(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014335
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのためのシリンダ及び大型ディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
F02F 1/04 20060101AFI20230119BHJP
F02F 1/36 20060101ALI20230119BHJP
F02F 1/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
F02F1/04
F02F1/36 A
F02F1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193381
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2017039720の分割
【原出願日】2017-03-02
(31)【優先権主張番号】16160827.8
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515111358
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンラット レス
(57)【要約】
【課題】ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのためのシリンダを提供すること。
【解決手段】ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのためのシリンダが、下死点位置と上死点位置との間を往復移動可能に配置されたピストン3であって、少なくとも1つの最上位ピストンリング31を有するピストン3と、ピストン3をガイドするためのシリンダライナ4であって、走行面41を有し、動作状態においてピストンの最上位ピストンリング31が走行面41に沿ってスライドするシリンダライナ4と、シリンダカバー5であって、シリンダカバー5及びピストン3は燃料の燃焼空間6と隣接しているシリンダカバー5とを有し、シリンダライナ4は、最上位ピストンリングの上死点位置Oの下に冷却剤ボアを有さない。更に大型のディーゼルエンジンが提案される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのためのシリンダであって、
下死点位置と上死点位置との間を往復移動可能に配置され、少なくとも1つの最上位ピストンリング(31)を有するピストン(3)と、
前記ピストン(3)をガイドするためのシリンダライナ(4)であって、走行面(41)を有し、動作状態において前記走行面に沿って前記ピストンの前記最上位ピストンリング(31)がスライドする、シリンダライナ(4)と、
シリンダカバー(5)であって、前記シリンダカバー(5)及び前記ピストン(3)が燃料の燃焼空間(6)の境界となっている、シリンダカバー(5)と
を有するシリンダにおいて、
前記シリンダライナ(4)は、前記最上位ピストンリングの上死点位置(O)の下に冷却剤ボアがなく、且つ前記最上位ピストンリング(31)の前記上死点位置(O)の下で前記シリンダライナ(4)を取り囲む空気のみによって冷却可能であることを特徴とする、シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれのカテゴリの独立請求項の前提部分に記載したユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのためのシリンダと、大型2ストロークディーゼルエンジンとに関する。
【背景技術】
【0002】
ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンは、しばしば船舶の駆動装置として、又は、例えば電気エネルギーを生成するための大型発電機の駆動等の定置運転においても使用される。この点において、一般にエンジンはかなりの時間に亘り一定の動作で連続稼働し、このことが動作の安全性及び使用可能性に関する要求を高めている。特に、長い点検間隔、低い摩耗性、及び経済的な燃料の扱いは、操作者にとって中心的な基準である。
【0003】
排気の質、特に排気内の亜酸化窒素の濃度もここ数年重要性を増す主要な側面となった。法的規制及び対応する排気制限値のための制限値は、ここ最近更に厳しくなっている。これは特に、大型2ストロークディーゼルエンジンに関し、汚染物質で強く汚染された従来の重油の燃焼だけでなく、ディーゼル油又は他の燃料の燃焼がより大きな問題となるという結果を招いている。その理由として、排ガス基準の順守がますます困難になり、技術的に複雑さが増しているため、費用が高くなってしまうこと、又は結局はそれらの順守がもはや経済的に合理的でないということが挙げられる。
【0004】
実際に、いわゆる「デュアルフューエル」エンジン、即ち2つの異なる燃料を使用して作動され得るエンジンが既に長い間求められている。ガス、例えばLNG(液化天然ガス)を含む天然ガスや、液化石油ガスの形態又は燃焼機関を駆動するのに適した他の形態のガスなどはガスモードで燃焼され、一方ディーゼル燃料油又は重油のような適切な液体燃料は同じエンジンにおいて液体モードで燃焼され得る。
【0005】
本願の枠組み内の「大型ディーゼルエンジン」という用語は、自己発火により特徴付けられるディーゼル運転に加え、外部から供給される点火により特徴付けられる、又はこれらの2つが混合された形態で運転され得るガソリン運転においても作動され得る大型ディーゼルエンジンも意味する。更に、大型ディーゼルエンジンという用語は、特に前記デュアルフューエルエンジン及び燃料の自己発火が外部から供給される異なる燃料の点火に使用される大型エンジンも含む。
【0006】
液体モードにおいて、燃料は通常シリンダの燃焼室に直接導入され、そこで自己発火の原理に従い燃焼する。ガスモードでは、自己発火の原理に従い気体状態のガスを掃気と混合し、よってシリンダの燃焼空間内に引火性混合物を生成することが知られている。シリンダ内の混合物の点火は、少量の液体燃料がシリンダの燃焼空間又は予燃室に適切な時期に噴射されるという点でこの低圧プロセスにおいて発生し、空気ガス混合気の点火をもたらす。動作の間、デュアルフューエルエンジンはガスモードから液体モードへの切り替え、又はその逆も可能である。
【0007】
ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンは少なくとも1つのシリンダを有するが、通常は複数のシリンダを有しており、各シリンダには上死点位置と下死点位置との間を往復して移動可能に配置されたピストンが設けられ、ピストンは少なくとも1つの最上位(topmost)ピストンリングを有するが、しばしば複数のピストンリングも有する。シリンダは更にピストンをガイドするシリンダライナを有し、シリンダライナの内側に位置する境界面が走行面を形成し、動作状態においてこの走行面に沿って1つ又は複数のピストンリングがスライドする。ピストンの上部境界面と共に燃料の燃焼空間の境界を定めるシリンダカバーが更に設けられる。ディーゼル運転においてピストンが大型ディーゼエンジンの動作の間に上死点位置又は反転位置の領域にある時、燃料が燃焼空間に噴射され、点火してピストンの下方移動を推進する。更に出口弁がユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのシリンダカバーに設けられ、燃料の燃焼の後にピストンの下方移動に関して開かれる。ピストンが下死点位置又は下方反転位置に近づくと、それはシリンダの下方領域に通常設けられる掃気スリットを通過し、よって給気とも呼ばれる掃気の燃焼空間への流入を可能にする。その後の上方移動では、ピストンは再び掃気スリットと燃焼空間との間のフロー連通路を閉じ、出口弁が閉じられ、ピストンの更なる上方移動ではシリンダに位置する掃気は次の液体燃料の噴射がピストンの上死点位置の領域で発生するまで圧縮される。
【0008】
可能な限り効率的で、低汚染且つ経済的である大型ディーゼルエンジンの動作に対し、シリンダライナの走行面、ピストンリング及び適切な潤滑油を有するトライボロジー装置が可能な限り最適な方法で調節されることが重要である。燃焼プロセスで生じる高温により、例えば構造物へのひび割れ等の走行面又はシリンダライナへの熱的に誘導される損害を回避するためにシリンダライナは通常冷却される。この目的のため、シリンダライナは一般に水である液体冷却媒体により冷却され、シリンダライナから熱を放散させることが知られる。このプロセスにおける冷却剤は、ポンプによりシリンダライナの冷却剤ボア又は冷却剤ラインを通して循環され、走行面から熱を抽出する。
【0009】
特に重油が液体燃料として使用される場合、シリンダライナ、及び特にその走行面は、重油の燃焼に関して生じる化学的に攻撃的な物質からの攻撃にしばしば曝される。硫黄を含む燃料の燃焼に関して生じる硫黄化合物が本明細書では実例として指定される。走行面に配置されて走行面を攻撃可能な、すなわち亜硫酸又は硫酸が走行面の温度に応じて形成される。
【0010】
従って、走行面の温度を設定し、そのような酸の攻撃を冷却媒体の助けにより適切な冷却剤により回避又は減少させ、その結果温度を水又は硫酸等の飽和温度より上に維持するための努力がなされている。水、亜硫酸又は他の攻撃的物質の凝縮は、走行面を攻撃し、走行面を最大のリスクに曝すメカニズムとして知られる。
【0011】
しかし、走行面温度のこの設定は、いくつかの困難と関連する。走行面への最大の入熱は当然燃焼空間に最も近い走行面の領域で発生する。特にこれは最上位ピストンリングの死点位置に隣接する又はその下に位置する領域でもあり、その理由は、この領域はピストンの下方移動に関してまだ大変熱く且つまだ高圧である燃焼ガスと接触し、その結果シリンダライナの過熱を回避するためにここで通常水冷が提供されるためである。対照的に、冷却は更に下方に位置するシリンダライナの領域ではそれほど大きくしなくてもよく、その結果水の飽和点は可能であれば低下しない。
【0012】
従って、一方でシリンダライナの上部領域における十分な冷却効果を確実にするため、他方で水又は酸等の他の流体の飽和点より上に走行面の温度を維持する目的で、水冷及び空冷の汚染に基づく大型2ストロークディーゼルエンジンにおけるシリンダライナのための高度に複雑な冷却システムが開発されてきた。これらの知られたシステムはそれらの複雑さに加え、更に欠点を有する。例えば大型のディーゼルエンジンが全負荷電力の10%等の低い部分的負荷運転で作動される場合、燃焼プロセスによる走行面への加熱電源入力が小さすぎるため、冷却水は走行面を水の飽和点より上の温度に維持するために更に加熱されなければならない。これは更なる装置労力と更なるエネルギー要求を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の従来技術から、本発明の目的は、必要とされる攻撃的物質の攻撃に関する保護に妥協をせず、装置の観点から可能な限り少ない複雑さ及び/コストを有するシリンダライナの走行面の冷却が提供される、ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのためのシリンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を満足する発明の主題はそれぞれのカテゴリの独立請求項の特徴によって特徴付けられる。
【0015】
本発明によると、ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのためのシリンダが提供され、このシリンダは、下死点位置と上死点位置との間を往復移動可能に配置された、少なくとも1つの最上位ピストンリングを有するピストンと、走行面を有し、動作状態においてその走行面に沿ってピストンの最上位ピストンリングがスライドするシリンダライナと、シリンダカバーであって、このシリンダカバー及びピストンは燃料の燃焼空間と隣接しているシリンダカバーとを有し、またシリンダライナは、最上位ピストンリングの上死点位置の下に冷却剤ボアを有していない。
【0016】
このプロセスにおいてシリンダライナに生じる熱的に誘導される損害なしに、シリンダライナが最上位ピストンリングの上死点位置の下に水等の液体冷却媒体のための冷却剤ボアを有さないユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンに、シリンダを設けることが可能であるという認識は重要である。
【0017】
この文脈での最上位ピストンリングの死点位置は、ピストンがその移動の上死点位置にある時に、最上位ピストンリングの上端、即ち燃焼空間に最も近い端部が位置するシリンダライナにおける位置を意味する。
【0018】
ボア又は冷却液を導く同等の手段が最上位ピストンリングのこの死点位置の下のシリンダライナに設けられないため、シリンダライナのより簡単な構造及び実質的に単純なデザインがもたらされる。更に、追加のポンプ装置、又はシリンダライナのこの領域を通って冷却液を循環させる、若しくはその温度を制御するのに必要と思われる温度制御装置も免除することができる。よってシリンダライナのコスト並びにエネルギーコスト及び装置労力が削減され得、よって大型のディーゼルエンジンのより経済的且つよりエネルギー消費の少ない運転がもたらされる。
【0019】
シリンダライナは、好ましくは最上位ピストンリングの上死点の下のシリンダライナを取り囲む空気のみにより冷却可能であるか、冷却される。冷却ジャケット又は冷却のために知られる他の方策も特に必要でない。よってシリンダライナは、シリンダライナの周囲の空気に放射熱を出力するという点で、最上位ピストンリングの死点位置の下のみにおいて冷却される。
【0020】
好ましい実施例によると、シリンダのシリンダライナは、シリンダ軸線により固定される軸方向に関して燃焼空間の下でシリンダライナが終端するようにデザインされる。これによりシリンダライナのデザインは特に単純となる。
【0021】
この点について、シリンダライナは軸方向に関して上端まで延びることが好ましく、この上端は軸方向に関して最上位ピストンリングの上死点位置と一致するものである。よってシリンダライナは、軸方向に関し、最上位ピストンリングの上死点位置が正に位置する場所で終端する。シリンダライナは特に単純なデザインを有することができ、ピストンのガイドの役割のみを果たすが、燃焼空間の境界の役目は果たさない。それによりシリンダライナ全体は、冷却剤ボア、又は冷却ジャケット等の冷却を目的とする他の方策のない単純な方法で構成され得る。
【0022】
他の実施例において、シリンダライナはカラー領域を有する。よってこの実施例において、シリンダライナは軸方向に関し最上位ピストンリングの上死点位置を超えて延びる。この点においてカラー領域が大変長く上方に延在するため、カラー領域は、燃焼空間が最少体積を有する時、即ちピストンが上死点位置にある時、燃焼空間の境界を形成することが可能である。この点においてこのカラー領域は通常、シリンダライナの残りよりも厚い壁厚を有するように構成され、その結果特に燃焼空間に存在する圧力にも耐えることができる。又この実施例においてシリンダライナは最上位ピストンリングの死点位置の下の領域でシリンダライナを取り囲む空気のみにより冷却され、そこでは更なる冷却方策、特に水等の液体冷却媒体により冷却がカラー領域において提供される。
【0023】
シリンダライナは通常、ねずみ鋳鉄から製造される。その結果、シリンダライナの熱耐性が燃焼空間に最も近い領域において上回らないように、いくつかの用途ではシリンダライナと異なる材料で製造される管状の中間片がシリンダライナの上端とシリンダカバーとの間に設けられれば有利であり得る。この材料は基準に従い第一に選択されるため、実質的な劣化効果なしに高温に耐えることができる。
【0024】
最上位ピストンリングは、上死点位置がシリンダライナの領域内にあるように、且つ動作温度が好ましくは250℃から350℃である予め定義可能な温度範囲内にあるように軸方向に関して配置されることは好ましい方策である。最上位ピストンリングの位置はパーセントで、又はピストンのストロークに関連して決定される必要はなく、むしろシリンダライナの走行面の作動温度を使用して決定され、作動温度とはシリンダライナの走行面が大型ディーゼルエンジンの全負荷運転に達する作動温度を意味する。この方策は特に軸方向の高さにおいて、ピストンのはるかに柔軟性のあるデザインを可能にする。
【0025】
燃焼空間における燃料の燃焼から生じる熱をできるだけ完全にシリンダから外へ導くため、流体冷却媒体のための冷却剤ラインが最上位ピストンリングの上死点位置の上に設けられれば有利な方策である。
【0026】
この点において、好ましくは水である液体冷却媒体のための冷却剤ラインが最上位ピストンリングの上死点位置の上に設けられれば特に好ましい。よってこの実施例において、冷却システムは2つの異なる部分を有し、即ち軸方向に関し最上位ピストンリングの上死点の下に位置し、純粋な空気冷却が提供される領域と、特に水である液体媒体により更に冷却が提供される最上位ピストンリングの上死点の上の領域である。
【0027】
冷却剤ラインはシリンダカバー又はシリンダライナ内に設けられる冷却剤ボアを有することが、最上位ピストンリングの上死点位置より上の領域における冷却にとって好ましい。
【0028】
本発明に従い構成されたシリンダを有するユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンが本発明により更に提供される。
【0029】
用途によっては、冷却空気を最上位ピストンリングの上死点の領域内のシリンダライナへ供給可能なファンが大型ディーゼルエンジンに設けられれば有利であり得る。ファンは別体のファンでもよく、又はターボチャージャーにより吸引される空気によるエンジンルームの真空の形成を回避するため、例えば新鮮な空気がエンジンルームに導入されるファン等の大型ディーゼルエンジンに既に存在するファンによりこの冷却空気が運搬されることも可能である。
【0030】
そのような既に存在するファンが、シリンダライナを冷却し過ぎてその結果例えば水の飽和点が低下すると思われる冷却空気流を生成する場合、シリンダライナを空気流から遮蔽可能な遮蔽体が設けられれば有利であり得る。
【0031】
シリンダライナは、冷却空気が導入可能な管状要素により少なくとも一部が取り囲まれても有利であり得る。この管状要素は例えばファンとフロー連通することができ、その結果冷却空気が冷却を必要とする領域に直接導かれる。
【0032】
本発明により大型ディーゼルエンジンは特にガスの燃焼及び液体燃料、特にディーゼル燃料油又は重油の燃焼のためのデュアルフューエルエンジンとしても構成され得る。
【0033】
本発明の更なる有利な方策及び実施例は従属請求項から得られる。
【0034】
本発明は実施例及び図面を参照して以下により詳細に説明されるであろう。図面において、以下のことが示される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明によるシリンダの第1の実施例を有する、本発明による大型2ストロークディーゼルエンジンの実施例を通した長手方向断面図である。
【
図2】本発明によるシリンダの第1の実施例の変形例の上部領域を通る長手方向断面図である。
【
図3】本発明によるシリンダの第2の実施例を通る長手方向断面図である。
【
図4】本発明によるシリンダの第3の実施例を通る長手方向断面図である。
【
図5】本発明によるシリンダの実施例の変形例の上部領域を通る軸方向に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は本発明によるユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンの実施例を通る長手方向断面図を示し、そのディーゼルエンジンは全体として参照番号1が付され、本発明によるシリンダ2の第1の実施例を有する。この点において、発明の理解に対する要素物質のみが
図1に示される。液体燃料噴射装置、エンジンブリージング装置、排ガスシステム又は掃気や給気を供給するターボチャージャー装置、及び大型ディーゼルエンジンのための監視及び制御システムのような大型ディーゼルエンジン1の基本的なデザイン及び個々の要素は当業者に十分知られているため、更なる説明を必要としない。そのような要素の表示は
図1を大幅に明確にするため免除される。
【0037】
大型のディーゼルエンジン1は少なくとも1つのシリンダを有するが、通常は複数のシリンダ2を有し、そのうちの1つのみが
図1の長手方向断面図に示される。シリンダ2は以下において軸方向Aと呼ばれる方向を定めるシリンダ軸線を有する。「上方」、「下方」、「上に」、「下に」又は類似語等の相対的な用語は常に
図1に示される大型ディーゼルエンジンの通常の使用位置に関連する。
【0038】
ピストン3はそれ自体知られた方法でシリンダ2に設けられ、下死点位置又は下方反転位置と、上死点位置又は上方反転位置との間で往復移動可能に配置される。更にシリンダ2は、軸方向Aに延びるシリンダライナ4であって、内側に配置された境界面がピストン3をピストン3の移動に関してガイドする走行面41を形成するシリンダライナ4を有する。更にシリンダ2を上端で終端させるシリンダカバー5が設けられる。シリンダカバー5及びピストン3は、図示しない噴射装置により燃料が導入され得る燃焼空間6と隣接し、境界をなす。燃料の導入は通常、ピストン3が上死点位置の領域に配置される時に生じる。
【0039】
ピストン3は少なくとも1つのピストンリングを有するが、好ましくは複数のピストンリングであり、そのうち燃焼空間6に最も近いものが最上位ピストンリング31と呼ばれる。正確に1つのピストンリングのみがピストン3に設けられるとすれば、当然それは最上位ピストンリング31である。大型ディーゼルエンジン1の作動の間、最上位ピストンリング31でもあるピストンリングは走行面41に沿って上下にスライドする。十分に知られているように、それらの最重要の機能は燃焼空間6のシールであり、その結果燃料の燃焼に関して発生するエネルギーはできるだけ理想的な方法でピストン3の運動エネルギーに転換される。
【0040】
ピストン3はそれ自体知られた方法でピストンロッド7を介してクロスヘッド8に連結され、クロスヘッド8は図示しないクランクシャフトに連結ロッド9を介して連結される。ユニフロー掃気大型ディーゼルエンジン1に慣例となっているように、シリンダライナ4は下部領域に掃気スリット42を有し、掃気スリット42を通して給気とも呼ばれる掃気がシリンダに供給され得る。
【0041】
動作状態において、液体燃料は一般にピストン3が上死点位置に到達する直前に燃焼空間6に噴射される。燃料は発火し、ピストン3は燃焼プロセスにおいて生じる圧力により下方に加速される。通常シリンダカバー5の中央に配置される出口弁であって、それを通して燃焼ガスが燃焼空間6から排ガスシステム10へ漏れ出ることができ、これ以上詳細に示されない出口弁が下方移動の間に開かれる。
【0042】
ピストン3が下方移動において掃気スリット42を通過する時にフロー連通路を開き、その結果新鮮な給気がシリンダ2又は燃焼空間6に移動できる。その後のピストン3の上方移動において、ピストン3は再び掃気スリット42を通過し、よって燃焼空間6へのフロー連通路を閉じ、その結果更なる給気が掃気スリット42を通って燃焼空間6へ流れない。ピストン3の更なる上方移動において、出口弁は閉じられ、その結果シリンダ2内の空気がその後圧縮される。ピストン3が上死点位置に到達する少し前に、燃料は次のサイクルが開始できるように再び燃焼空間6に噴射される。
【0043】
本発明によると、シリンダライナ4は少なくとも最上位ピストンリング31の上死点位置Oの下に冷却剤ボアがない(ボアフリーである)。この点において、最上位ピストンリング31の上死点位置Oは、ピストン3が上死点位置にある時、燃焼空間6に最も近く配置された端部である最上部のピストンリング31の上端部が配置される軸方向Aの位置又は高さを意味する。
【0044】
シリンダライナ4は特に好ましくは、最上部ピストンリング31の上死点位置Oの下でシリンダライナ4を取り囲む空気のみにより冷却される。従って、特に例えば水のような液体媒体によりシリンダライナ4から熱を抽出する、又はシリンダライナ4と液体媒体との間の熱交換を可能にする冷却ジャケット又は他の装置も設けられない。よってシリンダライナ4は、例えば放射により上死点位置Oの下でシリンダライナ4を取り囲む空気へ熱を出力するのみである。
【0045】
図1による実施例に示されるように、シリンダライナ4はピストン3が上死点位置にある時、軸方向Aに関して燃焼空間6の真下で終端する。燃焼空間6が最大まで圧縮された時、燃焼空間はシリンダライナ4ではなく、シリンダカバー5及びピストン3と隣接するのみである。特にシリンダライナ4は、軸方向Aに関して最上位ピストンリング31の上死点位置Oと一致する上端まで延びる。この実施例において、シリンダライナ4は例えば冷却ジャケットのような熱交換のための冷却剤ボアや他の装置が全くない。シリンダライナ4はまた最大限に圧縮された燃焼空間6の下又は下方境界面で終端し、よって燃焼空間6内で燃焼プロセスに直接曝されないため、本実施例におけるシリンダライナ4は上端においてシリンダライナの残りよりも厚い壁厚を有するカラー領域を有さない。よってシリンダライナ4はピストン3をガイドすること、及び回転防止パートナーとしてピストンリングをシールすることに貢献する機能のみを有するが、燃焼プロセス中の燃焼空間6の境界の役割は果たさない。よってシリンダライナ4は実質的にピストンのガイド及びシール管である。
【0046】
この点における主要な観点は、最上部ピストンリング31の上死点位置Oの下でシリンダライナ4を冷却すること、又は
図1による実施例において、シリンダライナ4に熱的損害を与えることなく空気によってのみシリンダライナ4全体を冷却することが可能であるとの認識である。
【0047】
一般に、例えば水のような冷却液を最上部ピストン31の上死点位置Oの下の領域において使用しないことは、従来の冷却構想に比べて作動中に走行面41の温度を上昇させる結果となる。この上昇した走行面温度により効果的に回避され得ることは、亜硫酸又は他の攻撃的な液体の、走行面41における水の飽和点の低下である。
【0048】
シリンダライナ4は知られたシリンダライナと比較して特に単純である実施例によって特徴付けられ、より簡単及び安価に製造できる。最上位ピストンリング31の上死点位置Oの下で例えば水等の液体媒体を使用した冷却はないため、即ちずっと少ない液体冷却媒体が循環する必要があるため、大型ディーゼルエンジン全体に対する大幅に少ない液体冷却媒体が全般的に必要となり、よって冷却ポンプのエネルギー消費が減少される。また用途に応じて冷却ポンプの数も減少され得、それはコストを更により減少させる。よって全体のエンジンのよりよいエネルギー効率が全般にもたらされる。飽和点より下への低下が有効に回避されるため、特にピストン3の上死点位置における走行面41のより高い動作温度により腐食のリスクが大幅に低下され得る。よって高いBN(塩基価)を有する潤滑油の要求又は消費も低下する。BNは例えば亜硫酸等の酸を中和する潤滑油の性能の測定値である。例えば硫黄を多く含む重油のような燃料と共に通常使用される必要がある高いBNを有する潤滑油は一般に高価な物質であるため、要件の減少は顕著なコスト削減を生じさせる。
【0049】
図1に示されるシリンダライナ4の実施例では、シリンダライナ4は軸方向Aに関して最上位ピストンリング31の上死点位置Oで既に終端しているため、シリンダカバー5は従来の大型の2ストロークディーゼルエンジンにおけるシリンダよりも軸方向に関して更に下方に、即ちシリンダライナ4の上端まで延在している。燃焼空間6はこの方策により実質的に燃焼プロセスの間ピストン3とシリンダカバー5によって境界を定められる。シリンダカバー5は、特に水である液体冷却媒体を使用するか、シリンダカバー5内の冷却剤ボアを通して循環する空気により、又は特に水である冷却液を使用する冷却と空気による冷却とを有する組み合わされた冷却システムにより大型ディーゼルエンジン1の動作の間に積極的に冷却されることが理解される。
【0050】
例えば冷却ジャケットを形成する流体冷却媒体のための冷却剤ラインが、最上位ピストンリングの上死点Oの上にこの目的で設けられ得る。好ましくは冷却材が循環するボアとして構成される液体冷却媒体のための冷却剤ラインが、特に最上位ピストンリング31の上死点位置Oの上に設けられ得る。
【0051】
よって2部分の冷却構想がシリンダ2の全体において実施される。シリンダライナ4の純粋な空気冷却が、シリンダライナ4がそれを囲む空気のみによって冷却され、特に冷却剤ボア又は冷却空気ボアがないという意味で最上位ピストンリング31の上死点位置Oの下に提供される。積極的な熱が例えば水等の液体媒体か、例えば圧縮空気のような空気又は冷却剤ボアを通して導かれる、若しくは特にシリンダカバー5においてシリンダ2に作用するファンにより生成される空気流のどちらかによりここで外に導かれるという意味において、積極的な冷却が最上位ピストンリング31の上死点位置Oの上に提供される。
【0052】
シリンダ2の第1の実施例の変形例の上部領域を通した長手方向断面図が
図2に示される。この変形例において、複数の冷却剤ライン51がシリンダカバー5内に設けられ、冷却剤ライン51のそれぞれはシリンダカバー5内のボアとして構成され、それを通して特に水のような好ましくは液体冷却媒体である流体冷却媒体が導かれてシリンダカバーから熱を抽出できる。例えば、冷却媒体は図示しないポンプにより冷却剤ライン51を通って搬送され得る。
【0053】
本発明によるシリンダ2の第2の実施例を通した長手方向断面図が
図3に示される。第1の実施例との相違点のみが以下に見受けられるであろう。第1の実施例に関する説明もそのように同じ方法で第2の実施例へ当てはまる。
【0054】
第2の実施例において、シリンダライナ4は、シリンダライナ4の上端が最上位ピストンリング31の上死点位置Oの上に配置されるようなところまで軸方向Aに延びる。上端は、燃焼空間6が最少体積(最大の圧縮)を有する時、燃焼空間6の下にある。更に、変形例が本明細書に示され、変形例ではシリンダライナ4が上端の領域においてカラー領域43を有し、このカラー領域においてシリンダライナ4の壁厚は下方領域より厚い。カラー領域43又はシリンダライナ4は、ピストン3が上死点位置にある時、即ち燃焼空間6が最少体積を有する時に燃焼空間6の境界を形成するようなところまで軸方向Aに上方に延びることも当然可能である。この第2の実施例においても、シリンダライナ4は最上位ピストンリング31の上死点位置Oの下でシリンダライナ4を囲む空気のみにより冷却される。例えば水冷却のような追加の冷却方策が、シリンダライナ4又はその内部、及びシリンダカバー5又はその内部の両方で上死点位置Oの上に設けられてもよい。
図3が示すように、実質的にリング形状の冷却ジャケット52が第2の実施例において設けられ、冷却ジャケットはシリンダカバー5の外周面を囲み又シリンダライナ4の上端と接触する。好ましくは水である流体冷却剤は、それ自体知られた方法でこの冷却ジャケットを通して運搬され、シリンダカバー5から、又はシリンダライナ4の上端から熱を抽出する。この実施例において、例えばシリンダカバー5内のボアの形態及び/又はシリンダライナの領域内の冷却剤ラインが、付加的又は代替的に最上位ピストンリング31の上死点位置Oの上に設けられてもよいことが理解される。
【0055】
本発明によるシリンダ2の第3の実施例を通る長手方向断面図が
図4に示される。第1の実施例及び第2の実施例との相違点のみが以下に見受けられるであろう。第1の実施例及び第2の実施例についての説明もそのように同じ方法で第3の実施例に当てはまる。
【0056】
第1の実施例のように、第3の実施例では、シリンダライナ4の上端は軸方向Aに関する最上位ピストンリング31の上死点位置Oと同じ位置に配置される。第3の実施例において、管状の中間片45が更にシリンダライナ4の上端とシリンダカバー5との間に設けられ、その中間片はシリンダライナ4と異なる材料から製造される。シリンダライナ4は通常、ねずみ鋳鉄合金から製造される。ほとんどのねずみ鋳鉄合金はその耐熱性のためおよそ300℃以上で長時間加熱してはならないが、用途に応じて、中間片45を最上位ピストンリング31の上死点位置Oの上の領域に設けることは有利であり得る。その理由は、燃焼空間6の燃焼プロセスによりこの領域において最大の入熱が生じ、且つこの領域がシリンダライナ4に関して最も高温に曝されるためである。
【0057】
この中間片45は好ましくはシリンダライナ4が製造される材料よりも高い耐熱性を有する材料から製造されることが理解される。例えば低合金鋼又は鋳鋼が、シリンダライナ4の中間片45に適する。中間片45に適する他の材料はシリンダカバー5が製造される材料であり、例えば16CrMo44やGS15Mo3である。第3の実施例において、例えばシリンダカバー5のボアの形態及び/又はシリンダライナの領域内の冷却ライナ又は冷却ジャケットが、当然最上位ピストンリング31の上死点位置Oの上に設けられてもよい。
【0058】
しかし、中間片45はシリンダライナ4と同じ材料、即ち例えばねずみ鋳鉄合金から製造されてもよい。この点について中間片が積極的に冷却されれば好ましい。
【0059】
図5は全ての実施例と関連して設けられ得る、本発明によるシリンダ2の実施例の変形例の上部領域を通る軸方向に垂直な断面図を示す。この変形例により、冷却空気はファン11により中間片45及び/又はシリンダライナ4の上端部領域、即ち最も高温に曝される端部領域へ供給される。この点において、少なくともシリンダライナ4の上部領域及び/又は中間片45を囲み、
図5に示す参照符号なしの矢印のようにファン11からの空気が吹き込まれる管状要素12を設けることが有利であり得る。ファン11はこの点において、追加のファン11と、大型のディーゼルエンジン1が配置されるエンジンルームにとにかく設けられるファン11との両方であってもよい。そのようなファンは通常大型のディーゼルエンジン1のセクタで使用され、新鮮な空気を大型のディーゼルエンジンが配置されるエンジンルームへ供給する。この方策は特に、1つ又は複数のターボチャージャーを通した空気の取入れがエンジンルームを真空にしないようにするため通常必要である。そのようなファン11により運ばれた空気の一部は、例えば管状要素12への導入に使用され得る。
【0060】
一方、冷却する空気流による作用のため走行面41がその領域において冷たくなり過ぎるのを防止するため、特に走行面の温度が水又は亜硫酸の飽和点より下がることを防止するため、シリンダライナ4の冷却領域をそのような既存のファンからの空気流から直接遮蔽することも有利であり得る。遮蔽体は大型のディーゼルエンジンの適切な位置において、又はこの目的のためファンにおいても設けられてもよい。
【0061】
本発明による構成は特に、最上位ピストンリング31の上死点位置Oがシリンダライナの走行面41の動作温度に依存して選択されることを可能にする。その温度はこの点において、大型のディーゼルエンジン1の全負荷動作に存在する動作温度を意味する。これは、動作温度が予め定義可能な温度範囲にある走行面41の領域内に上死点位置Oが配置されるように、最上位ピストンリング31が軸方向Aに関して配置されることを意味する。好ましい実施例では、この温度範囲は250℃から350℃、特に280℃から330℃である。よって最上位ピストンリング31の上死点位置Oは、以前は一般に普通であったようにピストン3のストロークの比率(上死点位置と下死点位置の距離)において決定されず、代わりにピストン3が上死点位置にある時に最上位ピストンリング31が配置される領域において必要とされる温度に依存して決定される。
【0062】
ピストンリング位置を走行面41の動作温度に適応させることによりピストンリングの数を減らすことも可能である。この点において、2つのピストンリング又は1つのピストンリングのみを有する実施例が可能である。利点はピストン3が通常より低い高さで組み立てられ得るピストンリングの数を減らすことより更に生じる。軸方向Aの範囲はこの点においてピストン3の高さを意味する。
【0063】
本発明によるユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジン1は特に、ガスの燃焼及び液体燃料、特にディーゼル燃料油又は重油の燃焼のためのデュアルフューエルエンジンとして構成されてもよい。
【0064】
1つ又は複数の燃料噴射ノズル(図示せず)が液体燃料の導入のために設けられ、例えば出口弁の近くのシリンダヘッドに配置される。ガス注入管を有する少なくとも1つのガス注入弁を有するガス供給システム(図示せず)が、ガスモードにおけるガス供給のために設けられる。ガス注入管は通常シリンダの壁に、例えばピストンの上死点と下死点の間のおよそ中間の高さに設けられる。
【0065】
ガスモードの間、ガスのシリンダの燃焼空間への導入に関して好ましい変形例が複数存在する。上記に既に述べたように、ガスがシリンダに導入され、そこで掃気と混合されて引火性の空気ガス混合気を形成するようにシリンダライナに配置された、少なくとも1つのガス注入管を有するガス供給システムが設けられてもよい。
【0066】
本発明の態様の様々な例を、番号を付けた条項(1、2、3・・・)として以下に説明する。これらは、例として提供され、対象技術を限定するものではない。
(条項1)
ユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジンのためのシリンダであって、
下死点位置と上死点位置との間を往復移動可能に配置され、少なくとも1つの最上位ピストンリング(31)を有するピストン(3)と、
前記ピストン(3)をガイドするためのシリンダライナ(4)であって、走行面(41)を有し、動作状態において前記走行面に沿って前記ピストンの前記最上位ピストンリング(31)がスライドする、シリンダライナ(4)と、
シリンダカバー(5)であって、前記シリンダカバー(5)及び前記ピストン(3)が燃料の燃焼空間(6)の境界となっている、シリンダー(5)と
を有するシリンダにおいて、
前記シリンダライナ(4)は、前記最上位ピストンリングの上死点位置(O)の下に冷却剤ボアがなく、且つ前記最上位ピストンリング(31)の前記上死点(O)の下で前記シリンダライナ(4)を取り囲む空気のみによって冷却可能であることを特徴とする、シリンダ。
(条項2)
前記シリンダライナ(4)は、シリンダ軸線により決定される軸方向(A)に関して、前記燃焼空間(6)の下で終端している、条項1に記載のシリンダ。
(条項3)
前記シリンダライナ(4)は、前記軸方向(A)に関して上端まで延び、前記上端は、前記軸方向(A)に関して前記最上位ピストンリング(31)の前記上死点位置(O)と一致する、条項1から2までのいずれか1項に記載のシリンダ。
(条項4)
前記シリンダライナ(4)はカラー領域(43)を有する、条項1から3までのいずれか1項に記載のシリンダ。
(条項5)
前記シリンダライナ(4)とは異なる材料で製造される管状の中間片(45)が前記シリンダライナ(4)の前記上端と前記シリンダカバー(5)との間に設けられる、条項1から4までのいずれか1項に記載のシリンダ。
(条項6)
前記最上位ピストンリング(31)は、その上死点位置(O)が前記シリンダライナ(4)の領域内にあるように、且つ前記シリンダライナ(4)の動作温度が好ましくは250℃から350℃までである予め定義可能な温度範囲内にあるように前記軸方向(A)に関して配置される、条項1から5までのいずれか1項に記載のシリンダ。
(条項7)
流体冷却媒体のための冷却剤ライン(51、52)が、前記最上位ピストンリング(31)の前記上死点位置(O)の上に設けられる、条項1から6までのいずれか1項に記載のシリンダ。
(条項8)
好ましくは水である液体冷却媒体のための冷却剤ライン(51、52)が、前記最上位ピストンリング(31)の前記上死点位置(O)の上に設けられる、条項1から7までのいずれか1項に記載のシリンダ。
(条項9)
前記冷却剤ライン(51、52)は、前記シリンダカバー(5)又は前記シリンダライナ(4)内に設けられた冷却剤ボア(51)を有する、条項7又は条項8に記載のシリンダ。
(条項10)
条項1から9までのいずれか1項に記載のように構成されたシリンダ(2)を有するユニフロー掃気大型2ストロークディーゼルエンジン。
(条項11)
前記最上位ピストンリング(31)の前記上死点(O)の前記領域の前記シリンダライナ(4)へ冷却空気を供給可能なファン(11)を有する条項10に記載の大型ディーゼルエンジン。
(条項12)
前記シリンダライナ(4)を空気流から遮蔽可能な遮蔽体が設けられる、条項10又は11に記載の大型ディーゼルエンジン。
(条項13)
前記シリンダライナは、管状要素(12)によって少なくとも一部が取り囲まれて、前記管状要素(12)内に冷却空気が導入可能である、条項10から11までのいずれか1項に記載の大型ディーゼルエンジン。
(条項14)
ガスの燃焼のため及び液体燃料、特にディーゼル油又は重油の燃焼のためのデュアルフューエルエンジンとして構成される、条項11から13までのいずれか1項に記載の大型ディーゼルエンジン。
【符号の説明】
【0067】
1 大型ディーゼルエンジン
2 シリンダ
3 ピストン
4 シリンダライナ
5 シリンダカバー
6 燃焼空間
7 ピストンロッド
8 クロスヘッド
9 連結ロッド
10 排ガスシステム
31 最上位ピストンリング
41 走行面
42 掃気スリット
45 中間片
51 冷却剤ライン
52 冷却ジャケット