(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143443
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】認証システム、認証端末及び生体情報記憶端末
(51)【国際特許分類】
G06F 21/32 20130101AFI20230928BHJP
H04B 13/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G06F21/32
H04B13/00 500
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050824
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】叶 志涛
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕史
(72)【発明者】
【氏名】松永 紫音
(72)【発明者】
【氏名】永井 辰憲
(57)【要約】
【課題】生体認証を安全に適切に行うことのできる認証システム、を提供する。
【解決手段】
本発明の認証システムは、認証用識別情報と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報が記憶された認証用情報記憶部25と、認証の際に信号送受信部22を制御して認証端末30へ前記認証用情報記憶部25に記憶された認証用情報を送信させる送信制御部24と、が具備された生体情報記憶端末20と、認証対象者から認証用の生体情報を取得する生体情報取得部33と、電界式人体通信により送られてくる認証用情報と、前記生体情報取得部33により取得された生体情報及び自らが記憶している識別情報とを比較して、セキュリティ情報に基づいた認証を行う認証処理部34と、が具備されている認証端末30を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記電極へ送信する信号送信部と、人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部と、を認証端末及び生体情報記憶端末の双方が備える電界式人体通信システムを用いて実現され、
前記生体情報記憶端末は、
認証用識別情報と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報と、が記憶された認証用情報記憶部と、
認証の際に前記信号送信部を制御して前記認証端末へ前記認証用情報記憶部に記憶された認証用情報を送信させる送信制御部と、
が具備され、
前記認証端末は、
認証対象者から認証用の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記電界式人体通信により送られてくる認証用情報と、前記生体情報取得部により取得された生体情報及び自らが記憶している識別情報とを比較して、セキュリティ情報に基づいた認証を行う認証処理部と、
が具備されていることを特徴とする認証システム。
【請求項2】
前記認証用情報記憶部には、種類の異なる生体認証に用いられる複数種の比較対象生体情報が記憶され、
前記送信制御部は、前記複数種の比較対象生体情報を前記認証用情報記憶部から取り出し、前記信号送信部を制御して送信させることを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項3】
前記セキュリティ情報は、識別情報のみによる認証を行うのか、または識別情報及び生体認証を行うのかを示し、
前記認証処理部はこのセキュリティ情報に基づいて認証処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の認証システム。
【請求項4】
前記認証用情報記憶部には、一種類の生体認証に対して複数候補の比較対象生体情報が記憶され、
前記認証処理部は、認証を行った結果が不一致の場合に、次の候補に係る比較対象生体情報の送信要求情報を前記送信制御部へ送るように構成され、
前記送信制御部は、前記認証処理部から送られてくる次の候補に係る比較対象生体情報の送信要求情報に応じて、対応する比較対象生体情報の次候補を前記認証用情報記憶部から取り出し、前記信号送信部を制御して送信させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項5】
前記認証処理部は、生体認証を行った結果が一致の場合に、認証に用いた認証対象者から取得した認証用の生体情報を前記認証用情報記憶部へ記憶するように要求する処理を行うように構成され、
前記生体情報記憶端末には、生体認証に用いた認証対象者から取得した認証用の生体情報を所定の場合に前記認証用情報記憶部へ記憶する記憶制御部が具備されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項6】
前記信号受信部には、
複数の電極が接続され、
高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換手段、
を具備し、
前記受信信号部は、
前記複数の電極から信号を受信して時系列に蓄積し、前記高速フーリエ変換手段に前記電極毎の蓄積した信号を与えて高速フーリエ変換し、高速フーリエ変換した結果に基づき前記生体情報記憶端末の前記信号送信部から送信された送信信号を復元することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項7】
前記信号受信部には、
複数の電極が接続され、
前記複数の電極からそれぞれ異なるタイミングで所定期間、信号を受信する前記複数の電極と同数のサンプリング回路と、
前記複数のサンプリング回路で受信した信号の全ての和信号または積信号を求める信号変形部と、
前記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化する2値化回路と、
2値化のHレベルが連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すデータ取出部と
が備えられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項8】
前記信号受信部には、
複数の電極が接続され、
前記複数の電極から所定時間毎のサンプリングをそれぞれ異なる周波数で行って信号を受信する前記複数の電極と同数の周波数受信回路と、
前記複数の周波数受信回路で受信した信号の全ての和信号または積信号を求める信号変形部と、
前記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化する2値化回路と、
2値化のHレベルが連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すデータ取出部と
が備えられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の認証システム。
【請求項9】
人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記電極へ送信する信号送信部と、人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部と、を認証端末及び生体情報記憶端末の双方が備える電界式人体通信システムを用いて実現される認証システムの前記生体情報記憶端末であって、
認証用識別情報と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報が記憶された認証用情報記憶部と、
認証の際に前記信号送信部を制御して前記認証端末へ前記認証用情報記憶部に記憶された認証用情報を送信させる送信制御部と、
が具備されていることを特徴とする生体情報記憶端末。
【請求項10】
前記認証用情報記憶部には、種類の異なる生体認証に用いられる複数種の比較対象生体情報が記憶され、
前記送信制御部は、複数種の比較対象生体情報を前記認証用情報記憶部から取り出し、前記信号送信部を制御して送信させることを特徴とする請求項9に記載の生体情報記憶端末。
【請求項11】
前記送信制御部は、前記認証端末の認証処理部が、識別情報のみによる認証を行うのか、または識別情報及び生体認証を行うのかに拘わらず、前記認証用情報記憶部から識別情報及び比較対象生体情報をから取り出し、送信することを特徴とする請求項9または10に記載の生体情報記憶端末。
【請求項12】
前記認証用情報記憶部には、一種類の生体認証に対して複数候補の比較対象生体情報が記憶され、
前記認証端末の認証処理部が、認証を行った結果が不一致の場合に、次の候補に係る比較対象生体情報の送信要求情報を前記送信制御部へ送るように構成されているのに応じて、
前記送信制御部は、前記認証処理部から送られてくる次の候補に係る比較対象生体情報の送信要求情報に応じて、対応する比較対象生体情報の次候補を前記認証用情報記憶部から取り出し、前記信号送信部を制御して送信させることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の生体情報記憶端末。
【請求項13】
前記認証端末の認証処理部が、生体認証を行った結果が一致の場合に、認証に用いた認証対象者から取得した認証用の生体情報を前記認証用情報記憶部へ記憶するように要求する処理を行うように構成されていることに応じて、
前記生体情報記憶端末には、生体認証に用いた認証対象者から取得した認証用の生体情報を所定の場合に前記認証用情報記憶部へ記憶する記憶制御部が具備されていることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の生体情報記憶端末。
【請求項14】
人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記電極へ送信する信号送信部を有した生体情報記憶端末と、前記人体と容量結合する前記電界式人体通信に用いる電極に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部を有した認証端末と、を備える電界式人体通信システムを用いて実現される認証システムの前記認証端末であって、
前記生体情報記憶端末には、
認証用識別情報と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報と、が記憶された認証用情報記憶部と、
認証の際に前記信号送信部を制御して信号受信部へ前記認証用情報記憶部に記憶された認証用情報を送信させる送信制御部と、
が具備されていることに応じて、
認証対象者から認証用の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記電界式人体通信により送られてくる認証用情報と、前記生体情報取得部により取得された生体情報及び自らが記憶している識別情報とを比較して、人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記電極へ送信する信号送信部と、人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部と、を認証端末及び生体情報記憶端末の双方が備える電界式人体通信システムを用いて実現され、
前記生体情報記憶端末は、
認証用識別情報と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報と、が記憶された認証用情報記憶部と、
認証の際に前記信号送信部を制御して前記認証端末へ前記認証用情報記憶部に記憶された認証用情報を送信させる送信制御部と、
が具備され、
前記認証端末は、
認証対象者から認証用の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記電界式人体通信により送られてくる認証用情報と、前記生体情報取得部により取得された生体情報及び自らが記憶している識別情報とを比較して、セキュリティ情報に基づいた認証を行う認証処理部と、
が具備されている認証を行う認証処理部と、
が具備されていることを特徴とする認証端末。
【請求項15】
前記セキュリティ情報は、識別情報のみによる認証を行うのかまたは識別情報及びいずれの種の生体認証を行し、
前記認証処理部はこのセキュリティ情報に基づき、認証処理を行うことを特徴とする請求項14に記載の認証端末。
【請求項16】
前記認証用情報記憶部には、一種類の生体認証に対して複数候補の比較対象生体情報が記憶されていることに応じて、
前記認証処理部は、認証を行った結果が不一致の場合に、次の候補に係る比較対象生体情報の送信要求情報を前記送信制御部へ送るように構成され、
前記送信制御部は、前記認証処理部から送られてくる次の候補に係る比較対象生体情報の送信要求情報に応じて、対応する比較対象生体情報の次候補を前記認証用情報記憶部から取り出し、前記信号送信部を制御して送信させることを特徴とする請求項14または15に記載の生体認証端末。
【請求項17】
前記認証処理部は、生体認証を行った結果が一致の場合に、認証に用いた認証対象者から取得した認証用の生体情報を前記認証用情報記憶部へ記憶するように要求する処理を行うように構成され、
前記生体情報記憶端末には、生体認証に用いた認証対象者から取得した認証用の生体情報を所定の場合に前記認証用情報記憶部へ記憶する記憶制御部が具備されていることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載の認証端末。
【請求項18】
前記信号受信部には、
複数の電極が接続され、
高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換手段と、
を具備し、
前記複数の電極から信号を受信して時系列に蓄積し、前記高速フーリエ変換手段に前記電極毎の蓄積した信号を与えて高速フーリエ変換し、高速フーリエ変換した結果に基づき前記生体情報記憶端末の前記信号送信部から送信された送信信号を復元することを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の認証端末。
【請求項19】
前記信号受信部には、
複数の電極が接続され、
前記複数の電極からそれぞれ異なるタイミングで所定期間、信号を受信する前記複数の電極と同数のサンプリング回路と、
前記複数のサンプリング回路で受信した信号の全ての和信号または積信号を求める信号変形部と、
前記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化する2値化回路と、
2値化のHレベルが連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すデータ取出部と
が備えられていることを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の認証端末。
【請求項20】
前記信号受信部には、
複数の電極が接続され、
前記複数の電極から所定時間毎のサンプリングをそれぞれ異なる周波数で行って信号を受信する前記複数の電極と同数の周波数受信回路と、
前記複数の周波数受信回路で受信した信号の全ての和信号または積信号を求める信号変形部と、
前記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化する2値化回路と、
2値化のHレベルが連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すデータ取出部と
が備えられていることを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の認証端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、認証システム、認証端末及び生体情報記憶端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、眼鏡型装置とPCと腕時計型装置とが人体通信により使用制限情報を送信するシステムが開示されている。これにより、PCの近傍にいるユーザ、すなわちPCを実際に利用している可能性の高いユーザのユーザ認証情報を取得することができる。また、腕時計型装置において、ユーザの体の一部(腕の静脈)の認証結果を取得し、通信部を介して人体通信により眼鏡型装置に送信する。これにより、身に着けている装置間において、ユーザ認証結果のやり取りを行うことができるものである。
【0003】
そして、眼鏡型装置のユーザ認証結果と腕時計型装置のユーザ認証結果とに基づいて生成される使用制限情報をPCに送信する。また、眼鏡型装置のユーザ認証結果と腕時計型装置のユーザ認証結果とをPCに送信することとしてもよい。この場合、PCの制御部が、両ユーザ認証結果に基づいて、使用制限情報を生成する。
【0004】
特許文献2には、ユーザを特定する個人認証用データを記録するIC媒体と、前記IC媒体を装着し、個人認証用データを読取るリーダ部と人体通信送信部とが一体となったフォルダ型送信機と、前記フォルダ型送信機から送られたIC媒体の個人認証データを受信する人体通信受信部と、前記IC媒体の個人認証データに基づいて、認証作業を実施する認証作業部と、前記認証作業の結果に基づいて、アプリケーションソフトの運用を制御するソフト運用制御部と表示部とを有する携帯端末とからなることを特徴とする個人認証装置が開示されている。
【0005】
この個人認証装置は、少なくとも前記人体通信受信部と前記携帯端末とは一体であって、ユーザが前記携帯端末の表示部に手を触れることにより、人体通信による前記個人認証用データの授受が実施されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-49765号公報
【特許文献2】国際公開2015-098253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の認証装置においても同様であるが、従来の指紋等の認証では、事前に指紋情報の登録および保存を行う必要がある。そのため、指紋の登録は認証と同じ端末で登録するため、その端末がある場所に赴き登録する必要があり、時間と手間を要する。また、大勢の利用者の指紋情報を登録する場合、保存するための大容量のメモリが必要である。更に、指紋情報を認証側のディスクやサーバに保存するため、セキュリティ上で指紋情報漏れのリスクがある。
【0008】
生体情報を盗用され登録がなされることで、なりすましなどが行われるリスクが高まる。通常、一度登録した指紋情報は自動的には更新しないため、生体情報の変化で従来の指紋が使えなくなる可能性がある。
【0009】
なお、上記特許文献1の発明では、人体通信によって得られた認証データで本人確認と認証を提案しているが、指紋データの更新が行われていないため、環境や時間の変化により、認証が通らない可能性がある。
【0010】
本発明は上記のような生体認証の現状に鑑みてなされたもので、人体通信を用いることで、生体認証を少ない手間と時間で実現しながら、生体認証を安全に適切に行うことのできる認証システム、認証端末及び生体情報記憶端末を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る認証システムは、人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記電極へ送信する信号送信部と、人体と容量結合する電界式人体通信に用いる電極に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部と、を認証端末及び生体情報記憶端末の双方が備える電界式人体通信システムを用いて実現され、前記生体情報記憶端末は、認証用識別情報と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報と、が記憶された認証用情報記憶部と、認証の際に前記信号送信部を制御して前記認証端末へ前記認証用情報記憶部に記憶された認証用情報を送信させる送信制御部と、が具備され、前記認証端末は、認証対象者から認証用の生体情報を取得する生体情報取得部と、前記電界式人体通信により送られてくる認証用情報と、前記生体情報取得部により取得された生体情報及び自らが記憶している識別情報とを比較して、セキュリティ情報に基づいた認証を行う認証処理部と、が具備されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の実施形態に係る生体情報記憶端末は、人体と容量結合する電界式人体通信用の電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記電極へ送信する信号送信部と、人体と容量結合する電界式人体通信用の電極に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部と、を認証端末及び生体情報記憶端末の双方が備える電界式人体通信システムを用いて実現される認証システムの前記生体情報記憶端末であって、認証用識別情報と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報が記憶された認証用情報記憶部と、認証の際に前記信号送信部を制御して前記認証端末へ前記認証用情報記憶部に記憶された認証用情報を送信させる送信制御部と、が具備されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の実施形態に係る認証端末は、人体と容量結合する電界式人体通信用の電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記電極へ送信する信号送信部を有した生体情報記憶端末と、人体と容量結合する電界式人体通信用の電極に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部を有した認証端末と、を備える電界式人体通信システムを用いて実現される認証システムの前記認証端末であって、前記生体情報記憶端末には、認証用識別情報と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報が記憶された認証用情報記憶部と、認証の際に前記信号送信部を制御して前記受信装置へ前記認証用情報記憶部に記憶された認証用情報を送信させる送信制御部と、が具備されていることに応じて、認証対象者から認証用の生体情報を取得する生体情報取得部と、前記電界式人体通信により送られてくる認証用情報と、前記生体情報取得部により取得された生体情報及び自らが記憶している識別情報とを比較して、セキュリティ情報に基づいた認証を行う認証処理部と、が具備されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る認証システムの構成図。
【
図2】本発明の実施形態に係る認証システムに用いる生体情報読取装置が比較対象生体情報を得るための生体情報読取装置の構成を示すブロック図。
【
図3】本発明の実施形態に係る認証システムの生体情報記憶端末に記憶するN通りの比較対象生体情報を示す図。
【
図4】本発明の実施形態に係る認証システムの認証処理部に記憶されている認証対象者の識別情報の記憶例を示す図。
【
図5】本発明に係る第1の実施形態における認証システムの生体情報記憶端末による動作を示すフローチャート。
【
図6】本発明に係る第1の実施形態における認証システムの認証端末30による動作を示すフローチャート。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る認証システムの構成図。
【
図8】本発明の第2の実施形態の認証用情報記憶部における記憶内容を示す図。
【
図9】本発明に係る第2の実施形態における認証システムの動作を示すフローチャート。
【
図10】本発明の実施形態において信号送受信部や信号送受信部が送信側となるときの信号送受信部の第1の実施形態を示す構成図。
【
図12】本発明の各実施形態により用いられるFFT変換の概略を説明するための図。
【
図13】本発明に係る認証システムの実施形態において信号送受信部や信号送受信部が受信側となるときの第1の実施形態である信号送受信部の構成図。
【
図14】本実施形態に係る信号送受信部の受信信号復元部が行う処理動作の一例を示すフローチャート。
【
図15】本発明に係る認証システムの実施形態において信号送受信部や信号送受信部が受信側となるときの第2の実施形態である信号送受信部の構成図。
【
図16】本発明に係る認証システムの実施形態において信号送受信部や信号送受信部が受信側となるときの第2の実施形態である信号送受信部の要部動作を示す波形図。
【
図17】本発明に係る認証システムの実施形態において信号送受信部や信号送受信部が受信側となるときの第2の実施形態である信号送受信部の要部動作を示す波形図。
【
図18】本発明に係る認証システムの実施形態において信号送受信部や信号送受信部が受信側となるときの第3の実施形態である信号送受信部の構成図。
【
図19】本発明に係る認証システムが備える第3の実施形態である信号送受信部に備えられる第1の周波数受信回路と第2の周波数受信回路との動作を説明するための波形図。
【
図20】本発明に係る認証システムが備える第3の実施形態に係る信号送受信部における要部の動作を説明するための波形図。
【
図21】本発明に係る認証システムが備える第3の実施形態である信号送受信部が採用した手法により、4個の電極とその受信信号を用いてデータを取得した場合の動作時の波形図。
【
図22】本発明に係る第2、第3の実施形態において電極から受信した信号(ローパスフィルタ使用前)を示す図。
【
図23】本発明に係る第2、第3の実施形態において電極から受信した信号(ローパスフィルタ使用後)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る認証システム、認証端末及び生体情報記憶端末を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る認証システムの構成図である。この認証システムは、認証端末30及び生体情報記憶端末20の双方が電界式人体通信する電界式人体通信システムを用いて実現される。生体情報記憶端末20は、人体10と容量結合する電界式人体通信用の電極21に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を上記電極21へ送信する信号送信部として機能する信号送受信部22と、人体10と容量結合する電界式人体通信用の電極21に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部として機能する信号送受信部22とを備える。また、認証端末30は、人体10と容量結合する電界式人体通信用の電極31に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を上記電極31へ送信する信号送信部として機能する信号送受信部32と、人体10と容量結合する電界式人体通信用の電極31に接続され、送信されてくる信号を受信する信号受信部として機能する信号送受信部32とを備える。即ち、認証端末30及び生体情報記憶端末20は互いに、電界式人体通信によって信号の送信と受信とが可能である。
【0016】
上記生体情報記憶端末20には、認証用情報記憶部25と送信制御部24とが備えられている。認証用情報記憶部25は、認証用識別情報(単に、識別情報とも言う)と、生体認証の比較対象情報となる比較対象生体情報とによって構成される認証用情報が記憶されるものである。送信制御部24は、認証の際に上記信号送受信部22を制御して上記認証端末30へ上記認証用情報記憶部25に記憶された認証用情報を送信させるものである。
【0017】
上記認証端末30には、生体情報取得部33と認証処理部34とが備えられている。生体情報取得部33は、認証対象者から認証用の生体情報を取得するものであり、生体情報が指紋であればイメージスキャナにより構成され、虹彩認証であれば虹彩認証センサにより構成され、顔認証であればカメラにより構成され、その他認証に用いる生体情報によって対応するセンサによって構成される。認証処理部34は、上記電界式人体通信により送られてくる認証用情報と、上記生体情報取得部により取得された生体情報及び自らが記憶している識別情報とを比較して、認証を行うものである。ここに、認証用情報は、文字列などの識別情報(ID)、生体情報により構成されるものとする。
【0018】
図2は、認証用情報記憶部25に記憶される比較対象生体情報を得るための生体情報読取装置40の構成を示すブロック図である。生体情報読取装置40は、生体情報取得部33と同じ構成の生体情報取得部41と、比較対象生体情報作成部42とを備えている。取得した生体情報のノイズ除去や正規化等の処理である比較対象生体情報作成を行うものである。比較対象生体情報作成部42により作成された比較対象生体情報は、記憶媒体43に記憶される。記憶媒体43に比較対象生体情報が記憶された状態においては、生体情報読取装置40は、生体情報取得部41により生体情報の取得を行い、記憶媒体43に記憶されている比較対象生体情報と比較対象生体情報作成部42により比較を行って所定の手法により類似度(尤度)を得て当該比較対象生体情報と共に記憶媒体43に記憶する。1回の生体情報の取得毎に、この処理を行い、N通りの比較対象生体情報を記憶媒体43に記憶する。
【0019】
記憶媒体43が、生体情報記憶端末20の図示しない情報転送部にセットされると、記憶されているN通りの比較対象生体情報(類似度情報と共に記憶されている)が認証用情報記憶部25へ転送される。この状態で生体情報記憶端末20を用いることができる。生体情報読取装置40は、本実施形態の認証システムが職場や公共施設において用いられる場合には、その職場や公共施設など認証がなされる場所に、認証端末とは別に数台設置しておくことができる。勿論、生体情報記憶端末20を使用する人が生体情報読取装置40を持っていても良い。
【0020】
図3は、生体情報読取装置40によってN通りの比較対象生体情報(類似度情報と共に記憶)が記憶された認証用情報記憶部25の記憶内容を示す。この
図3に示す例では、識別情報が記憶されているが、この識別情報は生体情報記憶端末20の入力部26を用いて入力し記憶することができる。
【0021】
図4は、認証処理部34に記憶されている認証対象者の識別情報の記憶例であり、この認証端末30が担当する人数分の識別情報が記憶されている。この識別情報は認証端末30の入力部36を用いて入力し、制御部35によって記憶することができる。
【0022】
本実施形態において、上記認証処理部34は、識別情報のみによる認証を行うのか及びいずれの種の生体認証を行うのかを示すセキュリティ情報を参照し、このセキュリティ情報に基づいて認証処理を行う。上記送信制御部24は、上記認証端末30の上記認証処理部34が、識別情報のみによる認証を行うのか、または識別情報及び生体認証を行うのかに拘わらず、上記認証用情報記憶部25から識別情報及び比較対象生体情報を取り出し、送信する。
【0023】
図3に示したように、上記認証用情報記憶部25には、1種類の生体認証(例えば指紋認証)に対して複数候補の比較対象生体情報が記憶されている。上記認証処理部34は、認証を行った結果が不一致の場合に、次の候補に係る比較対象生体情報の送信要求情報を上記送信制御部24へ送るように構成されている。上記送信制御部24は、上記認証処理部34から送られてくる次の候補に係る比較対象生体情報の送信要求情報に応じて、対応する比較対象生体情報の次候補を上記認証用情報記憶部25から取り出し、上記信号送信部として機能する信号送受信部22を制御して送信させるものである。
【0024】
上記認証処理部34は、生体認証を行った結果が一致の場合に、認証に用いた認証対象者から取得した認証用の生体情報を上記認証用情報記憶部25へ記憶するために送信するように構成されている。本実施形態では、上記生体情報記憶端末20には、生体認証に用いた認証対象者から取得した認証用の生体情報を所定の場合に上記認証用情報記憶部25へ記憶する記憶制御部23が具備されている。ここに、所定の場合とは、認証対象者から取得した認証用の生体情報の類似度情報が所定値以上であり、かつ上記認証用情報記憶部25に記憶されている比較対象生体情報の最低類似度より大きな場合である。上記認証用情報記憶部25に記憶されている最低類似度の比較対象生体情報は、削除される。生体情報記憶端末20から認証端末30へ送信した比較対象生体情報であって、生体認証を行った結果が不一致の場合の比較対象生体情報を、上記認証用情報記憶部25から削除するようにしても良い。
【0025】
図5は、本発明に係る第1の実施形態における認証システムの生体情報記憶端末20による動作を示すフローチャートであり、
図6は、本発明に係る第1の実施形態における認証システムの認証端末30による動作を示すフローチャートである。これら
図5、
図6を用いて生体情報記憶端末20と認証端末30の動作説明を行う。生体情報記憶端末20の送信制御部24は、認証用情報記憶部25へ記憶されている識別情報と比較対象生体情報(第1候補)を読み出し、信号送信部として機能する信号送受信部22を制御して識別情報と比較対象生体情報(第1候補)を送信する(S11)。これに対し、認証端末30の認証処理部34は、電界式人体通信により人体10を介して信号受信部として機能する信号送受信部32へ到来する識別情報と比較対象生体情報(第1候補)を受け取り(S21)、受け取った識別情報と自らが記憶している識別情報とを比較して、一致するものがあるかを検出する処理である認証を行う(S22)。
【0026】
ここで、認証処理部34が不一致を検出すると認証不一致の後続処理を行う(S29)。認証不一致の後続処理では、認証処理部34から認証不一致の情報を受けた制御部35が、信号送受信部32へ指示を与えて生体情報記憶端末20へ不一致の情報を送信させ、また認証結果を用いる図示しない装置(ドア施錠の開放を行う装置や銀行のキャッシング端末など)へ不一致の情報を送って認証がなされたときに実行する処理へ進まないようにする。この場合、生体情報記憶端末20ではステップS12において「不一致」に分岐してステップS13へ進み、更にステップS13においてNOへ分岐してステップS15へ進み、ステップS15においてNOへ分岐して処理を終了する。
【0027】
上記に対し、認証端末30がステップS22において一致の認証を得た場合には、認証処理部34はセキュリティ情報が生体認証を必要としているかを判定する(S23)。ここで、NOへ分岐すると、認証一致の後続処理を行う(S26)。このときには取得した生体情報がないので、生体情報記憶端末20へ送信することはない。認証一致の後続処理では、認証結果を用いる図示しない装置(ドア施錠の開放を行う装置や銀行のキャッシング端末など)へ一致の情報を送って認証がなされたときに実行される処理へ進むことになる。
【0028】
また、認証端末30が、セキュリティ情報が生体認証を必要としていることを検出して、ステップS23においてYESへ分岐すると、生体情報取得部33が認証対象者から認証用の生体情報を取得し、この生体情報とステップS21において受信した比較対象生体情報を比較する(S24)。ステップS24に続いて認証処理部34は比較の結果、一致したか不一致となったかを判定することによって認証結果の判定を行う(S25)。このステップS25で不一致へ分岐すると、認証端末30は生体情報記憶端末20へ次の候補の比較対象生体情報の送信要求を送り(S27)、次の候補の到来を待ち(S28)、次の候補が到来すると、ステップS24へ戻って処理を続ける。
【0029】
認証端末30によるステップS25における不一致への分岐の結果、生体情報記憶端末20ではステップS12において不一致へ分岐することになり、送信要求があったかを検出すると共に比較対象生体情報の次候補が記憶されているかを検出する(S13)。N個の次候補が生体情報記憶端末20から送られていない限りにおいて、送信制御部24は、認証用情報記憶部25から識別情報と次候補の比較対象生体情報を読み出し認証端末30へ送信する(S14)。この送信が終わると生体情報記憶端末20は、ステップS12へ戻って処理を続ける。
【0030】
生体情報記憶端末20は、ステップS12において一致へ分岐しない限り、またはステップS13においてNOへ分岐しない限り、ステップS12からステップS14の処理が続けられる。生体情報記憶端末20は、ステップS12において一致へ分岐した場合、またはステップS13においてNOへ分岐した場合には、ステップS15へ進む。
【0031】
生体情報記憶端末20がステップS12において一致へ分岐し認証結果が一致となったときには、その前に認証端末30がステップS25の判断を行って、ステップS25において一致へ分岐し、ステップS26へ進んでいる。認証端末30は、ステップS26において認証一致の後続処理を行う。また、認証端末30には、取得した生体情報が存在するため、この生体情報が生体情報記憶端末20へ送信される。これを受けて生体情報記憶端末20は、ステップS15において認証端末30において取得された生体情報の到来を検出してYESへ分岐することになる。生体情報記憶端末20では、この到来した生体情報を類似度に応じて比較対象生体情報として認証用情報記憶部25に記憶する。即ち、認証対象者から取得した認証用の生体情報の類似度情報が所定の値以上であり、かつ上記認証用情報記憶部25に記憶されている比較対象生体情報の最低類似度より大きな場合に記憶する。この場合、認証用情報記憶部25に記憶されている最低類似度の比較対象生体情報は、削除される。即ち、比較対象生体情報の記憶更新処理が行われる。
【0032】
また、生体情報記憶端末20は、ステップS13においてNOへ分岐した場合には、ステップS15へ進み、ステップS15においてNOへ分岐して処理を終了する。
【0033】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る認証システムの構成図である。本実施形態では、生体情報記憶端末20Aの認証用情報記憶部25Aには、種類の異なる生体認証に用いられる複数種の比較対象生体情報が記憶されている。
図8は、第2の実施形態の認証用情報記憶部25Aの記憶内容を示す。N通りの第1種比較対象生体情報(類似度情報と共に記憶)が記憶された記憶ブロック28Aと、N通りの第2種比較対象生体情報(類似度情報と共に記憶)が記憶された記憶ブロック28Bとを備えている。第1種比較対象生体情報は指紋認証の情報であり、第2種比較対象生体情報は虹彩認証の情報とすることができる。勿論、3種類以上の比較対象生体情報が記憶されていても良い。送信制御部24Aは、複数種の比較対象生体情報を前記認証用情報記憶部25Aから取り出し、信号送信部の機能を実現する信号送受信部22を制御して送信させるものである。記憶制御部23Aは、生体認証に用いた認証対象者から取得した認証用の第1種生体情報と第2種生体情報を所定の場合に第1種比較対象生体情報と第2種比較対象生体情報として上記認証用情報記憶部25Aへ記憶するものである。生体情報記憶端末20Aの他の構成は、生体情報記憶端末20の構成と同じである。
【0034】
本実施形態の認証端末30Aは、第1の実施形態に係る認証端末30の構成に、生体情報取得部33Aと認証処理部34Aとを加えたものである。生体情報取得部33と認証処理部34とが第1種生体情報に対する構成(指紋用)であるのに対し、生体情報取得部33Aと認証処理部34Aとは、第2種生体情報に対する構成(虹彩用)である。
【0035】
本実施形態では、セキュリティ情報が第1種生体認証と第2種生体情報を必要としているものとする。
図9は、本発明に係る第2の実施形態における認証システムの動作を示すフローチャートである。認証処理は、生体認証の種類が増えただけで、第1の実施形態で説明したものと同様であるから、詳細は省略する。本実施形態では、生体情報記憶端末20Aから識別情報、第1種比較対象生体情報及び第2種比較対象生体情報が送られ、まず識別情報による認証が行われる(S31)。これは、認証端末30Aの認証処理部34が受け取った識別情報と自らが記憶している識別情報とを比較して、一致するものがあるかを検出する処理である認証を行うものである。ここで、認証処理部34が不一致を検出する(S32)と認証不一致の後続処理を行う(S38)。認証不一致の後続処理では、認証処理部34から認証不一致の情報を受けた制御部35が、信号送受信部32へ指示を与えて生体情報記憶端末20Aへ不一致の情報を送信させ、また認証結果を用いる図示しない装置(ドア施錠の開放を行う装置や銀行のキャッシング端末など)へ不一致の情報を送って認証がなされたときに実行する処理へ進まないようにする。
【0036】
識別情報の認証処理で一致となると、第1種の生体情報を用いた認証処理を行う(S33)。認証結果の判定ステップS34において不一致を検出すると認証不一致の後続処理を行う(S38)。認証結果の判定ステップS34において一致を検出すると第1種の生体情報の記憶更新処理を行い、更に、第2種の生体情報を用いた認証処理を行う(S35)。
【0037】
次に、認証結果の判定ステップS36が行われ、不一致を検出すると認証不一致の後続処理を行う(S38)。認証結果の判定ステップS36において一致を検出すると認証一致の後続処理を行うと共に第2種の生体情報の記憶更新処理を行う(S37)。以上のようにして、セキュリティの高い認証処理がなされる。
【0038】
本発明の実施形態に係る認証システムでは、電界式人体通信を採用している。この電界方式は、人の周りに存在している静電気のようなごく微弱な電気の膜と考えることができる“電界”を用い、人体の表面に発生する電界の変化を利用して情報を伝達するものである。この電界方式の問題点は、物理的な通信線を使用しないがために、基準電位を合わせられないといった点にある。それが故に、外界からのノイズを多く受けるため、ノイズ除去が課題である。
【0039】
本発明の実施形態において信号送受信部22や信号送受信部32が送信側となるときには、帯電電圧の低減や帯電電圧の周波数の少ない周波数の利用を図ることによりノイズの低減を図っている。また、本発明の実施形態において信号送受信部22が受信側となるときは、人体による伝送路で重畳されたノイズを含んだ受信信号から真の信号を的確に取り出せるように構成してある。
【0040】
図10は、本発明の実施形態において信号送受信部22や信号送受信部32が送信側となるときの信号送受信部200の第1の実施形態を示す構成図である。信号送受信部200は、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を上記電極31(21)へ送信する送信信号生成部202を有している。信号送受信部200には、
図10に示されるように、帯電電圧周波数検出手段208、送信周波数制御手段209が備えられている。帯電電圧周波数検出手段208は、電極31(21)を介して上記人体10の帯電電圧の周波数を検出するものである。送信周波数制御手段209は、上記帯電電圧周波数検出手段208を動作させて上記人体10の帯電電圧の周波数を検出させると共に、上記送信信号生成部202を制御し、上記帯電電圧周波数検出手段208により検出された周波数を除く1周波数で送信信号を送信させるものである。なお、上記帯電電圧周波数検出手段208には、FFT(高速フーリエ変換)により周波数解析を行い、含まれる信号の周波数を求めることができる。
【0041】
図11は、FFT変換を示す。帯電電圧周波数検出手段208に到来する信号(
図11(a))を
図11(b)に示されるようにフーリエ級数展開して、
図11(c)に示す周波数スペクトルを得ることができる。本実施形態では、帯電電圧周波数検出手段208に到来する信号(
図11(a))をディジタル化して蓄積し、蓄積したデータを用いてFFT変換を行い、周波数スペクトルを得る。
【0042】
送信信号生成部202は、
図12(b)に示すような0、1により構成されるデータ(前述の例では、識別情報や生体情報)を送信する場合、搬送波を
図12(a)に示す変調信号で変調して
図12(c)に示す被変調信号として送信する。即ち、搬送波は
図12(c)のパルスが連続した信号である。従って、データ(
図12(b))については、1の場合に1周期(1H)にHとLとが続く信号とし、0の場合に1周期(1H)に全てLが続く信号として、変調信号(
図12(a))を作成し、変調信号(
図12(a))により搬送波を変調して被変調信号(
図12(c))を得て送信する。即ち、送信制御部24は、認証の際に上記信号送受信部22を制御して上記認証端末30へ上記認証用情報記憶部25に記憶された認証用情報を送信させる場合に、この認証用情報は送信信号生成部202に与えられるものである。
【0043】
送信信号生成部202は、33MHz、100MHz、123MHz、・・・などの複数の周波数で送信可能であり、送信周波数制御手段209の指示により、人体10の帯電電圧の周波数と重ならない周波数を用いて送信でき、送信信号がノイズと混合するなどの通信状態の悪化を避けることが可能である。
【0044】
図13は、本発明に係る認証システムの実施形態において信号送受信部22や信号送受信部32が受信側となるときの第1の実施形態である信号送受信部300の構成図である。信号送受信部300は、人体10と容量結合する電界式人体通信用の電極に接続されている。信号送受信部300は電極を介して受信した受信信号の復元化等を行う受信信号復元部302を有している。
【0045】
この受信信号復元部302には、複数(ここでは、4つ)の電極301-1~301-4が接続され、高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換手段であるFFT手段314-1~314-4が具備されている。受信信号復元部302では、全ての上記電極301-1~301-4から信号を受信して時系列に(ディジタル化して)蓄積し、上記FFT手段314-1~314-4に上記電極301-1~301-4毎の蓄積した信号を与えて高速フーリエ変換し、高速フーリエ変換した結果に基づき上記生体情報記憶端末20(20A)の上記信号送受信部200から送信されて到来する送信信号を復元する。
【0046】
図14は、本実施形態に係る信号送受信部300の受信信号復元部302が行う処理動作の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、認証用情報(識別情報)を受信する場合を例とする。まず、全ての電極で同時に信号の受信処理を行い、フィルタなどによりノイズ除去をして、受信した通常のアナログ信号とする(S41)。次に、電極毎に信号をディジタル化して電極毎に時系列に並べて蓄積する(S42)。電極毎の時系列データをFFT変換する(S43)。更に、電極毎のFFT変換結果を積算し、最大の周波数を送信信号の周波数と特定する(S44)。
【0047】
次に、蓄積された電極毎の時系列データを所定時間毎にFFT変換する(S45)。更に、時間単位で電極毎のFFT変換結果を積算し、送信信号の周波数と特定された周波数成分の大きさを閾値と比較し、時間単位で0または1に変換する(S46)。0と1のデータ列を所定ビット単位で文字化して保存する(S47)。保存された文字列が認証用情報と一致しているかを検出する(S48)。ここで、認証用情報と一致している場合には、認証完了として次の処理へ進む(S49)。一方、このステップS48においてNOとなるとステップS41へ戻って処理を続ける。
【0048】
図15は、本発明に係る認証システムの実施形態において信号送受信部22や信号送受信部32が受信側となるときの第2の実施形態である信号送受信部300Aの構成図である。この第2の実施形態である信号送受信部300Aは、受信信号復元部302Aを有している。受信信号復元部302Aには、第1の電極301-1と第2の電極301-2との2つの電極が接続され、第1のサンプリング回路315、第2のサンプリング回路316、信号変形手段317、2値化回路318、データ取出手段319が備えられている。第1のサンプリング回路315は、上記第1の電極301-1から第1のタイミングで所定期間信号を受信するものである。第2のサンプリング回路316は、上記第2の電極301-2から上記第1のタイミングと異なる第2のタイミングで上記所定期間信号を受信するものである。
【0049】
更に、信号変形手段317は、上記第1のサンプリング回路315で受信した信号と上記第2のサンプリング回路316で受信した信号の和信号または積信号を求めるものである。また、2値化回路318は、上記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化するものである。更に、データ取出手段319は、2値化のHレベルが連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すものである。
【0050】
具体例で示すと、
図16に示すようである。第1のサンプリング回路315は、第1の電極301-1から(a)により示すクロックの立ち上がりである第1のタイミングで所定期間、信号を受信するものである。第2のサンプリング回路316は、第2の電極301-2から(b)により示すクロックの立ち上がりである第2のタイミングで所定期間、信号を受信するものである。
【0051】
第1のサンプリング回路315により受信した信号が
図17(c)のようであり、第2のサンプリング回路316により受信した信号が
図17(d)のようであった場合に、信号変形手段317が信号の和算を行った場合には、
図17(e)の如き和信号が得られる。これを波高閾値THにより2値化回路318で2値化すると、
図17(f)のようにHレベルとLレベルとが存在する信号となる。データ取出手段319は、これを所定の時間幅で0と1へ変換し、
図17(f)の波形の下に示すように、10101110000・・・の如きデータを取得することができる。
【0052】
図18は、本発明に係る認証システムの実施形態において信号送受信部22や信号送受信部32が受信側となるときの第3の実施形態である信号送受信部300Bの構成図である。この第3の実施形態に係る信号送受信部300Bは、受信信号復元部302Bを有している。受信信号復元部302Bは、第1の電極301-1と第2の電極301-2とからなる2つの電極が接続され、第1の周波数受信回路321、第2の周波数受信回路322、信号変形手段317、2値化回路318、データ取出手段319を備えている。第1の周波数受信回路321は、上記第1の電極301-1から所定時間毎のサンプリングを第1の周波数で行って信号を受信するものである。第2の周波数受信回路322は、上記第2の電極301-2から所定時間毎のサンプリングを第2の周波数で行って信号を受信するものである。
【0053】
図19は、本発明に係る認証システムが備える第3の実施形態である信号送受信部300Bに備えられる第1の周波数受信回路と第2の周波数受信回路との動作を説明するための波形図である。即ち、
図19の(g)に示すような1受信区間に対し、第1の周波数受信回路321は、サンプリングを第1の周波数(
図19の(h)に示す)で行って信号を受信する。第2の周波数受信回路322は、サンプリングを第2の周波数(
図19の(i)に示す)で行って信号を受信する。別言すれば、第1の周波数受信回路321は、
図19の(h)に示すパルスのパルス幅でサンプリングを行い、第2の周波数受信回路322は、
図19の(i)に示すパルスのパルス幅でサンプリングを行う。この例では、第1の周波数受信回路321の周波数は、第2の周波数受信回路322の周波数の2倍である。
【0054】
図20は、この第3の実施形態に係る信号送受信部300Bにおける要部の動作を説明するための波形図である。第1の周波数受信回路321により受信した信号が
図20(j)のようであり、第2の周波数受信回路322により受信した信号が
図20(k)のようであった場合に、信号変形手段317が信号の和算を行った場合には、
図20(l)の如き和信号が得られる。これを波高閾値THにより2値化回路318で2値化すると、
図20(m)のようにHレベルとLレベルの信号とが存在する信号となる。データ取出手段319は、これを所定の時間幅で0と1へ変換し、
図20(m)の波形の下に示すように、10101110000・・・の如きデータを取得することができる。
【0055】
上記
図17と
図20のように2値化した場合であっても、正しい信号成分であるか否かを判断するため、次の手法を採用することができる。信号送受信部200と信号送受信部300A(300B)を有する本実施形態の認証システムでは、信号送受信部300A(300B)において正しい信号の1ビット分のパルス幅(
図20に示す時間tbit)は既知である。このパルス幅(時間tbit)に対して“H”となっている信号成分の時間tHを判断材料とする。即ち、時間tbitに対して時間tHが8割以上の長さを有した場合に正しい信号成分と判断する。ここで8割とした理由を説明する。その理由は、5割では誤検出が1/2となり、正しい信号成分であると、確度の高い判断ができない。また、7割程度の場合には、ノイズの影響で信号の先頭が欠けたり、信号の無い時間帯の部分でノイズによる信号が重畳したりという現象が生じた場合に、信号誤検出率が上がってしまう。一方、8割以上に設定することで、「信号あり」と「信号なし」のそれぞれについて誤検出の要因は少なくなり、実際の検証においても、誤検出がほぼなくなることが確かめられた(ただし、7割以下であっても信号の有無は判断しなければならない)。
【0056】
図21に第3の実施形態である信号送受信部300Bが採用した手法により、4個の電極とその受信信号を用いてデータを取得した場合の動作時の波形例を示す。
図21(a)は2値化された本来の信号を示し、
図21(b)は0と1にデータ化したデータを示す。また、
図21(c)、(d)、(e)、(f)は、4個の電極毎で用いた周波数に対応するクロックである。
図21(g)は4個の信号の和信号を示すものである。本発明に係る認証システムの実施形態において、信号送受信部300Bは、信号送受信部22や信号送受信部32が受信側となるときの第3の実施形態の構成(
図18)である。
【0057】
4個の信号の和信号(
図21(g))に明らかな通り、データ1となるべき部分中のH部分が誇張され、正確なデータ取得ができるであろうことが判る。データ1となるべき部分においてもHとLが交互に繰り返される範囲があるが、このHとLが交互に繰り返される範囲中のHとなっている幅(時間)の合計とLとなっている幅(時間)の合計の比較から多数決でHであるかLであるかを判定してもよい。
【0058】
第2の実施形態に係る信号送受信部300Aであっても、第3の実施形態に係る信号送受信部300Bであっても、また、その他の信号送受信部300においても、電極から受信した信号にローパスフィルタを用いて信号処理すると正確なデータ取得ができるであろうことが判る。即ち、電極から受信した信号(ローパスフィルタ使用前)を
図22に示し、電極から受信した信号(ローパスフィルタ使用後)を
図23に示す。これらの信号に付加した2値化する場合に波高閾値THによって2値化を行うことを考えると、ローパスフィルタを用いると好適であることが一目瞭然である。
【0059】
上記第2の実施形態に係る信号送受信部300Aであっても、第3の実施形態に係る信号送受信部300Bであっても、受信用に電極を2個用いたものを示したが、一般的には複数個とすることができ、各電極によって受信した信号についての処理手法は、上記第2の実施形態に係る信号送受信部300Aの処理手法であっても、第3の実施形態に係る信号送受信部300Bの処理手法であっても良い。
【0060】
本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10・・・人体、20、20A・・・生体情報記憶端末、21、31・・・電極、22、32・・・信号送受信部、23、23A・・・記憶制御部、24、24A・・・送信制御部、25、25A・・・認証用情報記憶部、26、36・・・入力部、28A、28B・・・記憶ブロック、30、30A・・・認証端末、33、33A・・・生体情報取得部、34、34A・・・認証処理部、35・・・制御部、40・・・生体情報読取装置、41・・・生体情報取得部、42・・・比較対象生体情報作成部、43・・・記憶媒体、200・・・信号送受信部、202・・・送信信号生成部、208・・・帯電電圧周波数検出手段、209・・・送信周波数制御手段、300、300A、300B・・・信号送受信部、302、302A、302B・・・受信信号復元部、314-1~314-4・・・FFT手段、315・・・第1のサンプリング回路、316・・・第2のサンプリング回路、317・・・信号変形手段、318・・・2値化回路、319・・・データ取出手段、321・・・第1の周波数受信回路、322・・・第2の周波数受信回路