IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図1
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図2
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図3
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図4
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図5
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図6
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図7
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図8
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図9
  • 特開-薬液注入用のリザーバー容器 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014336
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】薬液注入用のリザーバー容器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/152 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
A61M5/152
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193384
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2019060908の分割
【原出願日】2019-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
(57)【要約】
【課題】従来構造のリザーバー容器とは異なる、新規な構造のリザーバー容器を提供する。
【解決手段】薬液注入用のリザーバー容器10において、ハウジング16を構成する有底筒形状のハウジング本体18における筒状周壁部26の内面が開口側に向かって広がる傾斜内面94とされている一方、傾斜内面94にはハウジング本体18の長さ方向に延びる複数本の案内突条96が設けられていると共に、案内突条96の突出高さが傾斜内面94の傾斜に対応してハウジング本体18の開口側に向かって次第に高くなっていることで、移動部材50の外周面90に対して略一定の当接力又は隙間をもった対向状態で移動部材50をハウジング16の長さ方向に案内する案内面98が、案内突条96の先端によって構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のハウジング内に長さ方向で伸縮可能な薬液リザーバーが収容されていると共に、該薬液リザーバーの伸縮に伴って該ハウジング内を長さ方向に移動する移動部材が設けられた薬液注入用のリザーバー容器であって、
前記移動部材の外周部分において前記ハウジングの長さ方向に延び、該ハウジングの内面への当接によって該ハウジング内での該移動部材の傾きを制限する傾動防止部が設けられているリザーバー容器。
【請求項2】
前記ハウジングが、有底筒形状のハウジング本体と、該ハウジング本体の開口部分に装着されるハウジング蓋体とを含んで構成されていると共に、
該ハウジング本体の筒状周壁部には、長さ方向で中央よりも開口に近い位置において外周面上に突出して周方向に延びる環状の補強リブが設けられており、
該補強リブの突出先端が周方向で非円形状とされている請求項1に記載のリザーバー容器。
【請求項3】
前記ハウジングの長さ方向の一方の端部側の外周面が細くされた小径部とされていると共に、
該小径部の先端部分には、外周面に突出する環状突出部と、周上で部分的に突出する引掛突部が設けられており、
該引掛突部には該ハウジングを吊下状態に支持するフック用の支持孔が形成されていると共に、前記薬液リザーバーに連通されて該ハウジングから外方に延び出した薬液チューブを、該引掛突部に引っ掛けて位置決めしてから該小径部の外周面に巻き付けることができる請求項1又は2に記載のリザーバー容器。
【請求項4】
中空のハウジング内に伸縮可能な薬液リザーバーが収容された薬液注入用のリザーバー容器において、
前記ハウジングが、有底筒形状のハウジング本体と、該ハウジング本体の開口部分に装着されるハウジング蓋体とを含んで構成されていると共に、
該ハウジング本体の筒状周壁部には、長さ方向で中央よりも開口に近い位置において外周面上に突出して周方向に延びる環状の補強リブが設けられており、
該補強リブの突出先端が周方向で非円形状とされているリザーバー容器。
【請求項5】
中空のハウジング内に伸縮可能な薬液リザーバーが収容された薬液注入用のリザーバー容器において、
前記ハウジングの長さ方向の一方の端部側の外周面が細くされた小径部とされていると共に、
該小径部の先端部分には、外周面に突出する環状突出部と、周上で部分的に突出する引掛突部が設けられており、
該引掛突部には該ハウジングを吊下状態に支持するフック用の支持孔が形成されていると共に、前記薬液リザーバーに連通されて前記ハウジングから外方に延び出した薬液チューブを、該引掛突部に引っ掛けて位置決めしてから該小径部の外周面に巻き付けることができるリザーバー容器。
【請求項6】
前記引掛突部が、前記環状突出部の外周面から突出形成されている請求項5に記載のリザーバー容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的な薬液の持続投与等に用いられる薬液注入用のリザーバー容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、麻酔薬、鎮痛薬、抗癌剤、抗生物質等の薬液を体内に持続的に投与するための薬液注入器具が知られている。このような薬液注入器具は、例えば国際公開第2005/077437号(特許文献1)に開示されている。特許文献1に記載の薬液注入器具は、薬液を収容する本体(1)を備えており、本体(1)に接続される注入ライン(2)を通じて患者の体内に薬液が注入される。
【0003】
より詳細には、本体(1)の内部に弾性体からなる薬液リザーバー(12)が設けられている。そして、薬液の収容によって膨張変形した薬液リザーバー(12)の弾性的な復元変形によって、薬液リザーバー(12)内の薬液が持続的に押し出されて患者の体内に注入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/077437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、本発明者らが更なる研究を重ねた結果、上記特許文献1に記載の薬液注入器具は、いくつかの改良すべき点を有していることが新たにわかった。
【0006】
本発明の解決課題は、従来構造のリザーバー容器が内在する問題の少なくとも1つを解消し得る、新規な構造のリザーバー容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、中空のハウジング内に長さ方向で伸縮可能な薬液リザーバーが収容されていると共に、該薬液リザーバーの伸縮に伴って該ハウジング内を長さ方向に移動する移動部材が設けられた薬液注入用のリザーバー容器において、前記ハウジングを構成する有底筒形状のハウジング本体における筒状周壁部の内面が開口側に向かって広がる傾斜内面とされている一方、該傾斜内面には該ハウジング本体の長さ方向に延びる複数本の案内突条が設けられていると共に、該案内突条の突出高さが該傾斜内面の傾斜に対応して該ハウジング本体の開口側に向かって次第に高くなっていることで、前記移動部材の外周面に対して略一定の当接力又は隙間をもった対向状態で該移動部材を該ハウジングの長さ方向に案内する案内面が、該案内突条の先端によって構成されているものである。
【0009】
本態様のリザーバー容器では、ハウジング本体の筒状周壁部の内面の傾斜等に拘わらず、案内突条の先端が長さ方向で中心軸に対して略平行とされ得る。それ故、案内突条の先端で移動部材を案内させることで、移動部材をハウジング長さ方向で略一定の隙間又は当接状態を保ちつつ案内することができて、薬液リザーバーのスムーズな伸縮変形が実現され得る。
【0010】
更に、移動部材への良好な案内作用を確保しつつ、ハウジング本体の筒状周壁部の内面の傾斜を脱型時の抜きテーパとすることもできる。それ故、ハウジング本体を、ブロー成形品等よりも寸法精度の高い射出成形品で構成することも容易となり、寸法精度の向上によって案内面による移動部材の案内作用の更なる向上等も図られ得る。
【0011】
第2の態様は、前記第1の態様に係るリザーバー容器において、前記案内突条の周方向の両側面が、前記ハウジング本体の開口側に向かって互いに接近しているものである。
【0012】
本態様のリザーバー容器では、例えば案内突条の両側面を脱型時の抜きテーパとして利用することもでき、それによって射出成形品のハウジング本体を採用しつつ比較的大きな案内突条を設けることなども容易となる。
【0013】
第3の態様は、中空のハウジング内に長さ方向で伸縮可能な薬液リザーバーが収容されていると共に、該薬液リザーバーの伸縮に伴って該ハウジング内を長さ方向に移動する移動部材が設けられた薬液注入用のリザーバー容器において、前記ハウジングを構成する有底筒形状のハウジング本体における筒状周壁部の内面が開口側に向かって広がる傾斜内面とされている一方、該傾斜内面には該ハウジング本体の長さ方向に延びる複数本の案内凹溝が設けられていると共に、前記移動部材の外周面には該案内凹溝に入り込む複数の外方凸部が設けられており、該案内凹溝の溝深さが該傾斜内面の傾斜に対応して該ハウジング本体の開口側に向かって次第に浅くなっていることで、前記移動部材の外方凸部に対して略一定の当接力又は隙間をもった対向状態で該移動部材を該ハウジングの長さ方向に案内する案内面が、該案内凹溝の底面によって構成されているものである。
【0014】
本態様のリザーバー容器では、ハウジング本体の筒状周壁部の内面の傾斜等に拘わらず、案内凹溝の底面が長さ方向で中心軸に対して略平行とされ得る。それ故、案内凹溝の底面で移動部材の外方突部の先端を案内させることで、移動部材をハウジング長さ方向で略一定の隙間又は当接状態を保ちつつ案内することができて、薬液リザーバーのスムーズな伸縮変形が実現され得る。
【0015】
更に、移動部材への良好な案内作用を確保しつつ、ハウジング本体の筒状周壁部の内面の傾斜を脱型時の抜きテーパとすることもできる。それ故、ハウジング本体を、ブロー成形品等よりも寸法精度の高い射出成形品で構成することも容易となり、寸法精度の向上によって案内面による移動部材の案内作用の更なる向上等も図られ得る。
【0016】
第4の態様は、前記第3の態様に係るリザーバー容器において、前記案内凹溝の溝幅方向の両側面が、前記ハウジング本体の開口側に向かって互いに離隔しているものである。
【0017】
本態様のリザーバー容器では、例えば案内凹溝の両側面の傾斜を脱型時の抜きテーパとして利用することもでき、それによって射出成形品のハウジング本体を採用しつつ案内凹溝の各部寸法等について設計自由度の向上が図られ得る。
【0018】
第5の態様は、中空のハウジング内に伸縮可能な薬液リザーバーが収容された薬液注入用のリザーバー容器において、前記ハウジングが、有底筒形状のハウジング本体と、該ハウジング本体の開口部分に装着されるハウジング蓋体とを含んで構成されていると共に、該ハウジング本体の筒状周壁部には、長さ方向で中央よりも開口に近い位置において外周面上に突出して周方向に延びる環状の補強リブが設けられており、該補強リブの突出先端が周方向で非円形状とされているものである。
【0019】
本態様のリザーバー容器では、ハウジング本体の筒状周壁部において底部側よりも変形強度が小さくなり易い開口側の強度向上が図られ得る。しかも、補強リブを利用して、リザーバー容器の転動を抑制する機能も実現される。
【0020】
第6の態様は、中空のハウジング内に長さ方向で伸縮可能な薬液リザーバーが収容されていると共に、該薬液リザーバーの伸縮に伴って該ハウジング内を長さ方向に移動する移動部材が設けられた薬液注入用のリザーバー容器であって、前記移動部材の外周部分において前記ハウジングの長さ方向に延び、該ハウジングの内面への当接によって該ハウジング内での該移動部材の傾きを制限する傾動防止部が設けられているものである。
【0021】
本態様のリザーバー容器では、移動部材におけるハウジング内での大きな傾きが防止される。その結果、ハウジング内での移動部材の移動安定性が向上されて、ひいては薬液リザーバーの伸縮変形の安定性の向上も図られ得る。
【0022】
第7の態様は、中空のハウジング内に伸縮可能な薬液リザーバーが収容された薬液注入用のリザーバー容器において、前記ハウジングの長さ方向の一方の端部側の外周面が細くされた小径部とされていると共に、該小径部の先端部分には、外周面に突出する環状突出部と、周上で部分的に突出する引掛突部が設けられており、該引掛突部には該ハウジングを吊下状態に支持するフック用の支持孔が形成されていると共に、前記薬液リザーバーに連通されて前記ハウジングから外方に延び出した薬液チューブを、該引掛突部に引っ掛けて位置決めしてから該小径部の外周面に巻き付けることができるものである。
【0023】
本態様のリザーバー容器では、非使用時において、薬液チューブをハウジングの外周面に巻き付けてコンパクトにできて取扱いも容易になる。しかも、支持孔を設けた引掛突部が、小径部の外周面に設けられていることから、ハウジング外周面からの引掛突部の外方への突出高さを小さくできて、引掛突部が不用意に他のチューブ等に引っ掛かり易い問題等も軽減される。
【0024】
第8の態様は、前記第7の態様に係るリザーバー容器において、前記引掛突部が、前記環状突出部の外周面から突出形成されているものである。
【0025】
本態様のリザーバー容器では、例えば巻き付けた薬液チューブの外れを防ぐ環状突出部を利用して、環状突出部から更に突出する引掛突部を採用したことで、薬液チューブの巻付操作に引掛突部が邪魔になったり、巻き付けた薬液チューブが支持孔へのフック係止に邪魔になったりする不具合も、軽減乃至は回避され得る。
【0026】
なお、前記第7又は第8の態様に係るリザーバー容器では、例えば、前記ハウジングの長さ方向の一方の端部側の外周面において、前記環状突出部から長さ方向で他方の端部側に離れた位置に、該外周面に巻き付けられた前記薬液チューブの先端側部分を係止する係止部が設けられてもよい。このような係止部を設ければ、係止部により薬液チューブの先端側部分がハウジングの外周面に係止されることから、薬液チューブのハウジングへの巻付状態が意図せず解除されることが回避されて、非使用時におけるリザーバー容器の取扱い易さが向上され得る。
【0027】
第9の態様は、前記第1~第8の何れかの態様に係るリザーバー容器において、前記薬液リザーバーの伸縮に伴って前記ハウジング内を長さ方向に移動する移動部材が設けられていると共に、該ハウジング内の該移動部材の位置を目視可能にする透明部分が、該ハウジングの少なくとも一部に設けられているものである。
【0028】
本態様のリザーバー容器では、ハウジング内における移動部材の位置が透明部分を通じて外部から視認され得る。特に、前記第1~第6の何れかの態様を組み合わせて採用して、移動部材の移動の安定化を図ることで、薬液リザーバー内に収容された薬液の量を移動部材を指標として外部からより正確に目視把握することもできる。
【0029】
また、前記第1~第10の何れかの態様に係るリザーバー容器では、例えば前記ハウジングの長さ方向の寸法が、幅方向における最大の外寸の3倍以上とされることも好適な一態様である。これにより、リザーバー容器を全体として把持し易い細長形状とすることができて、携帯性やポケット等への収容性、取扱操作性などの向上が図られ得る。特に、前記第1~第4の何れかの態様を組み合わせて採用することで、長尺のリザーバー容器でも移動部材の移動の安定化を図ることが可能になる。また、前記第5の態様と組み合わせて採用することで、長尺のハウジング本体の開口部の強度の確保も容易となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、従来構造のリザーバー容器が内在していた課題の何れか1つを解決することのできるリザーバー容器を提供することができる。かかる課題としては、上述の説明又は以下の実施形態の記載から理解されるように、例えば以下(i)~(vi)などが挙げられる。
【0031】
(i)薬液リザーバーの膨張に伴って移動する移動部材の移動安定性の向上
(ii)ハウジングに設けられた目盛等による薬液量把握の正確性の向上
(iii)ハウジング本体の寸法精度の向上と製造の容易さとの両立
(iv)ハウジング本体の開口部側の強度確保とリザーバー容器の転動防止とを併せて効率的に実現する機構の提供
(v)リザーバー容器に接続された薬液チューブの取扱い易さの向上
(vi)リザーバー容器の長尺化と移動部材の移動安定性の確保との両立
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態としてのリザーバー容器を示す斜視図
図2図1に示されたリザーバー容器の正面図であって、薬液の収容前において薬液リザーバーが収縮した状態を破線で示す図
図3図1に示されたリザーバー容器の縦断面図
図4図3におけるIV-IV断面図
図5図1に示されたリザーバー容器の正面図であって、薬液の収容後において薬液リザーバーが伸長した状態を破線で示す図
図6図5に示されたリザーバー容器の縦断面図
図7】本発明の第2の実施形態としてのリザーバー容器を示す斜視図
図8図7に示されたリザーバー容器において薬液チューブを外周面に巻き付けた状態を示す斜視図
図9】本発明の別の態様としてのリザーバー容器を示す横断面図であって、図4に対応する図
図10】本発明の更に別の態様としてのリザーバー容器を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0034】
先ず、図1~4には、本発明の第1の実施形態として薬液注入用のリザーバー容器の一例が示されている。このリザーバー容器10は、薬液が収容される薬液リザーバー12を備えている。そして、薬液リザーバー12に連通される薬液チューブ14から、薬液リザーバー12に収容された薬液が、患者の体内へカテーテルや留置針等を通じて注入されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、リザーバー容器10の長さ方向となる図1中の上下方向をいう。
【0035】
より詳細には、リザーバー容器10は、中空のハウジング16を備えており、本実施形態のハウジング16は、上下方向に延びる略円形の中空形状とされている。ハウジング16は、上方に開口する略有底円筒形状のハウジング本体18と、当該ハウジング本体18の開口部分20に装着されるハウジング蓋体22とを含んで構成されている。
【0036】
ハウジング本体18は、略円形の底壁24と、当該底壁24の外周縁部から上方に延びる筒状周壁部26とを有しており、硬質の合成樹脂成形品で構成されている。底壁24の中央部分には貫通孔28が設けられており、ハウジング本体18の内外が相互に連通されている。なお、ハウジング本体は筒形であれば円筒に限定されるものではなく、例えば楕円や多角形等の横断面形状であってもよい。
【0037】
また、本実施形態では、ハウジング本体18の略全体が透明な材質により形成された透明部分とされている。更に、ハウジング本体18の外周面29には、長さ方向に所定間隔で表示された複数本の線からなる目盛30が設けられている。
【0038】
更に、ハウジング本体18の筒状周壁部26には、開口部分20において外周面29に突出する補強リブ34が形成されている。補強リブ34の具体的形状は限定されないが、全周に延びる環状が好適であり、更に、補強リブ34の突出高さが周方向で異ならされて、周方向で非円形状の外周端とされることが好適である。
【0039】
本実施形態では、ハウジング本体18の外周面29の接線を交点でつないで略三角形状とした補強リブ34aが、周方向に連続して設けられることで、全体として多角形状の外周端を有する環状の補強リブ34とされている。
【0040】
一方、ハウジング蓋体22は、下方に開口する略逆カップ形状をもって、硬質の合成樹脂成形品で構成されている。そして、ハウジング本体18の上方の開口端に対してハウジング蓋体22の下方の開口端が螺合や嵌合、係止などによって着脱可能に、又は溶着や接着などによって取外し不能に固定的に取り付けられている。
【0041】
ハウジング蓋体22は、略円板形の上底壁36の外周縁から、下方に向かって拡径するテーパ状周壁部38を備えている。また、ハウジング蓋体22は、ハウジング本体18よりも長さ寸法が短くされており、ハウジング本体18から離れる外方に向かって次第に細くなるテーパ形状の外周面40を有している。即ち、テーパ形状の外周面40は、ハウジング本体18の外周面よりも小径とされており、本実施形態では、ハウジング蓋体22のテーパ状周壁部38によって、ハウジングの長さ方向の一方の端部側の外周面が細くされた小径部が構成されている。なお、上底壁36の中央部分には、上下方向に貫通する装着孔42が形成されており、かかる装着孔42に対してリザーバー支持部材44が固定的に装着されている。
【0042】
なお、本実施形態のリザーバー容器10は、上下に延びる長手形状とされており、ハウジング16の長さ方向L(図2参照)が、ハウジング16の最大幅寸法Wの3倍以上(3W≦L)とされている。
【0043】
また、本実施形態では、ハウジング蓋体22の外周面40における周上の一部において、上下方向に延びる板状のリブ46が外方に突出して形成されている。当該リブ46には、ハウジング16を吊下状態に支持するフック用の支持孔48が貫通して形成されている。なお、この支持孔48を利用することで、リザーバー容器10を吊下状態で保管したり、電子天秤でリザーバー容器10の重量、即ち薬液リザーバー12に収容されている薬液の重量を測定することも可能となる。
【0044】
さらに、ハウジング蓋体22には、薬液を収容する薬液リザーバー12が取り付けられており、ハウジング蓋体22がハウジング本体18へ装着されることで、薬液リザーバー12がリザーバー容器10内に収容されている。薬液リザーバー12は、ゴムやエラストマー等の弾性体で形成されたチューブで構成されており、図2,3に示される薬液の非収容状態である初期形状では、リザーバー容器10の内部空間よりも短い長さ(実施形態では半分以下の長さ)で上下方向に略ストレートに延びる円筒形状とされている。
【0045】
薬液リザーバー12の上方の開口端には、ハウジング蓋体22に固着されたリザーバー支持部材44が接続されている。また、薬液リザーバー12の下方の開口端には、移動部材50が取り付けられている。
【0046】
リザーバー支持部材44は、薬液リザーバー12の上方の開口端を、固定部材52とベース部材54とによって、流体密に挟んで固定している。また、リザーバー支持部材44には、リザーバー容器10の内方に向かって突出して薬液リザーバー12の内部に入り込むパイプ状のインナ筒部56が設けられていると共に、リザーバー容器10の外方に向かって突出して外部流路が接続される流入側ポート58及び流出側ポート60が設けられている。
【0047】
そして、流入側ポート58から延びる流入側通路62は、定圧開放弁64を経て、ベース部材54の内孔を通じて、インナ筒部56の外周面上で薬液リザーバー12の内部に連通されている。なお、定圧開放弁64としては、例えば特開2004-329771号公報等に記載されているように弾性スリーブで通孔の外周開口を覆蓋した公知の逆止弁が採用され得て、流入側ポート58から薬液リザーバー12の内部へ注入された薬液の逆流が防止される。
【0048】
また、薬液リザーバー12の内部は、インナ筒部56の下端開口から中空孔を通じて、流出側ポート60につながる流出側通路66に対して、連通されている。薬液リザーバー12の内部に収容された薬液は、かかる流出側通路66から、流出側ポート60に接続される薬液チューブ14を通じて、患者側へ供給される。
【0049】
なお、薬液リザーバー12の上端を保持して流出入ポート60,58を構成するリザーバー支持部材44の構成は限定されるものでなく、特に流出入流路や逆止弁を含む具体的な構造について各種の態様が採用可能である。例えば、薬液の流入側と流出側を兼ねる共通ポートを1つ設けた態様も可能であり、当該ポートにシリンジ等を接続して薬液リザーバー12内に薬液を注入すると共に、当該ポートに対してシリンジ等に代えて薬液チューブ14を接続して、薬液リザーバー12内の薬液を患者側へ供給することもできる。
【0050】
一方、薬液リザーバー12の下端に取り付けられた移動部材50は、薬液リザーバー12の下端に固着された固定部材68及びベース部材70を有しており、更に、薬液リザーバー12の下端に固定的に取り付けられたリザーバーキャップ72を備えている。
【0051】
固定部材68とベース部材70は、上下方向に重ね合わされて、ベース部材70の係止爪74が固定部材68の係止孔76へ係止固定されることで、テーパ状の嵌合面で薬液リザーバー12の下端周壁を流体密に嵌着して封止している。
【0052】
リザーバーキャップ72は、全体として段付きの円筒形状とされており、合成樹脂や金属等の硬質部材とされている。このリザーバーキャップ72は、上方の大径筒部78と下方の小径筒部80とが、円環板状の段差部82により一体的に連結されている。本実施形態では、大径筒部78及び小径筒部80がハウジング16の長さ方向に延びており、移動部材50の外周部分が、リザーバーキャップ72の大径筒部78により構成されている。
【0053】
また、段差部82の内周縁部には、周上の複数箇所において、上方突出部84が設けられており、各上方突出部84の内周面には、内周側に突出する係止爪86が設けられている。一方、小径筒部80の下端開口縁部には、内周側に突出する環状の内方係止突部88が設けられている。
【0054】
そして、リザーバーキャップ72の小径筒部80には、相互に固定された固定部材68及びベース部材70が嵌め入れられており、リザーバーキャップ72の係止爪86と内方係止突部88との上下方向間で、かかる固定部材68及びベース部材70を挟むことで固定されている。これにより、本実施形態では、固定部材68、ベース部材70及びリザーバーキャップ72からなる移動部材50が、薬液リザーバー12の下端に固定されている。
【0055】
また、リザーバーキャップ72の大径筒部78は、薬液リザーバー12の下端部分を外周側に離隔した位置で覆うように配置されている。そして、大径筒部78の外周面90には、少なくともハウジング16の目盛30と周方向で対応する位置に、指標となる読取線92が設けられており、目盛30が表示された透明部分を通じてハウジング16の外部から読取線92を目視できるようになっている。本実施形態では、大径筒部78の外周面90において、全周に亘って環状の読取線92が設けられている。
【0056】
以上のように、薬液リザーバー12及び移動部材50が設けられたハウジング蓋体22がハウジング本体18の開口部分20に装着されることで、中空のハウジング16内に薬液リザーバー12及び移動部材50が収容されており、初期状態では、移動部材50がハウジング本体18の長さ方向で略中央又は上側に位置している。
【0057】
そして、流入側ポート58から流入側通路62を通じて、薬液を外部から薬液リザーバー12に注入することで、図5,6に示されるように、薬液リザーバー12が膨らみ、径方向だけでなく上下方向(ハウジング16の長さ方向)にも伸長するように膨張変形させられる。当該伸長(膨張)変形に伴って、薬液リザーバー12の下端に固定された移動部材50が、薬液リザーバー12の膨張変形の程度ひいては容積変化の程度に応じて、ハウジング16内を下方に移動する。
【0058】
薬液の充填後には、薬液リザーバー12の弾性的な復元変形によって薬液が押し出され、インナ筒部56から流出側通路66を経て、流出側ポート60に接続された薬液チューブ14を通じて、患者の体内への持続的な注入が可能となる。
【0059】
このような薬液の流出に伴って、薬液リザーバー12は径方向だけでなく上下方向にも収縮するように変形することから、収縮変形量ひいては薬液流出量に応じて、移動部材50が、ハウジング16内を上方に移動する。
【0060】
そして、薬液が全て排出されると初期状態を示す図2,3等の形状に略復帰する。なお、薬液チューブ14及び/又は薬液チューブ14に接続されるカテーテル等には、従来公知のフィルターや流量制御部が、適宜に設けられる。
【0061】
ここにおいて、本実施形態の筒状周壁部26の内面は、開口側に向かって次第に拡径して広がる傾斜内面94とされている。そして、この傾斜内面94には、上下方向(ハウジング16の長さ方向)に延びる複数本の案内突条96が設けられている。本実施形態では、これら複数本の案内突条96が、周方向で略等間隔に設けられている。
【0062】
また、これら案内突条96の、傾斜内面94からの突出高さ寸法は、上下方向で異ならされており、傾斜内面94の傾斜角度に対応して、上方に向かうにつれて(開口側に向かって)突出高さが次第に高くなっている。これにより、各案内突条96の突出先端面98が相互に略平行で、且つ、筒状周壁部26の中心軸と略平行に延びている。
【0063】
なお、本実施形態では、案内突条96が、筒状周壁部26の中心軸方向にストレートに延びているが、周方向に傾斜していても良い。また、案内突条96の突出先端面98がある程度の周方向幅寸法を有しているが、突出先端面98の周方向幅寸法が略0(案内突条96が内周側に向かって先鋭状)とされてもよい。
【0064】
なお、本実施形態では、各案内突条96の周方向の両側面が、上下方向に対して傾斜する傾斜側面100,100とされている。即ち、両傾斜側面100,100が、上下方向においてハウジング本体18の開口側に向かって相互に接近する方向に傾斜しており、各案内突条96の周方向幅寸法が、ハウジング本体18の開口側に向かって次第に小さくなっている。
【0065】
更に、本実施形態では、移動部材50における大径筒部78の外径寸法が、各案内突条96の突出先端面98をつなぐ内接円と略等しいか僅かに小さくされている。なお、筒状周壁部26の内周面は開口側に向かって拡径しているが、案内突条96の高さ寸法が開口側に向かって大きくされることで、各案内突条96の突出先端面98をつなぐ内接円の径寸法は、長さ方向で略一定とされている。
【0066】
それ故、各案内突条96の突出先端面98と、移動部材50の外周面となる大径筒部78の外周面90とが、略一定の当接力又は隙間をもって径方向(上下方向と直交する方向)で対向している。これにより、移動部材50を案内する案内面が、案内突条96の先端である突出先端面98によって構成されている。そして、移動部材50によるハウジング16内の上下方向の移動が、移動ストロークの略全長に亘って、各案内突条96の突出先端面98により安定して案内されるようになっている。
【0067】
さらに、移動部材50における大径筒部78は、例えば図3に示される状態から移動部材50が右回り又は左回りに傾動した場合には、大径筒部78と、ハウジング16の内面を構成する案内突条96の突出先端面98とが当接することで、移動部材50の傾きが制限される。従って、本実施形態では、ハウジング16の内面に当接して移動部材50の傾きを制限する傾動防止部が、大径筒部78により構成されている。好適には移動部材50が軸直角方向に広がる正規状態から15度以下の傾斜角度で、より好適には10度以下の傾斜角度、更に好適には5度以下の傾斜角度で、当接による傾動の制限効果が発揮されるようにされる。
【0068】
上記の如き構造とされた本実施形態のリザーバー容器10では、移動部材50が、案内面(案内突条96の突出先端面98)によって案内されて、ハウジング16内を上下方向と略平行に移動し得ることから、例えば薬液リザーバー12の変形態様にばらつきがある場合でも、移動部材50が大きく傾いたりすることが回避されて、移動部材50の移動安定性が向上され得る。なお、本実施形態のようにハウジング本体18の傾斜内面94に案内突条96を設ける態様を採用することで、筒状周壁部26の壁厚を小さく抑えることも可能となる。
【0069】
特に、本実施形態では、移動部材50の大径筒部78による傾動防止機能を備えており、移動部材50の傾きが大きくなり過ぎてハウジング16の内面に引っ掛かったりすることで、薬液リザーバー12の変形が阻害される等の不具合が回避され得る。
【0070】
また、本実施形態では、ハウジング本体18の内面が傾斜内面94とされていることから、当該傾斜が抜きテーパとして作用して、ハウジング本体18が射出成形により形成される場合であっても、安定した離型が達成され得る。特に、本実施形態では、案内突条96の両側面も傾斜側面100,100とされていることから、当該傾斜が抜きテーパとして作用して、本実施形態のように案内突条96を設ける場合であっても、安定した離型が達成され得る。これにより、ハウジング本体18を精度よく形成することができて、移動部材50の移動安定性の更なる向上が達成され得る。
【0071】
更に、本実施形態では、ハウジング本体18の開口部分20において補強リブ34が設けられていることから、開口における変形が抑制され得る。特に、補強リブ34の突出先端が周方向で非円形状とされていることから、ハウジング16の転動が防止され得る。
【0072】
更にまた、本実施形態では、ハウジング本体18に目盛30が設けられていると共に、移動部材50の大径筒部78に読取線92が設けられており、薬液リザーバー12に収容された薬液量に応じて移動部材50の移動量が変化することから、読取線92に対応する目盛30を読み取ることで、薬液リザーバー12内の薬液量を把握することができる。特に、本実施形態では、ハウジング本体18の略全体が透明部分とされていることから、ハウジング16内に収容された移動部材50の位置が容易に目視され得て、読取線92に対応する目盛30が読み取り易くされている。また、移動部材50の移動安定性が向上されることで、薬液リザーバー12内の薬液量と目盛30とをより正確に対応させることができて、外部から薬液リザーバー12内の薬液量をより容易に且つ正確に把握することができる。なお、長さ方向に延びる案内突条96は、ハウジング本体18の周方向で部分的にしか設けられないことから、周方向に隣り合う案内突条96,96間の周壁部分は滑らかな内外表面形状と為し得、ハウジング本体18を透過しての移動部材50の視認性も良好に確保することが可能となる。
【0073】
次に、図7には、本発明の第2の実施形態としての薬液注入用のリザーバー容器110が示されている。本実施形態のリザーバー容器110は、前記第1の実施形態と比べて、ハウジング蓋体112の形状が異ならされている。本実施形態において、前記第1の実施形態と実質的に同一の部材及び部位には、図中に、前記第1の実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施形態のハウジング蓋体112は、テーパ状周壁部38の外周面40における上端部(先端部分)において、外周側にフランジ状に突出する円環板状の環状突出部114が形成されている。これにより、テーパ状周壁部38の外周面40の上端部と環状突出部114との間には、周方向の全周に亘って延びる環状の段差部116が形成されている。
【0075】
さらに、テーパ状周壁部38の外周面40における上端部(先端部分)には、環状突出部114の外周面から突出して引掛突部118が形成されている。この引掛突部118には、上下方向で貫通する支持孔48が形成されている。
【0076】
また、テーパ状周壁部38の外周面40において、環状突出部114からハウジング16の長さ方向で下方に離隔した位置には、薬液チューブ14の先端側部分を係止する係止部120が設けられている。本実施形態では、係止部120が、テーパ状周壁部38の下端付近に設けられている。係止部120は、薬液チューブ14を解除可能に係止し得る物であれば良く、具体的な構造は限定されるものでない。本実施形態では、周方向に所定長さで延びる溝部122と、薬液チューブ14を溝部122に嵌め入れた上から押さえるように係止して保持するフック部124を含んで構成されている。
【0077】
以上の如き構造とされた本実施形態のリザーバー容器110では、図8に示されるように、例えば非使用時に、薬液チューブ14を、引掛突部118に引っ掛けて周方向で位置決めした後、段差部116に沿って巻き掛けて、テーパ状周壁部38の外周面40を下方に向かって巻き重ねることができる。このように巻き付けられた薬液チューブ14は、先端側部分において係止部120で係止されて弛みや外れが防止される。
【0078】
これにより、非使用時に邪魔となり易い薬液チューブ14をテーパ状周壁部38の外周面40に巻き付けてコンパクトに保持することができて、携帯性や収納性、取扱い易さの向上が図られる。
【0079】
本実施形態では、初めに薬液チューブ14を引掛突部118に引っ掛けて位置決めすることから、巻き始めの位置を固定することができて、巻付けの安定性と巻付け易さが向上され得る。特に、引掛突部118を環状突出部114の外周面に設けることで、小さな引掛突部118でも支持孔48を外周側に位置させて使用しやすくできる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述の実施形態や解決手段の欄における具体的乃至は限定的な記載によって制限的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0081】
例えば、前記実施形態の案内突条96による移動部材50の案内機構に代えて、例えば、図9に示されるリザーバー容器130のように、ハウジング本体18の案内凹溝132と移動部材50の外方凸部134を含んで構成された案内機構を採用することもできる。
【0082】
具体的には、ハウジング本体18の傾斜内面94には、上下方向(ハウジング16の長さ方向)に延びる複数本の案内凹溝132が設けられている。案内凹溝132の溝深さは、傾斜内面94の傾斜に対応して、ハウジング本体18の開口側に向かって次第に浅くなっている。一方、移動部材50の大径筒部78において一定の外径で延びる円筒形状の外周面90には、案内凹溝132よりも僅かに小さな断面形状をもって上下方向に延びる外方凸部134が形成されている。
【0083】
そして、移動部材50の各外方凸部134が、ハウジング本体18の各案内凹溝132へ差し入れられた状態とされている。この結果、外方凸部134の外周面と案内凹溝132の底面136とが、略一定の当接力又は隙間をもって径方向で対向しており、移動部材50が、案内凹溝132の底面136により案内され得る。
【0084】
従って、案内凹溝132の底面136により案内面が構成されることとなり、前記第1の実施形態と同様に、移動部材50の移動安定性の向上が図られ得る。特に、本態様例のように、外方凸部134が案内凹溝132に入り込むことで、ハウジング本体18と移動部材50との相対回転が防止され得る。
【0085】
なお、本態様例では、案内凹溝132における溝幅方向の両側面が、ハウジング本体18の開口側に向かって相互に離隔する方向に傾斜した傾斜側面138,138とされている。そして、案内凹溝132の溝幅寸法が、ハウジング本体18の開口側に向かって次第に大きくされている。それ故、傾斜側面138,138の傾斜を脱型時の抜きテーパとして利用することも可能であり、ハウジング本体18として射出成形品を用いやすくなる。
【0086】
ところで、前記第1の実施形態における複数の案内突条96や上記態様例における各複数の案内凹溝132と外方凸部134は、全てが同じ形状とされる必要はない。また、前記第1の実施形態における複数の案内突条96に対して周方向で対向位置する突部を移動部材50の外周面に設けることで、ハウジング16内における移動部材50の周方向の回転を規制することも可能である。
【0087】
なお、ハウジング本体18の製造は、射出成形に限定されるものでない。また、本発明の態様に応じて、ハウジング本体の内面における上下方向の傾斜は必須でなく、案内突条や案内凹溝における周方向の両側面における傾斜も必須でないし、案内突条や案内凹溝、外方凸部も必須とされない。案内突条や案内凹溝による案内面も、移動部材を案内するストローク領域に形成されていれば良く、例えばハウジング本体18の周壁部の全長にわたって設ける必要もないし、ハウジング蓋体22の内周面にまで設けることも可能である。
【0088】
また、ハウジング蓋体22のリブ46も、本発明の態様に応じて採用されるものであり、具体的形状も限定されない。例えば図10に例示されるリザーバー容器150のように、ハウジング蓋体22のテーパ状周壁部38の外周面40において、上下方向で部分的に突出するリブ152を採用することも可能である。このようなリブ152では、リブ152の下端に形成される段差部154を利用して薬液チューブ14を巻き止めることもできる。即ち、このようなリブ152を設けることで、前記第2の実施形態における引掛突部118と同様に、薬液チューブ14をリブ152に引っ掛けて周方向で位置決めすることができると共に、薬液チューブ14を段差部154から順に下方に巻き付けることができる。また、リブ152により、巻き付けた薬液チューブ14の上方への抜けも防止され得る。
【0089】
更に、前記第2の実施形態では、引掛突部118が環状突出部114の外周面から外周側に突出していたが、引掛突部と環状突出部とは別個に設けてもよい。また、例えばハウジング蓋体におけるテーパ状周壁部の上端部において環状突出部が周方向で1周に満たない周方向寸法や、周上で部分的に突出するように周方向で分断された態様等をもって形成されても良い。更にまた、テーパ状周壁部の外周面において環状突出部が形成されていない周方向位置に引掛突部を形成することもできる。
【0090】
更にまた、前記第2の実施形態では、係止部120が、テーパ状周壁部38の外周面40における下端部に設けられていたが、係止部は、例えばハウジング本体に設けられてもよい。また、薬液チューブは、ハウジング蓋体だけでなくハウジング本体に巻き付けられてもよい。
【0091】
なお、第1及び第2の実施形態では、外方に膨らんだ湾曲凸形のテーパ形状の外周面40を有するテーパ状周壁部38によって、薬液チューブを巻き付ける小径部が構成されていたが、かかる小径部は薬液チューブを巻き付けることが出来れば良く具体的形状は限定されない。例えば、直線形や湾曲凹形等のテーパ形状の外周面をもって形成したり、括れ状等の外周面をもって形成することも可能であり、薬液チューブを螺旋状に並べることなく不規則に巻き重ねて巻き付けるようにしても良い。
【0092】
また、移動部材の具体的形状は限定されない。例えば上下方向にストレートに延びる筒形状であってもよいし、円板状の部材の外周縁部から上下方向に延び出す突出部が周方向で部分的に設けられた態様とされてもよい。このように、上下方向に延びる筒状部や突出部を有することで、ハウジングへの当接によって移動部材の傾動を制限する傾動防止部を構成することも可能であるが、本発明の態様によっては、傾動防止部を必須としない。更に、移動部材は、合成樹脂や金属の成形体に限定されるものでなく、例えば線材などを用いて枠状や格子、メッシュ状の構造体とされていても良い。また、移動部材の薬液リザーバーへの固定構造も限定されない。
【0093】
更にまた、前記実施形態では、ハウジング本体18の略全体が透明部分とされていたが、例えばハウジング本体において目盛が付される部分のみが透明部分とされてもよい。また、前記実施形態では、ハウジング本体18に目盛30が設けられると共に、移動部材50に読取線92が設けられていたが、これらを逆に設けてもよい。尤も、本発明の態様によっては、目盛や読取線、透明部分などは必須とされない。
【0094】
上述の説明からも理解されるように、本発明の前記各態様に係るリザーバー容器は、例えば以下の如き技術的意義を発揮し得る場合もある。尤も、以下の説明によって各態様が限定的に解釈されるものではない。
(1)前記第1,3の態様に係るリザーバー容器
従来のリザーバー容器では、樹脂製の筒状体からなるハウジング内において、薬液リザーバーの伸縮に伴って移動部材が上下方向に移動するようになっていたが、移動部材がハウジング内面に引っ掛かるようにして移動し難くなるおそれがあった。かかる問題を検討したところ、従来のリザーバー容器では、ハウジング内周面と移動部材の外周面が共に円筒形状とされていると共に、ハウジング内周面と移動部材の外周面との間に比較的大きな隙間が設定されていたために、移動部材が大きく傾くと、ハウジング内周面と移動部材の外周面とが周方向に円弧状に延びる領域で強く嵌まり合いやすいということが判った。
このような状況下、前記第1,3の態様に係るリザーバー容器では、長さ方向に延びる案内突条や案内凹溝の形成部位において、ハウジング本体による移動部材の案内面を限られた領域に設けたことで、仮に移動部材が傾いても、移動部材のハウジング本体に対する引っ掛かりによる移動不良が効果的に回避され得る。
しかも、ハウジング本体において長さ方向に延びる案内突条や案内凹溝の形成部位は、形状的又は部材寸法的に強度を確保しやすいことから、移動部材を長さ方向でより安定して引っ掛かりを防止しつつ案内することが可能になる。
(2)前記第5の態様に係るリザーバー容器
従来のリザーバー容器では、一般に薄肉の樹脂製の筒状体とされていることから、取り扱い易さ等を考慮してハウジング本体の長さ寸法を大きくしようとすると、特に底壁からの離隔距離が大きくなる開口部側の周壁には底壁による補強作用が及び難くなってしまい、開口部側の周壁の変形量も大きくなりやすい。その結果、例えばハウジング本体の周壁で移動部材を案内しようとしても安定して上下方向に移動し難くなるおそれがある。
このような状況下、前記第5の態様に係るリザーバー容器では、底壁から離れた長さ方向の開口部側に補強リブを設けたことにより、たとえハウジング本体を長尺にしてもリザーバー容器の強度が全体に亘って効率的に確保されることとなり、移動部材を長さ方向で安定して案内することが可能になる。その結果、薄肉のリザーバー容器においても、移動部材の案内精度を確保しつつ、容器の長尺化が実現可能とされる。加えて、テーブル等の上に載置されることもあるリザーバー容器では、特に長尺になると横置きしたり倒れたりし易いが、第5の態様に係るリザーバー容器では、周方向で非円形状とされた補強リブで不用意な転動も防止され得て、良好な取扱性能も発揮され得る。
(3)前記第6の態様に係るリザーバー容器
従来のリザーバー容器では、薬液リザーバーの伸縮に伴ってハウジング内を長さ方向に移動する移動部材がハウジング内周面に対して部分的に引っ掛かる等して、大きく傾いてしまい、反転に近い状態まで傾動するおそれさえあった。そのために、傾いた移動部材がハウジングの内面に嵌まり合って薬液リザーバーの伸縮に悪影響が及ぼされるおそれがあると共に、移動部材を指標として薬液リザーバーの伸縮量や薬液量を表示する場合には、表示精度が低下する問題もあった。
このような状況下、前記第6の態様に係るリザーバー容器では、移動部材の傾きが所定範囲を超えた場合にハウジング内面に当接する傾動防止部を新たに採用したことにより、移動部材の傾動が制限されることから、例えば薬液リザーバーの伸縮量が大きい場合でも移動部材の安定した移動が実現可能になると共に、移動部材を指標としての薬液量の表示機能を採用する場合の精度向上も達成され得る。
(4)前記第7の態様に係るリザーバー容器
リザーバー容器では、一般に容器の先端部分から薬液チューブが接続されて延び出すように構成されると共に、ハウジングが吊下状態で保持されることも多い。
ここにおいて、前記第7の態様に係るリザーバー容器では、リザーバー容器においてテーパ形状とした先端部分の外周面を巧く利用することで、薬液チューブを巻き付けても外径寸法の小さいコンパクトな収容状態に保持する機構を実現し得ると共に、リザーバー容器を吊下保持せしめるための引掛突部をハウジングから外周側への突出高さを抑えてチューブ等の他部材への引っ掛かり等の不具合を回避しつつコンパクトに設けることも可能と為し得る。
【符号の説明】
【0095】
10,110,130,150:リザーバー容器、12:薬液リザーバー、14:薬液チューブ、16:ハウジング、18:ハウジング本体(透明部分)、20:開口部分、22,112:ハウジング蓋体、26:筒状周壁部、29:ハウジング本体の外周面、34,34a:補強リブ、38:テーパ状周壁部、40:ハウジング蓋体の外周面、48:支持孔、50:移動部材、78:大径筒部(傾動防止部)、90:移動部材の外周面、94:傾斜内面、96:案内突条、98:突出先端面(案内面)、100,138:傾斜側面、114:環状突出部、118:引掛突部、120:係止部、132:案内凹溝、134:外方凸部、136:底面(案内面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10