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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143448
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20230928BHJP
【FI】
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050831
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】石川 理朋
(72)【発明者】
【氏名】二宮 祐太
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501BB05
5H501BB11
5H501BB20
5H501DD04
5H501EE01
5H501FF01
5H501FF02
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501PP02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バックラッシュが存在する駆動系に設けられたモータの回転出力を安定的に制御可能なモータ装置を提供する。
【解決手段】ロータQと、ピニオンギヤRと、減速機Gと、制御部12と、を備える。ロータQは、回転軸を中心に回転する出力軸Sが設けられている。ピニオンギヤRは、出力軸Sに設けられている。減速機Gは、ピニオンギヤRと噛み合って動作する。制御部12は、ロータQの回転を制御する。制御部12は、ロータQの回転起動において、第1加速指令に基づいてロータQを第1回転速度以下で回転させ、ロータQが所定回転角となった際に、第1回転速度に比して高速である第2回転速度に加速する第2加速指令に基づいてロータQを回転させ、ピニオンギヤRと減速機Gとの間に生じるバックラッシュを解消するバックラッシュ解消制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転する出力軸が設けられたロータと、
前記出力軸に設けられたピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤと噛み合って動作する減速機と、
前記ロータの回転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ロータの回転起動において、第1加速指令に基づいて前記ロータを第1回転速度以下で回転させ前記ピニオンギヤと前記減速機との間に生じるバックラッシュを解消するバックラッシュ解消制御を行い、前記ロータが所定回転角となった際に、前記第1回転速度に比して高速である第2回転速度に加速する第2加速指令に基づいて前記ロータを回転させる、モータ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1加速指令に基づいて前記ロータを所定時間以上回転させ、
前記所定時間は、前記バックラッシュが解消される前記所定回転角以上に前記ロータを回転させる時間である、
請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1加速指令に基づいて、前記ロータを前記所定回転角以上に回転させ、
前記所定回転角は、前記バックラッシュが解消される回転角である、
請求項1または2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ロータの停止状態からの起動時に前記バックラッシュ解消制御を行う、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ロータの第1回転方向から反転する第2回転方向の切り替え時に前記バックラッシュ解消制御を行う、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ロータの減速状態からの加速時に前記バックラッシュ解消制御を行う、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ロータの空転状態からの加速時に前記第1加速指令に基づいて前記ロータを空転時における前記第1回転速度で回転させる前記バックラッシュ解消制御を行い、前記ロータが前記所定回転角となった際に、前記第2加速指令に基づいて前記ロータを前記第2回転速度に加速する、
請求項1から6のうちいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項8】
前記減速機は、
前記ピニオンギヤと第1バックラッシュを持って噛み合う第1ギヤと、
前記第1ギヤと前記出力軸との間に第2バックラッシュを有する少なくとも1つの減速機構とを備える、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項9】
前記減速機は、
前記ピニオンギヤと第1バックラッシュを持って噛み合う複数の第1遊星ギヤと、
前記第1遊星ギヤを回転自在に支持する軸と、前記軸と一体に回転する第1キャリアと、
前記第1遊星ギヤと、第2バックラッシュを持って噛み合う第1内歯ギヤとを少なくとも備える、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、三相モータと、三相モータを制御する制御装置を備えたモータ装置が記載されている。モータ装置のモータは、サーボのように減速機が組み合わされて用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/026110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータに減速機が設けられている場合、モータの出力軸に設けられたピニオンギヤは、減速機に設けられたギヤと噛み合い、モータの回転出力が減速機に入力される。ピニオンギヤと減速機に設けられたギヤとの間及び減速機内部に設けられた複数のギヤを有する減速機構には、バックラッシュが存在している。モータの回転出力を減速機に入力する場合、バックラッシュが解消するまでの回転角においてモータの出力軸は無負荷で回転し、バックラッシュが解消した後、各ギヤがそれぞれ噛み合い、モータの回転駆動力が減速機に伝達される。この際、モータのへ負荷は、無負荷状態からギヤが噛み合った瞬間に急増し、制御装置の制御が追従せずにモータに流れる電流が急増し、モータの回転が不安定になる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、バックラッシュが存在する駆動系に設けられたモータの回転出力を安定的に制御可能なモータ装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータ装置の一つの態様は、ロータと、ピニオンギヤと、減速機と、制御部と、を備える。ロータは、回転軸を中心に回転する出力軸が設けられている。ピニオンギヤは、前記出力軸に設けられている。減速機は、前記ピニオンギヤと噛み合って動作する。制御部は、前記ロータの回転を制御する。前記制御部は、前記ロータの回転起動において、第1加速指令に基づいて前記ロータを第1回転速度以下で回転させ、前記ピニオンギヤと前記減速機との間に生じるバックラッシュを解消するバックラッシュ解消制御を行い、前記ロータが所定回転角となった際に、前記第1回転速度に比して高速である第2回転速度に加速する第2加速指令に基づいて前記ロータを回転させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、バックラッシュが存在する駆動系に設けられたモータの回転出力を安定的に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のモータ装置の構成を示す図である。
図2図2は、一実施形態の減速機の構成を示す図である。
図3図3は、モータ装置の性能の試験結果を示す図である。
図4図4は、比較例のモータ装置の性能の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図には、本実施形態のモータ装置1の中心軸L1を仮想的に示している。また、各図には、中心軸L1が延びる方向を示すZ軸を示している。以下の説明においては、中心軸L1が延びる方向、つまりZ軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸L1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸L1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「軸方向一方側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。図1において、軸方向は左右方向であり、軸方向一方側は左側であり、軸方向他方側は右側である。
【0010】
図1に示されるように、モータ装置1は、回転出力を出力するモータMと、モータMの回転出力を減速しトルクを増強して出力する減速機Gと、モータMを制御する制御装置10とを備えている。モータMは、例えば、ブラシレスDCモータである。モータMは、例えば、ハウジングHと、ハウジングH内に設けられたロータQと、ロータQの回転出力を伝達する出力軸Sと、出力軸Sに設けられたピニオンギヤRと、を備えている。
【0011】
ハウジングHは、円筒形である。ハウジングHの軸方向一方側の開口及び軸方向他方側の開口は円板状の蓋(不図示)が設けられている。ハウジングHは、内部においてロータQを回転可能に支持している。ロータQは、中心軸L1と同軸の回転軸を中心として回転する。ロータQの軸方向一方側には、出力軸Sが設けられている。出力軸Sは、ハウジングHの軸方向一方側から突出している。出力軸Sは、ハウジングHの軸方向一方側からロータQの回転出力を出力する。出力軸Sの軸方向一方側には、複数のギヤ歯を有するピニオンギヤRが設けられている。ピニオンギヤRには、減速機Gが噛み合っている。
【0012】
減速機Gは、ピニオンギヤRと噛み合って動作する。減速機Gは、例えば、ピニオンギヤRと第1バックラッシュを持って噛み合う第1ギヤG1と、第1ギヤG1と出力軸Sとの間に第2バックラッシュを有する少なくとも1つの減速機構GMとを備える。第1ギヤG1は、ピニオンギヤRに比して多いギヤ歯を有する。第1ギヤG1は、中心軸L2を中心に回転する。減速機構GMは、例えば、第1ギヤG1と同軸に設けられ、第1ギヤG1に比して少ないギヤ歯を有する第1ピニオンギヤR1と、第1ピニオンギヤR1と噛み合う第2ギヤG2とを備えている。第2ギヤG2は、第1ピニオンギヤR1に比して多いギヤ歯を有している。第2ギヤG2は、中心軸L3を中心に回転する。第2ギヤG2は、例えば、第1出力軸F1を備えている。第1出力軸F1は、出力軸Sの回転数に比して低い回転数により回転し、回転トルクを増強して出力する。減速機構GMは、1つ以上の多段に連続して設けられていてもよい。この場合、多段に設けられた複数の減速機構GMを有する減速機G全体が第2バックラッシュを有する。多段に設けられた複数の減速機構GMを有する減速機Gは、段階的に回転数を減じると共に、出力軸Sに対する最終減速比に基づいて回転トルクを増強して出力する。
【0013】
図2に示されるように、減速機Gは、遊星ギヤにより構成されていてもよい。減速機Gは、Rピニオンと第1バックラッシュを持って噛み合う3つの第1遊星ギヤY1(遊星ギヤ)と、第1遊星ギヤY1を回転自在に支持する軸GSと、軸GSと一体に回転する第1キャリアC1(キャリア)と、第1遊星ギヤY1と、噛み合う第1内歯ギヤU1(内歯ギヤ)とを少なくとも備える。第1内歯ギヤU1には、第1出力軸(不図示)を備えている。第1遊星ギヤY1は、3つ以上設けられていてもよい。遊星ギヤにより構成された減速機Gは、1つ以上の多段に連続して設けられていてもよい。この場合、多段に設けられた減速機G全体が第2バックラッシュを有する。多段に設けられた減速機Gは、段階的に回転数を減じると共に、出力軸Sに対する最終減速比に基づいて回転トルクを増強して出力する。この場合、減速機Gにおいて、遊星ギヤ及びキャリアは第1ギヤに相当し、内歯ギヤは第2ギヤに相当する。
【0014】
図1に戻り、モータMには、制御装置10が電気的に接続されている。制御装置10は、ロータQの回転起動において、ピニオンギヤRと減速機Gとの間に生じるバックラッシュを解消するバックラッシュ解消制御を行う。制御装置10は、例えば、ロータQの回転を制御する制御部12と、制御に必要なデータを記憶する記憶部14とを備えている。記憶部14は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等により構成された非一時的な記憶媒体である。記憶部14は、制御に必要な演算式を実行するプログラムや、データを記憶している。
【0015】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。これらの各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶部14が有するHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0016】
制御部12は、例えば、モータMの回転起動において、モータMに設けられたピニオンギヤRと減速機Gとの間に生じるバックラッシュを解消するバックラッシュ解消制御を行う。回転起動とは、例えば、バックラッシュが生じる無負荷の状態からロータQを回転する制御である。制御部12は、例えば、ロータQの回転起動において、第1加速指令に基づいてロータQを低速回転の第1回転速度以下で回転させる。第1加速指令は、ロータQを停止状態から加速させ、第1回転速度以下に保持する指令値である。制御部12は、ピニオンギヤRと減速機Gとの間に生じるバックラッシュが解消するまでロータQを第1回転速度以下に保持して回転させる。
【0017】
制御部12は、例えば、バックラッシュが解消するロータQが所定回転角となった際に、第1回転速度に比して高速である第2回転速度に加速する第2加速指令に基づいてロータQを回転させる。所定回転角は、バックラッシュが解消するロータQの回転角度である。所定回転角は、例えば、総バックラッシュ1度*減速比30とすれば30度程度となる。例えば、0.7度のバックラッシュを設けた1/3、1/2、1/4のギヤ列がある場合の総バックラッシュは、0.7/2/4+0.7/4+0.7=0.9625、となる。この場合のロータQの回転角は、0.9625×3×2×4=23.1度となる。所定回転角は、モータMと減速機Gに設けられた第1バックラッシュ及び第2バックラッシュの個体差に基づいて予め決められる。所定回転角は、バックラッシュが確実に解消するまでのロータQの最大回転角以上である。制御部12は、例えば、第1加速指令に基づいてロータQを所定時間以上回転させ、ロータQを所定回転角まで回転させる。所定時間は、第1バックラッシュと第2バックラッシュとが解消される所定回転角以上にロータQを回転させる時間である。制御部12は、所定時間の間、第1加速指令に基づいてロータQを加速させると共に、第1回転速度以下で回転させる。制御部12は、ロータQの回転の検出値が得られる場合、検出値に基づいて所定回転角までロータQを第1回転速度以下で回転させてもよい。
【0018】
第2回転速度は、第1回転速度に比して高速である任意の回転速度である。第2加速指令は、ロータQを第1回転速度以下に保持された状態から第2回転速度に加速させる指令値である。制御部12は、例えば、ロータQが第2回転速度に達した場合、ロータQを第2回転速度に保持してもよいし、第2回転速度以上に加速してもよい。
【0019】
制御部12は、例えば、ロータQの停止状態からの起動時の回転起動においてロータQにバックラッシュ解消制御を行う。ロータQが停止している場合、無負荷状態であり、モータMと減速機Gとの間にバックラッシュが存在する。ロータQの停止状態からの起動時における回転起動においてロータQにバックラッシュ解消制御を行うことにより、バックラッシュが解消される際に比較的低速でギヤ歯同士が接触するので、負荷が急増することを抑制できる。これにより、モータMに流れる電流が急増することを抑制することができる。また、バックラッシュ解消制御の後に、高速に回転させることで、ロータQの立ち上がり時間を短くできる。
【0020】
また、制御部12は、ロータQが反転する際の回転起動においてバックラッシュ解消制御を行ってもよい。制御部12は、例えば、ロータQの第1回転方向から反転する第2回転方向の切り替え時にバックラッシュ解消制御を行う。ロータQが反転する場合の回転の切り替え時において、ロータQは一瞬、無負荷状態となり、モータMと減速機Gとの間にバックラッシュが発生する。ロータQの反転時における回転起動においてバックラッシュ解消制御を行うことにより、バックラッシュが解消される際に比較的低速でギヤ歯同士が接触するので、負荷が急増することを抑制できる。これにより、モータMに流れる電流が急増することを防止抑制することができる。 また、バックラッシュ解消制御の後に、高速に回転させることで、ロータQの立ち上がり時間を短くできる。
【0021】
また、制御部12は、ロータQの減速状態からの加速時においてバックラッシュ解消制御を行ってもよい。ロータQが減速状態から加速する場合の回転数を調整する際に、ロータQは一瞬、無負荷状態となり、モータMと減速機Gとの間にバックラッシュが発生する。ロータQの減速状態からの加速時においてバックラッシュ解消制御を行うことにより、バックラッシュが解消される際に比較的低い相対速度でギヤ歯同士が接触するので、負荷が急増することを抑制できる。これにより、モータMに流れる電流が急増することを防止抑制することができる。 また、バックラッシュ解消制御の後に、高速に回転させることで、ロータQの立ち上がり時間を短くできる。
【0022】
また、制御部12は、ロータQの空転状態からの加速時の回転起動においてバックラッシュ解消制御を行ってもよい。ロータQが空転状態である場合、ロータQは無負荷状態となり、モータMと減速機Gとの間にバックラッシュが発生する。空転状態における回転速度を空転速度とする。制御部12は、例えば、ロータQの空転状態からの加速時に第1加速指令に基づいてロータQを空転速度よりも早い第1回転速度で回転させるバックラッシュ解消制御を行う。制御部12は、ロータQが所定回転角となった際に、第2加速指令に基づいてロータQを第1回転速度に比して高速の第2回転速度に加速する。ロータQの空転状態からの加速時においてバックラッシュ解消制御を行うことにより、バックラッシュが解消される際に比較的低速でギヤ歯同士が接触するので、負荷が急増することを抑制できる。これにより、モータMに流れる電流が急増することを防止抑制することができる。 また、バックラッシュ解消制御の後に、高速に回転させることで、ロータQの立ち上がり時間を短くできる。
【0023】
図3には、制御部12において実行されるバックラッシュ解消制御の一例が示されている。図3において経過時間とモータMに入力する電流との関係が示されている。ロータQが無負荷状態であり、バックラッシュが存在する場合、制御部12は、第1加速指令に基づく電流をロータQに入力し、ロータQを所定時間以上回転させる共に、所定回転角まで回転させる。制御部12は、第1バックラッシュと第2バックラッシュとが解消される所定回転角以上にロータQを回転させた後、第1回転速度に比して高速である第2回転速度に加速する第2加速指令に基づく電流をロータQに入力し、ロータQを第2回転速度で回転させる。図示するように第1加速指令区間と第2加速指令区間の切り替え時に電流値のピークが生じる。第1加速指令区間と第2加速指令区間の切り替え時において電流値はなだらかに変化し、モータMに流れる電流が急増することが抑制されている。
【0024】
図4には、比較例として、バックラッシュ解消制御を用いない場合の回転起動における制御の一例が示されている。図4において経過時間とモータMに入力する電流との関係が示されている。ロータQが無負荷状態であり、バックラッシュが存在する場合、第2回転速度に加速する加速指令に基づく電流をロータQに入力する。そうすると、ロータQは、第1バックラッシュと第2バックラッシュとが解消される所定回転角まで第2回転速度に向けて加速し、第2回転速度に達した後、第2回転速度で回転する。この場合、バックラッシュの解消時において、無負荷状態から急激に負荷状態となり、モータMに流れる電流が急増する。この場合、モータMの回転が不安定となる虞がある。
【0025】
上述したようにモータ装置1によれば、ピニオンギヤRと減速機Gとの間にバックラッシュが存在する場合に、ロータQが無負荷状態からの回転起動において制御部12がバックラッシュ解消制御を行うことにより、バックラッシュが解消される際に比較的低速でギヤ歯同士が接触するので、負荷が急増することを抑制できる。これにより、モータMに流れる電流が急増することを防止抑制することができる。 また、バックラッシュ解消制御の後に、高速に回転させることで、ロータQの立ち上がり時間を短くできる。モータ装置1によれば、ピニオンギヤRと減速機Gとの間に複数のバックラッシュが存在する場合に、第1加速指令に基づいて、所定回転角以上にロータQを回転させることにより、バックラッシュを解消することができる。モータ装置1によれば、ロータQの停止状態からの起動時にバックラッシュ解消制御に基づいてバックラッシュを解消することができる。モータ装置1によれば、ロータQの反転時にバックラッシュ解消制御に基づいてバックラッシュを解消することができる。モータ装置1によれば、ロータQの減速状態からの加速時にバックラッシュ解消制御に基づいてバックラッシュを解消することができる。モータ装置1によれば、ロータQの空転状態からの加速時にバックラッシュ解消制御に基づいてバックラッシュを解消することができる。
【0026】
なお、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。また、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、モータ装置は、減速機だけでなく、バックラッシュが存在する他の駆動系に適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…モータ装置、12…制御部、C1…第1キャリア、G…減速機、G1…第1ギヤ、GM…減速機構、GS…軸、M…モータ、Q…ロータ、R…ピニオンギヤ、S…出力軸、U1…第1内歯ギヤ、Y1…第1遊星ギヤ
図1
図2
図3
図4