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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143449
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】抗微生物性繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/46 20060101AFI20230928BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230928BHJP
   B01J 31/38 20060101ALI20230928BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20230928BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20230928BHJP
   D06M 13/184 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
D06M11/46
B01J35/02 J
B01J31/38 M
D06M23/08
D06M11/83
D06M13/184
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050832
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 博輝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩規
【テーマコード(参考)】
4G169
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BA32A
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC75A
4G169BE01A
4G169BE06A
4G169BE08A
4G169BE08B
4G169CA01
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EB19
4G169EC03Y
4G169EC27
4G169EC28
4G169ED03
4G169FA01
4G169FA02
4G169FA06
4G169FC08
4G169HA07
4G169HA09
4G169HA10
4G169HA11
4G169HB01
4G169HD10
4G169HE07
4L031BA04
4L031BA09
4L031DA12
4L033AC10
4L033BA16
4L033DA06
(57)【要約】
【課題】美観、洗濯耐久性、及び抗微生物性に優れた繊維を提供する。
【解決手段】チタニアナノ粒子が担持されている抗微生物性繊維であって、
前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、
前記チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上である、抗微生物性繊維。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニアナノ粒子が担持されている抗微生物性繊維であって、
前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、
前記チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上である、抗微生物性繊維。
【請求項2】
前記チタニアナノ粒子は、抗微生物性化合物が担持されている、請求項1に記載の抗微生物性繊維。
【請求項3】
前記抗微生物性化合物が、抗微生物性金属化合物を含む、請求項2に記載の抗微生物性繊維。
【請求項4】
前記抗微生物性金属化合物が、銀、銅及び白金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載の抗微生物性繊維。
【請求項5】
前記抗微生物性金属化合物が、銀を含有する、請求項3又は4に記載の抗微生物性繊維。
【請求項6】
前記抗微生物性金属化合物が、銀ナノ粒子である、請求項3~5のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【請求項7】
前記抗微生物化合物の担持量が、前記チタニアナノ粒子中の酸化チタン質量を100質量%として0.0001~50質量%である、請求項2~6のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【請求項8】
前記アシルオキシ基は、-OCOR(式中、Rは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~2のヒドロキシアルキル基を示す)で表される基でチタン原子と結合している、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【請求項9】
前記アシルオキシ基が、炭素数1~4のモノカルボン酸及び炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸由来のアシルオキシ基である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【請求項10】
前記有機酸が、酢酸及び/又は乳酸である、請求項9に記載の抗微生物性繊維。
【請求項11】
前記有機酸が、酢酸である、請求項9又は10に記載の抗微生物性繊維。
【請求項12】
前記チタニアナノ粒子が、アナターゼ型で構成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【請求項13】
前記チタニアナノ粒子の比表面積が150~500m/gである、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【請求項14】
前記チタニアナノ粒子の平均粒子径が、1~5nmである、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【請求項15】
前記チタニアナノ粒子の担持量が、固形分量として0.01~5000mg/mである、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗微生物性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルスや多剤耐性菌などの微生物による感染症は、人間の生命を脅かすだけでなく社会活動に大きく影響を与えることから、それらに対する対策が喫緊の課題となっている。
【0003】
繊維への抗微生物性を付与する加工は古くから行われており、具体的には第4級アンモニウム塩をはじめとする有機系抗微生物剤、銀をはじめとする金属系抗微生物剤、そして酸化チタンをはじめとする光触媒などを塗布することが一般的である。
【0004】
これら抗微生物剤を繊維に固着し、抗微生物性と洗濯に対する耐久性を共に付与する際には、特許文献1のように樹脂やシリカをはじめとするバインダを使用して抗微生物剤を繊維上に固着させるのが一般的である。しかしながら、バインダを使用して抗微生物剤を繊維上に固着させると、抗微生物剤がバインダに覆われるため、抗微生物剤の有する機能が十分に発揮されないという問題があった。
【0005】
上記問題に対して、例えば、特許文献2では、繊維に固着樹脂を含むバインダ層と、抗微生物剤層とをこの順に積層することにより、バインダによる抗微生物性の低下を抑制している。しかしながら、多層構造を形成するために処理工程が複数に分けられ煩雑になるだけでなく、バインダ層から抗微生物剤が滑落するなどにより、洗濯耐久性はいまだ不十分であった。また、繊維への固着量を増やし、洗濯後も繊維に残存する抗微生物剤を増やすことで洗濯耐久性の向上させることは可能ではあるものの、担持量を増やすことで繊維が有する質感や色を損なうという問題があった。
【0006】
このように、手触りや風合いに代表される美観、洗濯耐久性、及び抗微生物性に優れた繊維が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3761248号
【特許文献2】特許第4827031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、美観、洗濯耐久性、及び抗微生物性に優れた繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、本発明者らは、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合し、且つ示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上であるチタニアナノ粒子を表面に有する抗微生物性繊維が上記課題を全て解決できることを見出した。そして、さらに研究を重ね、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0010】
項1.チタニアナノ粒子が担持されている抗微生物性繊維であって、
前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、
前記チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上である、抗微生物性繊維。
【0011】
項2.前記チタニアナノ粒子は、抗微生物性化合物が担持されている、項1に記載の抗微生物性繊維。
【0012】
項3.前記抗微生物性化合物が、抗微生物性金属化合物を含む、項2に記載の抗微生物性繊維。
【0013】
項4.前記抗微生物性金属化合物が、銀、銅及び白金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、項3に記載の抗微生物性繊維。
【0014】
項5.前記抗微生物性金属化合物が、銀を含有する、項3又は4に記載の抗微生物性繊維。
【0015】
項6.前記抗微生物性金属化合物が、銀ナノ粒子である、項3~5のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【0016】
項7.前記抗微生物化合物の担持量が、前記チタニアナノ粒子中の酸化チタン質量を100質量%として0.0001~50質量%である、項2~6のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【0017】
項8.前記アシルオキシ基は、-OCOR(式中、Rは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~2のヒドロキシアルキル基を示す)で表される基でチタン原子と結合している、項1~7のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【0018】
項9.前記アシルオキシ基が、炭素数1~4のモノカルボン酸及び炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸由来のアシルオキシ基である、項1~8のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【0019】
項10.前記有機酸が、酢酸及び/又は乳酸である、項9に記載の抗微生物性繊維。
【0020】
項11.前記有機酸が、酢酸である、項9又は10に記載の抗微生物性繊維。
【0021】
項12.前記チタニアナノ粒子が、アナターゼ型で構成される、項1~11のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【0022】
項13.前記チタニアナノ粒子の比表面積が150~500m/gである、項1~12のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【0023】
項14.前記チタニアナノ粒子の平均粒子径が、1~5nmである、項1~13のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【0024】
項15.前記チタニアナノ粒子の担持量が、固形分量として0.01~5000mg/mである、項1~14のいずれか1項に記載の抗微生物性繊維。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、美観、洗濯耐久性、及び抗微生物性に優れた抗微生物繊維を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0027】
本明細書において、数値範囲をA~Bで表記する場合、A以上B以下を示す。
【0028】
本明細書において、「酸化チタン」又は「チタニア」とは、二酸化チタン(TiO)のみを指すものではなく、三酸化二チタン(Ti);一酸化チタン(TiO);Ti、Ti等に代表される二酸化チタンから酸素欠損した組成のもの等も含む。また、末端OH基に代表されるように一部酸化チタンの合成に起因するTi-O-Ti以外の基を含んでいてもよい。さらに、末端OH基に有機酸等が結合したものも含まれる。
【0029】
1.チタニアナノ粒子が担持されている抗微生物性繊維
本発明の抗微生物性繊維は、チタニアナノ粒子が担持されている抗微生物性繊維であって、前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しており、前記チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上である。
【0030】
このような構成を採用することにより、本発明の抗微生物性繊維は、バインダを使用することなく繊維にチタニアナノ粒子を担持することが可能であるから、バインダによる抗微生物性の低下と、手触りや風合いに代表される繊維の美観の低下とを抑制することができる。また、明所では、チタニアナノ粒子の光触媒活性により抗微生物活性を有することができ、また一方、暗所では、チタニアナノ粒子に担持されている抗微生物性化合物の作用により、抗微生物活性を有することができる。また、本発明の抗微生物性繊維は、チタニアナノ粒子と繊維とが、また、チタニアナノ粒子と抗微生物性化合物とが強固に密着しており、擦過等の物理的衝撃に対する耐性が高いことから、洗濯に対する耐久性が高く、持続的に優れた美観及び抗微生物性を有することができる。
【0031】
(1-1)チタニアナノ粒子
通常、水、無機酸、遊離した有機酸等は200℃以下でほとんど揮発する。一方、本発明の抗微生物性繊維を構成するチタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合していることから、200~600℃の範囲で徐々に脱離する。例えばアセトキシ基の場合は、約260℃をピークとして200~600℃の範囲で徐々に脱離する。このように、本発明の抗微生物性繊維を構成するチタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合していることから、乾燥又は焼成時にチタニアナノ粒子同士の凝集を抑制できるためクラック、剥がれ等が起こりにくく塗布性、透明性及び風合いに特に優れるとともに、クラック、剥がれ等を抑制することができ、さらには後述の抗微生物性化合物を強固に担持させやすい結果可視光触媒活性にも優れる。なお、通常は、表面にアシルオキシ基を有していると可視光触媒活性が低下し、これに伴って抗微生物性が低下するのが技術常識であるが、本発明では上記のとおり乾燥又は焼成時にチタニアナノ粒子同士の凝集を抑制できるためクラック、剥がれ等の抑制効果が特に優れているとともに、後述の抗微生物性化合物を強固に担持させやすいため、アシルオキシ基を有しているにもかかわらず可視光触媒活性も向上させることができ、これに伴って抗微生物性も向上させることができる。
【0032】
また、上記チタニアナノ粒子は、表面に存在するチタン原子にアシルオキシ基が大量に結合していることが好ましい。表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が存在している場合は、上記のとおり200~600℃の範囲で徐々に離脱することから、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)によって昇温させた場合に200℃以上での質量減少が大きい。つまり、本発明において、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)によって昇温させた場合に200℃以上での質量減少は、表面に存在するチタン原子にアセトキシ基が結合している数の指標を意味している。このため、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上、好ましくは7~20質量%である。この際、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)の詳細な条件は、雰囲気:空気、昇温速度:3℃/分である。
【0033】
上記チタニアナノ粒子は、上記の通り表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合しているものであるが、このアシルオキシ基は、-OCOR(式中、Rは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~2のヒドロキシアルキル基を示す)で表される基でチタン原子と結合していることが好ましい。言い換えれば、このアシルオキシ基は、炭素数1~4のモノカルボン酸、炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸等の有機酸由来のアシルオキシ基であることが好ましい。
【0034】
上記Rにおいてアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等が挙げられ、ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基等が挙げられる。つまり、モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸等が挙げられる。
【0035】
なお、揮発性、有害性及び分解性の観点から、Rとしては水素原子又はメチル基、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基等が好ましく、水溶性及び臭気の観点からメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基が好ましい。つまり、揮発性、有害性及び分解性の観点から、モノカルボン酸としてはギ酸、酢酸等が好ましく、ヒドロキシカルボン酸としてはグリコール酸、乳酸等が好ましい。また、水溶性及び臭気の観点から酢酸、グリコール酸、乳酸等が特に好ましい。これらの有機酸は単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0036】
上記チタニアナノ粒子の平均粒子径は、1~5nmが好ましく、2~4nmがより好ましい。チタニアナノ粒子の平均粒子径をこの範囲とすることにより、抗微生物性化合物を適度且つより強固に担持させやすく、繊維に担持させた際の美観及び洗濯耐久性に優れ、可視光触媒活性を高くしやすい。また、通常平均粒子径が小さい場合、加熱時の収縮が大きいため、クラックや基材からの剥離が起こりやすいが、本発明で使用するチタニアナノ粒子は平均粒子径が小さい場合にも塗布性に優れる材料である。本発明において、チタニアナノ粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡(TEM)観察により測定する。
【0037】
上記チタニアナノ粒子の比表面積は、150~500m/gが好ましく、200~400m/gがより好ましい。チタニアナノ粒子の比表面積をこの範囲とすることにより、抗微生物性化合物を適度且つより強固に担持させやすく、繊維に担持させた際の美観及び洗濯耐久性に優れ、可視光触媒活性を高くしやすい。上記チタニアナノ粒子の比表面積はBET法により測定する。
【0038】
また、上記チタニアナノ粒子は、N、Cl及びS元素の濃度をいずれも0~5000ppm、特に0~1000ppmとすることができる。チタニアナノ粒子のN、Cl及びS元素の濃度をこの範囲とすることにより、基材の腐食等を抑えやすい。なお、この条件は、TiCl、TiOSO等の酸性チタニア前駆体由来の不純物が存在しないか、又はごく少量であることを意味している。上記チタニアナノ粒子のN、Cl及びS元素の濃度はWDX(蛍光X線)により測定する。
【0039】
さらに、上記チタニアナノ粒子の結晶形は、アナターゼ型が好ましい。上記チタニアナノ粒子がアナターゼ型で構成されることにより、可視光触媒活性を特に向上させることができる。
【0040】
(1-2)抗微生物性化合物
本発明で使用する抗微生物性化合物は、特に制限されず、例えば、抗微生物性金属化合物又は抗微生物性有機化合物のいずれも採用することができるが、美観、抗微生物性化合物の安定性及び洗濯耐久性等の観点から、抗微生物性金属化合物であることが好ましい。なお、本発明の抗微生物性繊維は、明所では、チタニアナノ粒子の光触媒活性により抗微生物活性を有することができ、また一方、暗所では、チタニアナノ粒子に担持されている抗微生物性化合物の作用により、抗微生物活性を有することができる。
【0041】
(1-2-1)抗微生物性金属化合物
本発明で使用する抗微生物性金属化合物は、特に制限されず、例えば、抗微生物性を有するいずれの金属化合物を採用することができるが、美観、金属化合物の安定性、明所及び暗所(特に暗所)における抗微生物活性等の観点から、銀、銅及び白金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの抗微生物性金属化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0042】
なかでも、銀の形態は、特に制限されるわけではないが、美観、洗濯耐久性、銀の安定性、明所及び暗所(特に暗所)における抗微生物活性等の観点から、銀ナノ粒子及び/又は1価の銀イオンが好ましく、銀ナノ粒子がより好ましい。
【0043】
また、銅の形態は、特に制限されるわけではないが、美観、洗濯耐久性、銅の安定性、明所及び暗所(特に暗所)における抗微生物活性等の観点から、銅ナノ粒子、1価の銅イオン及び2価の銅イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、銅ナノ粒子がさらに好ましい。
【0044】
また、白金の形態は、特に制限されるわけではないが、美観、洗濯耐久性、白金の安定性、明所及び暗所(特に暗所)における抗微生物活性等の観点から、白金ナノ粒子、2価の白金イオン及び4価の白金イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、白金ナノ粒子がより好ましい。
【0045】
通常、酸化チタンに金属イオン又は金属ナノ粒子を添加すると、酸化チタンの比表面積や金属イオン濃度に関わらず、金属イオンが経時で還元され金属ナノ粒子が生成され、金属ナノ粒子同士が経時で熱凝集することで、金属の沈殿が見られることが多い。一方、本発明で使用するチタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が結合していることから、金属イオン及び金属ナノ粒子がチタニアナノ粒子上で安定化され、経時の還元や熱凝集が抑制される。
【0046】
銀ナノ粒子を使用する場合、上記の観点から銀ナノ粒子の粒径成長が抑えられやすく、当該銀ナノ粒子の平均粒子径は500nm以下が好ましく、10~200nmがより好ましい。担持される銀ナノ粒子の平均粒子径をこの範囲とすることにより、可視光触媒活性をより向上させ、透明性をより向上させた膜を形成しやすい。銀ナノ粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察により測定する。
【0047】
銅ナノ粒子を使用する場合、上記の観点から銅ナノ粒子の粒径成長が抑えられやすく、当該銅ナノ粒子の平均粒子径は500nm以下が好ましく、1~100nmがより好ましい。担持される銅ナノ粒子の平均粒子径をこの範囲とすることにより、可視光触媒活性をより向上させ、透明性をより向上させた膜を形成しやすい。銅ナノ粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察により測定する。
【0048】
白金ナノ粒子を使用する場合、上記の観点から白金ナノ粒子の粒径成長が抑えられやすく、当該白金ナノ粒子の平均粒子径は500nm以下が好ましく、0.1~50nmがより好ましい。担持される白金ナノ粒子の平均粒子径をこの範囲とすることにより、可視光触媒活性をより向上させ、透明性をより向上させた膜を形成しやすい。白金ナノ粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡観察により測定する。
【0049】
本発明において、チタニアナノ粒子に担持されている銀の担持量は、美観、洗濯耐久性、抗微生物活性やチタニアナノ粒子の安定性等の観点から、チタニアナノ粒子中の酸化チタンに対して200質量%以下が好ましく、0.0001~50質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましい。この範囲とすることで、塗布性及び透明性は維持しやすく、暗所での抗微生物活性並びに光触媒活性を特に向上させやすい。
【0050】
本発明において、チタニアナノ粒子に担持されている銅の担持量は、抗微生物活性やチタニアナノ粒子の安定性等の観点から、チタニアナノ粒子中の酸化チタンに対して100質量%以下が好ましく、0.0001~50質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましい。この範囲とすることで、塗布性及び透明性は維持しやすく、暗所での抗微生物活性並びに光触媒活性を特に向上させやすい。
【0051】
本発明において、チタニアナノ粒子に担持されている白金の担持量は、美観、洗濯耐久性、抗微生物活性やチタニアナノ粒子の安定性等の観点から、チタニアナノ粒子中の酸化チタンに対して100質量%以下が好ましく、0.0001~50質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましい。この範囲とすることで、塗布性及び透明性は維持しやすく、暗所での抗微生物活性並びに光触媒活性を特に向上させやすい。
【0052】
本発明において、チタニアナノ粒子に担持される銀の担持量の銅の担持量に対する比(銀の担持量/銅の担持量)は、特に制限されるわけではないが、抗微生物活性やチタニアナノ粒子の安定性の観点から、0.0001~2000000が好ましく、0.001~10000がより好ましく、0.01~100がさらに好ましい。
【0053】
本発明において、チタニアナノ粒子に担持される銀の担持量の白金の担持量に対する比(銀の担持量/白金の担持量)は、特に制限されるわけではないが、抗微生物活性やチタニアナノ粒子の安定性の観点から、0.0001~2000000が好ましく、0.001~10000がより好ましく、0.01~100がさらに好ましい。
【0054】
(1-2-2)その他の抗微生物性化合物
本発明で使用する抗微生物性化合物は、上記抗微生物性金属化合物以外にも、例えば、抗微生物性有機化合物を採用することができる。上記抗微生物性有機化合物としては、例えば、第4級アンモニウム塩化合物、イソチアゾリン化合物、ピリジン化合物、フェノール化合物、フタルイミド化合物、弁図イミダゾール化合物、ヨード化合物等の合成有機系抗微生物剤、キトサン、キチン、茶カテキン、タンニン酸、柿渋等の天然系抗微生物剤、金属含有ゼオライト等の無機系抗微生物剤が挙げられ、美観、洗濯耐久性、抗微生物性の安定性等の観点から、合成有機系抗微生物剤、天然系抗微生物剤が好ましく、塩化ベンザルコニウム、茶カテキン、タンニン酸がより好ましい。これらの抗微生物性有機化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0055】
本発明において、チタニアナノ粒子に担持されている抗微生物性有機化合物の担持量は、美観、洗濯耐久性、抗微生物活性やチタニアナノ粒子の安定性等の観点から、チタニアナノ粒子中の酸化チタンに対して100質量%以下が好ましく、0.0001~50質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましい。この範囲とすることで、塗布性及び透明性は維持しやすく、暗所での抗微生物活性並びに光触媒活性を特に向上させやすい。
【0056】
(1-3)繊維
本発明において繊維とは、繊維によって構成される構造物であれば、その形状が糸、織物又は編み物である布帛、不織布又は縫製された繊維製品のいずれであっても構わない。また、繊維素材としては、特に制限されることなく使用できる。本発明の抗微生物性繊維を構成する繊維としては、特に制限されるわけではないが、例えば、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート等の再生及び半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維、ガラス、炭素、金属等の無機繊維及びこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
また、上記繊維製品としては、一般衣料の他、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、マスクなどの衛生用品、脇パッド、ストッキング、手袋、キャップ、ふきん、ワイパー、クッキングシート、ドリップシート、ウェットティッシュ、寝具(ベッドシーツ、枕カバー等)、トートバッグ、スリッパ、ティッシュペーパー、介護用品、タオル、口腔ケアシート、食品保持シート、集塵フィルター、濾過フィルター、モップ、足ふきマット、病院・介護施設の衣料品等が挙げられる。
【0058】
2.チタニアナノ粒子が担持されている抗微生物性繊維の製造方法
本発明の抗微生物性繊維は、上記繊維に上記チタニアナノ粒子を担持させることにより製造することができる。
【0059】
具体的には、本発明の抗微生物性繊維は、
(A)チタンを含む物質、有機酸及び水を混合して分散液を得る工程と、
(B)前記工程(A)で得られた分散液を80℃より高い温度で1時間以上加熱する工程と、
(C1)任意で、前記工程(B)で得られた分散液と、抗微生物性化合物とを混合して得られた分散液に対して紫外光を照射する工程、
(C2)任意で、前記工程(B)で得られた分散液と、抗微生物性化合物とを混合する工程、又は
(C3)任意で、前記工程(B)で得られた分散液に、抗微生物性化合物とを添加して静置する工程と、
(D)前記工程(B)、(C1)、(C2)又は(C3)で得られた分散液をより均一な分散液にする工程と、
(E)前記工程(D)で得られた分散液を繊維表面に付着させ、乾燥する工程と
を備える方法により製造することができる。
【0060】
(2-1)工程(A)
工程(A)では、チタンを含む物質、有機酸及び水を混合して分散液を得る。
【0061】
使用するチタンを含む物質としては、加熱により酸化チタンとなる物質であれば特に制限はない。つまり、チタンを含む物質としては、酸化チタン及び/又は酸化チタン前駆体が好ましく、具体的には、酸化チタン;水酸化チタン;チタンアルコキシド;三塩化チタン、四塩化チタン等のハロゲン化チタン(特に塩基で中和したもの);金属チタン等が挙げられる。これらのチタンを含む物質は単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。これらのなかでも、得られるチタニアの分散性、塗布性及び可視光触媒性の観点から、チタンアルコキシド、水酸化チタン又はハロゲン化チタン(特に塩基で中和したもの)が好ましく、特に純度、分散性、塗布性、透明性及び可視光触媒性の観点からチタンアルコキシドがより好ましい。
【0062】
チタンアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn-ブトキシド、チタンテトラn-プロポキシド、チタンテトラエトキシド等が挙げられ、コスト、副生成物の水溶性、塗布性及び可視光触媒性の観点から、チタンテトライソプロポキシドが好ましい。
【0063】
なお、チタンアルコキシドと有機酸との組合せによっては、得られるチタニアを触媒として水に溶けにくいエステル化合物が遊離することがあるが、チタニア自身には問題はない(例えば、チタンテトラn-ブトキシドと酢酸の組合せにおいて、混合し加熱した段階で酢酸ブチルが生じ遊離する)が、均一な分散液を得る観点からは、水溶性に優れる有機酸アルコキシドが得られる有機酸とチタンアルコキシドとの組合せを採用することが好ましい。
【0064】
ハロゲン化チタン(四塩化チタン、三塩化チタン等)については、不純物(ハロゲン)、量産時の反応器の腐食、結晶性制御、塗布性、透明性及び可視光触媒性の観点から、塩基で中和し、沈殿物の洗浄を行ってから用いることが好ましい。その場合、得られるチタニアの分散性の観点から、乾燥を行わずに用いることが好ましい。
【0065】
なお、チタンを含む物質として、酸化チタン、金属チタン等の固体を用いる場合は、平均粒子径は100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。下限値は特に設定されないが、通常1nm程度である。なお、粒径が大きい場合は遊星ボールミル、ペイントシェーカー等を用いて乾式又は湿式で粉砕して用いることもできる。酸化チタン、金属チタン等の固体の平均粒子径は、電子顕微鏡(TEM)観察により測定する。
【0066】
工程(A)で生成する分散液中のチタンを含む物質の濃度は、生産性、反応液の粘度、塗布性、透明性及び可視光触媒性の観点から、0.01~5mol/Lが好ましく、0.05~3mol/Lがより好ましい。
【0067】
反応に使用する酸は、有機酸であり、揮発性のある酸が好ましいことから化学式C2n+1COOH(n=0~3)で示されるモノカルボン酸(炭素数1~4のモノカルボン酸)、炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0068】
揮発性、有害性及び分解性の観点から、モノカルボン酸としてはn=0のギ酸及びn=1の酢酸が好ましく、ヒドロキシカルボン酸としてはグリコール酸、乳酸等が好ましく、水溶性及び臭気の観点から酢酸、グリコール酸、乳酸等が特に好ましい。これらの有機酸は単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0069】
有機酸の使用量は、分散性、塗布性、透明性、洗濯耐久性、抗微生物性及びコストの観点から、チタンを含む物質中のチタン1モルに対して、アシルオキシ基のモル数が1.5モル以上、特に2モル以上となるように調整することが好ましい。有機酸を多く用いるほど経時安定性、塗布性、透明性等を向上させやすい。なお、上限値は特に制限されないが、チタンを含む物質中のチタン1モルに対して、アシルオキシ基のモル数が通常10モル以下となるように調整することが好ましい。
【0070】
工程(A)で得られる分散液中の有機酸の濃度は、分散性、塗布性、透明性、洗濯耐久性、抗微生物性及びコストの観点から、0.02~10mol/Lが好ましく、0.1~7mol/Lがより好ましい。
【0071】
反応溶媒としては、水等の水性溶媒を主成分(具体的には、例えば50質量%以上)として用いることが好ましいが、反応時にアルコール又はエステルを含んでいてもよい。
【0072】
例えばチタンテトライソプロポキシドを原料として用いた場合、有機酸との反応によりイソプロピルアルコールが生じる。また、加熱により有機酸のイソプロピルエステルが生じることもある。つまり、工程(A)により得られる分散液中には、アルコール又はエステルを投入してもよいし、系中で発生していてもよい。このアルコール又はエステルについては、100℃以下の開放系における加熱により除去してもよいし、減圧により除去してもよいし、反応液中に残留していてもよい。
【0073】
なお、分散液中にアルコールが含まれる場合には、得られるチタニアナノ粒子の平均粒子径が小さくなる傾向にあり、平均粒子径を制御するために、意図的にアルコールを添加してもよい。
【0074】
本発明においては、通常チタニアナノ粒子の水熱合成反応に用いることが多い硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸(特に無機強酸)は、得られるチタニアナノ粒子の結晶形がアナターゼ型の他にブルッカイト型も混在するだけでなく、得られる分散液の貯蔵安定性、装置の腐食、不純物、排水等の観点からも原則用いないことが好ましい。ただし、原料の分散性、透明性、均一性等を高め取扱いを容易にする場合には、効果を損なわない範囲で、例えば、0.01mol/L以下の範囲で補助的に使用することもできる。この場合、工程(A)で得られる分散液中のN、Cl及びS元素の濃度がいずれも0.01mol/L以下となる。
【0075】
このような工程(A)で得られる分散液のpHは、装置の腐食や取扱いの安全性、分散性等の観点から、2以上6未満が好ましく、2.1~5がより好ましい。
【0076】
工程(A)において、分散液の作製方法は特に制限はなく、チタンを含む物質、有機酸及び水(溶媒)を同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。特に、量産スケールにおいては、凝集して大きな塊を形成しにくく攪拌を継続しやすい観点から、有機酸及び水(溶媒)を混合した後に、攪拌しながらチタンを含む物質を投入することが好ましい。一方、ラボスケールにおいては、チタンを含む物質及び有機酸を混合した後に、攪拌しながら水を投入することが好ましい。
【0077】
(2-2)工程(B)
工程(B)においては、工程(A)で得られた分散液を80℃より高い温度で1時間以上加熱する。
【0078】
工程(B)は、常圧下に行ってもよいし、密閉容器内で加圧下に行ってもよい。本発明で使用するチタニアナノ粒子の平均粒子径を小さくする観点から、常圧下に行うことが好ましく、具体的には0.09~0.11MPaが好ましい。なお、加圧下に行う場合は、可視光触媒活性が高く、且つ透明性の高い膜が形成しやすい観点からは、0.2MPa以下(0.11~0.2MPa)において短時間(例えば5~30分程度)の反応を行うことが好ましい。
【0079】
加熱の際には、チタンを含む物質と有機酸と水とを十分に反応させる観点から、撹拌することが好ましい。攪拌の方法は特に制限はなく、常法に従うことができる。また、攪拌時間は、チタンを含む物質と有機酸と水とを十分に反応させる観点から、1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。攪拌時間の上限値は特に制限されないが、通常240時間である。
【0080】
加熱温度は、80℃より高い温度、好ましくは82℃以上である。加熱温度が80℃以下では、クラックが発生しやすく、塗布性に劣りすぐに脱落することから塗膜を形成することが困難となる。なお、加熱温度の上限値は特に制限はないが、常圧で反応する場合は通常120℃である。
【0081】
このような工程(B)で得られる分散液のpHは、装置の腐食や取扱いの安全性、分散性等の観点から、2以上6未満が好ましく、2.1~5がより好ましい。
【0082】
(2-3)工程(C1)
工程(C1)においては、工程(B)で得られた分散液と、抗微生物性化合物とを混合して得た分散液に対して紫外光を照射する。
【0083】
抗微生物性化合物として銀ナノ粒子を使用する場合、当該銀ナノ粒子は、公知又は市販品を使用することができる。銀ナノ粒子を合成する場合、例えば、銀ナノ粒子,日本接着学会誌,2008年,44巻,11号,414-419に記載の方法に基づいて合成することができる。
【0084】
この際使用できる銀ナノ粒子の平均粒子径は、特に制限はなく、抗微生物活性及びナノ粒子の分散安定性の観点から、0.1~500nmが好ましく、1~100nmがより好ましい。
【0085】
抗微生物性化合物として銀塩を使用する場合、工程(A)及び(B)で得られるチタニアナノ粒子を含む分散液(ゾル)が酸性であるため、工程(C1)を経た分散液が塩基性となることを避けることが好ましい。このため、銀塩としては、水溶液が酸性又は中性である銀塩が好ましい。このような銀塩としては、具体的には、塩化銀(I)、硝酸銀(I)、有機酸銀(乳酸銀(I)、酢酸銀(I)、クエン酸銀(I)、ミリスチン酸銀(I)等)、硫化銀(I)、酸化銀(I)、リン酸銀(I)、炭酸銀(I)、臭化銀(I)、ヨウ化銀(I)等が挙げられる。これらの銀塩を、還元により銀ナノ粒子となる銀ナノ粒子前駆体として使用することも可能である。
【0086】
以上の銀ナノ粒子及び銀化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0087】
抗微生物性化合物として銅ナノ粒子を使用する場合、当該銅ナノ粒子は、公知又は市販品を使用することができる。銅ナノ粒子を合成する場合、例えば、Cu and Cu-Based Nanoparticles: Synthesis and Applications in Catalysis Chemical Reviews, 2016, 116 (6), 3722-3811に記載の方法に基づいて合成することができる。
【0088】
この際使用できる銅ナノ粒子の平均粒子径は、特に制限はなく、抗微生物活性及びナノ粒子の分散安定性の観点から、0.1~200nmが好ましく、1~50nmがより好ましい。
【0089】
抗微生物性化合物として銅塩を使用する場合、工程(A)及び(B)で得られるチタニアナノ粒子を含む分散液(ゾル)が酸性であるため、工程(C1)を経た分散液が塩基性となることを避けることが好ましい。このため、銅塩としては、水溶液が酸性又は中性である銅塩が好ましい。このような銅塩としては、具体的には、有機酸銅(酢酸銅(II)、乳酸銅(II)、クエン酸銅(II)、ミリスチン酸銅(II)等)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、リン酸銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、炭酸銅(II)等が挙げられる。これらの銅塩を、還元により銅ナノ粒子となる銅ナノ粒子前駆体として使用することも可能である。
【0090】
以上の銅ナノ粒子及び銅化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0091】
なかでも、特に制限されるわけではないが、得られる抗微生物性化合物担持チタニアナノ粒子における銅の安定性、明所及び暗所(特に暗所)における抗微生物活性等の観点から、銅ナノ粒子、銅ナノ粒子前駆体、1価の銅塩、2価の銅塩等が好ましく、1価の銅塩、2価の銅塩等がより好ましく、2価の銅塩がさらに好ましい。
【0092】
抗微生物性化合物として白金ナノ粒子を使用する場合、当該白金ナノ粒子は、公知又は市販品を使用することができる。白金ナノ粒子を合成する場合、例えば、A Comprehensive Review on the Synthesis, Characterization, and Biomedical Application of Platinum Nanoparticles: Nanomaterials, 2019, 9(12), 1719に記載の方法に基づいて合成することができる。
【0093】
この際使用できる白金ナノ粒子の平均粒子径は、特に制限はなく、美観、洗濯耐久性、抗微生物性及びナノ粒子の分散安定性の観点から、0.1~500nmが好ましく、0.1~50nmがより好ましい。
【0094】
抗微生物性化合物として白金塩を使用する場合、工程(A)及び(B)で得られるチタニアナノ粒子を含む分散液(ゾル)が酸性であるため、工程(C1)を経た分散液が塩基性となることを避けることが好ましい。このため、白金塩としては、水溶液が酸性又は中性である白金塩が好ましい。このような白金塩としては、具体的には、有機酸白金(シュウ酸白金(IV)、酢酸白金(II)、等)、硫酸白金(II)、硝酸白金(II)、酸化白金(II)、酸化白金(IV)、シアン化白金(II)、塩化白金(IV)、塩化白金(II)、フッ化白金(IV)、臭化白金(IV)、ヨウ化白金(IV)等が挙げられる。これらの白金塩を、還元により白金ナノ粒子となる白金ナノ粒子前駆体として使用することも可能である。
【0095】
以上の白金ナノ粒子及び白金化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0096】
なかでも、特に制限されるわけではないが、得られる抗微生物性化合物担持チタニアナノ粒子における白金の安定性、明所及び暗所(特に暗所)における抗微生物活性等の観点から、白金ナノ粒子、白金ナノ粒子前駆体、2価の白金塩、4価の白金塩等が好ましく、白金ナノ粒子、がさらに好ましい。
【0097】
工程(C1)において、抗微生物性化合物の使用量は、分散性、透明性、抗微生物活性、チタニアナノ粒子の安定性等の観点から、工程(B)で得られた分散液を200℃で加熱した際の固形分量に対して200質量%以下が好ましく、0.0001~25質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましい。この範囲とすることで、塗布性及び透明性は維持しやすく、暗所での抗微生物活性並びに光触媒活性を特に向上させやすい。
【0098】
工程(C1)において、紫外光の照射強度は、抗微生物性化合物のチタニアナノ粒子への担持させやすさ、可視光触媒活性、反応速度、生産性等の観点から、10μW/cm以上が好ましく、100μW/cm以上がより好ましく、1mW/cm以上がさらに好ましい。なお、紫外光の照射強度の上限値は、特に制限はないが、通常2W/cmである。
【0099】
工程(C1)において、紫外光の照射時間は、5分以上照射することでチタニアナノ粒子表面に抗微生物性金属化合物が生成しやすいが、可視光触媒活性等の観点から10分以上照射することが好ましく、20分以上照射することがより好ましい。なお、紫外光の照射時間の上限値は、特に制限はないが、通常5時間である。
【0100】
工程(C1)においては、紫外光をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するパルス照射であっても、途切れなく継続して照射する連続照射であってもよく、要求特性に応じて適宜設定することができる。
【0101】
工程(C1)において、紫外光照射は、抗微生物性化合物のチタニアナノ粒子への担持させやすさ、可視光触媒活性、反応速度、生産性等の観点から、室温(20℃)以上で行うことが好ましく、50℃以上で行うことがより好ましい。なお、温度の上限値は特に制限はないが、常圧で反応する場合は通常100℃である。
【0102】
工程(C1)において、紫外光照射の際には、工程(B)で得られた分散液と、抗微生物性化合物とを十分に反応させる観点から、撹拌することが好ましい。攪拌の方法は特に制限はなく、常法に従うことができる。
【0103】
工程(C1)は、空気雰囲気下に行ってもよいし、嫌気下で行ってもよいが、嫌気下としては、具体的には、窒素雰囲気下やアルゴン雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下等が挙げられる。
【0104】
このようにして得られる分散液のpHは、添加する抗微生物性化合物の種類や添加量によっても異なるが、1~3が好ましい。
【0105】
この後、常法により、抗微生物性化合物担持チタニアナノ粒子を沈殿及び遠心分離すること等により抗微生物性化合物担持チタニアナノ粒子を回収することができる。つまり、大量のアシルオキシ基が表面に存在するチタン原子に結合し、抗微生物性化合物が担持されているチタニアナノ粒子を得ることができる。
【0106】
(2-4)工程(C2)及び(C3)
本発明では、上記した工程(C1)の代わりに、工程(C2)として、工程(B)で得られた分散液と、抗微生物性化合物とを混合する工程や、工程(C3)として、工程(B)で得られた分散液に、抗微生物性化合物とを添加して静置する工程を採用することもできる。
【0107】
使用する抗微生物性化合物としては、上記した工程(C1)と同様である。また、抗微生物性化合物の使用量も、上記した工程(C1)と同様である。
【0108】
工程(C2)において、工程(B)で得られた分散液と、抗微生物性化合物とを混合する方法は特に制限はなく、常法にしたがうことができる。例えば、工程(B)で得られた分散液に、抗微生物性化合物とを添加し、攪拌することができる。攪拌の方法は特に制限はなく、常法に従うことができる。
【0109】
工程(C2)において、工程(B)で得られた分散液と、抗微生物性化合物との混合は、抗微生物性化合物のチタニアナノ粒子への担持させやすさ、可視光触媒活性、反応速度、生産性等の観点から、室温(20℃)以上で行うことが好ましく、50℃以上で行うことがより好ましい。なお、温度の上限値は特に制限はないが、常圧で反応する場合は通常100℃である。
【0110】
工程(C2)及び(C3)は、空気雰囲気下に行ってもよいし、嫌気下で行ってもよい。嫌気下としては、具体的には、窒素雰囲気下やアルゴン雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下等が挙げられる。
【0111】
このようにして得られる分散液のpHは、添加する抗微生物性化合物の種類や添加量によっても異なるが、1~3が好ましい。
【0112】
工程(C1)、(C2)及び(C3)のうちでは、工程(C1)のように、外部からエネルギーを加えることで担持効率を向上させやすい一方、工程(C2)を採用すると、チタニアナノ粒子分散液の高粘度化を防げるだけでなく、均一な粒子を得やすい。
【0113】
また、工程(C1)、(C2)及び(C3)ではいずれも、加熱することで抗微生物性化合物の担持効率をさらに向上させることも可能である。
【0114】
この後、常法により、抗微生物性化合物担持チタニアナノ粒子を沈殿及び遠心分離すること等により、本発明の抗微生物性化合物担持チタニアナノ粒子を回収することができる。つまり、大量のアシルオキシ基が表面に存在するチタン原子と結合し、抗微生物性化合物が担持され、強固に密着したチタニアナノ粒子を得ることができる。
【0115】
(2-5)工程(D)
本発明で使用するチタニアナノ粒子分散液は、上記工程(A)と、工程(B)、工程(C1)、工程(C2)又は工程(C3)とを経た反応液を用い、必要に応じて超音波分散等の分散工程を加えることにより、さらに均一な分散液を作製できる。この時、従来の可視光応答型光触媒の分散液においては分散剤を使用しなければ均一な分散液を得ることができなかったことから、本発明においても、分散剤を加えてもよいが、分散剤を加えなくても通常の可視光応答型光触媒より遥かに分散性のよい分散液が得られる。分散性がよい結果、コーティングの耐クラック性にも優れる。また、分散剤を加えなくてもよい結果、緻密なチタニアのコーティングも可能になり、塗布性及び透明性にも優れるうえに、可視光触媒活性にも優れる。
【0116】
この際、本発明で使用するチタニアナノ粒子分散液においては、チタニアナノ粒子分散液の総量を100質量%として、主要な溶媒である水の含有量を、コーティングの容易さ、コーティングの膜性等の観点から、50質量%以上、特に60質量%以上とすることが好ましい。
【0117】
また、本発明で使用するチタニアナノ粒子を反応液から取り出し、溶媒を変更することも可能である。反応液から遠心分離やろ過膜等により水分を除去し、有機溶媒に置換してもよい。その際は本発明で使用するチタニアナノ粒子を乾燥させないことが、分散性、透明性等の観点から好ましい。
【0118】
分散液に使用する有機溶媒としては、アルコール等が挙げられる。このアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1~6の脂肪族アルコールの他、α-テルピネオール等の非脂肪族アルコール;ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ヘキシレングリコール(2-メチル-2,4-ペンタンジオール)、エチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶媒;1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール等が挙げられる。
【0119】
また、OH基を有さなくても、チタニア及び他の溶媒(水、アルコール等)との親和性があればよく、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。なかでも、沸点等の観点から、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が好ましい。
【0120】
本発明で使用するチタニアナノ粒子分散液は、用途に応じて粘度を調整し、塗料とすることができる。例えば、スピンコート、ディップコート、スプレー等に用いる場合は低粘度、刷毛塗り、スキージ法等に用いる場合はそれより粘度を高く調整し、スクリーン印刷に用いる場合は、さらに粘度を高く調製し、流動性を抑制することが好ましい。このようにして得られる本発明の塗膜は、上記のとおり緻密なコーティングである。
【0121】
(2-6)工程(E)
工程(E)においては、上記工程(D)で得られた分散液を、繊維表面に付着させ、乾燥する。
【0122】
工程(E)において、工程(D)で得られた分散液を繊維表面に付着させる方法は特に制限はなく、常法にしたがうことができる。例えば、工程(D)で得られた分散液に繊維を添加し、攪拌することができる。攪拌の方法は特に制限はなく、常法に従うことができる。あるいは、上記工程(D)で得られた分散液を繊維表面に付着させる方法としては、上記浸漬法の他、ローラータッチ法、スプレー法、シャワー法、含浸法等が挙げられる。
【0123】
工程(E)において、繊維表面に付着させる分散液の固形分濃度は、チタニアナノ粒子の担持効率、コーティングの容易さ、コーティングの膜性等の観点から、50質量%未満が好ましく、0.00001~40質量%がより好ましく、0.001~5質量%がさらに好ましい。なお、上記固形分濃度を当該範囲とするために、上記工程(D)で得られた分散液を、上記溶媒により適宜希釈することができる。
【0124】
工程(E)において、繊維表面に付着させる分散液の使用量は、チタニアナノ粒子の担持効率、コーティングの容易さ、コーティングの膜性等の観点から、繊維に対して1~10000質量%が好ましく、10~1000質量%がより好ましく、20~500質量%がさらに好ましい。
【0125】
工程(E)において、乾燥温度は、繊維及び抗微生物性化合物の安定性等の観点から、0~200℃が好ましく、5~160℃がより好ましく、10~100℃がさらに好ましい。
【0126】
工程(E)において、乾燥時間は、繊維及び抗微生物性化合物の安定性等の観点から、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、0.1秒分~6時間がさらに好ましい。
【0127】
工程(E)における乾燥は、常圧下に行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。
【0128】
工程(E)後に、繊維に担持されているチタニアナノ粒子の担持量は、繊維の美観、洗濯耐久性及び抗微生物活性等の観点から、固形分量として0.001~5000mg/mが好ましく、0.01~1000mg/mがより好ましく、0.1~100mg/mがさらに好ましい。
【実施例0129】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。また、抗菌活性は活性値3以上で極めて高い抗菌活性があり、活性値2以下で活性が無いと判断した。
【0130】
[実施例1]
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に酢酸120g(2mol)を加え60分撹拌し、水を538g加えた。この分散液は、チタンテトライソプロポキシドの濃度は0.625mol/L、酢酸の濃度は2.5mol/L、pHは2.2であった。半透明の沈殿が大量に発生したが、60分間撹拌した後に加熱を行ったところ70℃で沈殿がすべて溶解した。なお、この分散液において、無機酸の濃度、N、Cl及びS元素の濃度はいずれも0mol/Lである。
【0131】
その後、常圧(0.10MPa)で、85℃で3時間撹拌したところ、有機分散剤を使うことなく半透明の均一なチタニア分散液が得られた。この分散液に超音波分散を加えたところ、粘度が低減され、透明性が増した。この分散液は水の含有量が67質量%でありpHは2.3であった。
【0132】
この分散液を乾燥し、チタニアナノ粒子を得た。このチタニアナノ粒子について、BET比表面積を測定したところ250m/gであった。また、TEM観察を行ったところ、平均粒子径は約3nmであった。また得られたチタニアナノ粒子について、X線回折で結晶性を解析したところ、アナターゼ型100%であった(他の結晶形は存在しなかった)。
【0133】
この分散液を、水分計を用いて200℃で保持し質量減少がなくなるまで乾燥したチタニアナノ粒子のTG-DTAを、空気雰囲気下3℃/分の昇温条件で600℃まで昇温させて測定したところ、200℃以上での質量減少は10質量%であった。この200℃以上での質量減少は、有機酸である酢酸が脱離することによる質量減少に相当する。遊離した酢酸は200℃以下でほとんど揮発することから、200℃以上における質量減少が10質量%であることが、チタニアナノ粒子表面にアシルオキシ基である大量のアセチル基が-OCOCHの形でチタン原子と結合していることを示唆している。
【0134】
次に、この分散液を固形分濃度2.5wt%に希釈した液に繊維(綿100%ウエス)を浸し、繊維に対する重量比100%で液を塗布した繊維を80℃2時間で乾燥した。この時、乾燥後の繊維は表面にざらつきは無く、また表面を綿棒等でなぞっても粉末の滑落や付着は見られなかった。乾燥後の繊維に対し、光触媒を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISR1702のガラス密着法を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を4時間、接液時の紫外線照射強度を0.25 mW/cmとした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0135】
[実施例2]
水の量を変えたこと以外は実施例1と同様の方法で得たチタニアナノ粒子を含む分散液30g(5.9質量%)に137.5mgの酢酸銀(I)を加え、空気雰囲気下、照射強度1.5mW/cmの紫外線を途切れなく継続して照射(連続照射)しながら、室温(20℃)で30分攪拌混合を行うことで、分散液を得た。つまり、担持される銀分が酸化チタン重量に対して5質量%となるように添加した。この分散液は水の含有量が約95質量%でありpHは2.3であった。
【0136】
次に、この分散液を固形分濃度2.5wt%に希釈した液に繊維(綿100%ウエス)を浸し、繊維に対する重量比100%で液を塗布した繊維を80℃2時間で乾燥した。この時、乾燥後の繊維は表面にざらつきは無く、また表面を綿棒等でなぞっても粉末の滑落や付着は見られなかった。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0137】
[実施例3]
実施例2と同様の方法で得た銀ナノ粒子担持チタニアナノ粒子を含む固形分濃度2.5wt%の分散液30gに水を270g加え100倍希釈した分散液に繊維(綿100%ウエス)に浸し、繊維に対する重量比100%で塗布した繊維を80℃で乾燥した。この時、乾燥後の繊維は表面にざらつきは無く、また表面を綿棒等でなぞっても粉末の滑落や付着は見られなかった。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0138】
[実施例4]
水の量を変えたこと以外は実施例1と同様の方法で得たチタニアナノ粒子を含む分散液30g(5.9質量%)に137.5mgの硝酸銀(I)を加え、室温(20℃)で30分攪拌混合を行うことで、分散液を得た。つまり、担持される銀イオン分が酸化チタン重量に対して5質量%となるように添加した。この分散液は水の含有量が約95質量%でありpHは2.3であった。
【0139】
次に、この分散液を固形分濃度2.5wt%に希釈した液に繊維(綿100%ウエス)を浸し、繊維に対する重量比100%で液を塗布した繊維を80℃2時間で乾燥した。この時、乾燥後の繊維は表面にざらつきは無く、また表面を綿棒等でなぞっても粉末の滑落や付着は見られなかった。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0140】
[実施例5]
水の量を変えたこと以外は実施例1と同様の方法で得たチタニアナノ粒子を含む分散液30g(5.9質量%)に137.5mgの酢酸銀(I)を加え、空気雰囲気下、照射強度1.5mW/cmの紫外線を途切れなく継続して照射(連続照射)しながら、室温(20℃)で30分攪拌混合を行うことで、分散液を得た。つまり、担持される銀分が酸化チタン重量に対して5質量%となるように添加した。この分散液は水の含有量が約95質量%でありpHは2.3であった。
【0141】
次に、この分散液を固形分濃度2.5wt%に希釈した液に繊維(ポリプロピレン100%不織布)を浸し、繊維に対する重量比100%で液を塗布した繊維を80℃2時間で乾燥した。この時、乾燥後の繊維は表面にざらつきは無く、また表面を綿棒等でなぞっても粉末の滑落や付着は見られなかった。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、ポリプロピレン不織布は撥水性でありJISL1902の適用が不適と考え抗菌試験はJISR1702を参考に暗所下、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0142】
[実施例6]
イオン交換水100gにクリーンエースを2g添加し攪拌した水溶液を洗浄液とし、実施例1で得た繊維2gを80℃に加熱された洗浄液に2時間浸け置きした。浸け置き後、水道水で良くすすぎ、80℃で2時間乾燥した。乾燥後の繊維に対し、光触媒を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISR1702のガラス密着法を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を4時間、接液時の紫外線照射強度を0.25mW/cmとした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0143】
[実施例7]
イオン交換水100gにクリーンエースを2g添加し攪拌した水溶液を洗浄液とし、実施例2で得た繊維2gを80℃に加熱された洗浄液に2時間浸け置きした。浸け置き後、水道水で良くすすぎ、80℃で2時間乾燥した。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJIS1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0144】
[実施例8]
イオン交換水100gにクリーンエースを2g添加し攪拌した水溶液を洗浄液とし、実施例4で得た繊維2gを80℃に加熱された洗浄液に2時間浸け置きした。浸け置き後、水道水で良くすすぎ、80℃で2時間乾燥した。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0145】
[実施例9]
イオン交換水100gにクリーンエースを2g添加し攪拌した水溶液を洗浄液とし、実施例5で得た繊維2gを80℃に加熱された洗浄液に2時間浸け置きした。浸け置き後、水道水で良くすすぎ、80℃で2時間乾燥した。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、ポリプロピレン不織布は撥水性でありJISL1902の適用が不適と考え抗菌試験はJISR1702を参考に暗所下、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0146】
[比較例1]
チタニアナノ粒子P-25(Evonik Degussa 社製、比表面積50m/g、平均粒子径21nm、表面にアシル基は存在しない)10gに酢酸30gおよび水160gを加え、室温(20℃)で30分攪拌混合を行った後に超音波分散を行い懸濁液とした。この時攪拌混合後も、均一な溶液は得られなかった。次に、この分散液を固形分濃度2.5wt%に希釈した液に繊維を浸し、繊維に対する重量比100%で液を塗布した繊維(綿100%ウエス)を80℃2時間で乾燥した。この時、乾燥後の繊維は表面にざらつきがあり、また表面を綿棒等でなぞると綿棒に白い粉が付着した。このことから、比較例1は実施例1に比べ、チタニアナノ粒子と繊維サンプルの密着性が低いことが理解できる。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0147】
[比較例2]
比較例1で得られた懸濁液30g(5.9質量%)に137.5mgの酢酸銀(I)を加え、空気雰囲気下、照射強度1.5mW/cmの紫外線を途切れなく継続して照射(連続照射)しながら、室温(20℃)で30分攪拌混合を行うことで、銀ナノ粒子を含む懸濁液を得た。この時攪拌混合後も、均一な溶液は得られなかった。次に、この分散液を固形分濃度2.5wt%に希釈した液に繊維(綿100%ウエス)を浸し、繊維に対する重量比100%で液を塗布した繊維を80℃2時間で乾燥した。この時、乾燥後の繊維は表面にざらつきがあり、また表面を綿棒等でなぞると綿棒に茶色い粉が付着した。このことから、比較例2は実施例2に比べ、チタニアナノ粒子と繊維サンプルの密着性が低いことが理解できる。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は3以上と非常に高い値が得られた。
【0148】
[比較例3]
比較例1で得られた懸濁液30g(5.9質量%)に137.5mgの酢酸銀(I)を加え、空気雰囲気下、照射強度1.5mW/cmの紫外線を途切れなく継続して照射(連続照射)しながら、室温(20℃)で30分攪拌混合を行うことで、銀ナノ粒子を含む懸濁液を得た。続いて銀ナノ粒子を含む懸濁液10gにバインダとしてシランカップリング剤KR-516を90g添加することで、銀ナノ粒子およびバインダを含む懸濁液を得た。次に、この懸濁液に繊維(綿100%ウエス)に浸し、繊維に対する重量比100%で塗布した繊維を80℃で乾燥し、繊維サンプルを得た。この時、乾燥後の繊維は表面にざらつきがあったが、表面を綿棒でなぞっても綿棒に粉末の付着が見られなかった。このことから、比較例3は比較例1に比べチタニアナノ粒子と繊維サンプルの密着性が高いことが理解できる。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は2.1であり、抗菌活性は見られたものの実施例2、実施例3、比較例2と比較し弱い活性であった。このことから、比較例3はバインダにより比較例2よりもチタニアナノ粒子と繊維の密着性は向上しているものの、同時に抗菌活性が落ちていることが理解できる。
【0149】
[比較例4]
イオン交換水100gにクリーンエースを2g添加し攪拌した水溶液を洗浄液とし、比較例1で得た繊維2gを80℃に加熱された洗浄液に2時間浸け置きした。浸け置き後、水道水で良くすすぎ、80℃で2時間乾燥した。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は2以下となり、抗菌活性は見られなかった。このことから、比較例4は実施例6と比較し、洗浄後の抗菌活性の低下度合が大きいことが理解される。
【0150】
[比較例5]
イオン交換水100gにクリーンエースを2g添加し攪拌した水溶液を洗浄液とし、比較例2で得た繊維2gを80℃に加熱された洗浄液に2時間浸け置きした。浸け置き後、水道水で良くすすぎ、80℃で2時間乾燥した。乾燥後の繊維に対し、暗所下でも抗菌性を有す物質を対象とした抗菌試験を実施した。この時、抗菌試験はJISL1902を参考にし、接液菌種を大腸菌(K-12)、接液時間を2時間とした。得られた抗菌活性値は2以下となり、抗菌活性は見られなかった。このことから、比較例5は実施例7と比較し、洗浄後の抗菌活性の低下度合が大きいことが理解される。
【0151】
【表1】