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特開2023-14339GDF11での処置は、体重増加を防止し、耐糖能を改善し、そして脂肪肝を低減する
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  • 特開-GDF11での処置は、体重増加を防止し、耐糖能を改善し、そして脂肪肝を低減する 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014339
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】GDF11での処置は、体重増加を防止し、耐糖能を改善し、そして脂肪肝を低減する
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230119BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230119BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230119BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230119BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230119BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K38/18
A61K47/60
A61K47/68
A61P1/16
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P43/00 111
C07K14/47 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022193543
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2021126586の分割
【原出願日】2017-01-06
(31)【優先権主張番号】62/275,645
(32)【優先日】2016-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】オルネラ バランドン
(72)【発明者】
【氏名】トマッソ ポッジョーリ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス エー. メルトン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ティー. リー
(57)【要約】
【課題】体重増加を防止し、耐糖能を改善し、そして脂肪肝を低減する、GDF11での処置の提供。
【解決手段】本明細書では、年齢、疾患、および肥満に関連した代謝疾患、例えば糖尿病および耐糖能異常を防止および/または改善するための手段が開示される。また、GDF11が高脂肪食を投与された老齢マウスの体重増加を防止し、耐糖能を改善し、脂肪肝を低減するという所見に関する組成物および方法も開示される。特に、本明細書に記載の方法および組成物は、対象のGDF11レベルを増大させることにより、対象の肥満の処置することまたはその発症を防止すること、肥満の代謝的帰結を低減すること、および対象の代謝的健康を改善することに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年1月6日に出願された米国仮出願番号第62/275,645号の利益を主張しており、その全体の教示は、参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
耐糖能異常(impaired glucose tolerance)および脂肪肝の増大は、マウスおよびヒトの両方において肥満および加齢に関連している。これらの不具合は、脂肪症およびインスリン抵抗性の増大に起因すると考えられている。年齢に関連したベータ細胞機能の低下もまた、相対的なインスリン不足に寄与することにより重要な役割を果たす。耐糖能異常および空腹時血糖異常(impaired fasting glucose)は、真性糖尿病(例えば、1型、2型、および妊娠糖尿病)の進行における中間段階をなし、代謝的健康の低下に寄与する。
【0003】
糖尿病などの1つまたは複数の代謝疾患を発症するリスクを低減するための組成物および方法が必要とされている。また、肥満および肥満に関する代謝的健康の関連機能障害を防止または処置する組成物および方法も必要とされている。また、対象の脂肪肝を防止または処置するための組成物および方法も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本明細書に開示される組成物および方法は、ある特定の年齢および/または肥満関連の代謝疾患、例えば耐糖能の機能障害、インスリン抵抗性、および脂肪肝を防止し、ある特定の実施形態では処置するために、増殖分化因子11(GDF11)が使用され得るという所見に関する。例えば、本明細書に開示される、対象の肥満を防止または低減するための方法および組成物は、代謝疾患または肥満に関連した併存症の発症の相応な低減をもたらす。また本明細書では、肥満および代謝的健康の関連機能障害を防止し、ある特定の事例では処置するための、新規の組成物および方法も開示される。ある特定の態様では、本明細書に開示される組成物および方法を使用して、対象の体重増加もしくは肥満を防止し、耐糖能を改善し、そして/または脂肪肝を防止することができる。
【0005】
本明細書に記載される研究は、概して、GDF11の投与が、高脂肪食を投与された動物の体重増加を防止するという所見に関する。ある特定の実施形態では、それを必要とする対象において、脂肪肝を低減および/または処置する方法が本明細書に開示され、かかる方法は、対象のGDF11ポリペプチドを増加させる組成物を対象に投与するステップであって、それによって対象の脂肪肝を低減または処置する。
【0006】
また、それを必要とする対象において、1つまたは複数の代謝疾患(例えば、糖尿病)を防止、阻害、および/または処置する方法が開示され、かかる方法は、対象のGDF11ポリペプチドを増加させる組成物を対象に投与するステップを含む。このような組成物(例えば、ヒトGDF11ポリペプチドまたはその機能的断片もしくは変異体を含む組成物)の対象への投与は、対象の体重増加および/または肥満を低減することにより、対象の1つまたは複数の代謝疾患を防止、阻害、かつ/または処置する。例えば、ある特定の態様では、本明細書に開示される組成物および方法を対象(例えば、代謝疾患の家族歴を有する対象)に施して、かかる対象の体重増加および/または肥満の発症を遅延または防止することにより、かかる対象が代謝疾患を発症するリスクを低減または軽減することができる。
【0007】
ある特定の態様では、それを必要とする対象において、糖不耐性(glucose intolerance)を処置または防止する方法が本明細書に開示され、かかる方法は、対象のGDF11ポリペプチドを増加させる組成物を対象に投与するステップを含み、それによって対象の糖不耐性を処置または防止する。
【0008】
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において、代謝疾患(例えば、II型糖尿病)を処置および/または防止する方法に関し、かかる方法は、対象のGDF11ポリペプチドを増加させる組成物を対象に投与するステップわ含み、それによって代謝疾患を処置および/または防止する。
【0009】
ある特定の態様では、本明細書に開示される方法は、対象のGDF11タンパク質またはポリペプチドを増加させる組成物を対象に投与するステップ(例えば、ヒトGDF11ポリペプチドまたはその機能的断片もしくは変異体を投与すること)を含む。例えば、一部の実施形態では、そのような組成物は、GDF11ポリペプチド(例えば、ヒト組換えGDF11)またはその機能的断片もしくは変異体(例えば、ヒトGDF11の天然に存在しない機能的変異体)を含む。一部の実施形態では、GDF11ポリペプチドまたはその機能的断片もしくは変異体は、組換えにより調製される。ある特定の態様では、組成物は、対象におけるGDF11の内因性発現および/または産生を刺激する。前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、組成物は、任意の好適な投与経路によって対象に投与してよい。例えば、ある特定の態様では、本明細書に開示される組成物(例えば、組換えにより調製されたヒトGDF11タンパク質を含む組成物)は、経腸、静脈内、皮下、筋肉内、およびくも膜下腔内からなる群から選択される投与経路を介して対象に投与される。ある特定の態様では、有効量の組成物が対象に投与される。例えば、ある特定の態様では、GDF11ポリペプチドは、約0.1mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約1.0mg/kg/日、約1.25mg/kg/日、約1.5mg/kg/日、約2.0mg/kg/日、またはそれよりも多くの用量(例えば1日用量)で対象に投与される。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、ヒトGDF11ポリペプチドまたはその機能的断片もしくは変異体(例えば、天然に存在しない機能的GDF11変異体)を含む。前述の実施形態のうちのいずれかのある特定の態様では、GDF11ポリペプチドは、組換えにより調製される。前述の実施形態のうちのいずれかのある特定の態様では、本明細書に開示される組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、毎日、毎週、隔週、毎月、隔月、年4回、年2回、半年毎、または毎年の投与のために製剤化されていてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、GDF11ポリペプチドは、1つまたは複数の所望の特徴をポリペプチドに与えるために(例えば、その治療活性を延長するために)修飾されていてもよい(例えば、PEG化、突然変異、またはFcへのカップリング)。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象における(例えば、対象の血清または組織中で測定した場合の)GDF11タンパク質またはポリペプチドの濃度の増加をもたらす。例えば、ある特定の態様では、GDF11タンパク質またはポリペプチドの濃度は、対象において、少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%またはそれよりも多く増加する。ある特定の態様では、GDF11タンパク質またはポリペプチドの濃度は、対象における健常なGDF11基準レベルの少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97.5%、少なくとも約99%、またはそれよりも多くまで増加する。
【0012】
本明細書に開示される組成物および方法は、1つまたは複数の代謝疾患の防止または処置のために有用である。例えば、かかる組成物および方法は、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、肥満、耐糖能異常、空腹時血糖異常、および脂肪肝からなる群から選択される、1つまたは複数の代謝疾患を処置するために使用され得る。前述の実施形態のうちのいずれかのある特定の態様では、代謝疾患は糖尿病である。前述の実施形態のうちのいずれかのある特定の態様では、代謝疾患は脂肪肝である。
【0013】
前述の実施形態のうちのいずれかの一部の態様では、対象は哺乳動物である。前述の実施形態のうちのいずれかの一部の態様では、対象はヒトである。ある特定の実施形態では、対象は成人(例えば、老齢の成人)である。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
それを必要とする対象において、脂肪肝を防止、阻害、または処置する方法であって、前記対象のGDF11ポリペプチドを増加させる組成物を前記対象に投与することを含み、それによって前記対象の前記脂肪肝を防止、阻害、または処置する、方法。
(項目2)
それを必要とする対象において、代謝疾患を防止、阻害、または処置する方法であって、前記対象のGDF11ポリペプチドを増加させる組成物を前記対象に投与することを含み、それによって前記代謝疾患を防止、阻害、または処置する、方法。
(項目3)
それを必要とする対象において糖不耐性を防止、阻害、または処置する方法であって、前記対象のGDF11ポリペプチドを増加させる組成物を前記対象に投与することを含み、前記対象の糖不耐性を防止、阻害、または処置する、方法。
(項目4)
それを必要とする対象において、体重増加を防止、阻害、または処置する方法であって、前記対象のGDF11ポリペプチドを増加させる組成物を前記対象に投与することを含み、前記対象の体重増加を防止、阻害、または処置する、方法。
(項目5)
前記組成物が、有効量のGDF11ポリペプチドまたはその機能的断片もしくは変異体を含む、項目1から4に記載の方法。
(項目6)
前記GDF11ポリペプチドまたはその機能的断片もしくは変異体が、組換えにより調製される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記組成物が、前記対象におけるGDF11の内因性産生を刺激する、項目1から4に記載の方法。
(項目8)
前記組成物が、経腸、静脈内、皮下、筋肉内、およびくも膜下腔内からなる群から選択される経路を介して投与される、項目1から4に記載の方法。
(項目9)
前記代謝疾患が、前記対象の体重増加を防止、阻害、または処置することによって防止、阻害、または処置される、項目4に記載の方法。
(項目10)
前記GDF11ポリペプチドが、前記対象において少なくとも約100%増加する、項目1から4に記載の方法。
(項目11)
前記GDF11ポリペプチドが、前記対象における健常な基準レベルの少なくとも75%まで増加する、項目1から4に記載の方法。
(項目12)
前記GDF11ポリペプチドがヒトGDF11ポリペプチドである、項目1から4に記載の方法。
(項目13)
前記GDF11ポリペプチドが約0.5mg/kg/日の用量で前記対象に投与される、項目1から4に記載の方法。
(項目14)
前記代謝疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、肥満、耐糖能異常、空腹時血糖異常、および脂肪肝からなる群から選択される、項目4に記載の方法。
(項目15)
前記代謝疾患が糖尿病である、項目4に記載の方法。
(項目16)
前記対象が哺乳動物である、項目1から4に記載の方法。
(項目17)
前記対象がヒトである、項目1から4に記載の方法。
(項目18)
前記対象が成人である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記GDF11ポリペプチドが、ヒトGDF11ポリペプチドまたはその機能的断片もしくは変異体を含む、項目17に記載の組成物。
(項目20)
前記GDF11ポリペプチドが組換えにより調製される、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記組成物が、薬学的に許容される担体をさらに含む、項目1から4に記載の方法。
(項目22)
前記組成物が、前記対象への毎週投与のために製剤化されている、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記組成物が、前記対象への毎月投与のために製剤化されている、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記組成物が、前記対象への年4回投与のために製剤化されている、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記GDF11ポリペプチドが修飾されている、項目1から4および22から24に記載の方法。
(項目26)
前記修飾が、突然変異、Fcへのカップリング、およびPEG化GDF11からなる群から選択される、項目25に記載の方法。
【0014】
以下の「発明の詳細な説明」を参照することにより、本発明の上述および多くの他の特徴ならびに付随する利点が、より良好に理解される。
【0015】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、要請および必要料金の支払いに応じて特許庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本明細書に記載の研究の結果を例証し、GDF11が高脂肪食を投与された高齢マウスの体重増加を防止することを裏付ける。
【0017】
図2図2A図2Cは、GDF11が様々な時点において高脂肪食を給餌された高齢マウスの耐糖能を改善することを実証する。図2Aは、リン酸緩衝化生理食塩水を受けるようにランダム化された老齢マウス(生理食塩水)と、GDF11を受けるようにランダム化された老齢マウスとで、0日目に行ったベースライン耐糖能試験(GTT)の結果を比較する。図2Bは、リン酸緩衝食塩水を受けるようにランダム化された老齢マウス(食塩水)と、GDF11を受けるようにランダム化された老齢マウスとで、7日目に行ったGTTの結果を例証する。図2Cは、リン酸緩衝食塩水を受けるようにランダム化された老齢マウス(食塩水)と、GDF11を受けるようにランダム化された老齢マウスとで、28日目に行ったGTTの結果を示す。
【0018】
図3図3A図3Bは、GDF11が高脂肪食を給餌された老齢マウスの脂肪肝を回復させることを示す図である。図3Aは、食塩水で処置した老齢マウスとGDF11で処置した老齢マウスとの両方の肝臓組織のH&E染色結果を示し、かかるGDF11処置マウスが、高脂肪食を給餌されたPBS処置動物と比較して低減した脂肪肝を有したことを実証する。図3Bは、GDF11が、食塩水処置マウスと比較してGDF11処置マウスの脂肪肝を低減したことを例証する。
【0019】
図4図4は、高脂肪食を与えられているGDF11処置動物が、対照動物(通常脂肪食または高脂肪食)と比較して脂肪肝の著しい低減を呈したことを示し、GDF11処置が、高脂肪食を与えられているマウスにおいても年齢に関連した脂肪肝を改善し得ることを証明する。
【0020】
図5図5は、ヒトGDF11前駆体ポリペプチドをコードするアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【0021】
図6図6は、ヒトGDF11プロペプチドをコードするアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【0022】
図7図7は、ヒト成熟GDF11ポリペプチドをコードするアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【0023】
図8図8は、ヒトGDF11のN末端ポリペプチドをコードするアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
肥満および加齢の両方が、例えば糖尿病、耐糖能異常、および空腹時血糖異常を含む、代謝疾患の発症に寄与することが公知である。そのような代謝疾患(例えば、真性糖尿病)の発症または進行は、対象の健康の全体的な低下に寄与する。本明細書では、GDF11が高脂肪食を投与された老齢マウスの体重増加を防止し、耐糖能を改善し、脂肪肝を低減するという所見に関する組成物および方法が開示される。特に、本明細書に記載の方法および組成物は、対象のGDF11ポリペプチドレベルを増大させることにより、対象の肥満を処置することまたはその発症を防止するとこと、肥満の代謝的帰結を低減すること、および対象の代謝的健康を改善することに関する。
【0025】
本明細書において使用される場合、「GDF11」という用語は、増殖因子のトランスフォーミング増殖因子-ベータスーパーファミリーのメンバーである「増殖分化因子11」(NCBI遺伝子番号10220)を指す。GDF11は、ALK4、ALK5、およびALK7を含むTGFβ3スーパーファミリーI型受容体に結合することが公知である。哺乳動物の発生におけるシグナル伝達のためには、GDF11は、主にALK4およびALK5を使用する。一部の実施形態では、GDF11シグナル伝達は、ACVR2B受容体を介して生じる場合もある。本明細書において使用される場合、「GDF11」は、GDF11のヒト前駆体ポリペプチド形態(配列番号1、図5に示す;NCBI Ref Seq:NP_005802)、ヒトプロペプチド形態(配列番号2、図6に示す)、ヒトN末端ポリペプチド形態(配列番号4、図8に示す)、およびヒト成熟形態(配列番号3、図7に示す)、ならびに、ウシ、イヌ、ネコ、ニワトリ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、シチメンチョウ、ウマ、魚、ヒヒ、および他の霊長類を含むがこれらに限定されない他の種由来のホモログを含み得る。これらの用語は、例えば、適切な動物モデル(例えば、高脂肪食を投与された老齢マウス)において測定した場合に、配列番号1、配列番号2、または配列番号3の完全長GDF11の効果(例えば、体重増加を防止するか、あるいは、代謝疾患を防止する、阻害する、もしくは処置するか、そうでなければその発生を低減する効果)の少なくとも50%を維持する、GDF11の断片または変異体(例えば、天然に存在しない変異体)も指す。
【0026】
ある特定の態様では、本明細書に開示されるGDF11タンパク質またはポリペプチドは、修飾されている(例えば、かかるGDF11タンパク質またはポリペプチドの治療活性を延長するために修飾されている)。ある特定の態様では、GDF11タンパク質またはポリペプチドは、それらがGDF11の天然に存在しない変異体(例えば、ヒトGDF11の機能的変異体)となるように修飾されている。野生型GDF11の効果を維持する保存的置換変異体は、本明細書に定義される保存的置換を含む。野生型GDF11の活性の少なくとも50%を維持しながら保存的置換に耐える可能性が最も高いアミノ酸の同定は、例えば、他の種由来のGDF11ホモログまたはパラログとの配列アライメントによって誘導される。GDF11ホモログ間で同一であるアミノ酸は変化に耐える可能性が低いが、保存的相違を示すものは、人工変異体という状況では保存的変化に耐える可能性が大幅に高い。同様に、非保存的相違のある位置は、人工変異体において機能するために重要である可能性が低く、保存的置換に耐える可能性がより高い。変異体は、例えば、適切な動物モデル(例えば、高脂肪食を投与されている老齢マウス)に変異体を投与することによって、活性に関して試験することができる。
【0027】
ヒトGDF11の場合、プロペプチドにシグナル配列(例えば、前駆体ポリペプチド)を足したものは407アミノ酸長さである。24アミノ酸のシグナルペプチドの切断は、383アミノ酸のプロペプチドを生成し、このプロペプチドの切断は、プロペプチドのC末端の109アミノ酸に対応する、109アミノ酸の成熟GDF11ポリペプチドをもたらす。成熟ポリペプチドは、ジスルフィド結合したホモ二量体を形成する。プロペプチドの切断は、配列番号1のアミノ酸25~298を含むN末端ポリペプチド(例えば、配列番号4)も生成する。N末端GDF11ポリペプチドは、他の形態のGDF11ポリペプチドと複合体を形成することにより、例えば、配列番号2および3のポリペプチドの活性を少なくともin vitroでアンタゴナイズすることができ、したがって、本明細書に記載されるGDF11組成物の活性を調節するために使用することができる。したがって、本明細書に記載のGDF11ポリペプチドが肥満の発症を防止する限り、また、例えば配列番号4のN末端GDF11ポリペプチドがそのような効果をアンタゴナイズすることができる限り、配列番号4のポリペプチドは、「GDF11ポリペプチド」という用語が本明細書において使用される際のその意味から除外され得る。
【0028】
本明細書において使用される場合、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、隣接した残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって他のアミノ酸残基に繋がっている一連のアミノ酸残基を示すために互換的に使用される。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、そのサイズまたは機能にかかわらず、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化型、糖化型、グリコシル化型など)およびアミノ酸アナログを含む、タンパク質アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」は比較的大きなポリペプチドに関して使用されることが多く、一方で「ペプチド」という用語は小さなポリペプチドに関して使用されることが多いが、当該技術分野におけるこれらの用語の用法は重複している。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、遺伝子産物およびその断片に言及するとき、本明細書では互換的に使用される。したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質としては、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オーソログ、パラログ、断片、および他の均等物、ならびに前述のものの天然に存在する、および天然に存在しない両方の変異体、断片、およびアナログが挙げられる。
【0029】
ある特定の態様では、GDF11は、修飾されている(例えば、その治療活性を延長するために修飾されている)場合がある。本明細書において使用される場合、「修飾」という用語は、概して、GDF11に所望の生理学的効果を奏するために、選択的な様式で1つまたは複数の特性を与えるように、またはGDF11の活性を変更するように、GDF11を変化させることを指す。ある特定の実施形態では、修飾は、1つまたは複数の二次的化合物または分子にGDF11をカップリングすること(例えば、融合タンパク質あるいは1つまたは複数のポリマーにGDF11またはその断片もしくは変異体をカップリングすること)を含むことに留意されたい。ある特定の実施形態では、GDF11は、突然変異を含むように修飾されていてもよい。ある特定の実施形態では、GDF11は、Fcへのカップリングによって修飾されていてもよい。さらに他の実施形態では、GDF11は、1つまたは複数のポリマー(例えばPEG)へのカップリングによって修飾されていてもよい。ある特定の実施形態では、修飾は、例えば、GDF11タンパク質をコードするアミノ酸を変更することによる、GDF11に対する1つまたは複数の化学修飾を含み得る。
【0030】
ある特定の態様では、GDF11は、GDF11をコードする配列に1つまたは複数の外因性核酸を導入するように修飾されている。したがって、修飾という用語は、GDF11をコードする配列に1つまたは複数の修飾された核酸を導入することを含むよう意図され、これには、例えば(a)末端修飾、例えば、5’末端修飾(リン酸化、脱リン酸化、コンジュゲーション、反転した結合(inverted linkages)など)、3’末端修飾(コンジュゲーション、DNAヌクレオチド、反転した結合など)、(b)塩基修飾、例えば、修飾塩基、安定化塩基、不安定化塩基、または幅広いレパートリーのパートナーと塩基対を形成する塩基、または共役塩基との置き換え、(c)糖修飾(例えば、2’位または4’位における)または糖の置き換え、ならびに(d)ホスホジエステル結合の修飾または置き換えを含むヌクレオシド間結合の修飾が含まれ得るが、これらに限定されないことを理解されたい。
【0031】
本明細書において使用される場合、GDF11に関して使用される「プロペプチド」という用語は、GDF11の成熟形態および/または活性形態の形成中にシグナルドメイン(例えば配列番号1のアミノ酸1~24)が切断されたGDF11ポリペプチドを指す。本明細書において使用される場合、「前駆体ペプチド」という用語は、シグナルドメインを含むGDF11ポリペプチド(例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド)に関して使用される。
【0032】
本明細書に開示される組成物および方法は、肥満、体重増加、脂肪肝、および/または1つもしくは複数の代謝疾患の防止、あるいはある特定の事例では処置のために有用である。本明細書において使用される場合、「代謝疾患」という用語は、概して、代謝の異常、代謝の不均衡、または最適でない代謝が起こる、対象に影響する障害を指し、例えば、耐糖能異常、インスリン抵抗性、真性糖尿病、および/または脂肪肝を含む。ある特定の実施形態では、代謝疾患は、ある状態に関するか、またはその結果として発症する。例えば、肥満は、糖尿病の発症または進行に寄与し得るため、肥満の対象は、代謝疾患の発症リスクが高いことになる。
【0033】
ある特定の態様では、本明細書に開示される組成物および方法は、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠糖尿病、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、肥満、耐糖能異常、空腹時血糖異常、および脂肪肝からなる群から選択される、1つまたは複数の代謝疾患を処置するために使用され得る。ある特定の態様では、代謝疾患は糖尿病である。ある特定の態様では、代謝疾患は脂肪肝である。
【0034】
一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物および方法は、対象が代謝疾患を発症するリスクを低減、もしくはそうでなければ軽減するために有用であり、または、ある特定の事例では、肥満に関連した代謝的帰結を遅延する、もしくは防止するために有用である。例えば、かかる組成物および方法を、代謝疾患を発症するリスクがある対象(例えば、糖尿病の家族歴を有する対象)に施すことにより、かかる対象が代謝疾患を発症するリスクを低減または軽減することができる。同様に、ある特定の態様では、かかる組成物および方法を対象(例えば、代謝疾患の家族歴を有する対象)に施して、かかる対象における肥満の発症を遅延または防止することにより、かかる対象が代謝疾患を発症するリスクを低減または軽減することができる。一部の実施形態では、代謝疾患を発症する対象のリスクは、約少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも33%、少なくとも35%、少なくとも41%、少なくとも44%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または少なくとも100%まで低減または逆転する。
【0035】
本発明は、1つもしくは複数の代謝疾患のリスクを低減すること、防止すること、阻害すること、または軽減することに限定されないことが理解されるべきである。むしろ、本明細書に開示される組成物および方法を使用して1つまたは複数の代謝疾患を処置する方法も企図される。例えば、対象の肥満を処置するために(例えば、対象の体重を低減させるために)本明細書に開示される組成物を有効量で肥満の対象に投与することにより、対象がそれらの代謝疾患のさらなる悪化を経験するリスクを低減することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、1つまたは複数の非薬理学的な介入と合わせられる。例えば、本明細書に開示される組成物は、1つまたは複数の生活様式の改変(lifestyle modification)(例えば、食事、運動、および/または禁煙療法)との組合せで投与されてもよい。
【0036】
本明細書において使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯類、飼育動物、または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが挙げられる。飼育動物および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、水牛、feline species、例えばイエネコ、canine species、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、avian species、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚、例えばマス、ナマズ、およびサケが挙げられる。対象は、前述のものの任意の部分集合、例えば、上記の全てから、ヒト、霊長類、またはげっ歯類など、1つまたは複数の群もしくは種を除外したものを含んでもよい。ある特定の実施形態では、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、ヒトではない霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。例えば、ヒト以外の哺乳動物を、例えば肥満および/または代謝疾患の動物モデルとなる対象として、有利に使用することができる。加えて、本明細書に記載の方法は、家畜および/またはペットを処置するために使用してもよい。対象は、雄であっても雌であってもよい。対象は、本明細書に記載の状態、疾患、もしくは障害と以前に診断されたことがあるか、またはそれを患っているもしくは有しているものと特定され、そのような状態に関する1つまたは複数の合併症の処置を必要としており、必ずしもその必要はないが、任意選択で、ある状態またはその状態に関する1つまたは複数の合併症の処置を既に受けたことがあるものであり得る。あるいは、対象は、処置を必要とする状態、またはかかる状態に関する1つもしくは複数の合併症を有するものと以前に診断されたことがないものであってもよい。むしろ、対象は、ある状態またはある状態に関する1つもしくは複数の合併症の、1つまたは複数の危険因子を呈するものを含み得る。
【0037】
特定の状態の処置を「必要とする対象」は、その状態を有する対象、その状態を有するものと診断された対象、または所与の参照集団と比べてその状態を発症するリスクが増加した対象であり得る。例えば、ある特定の実施形態では、必要とする対象は、1つまたは複数の代謝疾患(例えば糖尿病)の発症の家族歴または素因を有している場合があり、したがって、本明細書に開示される方法および組成物による処置を受ける候補とみなされる。同様に、ある特定の実施形態では、必要とする対象は、肥満であることにより1つまたは複数の代謝疾患を発症する素因がある場合があり、したがってこれもまた、本明細書に開示される方法および組成物による処置を受ける候補とみなされる。
【0038】
ある特定の態様では、本明細書に開示される方法は、対象のGDF11ポリペプチドのレベルまたは濃度を増加させる組成物を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象は、代謝疾患もしくは状態を有するものか、または代謝疾患もしくは状態を有するかもしくは発症するリスクが増加していると診断されているものである。ある特定の態様では、対象は、代謝疾患または老化、高齢、肥満に起因する状態、および/または他の併存症を発症するリスクが増加している。本明細書において使用される場合、「老化に起因する」状態、疾患、または障害は、対象の年齢に少なくとも部分的に起因し得る1つのかかる状態、疾患、または障害を指す。一部の実施形態では、対象は、成人の対象である。一部の実施形態では、対象は、高年齢の対象である。一部の実施形態では、高年齢の対象は、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、または100歳を超える。
【0039】
一部の実施形態では、GDF11ポリペプチドのレベルは、対象の循環中のGDF11のレベルを測定することによって決定される。一部の実施形態では、GDF11ポリペプチドのレベルは、対象の血清または組織中で測定または検出されるGDF11のレベルである。一部の実施形態では、GDF11ポリペプチドのレベルは、GDF11ポリペプチドをコードするmRNAのレベルを測定することによって決定される。対象のGDF11レベルは、対象から生体試料を得て、生体試料中のGDF11のレベルを決定することによって決定されてもよい。対象または対象から得られた試料中のポリペプチドレベルを決定するための方法は、当該技術分野において周知であり、とりわけ、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学的検査、GDF11に特異的な標識された抗体を用いる方法、ドットブロット分析、機能的バイオアッセイ、ノーザンブロット、in-situハイブリダイゼーション、およびRT-PCR、アプタマーベースのプロテオミクス技術(例えば、SomaLogic,Inc.から市販されているSOMAscan(商標))が挙げられるが、これらに限定されない。GDF11に特異的な抗体は、例えば、Abeam:Cambridge、MAからカタログ番号ab71347で市販されている。一部の実施形態では、抗体は、選択的GDF11モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、GDF11のレベルは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Souzaら、Molecular Endocrinology 2008年22巻:2689~2702頁に記載のように測定することができる。
【0040】
一部の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、ヒトGDF11ポリペプチドまたはその機能的断片もしくは変異体を含む。ある特定の態様では、本明細書に開示される組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。本発明の方法および組成物、ならびに薬学的に許容される担体および賦形剤の選択は、例えば、参照により全内容が本明細書に組み込まれる、L. William、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Pharmaceutical Press(2012年)に詳細に記載されている。ある特定の態様では、本明細書に開示される組成物は、毎日、毎月、年4回、または毎年基準の投与のために製剤化される。例えば、本明細書に開示されるGDF11組成物は、かかる組成物の活性を延長するために、PEG化されているか、または突然変異しているか、またはFcにカップリングされていてもよい。
【0041】
本開示の諸態様は、有効量のGDF11を用いることを含む。GDF11(またはGDF11を含有する組成物)の「有効量」または「有効用量」は、概して、例えば、細胞にin vitroで接触したとき、または選択された投与形態、経路、および/もしくはスケジュールに従って対象に投与されたとき、所望の生物学的および/または薬理学的効果を達成するのに十分な量を指す。当業者には理解されるように、有効であるGDF11の絶対量は、所望の生物学的または薬理学的なエンドポイント、送達される薬剤、標的組織などの要因に応じて異なり得る。当業者はさらに、様々な実施形態において、「有効量」を細胞と接触させても、または単回用量で、もしくは複数回の用量の使用によって投与してもよいことを理解し得る。本明細書に開示されるGDF11組成物が、所望の生物学的および/または治療効果を達成するのに有効な量で用いられてもよいことは理解され得る。一部の実施形態では、「有効量」は、例えば、対象が体重増加するかまたは1つもしくは複数の代謝疾患を患うリスクを低減する、本明細書に記載の薬剤または組成物の量を指す。一部の実施形態では、「有効量」は、高脂肪食の投与に応じた体重増加を防止する、GDF11または本明細書に記載の組成物の量を指す。当業者であれば、過度の実験を行うことなく日常的な方法を使用して、本明細書に記載の薬剤または組成物がその有効な目的を達成する有効量を容易に決定し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物の有効量は、限定された期間(例えば、数日間、数週間、または数か月間)にわたって対象に投与されてもよいことが理解されるべきである。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬剤および組成物は、例えば、生活様式の改変(例えば、運動プログラム)と併せて対象に投与されてもよい。
【0042】
本明細書に開示される発明は、その適用において、説明に記載されているかまたは例示されている詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態を包含し、様々な方法で実践または実行することができる。また、本明細書で用いられる表現および専門用語は説明を目的とするものであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0043】
ある特定の本発明の組成物、方法、およびアッセイが、ある特定の実施形態に従って具体的に説明されているが、以下の実施例は、本発明の方法および組成物を例証する役割を果たすにすぎず、それを限定することを意図するものではない。
【0044】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、逆のことが明確に示されていない限り、複数の参照対象を含むものと理解されるべきである。ある群の1つまたは複数のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、逆のことが示されている場合またはそうでなければ文脈から明らかである場合を除き、その群のメンバーのうちの1つ、2つ以上、もしくは全てが所与の生成物もしくはプロセスに存在するか、用いられているか、またはそうでなければ関連している場合に成立するとみなされる。本発明は、群のうち厳密に1つのメンバーが所与の生成物もしくはプロセスに存在するか、用いられているか、またはそうでなければ関連している実施形態を含む。本発明はまた、2つ以上のメンバーまたは群のメンバー全体が所与の生成物もしくはプロセスに存在するか、用いられているか、またはそうでなければ関連している実施形態を含む。さらに、別段の記載がある場合または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかである場合を除き、列挙された請求項のうちの1つまたは複数から、1つまたは複数の制限、要素、条項、記述用語などが、同じ基本請求項(または、関連性のある場合は任意の他の請求項)に従属する別の請求項に導入されている、全ての変化形、組合せ、および置換形態が本発明に包含されることを理解されたい。要素がリストとして(例えば、マーカッシュ群または同様の形式に)提示されている場合、要素の各部分群も開示され、任意の要素がその群から除かれてよいことを理解されたい。概して、本発明または本発明の諸態様が特定の要素、特徴などを含むものといわれる場合、ある特定の本発明の実施形態または本発明の諸態様は、そのような要素、特徴などからなるか、またはそれらから本質的になることが理解されるべきである。簡素化を目的として、これらの実施形態は、全ての場合においてはっきりと具体的に本明細書に記載されているとは限らない。また、本発明のいずれの実施形態または態様も、具体的な除外が本明細書に記述されているかどうかにかかわらず、請求項から明示的に除外されてもよいことが理解されるべきである。本発明の背景を説明し、その実践に関するさらなる詳細を提供するために本明細書において参照されている公開文献および他の参考資料は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例0045】
(実施例1)
高脂肪食を給餌されたマウスは、肥満、糖不耐性、かつインスリン抵抗性になる。本研究者らは、GDF11での処置が高脂肪食を給餌された老齢マウスの体重増加を防止し、耐糖能を改善し、脂肪肝を低減するかどうかを判定するために次の研究を行った。
【0046】
固形飼料を給餌された老齢(23月齢)のマウスを秤量し、腹腔内耐糖能試験(GTT)に供して、それらのベースライン体重および耐糖能を評価した。その後、マウスに高脂肪食(HFD)を給餌し、1週間および1か月にわたってPBSまたはGDF11のいずれかでランダムに処置した。処置後、これらの動物を再度秤量し、GTTに供した。図1に例証されているように、高脂肪食を給餌された老齢動物をGDF11で処置すると、PBS処置動物では観察された体重増加が防止された。
【0047】
高脂肪食を給餌されPBSで処置された対照マウスと比較すると、GDF11で処置された老齢マウスは、図2A図2Cに示されるように、著しく改善した耐糖能を実証した。1か月の処置後、動物を屠殺し、それらの肝臓を採取し、組織学的分析のために処理した。顕微鏡による組織学的分析を行って、全体の脂肪肝(gross hepatosteatosis)を判定した。図3A図3Bに示されているように、GDF11で処置された老齢動物は、高脂肪食を給餌されたPBS処置動物と比較して著しく低減した脂肪肝を有することが見出された。
【0048】
GDF11処置が既存の年齢に関連した状態を改善し得るかどうかを判定するために、本発明者らは次に、通常脂肪食(NFD)を与えられていた対照老齢マウスから切断した肝臓の組織学的分析を行い、HFDを与えられ食塩水およびGDF11で処置された老齢動物の肝臓の組織学的分析とこれを比較した。本発明者らは、NFDを与えられていた老齢マウスが、HFDを与えられていた老齢マウスと比較して同様の脂肪肝を呈したことを見出した。図4に例証されているように、HFDを与えられていたGDF11処置動物が、対照動物(NFDまたはHFD)と比較して著しく低減した脂肪肝を呈したことも決定され、GDF11処置が、HFDを与えられていたマウスにおいても年齢に関連した脂肪肝を改善し得ることを証明した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【外国語明細書】