位置の計測においては、複数(本実施形態では4つ)のアンカーボルト4ごとにプリズムを設置し、計測機器等を用いた位置の計測を行うことが想定される。
【0111】
一方、本実施形態に係る計測システム1によれば、計測機器10と、アンカーフレーム5の平面視中心にターゲット部130を配置可能な冶具100と、を用いてアンカーフレーム5の平面視中心の位置を計測することができる。上記アンカーフレーム5の平面視中心の位置を計測することで、アンカーフレーム5が設けられた複数のアンカーボルト4の位置や、複数のアンカーボルト4の位置ずれの有無、位置ずれの量を把握することができる。このように、冶具100を用いることで、複数の(4つの)アンカーボルト4に対して一回の計測で、各アンカーボルト4の位置の検査を行うことができる。
【0112】
上記計測の結果、アンカーフレーム5、ひいてはアンカーボルト4の位置ずれが確認された場合は、必要に応じて作業者がアンカーボルト4の位置の修正を行う。
【0113】
また、計測システム1は、アンカーボルト4の位置の検査だけでなく、完成後(コンクリートの硬化後)の基礎2の位置の検査にも使用可能である。
【0114】
上記基礎2の検査を行う際には、計測用プリズム40を基礎2の計測対象に設置し、上記計測用プリズム40に対して計測機器10からの光波を照射することで計測対象の位置を計測する。上記基礎2の計測対象としては、基礎2のうち鉄骨柱が設置される部分の四隅を採用可能である。
【0115】
また、計測システム1は、上記基礎2に固定された鉄骨柱の建て入れ精度の検査にも使用可能である。この際には、計測対象の鉄骨柱に適宜の反射シートを貼り、当該反射シートに対して計測機器10からの光波を照射することで計測対象の位置を計測する。
【0116】
また、計測システム1は、上記基礎2を施工する前に、基礎2の施工箇所(捨てコンクリート等)に墨出し作業により引かれた通り芯の検査にも使用可能である。この際には、通り芯上に計測用プリズム40を設置し、上記計測用プリズム40に対して計測機器10からの光波を照射することで通り芯の検査を行う。
【0117】
上記各検査は、図7で示した手順と概ね同様の手順により実行可能である。この際には、データ入力(ステップS10)において、基礎2や鉄骨柱、通り芯の計測対象の登録を行う。
【0118】
このように、本実施形態に係る計測システム1は、共通の計測機器10を用いて、上述したアンカーボルト4(アンカーフレーム5)の位置の検査や、基礎2の検査、鉄骨柱の検査、通り芯の検査を行うことができる。
【0119】
以上のように、本発明の一実施形態に係る冶具100は、
建物の基礎2の複数のアンカーボルト4を支持するアンカーフレーム5に設置される設置部(本体部110)と、
前記設置部(本体部110)に設けられ、光を反射可能なターゲット部130と、
前記アンカーフレーム5の平面視中心に対する任意の計測位置(平面視中心)に、前記ターゲット部130を設定可能な設定部(第一部分111の後面、第二部分112の左面)と、
を具備するものである。
【0120】
このような構成により、アンカーフレーム5の位置の検査の手間を削減することができる。すなわち、アンカーフレーム5の平面視中心にターゲット部130が位置するように冶具100を設置し、上記冶具100のターゲット部130に、光による測量が可能な計測機器10の光を照射することで、アンカーフレーム5の平面視中心の位置の計測を行うことができる。これにより、複数のアンカーボルト4の位置の検査をそれぞれ行うことなく、一回の計測で複数のアンカーボルト4の位置の検査を行うことができる。
【0121】
また、冶具100は、
前記ターゲット部130が前記計測位置に設定された状態で前記設置部(本体部110)を前記アンカーフレーム5に取り付け可能な取付部(スライド部120)を具備するものである。
【0122】
このような構成により、アンカーフレーム5に対して冶具100がずれることを抑制することができる。
【0123】
前記取付部(スライド部120)は、
前記設置部(本体部110)に対して移動可能に設けられると共に、前記アンカーフレーム5の外縁に当接することで、前記アンカーフレーム5に取り付けられるものである。
【0124】
このような構成により、アンカーフレーム5に対する冶具100の位置決めを行うことができる。
【0125】
また、冶具100は、
前記アンカーフレーム5に対する前記ターゲット部130の角度を調節可能な調節部(高さ調節ボルト123)を具備するものである。
【0126】
このような構成により、計測の精度を向上させることができる。すなわち、調節部(高さ調節ボルト123)を設けたことで、ターゲット部130が水平となるように、アンカーフレーム5に対するターゲット部130の角度を調節することができる。これにより、計測の精度を向上させることができる。
【0127】
また、冶具100は、
前記ターゲット部130の水平状態を確認可能な水準器140を具備するものである。
【0128】
このような構成により、アンカーフレーム5に対するターゲット部130の角度を調節する際の作業性を向上させることができる。
【0129】
また、前記設定部は、
第一方向(前後方向)における前記ターゲット部130の位置を設定可能な第一設定部(第一部分111の後面)と、
前記第一方向に直交する第二方向(左右方向)における前記ターゲット部130の位置を設定可能な第二設定部(第二部分112の左面)と、
を具備するものである。
【0130】
このような構成により、計測位置(アンカーフレーム5の平面視中心)にターゲット部130を位置させ易くすることができる。すなわち、第一設定部(第一部分111の後面)及び第二設定部(第二部分112の左面)を、それぞれアンカーフレーム5の一辺に形成された任意の目印(けがき部5a)に合わせることで、計測位置(アンカーフレーム5の平面視中心)にターゲット部130を位置させることができる。このように、第一設定部(第一部分111の後面)及び第二設定部(第二部分112の左面)を用いて2方向の位置を合わせることで、ターゲット部130を容易に計測位置(アンカーフレーム5の平面視中心)に位置させることができる。
【0131】
また、本発明の一実施形態に係る計測システム1は、
建物の基礎2の複数のアンカーボルト4を支持するアンカーフレーム5の平面視中心に対する任意の計測位置に、光を反射可能なターゲット部130を配置可能な冶具100と、
前記ターゲット部130に光を照射することで、前記ターゲット部130の位置を計測可能な計測機器10と、
前記計測機器10の計測結果に基づいて、前記アンカーフレーム5の位置の検査を実行可能な制御装置20と、
を具備するものである。
【0132】
このような構成により、アンカーフレーム5の位置の検査の手間を削減することができる。すなわち、計測位置(アンカーフレーム5の平面視中心)にターゲット部130が位置するように冶具を設置し、上記冶具100のターゲット部130に計測機器10の光を照射することで、アンカーフレーム5の平面視中心の位置の計測を行うことができ、上記計測結果に基づいてアンカーフレーム5の位置の検査を行うことができる。これにより、複数のアンカーボルト4の位置の検査をそれぞれ行うことなく、一回の計測で複数のアンカーボルト4の位置の検査を行うことができる。
【0133】
なお、本実施形態に係る本体部110は、本発明に係る設置部の一形態である。
また、本実施形態に係る高さ調節ボルト123は、本発明に係る調節部の一形態である。
また、本実施形態に係るスライド部120は、本発明に係る当接部の一形態である。
また、本実施形態に係る第一部分111の後面は、本発明に係る第一設定部の一形態である。
また、本実施形態に係る第二部分112の左面は、本発明に係る第二設定部の一形態である。
【0134】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0135】
例えば、本実施形態では、第一部分111の両端側にスライド部120を設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、第一部分111の一端側のみにスライド部120を設けるようにしてもよい。
【0136】
また、本実施形態では、本体部110にスライド部120を設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、スライド部120を設けないようにしてもよい。この場合は、本体部110の適宜の位置に設けたボルト孔(高さ調節ボルト孔111b、112b等)に、高さ調節ボルト123を設けるようにしてもよい。
【0137】
また、本実施形態では、本体部110全体の位置を移動させることで、アンカーフレーム5に対する本体部110及びターゲット部130の位置合わせを行う例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、第二部分112及びターゲット部130を、第一部分111に対して左右方向(第一部分111の長手方向)にスライド可能に形成し、第二部分112及びターゲット部130を移動させることでアンカーフレーム5に対する位置合わせを行うようにしてもよい。
【0138】
また、本実施形態では、本体部110に水準器140を一体的に設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、水準器140を本体部110と別体としてもよい。この場合は、別体の水準器140を、本体部110の上に取り付けて使用するようにしてもよい。
【0139】
また、本実施形態では、制御装置20としてパーソナルコンピュータを用いた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、適宜のスマートフォンやタブレット端末等の端末を制御装置20として用いてもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 計測システム
10 計測機器
20 制御装置
30 基準点用プリズム
100 冶具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7