IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォスター電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-振動アクチュエータ 図1
  • 特開-振動アクチュエータ 図2
  • 特開-振動アクチュエータ 図3
  • 特開-振動アクチュエータ 図4
  • 特開-振動アクチュエータ 図5
  • 特開-振動アクチュエータ 図6
  • 特開-振動アクチュエータ 図7
  • 特開-振動アクチュエータ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143389
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050725
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 康太
(72)【発明者】
【氏名】原 晃
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA04
5D107BB08
5D107CC09
5D107CD01
5D107DD03
5D107DD09
5D107DD12
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】弾性支持部材の変形に伴って振動する可動体の加速度の最大値を簡単に調整できる振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも磁石を含んで磁気回路を構成する磁気回路構成部材及びコイル20の一方を含む固定体24と、固定体に支持された弾性支持部材25と、弾性支持部材に形成された可動体支持部45に固定され且つコイル及び磁気回路構成部材の他方を含み、コイルに電流が流れたときに弾性支持部材を撓ませながら所定方向に振動する可動体55と、弾性支持部材又は可動体に支持された補助弾性支持部材71と、補助弾性支持部材に支持された補助質量体72と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも磁石を含んで磁気回路を構成する磁気回路構成部材及びコイルの一方を含む固定体と、
前記固定体に支持された弾性支持部材と、
前記弾性支持部材に形成された可動体支持部に固定され且つ前記コイル及び前記磁気回路構成部材の他方を含み、前記コイルに電流が流れたときに前記弾性支持部材を撓ませながら所定方向に振動する可動体と、
前記弾性支持部材又は前記可動体に支持された補助弾性支持部材と、
前記補助弾性支持部材に支持された補助質量体と、
を備える、
振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記弾性支持部材に前記補助弾性支持部材が支持された請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記弾性支持部材及び前記可動体に前記補助弾性支持部材が支持されない場合と比べて、前記可動体が振動するときの前記可動体の加速度の最大値が低くなるように、前記補助弾性支持部材が前記弾性支持部材又は前記可動体に支持された請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記可動体の振動周波数が所定の第1周波数帯に含まれる第1周波数であるときに、前記可動体の加速度が前記第1周波数帯において最大の第1ピーク値となり、且つ、前記振動周波数が前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯に含まれる第2周波数であるときに、前記加速度が前記第2周波数帯において最大の第2ピーク値となるように、前記補助弾性支持部材が前記弾性支持部材又は前記可動体に支持された請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記弾性支持部材と前記補助弾性支持部材が互いに別部材である請求項1~4の何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記弾性支持部材が、一方の端部のみが前記固定体に支持された片持ち梁であり、
前記弾性支持部材の前記一方の端部と前記可動体支持部との間に位置する部位に、前記補助弾性支持部材が支持された請求項1~5の何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記弾性支持部材が、一方の端部のみが前記固定体に支持された片持ち梁であり、
前記弾性支持部材の他方の端部と前記可動体支持部との間に位置する部位に、前記補助弾性支持部材が支持された請求項1~5の何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルを含む固定体と、固定体に一端である固定端が固定された片持ち梁状の弾性支持部材と、弾性支持部材に固定された磁石を有する可動体と、を備える振動アクチュエータが開示されている。コイルに電流が流れたときに、磁気回路で発生した磁力が、弾性支持部材を撓ませながら可動体(磁石)を所定方向に振動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-69447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、振動アクチュエータの弾性支持部材にエラストマーからなる部材を固定することにより、可動体の振動時の加速度の最大値を調整できる。しかし、エラストマーの特性は温度変化に伴って変わり易い。そのため、この方法により可動体の加速度の最大値を、所望の値となるように調整するのは容易ではない。
【0005】
本発明は、弾性支持部材の変形に伴って振動する可動体の加速度の最大値を簡単に調整できる振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の振動アクチュエータは、少なくとも磁石を含んで磁気回路を構成する磁気回路構成部材及びコイルの一方を含む固定体と、前記固定体に支持された弾性支持部材と、前記弾性支持部材に形成された可動体支持部に固定され且つ前記コイル及び前記磁気回路構成部材の他方を含み、前記コイルに電流が流れたときに前記弾性支持部材を撓ませながら所定方向に振動する可動体と、前記弾性支持部材又は前記可動体に支持された補助弾性支持部材と、前記補助弾性支持部材に支持された補助質量体と、を備える振動アクチュエータ。
【0007】
請求項1に記載の発明では、弾性支持部材又は可動体に補助弾性支持部材が支持され、且つ、補助弾性支持部材に補助質量体が支持される。即ち、補助弾性支持部材及び補助質量体がマスダンパ(動吸振器)として機能する。そのため、弾性支持部材又は可動体に補助弾性支持部材を支持させることにより、弾性支持部材の変形に伴って振動する可動体の加速度の最大値を簡単に調整できる。
【0008】
請求項2に記載の振動アクチュエータは、請求項1において、前記弾性支持部材に前記補助弾性支持部材が支持される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、弾性支持部材の変形に伴って振動する可動体の加速度の最大値を簡単に調整できる。
【0010】
請求項3に記載の振動アクチュエータは、請求項1又は請求項2において、前記弾性支持部材及び前記可動体に前記補助弾性支持部材が支持されない場合と比べて、前記可動体が振動するときの前記可動体の加速度の最大値が低くなるように、前記補助弾性支持部材が前記弾性支持部材又は前記可動体に支持される。
【0011】
請求項3に記載の発明では、補助弾性支持部材及び補助質量体を備えるマスダンパによって、振動アクチュエータがマスダンパを備えない場合と比べて、可動体の加速度の最大値を低くできる。
【0012】
請求項4に記載の振動アクチュエータは、請求項1又は請求項2において、前記可動体の振動周波数が所定の第1周波数帯に含まれる第1周波数であるときに、前記可動体の加速度が前記第1周波数帯において最大の第1ピーク値となり、且つ、前記振動周波数が前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯に含まれる第2周波数であるときに、前記加速度が前記第2周波数帯において最大の第2ピーク値となるように、前記補助弾性支持部材が前記弾性支持部材又は前記可動体に支持される。
【0013】
請求項4に記載の発明では、補助弾性支持部材及び補助質量体を備えるマスダンパによって、可動体の振動周波数が第1周波数のときに可動体の加速度が第1ピーク値となり、且つ、可動体の振動周波数が第2周波数のときに可動体の加速度が第2ピーク値となる。
【0014】
請求項5に記載の振動アクチュエータは、請求項1~4の何れか1項において、前記弾性支持部材と前記補助弾性支持部材が互いに別部材である。
【0015】
請求項5に記載の発明では、弾性支持部材と補助弾性支持部材が一体成形される場合と比べて、補助弾性支持部材(マスダンパ)の設計の自由度が高くなる。
【0016】
請求項6に記載の振動アクチュエータは、請求項1~5の何れか1項に記載において、前記弾性支持部材が、一方の端部のみが前記固定体に支持された片持ち梁であり、前記弾性支持部材の前記一方の端部と前記可動体支持部との間に位置する部位に、前記補助弾性支持部材が支持される。
【0017】
請求項6に記載の発明は、弾性支持部材の変形に伴って振動する可動体の加速度の最大値を簡単に調整できる。
【0018】
請求項7に記載の振動アクチュエータは、請求項1~5の何れか1項に記載において、前記弾性支持部材が、一方の端部のみが前記固定体に支持された片持ち梁であり、前記弾性支持部材の他方の端部と前記可動体支持部との間に位置する部位に、前記補助弾性支持部材が支持される。
【0019】
請求項7に記載の発明は、弾性支持部材の変形に伴って振動する可動体の加速度の最大値を簡単に調整できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に振動アクチュエータによれば、弾性支持部材の変形に伴って振動する可動体の加速度の最大値を簡単に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る振動アクチュエータを示す斜視図である。
図2】振動アクチュエータの分解斜視図である。
図3図1の3-3線で切断した断面図である。
図4】振動アクチュエータの背面図である。
図5】弾性支持部材が下方へ撓んだときの図3と同様の断面図である。
図6】弾性支持部材が上方へ撓んだときの図3と同様の断面図である。
図7】実施形態、比較例及び変形例の振動部材の振動周波数と加速度の関係を示すグラフである。
図8】比較例の図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態に係る振動アクチュエータ10について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図に適宜示す矢印X、Y、Zは互いに直交する。さらに便宜上、X方向が前後方向であり、Y方向が左右方向であり、Z方向が上下方向であるものとする。振動アクチュエータ10が後述する取付対象物(図示省略)に取り付けられたときの矢印X、Y、Zは、これらと異なる方向と平行になることがある。
【0023】
取付対象物には、例えば、タッチパネルとして構成された液晶パネル等の表示装置、及び、ゲーム機器又は家電製品のコントローラが含まれる。タッチパネルが取付対象物である場合、振動アクチュエータ10が発生する振動が、タッチパネルに触れた使用者の指に伝達される。
【0024】
図1及び図2に示されるように振動アクチュエータ10は、ベース部材15、ボイスコイル(コイル)20、弾性支持部材25及び可動体55を備える。
【0025】
ベース部材15は、本体板16と、本体板16の厚み方向の一方の面に設けられた突部17と、突部17の一方の面に設けられたコイル取付部18と、を備える。ベース部材15は例えば金属製である。本体板16は、Z方向に沿って見たときに長方形をなす平板である。突部17のZ方向に沿って見たときの形状は長方形である。コイル取付部18のZ方向に沿って見たときの形状は円形である。ベース部材15には、本体板16、突部17及びコイル取付部18を貫通する貫通孔19が設けられている。さらに本体板16には、コイル取付部18より前方に位置する回路部16Aが設けられている。
【0026】
金属製の電線によって構成されたボイスコイル20の形状は、Z方向と平行な軸線21(図2参照)を中心とする略円筒形状である。ボイスコイル20の下端面がベース部材15のコイル取付部18に固定されている。このように一体化されたベース部材15及びボイスコイル20によって固定体24が構成される。
【0027】
弾性支持部材25は、弾性材料によって構成された一体成形品である。弾性支持部材25の構成材料の一例はステンレスである。本実施形態のボイスコイル20は、金型(図示省略)を用いた金属板に対するプレス成形によって形成される。図2に示されるように、弾性支持部材25は、第1構成部26、第2構成部30、第1角部31、第3構成部33、第2角部34、第4構成部36、第3角部37、第5構成部39、第4角部40、第6構成部47、第5角部48、第7構成部50及び第6角部51を備える。
【0028】
第1構成部26は平板であり、Z方向に見たときの形状は長方形である。軸線21に対して直交するY方向(直交方向)に見たときに、第1構成部26はX方向に直線的に延びる。弾性支持部材25が自由状態にあるとき、第1構成部26はXY平面上に位置する。図3及び図4に示されるように、第1構成部26のX方向寸法は本体板16より大きく、第1構成部26のY方向寸法は本体板16と略同一である。第1構成部26には突部17とほぼ同じ平面形状の貫通孔27が形成されている。さらに第1構成部26のY方向の両側縁部にはZ方向上方に延びる一対の立ち上げリブ28が設けられている。各立ち上げリブ28は、XZ平面と平行であり、第1構成部26の両側縁部全体に渡って設けられている。
【0029】
第1構成部26の後縁部に第2構成部30の下縁部が接続されている。第2構成部30は平板であり、X方向に見たときの形状は長方形である。弾性支持部材25が自由状態にあるとき、第2構成部30はYZ平面上に位置する。即ち、第1構成部26と第2構成部30は互いに直交する。なお、弾性支持部材25の説明における「直交」は、互いに交差する2つの部位(部材)同士がなす角度が90°であること又は90°と微小角度だけ異なる角度であることを意味する。第2構成部30のY方向寸法は第1構成部26と同一である。第1構成部26と第2構成部30の接続部はY方向に延びる第1角部31を構成する。第1角部31の曲げ剛性は、その周辺部である第1構成部26及び第2構成部30より高い。
【0030】
第2構成部30の上縁部に第3構成部33の後縁部が接続されている。第3構成部33は平板であり、Z方向に見たときの形状は長方形である。弾性支持部材25が自由状態にあるとき、第3構成部33はXY平面上に位置する。即ち、第2構成部30と第3構成部33は互いに直交する。第3構成部33のY方向寸法は第1構成部26と同一である。第2構成部30と第3構成部33の接続部はY方向に延びる第2角部34を構成する。第2角部34の曲げ剛性は、その周辺部である第2構成部30及び第3構成部33より高い。
【0031】
第3構成部33の前縁部に第4構成部36の下縁部が接続されている。第4構成部36は平板であり、X方向に見たときの形状は長方形である。弾性支持部材25が自由状態にあるとき、第4構成部36はYZ平面上に位置する。即ち、第3構成部33と第4構成部36は互いに直交する。第4構成部36のY方向寸法は第1構成部26と同一である。第3構成部33と第4構成部36の接続部はY方向に延びる第3角部37を構成する。第3角部37の曲げ剛性は、その周辺部である第3構成部33及び第4構成部36より高い。
【0032】
第4構成部36の上縁部に第5構成部39の後縁部が接続されている。第5構成部39は平板であり、Z方向に見たときの形状は長方形である。弾性支持部材25が自由状態にあるとき、第5構成部39はXY平面上に位置する。即ち、第4構成部36と第5構成部39は互いに直交する。第5構成部39のY方向寸法は第1構成部26と同一である。第4構成部36と第5構成部39の接続部はY方向に延びる第4角部40を構成する。第4角部40の曲げ剛性は、その周辺部である第4構成部36及び第5構成部39より高い。
【0033】
さらに第4角部40には左右一対の立体リブ41が形成されている。立体リブ41は上記プレス成形時に上記金型によって形成される。図1図4に示されたように、各立体リブ41は共に三角形状の平板である第1リブ構成部42及び第2リブ構成部43を有する。X方向及びZ方向に沿って弾性支持部材25を見たときに、第1リブ構成部42と第2リブ構成部43は互いに対称をなす。さらに第5構成部39には円形の可動体支持孔45が形成されている。
【0034】
第5構成部39の前縁部に第6構成部47の上縁部が接続されている。第6構成部47は平板であり、X方向に見たときの形状は長方形である。弾性支持部材25が自由状態にあるとき、第6構成部47はYZ平面上に位置する。第6構成部47のY方向寸法は第1構成部26と同一である。第5構成部39と第6構成部47の接続部はY方向に延びる第5角部48を構成する。
【0035】
第6構成部47の下縁部に第7構成部50の後縁部が接続されている。第7構成部50は平板であり、Z方向に見たときの形状は長方形である。弾性支持部材25が自由状態にあるとき、第7構成部50はXY平面上に位置する。第7構成部50のY方向寸法は第1構成部26と同一である。第6構成部47と第7構成部50の接続部はY方向に延びる第6角部51を構成する。
【0036】
続いて可動体55について説明する。可動体55は、ヨーク56、永久磁石(磁石)61及びポールピース63を備える。可動体55の質量(重量)はボイスコイル20より大きい。ヨーク56、永久磁石(磁石)61及びポールピース63は、磁気回路を構成する磁気回路構成部材を構成する。なお、磁気回路構成部材は、少なくとも磁石61を備えていればよい。
【0037】
ヨーク56は、下側が開放された有底円筒状の部品であり、軟磁性体で構成されている。ヨーク56は、Z方向に見たときに円形をなす天板部57と、天板部57の外周縁から下方に突出する円筒部58と、天板部57の上面に設けられた円形の凸部59と、を備える。
【0038】
永久磁石61は、天板部57より外径が小さい略円柱状の部材である。永久磁石61の上面が天板部57の下面に固定される。
【0039】
ポールピース63は、永久磁石61より大径の円盤状部材である。ポールピース63は永久磁石61の下面に固定される。
【0040】
一体化された可動体55の凸部59が下方から可動体支持孔45に挿入され、且つ、天板部57の上面(端面)が第5構成部39の下面の一部である可動体支持部39Aに固定される。弾性支持部材25及び可動体55によって振動部材60が構成される。
【0041】
ベース部材15及びボイスコイル20からなる一体物である固定体24は、弾性支持部材25と一体化される。即ち、図3に示されるように、ボイスコイル20が貫通孔27を介して第1構成部26と第5構成部39との間の空間に配置され且つ突部17が貫通孔27内に位置する。さらに本体板16の上面全体が第1構成部26の下面に接触させられ、且つ、接着剤(図示省略)によって本体板16の上面が第1構成部26の一部である固定端26Aの下面に固定される。即ち、第1構成部26における本体板16の後縁部より前方に位置する部位が固定端26Aである。そのため弾性支持部材25は、一つの固定端26Aを有する片持ち梁(片持ち支持)を構成する。図3に示されるように、第1構成部26の固定端26Aより後方に位置する部位である突出部26Bは、ベース部材15より後方に位置する。
【0042】
図3に示されるように、ボイスコイル20の内周側空間に永久磁石61及びポールピース63が位置する。さらに弾性支持部材25が自由状態にあるとき、ヨーク56の円筒部58とボイスコイル20の外周面との間、及び、永久磁石61及びポールピース63とボイスコイル20の内周面との間には、それぞれ環状の隙間が形成される。
【0043】
さらにボイスコイル20を構成する電線の両端部は回路部16Aに接続され、回路部16Aに一対の電線66、67の一端がそれぞれ接続される。電線66、67の他端は、制御装置(図示省略)を介して電源(図示省略)に接続される。さらにベース部材15の本体板16が上記取付対象物に固定される。
【0044】
さらに図1図6に示されたように弾性支持部材25の第5構成部39の上面の後部にはマスダンパ(動吸振器)70が設けられている。マスダンパ70は、弾性材料からなる板バネである補助弾性支持部材71と、補助弾性支持部材71の後端部に固定された補助質量体72と、を備える。補助弾性支持部材71の前端部が第5構成部39の上面に固定されている。補助弾性支持部材71の前端部は可動体支持部39Aより後方に位置する。マスダンパ70は、弾性支持部材25とは別部材として製造される。マスダンパ70の固有振動数は、振動部材60の固有振動数と略同一である。
【0045】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0046】
本実施形態に係る振動アクチュエータ10では、上記電源の電力がボイスコイル20に通電されると、ボイスコイル20と可動体55との間に形成される磁気回路が発生する磁力によって、可動体55がボイスコイル20に対して軸線21に沿って往復運動しようとする。例えば上記電源が交流電源の場合は、交流電源からボイスコイル20へ所定の一方向に流れる電力が供給されたとき、磁気回路が発生する磁力によって、可動体55がボイスコイル20に対して下方へ移動するので、弾性支持部材25が図5に示された位置PDまで移動するように撓む。続いて、交流電源からボイスコイル20へ他方向に流れる電力が供給されたときに、磁気回路が発生する磁力によって、弾性支持部材25が図6で示された位置PUまで移動するように撓む。このような要領によって電源の電力がボイスコイル20へ供給されることにより、弾性支持部材25は位置PDと位置PUの間を往復移動する。
【0047】
このように弾性支持部材25が上下方向に撓むと、振動アクチュエータ10のベース部材15から上記取付対象物へ振動が伝わる。そのため、例えば上記取付対象物がタッチパネル(液晶パネル)の場合は、振動アクチュエータ10からタッチパネルに伝わった振動が、タッチパネルからタッチパネルに触れた使用者の手に伝わる。
【0048】
図7に二点鎖線で示されたグラフは、本実施形態の振動アクチュエータ10の振動周波数と可動体55のZ軸方向の加速度との関係を示す。本実施形態の振動アクチュエータ10の加速度の最大値はおおよそ7.8(m/s)であり、この最大値は振動周波数が約140(Hz)のときに発生する。
【0049】
図7に鎖線で示されたグラフは、本実施形態の比較例の振動アクチュエータの振動周波数と可動体55のZ軸方向の加速度との関係を示す。比較例の振動アクチュエータはマスダンパ70を具備しない点を除いて本実施形態の振動アクチュエータ10と同じ構造である。比較例の振動アクチュエータの加速度の最大値はおおよそ10.2(m/s)であり、この最大値は振動周波数が約140(Hz)のときに発生する。
【0050】
図7から明らかなように、弾性支持部材25にマスダンパ70を設けることにより、可動体55の加速度の最大値が発生するときの振動周波数をほぼ変えずに、可動体55の加速度の最大値を低下させることができる。
【0051】
マスダンパ70を構成する材料として様々な材料を利用可能である。例えば、温度変化に伴って特性が変化し難い材料を利用可能である。さらにマスダンパ70は弾性支持部材25とは別部材として製造されるので、補助弾性支持部材71と弾性支持部材25が一体成形される場合と比べて、マスダンパ70の設計の自由度が高い。そのため、弾性支持部材25の変形に伴って振動する可動体55の加速度の最大値を簡単に調整できる。
【0052】
さらにボイスコイル20より質量が大きい可動体55が弾性支持部材25と一緒に振動するので、ボイスコイル20が弾性支持部材25と一緒に振動する場合と比べて、振動アクチュエータ10が大きな振動を発生できる。
【0053】
以上、実施形態に係る振動アクチュエータ10について説明したが、振動アクチュエータ10は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0054】
例えば、図8に示された変形例のように、弾性支持部材25の第5構成部39の上面の前部にマスダンパ(動吸振器)75が設けられてもよい。マスダンパ75は、弾性材料からなる板バネである補助弾性支持部材76と、補助弾性支持部材76の後端部に固定された補助質量体77と、を備える。補助弾性支持部材76の後端部が第5構成部39の上面に固定されている。補助弾性支持部材76の後端部は可動体支持部39Aより前方に位置する。マスダンパ75の固有振動数は、振動部材60の固有振動数と略同一である。
【0055】
図7に実線で示されたグラフは、変形例の振動アクチュエータ10の振動周波数と可動体55のZ軸方向の加速度との関係を示す。変形例の振動アクチュエータ10の加速度のピーク値は2つである。即ち、可動体55(振動部材60)の振動周波数が所定の第1周波数帯に含まれる第1周波数F1(約113Hz)であるときに、可動体55のZ方向の加速度が第1周波数帯において最大の第1ピーク値P1(約4.25(m/s))となる。比較例の第1周波数帯は、140(m/s)未満の周波数帯である。さらに可動体55の振動周波数が第1周波数帯とは異なる第2周波数帯に含まれる第2周波数F2(約170Hz)であるときに、可動体55のZ方向の加速度が第2周波数帯において最大の第2ピーク値P2(約4.4(m/s))となる。比較例の第2周波数帯は、140(m/s)以上の周波数帯である。このように変形例の振動アクチュエータ10は、可動体55(振動部材60)のZ方向の加速度のピーク値を2つ有する。
【0056】
振動アクチュエータが、弾性支持部材25の代わりに、ベース部材15によって両持ち支持された弾性支持部材を備えてもよい。
【0057】
マスダンパ70が可動体55によって支持されてもよい。同様に、マスダンパ75が可動体55に設けられてもよい。
【0058】
弾性支持部材25又は可動体55とマスダンパ70が一体成形されてもよい。同様に、弾性支持部材25又は可動体55とマスダンパ75が一体成形されてもよい。
【0059】
ベース部材15に可動体55に相当する部材を設けて、弾性支持部材25にボイスコイル20を設けてもよい。
【0060】
左右方向に延びる補助弾性支持部材が弾性支持部材25又は可動体55に支持されてもよいし、上下方向に延びる補助弾性支持部材が弾性支持部材25又は可動体55に支持されてもよい。
【0061】
補助弾性支持部材は板バネ以外の弾性部材であってもよい。例えば、補助弾性支持部材は圧縮コイルバネであってもよい。
【0062】
ボイスコイル20の外周側に永久磁石61及びポールピース63が位置するように、振動アクチュエータを構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 振動アクチュエータ
20 ボイスコイル(コイル)
24 固定体
25 弾性支持部材
25C 弾性支持部材
39A 可動体支持部
45 可動体支持孔
55 可動体
61 永久磁石(磁石)
70 マスダンパ(動吸振器)
71 補助弾性支持部材
72 補助質量体
75 マスダンパ(動吸振器)
76 補助弾性支持部材
77 補助質量体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8