(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143354
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】冷水熱源システムおよび冷水熱源の制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20230928BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20230928BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20230928BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20230928BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20230928BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20230928BHJP
【FI】
F24F5/00 102Z
F24F11/70
F24F11/64
F24F5/00 102K
F24F11/46
F24F140:00
F24F140:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050680
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】森木 翼
【テーマコード(参考)】
3L054
3L260
【Fターム(参考)】
3L054BF20
3L054BG06
3L054BH03
3L260AA05
3L260AB06
3L260BA41
3L260BA45
3L260CB81
3L260CB90
3L260EA07
3L260FB23
3L260FB32
3L260FB58
(57)【要約】
【課題】効率よく冷熱を供給することができる冷水熱源システムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】冷熱源12から一次往き配管37を介して供給される冷水を貯留するアイスウォータタンク16と、負荷からの需要に応じてアイスウォータタンク16から二次往き配管19を介して負荷に冷水を供給する二次ポンプ22と、負荷から二次還り配管23を介して戻ってくる水を貯留するウォータタンク18と、ウォータタンク18から一次還り配管36を介して水を冷熱源12に送る一次ポンプ13と、アイスウォータタンク16の水位を検出する水位計PE1と、水位計PE1によって検出された水位が増加したとき一次ポンプ13の送水量を減少し、水位が減少したとき一次ポンプ13の送水量を増加する制御装置14とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷熱源から一次往き配管を介して供給される冷水を貯留するアイスウォータタンクと、
負荷からの需要に応じてアイスウォータタンクから二次往き配管を介して負荷に冷水を供給する二次ポンプと、
負荷から二次還り配管を介して戻ってくる水を貯留するウォータタンクと、
ウォータタンクから一次還り配管を介して水を冷熱源に送る一次ポンプと、
アイスウォータタンクの水位を検出する水位計と、
前記水位計によって検出された水位が増加したとき一次ポンプの送水量を減少し、水位が減少したとき一次ポンプの送水量を増加する制御装置
とを備えている冷水熱源システム。
【請求項2】
前記一次ポンプがインバータにて回転数制御されており、前記制御装置が、アイスウォータタンクの水位の増減に応じて、一次ポンプの送水量を所定の範囲内に比例帯を設定して比例制御する請求項1記載の冷水熱源システム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記アイスウォータタンクの水位が第1設定水位に減った際に、冷熱源の運転をONとし、前記アイスウォータタンクの水位が第2設定水位に増加した際には、冷熱源の運転をOFFとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷水熱源システム。
【請求項4】
前記二次往き配管の二次ポンプ出口側に往ヘッダを位置させ、前記往ヘッダから冷水負荷の各系統へ分岐させて供給し、前記二次還り配管の前記ウォータタンクの負荷側に還ヘッダを位置させ、各系統の冷水負荷からの還り冷水を還ヘッダにて合流させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の冷水熱源システム。
【請求項5】
前記アイスウォータタンクと前記二次ポンプとの間の二次往き配管と、前記還ヘッダと前記ウォータタンクとの間の二次還り配管とをバイパスポンプを中間に設置するバランス用の配管で接続し、
前記制御装置は、長期停止後のアイスウォータタンク内の冷水温度低下運転としてバランス用の配管を通じて一次側バイパス運転するように制御する請求項4記載の冷水熱源システム。
【請求項6】
冷熱源から一次往き配管を介して供給される冷水をアイスウォータタンクに貯留し、
負荷からの需要に応じて二次ポンプによりアイスウォータタンクから二次往き配管を介して負荷に冷水を供給し、
負荷から二次還り配管を介して戻ってくる水をウォータタンクに貯留しておくと共に、
アイスウォータタンクの水位を検出し、
水位が増加したとき、ウォータタンクから水を一次還り配管を介して冷熱源に送る一次ポンプの送水量を減少すると共に、水位が減少したとき一次ポンプの送水量を増加する
冷水熱源の制御方法。
【請求項7】
アイスウォータタンクの水位の増減に応じて、一次ポンプの送水量を所定の範囲内に比例帯を設定して比例制御する請求項6記載の冷水熱源の制御方法。
【請求項8】
前記アイスウォータタンクの水位が第1設定水位に減った際に、冷熱源の運転をONとし、前記アイスウォータタンクの水位が第2設定水位に増加した際には、冷熱源の運転をOFFとすることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の冷水熱源の制御方法。
【請求項9】
前記二次往き配管の二次ポンプ出口側に位置する往ヘッダから冷水負荷の各系統へ配管を分岐させて供給し、前記二次還り配管の前記ウォータタンクの負荷側に位置する還ヘッダにおいて各系統の冷水負荷からの還り冷水を合流させ、二次ポンプにより冷水を搬送することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の冷水熱源の制御方法。
【請求項10】
前記アイスウォータタンクと前記二次ポンプとの間の二次往き配管と、前記還ヘッダと前記ウォータタンクとの間の二次還り配管とをバイパスポンプを中間に設置するバランス用の配管で接続し、前記制御装置は、長期停止後のアイスウォータタンク内の冷水温度低下運転としてバランス用の配管を通じて一次側バイパス運転するように制御する請求項9記載の冷水熱源の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品工場の生産など、様々な用途の冷却に利用される冷水を搬送しながら冷却する大規模な冷水熱源システムおよび冷水熱源の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷水熱源として、例えば工場であっても需要の多い空調用途の冷水を冷却する冷水熱源では、塵埃や微生物を含む外気空気と冷水とが冷水が搬送される配管系統のなかで接触する機会がほとんどないことで腐食の少なさや衛生上の有利さに鑑みて、密閉系の冷水熱源を選択することが多い。
【0003】
工場においては生産冷却水系でも、空調用途の冷水往き温度と冷水還り温度とである温度場が生産冷却水では異なるため、冷水を冷却する冷水熱源とは異なる系としてさらに一揃いの密閉系冷水熱源を備えることも多い。
【0004】
特許文献1には、往ヘッダと還ヘッダを介して一次側を熱源とし、二次側を負荷とする配管を密閉系とする空調システムにおいて、往ヘッダと還ヘッダの間のバランス管に設けた流量計の検出値などに基づき、往ヘッダから負荷へ冷水を送る可変流量ポンプおよび還ヘッダから冷凍機へ冷水を送る可変流量ポンプの流量を制御する技術が開示されている。
【0005】
この特許文献1のような密閉系の冷水熱源である空調システムでは、空調機などの負荷側の2方弁などによって負荷熱量に応じた冷熱媒の冷水流量を制御することで処理熱量を調節し、その流量に応じて冷凍機なども能力を制御して連続的に運転できるようにシステムが組まれている。このように、負荷が変動しても、その温度場がコントロールできて負荷変動がある程度の範囲に入ると分かっている場合は、冷水量を調整しながらも冷熱源の容量制御も十分追従できる。ところが、多系統の、往き温度や還り温度の温度場が異なる系統を含み、さらにその負荷側の熱の利用量が急激に立ち上がったり突然急減したりする系統である場合、空調用途と一緒にした冷水熱源では、対応ができないこととなる。
【0006】
特許文献2には、蓄熱槽(氷蓄熱槽)の水位を計測し、水位が所定の値になったとき蓄熱が完了したと判断して蓄熱運転を完了することにより蓄熱量を推定しながら、冷水戻り温度と冷水循環流量とを計測し、これらの計測値がそれぞれ設定値以上のときに熱源機器を運転し、設定値以下のときに熱源機器を停止する熱源機器の運転制御方式が開示されている。
【0007】
この熱源機器制御方式の熱源機器は、ブラインを冷却し、夜間の蓄熱運転では出口温度0℃設定でブラインを熱源機器から送出し氷蓄熱槽の製氷熱交換器のチューブの中をブラインを通して氷蓄熱槽内の水を製氷熱交換器のフィンなどに凍結させて蓄氷し、日中の冷房運転ではブライン出口温度を3℃設定として、ブライン-水熱交換器にて冷水を凍結しないように冷却する。冷水は、氷蓄熱槽で開放系となっていて、散水配管により水槽内の氷を解氷するように循環する。ここで、氷蓄熱槽で水位を計測するが、夜間の蓄氷量について、氷蓄熱槽以外の負荷などは密閉された配管の形であり熱負荷変動が少なく流量変化の乏しい夜間なので、ポンプにより冷水が循環されても水位変化が水から氷になる相変化の量による体積変化に等しく、これを見て蓄氷量として判断しており、急激な負荷要求などで二次側のポンプ量の増減が水位変化に影響を及ぼすと、蓄氷量が水位では読めなくなるので、この水位で負荷変動を見てはいない。
【0008】
他方、特許文献3は、製氷用コイルを内蔵する氷蓄熱制御方式において、ブライン循環ポンプと熱源機とを制御する制御手段に、製氷運転開始時は、熱源低容量運転の範囲内での最高運転効率となる容量運転を行わせ、所定時間経過ごとに設定目標水位と実水位とを比較し、実水位が下回れば初期最高効率容量から所定量増加し、実水位が上回れば初期最高効率容量のまま運転する制御方法が提案されている。この技術は、製氷用コイルと氷蓄熱槽を熱源機系統に内蔵し、ブラインと単なる蓄熱体の冷水循環系統と切り離された水とを製氷用コイルにて熱交換させ、その切り離された停滞した水の蓄熱度合いを水位で見る技術であり、冷水循環系は密閉系でしかない。
【0009】
特許文献4には、製氷用コイルを内蔵する氷蓄熱槽を有する氷蓄熱制御方法において、ブライン循環ポンプと熱源機とを制御する制御手段は、氷蓄熱槽の水位センサの測定値に基づいて、ブラインの流量を調節し、水位センサの測定水位が目標水位より低い場合はブラインの流量を減らし、水位センサの測定水位が目標水位より高い場合はブラインの流量を増やす制御方法が開示されている。この技術も、製氷用コイルと氷蓄熱槽を熱源機系統に内蔵し、ブラインと単なる蓄熱体の冷水循環系統と切り離された水とを製氷用コイルにて熱交換させ、その切り離された停滞した水の蓄熱度合いを水位で見る技術であり、冷水循環系は密閉系でしかない。
【0010】
特許文献5には、冷温水を生成する熱源ユニットと、蓄熱槽と、冷温水を循環させ空調を行う循環用室内ユニットと、蓄熱槽に貯えられた冷温水をもとに空調を行う蓄熱利用室内ユニットと、制御部を有し、開放系である蓄熱槽に蓄えられる冷温水は循環用室内ユニットで使いきれなかった冷熱または温熱を有する冷温水をゼロから満水まで溜められる排水自由な水であり、蓄熱利用室内ユニットは蓄熱槽に蓄えられる冷温水の貯流量を判定し(流量検出)、貯留量判定で蓄熱槽との間の弁を開閉し、ワンパスで熱利用された冷温水は循環されることなく排水される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2899437号公報
【特許文献2】特開平7-133944号公報
【特許文献3】特許第5464947号公報
【特許文献4】特許第5686532号公報
【特許文献5】特許第6250195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
食品工場などでは、室内の空調のほかに食品材料の冷却に大規模に冷水を使用するにあたり、大規模な熱源を使用しており、熱伝達に使用する冷水の流量も極めて多い。また、多系統に冷水を各々循環し、系統によっては一時に多量に冷熱を要求する場合があり、負荷から要求される冷水の量と負荷に供給できる冷水の量もバランスしない。そのため、特許文献1~5などのように負荷から戻ってくる高温になった冷水を冷熱源の冷凍サイクルで冷却されたフロン冷媒又はブラインと熱交換器で熱交換し、そのまま負荷に送るシステムでは充分に対応できない。
【0013】
また、往還の冷水管路も複雑で、負荷に送る冷水の量と負荷から戻ってくる冷水の量に一次的に相当の差が生ずることがある。このような場合、特許文献1のように往ヘッダと還ヘッダの間にバランス管を設ける程度では往還のバランスが充分にとれない。
【0014】
本発明は大規模で複雑な負荷に対しても効率よく冷熱を供給することができる冷水熱源システムおよび冷水熱源の制御方法を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の冷水熱源システム10は、冷熱源12から一次往き配管37を介して供給される冷水を貯留するアイスウォータタンク16と、負荷からの需要に応じてアイスウォータタンク16から二次往き配管19を介して負荷に冷水を供給する二次ポンプ22と、負荷から二次還り配管23を介して戻ってくる水を貯留するウォータタンク18と、ウォータタンク18から一次還り配管36を介して水を冷熱源12に送る一次ポンプ13と、アイスウォータタンク16の水位を検出する水位計PE1と、前記水位計PE1によって検出された水位が増加したとき一次ポンプ13の送水量を減少し、水位が減少したとき一次ポンプ13の送水量を増加する制御装置14とを備えている。
【0016】
このような冷水熱源システム10においては、前記一次ポンプ13がインバータにて回転数制御されており、前記制御装置14が、アイスウォータタンク16の水位の増減に応じて、一次ポンプ13の送水量を所定の範囲内に比例帯を設定して比例制御するものが好ましい。
【0017】
またこのような冷水熱源システム10においては、制御装置14が、アイスウォータタンク16の水位が第1設定水位に減った際に、冷熱源12の運転をONとし、アイスウォータタンク16の水位が第2設定水位に増加した際には、冷熱源12の運転をOFFとすることもできる。
【0018】
また、このような冷水熱源システム10においては、二次往き配管19の二次ポンプ22出口側に往ヘッダ15を位置させ、往ヘッダ15から冷水負荷の各系統へ分岐させて供給し、二次還り配管23のウォータタンク18の負荷側に還ヘッダ17を位置させ、各系統の冷水負荷からの還り冷水を還ヘッダ17にて合流させることが好ましい。
【0019】
また、このような冷水熱源システム10においては、アイスウォータタンク16と二次ポンプ22との間の二次往き配管19と、還ヘッダ17とウォータタンク18との間の二次還り配管23とをバイパスポンプ25を中間に設置するバランス用の配管24で接続し、制御装置14は、長期停止後のアイスウォータタンク16内の冷水温度低下運転としてバランス用の配管24を通じて一次側でバイパス運転することが好ましい。
【0020】
本発明の冷水熱源の制御方法は、冷熱源12から一次往き配管37を介して供給される冷水をアイスウォータタンク16に貯留し、負荷からの需要に応じて二次ポンプ22によりアイスウォータタンク16から二次往き配管19を介して負荷に冷水を供給し、負荷から二次還り配管23を介して戻ってくる水をウォータタンク18に貯留しておくと共に、アイスウォータタンク16の水位を検出し、水位が増加したとき、ウォータタンク18から水を一次還り配管36を介して冷熱源12に送る一次ポンプ13の送水量を減少すると共に、水位が減少したとき一次ポンプ13の送水量を増加することを特徴としている。
【0021】
このような冷水熱源の制御方法においては、アイスウォータタンク16の水位の増減に応じて、一次ポンプ13の送水量を所定の範囲内に設定された比例帯に応じて比例制御するのが好ましい。
【0022】
このような冷水熱源の制御方法においては、アイスウォータタンク16の水位が第1設定水位に減った際に、冷熱源12の運転をONとし、アイスウォータタンク16の水位が第2設定水位に増加した際には、冷熱源12の運転をOFFとすることもできる。
【0023】
このような冷水熱源の制御方法においては、二次往き配管19の二次ポンプ22出口側に位置する往ヘッダ15から冷水負荷の各系統へ配管を分岐させて供給し、二次還り配管23のウォータタンク18の負荷側に位置する還ヘッダ17において各系統の冷水負荷からの還り冷水を合流させ、二次ポンプ22により冷水を搬送するのが好ましい。
【0024】
このような冷水熱源の制御方法においては、アイスウォータタンク16と二次ポンプ22との間の二次往き配管19と、還ヘッダ17とウォータタンク18との間の二次還り配管23とをバイパスポンプ25を中間に設置するバランス用の配管24で接続し、前記制御装置は、長期停止後のアイスウォータタンク16内の冷水温度低下運転としてバランス用の配管24を通じて一次側バイパス運転するのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の冷水熱源システムは、冷熱源から供給される冷水をアイスウォータタンクに貯留し、負荷から戻ってくる水をウォータタンクに貯留するので、大規模システムに生じやすい負荷の要求量と冷水熱源からの供給量の一次的なアンバランスを緩和させることができる。すなわち、負荷側はバッチ運転に近い急激な負荷の増減運転が多いので、ピーク時にアイスウォータタンクの水位が低下し、負荷側の稼働の停止時に水位が回復することが多い。本発明では、水位が低減したときは冷水の製造量を増加して需要の増大に応じることができ、水位が増加したときは冷水の製造量を低下して省エネルギに寄与することができる。そのため大規模で複雑な負荷に対しても効率よく冷熱を供給することができる。
【0026】
このような冷水熱源システムにおいて、前記一次ポンプがインバータにて回転数制御されており、前記制御装置が、アイスウォータタンクの水位の増減に応じて、一次ポンプの流送水量を所定の範囲内に比例帯を設定して比例制御で増減させる場合は、負荷の増減に対し、一層迅速かつスムーズに対応することができる。
【0027】
前記制御装置が、前記アイスウォータタンクの水位が第1設定水位に減った際に、冷熱源の運転をONとし、前記アイスウォータタンクの水位が第2設定水位に増加した際には、冷熱源の運転をOFFとする場合は、冷熱源のON/OFFを切り替えるだけでよいため、制御がシンプルで制御装置も簡易なものとなる。
【0028】
前記冷水熱源システムにおいて、二次往き配管の二次ポンプ出口側に往ヘッダを位置させ、往ヘッダから冷水負荷の各系統へ分岐させて供給し、二次還り配管のウォータタンクの負荷側に還ヘッダを位置させ、各系統の冷水負荷からの還り冷水を還ヘッダにて合流させる場合は、圧力変動の影響を低減し、多数の負荷に対し、スムーズに冷熱を振り分けることができる。
【0029】
本発明の冷水熱源制御方法は、大規模で複雑な負荷に対しても効率よく冷熱を供給することができる。このような冷水熱源の制御方法において、アイスウォータタンクの水位の増減に応じて、一次ポンプの流送水量を所定の範囲内に比例帯を設定して比例制御で増減させる場合は、負荷の増減に対し、一増迅速かつスムーズに対応することができる。
【0030】
前記冷水熱源の制御方法において、アイスウォータタンクの水位が第1設定水位に減った際に、冷熱源の運転をONとし、アイスウォータタンクの水位が第2設定水位に増加した際には、冷熱源12の運転をOFFとする場合は、冷熱源のON/OFFを切り替えるだけでよいため、制御方法がシンプルで制御装置も簡易なものとなる。
【0031】
また、二次往き配管の二次ポンプ出口側に位置する往ヘッダから冷水負荷の各系統へ配管を分岐させて供給し、二次還り配管のウォータタンクの負荷側に位置する還ヘッダにおいて各系統の冷水負荷からの還り冷水を合流させ、二次ポンプにより冷水を搬送する場合は、圧力変動の影響を減少させると共に、多数の負荷に対しスムーズに冷熱を振り分けることができる。
【0032】
さらにアイスウォータタンクと二次ポンプとの間の二次往き配管と、還ヘッダとウォータタンクとの間の二次還り配管とをバイパスポンプを中間に設置するバランス用の配管で接続していれば、長期停止後のアイスウォータタンク内の冷水温度が上昇してウォータタンク内の冷水温度に近づいてしまっても、長期停止後の準備運転としての冷水温度低下運転をバランス用の配管を通じて一次側バイパスとして運転することで、各負荷へ冷却する冷水温度を低くしてすぐに冷熱を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の冷水熱源システムの一実施形態を示す計装フロー図である。
【
図2】冷水熱源システムの冷熱源の一例を示す計装フロー図である。
【
図3】一次ポンプの制御方法の一実施形態を示すグラフである。
【
図4】冷熱減に用いる水槽の他の例を示す計装フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示す冷水熱源システム10は、負荷へ冷水を供給し、負荷から戻る水を受け入れる冷水供給部11と、冷熱源12と、冷水供給部11から冷熱源12に一次還り配管36を介して水を送る一次ポンプ13と、制御装置14とからなる。冷水供給部11は、負荷への管路を分岐する往ヘッダ15と、往ヘッダ15に接続されているアイスウォータタンク16と、各負荷から戻る水をまとめて受け入れる還ヘッダ17と、還ヘッダ17に接続されているウォータタンク18とを有する。
【0035】
アイスウォータタンク16から往ヘッダ15を介して各負荷へ冷水を供給する配管19には、流量計20が設けられ、往ヘッダ15に冷水を供給する配管19の一部である配管21には二次ポンプ22が設けられている。二次ポンプ22は、台数制御のため、複数個(図では4個)設けている。アイスウォータタンク16には、温度計TEW1と水位計PE1とが設けられている。温度計TEW1はアイスウォータタンク16へ供給する冷水が設定された適切な温度であるかどうかを見るため温度を検出するものである。水位計PE1は、アイスウォータタンク16内の水位が適切な範囲であることを検出し、負荷への冷水の二次側の二次ポンプによる吸出し量と、冷水を冷却して送出する一次ポンプのアイスウォータタンク16への送込み量との差により発生する、一次側の冷熱供給量の過不足を検出するものである。水位計PE1は、水圧を検出して水位に変換するものが好ましい。他の方式の水位計でもよいが、連続して水位を検出できるものが好ましい。
【0036】
ウォータタンク18にも、温度計TEW2が設けられ、さらに水位計PE2が設けられていてもよい。これらは戻りの水の温度および水位が適切な範囲であることを確認するものである。なお、ウォータタンク18の水位計PE2の検出値で冷水の負荷への供給と負荷からの水の戻りのバランスを推定することもできるが、アイスウォータタンク16の水位に基づくほうが迅速に検出できる。
【0037】
アイスウォータタンク16からの二次往き配管19の二次ポンプ21出口側に往ヘッダ15を位置させ、往ヘッダ15から冷水負荷の各系統へ分岐させて供給し、二次還り配管23のウォータタンク18の負荷側に還ヘッダ17を位置させ、各系統の冷水負荷からの還り冷水を還ヘッダ17にて合流させることが好ましい。これらにより、水位の増減があるアイスウォータタンク16から分岐すると水位による圧力変化が分岐されて送出される二次往き配管19の圧力偏差変動や、戻ってくる二次還り配管23がウォータタンク18に直接接続されるとウォータタンク18の水位変化による圧力変動や二次還り配管23への圧力変動の影響が除去できる。
【0038】
アイスウォータタンク16から出ていく二次ポンプ22の吸込み側である冷水の配管19aと、ウォータタンク18に入ってくる水の配管23の還ヘッダ17とウォータタンク18との間の取り出しとの間に、バランス用の配管24が設けられており、その配管24にバイパスポンプ25およびストップバルブ26が介在されている。これらはシステムの長期停止後の立ち上げのときなど、ウォータタンク18の水を冷凍機30で冷却してアイスウォータタンク16に戻すことにより、負荷側へ送水することなく昇温してしまったアイスウォータタンク16内の水温を事前に冷却して二次側への送水温度を適切にするための管路である。
【0039】
前記冷熱源12は、圧縮機や凝縮器、蒸発器を内蔵し、冷凍サイクルによってウォータタンク18からの水を冷却する冷凍機30と、冷凍機30の冷媒と熱交換した高温の冷却水を冷却する冷却器31と、冷却器31から冷却された冷却水を冷凍機30へ送り込む冷却水ポンプ32を備えている。この実施形態では冷凍機30は複数の単体冷凍機33を並列に配置し、各単体冷凍機33は分岐用のヘッダ34を介して一次還り配管36を通じて一次ポンプ13と接続されている。また、それぞれの単体冷凍機33から出てくる冷水は合流用のヘッダ35でまとめられて一次往き配管37を介してアイスウォータタンク16に供給される。
【0040】
図1の場合は、複数の単体冷凍機33は分岐用のヘッダ34、合流用のヘッダ35によってパラレル接続されている。ただし冷水の往き温度と還り温度の温度差が大きい場合は、さらにシリーズに接続することもできる。パラレル接続により冷却する冷水の流量を増加することができ、シリーズ接続により、冷却する冷水往き温度を下げることができる。なお、求められる仕様により、4個の単体冷凍機33を備えた冷凍機30をさらにパラレルに接続したり、シリーズに接続したり、それらを組み合わせた接続をしたりすることができる(
図4参照)。
【0041】
冷凍機30から出てくる冷却水を冷却する冷却器31としては、たとえば
図2に示すような冷却水を水の気化熱を利用して外気により冷却する散水クーラ(クーリングタワー)40がある。散水クーラ40を用いる場合は散水機41から散水した水にファン42により引き込む外気の風を当てて冷却する。この方法は自然エネルギを利用するので省エネルギであり、環境に優しい。
図2の散水クーラ40で冷却した冷却水は、3基のポンプ43で台数制御しながら冷凍機30に戻す。符号44は、温度計TEW3で検出した水温に基づき凍結防止用のヒータ45を制御する制御盤である。水位計PE3で検出した水位が所定のレベルより下がると加熱を強制停止する。符号46は冷却水の薬剤濃度を一定に保つための薬注装置である。
【0042】
冷凍機30としては、前述した冷凍サイクルを有する圧縮型冷凍機のほか、電気により動作する圧縮機の代わりに、高温熱源により再生される吸収液にて冷凍する低温水吸収冷凍機を採用することもできる。低温水吸収冷凍機は、
図1の符号N1、N2の位置に並列に接続することもできる。電気代が安価な夜間に冷凍機を稼働して蓄熱槽内で製氷し、日中は蓄熱槽の氷で水を冷却する氷蓄熱槽を利用することもできる。
【0043】
図1の冷水熱源システム10の一次往き配管36の途中に介在される一次ポンプ13は、並列に接続された3基のポンプCP1、CP2、CP3からなる。このうちの1基(CP3)は予備用であり、通常使用される2基のポンプCP1、CP2を点検したり、故障したときに使用する。これらのポンプCP1~3はいずれもインバータで変更した周波数によって駆動モータの回転数を制御するインバータ制御ポンプである。ただし他の制御方式のポンプを採用することもできる。
【0044】
前記制御装置14は、アイスウォータタンク16の水位が下がると駆動電力の周波数を増大して一次ポンプ13、すなわちポンプCP1~3の回転数を増大し、水位が上がると周波数を減少してポンプCP1~3の回転数を抑制する。それにより必要とされる水量を確保しながら省エネルギを達成できる。制御装置14は、たとえば制御プログラムや水位と周波数の関係(グラフ、関数)を保存するメモリ、水位計の現在の計測値を取り込むデータ取得部、取得した水位から周波数を演算する演算部などを有するコンピュータである。
【0045】
前記制御装置14は、アイスウォータタンク16の水位として、ウォータタンク18とバランスした水位を基準として、所定の水位量が減量した第1設定水位と、所定の水位量が増量した第2設定水位とを設定し、第1設定水位に水位が減った際に、冷熱源12の運転をONとし、第2設定水位に水位が増加した際には、冷熱源12の運転をOFFとすることとし他演算部を有することも好ましい。これにより、大きな水位増減を監視するだけで、二次側の負荷の増加が如実にわかるため、これを冷熱源12の発停に利用することで、適切なタイミングで動作させることができつつ、省エネルギな運転も実現できる。
【0046】
制御装置14は、前記以外に、各管路部分の水温を計測する温度計から取得した現在の水温が適正範囲から逸脱したとき、所定の警告や停止を行う制御を行う機能を有するものでもよい。また、各管路部分の流量を計測する流量計や水位計から取得した現在の流量や水位が適正範囲から逸脱したとき、所定の警告や停止を行うようにしてもよい。
【0047】
水位と周波数の関係は、たとえば
図3のグラフのように、水位(横軸)が上昇すると周波数(縦軸)が直線的に減少する関係とする。係数がマイナスの比例関係とも解される。この場合、周波数の上限および下限を定めておき、それらの間で周波数を直線的に変動させる。計装の分野では、この周波数の上限と下限とを直線で結び比例的に変動させるのを、この上限と下限とで比例帯をとり、その間を比例制御すると表現する。この水位と周波数を関係づける関数である比例帯は、制御装置14にあらかじめ入力しておく。
【0048】
水位と周波数を直線的に増減させる比例帯をとって比例制御することで、それを更に積分時間と微分時間をとるPID制御としての演算が容易になる。水位はタンク内に保有している水の量であり、流量を時間的に積分した量でもある。そのため、水位に充分な余裕があれば、負荷から求められる流量の急な増減に対し、余裕をもって対応できる。
【0049】
以上、本発明の冷水熱源システムの好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することができる。
図1ではアイスウォータタンク16やウォータタンク18を、円筒状の胴部と球面状の鏡板を用いた一般的なタンクのマークで示したが、水位と貯留する水の量との関係を比例関係にするため、円筒状ないし直方体状のタンクとすることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 冷水熱源システム
11 冷水供給部
12 冷熱源
13 一次ポンプ
14 制御部
15 往ヘッダ
16 アイスウォータタンク
17 還ヘッダ
18 ウォータタンク
19 二次往き配管
20 流量計
21 往ヘッダに冷水を供給する配管
22 二次ポンプ
TEW1、TEW2 温度計
PE1、PE2 水位計
23 二次還り配管
24 バランス用の配管
25 バイパスポンプ
26 ストップバルブ
30 冷凍機
31 冷却器
32 冷却水ポンプ
33 単体冷凍機
34 冷凍機に入る水のヘッダ
35 冷凍機から出てくる冷水のヘッダ
36 一次還り配管
37 一次往き配管
40 散水クーラ
41 散水機
42 ファン
43 散水クーラから冷却水を送り出すポンプ
44 制御盤
45 ヒータ
TEW1、TEW2、TEW3 温度計
PE1、PE2、PE3 水位計
N1、N2 接続位置
CP1、CP2、CP3 ポンプ(一次ポンプ)
46 薬注装置