(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143468
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B62D37/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050871
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390025243
【氏名又は名称】ポップリベット・ファスナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】大庭 敏也
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜平
(72)【発明者】
【氏名】水越 卓
(57)【要約】
【課題】車幅方向中央側での締結点を確保することにより、所望の取付剛性を確保しつつスポイラの取付作業性を向上させることができる車両後部構造を提供する。
【解決手段】車幅方向に延設されたスポイラ本体4とスポイラ本体4とは別体のスポイラ部品としてのストップランプ5とを有するスポイラ3を車両1のテールゲート上部2に取付けている。スポイラ本体4は、スポイラ本体4の車幅方向中間部6に設けられ、ストップランプ5が装着される装着部7と、スポイラ3をテールゲート上部2に取り付ける複数の取付部10とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延設されたスポイラ本体と前記スポイラ本体とは別体のスポイラ部品とからなるスポイラを車両のテールゲート上部に取付けた車両後部構造であって、
前記スポイラ本体は、
前記スポイラ本体の車幅方向中間部に設けられ、前記スポイラ部品が装着される装着部と、
前記スポイラを前記テールゲート上部に取り付ける複数の取付部と、を備え、
前記複数の取付部は、
クリップを用いて固定するクリップ固定部と、
ねじを用いて固定するねじ固定部と、
を有し、
前記ねじ固定部は、前記クリップ固定部よりも前記装着部側に配置されている、ことを特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
前記ねじ固定部は、前記装着部の車幅方向外側端部に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記ねじ固定部は、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって斜めにねじが挿通されている、ことを特徴とする請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記ねじ固定部は、前記スポイラ本体に形成された座面部と、前記座面部に隣接して設けられた開口部と、前記開口部を通じて前記座面部に装着されるグロメット部材と、を有し、
前記グロメット部材は、前記座面部を前後から挟持する一対の挟持片と、前記一対の挟持片を連結する連結部と、前側の前記挟持片から前方に突出し前記テールゲート上部に係着する一対の係着部と、を有し、
前記係着部は、前記一対の挟持片及び前記座面部を通って前記係着部の間に挿入された前記ねじによって変形が阻止される、ことを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記挟持片は、前記ねじが挿入されるねじ穴と、前記ねじ穴の周囲に突設された環状のシール部と、を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の車両後部構造。
【請求項6】
前記環状のシール部は、後側の前記挟持片の後面に設けられ、前記ねじの頭部に当接する、ことを特徴とする請求項5に記載の車両後部構造。
【請求項7】
前記環状のシール部は、前記一対の挟持片の互いに対向する面の少なくとも一方に設けられ、前記一対の挟持片の他方に当接する、ことを特徴とする請求項6に記載の車両後部構造。
【請求項8】
前記係着部は、前記係着部の外側面に凹設されて、前記テールゲート上部の係着穴の周縁部に係着する係着溝を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の車両後部構造。
【請求項9】
前記グロメット部材の前側に位置する前記挟持片の少なくとも一外側端面から突設され弾性変形可能なリップ部を外方に向けて形成して前記リップ部の先端を前記座面部に形成された挿通孔周縁に車両前方から弾接させている、ことを特徴とする請求項4に記載の車両後部構造。
【請求項10】
前記テールゲート上部と前側の前記挟持片との間に挟持されてシールするパッキング部材を設けた、ことを特徴とする請求項4に記載の車両後部構造。
【請求項11】
前記係着部の外側面から一体に弾性変形可能な抜止め片を突設して、
前記抜止め片は、装着された前記パッキング部材を保持する、ことを特徴とする請求項10に記載の車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックドア(テールゲート)上部にリアスポイラ(以下、スポイラとも記す)を取付ける車両が知られている(例えば特許文献1等参照)。リアスポイラを装着するクリップは、脚部がバックドアパネルの上面側に形成されている取付穴に挿通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テールゲート上部に取付けられるスポイラとして、スポイラ本体の車幅方向中間部に開口部を凹設してハイマウントストッランプ(以下、ストップランプともいう。)を装着するタイプの車両が知られている。
一方、これと同じ車種でもアクセサリーパーツとしてのスポイラを取付けることなく、直接テールゲートに孔部を形成して、ストップランプを装着するものも見られる。
この場合、ストップランプ装着用の孔部が形成されるテールゲートとスポイラが取付けられる孔部が形成されていないテールゲートの2種類が存在する。スポイラを取付ける場合に車種によっては孔部が形成される車幅方向中間部を避けてテールゲートの締結部が設定されることがある。
【0005】
スポイラ本体には、所定の単品剛性が必要とされる。しかしながら成型上の制約でインジェクション成型を採用する場合では、ブロー成型に比して強度を向上させにくい。このため、スポイラ本体の単品剛性が低下している場合がある。
このため、スポイラ本体は、車両に取付けられた状態で上下方向へ外力が作用しても上下方向へ変位しない大きさに取付剛性を設定している。
【0006】
また、共通の部品となるスポイラ本体は、車幅方向外側よりも内側の中間部にストップランプが装着された状態でストップランプの自重が車幅方向中間部に加わる。
更に、車幅方向外側は鋼板端末に近いため、締結点を設けやすいのに対して、車幅方向中央側は、鋼板端末が遠く、袋形状になっている。したがって締結点が設けにくく、車幅方向中央側の取付剛性を高くすることが求められる。
そこで、この発明は、車幅方向中央側での締結点を確保することにより、所望の取付剛性を確保しつつスポイラの取付作業性を向上させた車両後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の車両後部構造は、車幅方向に延設されたスポイラ本体とスポイラ本体とは別体のスポイラ部品とからなるスポイラを車両のテールゲート上部に取付けた車両後部構造である。スポイラ本体は、スポイラ本体の車幅方向中間部に設けられ、スポイラ部品が装着される装着部と、スポイラ本体をテールゲート上部に取り付ける複数の取付部と、を備える。複数の取付部は、クリップを用いて固定するクリップ固定部と、ねじを用いて固定するねじ固定部と、を有し、ねじ固定部は、クリップ固定部よりも装着部側に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車幅方向中央側での締結点を確保することにより、所望の取付剛性を確保しつつスポイラの取付作業性を向上させることができる車両後部構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の車両後部構造で、車体の後部に位置するテールゲート上部にスポイラを装着する様子を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1中矢視II方向から見た装着部の左外側端部の斜視図である。
【
図3】
図2中III-III線に沿った位置での断面図である。
【
図5】ねじ固定部に用いられるグロメット部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
実施形態の車両後部構造は、
図1に示すように車両1のテールゲート上部2には、車幅方向に沿ってスポイラ3が取付けられている。
スポイラ3は、車幅方向に延設されたスポイラ本体4と、スポイラ本体4とは別体のスポイラ部品としてのハイマウントストップランプ(以下、ストップランプとも記す)5と、を備えて主に構成されている。
【0012】
スポイラ本体4は、ストップランプ5が装着される装着部7を備えている。装着部7は、スポイラ本体4の車幅方向中間部6に凹設されている。装着部7は、スポイラ部品としてストップランプ5若しくは、カバー部材(図示せず)を機種に応じて選択的に装着することができる。
【0013】
スポイラ本体4には、スポイラ3をテールゲート上部2に取り付ける複数の取付部10が備えられている。
取付部10は、クリップ14を用いて固定するクリップ固定部11と、ねじ15を用いて固定するねじ固定部12とを有している。
クリップ固定部11は、左右それぞれ二つずつ設けられている。クリップ14は、スポイラ本体4の前壁部およびテールゲート上部2に形成されたクリップ穴に挿通されて係止される。
【0014】
また、ねじ固定部12は、クリップ固定部11よりも装着部7側に配置されている。
さらに本実施形態の取付部10は、上方または下方から挿通されるボルト16を用いてスポイラ本体4の車幅方向各端部を固定する一対のボルト固定部13を有している。
そして、取付部10は、クリップ固定部11,11、ねじ固定部12,ボルト固定部13が左右対称でかつ車幅方向にほぼ等間隔となるように離間配置されている。
なお、一対のボルト固定部13は、スポイラ本体4の両端部を上下方向で車体にボルト固定する。これによりさらに取付強度を向上させることが出来る。しかしながら、本実施形態に限らず部品点数の増大を抑制するため、ボルト固定部13が設けられていない構成としてもよい。
【0015】
図2に示すように、ねじ固定部12は、装着部7の車幅方向左,右外側端部7aにそれぞれ左,右対称に一対設けられている。なお、
図2では、装着部7の車幅方向左側を拡大して示し、車幅方向右側は省略されている。装着部7の右側については、左側と左右対称で同様に構成されている。このため、ここでは装着部7の車幅方向左側を中心に説明する。
【0016】
図3に示すように、ねじ固定部12は、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって斜めにねじ15が挿通されている。本実施形態では、ねじ15の軸線BLが車両前後方向に沿う基準線CLよりも内側から外側に向けて所定の傾斜角αで傾けられている。
【0017】
ねじ固定部12は、座面部20と、座面部20に隣接して設けられた開口部21と、開口部21を通じて座面部20に装着されるグロメット部材22と、を有している。
このうち、座面部20は、スポイラ本体4の前壁部4aよりも所定寸法車両前方へ膨出した平坦面を前壁部4aと平行に配置している。そして、座面部20は、座面部20の車幅方向外側の端部20bを開放して袋状に形成されている。
【0018】
開口部21は、座面部20の車両後方に隣接して前壁部4aに設けられている。また、開口部21の大きさは、グロメット部材22を車幅方向へスライド移動させて、端部20b側から装着可能に設定されている。
【0019】
グロメット部材22は、座面部20を前後から挟持する一対の挟持片23,24と、一対の挟持片23,24間を連結する連結部25と、を有している。また、グロメット部材22は、前側の挟持片23から前方に突出してテールゲート上部2に係着する係着部26を有している。
一対の挟持片23,24および座面部20には、それぞれねじ15が挿通されるねじ穴27,貫通孔28および挿通孔20aが傾斜角αを有して連通形成されている。
図3に示すように、このうち、ねじ穴27の内周面には、挿通されるねじ15を螺合させる雌ねじ部27aが形成されている。
【0020】
連結部25は、平面視略U字状に形成されて各端部をそれぞれ挟持片23,24に接続している。連結部25は弾性変形可能で、所定の間隔で平行に配置された挟持片23,24間を近接離反させることができる。
係着部26は、
図4に示すように上下一対の係着部26a,26aを有している。係着部26aは、先端に向かうに従って幅方向寸法が狭くなる先細状(
図5参照)で、上下の外側面26eにそれぞれ係着溝26cおよび抜止め片26dがそれぞれ形成されている。
【0021】
このうち、係着溝26cは、係着部26aの外側面の挟持片23側に凹設され、係着穴2aの周縁部2bに係着するように形成されている。
さらに本実施形態では、係着部26周縁に圧縮変形可能なパッキング部材50が設けられている。パッキング部材50の平面視中央に形成された挿通孔には、係着部26が挿通される。そして、挿通状態では、パッキング部材50の挿通孔周縁部に係着溝26cが係着されるように形成されている。
【0022】
また、抜止め片26dは、弾性変形可能な略三角形形状で、係着溝26cよりも係着部26aの先端側に形成されている(
図6参照)。
図7に示すように各抜止め片26dは先端を車幅方向逆向きで、それぞれ外側面26eに近接する方向へ傾けられて一体に形成されている。
スポイラ本体4は、テールゲート上部2に取付けられる際、
図5に示すように事前に係着部26をパッキング部材50の挿通孔へ挿通して係着溝26cに装着する。この際、抜止め片26dは、装着されたパッキング部材50の前面側に当接してパッキング部材50が抜け落ちないように保持する。
【0023】
また、係着部26を車両後方から前方へ向けて係着穴2aに挿通させる際、抜止め片26dはさらに外側面26eに近接する方向へ倒れる。このため、容易に係着穴2a内に係着部26a,26aを挿入させることができる。
そして、
図4に示すようにスポイラ本体4がテールゲート上部2に取付けられた状態では、係着溝26cに係着穴2aの周縁部2bが係着されて固定される。
この際、各抜止め片26dは、弾性復帰して係着穴2aの前面側周縁に係止される。
パッキング部材50は、
図3に示すように、テールゲート上部2と前側の挟持片23との間に挟持されて係着穴2a周縁をシールする。
【0024】
図5に示すようにこれらの上下一対の係着部26a,26aは、上下方向に所定寸法離間して配置されている。係着部26a,26a間の対向面には、挿通されたねじ15の外周面を摺接させる半円弧状のガイド溝26fがそれぞれ斜めに凹設されている(
図7参照)。
そして、一対の挟持片23,24及び座面部20のねじ穴27,貫通孔28および挿通孔20aに車両後方から前方へ斜めにねじ15が挿通される。この際、ねじ15の先端側の一部が一対の係着部26a,26a間に挿入される。
これにより係着部26a,26aを近接させる方向への変形は、ねじ15によって阻止される。
【0025】
図3に示すように、挟持片23,24間の対向面には、円筒状のボス部が斜めまたは面直にそれぞれ形成されている。各ボス部には、ねじ15が挿入されるねじ穴27,貫通孔28と、ボス部の各対向面のそれぞれのねじ穴27,貫通孔28の周囲に突設される環状のシール部29,30(
図6参照)とが形成されている。
そして、
図3に示すようにシール部29,30は、挟持片23,24間で離間している状態から近接方向に変形すると互いに当接すると潰れるように強度が設定されている。これにより、ねじ穴27,貫通孔28の周囲は、シール部29,30によりシールされる。
なお、シール部29,30は、互いに対向する面の少なくとも一方に設けられて、一対の挟持片23,24の他方に当接するように構成されていればよい。
【0026】
また、
図6に示すように、環状のシール部31は、後側の挟持片24の後面24aからは、ボス部が斜めに突設されている。ボス部の後面で、
図3に示す貫通孔28の周囲には、環状のシール部31が設けられている。
シール部31は、ねじ15の頭部15aの裏面側が当接して、貫通孔28の周囲で潰れることにより、貫通孔28とねじ15との間をシールするように構成されている。
【0027】
さらに、実施形態のグロメット部材22は、
図4に示すように、前側に位置する挟持片23の上下外側端面からそれぞれ突設され弾性変形可能なリップ部40を外方に向けて形成している。
そして、リップ部40の先端41は、座面部20の挿通孔20a(
図3参照)周縁に車両前方から弾接されている。
【0028】
次に本実施形態の車両後部構造の作用効果をスポイラ3の取付順序に沿って説明する。
本実施形態では、
図1に示すようにスポイラ本体4をテールゲート上部2に取付部10を用いて取付ける。
図2に示すように、取付部10のうち、スポイラ本体4の装着部7の車幅方向外側端部7aに位置する左,右一対のねじ固定部12には、それぞれグロメット部材22(
図6,7参照)が予め装着されている。
この際、
図5に示すパッキング部材50は、抜止め片26dを車両前側面に当接させることにより係着部26からの脱落が防止される。このため、取付作業性が良好である。
【0029】
そして、テールゲート上部2の係着穴2aに係着部26が車両前方に向けて挿入される。
図4に示す係着部26の一対の係着部26a,26aの先端同士は近接方向へ変形しながら容易に位置決め挿入される。挿入の際、係着部26は、座面部20に先端41を当接させたリップ部40の弾性反力で車両前方へ向けて押出される。このため、取付部10の他のクリップ固定部11より先行して係着穴2aに係着部26を挿入させることができる。
図3に示すように、周縁部2bに係着溝26cが嵌まるとグロメット部材22は係着穴2aに係着される。これによりスポイラ本体4はテールゲート上部2に保持状態で取付けられる。
【0030】
次に、
図2矢印A方向から作業者は、ねじ15の先端を挟持片23,24及び座面部20のねじ穴27,貫通孔28および挿通孔20aを介して車両後方から前方へ斜めまたは面直に挿通する。
この状態では、
図6に示すように、挟持片23,24のそれぞれのシール部29,30間は所定の間隔をおいて離間している。
【0031】
そして、
図3に示すように、スポイラ本体4は、ねじ穴27の雌ねじ部27aにねじ15を螺着させてグロメット部材22を座面部20に締結する。これにより挟持片23,24の間隔が近接する方向へ変形して、シール部29,30がねじ15の軸方向に当接して軸力により潰れる。
さらに、
図6に示す環状のシール部31は、
図3に示すようにねじ15の螺着が進行すると頭部15a裏面側に当接して軸力により潰れる。
実施形態では、ねじ穴27<ねじ15の外径<貫通孔28の順に寸法が大きくなるように形成されている。このため貫通孔28はねじ15を挿入自在としている。これにより、ねじ穴27がねじ15の螺合により雌ねじのねじ山を形成するのに対して、貫通孔28ではねじ山が形成されない。
これにより、ねじ15の締め付けによる軸力で挟持片23を挟持片24の方向へ引寄せるように近接変形させて、間隔を減少させることでねじ穴27,貫通孔28の周囲が挟持片23,24間でシール部29,30によりシールされる。また、貫通孔28の周囲とねじ15の頭部との間がシール部31によりシールされる。したがって、グロメット部材22およびねじ15間の水密性が良好である。
【0032】
まず、
図1に示すように取付部10のうち、スポイラ本体4の車幅方向中間部6に位置する装着部7がまず車幅方向外側端部7aに位置する左,右一対のねじ固定部12によりテールゲート上部2にねじ固定される。
ねじ固定部12は、クリップ固定部11よりも装着部7側に配置されている。このため、装着部7近傍の取付強度は、クリップを用いて固定される場合に比べて向上する。
よって、装着部7に所定の重量を有するスポイラ部品としてストップランプ5が装着された状態でも上下方向へ作用する外力により上下方向へのスポイラ3の変位を抑制できる。
スポイラ本体4は車幅方向中間部6でねじ固定部12のねじ固定により所望の取付強度で固定される。さらに、スポイラ本体4側の座面部20付近は、グロメット部材22の装着により補強されて外側から前側の挟持片23,座面部20,後側の挟持片24の三層の板材が重ねられる。さらに三層の板材は、ねじ15によりねじ締結されて所望の取付強度を容易に得られる。
【0033】
実施形態のようにスポイラ本体4の前壁部4aの剛性が一部材となり充分に設定できない場合でも車幅方向中央側での装着部7周縁の強度を向上させることができる。
このため、成型上の制約でインジェクション成型による二部材間を振動溶着する構成が採用される場合に用いて好適である。したがって、スポイラ本体4の単品剛性を維持して複数のスポイラ部品が組合わせ可能で造形の自由度を向上させることができる。
【0034】
また、クリップ固定部11に用いるクリップ14の部品点数は、従来左,右三箇所以上から二箇所ずつに減少させることが可能となり、取付作業性を良好なものとすることができる。そして、装着部7の車幅方向外側端部7aには、左,右一対のねじ固定部12を離間配置している。ねじ固定部12は、外側に向けて斜めにねじ15を挿通している。
このため、取付部10は、装着部7の内側空間を利用してねじ15を貫通孔28へ挿通できる。よって、本実施形態では、装着部7の車幅方向外側端部7aの最外部にねじ固定部12を配置できる。
したがってスポイラ本体4は、内側から一対の離間配置されたねじ固定部12、クリップ固定部11,11、ボルト固定部13を車幅方向にほぼ等間隔で離間配置出来る。このようにスポイラ本体4は、車幅方向へ応力を分散させることが出来、さらに取付強度が向上する。
【0035】
さらに、スポイラ本体4は、車幅方向中間部6によりテールゲート上部2にねじ固定される。この際、グロメット部材22は、リップ部40の弾性反力により、係着穴2aへ挿入される車両前方へ向けて移動する。したがって、予めスポイラ本体4にクリップ14が突設されていてもねじ15による固定作業が容易に行える。
このように、車幅方向中央側での締結点を確保することにより、所望の取付剛性を確保しつつスポイラ3の取付作業性を向上させることができる。
【0036】
上述してきたように実施形態の車両後部構造は、
図1に示すようにスポイラ3は、車幅方向に延設されたスポイラ本体4と、スポイラ本体4とは別体のスポイラ部品としてのストップランプ5とを有している。そしてスポイラ3の延設方向がテールゲート上部2の車幅方向に沿うように取付けられている。
スポイラ本体4は、スポイラ本体4の車幅方向中間部6に設けられ、ストップランプ5が装着される装着部7と、スポイラ3をテールゲート上部2に取り付ける複数の取付部10とを備えている。
このうち、複数の取付部10は、クリップ14を用いて固定するクリップ固定部11と、ねじ15を用いて固定するねじ固定部12とを有している。
そして、ねじ固定部12は、クリップ固定部11よりも装着部7側に配置されている。
【0037】
このように構成された実施形態の車両後部構造は、所望の取付剛性を確保しつつスポイラの取付作業性を向上させることができる。
詳しくは、クリップ固定部11よりも装着部7側のねじ固定部12は、車両1のテールゲート上部2にねじ15を用いてスポイラ本体4を固定する。装着部7近傍の取付強度は、クリップ14を用いて固定される場合に比べて向上する。
よって、所定の重量を有するスポイラ部品としてストップランプ5等が装着された状態でも上下方向へ作用する外力により変位が生じにくい。これによりクリップ固定部11に用いるクリップ14の部品点数を減少させることができる。したがって取付作業性を向上させることができる。
【0038】
さらに、スポイラ本体4は、ねじ固定された車幅方向中間部6によりテールゲート上部2に脱落しないように仮固定される。このため、クリップ14によるクリップ固定部11の固定作業を容易なものとすることが出来、この点においても取付作業性が向上する。
このように、クリップ固定部11よりも装着部7側にねじ固定部12を配置することにより所望の取付剛性を確保しつつスポイラ3の取付作業性を向上させることができる。
【0039】
図2に示すように、ねじ固定部12は、装着部7の車幅方向左,右外側端部7aに設けられている。
このため、装着部7に設けられたねじ固定部12は、ストップランプ5が装着部7に装着された状態では、ストップランプ5に隠れて外部から視認できない。このため外観品質を向上させることができる。
さらに、例えばスポイラ本体4が存在しない機種で視認性向上のため比較的大きな車幅方向寸法のストップランプ5を装着する場合がある。このような場合でもストップランプ5等のスポイラ部品の重量を支持可能な取付剛性に設定が可能となり、汎用性を向上させることができる。
これらの取付部10のクリップ固定部11,ねじ固定部12,ボルト固定部13は、左右対称でかつ車幅方向にほぼ等間隔に設けられている。
【0040】
図3に示すように、ねじ固定部12は、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって斜めにねじ15が挿通されている。
このため、装着部7の内側に形成された空間部を作業スペースとして有効に利用してスポイラ本体4の取付作業性を向上させることができる。このため、ねじ15の挿通および締結作業が容易に行えてスポイラ本体4の取付作業性が良好である。
さらに、斜めの挿入されたねじ15で上下方向への入力に対して効率良く増大させることができる。このため、ねじ固定部12が設けられている装着部7の車幅方向外側端部7a近傍でストップランプ5が装着される部分の取付剛性をことが出来る。
【0041】
ねじ固定部12は、スポイラ本体4に形成された座面部20と、座面部20に隣接して設けられた開口部21と、開口部21を通じて座面部20に装着されるグロメット部材22と、を有している。
グロメット部材22は、座面部20を前後から挟持する一対の挟持片23,24と、一対の挟持片23,24間を連結する連結部25と、を有している。また、グロメット部材22は、前側の挟持片23から前方に突出してテールゲート上部2に係着する一対の係着部26a,26aを有している。
係着部26は、一対の挟持片23,24及び座面部20を通って一対の係着部26a,26aの間に挿入されたねじ15によって互いに近接する方向へ変形が阻止される。これにより係着部26は、テールゲート上部2に設けられた係着穴2aから抜出不能となる。
【0042】
詳しくは、グロメット部材22が開口部21を通じてスポイラ本体4に形成された座面部20に装着される。グロメット部材22の連結部25は、座面部20の前,後からそれぞれの挟持片23,24を対向させて挟持状態として、ねじ15の軸力により挟持片23,24同士が強固に圧着される。このため、環状のシール部29,30および31が潰れ、挟持片23,24間を水密状態とすることができる。
また、
図4に示すように、ねじ15の締め付けにより一対の係着部26a,26aの間が拡開してテールゲート上部2に係着される。このため、テールゲ―ト上部2へ強固にスポイラ本体4を固定することができる。ねじ15が締め付けられる際、仮保持バネ片等の別部材によりスポイラ本体4を抑える必要がなく、作業者は、両手を用いて取付作業を行える。
この際、
図3に示すように、挟持片23,24間の対向面からボス部を突設して座面部20の挿通孔20aに少なくとも一部を挿入させて係止してもよい。これにより、グロメット部材22は、スポイラ本体4の前壁部から膨出形成された座面部20に保持されて取付作業中の脱落が防止される。このため、グロメット部材22は、座面部20に仮止めされてねじ15の挿通を容易とすることが可能となる。したがってさらに取付作業性が良好である。
【0043】
また、上下一対の係着部26a,26aに係着溝26cがそれぞれ形成されている。周縁部2bに上下二箇所で係着する係着部26a,26aは、挿入されたねじ15により変形が阻止されて解除できない。
さらにまた、係着穴2aへの挿入が途中等の半嵌合状態では、ねじ15の先端を一対の係着部26a,26a間に挿入できない。このため、係着穴2aに確実に係着溝26cを係着固定させる事ができ、半嵌合状態でねじ固定作業を終了させてしまう状況を防止することができる。
したがって、さらに係着穴2aに対して係着部26を強固に係着させて抜け落ちないようにすることができる。
そして、座面部20は、一対の挟持片23,24により前後から挟持されて三層の板材が重なる構造となり補強されて取付剛性が増大する。
【0044】
さらにねじ15は、三層の座面部20および挟持片23,24を面外方向へ締結するとともに上下一対の係着部26a,26a間に介装される。これにより、係着部26の取付剛性は、一層の座面部20に設けられる場合と比較して増大する。
このため、成型上の制約でインジェクション成型が採用される場合がある。たとえば上下二部材の別部品を組合わせてスポイラ本体4が構成されるものがある。スポイラ本体4の各部品をインジェクション成型すると、ブロー成型により得られる厚さ方向寸法と比較して板厚を厚く設定することが困難な場合がある。このような場合でも、座面部20にグロメット部材22を装着して座面部20付近の厚さ方向寸法が大きい場合と同等若しくはそれ以上の強度を座面部20付近に設定出来る。したがって、さらにスポイラ本体4が上下方向へ変位しないようにねじ固定部12の取付剛性を増大させることができる。
【0045】
挟持片23,24は、ねじ15が挿入されるねじ穴27,貫通孔28と、各ねじ穴27,貫通孔28の周囲に突設された環状のシール部29,30および31とを有している。
このため、環状のシール部31は、後側の挟持片24の後面24aに設けられて、ねじ15の頭部15aに当接する。
そして、ねじ穴27,貫通孔28の周囲に突設された環状の各シール部29~31は、対向する部分に圧接されると潰れ変形してねじ穴27,貫通孔28の周囲を囲むように環状にシールする。したがって、別途止水のためにシール部材等が不要で部品点数が抑制されてさらに取付作業性を向上させることができる。
【0046】
環状のシール部31は、後側の挟持片24の後面と、ねじ15の頭部との間で潰れ変形して貫通孔28の周囲を囲んで環状にシールする。このため、ねじ15を螺合するだけでシールが行える。したがってさらに取付作業性が良好である。
【0047】
環状のシール部29,30は、一対の挟持片23,24の互いに対向する面の少なくとも一方に設けられ、一対の挟持片23,24の他方に当接する。
これによりシール部29,30は、ねじ穴27,貫通孔28の周囲を囲んで環状にシールする。このため、たとえば、ねじ15を螺合して一対の挟持片23,24間を近接させるだけでシールが行える。したがってさらに取付作業性が良好である。
【0048】
また、係着部26は、一対の各係着部26a,26a(
図5参照)のそれぞれの外側面26eに凹設され、係着穴2aの周縁部2bに係着する係着溝26c,26cをそれぞれ有している。
そして、係着部26aの外側面26eは、凹設された係着溝26cに係着穴2aの周縁部2bを係着させる。
これにより、係着部26は係着穴2aからさらに強固に抜出不能に係着して取付剛性を向上させることができる。
【0049】
図4に示すように、グロメット部材22の前側に位置する挟持片23は、少なくとも一外側端面から突設され弾性変形可能なリップ部40を外方に向けて形成している。
そして、リップ部40の先端41は、座面部20に形成された
図3に示す挿通孔20a周縁に車両前方から弾接される。
このため、グロメット部材22は、リップ部40の弾性反力により、係着穴2aへ挿入される車両前方へ向けて移動する。したがって、更に容易に固定作業を行うことができる。
【0050】
図5に示すように、テールゲート上部2と前側の挟持片23との間に挟持されてシールするパッキング部材50が設けられている。
このため、スポイラ本体4は、テールゲート上部2に取付けられるとパッキング部材50がテールゲート上部2と前側の挟持片23との間に挟持される。これにより車体側の係着穴2aの周囲とグロメット部材22との間が圧縮されたパッキング部材50によってシールされる。
【0051】
図6に示すように、係着部26は、上,下一対設けられた係着部26a(
図7参照)に示す外側面26eからそれぞれ弾性変形可能な抜止め片26dが一体に突設されている。
そして、
図7に示すように抜止め片26dは、係着溝26c,26cに装着されたパッキング部材50の車両前側面に当接して係着部26から脱落しないように保持している。このため、さらに取付作業を向上させることができる。
このように本実施形態の車両後部構造のねじ固定部12は、クリップ固定部11よりも装着部7側に配置される。これによりねじ固定部12は、所望の取付剛性を確保しつつスポイラの取付作業性を向上させることができる、といった実用上有益な作用効果を発揮することができる。
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0053】
実施形態では、装着部7の車幅方向外側端部7aに形成された座面部15がグロメット部材22により挟持されたねじ固定部12を示して説明してきた。しかしながら、例えばグロメットに予め雌ねじの構成があるものと、これに螺合する雄ねじによる組み合わせの構造に限定されない。たとえば、雌ねじは、予め形成されている必要はなく、ねじ15の螺合で雌ねじが形成されてもよい。また、装着部7車幅方向外側の近傍にねじ固定部12を配置してもよい。また、座面部15およびグロメット部材22の形状が他の形状であってもよい。
さらにねじ15としてタッピングビス等他の形状のねじを用いてもよい。この場合、タッピングビスにより、貫通孔に雌ねじが形成されるため、貫通孔に雌ねじ部を形成する必要がない。
すなわち、ねじ15を用いて固定するねじ固定部12で、クリップ固定部11よりも装着部7側に配置されているものであれば何れの箇所にねじ固定部12を配置してもよい。 また、実施形態では、ねじ15を所定の傾斜角αで斜め方向に挿通して締め付けているが、特にこれに限らず、面直の方向にねじ15を挿通して締め付けてもよい。このようにねじ固定部12の形状、数量、配置および材質が特に実施形態の車両後部構造に限定されるものではない。
【0054】
また、実施形態では、
図4に示すように上下一対の係着部26a,26aは、先端に向かうに従って幅方向寸法が狭くなる先細状(
図5参照)で形成されている。さらに各係着部26aは上下の外側面26eにそれぞれ係着溝26cおよび抜止め片26dをそれぞれ形成している。しかしながら、特にこれに限らない。すなわち、係着部26a,係着溝26cおよび抜止め片26dは、それらの形状、数量、配置および材質が特に実施形態の車両後部構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
2 テールゲート上部
3 スポイラ
4 スポイラ本体
5 ストップランプ(スポイラ部品の一つ)
6 車幅方向中間部
7 装着部
10 取付部
11 クリップ固定部
12 ねじ固定部