(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143410
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】カバーの製造方法及びカバー
(51)【国際特許分類】
G11B 33/12 20060101AFI20230928BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20230928BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20230928BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20230928BHJP
B21D 22/26 20060101ALI20230928BHJP
B21D 53/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G11B33/12 302Z
H05K5/06 D
H05K5/03 H
G11B33/12 501A
B21D22/02 A
B21D22/26 C
B21D53/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050756
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】荒木 俊充
(72)【発明者】
【氏名】平間 道信
(72)【発明者】
【氏名】南家 英典
【テーマコード(参考)】
4E137
4E360
【Fターム(参考)】
4E137AA19
4E137BA05
4E137BB01
4E137CA02
4E137CA09
4E137CA21
4E137CA24
4E137CA26
4E137GA01
4E137GA17
4E137GB08
4E360AB08
4E360AB33
4E360BA03
4E360BB22
4E360BC05
4E360BD05
4E360EA18
4E360EA29
4E360EC05
4E360ED02
4E360ED03
4E360ED08
4E360EE20
4E360FA02
4E360FA20
4E360GA12
4E360GA52
4E360GB99
4E360GC04
4E360GC14
(57)【要約】
【課題】カバーの厚み方向の寸法を低減することが可能なカバーの製造方法を提供する。
【解決手段】板状のカバー半製品41の外周部17aに捨て孔33を設け、カバー半製品41の外周部17aの一部を厚み方向に潰すことにより、潰し時の塑性流動を捨て孔33によって許容しながら相対的に薄肉にした締結用の締結面部29を形成し、締結面部29の形成前又は後に締結面部29を外周部17aの一部の外周縁17bに対して囲むと共に厚み方向に偏倚させる段差部31を形成し、締結面部29に締結孔29cを設け、捨て孔33は、外周縁17bに平行であると共に締結孔29cとなる部分の面方向での外側縁17bに接する仮想線35よりも内側に少なくとも一部が位置する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置のベースに締結により取り付けられるカバーの製造方法であって、
板状のカバー半製品の外周部に捨て孔を設け、
前記カバー半製品の前記外周部の一部を厚み方向に潰すことにより、該潰し時の塑性流動を前記捨て孔によって許容しながら相対的に薄肉にした前記締結用の締結面部を形成し、
前記締結面部の形成前又は後に前記締結面部を前記外周部の一部の外周縁に対して囲むと共に厚み方向に偏倚させる段差部を形成し、
前記締結面部に締結孔を設け、
前記捨て孔は、前記外周縁に平行であると共に前記締結孔となる部分の面方向での外側縁に接する仮想線よりも内側に少なくとも一部が位置する、
カバーの製造方法。
【請求項2】
請求項1のカバーの製造方法であって、
前記締結面部の形成は、前記段差部の形成前において、前記外周部の一部及びその周囲を潰す、
カバーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2のカバーの製造方法であって、
前記締結面部及び前記段差部の形成前に前記締結面部の輪郭に沿った輪郭領域となる部分を先行して潰す、
カバーの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項のカバーの製造方法であって、
前記締結面部の形成後に前記締結面部の輪郭に沿った輪郭領域の隆起部分を除去し該輪郭領域の平行度の値を小さくする、
カバーの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項のカバーの製造方法であって、
前記捨て孔は、前記段差部となる部分及び前記締結面部となる部分の少なくとも一方に一部が位置するように形成される、
カバーの製造方法。
【請求項6】
請求項5のカバーの製造方法であって、
前記捨て孔は、前記締結面部となる部分の範囲内に位置する、
カバーの製造方法。
【請求項7】
請求項5のカバーの製造方法であって、
前記捨て孔は、前記段差部となる部分の範囲内に位置する、
カバーの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項のカバーの製造方法であって、
前記捨て孔は、前記締結面部の輪郭となる部分に沿った形状を有する、
カバーの製造方法。
【請求項9】
請求項5のカバーの製造方法であって、
前記捨て孔は、前記締結孔となる部分の範囲内に位置する、
カバーの製造方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項のカバーの製造方法であって、
前記カバー半製品の外周部における前記段差部となる部分に対する前記面方向での内側にガスケットを受けるためのガスケット受け部を備え、
前記捨て孔は、前記ガスケット受け部よりも前記面方向での外側に設けられる、
カバーの製造方法。
【請求項11】
記録装置のベースに締結により取り付けられる板状のカバーであって、
外周部の一部に厚み方向の潰しにより相対的に薄肉に形成された前記締結用の締結面部と、
前記締結面部に設けられた締結孔と、
前記締結面部を前記外周部の一部の外周縁に対して囲むと共に前記厚み方向に偏倚させる段差部と、
前記外周縁に平行であると共に前記締結孔の面方向での外側縁に接する仮想線よりも内側に少なくとも一部が位置し前記締結面部の前記潰し時の塑性流動を許容する捨て孔と、
を備えたカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ等の記録装置に用いられるカバーの製造方法及びカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置としてのハードディスクドライブは、特許文献1のように、ハウジング内に記録媒体であるディスクを収容している。ハウジングは、ディスクを収容するベースに板状のカバーを締結により取り付けて構成される。
【0003】
カバーには、外周部に複数の締結用の締結面部が設けられている。締結面部は、段差部によりカバーの他の部分に対し厚み方向でベース側に偏倚して配置されている。この締結面部が、締結具としてのねじ等によってベースに締結される。
【0004】
かかる構造では、ねじ等の頭部がカバーの表面から突出することを抑制できるが、全体としての厚み方向の寸法が増加する問題がある。
【0005】
これに対し、カバーの段差部の寸法を小さくすることで全体としての厚み方向の寸法を低減することは可能である。しかし、ねじ等の頭部がカバーの表面から突出しないようにする範囲で行うため、全体としての厚み方向の寸法低減には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、カバーの厚み方向の寸法の低減に限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、記録装置のベースに締結により取り付けられるカバーの製造方法であって、板状のカバー半製品の外周部に捨て孔を設け、前記カバー半製品の前記外周部の一部を厚み方向に潰すことにより、該潰し時の塑性流動を前記捨て孔によって許容しながら相対的に薄肉にした前記締結用の締結面部を形成し、前記締結面部の形成前又は後に前記締結面部を前記外周部の一部の外周縁に対して囲むと共に厚み方向に偏倚させる段差部を形成し、前記締結面部に締結孔を設け、前記捨て孔は、前記外周縁に平行であると共に前記締結孔となる部分の面方向での外側縁に接する仮想線よりも内側に少なくとも一部が位置する、カバーの製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、記録装置のベースに締結により取り付けられる板状のカバーであって、外周部の一部に厚み方向の潰しにより相対的に薄肉に形成された前記締結用の締結面部と、前記締結面部に設けられた締結孔と、前記締結面部を前記外周部の一部の外周縁に対して囲むと共に前記厚み方向に偏倚させる段差部と、前記外周縁に平行であると共に前記締結孔の面方向での外側縁に接する仮想線よりも内側に少なくとも一部が位置し前記締結面部の前記潰し時の塑性流動を許容する捨て孔と、を備えたカバーを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカバーの製造方法は、締結面部を潰しによって確実に薄肉に形成でき、カバーの厚み方向の寸法を容易且つ確実に低減することができる。
【0011】
本発明のカバーは、潰しによって確実に薄肉にされた締結面部により、カバーの厚み方向の寸法を確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る記録装置に用いられるカバーの裏面図である。
【
図2】
図2(A)は、
図1のカバーのII-II線に対応する記録装置の概略断面図、
図2(B)は、変形例に係り、
図2(A)に対応する記録装置の概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図2(A)の記録装置の一部を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のカバーの締結面部及びその周辺を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のカバーの締結面部及びその周辺を示す概略平面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係るカバーの締結面部及びその周辺を示す概略平面図である。
【
図7】
図7は、他の変形例に係るカバーの締結面部及びその周辺を示す概略平面図である。
【
図8】
図8は、さらに他の変形例に係るカバーの締結面部及びその周辺を示す概略平面図である。
【
図9】
図9は、さらに他の変形例に係るカバーの締結面部及びその周辺を示す概略平面図である。
【
図10】
図10(A)~(D)は、実施例1に係るカバーの製造方法を示す概略断面図である。
【
図12】
図12(A)~(C)は、本発明の実施例2に係るカバーの製造方法を示す概略断面図である。
【
図13】
図13(A)~(C)は、本発明の実施例3に係るカバーの製造方法を示す概略断面図である。
【
図14】
図14(A)~(C)は、本発明の実施例4に係るカバーの製造方法を示す概略平面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施例5に係るカバーの製造方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、カバーの厚み方向の寸法を低減するという目的を、ベースに対する締結用の締結面部を潰しによって薄肉に形成することで実現した。
【0014】
すなわち、カバー17の製造方法では、板状のカバー半製品41の外周部17aに捨て孔33を設け、カバー半製品41の外周部17aの一部を厚み方向に潰すことにより、この潰し時の塑性流動を捨て孔33によって許容しながら相対的に薄肉にした締結用の締結面部29を形成する。締結面部29の形成前又は後に、締結面部29を外周部17aの一部の外周縁17bに対して囲むと共に厚み方向に偏倚させる段差部31を形成し、締結面部29に締結孔29cを設ける。
【0015】
捨て孔33は、外周縁17bに平行であると共に締結孔29cとなる部分の面方向での外側縁に接する仮想線35よりも内側に少なくとも一部が位置する。
【0016】
締結面部29の形成は、段差部31の形成前において、外周部17aの一部だけでなく、その周囲を含めて潰してもよい。
【0017】
締結面部29及び段差部31の形成前に、締結面部29の輪郭29dに沿った輪郭領域29eとなる部分を先行して潰してもよい。
【0018】
締結面部29の形成後に、締結面部29の輪郭29dに沿った輪郭領域29eの隆起部分を除去し、この輪郭領域29eの平行度の値を小さくしてもよい。
【0019】
捨て孔33は、段差部31となる部分及び締結面部29となる部分の少なくとも一方に一部が位置するように形成してもよい。この場合、捨て孔33は、締結面部29となる部分の範囲内、段差部31となる部分の範囲内、又は締結孔29cとなる部分の範囲内に位置することが可能である。捨て孔33は、締結面部29の輪郭29dとなる部分に沿った形状を有してもよい。
【0020】
カバー半製品41がガスケット受け部27を備えてもよい。ガスケット受け部27は、カバー半製品41の外周部17aにおける段差部31となる部分に対する面方向での内側に位置する。この場合、捨て孔33は、ガスケット受け部27よりも面方向での外側に設ける。
【0021】
上記製造方法によって製造されたカバー17は、締結面部29と、締結孔29cと、段差部31と、捨て孔33とを備える。締結面部29は、外周部17aの一部に厚み方向の潰しにより、相対的に薄肉に形成されている。締結孔29cは、締結面部29に設けられている。段差部31は、締結面部29を外周部17aの一部の外周縁17bに対して囲むと共に厚み方向に偏倚させる。捨て孔33は、外周縁17bに平行であると共に締結孔29cの面方向での外側縁に接する仮想線35よりも内側に少なくとも一部が位置し、締結面部29の潰し時の塑性流動を許容する。
【実施例0022】
[記録装置の構成]
図1は、本発明の実施例1に係る記録装置に用いられるカバーの裏面図である。
図2(A)は、
図1のカバーのII-II線に対応する記録装置の概略断面図、
図2(B)は、変形例に係り、
図2(A)に対応する記録装置の概略断面図である。
図3は、
図2(A)の記録装置の一部を示す概略断面図である。
図4は、
図3のカバーの締結面部及びその周辺を示す概略断面図である。
図5は、
図3のカバーの締結面部及びその周辺を示す概略平面図である。
【0023】
記録装置1は、
図1及び
図2(A)のように、磁気ディスク装置としてのハードディスクドライブであり、ハウジング3内の空間部3aに記録媒体としてのディスク5を含めて図示しない内部機構を収容している。
【0024】
ディスク5は、複数が積層され、スピンドルモーター7のスピンドルシャフト7aにより回転可能に支持された構成となっている。これらディスク5は、図示しないヘッドを通じて情報の読み書きが行われるようになっている。
【0025】
なお、記録装置1としては、磁気ディスク装置に限られず、光ディスク装置等の他のディスク装置或いはディスク装置以外の他の記録装置であってもよい。例えば、
図2(B)のように、記録装置1は、テープ埋め込み型ドライブとしてもよい。この記録装置1では、二つのテープリール9間に巻き取られた記録媒体としてのテープフィルム11及び情報の読み書き用のヘッドアッセンブリ13等がハウジング3内に収容されている。
【0026】
記録装置1のハウジング3は、
図2(A)及び
図3のように、ベース15と、カバー17とを含み、内部が密閉又は封止される。
【0027】
ベース15は、記録装置1の厚み方向の一方が開口した箱状に構成されている。なお、ベース15は、ディスク5を収容可能であればよく、その限りにおいて適宜の形状を採用可能である。本実施例のベース15は、例えば平面視で略矩形形状の箱状となっている。
【0028】
平面視とは、厚み方向から見た状態を意味し、平面及び底面を区別する意味ではない。また、単に厚み方向というときは、記録装置1の厚み方向を意味する。ベース15の材質は、アルミニウム等の金属であるが、これに限定されるものではない。
【0029】
ベース15は、厚み方向での開口にカバー17が取り付けられて閉止されている。これによってディスク5を収容するハウジング3内の空間部3aが密閉されている。この密閉状の空間部3aには、ヘリウム等の空気よりも抵抗の少ないガスを封入してもよい。
【0030】
ベース15の外周部には、側壁部15aが周回状に備えられ、ベース15の開口は、側壁部15aによって区画されている。なお、ベース15の外周部は、ディスク5を含めた内部機構を囲む外周領域であり、本実施例において側壁部15aが設けられている部分をいう。
【0031】
側壁部15aは、ベース15の板状の底部15cから一体に立設されている。ただし、側壁部15aは、ベース15の底部15cに対して別体に形成したものを結合して一体的に形成することもできる。
【0032】
この側壁部15aには、カバー受け部19とガスケット受け部21とが設けられている。
【0033】
ベース15のカバー受け部19は、ベース15に対してカバー17を締結する部分に位置している。本実施例において、カバー受け部19は、ベース15の周方向に間隔を空けて複数、例えば6カ所設けられている。なお、カバー受け部19は、ベース15の外周部に沿って周回状に形成してもよい。ベース15の周方向とは、ベース15の側壁部15aに沿った周回方向を意味する。
【0034】
カバー受け部19は、カバー17を厚み方向で接合させて受ける。この接合状態で、カバー17は、ベース15のカバー受け部19の被締結面19aに締結されている。本実施例において、締結の方向(以下、締結方向)は、厚み方向に一致する。
【0035】
ただし、締結方向は、厚み方向に対して傾斜する等、一致しなくてもよい。カバー受け部19へのカバー17の接合方向も、締結方向と一致させるのが好ましいが、一致していなくてもよい。以下において、締結方向及び接合方向は、特に必要な場合を除き、厚み方向として示す。
【0036】
締結は、締結具、例えばボルト23により行われる。なお、カバー17は、スピンドルモーター7のスピンドルシャフト7aにもボルト24により締結されている。締結具としては、ボルト23、24以外にもリベット等を用いてもよい。
【0037】
カバー受け部19には、厚み方向の端部にカバー17を締結させるための被締結面19aが形成されている。カバー受け部19の被締結面19aは、厚み方向に交差する平面により平坦に形成されている。被締結面19aを構成する平面は、本実施例において厚み方向に対して直交している。
【0038】
ただし、被締結面19aを厚み方向に対し若干傾斜して設定することもできる。また、被締結面19aは、カバー17を厚み方向で受けられればよく、平面である必要はない。
【0039】
被締結面19aに隣接して、ベース15の側壁部15aには縁壁15bが厚み方向に立設されている。縁壁15bは、側壁部15aの外縁に沿って周回状に形成されている。
【0040】
ベース15のガスケット受け部21は、カバー17に取り付けられたガスケット25を受ける部分である。このガスケット受け部21は、ガスケット25を受けることで、カバー17との間でガスケット25をボルト23による締結方向としての厚み方向で圧縮している。本実施例のガスケット受け部21は、ベース15の側壁部15aに沿って平面視で周回状に設けられている。
【0041】
ガスケット受け部21は、ガスケット25を受ける受け面21aを有する。この受け面21aは、ベース15の外周部に周回状に連続して備えられ、ガスケット25を厚み方向で受ける。ただし、受け面21aは、ベース15の外周部に部分的に備えられてもよい。
【0042】
本実施例のベース15の受け面21aは、ベース15の被締結面19aと同様に平面で形成され、ベース15の被締結面19aが平坦に隣接する。
【0043】
ベース15に取り付けられたカバー17は、ベース15の被締結面19aに、締結面29bが接合されてボルト23により締結されている。この締結により、カバー17とベース15との間にガスケット25を介在させてハウジング3としている。
【0044】
カバー17は、アルミニウム等の金属製の板材からなり、全体としてベース15の開口を覆う平板状に形成されている。本実施例のカバー17は、ベース15に対応して平面視において略矩形形状となっている。ただし、カバー17の形状等の形態は、ベース15の開口を覆うものであれば、特に限定されるものではない。また、カバー17の材質も任意である。
【0045】
カバー17の外周部17aには、締結面部29が備えられている。なお、カバー17の外周部17aは、ベース15に設置された内部機構を覆うカバー17の本体部分に対する外周領域をいう。
【0046】
締結面部29は、ベース15の被締結面19aに接合されて、ボルト23による締結を行わせる板状部分である。本実施例において、締結面部29は、カバー17の外周部17aに6カ所形成されている。締結面部29の配置箇所は、ベース15のカバー受け部19に対応している。なお、締結面部29は、周方向に連続的に備えてもよい。
【0047】
各締結面部29は、カバー17の外周部17aの一部の厚み方向の潰しにより形成され、カバー17の外周部17aの締結面部29以外の他の部分17cに対し相対的に薄肉になっている。締結面部29の潰しは、プレスによって行えばよい。この締結面部29は、面方向において、外周縁17bから内側に向けて伸びている。なお、面方向とは、締結面部29のボルト受け面29aに沿った方向をいう。
【0048】
締結面部29は、ボルト受け面29a及び締結面29bを備えている。ボルト受け面29aは、カバー17の表面側でボルト23の頭部23aを受ける面となる。締結面29bは、カバー17の裏面側でベース15の被締結面19aに接合されて締結される面となる。ボルト受け面29a及び締結面29bは、カバー17の表裏面の面方向に沿った平坦面からなる。なお、カバー17の表面とは、厚み方向でカバー17の外部に臨む面であり、カバー17の裏面とは、厚み方向でカバー17のハウジング3内に臨む面である。
【0049】
締結面部29は、後述する捨て孔33によって潰し時の塑性流動が許容され、ボルト受け面29a及び締結面29bによる平行度の値が小さく設定されている。
【0050】
かかる締結面部29は、カバー17の外周部17aの他の部分17cに対し、段差部31により厚み方向でベース15側に偏倚して設けられている。具体的には、段差部31により、締結面部29は、カバー17の表面側で凹状且つ裏面側で凸状となる段付き形状に設定されている。
【0051】
段差部31は、締結面部29を外周縁17bに対して囲んで設けられている。これにより、段差部31は、締結面部29を全体的に厚み方向に偏倚させる。本実施例の段差部31は、カバー17の外周部17aの他の部分17c及び締結面部29を接続する傾斜した板状である。ただし、段差部31は、複数の段状や半抜き形状等によって構成してもよい。
【0052】
段差部31の厚み(板厚)は、カバー17の外周部17aの他の部分17cと同一であり、締結面部29よりも厚い。ただし、段差部31の厚みは、外周部17aの他の部分17cや締結面部29よりも薄肉にし、或いは締結面部29と同一としてもよい。
【0053】
段差部31による段差d1は、ボルト受け面29aが外周部17aの他の部分17cの表面に対して有する段差であり、段差部31による段差d2は、締結面29bが外周部17aの他の部分17cの裏面に対して有する段差である。
【0054】
本実施例において、段差d1は、ボルト23の頭部23aの厚み方向の寸法と同一又はやや大きくなっている。なお、段差d1は、ボルト23の頭部23aがカバー17の表面から突出しないように、頭部23aの厚み方向の寸法以上であればよい。
【0055】
段差d2は、ベース15のガスケット受け部21の受け面21aとの関係でガスケット25の圧縮高さを規定するものである。この段差d2は、締結面部29を薄肉化した分だけ厚み方向の寸法が小さく設定される。一方、圧縮高さを小さくしない場合は、ボルト23の頭部23aを大型化でき、ボルト23のトルク増加や破損を抑制できる。
【0056】
かかる段差部31は、締結面部29の輪郭29dを区画する。輪郭29dによる締結面部29の平面形状は、
図1のカバー17の裏面から明らかなように、締結箇所に合わせて異なった形状に設定されているが、基本的にボルト23の周囲を囲む形状である。
【0057】
各締結面部29には、ボルト23の締結孔29cが形成されている。この締結孔29cにボルト23のねじ部23bが挿通される。これにより、締結面部29がボルト23によってベース15の被締結面19aに接合状態で締結されている。
【0058】
本実施例の締結面部29には、
図3~
図5のように、捨て孔33が設けられている。捨て孔33は、締結面部29である外周部17aの一部の外周縁17bに平行であると共に締結孔29cの面方向での外側縁に接する仮想線35よりも内側に少なくとも一部が位置し、締結面部29の潰し時の塑性流動を許容する。
【0059】
なお、ここでの内側とは、仮想線35を境とした外周縁17b側に対する反対側をいう。締結孔29の面方向での外側縁とは、締結孔29の内周縁の内、面方向で最も外周縁17bに近い部分をいう。
【0060】
この捨て孔33は、ガスケット25を受けるカバー17のガスケット受け部27(後述)よりも面方向の外側に設けられる。ここでの外側とは、ガスケット受け部27を境とした外周縁17b側を意味する。
【0061】
従って、捨て孔33は、面方向においてガスケット受け部27と仮想線35との間に位置する。
【0062】
本実施例において、捨て孔33の位置は、締結面部29の範囲内となっている。具体的には、締結面部29の最も内側となる部分29f(最内部29f)に寄せて、締結孔29cよりも内側に位置している。
【0063】
捨て孔33は、締結面部29を貫通して設けられている。なお、捨て孔33は、締結面部29の潰し時の塑性流動を許容できれば、締結面部29を貫通しなくてもよい。また、捨て孔33は、切れ目やスリットであってもよい。この場合、捨て孔33を境とした両側の縁部を厚み方向にずらす。
【0064】
捨て孔33の平面形状は、締結面部29の輪郭29dに応じて円弧状となっている。捨て孔33の幅(円弧状の径方向の幅)は、締結面部29の潰し時の塑性流動によって閉じない程度となっている。なお、捨て孔33の平面形状、位置、大きさ、範囲は、締結面部29の平面形状、潰し量、平行度、剛性等によって適宜設定することが可能である。
【0065】
図6~
図9は、捨て孔33の変形例を示す平面図である。
【0066】
図6の変形例は、
図5の実施例の捨て孔33を締結面部29の輪郭29dと重ねて配置し、捨て孔33が段差部31から締結面部29にわたって設けられている。なお、当変形例の捨て孔33は段差部31成形後に
図5と同様の形状をなすよう成形しているが、段差部31成形前に
図5と同様の形状をなすように成形してもよく、その場合は、平面視において段差部31に重なる部分が
図6で示す形状と相異する。他の変形例も同様である。
【0067】
図7の変形例は、段差部31に複数の捨て孔33を設けたものである。この変形例では、二つの捨て孔33が設けられている。捨て孔33は、それぞれ段差部31の円弧状部31a内に配置された直線状となっている。捨て孔33は、仮想線35と直交し締結孔29cの中心を通る線37に対して傾斜しつつ対称に位置している。
【0068】
図8の変形例は、
図7の捨て孔33を締結孔29c側に偏倚して締結面部29の輪郭29dを跨ぐように配置し、捨て孔33が締結面部29から段差部31にわたって設けられている。
【0069】
図9の変形例は、複数の捨て孔33が、
図6と同様に段差部31から締結面部29にわたって設けられている。ただし、本変形例では、円弧状の三つの捨て孔33が同一の仮想円39上に位置するように配置されている。
【0070】
図3及び
図4のように、本実施例のカバー17は、締結面部29に隣接して、ベース15のガスケット受け部21の受け面21aに対向するカバー17のガスケット受け部27の受け面27aを備えている。
【0071】
カバー17の受け面27aは、ガスケット25をボルト23による締結方向である厚み方向で受けるものである。本実施例において、カバー17の受け面27aは、カバー17の外周部17aに周回状に備えられている。ただし、受け面27aは、カバー17の外周部17aに部分的に備えられてもよい。
【0072】
受け面27aは、ベース15の受け面21aと同様に平面で形成されている。ただし、受け面27aは、凹凸等を有してもよい。
【0073】
このカバー17の受け面27aには、ガスケット25が取り付けられている。なお、ガスケット25は、ベース15の受け面21aに取り付けてもよい。また、ガスケット25は、受け面27a及び21a間に取り付けずに介在させてもよい。
【0074】
ガスケット25は、カバー17とベース15との間を密封又は封止するものであり、カバー17の外周部17aに沿った周回状となっている。なお、ガスケット25の形状は、カバー17とベース15との間を密封又は封止できれば任意である。
【0075】
本実施例のガスケット25は、カバー17の受け面27aから厚み方向に突出し、先端部がベース15の受け面21aに接している。そして、ガスケット25は、ベース15に対するカバー17の締結により、ベース15の受け面21aとカバー17の受け面27aとの間で圧縮されている。この圧縮によってガスケット25は、段差d2と同一の圧縮高さを有する。
【0076】
本実施例のガスケット25は、カバー17の受け面27aに沿って定着されている。ガスケット25は、FIPG(Foamed In Place Gasket)等の液体ガスケットが用いられている。すなわち、ガスケット25は、予めカバー17の受け面27aに、塗布して硬化されて定着している。
【0077】
なお、ガスケット25は、液状ガスケットや成形ガスケット等の適宜のものを用いることが可能である。成形ガスケットの場合は、カバー17に事前に貼り付ければよい。また、ガスケット25としては、Oリング、パッキン等を用いてもよい。
【0078】
ガスケット25の断面形状は、自由状態で全体として半円弧状断面となっている。これにより、ガスケット25は、自由状態で厚み方向の途中から先端にわたって漸次幅が小さくなっており、圧縮状態においてカバー17とベース15との間で断面樽型を呈している。
【0079】
[カバー及び記録装置の製造方法等]
図10(A)~(D)は、実施例1に係るカバーの製造方法を示す概略断面図、
図11は、カバー半製品の外周部を示す概略平面図である。
【0080】
本実施例のカバー17は、捨て孔33、段差部31、締結面部29、及び締結孔29cを順に形成する。なお、段差部31の形成は、捨て孔33よりも前又は締結面部29よりも後に形成してもよい。
【0081】
捨て孔33の形成は、板状のカバー半製品41の外周部17aに対して、打ち抜きにより行われる。なお、カバー半製品41ではカバー17と対応する構成に同符号を用いる。カバー半製品41の外周部17aは、締結面部29となる部分を含む外周縁17bから内側へ所定の幅を有する領域である。
【0082】
本実施例では、
図10(A)及び
図11のように、締結面部29となる部分の範囲内において、締結面部29の最内部29fに寄せて、締結孔29cとなる部分よりも内側に捨て孔33が位置している。
【0083】
なお、捨て孔33は、段差部31となる部分及び締結面部29となる部分の少なくとも一方に一部が位置するように形成されればよい。
【0084】
カバー半製品41は、事前にプレスや打ち抜き等の加工がなされ、外周部17aに締結面部29及び段差部31が形成されていない概ねフラットな板状となっている。ただし、カバー半製品41は、概ねフラットな板状とする必要性はない。また、カバー半製品41は、外郭の一部が母材に接続された状態で残存してもよい。
【0085】
カバー半製品41の外周部17aは、カバー17の外周部17aに応じた外郭を有している。ただし、カバー半製品41の外周部17aは、カバー17の外周部17aよりも大きい外郭を有してもよい。この場合、カバー半製品41の外周部17aを、他の工程でカバー17に対応した外郭とすればよい。
【0086】
捨て孔33の形成後は、
図10(B)のように、段差部31の形成が行われる。
【0087】
段差部31の形成は、外周部17aの一部の締結面部29となる部分をプレスにより厚み方向に変位させる。すなわち、カバー半製品41の外周部17aの外周縁17bから内側に至る一部が、段差部31の段差d2に応じた凸部43aを有する上型43及び段差部31の段差d2に応じた凹部45aを有する下型45とでプレスされる。
【0088】
これにより、締結面部29となる部分と他の部分17cとの間で外周部17aを部分的に傾斜させ、締結面部29となる部分が他の部分17cに対して厚み方向で変位する。結果として、締結面部29を外周部17aの一部の外周縁17bに対して囲むと共に厚み方向に偏倚させる段差部31が形成される。ただし、ここでの段差部31は、外周部17aの表裏に対する段差が何れもd2となっている。
【0089】
段差部31の形成後は、
図10(C)のように、締結面部29の形成が行われる。
【0090】
締結面部29の形成は、カバー半製品41の外周部17aの一部の締結面部29となる部分を、厚み方向にプレスにより潰すことで、潰し時の塑性流動を捨て孔33で許容しながら相対的に薄肉にする。
【0091】
このとき、捨て孔33は、段差部31及び締結面部29となる部分の少なくとも一方に一部が位置するように形成されることで、段差部31を形成した後であっても締結面部29の潰し時の塑性流動を許容することができる。これにより、締結面部29を少ない力で潰して平行度の値を小さくしつつ薄肉化することが可能となる。
【0092】
本実施例では、締結面部29となる部分の範囲内に捨て孔33を設けてあるので、塑性流動を確実に許容できる。また、締結面部29となる部分の範囲内の捨て孔33が、締結面部29の輪郭29dとなる部分よりも面方向の外側に位置するため、全周により塑性流動を許容できる。
【0093】
図7の変形例のように、段差部31の範囲内に捨て孔33を設けた場合は、締結面部29の潰しによる形成時の塑性流動を許容できながら、ボルト受け面29aにおけるボルト23の頭部23aとの当接面積を確保し易い。また、
図6、
図8、及び
図9の変形例のように、捨て孔33が段差部31及び締結面部29となる部分に跨る場合は、捨て孔33の締結面部29となる部分に臨む部分全体で塑性流動を許容できる。また、段差部31に位置する部分において塑性流動の許容量を大きくできる。さらに、捨て孔33の一部が段差部31に位置することで、ボルト受け面29aにおけるボルト23の頭部23aとの当接面積も確保し易い。
【0094】
締結面部29の潰しによる形成は、外周部17aの一部の締結面部29となる部分を、下型45に対して上型44によりプレスする。なお、上型43の凸部43aを締結面部29の潰し分だけ突出させておくことで、段差部31の形成時に締結面部29も形成することが可能である。
【0095】
こうして締結面部29となる部分が圧縮されて面方向に塑性流動する。塑性流動は、外周縁17bへ向けて生じ易く、外周縁17bに対する反対側へ向けて生じ難い。また、塑性流動は、段差部31に沿った方向で生じ易く、段差部31に向かう方向で生じ難い。このため、本実施例では、塑性流動が生じ難い範囲、特に外周縁17bに対する反対側(仮想線35の内側)で段差部31に沿った方向が外周縁17bに向かっていない範囲に捨て孔33を設けている。
【0096】
これにより、塑性流動が生じ難い範囲を無くしている。特に、本実施例では、締結面部29の最内部29fを通る輪郭29dに沿った部分に捨て孔33が設けられることで、塑性流動が生じ難い範囲を確実に無くすことができる。従って、締結面部29を全体的に確実に薄肉化して形成でき、カバー17の厚み方向の寸法を容易且つ確実に低減できる。また、締結面部29の確実な薄肉化の結果として平行度の値を小さくすることもできる。
【0097】
なお、捨て孔33は、少なくとも外周縁17bに平行であると共に締結孔29cとなる部分の面方向での外側縁に接する仮想線35よりも内側に少なくとも一部が位置するようにする。
【0098】
仮想線35よりも外側は、外周縁17bに相対的に近い範囲であり、外周縁17bへ向かった塑性流動が円滑に行われるためである。従って、捨て孔33は、この範囲に設けてもよいが、少なくとも仮想線35よりも内側に少なくとも一部が位置するようにする必要がある。
【0099】
締結面部29の形成後は、
図10(D)のように、打ち抜きによって締結孔29cが形成され、カバー17の受け面27aに沿って塗布し硬化させたガスケット25を定着させる。
【0100】
記録装置1の製造では、ガスケット25が取り付けられたカバー17をベース15に対して取り付けてディスク5を収容するハウジング3の空間部3aを閉止する。
【0101】
さらに説明すると、ベース15には、ディスク5を含む内部機構を設置しておく。このベース15の開口にガスケット25が取り付けられたカバー17を厚み方向で対向させる。このとき、カバー17及びベース15間の位置決めにより、ガスケット25の先端部をベース15の受け面21aに対向させる。
【0102】
この状態で、カバー17及びベース15を相互に近接させ、ガスケット25の先端部をベース15の受け面21aに当接させる。
【0103】
カバー17及びベース15相互をさらに近接させると、カバー17の受け面27aのガスケット25がベース15の受け面21aとの間で圧縮される。
【0104】
そして、カバー17の締結面29bがベース15の被締結面19aに接合される。この状態では、カバー17の外周縁がベース15の縁壁15bの内側に嵌合する。また、ガスケット25の圧縮が完了して、ガスケット25が所定の圧縮高さとなる。本実施例では、締結面部29が薄肉化されているので、その分だけ多くガスケット25を圧縮でき、ガスケット25の圧縮高さを低くすることができる。
【0105】
この接合状態で、締結面部29の締結孔29cにボルト23を挿通させてベース15のカバー受け部19に締結する。このとき、本実施例では、締結面部29の平行度の値が小さいので、ボルト23により確実に締結を行わせることができる。
【0106】
こうして、本実施例のカバー17を用いることで、情報の記録及び読出し用のディスクを含む内部機構をベース15に設置した記録装置1を得ることができる。
【0107】
本実施例では、カバー17の厚み方向の寸法が低減されているので、記録装置1全体としての厚み方向の寸法を低減することができる。
捨て孔33は、段差部31の形成前であるため、段差部31よりも面方向の内側に形成しても塑性流動を許容できる。本実施例の捨て孔33は、外周部17aの他の部分17cに設けられている。なお、捨て孔33の位置は、上型47の大きさや潰し量等に応じて適宜設定すれば良い。上型47の大きさは、締結面部29となる部分と同一としてもよい。
実施例2では、段差部31形成前に締結面部29を形成するため、締結面部29の薄肉化を行い易い。また、実施例2では、締結面部29となる部分及びその周囲を潰すため、締結面部29の薄肉化を容易且つ確実に行うことができる。さらに、実施例2では、ガスケット受け部27よりも外側であり、且つ仮想線35よりも内側である限り、捨て孔33の位置を自由に設定することが可能となる。その他、実施例2でも、実施例1と同様の作用効果を奏することもできる。