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特開2023-143393乾電池用のガスケット部材、及び乾電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143393
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】乾電池用のガスケット部材、及び乾電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/152 20210101AFI20230928BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20230928BHJP
   H01M 50/179 20210101ALI20230928BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20230928BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20230928BHJP
   H01M 50/40 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
H01M50/152
H01M50/107
H01M50/179
H01M50/533
H01M50/184 D
H01M50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050731
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
(72)【発明者】
【氏名】板垣 翔平
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011AA03
5H011FF02
5H011FF03
5H011KK01
5H021AA04
5H043AA02
5H043BA04
5H043CA03
5H043CA15
5H043CB09
5H043EA23
5H043JA14E
(57)【要約】
【課題】電気容量を増やすと共に、外部からの衝撃に対する乾電池の耐久性を高める。
【解決手段】乾電池用のガスケット部材は、電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の中央部と、電池缶の開口に支持される筒状の外周部と、中央部の外周と外周部の内周との間に形成された環状の中間部と、を備える。電池缶の内部に設けられた筒状のセパレータ部材の開口に対向する、中間部の対向面には、集電棒の軸方向に直交する平面に対する傾斜角が異なる複数の環状のテーパ面が、中間部の径方向において同心円状に連続して形成されると共に、集電棒の軸方向に突出する環状のリブが対向面の外周側に形成される。複数のテーパ面は、中間部の外周側から内周側に向かって傾斜角が小さくなる順に形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池缶の開口を封止する、乾電池用のガスケット部材であって、
前記電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の中央部と、
前記電池缶の前記開口に支持される筒状の外周部と、
前記中央部の外周と前記外周部の内周との間に形成された環状の中間部と、を備え、
前記電池缶の内部に設けられた筒状のセパレータ部材の開口に対向する、前記中間部の対向面には、前記集電棒の軸方向に直交する平面に対する傾斜角が異なる複数の環状のテーパ面が、前記中間部の径方向において同心円状に連続して形成されると共に、前記集電棒の軸方向に突出する環状のリブが前記対向面の外周側に形成され、
複数の前記テーパ面は、前記中間部の外周側から内周側に向かって前記傾斜角が小さくなる順に形成されている、乾電池用のガスケット部材。
【請求項2】
前記複数の前記テーパ面のうち、前記リブに隣り合うテーパ面は、前記リブの内周面に形成されている、
請求項1に記載の乾電池用のガスケット部材。
【請求項3】
複数の前記テーパ面は、前記中央部の外周面に連結されたテーパ面を含む、
請求項1または2に記載の乾電池用のガスケット部材。
【請求項4】
前記リブは、前記集電棒の軸方向において、前記外周部と前記中間部との連結位置よりも前記外周部から離れた位置に形成されている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の乾電池用のガスケット部材。
【請求項5】
前記リブは、前記軸方向に交差する端面を有し、
前記中間部は、前記中央部の外周面に連結された前記対向面の内周縁と、前記リブの前記端面の内周縁との間の、前記軸方向における距離が、1.0[mm]以上、2.0[mm]以下である、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の乾電池用のガスケット部材。
【請求項6】
前記電池缶と、
前記集電棒と、
前記セパレータ部材と、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の乾電池用のガスケット部材と、
を備える、乾電池。
【請求項7】
前記セパレータ部材の開口端部は、複数の前記テーパ面に沿って断面円弧状に曲げられている、
請求項6に記載の乾電池。
【請求項8】
前記セパレータ部材の開口縁は、前記中央部の外周面近傍に位置する、
請求項6または7に記載の乾電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾電池用のガスケット部材、及び乾電池に関する。
【背景技術】
【0002】
乾電池として、集電棒を支持すると共に電池缶の開口を封止するガスケット部材を備えるアルカリ電池が知られている。この種のガスケット部材は、集電棒を支持する中央部と、電池缶の開口に支持される外周部と、中央部と外周部との間に形成された環状の中間部と、を備える。ガスケット部材の中間部は、筒状のセパレータ部材の開口に対向する対向面を有しており、ガスケット部材が電池缶に組付けられたときに、対向面がセパレータ部材の開口を塞ぐことで、セパレータ部材の内側に設けられる負極ゲルと、セパレータ部材の外側に設けられる正極剤とを分離している。
【0003】
このようなガスケット部材の中間部の対向面には、集電棒の軸方向に直交する平面に対して傾斜する1つのテーパ面が形成されており、乾電池の製造工程において中間部がセパレータ部材の開口を塞ぐときに、テーパ面によってセパレータ部材の開口端部がガスケット部材の内側に折り曲げられ、セパレータ部材の開口端部と対向面とが接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-119828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したガスケット部材の中間部のテーパ面がセパレータ部材の開口端部を折り曲げるときに、セパレータ部材の開口端部が急激に変形することで、セパレータ部材の外周側に突出するフランジ状に押し潰され、集電棒の軸方向に対するセパレータ部材の開口端部の高さが低くなる場合や、開口端部の周方向における円形に歪みが生じる場合がある。このようにセパレータ部材の開口端部が押し潰される現象を踏まえて、セパレータ部材の開口他部の高さが低くなった場合でもセパレータ部材の内側に充填された負極材がセパレータ部材の開口から溢れないように、開口端部の高さに余裕を確保して充填することになる。このため、上述の現象を考慮することで負極材の充填量が減り、乾電池の電気容量が低下する問題がある。
【0006】
また、ガスケット部材の中間部によってセパレータ部材の開口端部が押し潰されることで、セパレータ部材の開口端部とガスケット部材の対向面との間に隙間が生じて、セパレータ部材の開口がガスケット部材によって適切に塞がれない場合がある。また、乾電池を誤って落下させたときの衝撃でも、ガスケット部材の中間部によってセパレータ部材の開口端部が押し潰されるおそれがあり、負極材がセパレータ部材とガスケット部材との間に生じた隙間を通って、セパレータ部材の内側から外側へ漏れ出るおそれがあり、負極材と正極材との接触に伴う電圧低下等を招く問題がある。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、電気容量を増やすと共に、外部からの衝撃に対する乾電池の耐久性を高めることができる乾電池用のガスケット部材、及び乾電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する乾電池用のガスケット部材の一態様は、電池缶の開口を封止する、乾電池用のガスケット部材であって、前記電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の中央部と、前記電池缶の前記開口に支持される筒状の外周部と、前記中央部の外周と前記外周部の内周との間に形成された環状の中間部と、を備え、前記電池缶の内部に設けられた筒状のセパレータ部材の開口に対向する、前記中間部の対向面には、前記集電棒の軸方向に直交する平面に対する傾斜角が異なる複数の環状のテーパ面が、前記中間部の径方向において同心円状に連続して形成されると共に、前記集電棒の軸方向に突出する環状のリブが前記対向面の外周側に形成され、複数の前記テーパ面は、前記中間部の外周側から内周側に向かって傾斜角が小さくなる順に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する乾電池用のガスケット部材の一態様によれば、電気容量を増やすと共に、外部からの衝撃に対する乾電池の耐久性を高めることができる、
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例のアルカリ電池を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例のアルカリ電池の要部を拡大して示す縦断面図である。
図3図3は、実施例におけるガスケット部材を負極端子側から示す平面図である。
図4図4は、実施例におけるガスケット部材をセパレータ部材側から示す平面図である。
図5図5は、実施例におけるガスケット部材の要部を拡大して示す縦断面図である。
図6図6は、実施例におけるガスケット部材の一例を示す縦断面図である。
図7図7は、実施例におけるガスケット部材の他の例を示す縦断面図である。
図8図8は、従来例におけるガスケット部材を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する乾電池用のガスケット部材、及び乾電池の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する乾電池用のガスケット部材、及び乾電池が限定されるものではない。
【実施例0012】
(アルカリ電池の構成)
図1は、実施例のアルカリ電池を示す断面図である。図1に示すように、実施例のアルカリ電池1は、水溶液系一次電池、いわゆる乾電池である。アルカリ電池1は、開口3aを有する円筒状の電池缶3と、集電棒4と、正極材5及び負極材6と、正極材5と負極材6とを仕切るセパレータ部材7と、電池缶3の開口3aを封止するガスケット部材8と、を備える。また、アルカリ電池1は、電極端子として、電池缶3の一端に形成された正極端子11と、電池缶3の他端に配置された負極端子12と、を備える。
【0013】
電池缶3の一端には、正極端子11が一体に形成されている。電池缶3の他端には、電池缶3の外周に沿ってビーディング加工されたくびれ部3bが形成されている。電池缶3のくびれ部3bには、開口3aを塞ぐように負極端子12及びガスケット部材8が設けられている。集電棒4は、電池缶3の内部の中央に配置されている。集電棒4は、基端部がガスケット部材8に支持されており、先端部が正極端子11側に向かって延びている。
【0014】
負極材6は、電池缶3の内部における集電棒4の周囲に設けられており、例えば、亜鉛を主成分とするゲル状の負極合剤が用いられる。正極材5は、電池缶3の内部に充填された負極材6の外周側に、セパレータ部材7を挟んで設けられている。正極材5としては、例えば、リング状の正極合剤が用いられており、集電棒4の軸方向に沿って複数のリング状の正極合剤が積層されて配置されている。セパレータ部材7は、例えば、不織布等によって、開口7aを有する有底円筒状に形成されており、集電棒4の軸方向に沿って配置されている。セパレータ部材7は、正極端子11に対向する底面部を有する。
【0015】
(ガスケット部材の構成)
図2は、実施例のアルカリ電池1の要部を拡大して示す縦断面図である。図3は、実施例におけるガスケット部材8を負極端子12側から示す平面図である。図4は、実施例におけるガスケット部材8をセパレータ部材7側から示す平面図である。
【0016】
図2図3及び図4に示すように、アルカリ電池1のガスケット部材8は、集電棒4の一端部を支持する円筒状の中央部15と、中央部15の外周に沿って形成された環状の安全弁16と、電池缶3の開口3aに支持される環状の外周部17と、を有する。また、ガスケット部材8は、安全弁16と外周部17との間に形成された環状の中間部18と、を有する。
【0017】
本実施例におけるガスケット部材8の安全弁16は、電池缶3の内部ガスによって破断される肉薄部分を指す。なお、本実施例では、外周部17に対して中間部18を弾性変形可能に支持する緩衝部(図示せず)を有していないが、外周部17と中間部18との間に緩衝部が形成されてもよい。緩衝部は、例えば、集電棒4の軸方向において外周部17から延びると共に断面U字状に折り返して中間部18に連結される。
【0018】
中央部15は、集電棒4が通される支持穴15aを有しており、図2に示すように、集電棒4が負極端子12に接するように支持穴15aに支持されている。外周部17は、電池缶3のくびれ部3b近傍と負極端子12の外周部との間に挟み込まれることで、ガスケット部材8が電池缶3に支持されている。
【0019】
中間部18は、図2に示すように、セパレータ部材7の開口7aに対向する対向面18aを有しており、対向面18aがセパレータ部材7の開口端部7bに突き当てられてセパレータ部材7の開口7aを塞いでおり、セパレータ部材7における負極材6が収容された内側空間が、ガスケット部材8によって塞がれている。
【0020】
(ガスケット部材の要部)
図5は、実施例におけるガスケット部材8の要部を拡大して示す縦断面図である。図2及び図5に示すように、ガスケット部材8の中間部18の対向面18aには、集電棒4の軸方向に直交する平面Fに対する傾斜角が異なる複数の環状のテーパ面20が、中間部18の径方向において同心円状に連続して形成されている。また、中間部18の対向面18aには、集電棒4の軸方向に突出する環状のリブ21が対向面18aの外周側に形成されている。
【0021】
複数のテーパ面20は、集電棒4の軸方向に直交する平面Fに対する傾斜角が中間部18の外周側から内周側に向かって小さくなる順に形成されている。図5に示す実施例では、中間部18の対向面18aに、中間部18の外周側から内周側に向かう順に、第1テーパ面20Aから第4テーパ面20Dがそれぞれ形成されている。ここでは、複数のテーパ面20を有する対向面18aの一例として、4つのテーパ面20を有する構造を示すが、少なくとも2つのテーパ面20を有することで、本実施例と同様の効果が得られる。
【0022】
図2に示すように、セパレータ部材7の開口7aがガスケット部材8の中間部18によって塞がれたとき、セパレータ部材7の開口端部7bは、中間部18の複数のテーパ面20に沿って断面円弧状に曲げられる。これにより、集電棒4の軸方向に対する開口端部7bの高さが確保される。また、セパレータ部材7の開口縁は、ガスケット部材8の中央部15の外周面15b近傍に位置している。これにより、セパレータ部材7の開口7aの内径が小さくされ、開口端部7bと複数のテーパ面20との接触面積が増えるので、開口7aや、開口端部7bと複数のテーパ面20との間から負極材6が漏れ出ることが抑制される。
【0023】
複数のテーパ面20のうち、リブ21に隣り合う第1テーパ面20Aは、リブ21の内周面に形成されている。言い換えると、中間部18の対向面18aの外周縁部が、リブ21の内周面によって形成されている。このため、セパレータ部材7は、複数のテーパ面20に沿って変形する開口端部7bが、第1テーパ面20Aの外周側に形成された環状のリブ21によって中間部18の外周側へ膨らむ変形が抑制されるので、開口端部7bがフランジ状に押し潰されることを防げる。
【0024】
複数のテーパ面20は、中央部15の外周面15bに連結された第4テーパ面20Dを含む。つまり、中間部18の内周側の第4テーパ面20Dは、中央部15の外周面15bに連結されている。言い換えると、中間部18の内周側に位置する第4テーパ面20Dは、安全弁16に跨って形成されている。これにより、セパレータ部材7の開口縁を、中央部15近傍までスムーズに到達させることが可能になり、開口7aの内径を小さくし、対向面18aと開口端部7bとの接触領域を増やすことで、セパレータ部材7の内側の負極材6がセパレータ部材7の外側へ漏れ出ることを防げる。なお、実施例は、中間部18の内周側の第4テーパ面20Dが、中央部15の外周面15bまで延びる構造に限定されず、第4テーパ面20Dの内周側に、集電棒4の軸方向に直交する平面Fに沿う平坦面(図示せず)が、安全弁16に対応する位置に形成されてもよい。
【0025】
中間部18のリブ21は、集電棒4の軸方向に交差する端面21aを有しており、セパレータ部材7の外周側に位置するように形成されている。リブ21は、集電棒4の軸方向において、外周部17と中間部18との連結位置よりも外周部17から離れた位置に形成されている。つまり、外周部17と中間部18との連結位置よりも、セパレータ部材7の開口7a側に突出している。ここで、上述した連結位置は、集電棒4の軸方向において、外周部17と中間部18との連結部分の、セパレータ部材7の開口7a側の端面の位置を指す。また、リブ21は、例えば、端面21aが集電棒4の軸方向に直交する形状に限定されず、集電棒4の軸方向に直交する平面Fに対して傾斜されてもよい。
【0026】
また、中間部18は、図5に示すように、中央部15の外周面15bに連結された対向面18aの内周縁(例えば、第4テーパ面20Dの内周縁)と、リブ21の端面21aの内周縁との間の、集電棒4の軸方向における距離H(以下、複数のテーパ面20全体の距離Hとも称する。)が、1.0[mm]以上、2.0[mm]以下であり、例えば、1.5[mm]に形成されている。また、セパレータ部材7の外径は、例えば、9.0[mm]程度に形成されている。距離Hが上述の数値範囲の場合に、セパレータ部材7の開口端部7bを断面円弧状にスムーズに変形させることができる。この数値範囲の臨界的意義については、後述する表1を参照して説明する。
【0027】
アルカリ電池1の製造工程において、図5に示すように、ガスケット部材8は、セパレータ部材7の開口7aに向かって押し下げられ、中間部18の対向面18aによってセパレータ部材7の開口端部7bを複数のテーパ面20に沿って断面円弧状、かつ開口端部7bの周方向にわたって適正な円形状にスムーズに変形させる。セパレータ部材7の開口端部7bが変形される際、複数のテーパ面20が、集電棒4の軸方向に直交する平面Fに対する傾斜角が段階的に小さくなっている。言い換えると、複数のテーパ面20は、集電棒4の軸方向に対する傾斜角が段階的に大きくなっている。このため、セパレータ部材7の開口端部7bは、第1テーパ面20Aから第4テーパ面20Dまで段階的に折り曲げられることにより、開口端部7bを変形させる力が適切に分散されて、複数のテーパ面20に沿ってスムーズに変形する。その結果、セパレータ部材7の開口端部7bは、集電棒4の軸方向に対する高さが確保された適正な断面円弧状、かつ周方向にわたって適正な円形状に折り曲げられる。したがって、中間部18の対向面18aによってセパレータ部材7の開口端部7bがフランジ状に押し潰されることや、開口端部7bの周方向に歪みが生じることを防ぐことができる。
【0028】
(各実施例と従来例、比較例との比較)
図6は、実施例におけるガスケット部材8の一例を示す縦断面図である。図7は、実施例におけるガスケット部材8の他の例を示す縦断面図である。図8は、従来例におけるガスケット部材108を示す縦断面図である。図6~8において、上述した実施例のガスケット部材8と同一部分には上述と同一符号を付けて各部分の説明を省略する。ここでは、テーパ面20の個数(1つ~4つ)、リブ21有無、複数のテーパ面20全体の距離Hによるセパレータ部材7の開口端部7bの変形状態を比較する。
【0029】
【表1】
【0030】
(2つのテーパ面を有する形状)
図6に示すように、実施例1におけるガスケット部材8の中間部18の対向面18aには、第1テーパ面20A及び第2テーパ面20Bである2つのテーパ面20が形成されており、対向面18aの外周側にリブ21が形成されている。実施例1において、中間部18の対向面18aの内周側には、集電棒4の軸方向に直交する平坦面22が形成されるが、平坦面22の代わりに、第2テーパ面20Bが中央部15の外周面15bまで延ばされてもよい。
【0031】
(3つのテーパ面を有する形状)
図7に示すように、実施例2におけるガスケット部材8の中間部18の対向面18aには、第1テーパ面20A、第2テーパ面20B及び第3テーパ面20Cである3つのテーパ面20が形成されており、対向面18aの外周側にリブ21が形成されている。実施例2において、中間部18の対向面18aの内周側には、集電棒4の軸方向に直交する平坦面22が形成されるが、平坦面22の代わりに、第3テーパ面20Cが中央部15の外周面15bまで延ばされてもよい。
【0032】
(1つのテーパ面を有する形状)
図8に示すように、従来例におけるガスケット部材108の中間部18の対向面18aには、第1テーパ面20Aである1つのテーパ面20のみが形成されており、対向面18aの外周側に、実施例1、2のようなリブ21が形成されていない。
【0033】
実施例3におけるガスケット部材8の中間部18の対向面18aには、図5に示すように、4つのテーパ面20が形成されており、対向面18aの外周側にリブ21が形成されている。実施例4~実施例9、比較例1は、図7に示す実施例2と同様に3つのテーパ面20が形成されており、対向面18aの外周側にリブ21が形成されている。実施例4~実施例9、比較例1は、テーパ面20全体の距離Hが異なる。比較例2は、実施例1と同様に2つのテーパ面20を有するが、対向面18aの外周側に、実施例1のようなリブ21が形成されていない。
【0034】
各実施例1~9、従来例、比較例1、2について、以下の検証を行った。
(1)セパレータ部材7の開口端部7bび折り曲げ状態を検証した。表1では、セパレータ部材7の開口端部7bの周方向にわたって適正な円形状に折り曲げられた状態を「〇」、開口端部7bの周方向において歪みが生じ、セパレータ部材7の内側から負極材6が流出するおそれがある部分が生じた状態を「×」とする。
(2)セパレータ部材7の開口端部7bの押し潰れの有無を検証した。表1では、セパレータ部材7の開口端部7bに、集電棒4の軸方向に対して断面円弧状の丸みが形成された状態を「〇」、開口端部7bがフランジ状に押し潰れた状態を「×」とする。
(3)アルカリ電池として構成し、負極端子12側(ガスケット部材8側)を下向きに10回落下させた場合において、衝撃によってセパレータ部材7の開口端部7bが押し潰れ、負極材6の漏れに起因する電圧低下の発生の有無を検証した。表1では、10個のアルカリ電池について試験し、電圧低下が0個である場合を「〇」とする。
(4)集電棒4の軸方向に対するセパレータ部材7の開口端部7bの高さが適正に確保されて負極材6の充填量が増えることによる電気容量の変化を検証した。表1では、従来例よりも増加が1[%]以上である場合を「〇」、従来例と同等である場合を「-」、従来例よりも減少が1[%]以上である場合を「×」とする。
【0035】
(複数のテーパ面、及び環状のリブの作用)
本実施例のガスケット部材8の中間部18は、表1の実施例1~実施例9に示すように、セパレータ部材7の開口端部7bを塞ぐ際に、複数のテーパ面20、すなわち、少なくとも2つのテーパ面20に沿って段階的に折り曲げられることで、開口端部7bを変形させる力が開口端部7bの長さ方向(集電棒4の軸方向)に分散されて加えられると共に、環状のリブ21によって開口端部7bがフランジ状に押し潰されるのを抑制し、集電棒4の軸方向に適正な高さが確保された断面円弧状かつ、開口端部7bの周方向にわたって適正な円形状に形成される。
【0036】
同様に、本実施例のガスケット部材8の中間部18は、アルカリ電池1の落下等で衝撃が加わった場合にも、複数のテーパ面20、及びリブ21は、セパレータ部材7の開口端部7bの押し潰れや、開口端部7bの周方向における歪みの発生を抑制し、開口端部7bの形状を安定して保持する機能を担い、セパレータ部材7の内側から負極材6が漏れ出ることを防げる。そして、開口端部7bが適正な高さが確保された断面円弧状、かつ、開口端部7bの周方向にわたって適正な円形状に形成されることにより、セパレータ部材7の開口7a側まで負極材6の充填量を増やすことが可能になり、アルカリ電池1の電気容量を高められる。
【0037】
表1に示すように、従来例では、セパレータ部材7の開口端部7bの形状が適正な断面円弧状に形成されず、フランジ状に押し潰され、集電棒4の軸方向に対する開口端部7bの高さが低い。このため、従来例では、負極材6がセパレータ部材7の内側から開口端部7bを超えて外側の正極材5側に漏れ出ることで、電圧低下が生じる。
【0038】
また、比較例1は、3つのテーパ面20全体の距離Hが2.2[mm]であり、2.0[mm]を超えることで、折り曲げられた開口端部7bに歪みが生じ易くなり、集電棒4の軸方向に対する開口端部7bの高さを適正に確保できず、負極材6の充填量を増やせないことで電気容量が低下する。
【0039】
また、比較例2は、中間部18が2つのテーパ面20を有する構造であっても、対向面18aの外周にリブ21が形成されていないことで、2つのテーパ面20に沿って折り曲げられた開口端部7bが、開口端部7bが外周側へ膨らむ変形を抑制できず、開口端部7bにフランジ状の押し潰れが発生し易い。したがって、アルカリ電池の落下時の衝撃によっても開口端部7bが押し潰されることで、負極材6の漏れが生じて電圧低下になり易い。また、比較例2では、セパレータ部材7の開口端部7bが適正な形状に折り曲げられないので、負極材6の充填量の増加につながらず、、電気容量が従来例と同等である。
【0040】
(数値範囲の臨界意義)
表1の検証結果からも分かるように、複数のテーパ面20全体の距離Hは、1.0[mm]以上、2.0[mm]以下であることで、開口端部7bを適正な断面円弧状に形成できる。数値範囲の臨界意義として、距離Hが1.0[mm]未満の場合には、集電棒4の軸方向に対する開口端部7bの高さを十分に確保できず、開口端部7bが適正な断面円弧状に折り曲げられないので好ましくない。一方、距離Hが2.0[mm]を超えた場合には、集電棒4の軸方向に対する開口端部7bの高さが高くなり過ぎ、開口端部7bが適正な断面円弧状に折り曲げられないので好ましくない。
【0041】
なお、複数のテーパ面20を、一定の曲率を有して連続する1つの曲面として形成することも考えられるが、対向面18aを曲面として形成した場合には、開口端部7bのスムーズな変形を誘導する作用が高められる一方で、中間部18の厚さが薄くなる部分が生じるので、中間部18の剛性の低下、すなわちガスケット部材8の機械的強度が低下するおそれがある。また、複数のテーパ面20の個数が限定されないが、テーパ面20の個数が、例えば、5つを超えて増えるに従い、複数のテーパ面20全体がほぼ曲面状に近づくので、中間部18の厚さが薄くなる傾向があり、剛性が低下するおそれもある。
【0042】
(実施例の効果)
上述したように実施例のアルカリ電池1のガスケット部材8は、セパレータ部材7の開口7aに対向する、中間部18の対向面18aに、集電棒4の軸方向に直交する平面Fに対する傾斜角が異なる複数の環状のテーパ面20が、中間部18の径方向において同心円状に連続して形成されると共に、集電棒4の軸方向に突出する環状のリブ21が対向面18aの外周側に形成されている。複数のテーパ面20は、中間部18の外周側から内周側に向かって傾斜角が小さくなる順に形成されている。これにより、複数のテーパ面20によって開口端部7bを複数のテーパ面20に沿って段階的に変形させる作用と、環状のリブ21によって開口端部7bが中間部18の外周側へ膨らむことを抑制する作用との相乗作用により、セパレータ部材7の開口端部7bを所定形状に安定して折り曲げることが可能になり、ガスケット部材8によって開口端部7bがフランジ状に押し潰されることや、開口端部7bの周方向における円形に歪みが生じることを防げる。その結果、実施例は、集電棒4の軸方向に対する開口端部7bの高さを確保し、開口7a側まで負極材6の充填量を増して、アルカリ電池1の電気容量を高めることができる。加えて、実施例は、アルカリ電池1の落下時の衝撃等の外力が加わった場合であっても、複数のテーパ面20及び、環状のリブ21によってガスケット部材8の開口端部7bの形状を安定して保持することが可能となり、負極材6がセパレータ部材7の内側から外側へ漏れることを防ぎ、外部からの衝撃に対するアルカリ電池1の耐久性を高めることができる。
【0043】
また、実施例のアルカリ電池1のガスケット部材8は、複数のテーパ面20のうち、リブ21に隣り合う第1テーパ面20Aが、リブ21の内周面に形成されている。これにより、セパレータ部材7の開口端部7bが第1テーパ面20Aによって折り曲げられた際に、リブ21によって開口端部7bが外周側に向かって膨らむことを抑制すると共に、リブ21の内周面に沿って開口端部7bを適正な断面円弧状に折り曲げることができる。
【0044】
また、実施例のアルカリ電池1のガスケット部材8において、複数のテーパ面20は、中央部15の外周面15bに連結されたテーパ面20を含む。これにより、セパレータ部材7の開口端部7bを中央部15近傍まで複数のテーパ面20に沿ってスムーズに案内し、開口端部7bを更に適正な断面円弧状に折り曲げることが可能になる。
【0045】
また、実施例のアルカリ電池1のガスケット部材8において、中間部18は、中央部15の外周面15bに連結された対向面18aの内周縁と、リブ21の端面21aの内周縁との間の、集電棒4の軸方向における距離Hが、1.0[mm]以上、2.0[mm]以下である。これにより、セパレータ部材7の開口端部7bを適正な断面円弧状に形成できる。距離Hが1.0[mm]未満の場合には、集電棒4の軸方向に対する開口端部7bの高さを十分に確保できず、開口端部7bが適正な断面円弧状に折り曲げられないので好ましくない。一方、距離Hが2.0[mm]を超えた場合には、集電棒4の軸方向に対する開口端部7bの高さが高くなり過ぎ、開口端部7bが適正な断面円弧状に折り曲げられないので好ましくない。
【0046】
また、実施例のアルカリ電池1は、セパレータ部材7の開口端部7bが、複数のテーパ面20に沿って断面円弧状に曲げられている。これにより、集電棒4の軸方向における開口端部7bの高さを適正に確保することが可能になり、セパレータ部材7の内側に充填される負極材6の充填量を増やし、アルカリ電池1の電気容量を高めることができる。
【0047】
また、実施例のアルカリ電池1は、セパレータ部材7の開口縁が、中央部15の外周面15b近傍に位置する。これにより、セパレータ部材7の開口7aの内径が小さくされ、開口端部7bと複数のテーパ面20との接触面積が増えるので、開口7aや、開口端部7bと複数のテーパ面20との間から負極材6が漏れ出ることを抑制できる。
【符号の説明】
【0048】
1 アルカリ電池(乾電池)
3 電池缶
4 集電棒
7 セパレータ部材
7a 開口
7b 開口端部
8 ガスケット部材
15 中央部
15b 外周面
17 外周部
18 中間部
18a 対向面
20 テーパ面
20A~20D 第1テーパ面~第4テーパ面
21 リブ
21a 端面
F 平面
H 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8