(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143464
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230928BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050867
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石谷 拓也
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB25
2C056EB59
2C056EC08
2C056EC11
2C056EC35
2C056EC54
2C056EE17
2C056FA10
2C056HA42
2C056HA44
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】処理液の吐き捨て時にインクヘッドへの処理液のミストの付着を低減する。
【解決手段】インクジェット記録装置10Aは、色材インクおよび色材に対して凝集作用を有する処理液(凝集剤)を噴出する処理液ヘッド(凝集剤ヘッド11)と色材インクを噴出するインクヘッド12とを単一のキャリッジ15に備えるスキャン型のインクジェット記録装置である。インクジェット記録装置10Aの制御部19は、同一スキャン内で、処理液の吐き捨て後に、インクヘッド12が処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)を通過しないように制御する。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材インクおよび色材に対して凝集作用を有する処理液を噴出する処理液ヘッドと前記色材インクを噴出するインクヘッドとを単一のキャリッジに備えるスキャン型のインクジェット記録装置であって、
同一スキャン内で、前記処理液の吐き捨て後に、インクヘッドが処理液吐き捨て部を通過しない、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記処理液の吐き捨ては、主走査方向において、復路又は端部での切り返し時に行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
主走査方向において、前記処理液吐き捨て部が印画領域よりも上流側にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
主走査方向において、前記処理液吐き捨て部がインク吐き捨て部よりも上流側にある、
ことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記処理液吐き捨て部とインク吐き捨て部が別部材で構成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
印画領域の一方に前記処理液吐き捨て部、他方に前記インク吐き捨て部を配置する、
ことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記処理液吐き捨て部と前記インク吐き捨て部の少なくとも一方は印画領域まで跨っている、
ことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記処理液の吐き捨ての有無を、所定の条件を基に決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記処理液の吐き捨ての有無を、前回のスキャン内での前記処理液のDuty率を基準に決定する、
ことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記処理液とは異なる他の処理液であって、かつ、前記色材インクおよび前記色材に対して凝集作用を有しない前記他の処理液をインクジェットで印刷し、
前記他の処理液の吐き捨ては前記色材インクと同様に行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記色材インクの固形分濃度が10%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
色材インクおよび色材に対して凝集作用を有する処理液を噴出する処理液ヘッドと前記色材インクを噴出するインクヘッドとを単一のキャリッジに備えるスキャン型のインクジェット記録装置の制御部に、
同一スキャン内で、前記処理液の吐き捨て後に、インクヘッドが処理液吐き捨て部を通過しないように制御させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は、乾燥によるインクヘッドからの吐出不良の抑制のため、印画部や非印画部においてインクの吐き捨て(フラッシング)を行っている。
【0003】
そしてインクジェット記録装置の中には、インクを噴出するインクヘッドと、インクに対して凝集作用を有する処理液(凝集剤)を噴出する処理液ヘッドとを、単一のキャリッジに搭載したものがある(例えば、特許文献1参照)。また、インクジェット記録装置の中には、インクや凝集剤等を吐き捨てる吐き捨て部を備えるものがある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、フラッシングによって記録ヘッドから吐出されたインク滴を受ける容器として機能するキャッピング装置を有するインクジェット記録装置が記載されている。
【0004】
また、インクジェット記録装置の中には、スポンジ等の吐き捨て部材が吐き捨て部に配置され、吐き捨て部材の上で各ヘッドのノズルからインクや凝集剤等を噴出するものがある。
【0005】
このインクジェット記録装置は、ヘッドのノズルと対象物との間のギャップの増加に伴い、吐き捨て時に発生するインクや凝集剤等のミストの浮遊量も増加する。そのため、一般的にはヘッドのノズルと対象物との間のギャップは、可能な限り小さく設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-72234号公報
【特許文献2】特願2005-225115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スポンジを吐き捨て部材に使用する場合、吐き捨て部材の加工精度の問題もあり、吐き捨て部でのギャップは、印画部でのギャップよりも広く設計されている。また、厚みのある布を対象として印画する場合、ヘッドのノズルと対象部とのギャップを調整した結果、吐き捨て部でのギャップが更に大きくなる。したがって、吐き捨て部のギャップは印画部より大きくなり易く、吐き捨て部でのミストの浮遊量が増え易い。
【0008】
特に、単一のキャリッジにインクヘッドと処理液ヘッドとを搭載する場合、処理液のミストがインクヘッドのノズルに付着してインクの凝集を発生させるため、ノズル詰まりが発生し易くなる。また、一般的に、色材インクのインク量に対して少ない凝集剤量でインクを凝集させるため、同等のミスト量であっても、処理液ヘッドへのインクのミストの付着時よりも、インクヘッドへの処理液のミストの付着時に、ノズル詰まりが発生し易くなる。
【0009】
前記した特許文献1に記載された従来技術は、吐き捨て部の配列や位置を言及していないため、インクヘッドへの処理液のミストの付着によって、インクヘッドにノズル詰まりが発生し易い。
【0010】
また、前記した特許文献2に記載された従来技術は、処理液を印画部で吐き捨てるため、吐き捨て時のギャップが小さく、吐き捨て時の処理液のミストの浮遊量を小さくすることができる。しかしながら、特許文献2に記載された従来技術は、処理液を印画部での吐き捨てるため、処理液の濃度ムラを発生させてしまい、ベタ画像の多い印刷時に印刷品位を低下させてしまう。
【0011】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、処理液の吐き捨て時にインクヘッドへの処理液のミストの付着を低減するインクジェット記録装置、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0013】
(1)色材インクおよび色材に対して凝集作用を有する処理液を噴出する処理液ヘッドと前記色材インクを噴出するインクヘッドとを単一のキャリッジに備えるスキャン型のインクジェット記録装置であって、同一スキャン内で、前記処理液の吐き捨て後に、インクヘッドが前記処理液の吐き捨て部を通過しない、ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【0014】
(2)前記処理液の吐き捨ては、主走査方向において、復路又は端部での切り返し時に行われる、ことを特徴とする上記(1)に記載のインクジェット記録装置。
【0015】
(3)主走査方向において、前記処理液吐き捨て部が印画領域よりも上流側にある、ことを特徴とする上記(1)に記載のインクジェット記録装置。
【0016】
(4)主走査方向において、前記処理液吐き捨て部がインク吐き捨て部よりも上流側にある、ことを特徴とする上記(3)に記載のインクジェット記録装置。
【0017】
(5)前記処理液吐き捨て部とインク吐き捨て部が別部材で構成されている、ことを特徴とする上記(4)に記載のインクジェット記録装置。
【0018】
(6)印画領域の一方に前記処理液吐き捨て部、他方に前記インク吐き捨て部を配置する、ことを特徴とする上記(5)に記載のインクジェット記録装置。
【0019】
(7)前記処理液吐き捨て部と前記インク吐き捨て部の少なくとも一方は印画領域まで跨っている、ことを特徴とする上記(6)に記載のインクジェット記録装置。
【0020】
(8)前記処理液の吐き捨ての有無を、所定の条件を基に決定する、ことを特徴とする上記(1)に記載のインクジェット記録装置。
【0021】
(9)前記処理液の吐き捨ての有無を、前回のスキャン内での前記処理液のDuty率を基準に決定する、ことを特徴とする上記(8)に記載のインクジェット記録装置。
【0022】
(10)前記処理液とは異なる他の処理液であって、かつ、前記色材インクおよび前記色材に対して凝集作用を有しない前記他の処理液をインクジェットで印刷し、前記他の処理液の吐き捨ては前記色材インクと同様に行う、ことを特徴とする上記(1)に記載のインクジェット記録装置。
【0023】
(11)前記色材インクの固形分濃度が10%以上である、ことを特徴とする上記(1)に記載のインクジェット記録装置。
【0024】
(12)色材インクおよび色材に対して凝集作用を有する処理液を噴出する処理液ヘッドと前記色材インクを噴出するインクヘッドとを単一のキャリッジに備えるスキャン型のインクジェット記録装置の制御部に、同一スキャン内で、前記処理液の吐き捨て後に、インクヘッドが処理液吐き捨て部を通過しないように制御させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、処理液の吐き捨て時にインクヘッドへの処理液のミストの付着を低減することで、処理液の吐き捨て時に発生するミストによるノズル詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】第1実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図1B】第1実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図1C】第1実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【
図1D】第1実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(4)である。
【
図2A】第2実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図2B】第2実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図2C】第2実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【
図2D】第2実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(4)である。
【
図3A】第3実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図3B】第3実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図3C】第3実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【
図3D】第3実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(4)である。
【
図4A】第4実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図4B】第4実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図4C】第4実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【
図4D】第4実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(4)である。
【
図4E】第4実施例に係るインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(5)である。
【
図5】第1変形例のインクジェット記録装置の構成図である。
【
図6A】第2変形例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図6B】第2変形例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図6C】第2変形例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【
図6D】第2変形例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(4)である。
【
図6E】第2変形例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(5)である。
【
図6F】第2変形例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(6)である。
【
図6G】第2変形例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(7)である。
【
図6H】第2変形例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(8)である。
【
図7A】第1比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図7B】第1比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図7C】第1比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【
図8A】第2比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図8B】第2比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図8C】第2比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【
図9A】第3比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図9B】第3比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図9C】第3比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【
図10A】第4比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(1)である。
【
図10B】第4比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(2)である。
【
図10C】第4比較例のインクジェット記録装置の構成と動作の説明図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0028】
本発明は、色材インクおよび色材に対して凝集作用を有する処理液(凝集剤)を噴出する処理液ヘッドと前記色材インクを噴出するインクヘッドとを単一のキャリッジに備えるスキャン型のインクジェット記録装置であって、インクジェット記録装置の制御部は、同一スキャン内で、処理液(凝集剤)の吐き捨て後に、インクヘッドが処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部)を通過しないように制御する、ことを特徴とするインクジェット記録装置を提供するものである。
【0029】
後記する第1実施例から第4実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、前記した「同一スキャン内で、処理液(凝集剤)の吐き捨て後に、インクヘッドが処理液の吐き捨て部を通過しないように制御する」という特徴を有するものである。第1実施例から第4実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、前記した特徴を有するため、処理液(凝集剤)の吐き捨て時にインクヘッドへの処理液のミストの付着を低減することができる。
【0030】
[第1実施例]
まず、
図1A乃至
図1Dを参照して、本発明の第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aの構成と動作について説明する。
図1A乃至
図1Dは、それぞれ、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aの構成と動作の説明図である。
図1A乃至
図1Dは、キャリッジ15付近の構成を模式的に示している(以下、他の図面も同様である。)。ここでは、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aがスキャン型のプリンタとして構成されているものとして説明する。
【0031】
図1Aに示すように、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aは、凝集剤ヘッド11とインクヘッド12とが搭載されたキャリッジ15と、制御部19と、印画領域20と、凝集剤吐き捨て部21と、インク吐き捨て部22と、を有している。
【0032】
凝集剤ヘッド11は、下面側のヘッド面から凝集剤を噴出するヘッドである。凝集剤は、色材インクおよび色材に対して凝集作用を有する処理液である。ここでは、「色材インク」が凝集剤ヘッド11から記録媒体に噴出される液体であり、「色材」が記録媒体に塗布された液体であるものとして説明する。
インクヘッド12は、下面側のヘッド面から色材インクを噴出するヘッドである。
キャリッジ15は、凝集剤ヘッド11とインクヘッド12とを搭載し、主走査方向(図面の左右方向)に移動する部材である。ここでは、キャリッジ15の中心部から処理液ヘッド(凝集剤ヘッド11)の位置に向かう方向を上流として説明する。
【0033】
制御部19は、凝集剤ヘッド11の噴出動作、インクヘッド12の噴出動作、キャリッジ15の移動動作等を制御する手段である。制御部19は、同一スキャン内で、処理液(凝集剤)の吐き捨て後に、インクヘッド12が処理液の吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)を通過しないように制御するものである。
【0034】
印画領域20は、画像を印刷することが可能な領域である。
凝集剤吐き捨て部21は、凝集剤を吐き捨てる部位である。凝集剤吐き捨て部21には、スポンジや布等の吐き捨て部材が配置されている。
インク吐き捨て部22は、色材インクを吐き捨てる部位である。インク吐き捨て部22には、スポンジや布等の吐き捨て部材が配置されている。
【0035】
図1A乃至
図1Dは、凝集剤(処理液)を凝集剤吐き捨て部21に吐き捨てる場合の動作を示している(以下、他の実施形態の図面も同様である。)。凝集剤(処理液)の吐き捨ては、任意のタイミングで行うことができる。例えば、画像を印刷する場合、つまり、印画領域20の上に配置された布帛やシート状の樹脂等の記録媒体にインクヘッド12から色材インクを噴出して画像を印刷する場合に、所定の条件を基に凝集剤(処理液)の吐き捨ての有無を決定することができる。その際の所定の条件としては、例えば、凝集剤(処理液)はDuty率が小さいほど乾き易いため、前回のスキャン内での凝集剤(処理液)のDuty率が任意に定められた閾値以下であることを用いることができる。
【0036】
なお、本実施形態において、Duty率とは、以下の式(1)で算出される値である。
Duty率(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100 …(1)
上記の式(1)中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。Duty率が100%の場合とは、画素に対する単色の最大インク重量を意味する。
【0037】
図1Aに示すように、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aでは、キャリッジ15は、図面の右側から左側に向けて、凝集剤ヘッド11と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色材インクに対応する4つのインクヘッド12a,12b,12c,12dと、を搭載している(以下、他の実施例も同様である。)。また、印画領域20の右側に凝集剤吐き捨て部21が配置され、印画領域20の左側にインク吐き捨て部22が配置されている。
【0038】
ここでは、印画領域20の左側の領域外から右側の領域外にキャリッジ15が移動する経路を「往路」とし、印画領域20の右側の領域外から左側の領域外にキャリッジ15が移動する経路を「復路」として説明する(以下、他の実施例も同様である。)。ただし、インクジェット記録装置は、逆の構成にすること、つまり、印画領域20の右側の領域外から左側の領域外にキャリッジ15が移動する経路を「往路」とし、印画領域20の左側の領域外から右側の領域外にキャリッジ15が移動する経路を「復路」として構成することもできる(以下、他の実施例も同様である。)。
図1Aに示す例では、キャリッジ15は、右側に凝集剤ヘッド11を搭載し、左側にインクヘッド12を搭載している。つまり、キャリッジ15は、往路方向において上流側に凝集剤ヘッド11を搭載し、下流側にインクヘッド12を搭載している。
【0039】
図1Aに示す例では、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aの制御部19は、印画領域20の左側の領域外にキャリッジ15を配置させている。ここで、
図1Bに示すように、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aの制御部19は、キャリッジ15に対して、図面の左から右への方向となる往路方向(白抜き矢印D11A参照)に向けて、印画領域20の右側の領域外まで移動するように制御したとする。
【0040】
次に、
図1Cに示すように、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aの制御部19は、キャリッジ15に対して、凝集剤ヘッド11が凝集剤吐き捨て部21の上に配置されるように、図面の右から左への方向となる復路方向(白抜き矢印D12A参照)に向けて、移動するように制御し、さらに、凝集剤ヘッド11に対して、凝集剤吐き捨て部21に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0041】
次に、
図1Dに示すように、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aの制御部19は、復路方向(白抜き矢印D13A参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過しないため、第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aは、インクヘッド12のヘッド面(下面)への凝集剤のミストMの付着を低減することができる。このような第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aは、ヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0042】
[第2実施例]
以下、
図2A乃至
図2Dを参照して、第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bの構成と動作について説明する。
図2A乃至
図2Dは、それぞれ、第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bの構成と動作の説明図である。
【0043】
図2Aに示すように、第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bでは、印画領域20の右側にインク吐き捨て部22が配置され、さらに、インク吐き捨て部22の右側に凝集剤吐き捨て部21が配置されている。
【0044】
図2Aに示す例では、第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bの制御部19は、印画領域20の左側の領域外にキャリッジ15を配置させている。ここで、
図2Bに示すように、第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bの制御部19は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D11B参照)に向けて、印画領域20の右側の領域外まで移動するように制御したとする。
【0045】
次に、
図2Cに示すように、第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bの制御部19は、キャリッジ15に対して、凝集剤ヘッド11が凝集剤吐き捨て部21の上に配置されるように、復路方向(白抜き矢印D12B参照)に向けて、移動するように制御し、さらに、凝集剤ヘッド11に対して、凝集剤吐き捨て部21に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0046】
次に、
図2Dに示すように、第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bの制御部19は、復路方向(白抜き矢印D13B参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過しないため、第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bは、インクヘッド12のヘッド面(下面)への凝集剤のミストMの付着を低減することができる。このような第2実施例に係るインクジェット記録装置10Bは、ヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0047】
[第3実施例]
以下、
図3A乃至
図3Dを参照して、第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cの構成と動作について説明する。
図3A乃至
図3Dは、それぞれ、第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cの構成と動作の説明図である。
【0048】
図3Aに示すように、第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cでは、印画領域20の右側に凝集剤吐き捨て部21が配置され、さらに、凝集剤吐き捨て部21の右側にインク吐き捨て部22が配置されている。
【0049】
図3Aに示す例では、第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cの制御部19は、印画領域20の左側の領域外にキャリッジ15を配置させている。ここで、
図3Bに示すように、第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cの制御部19は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D11C参照)に向けて、印画領域20の右側の領域外まで移動するように制御したとする。
【0050】
次に、
図3Cに示すように、第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cの制御部19は、キャリッジ15に対して、凝集剤ヘッド11が凝集剤吐き捨て部21の上に配置されるように、復路方向(白抜き矢印D12C参照)に向けて、移動するように制御し、さらに、凝集剤ヘッド11に対して、凝集剤吐き捨て部21に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0051】
次に、
図3Dに示すように、第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cの制御部19は、復路方向(白抜き矢印D13C参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過しないため、第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cは、インクヘッド12のヘッド面(下面)への凝集剤のミストMの付着を低減することができる。このような第3実施例に係るインクジェット記録装置10Cは、ヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0052】
[第4実施例]
以下、
図4A乃至
図4Eを参照して、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dの構成と動作について説明する。
図4A乃至
図4Eは、それぞれ、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dの構成と動作の説明図である。
【0053】
図4Aに示すように、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dでは、印画領域20の左側に凝集剤吐き捨て部21が配置され、さらに、凝集剤吐き捨て部21の左側にインク吐き捨て部22が配置されている。
【0054】
図4Aに示す例では、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dの制御部19は、印画領域20の左側の領域外にキャリッジ15を配置させている。ここで、
図4Bに示すように、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dの制御部19は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D11D参照)に向けて、印画領域20の右側の領域外まで移動するように制御したとする。
【0055】
次に、
図4Cに示すように、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dの制御部19は、キャリッジ15に対して、凝集剤ヘッド11が凝集剤吐き捨て部21の上に配置されるように、復路方向(白抜き矢印D12D参照)に向けて、移動するように制御し、さらに、凝集剤ヘッド11に対して、凝集剤吐き捨て部21に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0056】
次に、
図4Dに示すように、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dの制御部19は、復路方向(白抜き矢印D13D参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過しないため、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dは、インクヘッド12のヘッド面(下面)への凝集剤のミストMの付着を低減することができる。また、このとき、凝集剤のミストMが落下して凝集剤吐き捨て部21に付着するため、凝集剤吐き捨て部21上で浮遊する凝集剤のミストMの密度が低下する。
【0057】
次に、
図4Eに示すように、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dの制御部19は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D14D参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、凝集剤吐き捨て部21上で浮遊する凝集剤のミストMの密度が低下しているため、第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dは、インクヘッド12のヘッド面(下面)への凝集剤のミストMの付着を低減することができる。このような第4実施例に係るインクジェット記録装置10Dは、ヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0058】
ここで、第1実施例から第4実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dの構成と動作を分かり易く説明するために、前記した「同一スキャン内で、処理液(凝集剤)の吐き捨て後に、インクヘッドが処理液の吐き捨て部を通過しないように制御する」という特徴を有していない第1比較例から第4比較例のインクジェット記録装置110A,110B,110C,110Dの構成と動作について説明について説明する。第1比較例から第4比較例のインクジェット記録装置110A,110B,110C,110Dは、前記した特徴を有していないため、処理液(凝集剤)の吐き捨て時にインクヘッドへの処理液のミストの付着を低減することができないものである。
【0059】
[第1比較例]
まず、
図7A乃至
図7Dを参照して、第1比較例のインクジェット記録装置110Aの構成と動作について説明する。
図7A乃至
図7Dは、それぞれ、第1比較例のインクジェット記録装置110Aの構成と動作の説明図である。
【0060】
図7Aに示すように、第1比較例のインクジェット記録装置110Aは、第1実施例から第4実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10D(
図1Aから
図4E参照)と比較すると、制御部19の代わりに、制御部119を有する点で相違する。第1比較例のインクジェット記録装置110Aの制御部119は、制御部19と同様に、凝集剤ヘッド11の噴出動作、インクヘッド12の噴出動作、キャリッジ15の移動動作等を制御する手段である。ただし、制御部119は、同一スキャン内で、処理液(凝集剤)の吐き捨て後に、インクヘッド12が処理液の吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)を通過する動作を実行することがある。
【0061】
図7Aに示すように、第1比較例のインクジェット記録装置110Aでは、キャリッジ15は、図面の右側から左側に向けて、凝集剤ヘッド11と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色材インクに対応する4つのインクヘッド12a,12b,12c,12dと、を搭載している(以下、他の比較例も同様である。)。また、印画領域20の右側に凝集剤吐き捨て部21が配置され、印画領域20の左側にインク吐き捨て部22が配置されている。
【0062】
図7Aに示す例では、第1比較例のインクジェット記録装置110Aの制御部119は、凝集剤吐き捨て部21の上に凝集剤ヘッド11を配置した状態で、キャリッジ15を停止させている。ここで、
図7Bに示すように、第1比較例のインクジェット記録装置110Aの制御部119は、凝集剤ヘッド11に対して、凝集剤吐き捨て部21に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0063】
次に、
図7Cに示すように、第1比較例のインクジェット記録装置110Aの制御部119は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D111A参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過するため、凝集剤のミストMがインクヘッド12(特にインクヘッド12a)のヘッド面(下面)に付着する可能性がある。凝集剤のミストMがインクヘッド12のヘッド面に付着すると、ヘッド面で色材インクの凝集が発生してしまい、ノズル詰まりが発生し易くなる。そのため、第1比較例のインクジェット記録装置110Aのような構成及び動作は、好ましくない。
【0064】
[第2比較例]
次に、
図8A乃至
図8Dを参照して、第2比較例のインクジェット記録装置110Bの構成と動作について説明する。
図8A乃至
図8Dは、それぞれ、第2比較例のインクジェット記録装置110Bの構成と動作の説明図である。
【0065】
図8Aに示すように、第2比較例のインクジェット記録装置110Bでは、印画領域20の左側に凝集剤吐き捨て部21が配置され、さらに、凝集剤吐き捨て部21の左側にインク吐き捨て部22が配置されている。
【0066】
図8Aに示す例では、第2比較例のインクジェット記録装置110Bの制御部119は、凝集剤吐き捨て部21の上に凝集剤ヘッド11を配置した状態で、キャリッジ15を停止させている。ここで、
図8Bに示すように、第2比較例のインクジェット記録装置110Bの制御部119は、凝集剤ヘッド11に対して、インク吐き捨て部22に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0067】
次に、
図8Cに示すように、第2比較例のインクジェット記録装置110Bの制御部119は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D111B参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過するため、凝集剤のミストMがインクヘッド12(特にインクヘッド12a)のヘッド面(下面)に付着する可能性がある。凝集剤のミストMがインクヘッド12のヘッド面に付着すると、ヘッド面で色材インクの凝集が発生してしまい、ノズル詰まりが発生し易くなる。そのため、第2比較例のインクジェット記録装置110Bのような構成及び動作は、好ましくない。
【0068】
[第3比較例]
次に、
図9A乃至
図9Dを参照して、第3比較例のインクジェット記録装置110Cの構成と動作について説明する。
図9A乃至
図9Dは、それぞれ、第3比較例のインクジェット記録装置110Cの構成と動作の説明図である。
【0069】
図9Aに示すように、第3比較例のインクジェット記録装置110Cでは、印画領域20の左側にインク吐き捨て部22が配置され、さらに、インク吐き捨て部22の左側に凝集剤吐き捨て部21が配置されている。
【0070】
図9Aに示す例では、第3比較例のインクジェット記録装置110Cの制御部119は、凝集剤吐き捨て部21の上に凝集剤ヘッド11を配置した状態で、キャリッジ15を停止させている。ここで、
図9Bに示すように、第3比較例のインクジェット記録装置110Cの制御部119は、凝集剤ヘッド11に対して、凝集剤吐き捨て部21に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0071】
次に、
図9Cに示すように、第3比較例のインクジェット記録装置110Cの制御部119は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D111C参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過するため、凝集剤のミストMがインクヘッド12(特にインクヘッド12a)のヘッド面(下面)に付着する可能性がある。凝集剤のミストMがインクヘッド12のヘッド面に付着すると、ヘッド面で色材インクの凝集が発生してしまい、ノズル詰まりが発生し易くなる。そのため、第3比較例のインクジェット記録装置110Cのような構成及び動作は、好ましくない。
【0072】
[第4比較例]
次に、
図10A乃至
図10Dを参照して、第4比較例のインクジェット記録装置110Dの構成と動作について説明する。
図10A乃至
図10Dは、それぞれ、第4比較例のインクジェット記録装置110Dの構成と動作の説明図である。
【0073】
図10Aに示すように、第4比較例のインクジェット記録装置110Dでは、印画領域20の右側に凝集剤吐き捨て部21が配置され、さらに、凝集剤吐き捨て部21の右側にインク吐き捨て部22が配置されている。
【0074】
図10Aに示す例では、第4比較例のインクジェット記録装置110Dの制御部119は、印画領域20の左側の領域外にキャリッジ15を配置させている。ここで、
図10Bに示すように、第4比較例のインクジェット記録装置110Dの制御部119は、キャリッジ15に対して、凝集剤ヘッド11が凝集剤吐き捨て部21の上に配置されるように、往路方向(白抜き矢印D111D参照)に向けて、移動するように制御し、さらに、凝集剤ヘッド11に対して、凝集剤吐き捨て部21に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0075】
次に、
図10Cに示すように、第4比較例のインクジェット記録装置110Dの制御部119は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D112D参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過するため、凝集剤のミストMがインクヘッド12(特にインクヘッド12a)のヘッド面(下面)に付着する可能性がある。凝集剤のミストMがインクヘッド12のヘッド面に付着すると、ヘッド面で色材インクの凝集が発生してしまい、ノズル詰まりが発生し易くなる。そのため、第4比較例のインクジェット記録装置110Dのような構成及び動作は、好ましくない。
【0076】
[各実施例に係るインクジェット記録装置の主な特徴]
各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、以下のような特徴を有している。
【0077】
各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、色材インクを噴出するインクヘッド12と処理液(凝集剤)を噴出する処理液ヘッド(凝集剤ヘッド11)とを単一のキャリッジ15に搭載している。
また、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、印刷中に端部でインクや処理液(凝集剤)の吐き捨てを行う構成になっている。
また、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、色材インクの吐き捨て領域(インク吐き捨て部22)と処理液(凝集剤)の吐き捨て領域(凝集剤吐き捨て部21)とが分かれた構成になっている。
また、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、同一スキャン内で、処理液(凝集剤)の吐き捨て後に、処理液吐き捨て部の上をインクヘッドが通過しないように制御する。
また、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、同一スキャン内で、処理液(凝集剤)の吐き捨て部を、印画領域の上流側に配置した構成になっている。
また、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、処理液の吐き捨てを、復路又は往路における端部での切り返し時に行う構成になっている。
【0078】
さらに、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、以下のような特徴を有している。
【0079】
(1)各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、色材インクおよび色材に対して凝集作用を有する処理液(凝集剤)を噴出する処理液ヘッド(凝集剤ヘッド11)と色材インクを噴出するインクヘッド12とを単一のキャリッジ15に備えるスキャン型のインクジェット記録装置であって、同一スキャン内で、処理液の吐き捨て後に、インクヘッドが処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)を通過しない、構成になっている。
【0080】
このような各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、インクヘッド12のノズル面への処理液(凝集剤)のミストMの付着を低減することができる。そのため、ヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0081】
(2)各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、処理液の吐き捨ては、主走査方向において、復路又は端部での切り返し時に行われる、構成になっている。
【0082】
このような各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、さらに、インクヘッド12のノズル面への処理液(凝集剤)のミストMの付着を低減することができる。
【0083】
(3)第1から第3実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10Cは、処理液(凝集剤)を噴出する際に、主走査方向において、処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)が印画領域20よりも上流側にある、構成になっている。
【0084】
このような第1から第3実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10Cは、さらに、インクヘッド12のノズル面への処理液(凝集剤)のミストMの付着を低減することができる。
【0085】
(4)第1と第2実施例に係るインクジェット記録装置10A,10Bは、処理液(凝集剤)を噴出する際に、主走査方向において、処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)がインク吐き捨て部22よりも上流側にある、構成になっている。
【0086】
このような第1と第2実施例に係るインクジェット記録装置10A,10Bは、インクヘッド12のノズル面への色材インクのミスト(図示せず)の付着を低減することができる。そのため、印刷品位の低下を抑制することができる。
【0087】
(5)各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)とインク吐き捨て部22が別部材で構成されている。
【0088】
このような各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)やインク吐き捨て部22で処理液(凝集剤)と色材インクとが混ざることで、色材インクの凝集が発生することを抑制することができる。また、色材インクの凝集が発生しないため、処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)やインク吐き捨て部22のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0089】
(6)第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aは、印画領域の一方に処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)、他方にインク吐き捨て部22を配置する、構成になっている。
【0090】
このような第1実施例に係るインクジェット記録装置10Aは、さらに、処理液ヘッド(凝集剤ヘッド11)のノズル面への色材インクのミスト(図示せず)の付着を低減することができる。これにより、処理液ヘッド(凝集剤ヘッド11)のヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0091】
(7)各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、前記処理液の吐き捨ての有無を、所定の条件を基に決定する構成にするとよい。例えば、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、処理液の吐き捨ての有無を、前回のスキャン内での処理液のDuty率を基準に決定する構成にするとよい。
【0092】
このような各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、凝集剤吐き捨て部21の上を浮遊する処理液(凝集剤)のミストMが減るため、インクヘッド12のノズル面への処理液(凝集剤)のミストMの付着を低減することができる。そのため、ヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0093】
また、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、処理液の吐き捨ての有無を、前回のスキャン内での処理液のDuty率を基準に決定する構成にした場合に、処理液(凝集剤)はDuty率が小さいほど乾き易いため、処理液(凝集剤)のDuty率が小さいほど処理液(凝集剤)の破棄を促すようにすることができる。つまり、処理液のDuty率が任意に設定した閾値以下である場合に、吐き捨て有りとして処理することができる。
【0094】
(8)各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dは、色材インクの固形分濃度が10%以上であるとよい。
【0095】
固形分濃度が高い色材インクの方が、インクヘッド12のノズル面での凝集時の影響が大きいため、本発明を適用した方がよい。
【0096】
以上の通り、各実施例に係るインクジェット記録装置10A,10B,10C,10Dによれば、処理液(凝集剤)の吐き捨て時にインクヘッド12への処理液のミストMの付着を低減することができる。また、処理液の吐き捨て時に発生するミストMによるノズル詰まりを抑制することができる。
【0097】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0098】
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、ある構成要素に他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に変更したりすることができる。また、本発明は、一部の構成要素を削除することもできる。
【0099】
[第1変形例]
例えば、前記した第1実施例に係るインクジェット記録装置10A(
図1A参照)は、
図5に示す第1変形例のインクジェット記録装置10Eのように変形することができる。
図5は、第1変形例のインクジェット記録装置10Eの構成図である。
【0100】
図5に示すように、第1変形例のインクジェット記録装置10Eは、処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)とインク吐き捨て部22が印画領域20まで跨っている構成になっている。なお、処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)とインク吐き捨て部22は、少なくとも一方が印画領域20まで跨っている構成にすることができる。なお、他の実施例に係るインクジェット記録装置も同様に変形することができる。
【0101】
このような第1変形例のインクジェット記録装置10Eは、印画領域20の下に桶状の貯留部26,27が配置されている場合に、吐き捨てた処理液(凝集剤)や色材インクを貯留部26,27で回収することができる。また、処理液吐き捨て部(凝集剤吐き捨て部21)と貯留部26及びインク吐き捨て部22と貯留部27を一体化して構成を簡素化することができる。なお、貯留部26は、印画領域20の上に配置された布帛やシート状の樹脂等の記録媒体に噴出された凝集液の余剰分を収容する構成要素である。また、貯留部27は、印画領域20の上に配置された布帛やシート状の樹脂等の記録媒体に噴出された色材インクの余剰分を収容する構成要素である。
【0102】
[第2変形例]
また、例えば、前記した第1実施例に係るインクジェット記録装置10A(
図1A参照)は、
図6Aから
図6Hに示す第2変形例のインクジェット記録装置10Fのように変形することができる。
図6Aから
図6Hは、それぞれ、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの構成と動作の説明図である。
【0103】
図6Aに示すように、第2変形例のインクジェット記録装置10Fは、第1実施例に係るインクジェット記録装置10A(
図1A参照)と比較すると、オーバーコート剤ヘッド13と、オーバーコート剤吐き捨て部23と、を有する点で相違する。
【0104】
オーバーコート剤ヘッド13は、オーバーコート剤を噴出するヘッドである。オーバーコート剤は、凝集剤(処理液)とは異なり、色材インクおよび色材に対して凝集作用を持たない他の処理液であり、印画領域20の上に配置された記録媒体(布帛やシート状の樹脂等)に印刷された画像の上を覆って画像を保護する。
【0105】
オーバーコート剤吐き捨て部23は、オーバーコート剤を吐き捨てる部位である。オーバーコート剤吐き捨て部23には、スポンジや布等の吐き捨て部材が配置されている。
【0106】
図6Aから
図6Dは、凝集剤(処理液)を凝集剤吐き捨て部21に吐き捨てる場合の動作を示している。
図6Aに示す例では、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの制御部19は、印画領域20の左側の領域外にキャリッジ15を配置させている。ここで、
図6Bに示すように、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの制御部19は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D11A参照)に向けて、印画領域20の右側の領域外まで移動するように制御したとする。
【0107】
次に、
図6Cに示すように、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの制御部19は、キャリッジ15に対して、凝集剤ヘッド11が凝集剤吐き捨て部21の上に配置されるように、復路方向(白抜き矢印D12A参照)に向けて、移動するように制御し、さらに、凝集剤ヘッド11に対して、凝集剤吐き捨て部21に向けて凝集剤を噴出するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが凝集剤吐き捨て部21の上で浮遊する。
【0108】
次に、
図6Dに示すように、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの制御部19は、復路方向(白抜き矢印D13A参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、凝集剤のミストMが浮遊している凝集剤吐き捨て部21の上をオーバーコート剤ヘッド13が通過するが、凝集剤はオーバーコート剤に対して凝集作用を有していないため、オーバーコート剤ヘッド13はノズル詰まりを発生しない。また、このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過しないため、第2変形例のインクジェット記録装置10Fは、インクヘッド12のヘッド面(下面)への凝集剤のミストMの付着を低減することができる。このような第2変形例のインクジェット記録装置10Fは、ヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0109】
図6Eから
図6Hは、オーバーコート剤(他の処理液)をオーバーコート剤吐き捨て部23に吐き捨てる場合の動作を示している。
図6Eに示す例では、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの制御部19は、印画領域20の左側の領域外にキャリッジ15を配置させている。ここで、
図6Fに示すように、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの制御部19は、キャリッジ15に対して、往路方向(白抜き矢印D21A参照)に向けて、印画領域20の右側の領域外まで移動するように制御したとする。
【0110】
次に、
図6Gに示すように、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの制御部19は、キャリッジ15に対して、オーバーコート剤ヘッド13がオーバーコート剤吐き捨て部23の上に配置されるように、復路方向(白抜き矢印D22A参照)に向けて、移動するように制御し、さらに、オーバーコート剤ヘッド13に対して、オーバーコート剤吐き捨て部23に向けてオーバーコート剤を噴出するように制御したとする。このとき、オーバーコート剤のミストMaがオーバーコート剤吐き捨て部23の上で浮遊する。
【0111】
次に、
図6Hに示すように、第2変形例のインクジェット記録装置10Fの制御部19は、復路方向(白抜き矢印D23A参照)に向けて、移動するように制御したとする。このとき、インクヘッド12が凝集剤吐き捨て部21の上を通過しないため、第2変形例のインクジェット記録装置10Fは、インクヘッド12のヘッド面(下面)への凝集剤のミストMの付着を低減することができる。このような第2変形例のインクジェット記録装置10Fは、ヘッド面で色材インクが凝集することを抑制することができるため、ノズル詰まりの発生を抑制することができる。
【0112】
このような第2変形例のインクジェット記録装置10Fは、処理液(凝集剤)とは異なる他の処理液であって、かつ、色材インクおよび色材に対して凝集作用を有しない他の処理液(オーバーコート剤)をインクジェットで印刷し、他の処理液の吐き捨ては色材インクと同様に行う構成になっている。なお、他の実施例に係るインクジェット記録装置も同様に変形することができる。
【0113】
インクジェット記録装置は、第2変形例のインクジェット記録装置10Fのように、オーバーコート剤(他の処理液)を噴出するオーバーコート剤ヘッド13を搭載する場合も、凝集剤(処理液)のミストMの影響を抑えることができる。
【符号の説明】
【0114】
10A,10B,10C,10D,110A,110B,110C,110D インクジェット記録装置
11 凝集剤ヘッド(処理液ヘッド)
12,12a,12b,12c,12d インクヘッド
13 オーバーコート剤ヘッド(他の処理液ヘッド)
15 キャリッジ
19,119 制御部
20 印画領域
21 凝集剤吐き捨て部(処理液吐き捨て部)
22 インク吐き捨て部
23 オーバーコート剤吐き捨て部(他の処理液吐き捨て部)
26,27 貯留部
M,Ma ミスト