(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143451
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】荷重センサ素子
(51)【国際特許分類】
G01L 1/26 20060101AFI20230928BHJP
G01L 1/22 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01L1/26 D
G01L1/22 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050836
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】青木 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】津野 将弥
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大地
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049AA12
2F049CA07
(57)【要約】
【課題】温度補償精度の向上を可能とすることを目的とする。
【解決手段】荷重センサ素子10は、基板12と、荷重を受ける受圧面13を有し、基板12の一方の面である表面14の一部を被覆するように設けられる無機層16とを備える。荷重センサ素子10は、無機層16が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体で構成された薄膜抵抗体20を備える。薄膜抵抗体20は、基板12と無機層16との間に挟まれる本体部32と、無機層16によって被覆されていない基板12の露出部28に載置される両端部である一端部34及び他端部36とを有する。荷重センサ素子10は、薄膜抵抗体20から独立するとともに基板12の一方の面である表面14の露出部28に配置された第1の温度補償抵抗体22を備える。荷重センサ素子10は、基板12の他方の面である裏面に配置され、第1の温度補償抵抗体22と同じ挙動を示す第2の温度補償抵抗体を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面圧荷重を測定する荷重センサ素子であって、
基板と、
荷重を受ける受圧面を有し、前記基板の一方の面の一部を被覆するように設けられる無機層と、
前記無機層が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、前記基板と前記無機層との間に挟まれる本体部と、前記無機層によって被覆されていない前記基板の露出部に配置される両端部と、を有する薄膜抵抗体と、
前記薄膜抵抗体から独立するとともに前記基板の一方の面の前記露出部に配置された第1の温度補償抵抗体と、
前記基板の他方の面に配置され、前記第1の温度補償抵抗体と同じ挙動を示す第2の温度補償抵抗体と、
を備える荷重センサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重センサ素子であって、
前記同じ挙動を示す構成は、前記第1の温度補償抵抗体及び前記第2の温度補償抵抗体の抵抗温度係数を同等とする第一構成と、前記第1の温度補償抵抗体及び前記第2の温度補償抵抗体における同じ変形に対する抵抗値の変化量の絶対値を同等とする第二構成との少なくとも一方を含む、
荷重センサ素子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の荷重センサ素子であって、
前記第1の温度補償抵抗体及び前記第2の温度補償抵抗体は、同形状であるとともに、前記基板の厚み方向で重なる位置に配置されている、
荷重センサ素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の荷重センサ素子であって、
前記基板は、前記無機層が当該基板の厚み方向で重なる受圧領域と前記第1の温度補償抵抗体との間、又は前記受圧領域と前記第2の温度補償抵抗体との間のうちの少なくとも一方に変形抑制部を有する、
荷重センサ素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の荷重センサ素子であって、
前記薄膜抵抗体の一端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられる第1の電極と、
前記薄膜抵抗体の他端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられる第2の電極と、
前記第1の温度補償抵抗体の一端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられた第3の電極と、
前記第1の温度補償抵抗体の他端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられた第4の電極と、
前記第2の温度補償抵抗体の一端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられた第5の電極と、
前記第2の温度補償抵抗体の他端部と電気的に接続され、前記基板の一方の側に設けられた第6の電極とを備え、
前記第1の温度補償抵抗体は、前記第3の電極が設けられた一端部から前記第4の電極が設けられた他端部までの領域が前記第3の電極及び前記第4の電極よりも前記薄膜抵抗体から離れた箇所に配置され、
前記第2の温度補償抵抗体は、前記第5の電極が設けられた一端部から前記第6の電極が設けられた他端部までの領域が前記第5の電極及び前記第6の電極よりも前記薄膜抵抗体から離れた箇所に配置される、
荷重センサ素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の荷重センサ素子であって、
前記第1の温度補償抵抗体又は前記第2の温度補償抵抗体のうちの少なくとも一方は、抵抗値を調整するための調整部を有する、
荷重センサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧力センサが開示されている。
【0003】
この圧力センサは、樹脂製の上ケースおよび上ケースに組み込まれて圧力センサが構成される。圧力センサ素子は、その基板の円形の部分の周縁部を固定部分とし、この固定部分内側の円形の部分を受圧部とする。圧力センサ素子の受圧部に感歪抵抗体が設けられている。また、圧力センサは、圧力センサ素子の非歪部に調整用抵抗体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような圧力センサにあっては、下ケースの凹部と連通させて取り付けたパイプまたは素子の部分と対応させて上ケースに設けた凹部と連通させて取り付けたパイプがあり、これらのパイプの一方を通じて測定しようとする圧力が素子の円形の部分に印加される。すなわち、荷重を受けた際に圧力センサ素子が全体的に変形する。このため、調整用抵抗体を用いて温度補償をしようとしても、調整用抵抗体の出力が圧力センサ素子の変形による影響を受けてしまう。
【0006】
これにより、温度補正の精度の低下を招いていた。
【0007】
そこで、本発明は、温度補償精度の向上を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様の荷重センサ素子は、面圧荷重を測定する荷重センサ素子であって、基板と、荷重を受ける受圧面を有し、前記基板の一方の面の一部を被覆するように設けられる無機層とを備える。荷重センサ素子は、前記無機層が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体であって、前記基板と前記無機層との間に挟まれる本体部と、前記無機層によって被覆されていない前記基板の露出部に配置される両端部と、を有する薄膜抵抗体を備える。荷重センサ素子は、前記薄膜抵抗体から独立するとともに前記基板の一方の面の前記露出部に配置された第1の温度補償抵抗体と、前記基板の他方の面に配置され、前記第1の温度補償抵抗体と同じ挙動を示す第2の温度補償抵抗体とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本態様によれば、基板の一方の面に設けられた第1の温度補償抵抗体と、基板の他方の面に設けられた第2の温度補償抵抗体とは、無機層が受ける荷重によって基板が変形した際に、互いに逆極性の抵抗値変化を生ずる。具体的に説明すると、一例として、第1の温度補償抵抗体の抵抗値が高くなると、第2の温度補償抵抗体の抵抗値が低くなる。
【0010】
このため、第1の温度補償抵抗体が示す抵抗値と、第2の温度補償抵抗体が示す抵抗値とを利用することで、基板の変形により生じた抵抗値の変化をキャンセルすることができる。これにより、環境温度に依存する抵抗値の変化成分を取得することが可能となる。
【0011】
したがって、面圧荷重を測定する荷重センサ素子において、基板の変形に起因した抵抗値の変化への影響を抑止することで、温度補償精度の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る荷重センサ素子を表面側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る荷重センサ素子を裏面側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、第一実施形態に係る荷重センサ素子を示す図であり、各リードを外した荷重センサ素子を表面側から見た状態を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態に係る荷重センサ素子を示す図であり、各リードを外した荷重センサ素子を裏面側から見た状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、第二実施形態に係る荷重センサ素子を表面側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、第二実施形態に係る荷重センサ素子を裏面側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、第三実施形態に係る荷重センサ素子を表面側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、第三実施形態に係る荷重センサ素子を裏面側から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、第四実施形態に係る荷重センサ素子を示す図であり、各リードを外した荷重センサ素子を表面側から見た状態を示す平面図である。
【
図10】
図10は、第四実施形態に係る荷重センサ素子を示す図であり、各リードを外した荷重センサ素子を裏面側から見た状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
(第一実施形態)
まず、
図1から
図4を参照しながら第一実施形態に係る荷重センサ素子10について説明する。
【0015】
図1は、第一実施形態に係る荷重センサ素子10を基板12の表面14側から見た斜視図である。
図2は、第一実施形態に係る荷重センサ素子10を裏面24側から見た斜視図である。
図3は、第一実施形態に係る荷重センサ素子10を示す図であり、各リードを外した荷重センサ素子10を表面14側から見た状態を示す平面図である。
図4は、第一実施形態に係る荷重センサ素子10を示す図であり、各リードを外した荷重センサ素子10を裏面24側から見た状態を示す平面図である。
【0016】
本実施形態に係る荷重センサ素子10は、面圧荷重を測定するセンサ素子である。荷重センサ素子10は、一例として、工作機械に設けられ、工作機械の加工軸方向の荷重を検出して予圧管理を行う際に用いられる。
【0017】
図1に示すように、荷重センサ素子10は、セラミック材料又は表面に絶縁層を有する金属材料からなる基板12と、基板12の一方の面である表面14の一部を被覆するように設けられて荷重を受ける受圧面13を有する無機層16とを備える。
【0018】
図1及び
図2に示すように、荷重センサ素子10は、基板12の表面14に設けられた薄膜抵抗体20と第1の温度補償抵抗体22とを備える。荷重センサ素子10は、基板12の他方の面である裏面24に設けられた第2の温度補償抵抗体26を備える。
【0019】
(無機層)
図1に示すように、無機層16は、表面が受圧面13を構成する。受圧面13は、荷重によりその表面全体がほぼ均一に押圧される。無機層16は、平面視において矩形状(正方形を含む)をなす。無機層16は、無機材料で構成される。無機層16は、例えば絶縁性を有するセラミック基板からなる。無機層16の材料は、基板12と同様にジルコニア(ZrO
2)又はアルミナ(Al
2O
3)をセラミック材料の主成分として用いることが好ましい。
【0020】
無機層16は、基板12よりも面積が狭い。無機層16は、基板12の表面14の一部を覆う。無機層16は、基板12に設けられた薄膜抵抗体20の一部を覆い、薄膜抵抗体20の両端部(一端部34及び他端部36)は覆わない。
【0021】
無機層16は、樹脂材料からなる接着層(図示せず)によって基板12に固定される。接着層は、一例として、エポキシ樹脂を主成分とする。
【0022】
(基板)
基板12は、平面視において矩形状をなし、基板12は、長方形の板状に形成されている。基板12は、例えば絶縁性を有するセラミック材料からなる。基板12の圧縮強度を向上させる観点から、ジルコニア(ZrO2)又はアルミナ(Al2O3)をセラミック材料の主成分として用いることが好ましい。なお、基板12は、表面14に絶縁層を有する金属材料で構成してもよい。
【0023】
図3に示すように、基板12の表面14は、無機層16で被覆される被覆部27と、無機層16で被覆されていない露出部28とを有する。被覆部27は、無機層16から荷重が加えられる受圧領域30を構成する。
【0024】
(薄膜抵抗体)
薄膜抵抗体20は、無機層16が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体である。薄膜抵抗体20は、基板12と無機層16との間に挟まれる本体部32と、無機層16によって被覆されていない基板12の露出部28に配置される一端部34及び他端部36とを有する。
【0025】
この薄膜抵抗体20は、例えばニクロム(NiCr)系材料又はクロム(Cr)系材料からなる。これにより、抵抗温度係数(TCR:Temperature Coefficient of Resistance)が小さくなるので、荷重センサ素子10は、50℃以上の高温環境でも荷重を精度よく検出することができる。
【0026】
また、薄膜抵抗体20は、蒸着、スパッタリング等の真空処理により基板12の表面14に形成される抵抗層である。スパッタリングによる形成方法では、特性や膜厚が均一な膜が得られ易い。このため、蒸着、スパッタリング等の真空処理により均一の抵抗層が形成されるので、荷重センサ素子10は、荷重を精度よく検出することができる。
【0027】
薄膜抵抗体20は、基板12の一側縁40に沿って直線状に延在する第一薄膜延在部42を有する。第一薄膜延在部42は、基板12の一方側44から他方側46へ延在する。薄膜抵抗体20は、基板12の他側縁48に沿って直線状に延在する第二薄膜延在部50を有する。第二薄膜延在部50は、基板12の一方側44から他方側46へ延在する。
【0028】
薄膜抵抗体20は、第一薄膜延在部42及び第二薄膜延在部50を連設する薄膜連設部52を有する。薄膜連設部52は、基板12の他方側46に配置されるとともに、基板12の他端縁54に沿って直線状に延在する。
【0029】
第一薄膜延在部42と第二薄膜延在部50と薄膜連設部52とは、略同じ幅寸法に設定されている。
【0030】
第一薄膜延在部42の一方側44には、基板12の一端縁56へ向かうに従って幅寸法が広がる第一拡幅部58が連設されている。第一拡幅部58には、矩形状の第一矩形部60が連設されている。
【0031】
第二薄膜延在部50の一方側44には、基板12の一端縁56へ向かうに従って幅寸法が広がる第二拡幅部62が連設されている。第二拡幅部62には、矩形状の第二矩形部64が連設されている。これにより、薄膜抵抗体20は、U字型形状に形成されている。
【0032】
この薄膜抵抗体20は、薄膜連設部52と、第一薄膜延在部42の一部と、第二薄膜延在部50の一部とが、無機層16で被覆された本体部32を構成する。
【0033】
なお、本実施形態では、本体部32をU字型形状に形成する場合について説明したが、本実施形態は、この形状に限定されるものではない。例えば、本体部32は、折り返しを繰り返す蛇行形状としてもよい。
【0034】
薄膜抵抗体20は、第一薄膜延在部42の一部と、第一拡幅部58と、第一矩形部60とが、無機層16によって被覆されていない一端部34を構成する。また、薄膜抵抗体20は、第二薄膜延在部50の一部と、第二拡幅部62と、第二矩形部64とが、無機層16によって被覆されていない他端部36を構成する。
【0035】
薄膜抵抗体20の第一矩形部60には、矩形状の第1の電極70が設けられている。第1の電極70は、第一矩形部60に電気的に接続されているとともに、基板12の一方側44に配置される。
【0036】
また、薄膜抵抗体20の第二矩形部64には、矩形状の第2の電極72が設けられている。第2の電極72は、第二矩形部64に電気的に接続されるとともに、基板12の一方側44に配置される。第1の電極70及び第2の電極72は、それぞれ薄膜抵抗体20の第一矩形部60と薄膜抵抗体20の第二矩形部64の上にスパッタや蒸着等の方法により積層する。第1の電極70及び第2の電極72は、それぞれ薄膜抵抗体20の第一矩形部60と薄膜抵抗体20の第二矩形部64よりも小さな寸法になるように形成する。
【0037】
(第1の温度補償抵抗体)
第1の温度補償抵抗体22は、薄膜抵抗体20から独立するとともに、基板12の一方の面である表面14の露出部28に配置される。第1の温度補償抵抗体22は、薄膜抵抗体20の一端部34と他端部36との間に配置される。第1の温度補償抵抗体22は、薄膜抵抗体20が為すU字型の内側に配置される。
【0038】
第1の温度補償抵抗体22は、薄膜抵抗体20と同じ材料で形成される。また、第1の温度補償抵抗体22は、薄膜抵抗体20と同じ方法によって基板12に形成される。
【0039】
第1の温度補償抵抗体22は、基板12の露出部28内において一方側44から他方側46へ直線状に延在する第一表補償延在部80と第二表補償延在部82とを有する。第一表補償延在部80と第二表補償延在部82とは、互いに離間して配置される。
【0040】
第一表補償延在部80は、第二表補償延在部82よりも薄膜抵抗体20の一端部34に近い位置に配置される。第二表補償延在部82は、第一表補償延在部80よりも薄膜抵抗体20の他端部36に近い位置に配置される。
【0041】
第1の温度補償抵抗体22は、第一表補償延在部80の他方側46と第二表補償延在部82の他方側46とを連設する表補償連設部84を有する。表補償連設部84は、被覆部27と露出部28との境界線90に沿って直線状に延在する。これにより、第1の温度補償抵抗体22は、U字型形状に形成されている。
【0042】
第一表補償延在部80の一方側44の端部には、矩形状の第三矩形部92が連設されている。第二表補償延在部82の一方側44の端部には、矩形状の第四矩形部94が連設されている。
【0043】
第1の温度補償抵抗体22の第三矩形部92には、矩形状の第3の電極96が設けられている。第3の電極96は、第三矩形部92に電気的に接続されているとともに、基板12の一方側44に配置される。
【0044】
また、第1の温度補償抵抗体22の第四矩形部94には、矩形状の第4の電極98が設けられている。第4の電極98は、第四矩形部94に電気的に接続されるとともに、基板12の一方側44に配置される。
【0045】
第一表補償延在部80と第二表補償延在部82と表補償連設部84とは、略同じ幅寸法に設定されている。
【0046】
第1の温度補償抵抗体22の第一表補償延在部80から第二表補償延在部82までの領域における幅寸法は、薄膜抵抗体20の第一薄膜延在部42から第二薄膜延在部50までの領域における幅寸法よりも狭く設定されている。これにより、第1の温度補償抵抗体22と薄膜抵抗体20とが、略同じ抵抗値になるように設定されている。
【0047】
(第2の温度補償抵抗体)
第2の温度補償抵抗体26は、基板12の他方の面である裏面24に配置されている。第2の温度補償抵抗体26は、第1の温度補償抵抗体22と同じ挙動を示す。
【0048】
同じ挙動を示す構成は、第1の温度補償抵抗体22及び第2の温度補償抵抗体26の抵抗温度係数を同等とする第一構成と、第1の温度補償抵抗体22及び第2の温度補償抵抗体26における同じ変形に対する抵抗値の変化量の絶対値を同等とする第二構成との少なくとも一方を含む。
【0049】
本実施形態では、第1の温度補償抵抗体22と第2の温度補償抵抗体26との抵抗温度係数を同等とし、かつ同じ荷重によって変形した場合の第1の温度補償抵抗体22の抵抗値変化と第2の温度補償抵抗体26の抵抗値変化との絶対値を同等(正負は反対)として同じ挙動を示すように構成する。
【0050】
なお、抵抗温度係数とは、温度の変化とともに抵抗値が変化するときの変化の割合をいう。
【0051】
ここで、同じ荷重によって変形する第1の温度補償抵抗体22の抵抗値の変化と第2の温度補償抵抗体26の抵抗値の変化とは、抵抗値の増減方向(極性)が異なる。両温度補償抵抗体22、26の抵抗値の増減方向(極性)が異なる理由について説明する。
【0052】
荷重によって受圧面13が押圧されると、無機層16及び荷重センサ素子10を取り付けた搭載先(例えば台座)によって挟まれた基板12は、荷重方向に曲がるような変形が生ずる。このような変形を生じた場合、基板12の一方の面では引張方向の変形が生じ、その反対の面では圧縮方向の変形が生ずる。
【0053】
このとき、一方の面とその反対の面における変形量は略同じである。このため、基板12の表面14に形成された、同じ挙動を示す第1の温度補償抵抗体22と、基板12の裏面24に形成された第2の温度補償抵抗体26とでは、抵抗値の変化が絶対値として略同じで、かつ抵抗値の増減方向(極性)が異なることとなる。
【0054】
また、抵抗温度係数を同等にすることによるメリットについて説明する。
【0055】
各温度補償抵抗体22、26は、抵抗温度係数が略同じである。そのため、各温度補償抵抗体22、26を、ブリッジ回路の一辺に(並列または直列に)配置することによって、基板12の変形による各温度補償抵抗体22、26の抵抗値変化量を相殺することができる。これにより、温度変化による抵抗値変化量を、複雑な回路処理等を行うことなく、容易に取得することができる。
【0056】
抵抗温度係数が略同じとは、第1の温度補償抵抗体22の抵抗温度係数と第2の温度補償抵抗体26の抵抗温度係数との差が、予め定められた第一範囲内であることを示す。
【0057】
第一範囲は、一例として、100ppm/Kである。
【0058】
抵抗値変化が同等とは、各温度補償抵抗体22、26に所定の同一荷重を加えた後において、すなわち受圧領域30に荷重が印加されることに伴う基板12の表面14と裏面24の変形後において、第1の温度補償抵抗体22で生ずる抵抗値の変化と第2の温度補償抵抗体26で生ずる抵抗値の変化との差が予め定められた第二範囲内であることを示す。
所定の同一荷重とは、一例として、10kNが挙げられる。また、第二範囲は、一例として、100ppmである。
【0059】
このように、第1の温度補償抵抗体22を基板12の表面14に設け、第1の温度補償抵抗体22と同じ挙動を示す第2の温度補償抵抗体26を裏面24に設けることで、基板12が変形した場合の抵抗値変化を逆極性とすることができる。
【0060】
第2の温度補償抵抗体26は、薄膜抵抗体20及び第1の温度補償抵抗体22と同じ材料で形成される。また、第2の温度補償抵抗体26は、薄膜抵抗体20及び第1の温度補償抵抗体22と同じ方法によって基板12に形成される。
【0061】
第2の温度補償抵抗体26は、第1の温度補償抵抗体22が配置された位置の裏側に配置されている。また、第2の温度補償抵抗体26は、第1の温度補償抵抗体22と略同形状に形成されている。
【0062】
これにより、第2の温度補償抵抗体26は、基板12の厚み方向100(
図1及び
図2参照)において、第1の温度補償抵抗体22と重なる位置に配置されている。また、第2の温度補償抵抗体26は、第1の温度補償抵抗体22と略同じ抵抗値となるように設定されている。
【0063】
ここで、第2の温度補償抵抗体26が第1の温度補償抵抗体22と重なるとは、第2の温度補償抵抗体26を基板12の厚み方向100で第1の温度補償抵抗体22に重ねた状態において、外縁部の一部に、重ならない領域が生ずることを排除するものではない。
【0064】
重ならない領域は、一例として、第1の温度補償抵抗体22の総面積の50%以内、望ましくは25%以内とする。重ならない領域は少ない方が基板12の表面14及び裏面24が同じ状態になるため、第1の温度補償抵抗体22と第2の温度補償抵抗体26との挙動を同じにすることができるが、製造上の形成位置のバラツキは許容される。
【0065】
第2の温度補償抵抗体26は、露出部28の裏側の領域に配置されている。
【0066】
第2の温度補償抵抗体26は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体22の第一表補償延在部80と重なる位置に配置された第一裏補償延在部110と、第二表補償延在部82と重なる位置に配置された第二裏補償延在部112とを有する。
【0067】
また、第2の温度補償抵抗体26は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体22の表補償連設部84と重なる位置に配置された裏補償連設部114と、第三矩形部92と重なる位置に配置された第五矩形部116とを有する。
【0068】
さらに、第2の温度補償抵抗体26は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体22の第四矩形部94と重なる位置に配置された第六矩形部118を有する。
【0069】
第2の温度補償抵抗体26の第五矩形部116には、矩形状の第5の電極120が設けられている。第5の電極120は、第五矩形部116に電気的に接続されているとともに、基板12の一方側44に配置される。
【0070】
また、第2の温度補償抵抗体26の第六矩形部118には、矩形状の第6の電極122が設けられている。第6の電極122は、第六矩形部118に電気的に接続されるとともに、基板12の一方側44に配置される。
【0071】
これにより、各抵抗体20、22,26は、端部に電気的に接続された各電極70、72、96、98、120、122を有する。
【0072】
そして、各電極70、72、96、98、120、122は、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の材料からなる。
【0073】
第一裏補償延在部110と第二裏補償延在部112と裏補償連設部114とは、略同じ幅寸法に設定されている。
【0074】
第2の温度補償抵抗体26の第一裏補償延在部110から第二裏補償延在部112までの領域における幅寸法は、薄膜抵抗体20の第一薄膜延在部42から第二薄膜延在部50までの領域における幅寸法よりも狭く設定されている。これにより、第2の温度補償抵抗体26と薄膜抵抗体20とが、略同じ抵抗値になるように設定されている。
【0075】
図1に示すように、基板12の表面14に設けられた第1の電極70には、第一リード線130が接続される。第2の電極72には、第二リード線132が接続される。第3の電極96には、第三リード線134が接続される。第4の電極98には、第四リード線136が接続される。
【0076】
図2に示すように、基板12の裏面24に設けられた第5の電極120には、第五リード線138が接続される。第6の電極122には、第六リード線140が接続される。
【0077】
各リード線130、132、134、136、138、140は、はんだ142によって対応する各電極70、72、96、98、120、122に電気的に接続されている。
【0078】
なお、各リード線130、132、134、136、138、140は、例えば銅(Cu)系合金、鉄(Fe)系合金等の材料からなる。各リード線130、132、134、136、138、140としては、例えば被覆を有さない導線(スズ(Sn)等をめっきしたもの)、導線が被覆で覆われた被覆線、又は導線が絶縁層で被覆されたエナメル線などで構成される。また、平板状のリードフレームからなる端子を用いても良い。
【0079】
(作用及び効果)
次に、第一実施形態による作用効果について説明する。
【0080】
本実施形態の荷重センサ素子10は、面圧荷重を測定する荷重センサ素子10である。荷重センサ素子10は、基板12と、荷重を受ける受圧面13を有し、基板12の一方の面である表面14の一部を被覆するように設けられる無機層16とを備える。荷重センサ素子10は、無機層16が受ける荷重に応じて抵抗値が変化する抵抗体で構成された薄膜抵抗体20を備える。薄膜抵抗体20は、基板12と無機層16との間に挟まれる本体部32と、無機層16によって被覆されていない基板12の露出部28に配置される両端部である一端部34及び他端部36とを有する。荷重センサ素子10は、薄膜抵抗体20から独立するとともに基板12の一方の面である表面14の露出部28に配置された第1の温度補償抵抗体22を備える。荷重センサ素子10は、基板12の他方の面である裏面24に配置され、第1の温度補償抵抗体22と同じ挙動を示す第2の温度補償抵抗体26を備える。
【0081】
同じ挙動を示す構成とは、第1の温度補償抵抗体22及び第2の温度補償抵抗体26の抵抗温度係数を同等とする第一構成と、第1の温度補償抵抗体22及び第2の温度補償抵抗体26における同じ変形に対する抵抗値の変化量の絶対値を同等とする第二構成との少なくとも一方を含む。
【0082】
この構成において、基板12の表面14に設けられた第1の温度補償抵抗体22と、基板12の裏面24に設けられた第2の温度補償抵抗体26とは、無機層16が受ける荷重によって基板12が変形した際に、互いに逆極性の抵抗値変化を生ずる。
【0083】
具体的に説明すると、無機層16が受ける荷重によって基板12が変形した際に、一例として、第1の温度補償抵抗体22の抵抗値が大きくなると、第2の温度補償抵抗体26の抵抗値が小さくなる。
【0084】
このため、第1の温度補償抵抗体22が示す抵抗値と、第2の温度補償抵抗体26が示す抵抗値とを用いることで、基板12の変形により生じた抵抗値の変化をキャンセルすることができる。これにより、環境温度に依存する抵抗値の変化成分を取得することが可能となる。
【0085】
したがって、面圧荷重を測定する荷重センサ素子10において、基板12の変形に起因した影響を抑止することで、温度補償精度の向上が可能となる。
【0086】
なお、第1の温度補償抵抗体22と第2の温度補償抵抗体26とを用いて基板12の変形により生じた抵抗値の変化をキャンセルする方法としては、例えば第1の温度補償抵抗体22及び第2の温度補償抵抗体26を直列又は並列接続する方法が挙げられる。
【0087】
本実施形態の荷重センサ素子10において、第1の温度補償抵抗体22及び第2の温度補償抵抗体26は、略同形状であるとともに、基板12の厚み方向で重なる位置に配置されている。
【0088】
この構成において、無機層16が受ける荷重によって基板12が変形した際の第1の温度補償抵抗体22が示す抵抗値と、第2の温度補償抵抗体26が示す抵抗値とを、より近い値にすることができる。
【0089】
(第二実施形態)
第二実施形態に係る荷重センサ素子200について、
図5及び
図6を用いて説明する。なお、本実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分に関しては、第一実施形態と同符号を付して説明を割愛し、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0090】
図5は、第二実施形態に係る荷重センサ素子200を表面14側から見た斜視図である。
図6は、第二実施形態に係る荷重センサ素子200を裏面24側から見た斜視図である。
【0091】
第二実施形態に係る荷重センサ素子200は、第一実施形態と比較して、基板12に穴202を有する点が異なる。また、第二実施形態に係る荷重センサ素子200は、第一実施形態と比較して、第1の温度補償抵抗体204の配置及び第2の温度補償抵抗体206の配置が異なる。
【0092】
(第1の温度補償抵抗体)
第1の温度補償抵抗体204は、基板12の露出部28内において一方側44から他方側46へ直線状に延在する第一表補償延在部80と第二表補償延在部82とを有する。
【0093】
第1の温度補償抵抗体204は、第一表補償延在部80の一方側44と第二表補償延在部82の一方側44とを連設する表補償連設部84を有する。第1の温度補償抵抗体204の表補償連設部84は、基板12の一端縁56に沿って直線状に延在する。
【0094】
第一表補償延在部80の他方側46の端部には、矩形状の第三矩形部92が連設されている。第二表補償延在部82の他方側46の端部には、矩形状の第四矩形部94が連設されている。
【0095】
第1の温度補償抵抗体204の第三矩形部92には、第3の電極96が設けられている。第1の温度補償抵抗体204の第四矩形部94には、第4の電極98が設けられている。
【0096】
第1の温度補償抵抗体204の第一表補償延在部80の一方側44と第二表補償延在部82の一方側44とは、表補償連設部84で連設される。表補償連設部84は、基板12の一端縁56に沿って直線状に延在する。これにより、表補償連設部84は、穴202よりも一方側44に配置されている。
【0097】
これにより、第1の温度補償抵抗体204は、第3の電極96が設けられた一端部から第4の電極98が設けられた他端部までの領域が第3の電極96及び第4の電極98よりも薄膜抵抗体20から離れた箇所に配置される。また、第1の温度補償抵抗体204は、第3の電極96が設けられた一端部から第4の電極98が設けられた他端部までの領域が穴202を避けるようにして設けられている。
【0098】
(第2の温度補償抵抗体)
図6に示すように、第2の温度補償抵抗体206は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体204の第一表補償延在部80と重なる位置に配置された第一裏補償延在部110を有する。第2の温度補償抵抗体206は、第二表補償延在部82と重なる位置に配置された第二裏補償延在部112を有する。
【0099】
また、第2の温度補償抵抗体206は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体204の表補償連設部84と重なる位置に配置された裏補償連設部114を有する。
【0100】
さらに、第2の温度補償抵抗体206は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体204の第三矩形部92と重なる位置に配置された第五矩形部116と、第四矩形部94と重なる位置に配置された第六矩形部118とを有する。
【0101】
第2の温度補償抵抗体206の第五矩形部116には、第5の電極120が設けられている。第2の温度補償抵抗体206の第六矩形部118には、第6の電極122が設けられている。
【0102】
第2の温度補償抵抗体206の第一裏補償延在部110の一方側44と、第二裏補償延在部112の一方側44とは、裏補償連設部114で連設される。第2の温度補償抵抗体206の裏補償連設部114は、基板12の一端縁56に沿って直線状に延在する。これにより、裏補償連設部114は、穴202よりも一方側44に配置されている。
【0103】
また、第2の温度補償抵抗体206は、第5の電極120が設けられた一端部から第6の電極122が設けられた他端部までの領域が、第5の電極120及び第6の電極122よりも薄膜抵抗体20の本体部32(
図3参照)から離れた箇所に配置される。さらに、第2の温度補償抵抗体206は、第5の電極120が設けられた一端部から第6の電極122が設けられた他端部までの領域が、穴202を避けるようにして設けられている。
【0104】
そして、各電極70、72、96、98、120、122に接続された各リード線130、132、134、136、138、140は、導線が被覆で覆われた被覆線、又は導線が絶縁層で被覆されたエナメル線などが用いられる。
【0105】
(穴)
この荷重センサ素子200の基板12は、無機層16が基板12の厚み方向100で重なる受圧領域30と第1の温度補償抵抗体204との間、及び受圧領域30と第2の温度補償抵抗体206との間に変形抑制部である穴202を有する。
【0106】
ここで、変形抑制は、貫通穴であっても、底を有する有底穴であってもよい。また、変形抑制は、貫通する溝であっても、底を有する溝であってもよい。
【0107】
変形抑制は、無機層16からの荷重によって基板12が変形した際に、受圧領域30に生じた変形が第1の温度補償抵抗体204及び第2の温度補償抵抗体206が設けられた基板12の領域の変形を抑制するものであればよい。
【0108】
具体的に説明すると、穴202は、第1の温度補償抵抗体204の第三矩形部92及び第四矩形部94と受圧領域30との間に形成されている。
【0109】
この穴202は、被覆部27(
図3参照)と露出部28との境界線90に沿って延在する。穴202は、例えば、基板12を成形する金型又は基板12を加工するレーザーで形成することができる。
【0110】
穴202は、基板12を貫通するスリットで構成されている。これにより、穴202は、基板12の裏面24において、第2の温度補償抵抗体206の第五矩形部116及び第六矩形部118と受圧領域30との間に開口する。
【0111】
なお、本実施形態では、変形抑制部である穴202を、基板12を貫通するスリットで構成した場合について説明するが、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、変形抑制部である穴202は、溝で構成してもよい。
【0112】
穴202を溝で構成する場合、溝を基板12の表面14又は裏面24のうちいずれか一方に形成してもよいし、溝を基板12の表面14及び裏面24に形成してもよい。基板12の表面14の第1の温度補償抵抗体204及び裏面24の第2の温度補償抵抗体206の挙動を略同一の状態とするため、溝を基板12の表面及び裏面24の両面に形成することが望ましい。溝を基板12の表面14及び裏面24に形成する場合、両面の状態を略同じとするため、両溝を基板12の厚み方向100で重なる位置に形成するとともに、両溝を略同じ深さ及び略同じ長さ寸法で形成することが望ましい。
【0113】
(作用及び効果)
次に、第二実施形態による作用効果について説明する。
【0114】
本実施形態の荷重センサ素子200においても、第一実施形態と同一又は同等部分については、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0115】
本実施形態の荷重センサ素子200において、基板12は、無機層16が基板12の厚み方向100で重なる受圧領域30と第1の温度補償抵抗体204との間、又は受圧領域30と第2の温度補償抵抗体206との間のうちの少なくとも一方に変形抑制部である穴202を有する。
【0116】
この構成において、無機層16が受ける荷重によって基板12が変形した際に、受圧領域30に生じた変形が第1の温度補償抵抗体204及び第2の温度補償抵抗体206に伝達されるのを穴202によって抑制することができる。
【0117】
これにより、無機層16が受けた荷重が第1の温度補償抵抗体204及び第2の温度補償抵抗体206に与える影響を低減することができる。したがって、各温度補償抵抗体204、206を用いた温度補償精度の向上が可能となる。特に、穴202が貫通するスリットである場合には、第1の温度補償抵抗体204及び第2の温度補償抵抗体206が形成された基板12の露出部28と受圧領域30との間の一部に空間が設けられることになるため、荷重の影響はより低減される。
【0118】
また、穴202が貫通するスリットである場合には、基板12の表面14の穴202の位置と裏面15の穴202の位置とが同じ位置になるので、位置合わせが不要となり、製造が容易である。
【0119】
また、本実施形態の荷重センサ素子200において、荷重センサ素子10は、薄膜抵抗体20の一端部34と電気的に接続され、基板12の一方の側である一方側44に設けられる第1の電極70を備える。荷重センサ素子10は、薄膜抵抗体20の他端部36と電気的に接続され、基板の一方の側である一方側44に設けられる第2の電極72を備える。荷重センサ素子10は、第1の温度補償抵抗体22の一端部と電気的に接続され、基板12の一方の側である一方側44に設けられた第3の電極96を備える。荷重センサ素子10は、第1の温度補償抵抗体22の他端部と電気的に接続され、基板12の一方の側である一方側44に設けられた第4の電極98を備える。荷重センサ素子10は、第2の温度補償抵抗体26の一端部と電気的に接続され、基板12の一方の側である一方側44に設けられた第5の電極120を備える。荷重センサ素子10は、第2の温度補償抵抗体26の他端部と電気的に接続され、基板12の一方の側である一方側44に設けられた第6の電極122を備える。
【0120】
第1の温度補償抵抗体204は、第3の電極96が設けられた一端部から第4の電極98が設けられた他端部までの領域が第3の電極96及び第4の電極98よりも薄膜抵抗体20から離れた箇所に配置される。第2の温度補償抵抗体206は、第5の電極120が設けられた一端部から第6の電極122が設けられた他端部までの領域が第5の電極120及び第6の電極122よりも薄膜抵抗体20から離れた箇所に配置される。
【0121】
この構成において、無機層16が受けた荷重が第1の温度補償抵抗体204及び第2の温度補償抵抗体206に与える影響を低減することができる。これにより、各温度補償抵抗体204、206を用いた温度補償精度のさらなる向上が可能となる。
【0122】
(第三実施形態)
第三実施形態に係る荷重センサ素子300について、
図7及び
図8を用いて説明する。なお、本実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分に関しては、第一実施形態と同符号を付して説明を割愛し、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0123】
図7は、第三実施形態に係る荷重センサ素子300を表面14側から見た斜視図である。
図8は、第三実施形態に係る荷重センサ素子300を裏面24側から見た斜視図である。
【0124】
第三実施形態に係る荷重センサ素子300は、第一実施形態と比較して、第1の温度補償抵抗体302の配置及び第2の温度補償抵抗体304の配置が異なる。また、第三実施形態に係る荷重センサ素子300は、第一実施形態と比較して、薄膜抵抗体306の形状が異なる。
【0125】
(薄膜抵抗体)
薄膜抵抗体306は、基板12の一側縁40に沿って延在する第一薄膜延在部42と、基板12の他側縁48に沿って延在する第二薄膜延在部50と、第一薄膜延在部42及び第二薄膜延在部50を連設する薄膜連設部52とを有する。
【0126】
第一薄膜延在部42の一方側44の端部には、基板12の他側縁48へ向けて延出する第一延長部310が連設されている。第一延長部310の端部には、基板12の一端縁56へ向かうに従って幅寸法が広がる一縁側拡幅部312が連設されている。一縁側拡幅部312には、矩形状の第一矩形部314が連設されている。第一矩形部314には、第1の電極70が設けられている。
【0127】
第二薄膜延在部50の一方側44の端部には、基板12の一側縁40へ向けて延出する第二延長部320が連設されている。第二延長部320の端部には、基板12の一端縁56へ向かうに従って幅寸法が広がる他縁側拡幅部322が連設されている。他縁側拡幅部322には、矩形状の第二矩形部324が連設されている。第二矩形部324には、第2の電極72が設けられている。
【0128】
この薄膜抵抗体306は、薄膜連設部52と、第一薄膜延在部42と、第一延長部310と、一縁側拡幅部312の一部と、第二薄膜延在部50と、第二延長部320と、他縁側拡幅部322の一部とが無機層16で被覆された本体部32を構成する。
【0129】
一縁側拡幅部312の一部と第一矩形部314とは、無機層16で被覆されない一端部を構成する。また、他縁側拡幅部322の一部と第二矩形部324とは、無機層16で被覆されない他端部を構成する。
【0130】
(第1の温度補償抵抗体)
第1の温度補償抵抗体302は、基板12の露出部28内において一方側44から他方側46へ直線状に延在する第一表補償延在部330と第二表補償延在部332とを有する。
【0131】
第1の温度補償抵抗体302は、第一表補償延在部330の一方側44と第二表補償延在部332の一方側44とが表補償連設部334で連設される。第1の温度補償抵抗体302の表補償連設部334は、基板12の一端縁56に沿って直線状に延在する。
【0132】
第一表補償延在部330の他方側46の端部には、矩形状の第三矩形部340が連設されている。第三矩形部340は、第一矩形部314と基板12の一側縁40との間に設けられている。第三矩形部340には、第3の電極96が設けられている。
【0133】
第二表補償延在部332の他方側46の端部には、矩形状の第四矩形部342が連設されている。第四矩形部342は、第二矩形部324と基板12の他側縁48との間に設けられている。第四矩形部342には、第4の電極98が設けられている。
【0134】
これにより、第1の温度補償抵抗体302は、第3の電極96が設けられた一端部から第4の電極98が設けられた他端部までの領域が第3の電極96及び第4の電極98よりも薄膜抵抗体306から離れた箇所に配置される。
【0135】
(第2の温度補償抵抗体)
図8に示すように、第2の温度補償抵抗体304は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体302の第一表補償延在部330と重なる位置に配置された第一裏補償延在部350を有する。第2の温度補償抵抗体304は、第二表補償延在部332と重なる位置に配置された第二裏補償延在部352を有する。
【0136】
また、第2の温度補償抵抗体304は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体302の表補償連設部334と重なる位置に配置された裏補償連設部354と、第三矩形部340と重なる位置に配置された第五矩形部356とを有する。
【0137】
さらに、第2の温度補償抵抗体304は、基板12の厚み方向100において、第1の温度補償抵抗体302の第四矩形部342と重なる位置に配置された第六矩形部358を有する。
【0138】
第2の温度補償抵抗体304の第五矩形部356には、第5の電極120が設けられている。第2の温度補償抵抗体304の第六矩形部358には、第6の電極122が設けられている。
【0139】
これにより、第2の温度補償抵抗体304は、第5の電極120が設けられた一端部から第6の電極122が設けられた他端部までの領域が第5の電極120及び第6の電極122よりも薄膜抵抗体306から離れた箇所に配置される。
【0140】
そして、各電極70、72、96、98、120、122に接続された各リード線130、132、134、136、138、140は、導線が被覆で覆われた被覆線、又は導線が絶縁層で被覆されたエナメル線などが用いられる。
【0141】
(作用及び効果)
次に、第三実施形態による作用効果について説明する。
【0142】
本実施形態の荷重センサ素子300においても、第一実施形態と同一又は同等部分については、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0143】
また、本実施形態の荷重センサ素子300において、第1の温度補償抵抗体302は、第3の電極96が設けられた一端部から第4の電極98が設けられた他端部までの領域が第3の電極96及び第4の電極98よりも薄膜抵抗体306から離れた箇所に配置される。第2の温度補償抵抗体304は、第5の電極120が設けられた一端部から第6の電極122が設けられた他端部までの領域が第5の電極120及び第6の電極122よりも薄膜抵抗体306から離れた箇所に配置される。
【0144】
この構成にあっても、第二実施形態と同様に、無機層16が受けた荷重が第1の温度補償抵抗体302及び第2の温度補償抵抗体304に与える影響を低減することができる。これは、第1の温度補償抵抗体302及び第2の温度補償抵抗体304と、受圧領域30との距離が離れることによる。これにより、各温度補償抵抗体302、304を用いた温度補償精度のさらなる向上が可能となる。
【0145】
また、本実施形態の荷重センサ素子300においては、第二実施形態の荷重センサ素子200と比較して、第1の温度補償抵抗体302の表補償連設部334と、第2の温度補償抵抗体304の裏補償連設部354とを長くすることができる。
【0146】
これにより高い抵抗値を実現するにあたり、第二実施形態の第1の温度補償抵抗体22及び第2の温度補償抵抗体26と比較して、第1の温度補償抵抗体302及び第2の温度補償抵抗体304の幅寸法を広くすることができる。また、第1の温度補償抵抗体302及び第2の温度補償抵抗体304の幅寸法を、第二実施形態の第1の温度補償抵抗体22及び第2の温度補償抵抗体26と同寸法にした場合には、各温度補償抵抗体22、26よりも、抵抗値を高くすることができる。
【0147】
各抵抗体の抵抗値を高くすることによって、各抵抗体が構成する回路の低消費電力化が可能となる。また、製造可能な抵抗値の範囲を広げることで、抵抗値の異なる製品を幅広く揃えることができ、回路設計の自由度の向上に寄与することができる。
【0148】
また、第1の温度補償抵抗体302及び第2の温度補償抵抗体304は、受圧領域30から離れた位置に配置される。このため、受圧領域30で生じた変形が第1の温度補償抵抗体302及び第2の温度補償抵抗体304に与える影響を抑制することが可能となる。
【0149】
(第四実施形態)
第四実施形態に係る荷重センサ素子400について、
図9及び
図10を用いて説明する。なお、本実施形態において、第三実施形態と同一又は同等部分に関しては、第三実施形態と同符号を付して説明を割愛し、第三実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0150】
図9は、第四実施形態に係る荷重センサ素子400を示す図であり、各リードを外した荷重センサ素子400を表面14側から見た状態を示す平面図である。
図10は、第四実施形態に係る荷重センサ素子400を示す図であり、各リードを外した荷重センサ素子400を裏面24側から見た状態を示す平面図である。
【0151】
第四実施形態に係る荷重センサ素子400は、第三実施形態と比較して、薄膜抵抗体306、第1の温度補償抵抗体302、及び第2の温度補償抵抗体304が抵抗値を調整するための調整部を有する点が異なる。
【0152】
(薄膜抵抗体)
図9に示すように、薄膜抵抗体306は、第一延長部310と第一矩形部314とが直線状の第一連結部410で連結されている。薄膜抵抗体306は、第二延長部320と第二矩形部324とが直線状の第二連結部412で連結されている。
【0153】
第一延長部310には、基板12の他端縁54側に突出した矩形状の第一調整部414が一体形成されている。第二延長部320には、基板12の他端縁54側に突出した矩形状の第二調整部416が一体形成されている。
【0154】
(第1の温度補償抵抗体)
第1の温度補償抵抗体302において、表補償連設部334には、基板12の他端縁54側に突出した矩形状の第三調整部420と第四調整部422とが一体形成されている。表補償連設部334において、第三調整部420は、第四調整部422よりも第三矩形部340に近い位置に配置されている。
【0155】
(第2の温度補償抵抗体)
図10に示すように、第2の温度補償抵抗体304において、裏補償連設部354には、基板12の他端縁54側に突出した矩形状の第五調整部430と第六調整部432とが一体形成されている。裏補償連設部354において、第五調整部430は、第六調整部432よりも第五矩形部356に近い位置に配置されている。
【0156】
なお、本実施形態では、第1の温度補償抵抗体302の表補償連設部334と、第2の温度補償抵抗体304の裏補償連設部354とに、各調整部420、422、430、432を設けた場合について説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、第1の温度補償抵抗体302又は第2の温度補償抵抗体304のうちの少なくとも一方に抵抗値を調整するための調整部を設けてもよい。
【0157】
(作用及び効果)
次に、第四実施形態による作用効果について説明する。
【0158】
本実施形態の荷重センサ素子400においても、第三実施形態と同一又は同等部分については、第三実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0159】
また、本実施形態の荷重センサ素子400において、第1の温度補償抵抗体302又は第2の温度補償抵抗体304のうちの少なくとも一方は、抵抗値を調整するための調整部420、422、430、432を有する。
【0160】
この構成において、各温度補償抵抗体302、304のいずれかの調整部420、422、430、432をレーザー等によりトリミングすることよって第1の温度補償抵抗体302又は第2の温度補償抵抗体304の抵抗値を調整可能である。これにより、第1の温度補償抵抗体302と第2の温度補償抵抗体304との抵抗値が略同じ値に近づくように調整することが可能となる。
【0161】
このため、第1の温度補償抵抗体302の抵抗値と第2の温度補償抵抗体304の抵抗値とが大きく異なる場合と比較して、各温度補償抵抗体302、304を用いた温度補償を容易に行うことが可能となる。
【0162】
また、本実施形態では、薄膜抵抗体306と第1の温度補償抵抗体302と第2の温度補償抵抗体304とに各調整部414、416、420、422、430、432が設けられている。
【0163】
このため、各調整部414、416、420、422、430、432をトリミングすることによって各抵抗体306、302、304の抵抗値を目的とする抵抗値に近づけることが可能となる。したがって、基板12の表面14の状態等によって基板12に形成された各抵抗体306、302、304の抵抗値が目的とする抵抗値から大幅にずれた場合であっても、各抵抗体306、302、304の抵抗値を目的とする抵抗値に近づけることが可能となる。
【0164】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0165】
10、200、300、400 荷重センサ素子
12 基板
13 受圧面
14 表面
16 無機層
20、306 薄膜抵抗体
22、204、302 第1の温度補償抵抗体
24 裏面
26、206、304 第2の温度補償抵抗体
27 被覆部
28 露出部
30 受圧領域
32 本体部
34 一端部
36 他端部
44 一方側
70 第1の電極
72 第2の電極
96 第3の電極
98 第4の電極
100 厚み方向
120 第5の電極
122 第6の電極
202 穴
420 第三調整部
422 第四調整部
430 第五調整部
432 第六調整部