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特開2023-143473金具の連結構造及び、これを備えた撹拌機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143473
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】金具の連結構造及び、これを備えた撹拌機
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/16 20060101AFI20230928BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20230928BHJP
   B01F 27/806 20220101ALI20230928BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20230928BHJP
   B01F 27/07 20220101ALN20230928BHJP
   B01F 27/95 20220101ALN20230928BHJP
   B01F 35/92 20220101ALN20230928BHJP
   B01F 101/06 20220101ALN20230928BHJP
【FI】
F16D3/16 G
B01F27/112
B01F27/806
B01F27/90
B01F27/07
B01F27/95
B01F35/92
B01F101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050881
(22)【出願日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 豪仁
(72)【発明者】
【氏名】松本 宏典
(72)【発明者】
【氏名】牟田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰三
【テーマコード(参考)】
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G037CA03
4G037DA21
4G037EA02
4G078AA03
4G078AA09
4G078AB09
4G078BA05
4G078CA12
4G078DA01
4G078DB04
4G078DB08
4G078DB10
(57)【要約】
【課題】第1金具と第2金具とが摺動して摩耗することを防止可能な金具の連結構造を提供する。
【解決手段】本発明によれば、第1金具7と、第2金具8と、シャフト9とを備えた金具の連結構造Xであって、一対のワッシャ10L,10Rをさらに備え、第1金具7は、一対の腕部70L,70Rと、当該一対の腕部70L,70Rに設けられた一対の支持孔71L,71Rとを備え、第2金具8は、被支持孔84を備えるとともに、一対の腕部70L,70Rの間に配置され、一対のワッシャ10L,10Rは、一対の腕部70L,70Rの内側において第2金具8を挟むよう配置され、シャフト9は、一対の支持孔71L,71R、被支持孔84及び一対のワッシャ10L,10Rに挿通されて第1金具7と第2金具8とを回転可能に連結するよう構成される、金具の連結構造Xが提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金具と、第2金具と、シャフトとを備えた金具の連結構造であって、
一対のワッシャをさらに備え、
前記第1金具は、一対の腕部と、当該一対の腕部に設けられた一対の支持孔とを備え、
前記第2金具は、被支持孔を備えるとともに、前記一対の腕部の間に配置され、
前記一対のワッシャは、前記一対の腕部の内側において前記第2金具を挟むよう配置され、
前記シャフトは、前記一対の支持孔、前記被支持孔及び前記一対のワッシャに挿通されて前記第1金具と前記第2金具とを回転可能に連結するよう構成される、金具の連結構造。
【請求項2】
請求項1に記載の金具の連結構造であって、
前記腕部と前記第2金具の少なくとも一方が、前記一対のワッシャの脱落を防止する脱落防止構造を備えている、金具の連結構造。
【請求項3】
請求項2に記載の金具の連結構造であって、
前記脱落防止構造は、前記シャフトと垂直な方向のうち少なくとも上方以外の方向への前記ワッシャの移動を規制する、金具の連結構造。
【請求項4】
請求項3に記載の金具の連結構造であって、
前記脱落防止構造は、溝又は突起である、金具の連結構造。
【請求項5】
請求項4に記載の金具の連結構造であって、
前記ワッシャの厚みは、当該ワッシャが配置される側の前記腕部と前記第2金具の間の最大のクリアランスよりも大きい、金具の連結構造。
【請求項6】
請求項5に記載の金具の連結構造であって、
前記脱落防止構造は、前記第2金具に形成された溝である、金具の連結構造。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の金具の連結構造であって、
前記ワッシャは樹脂製である、金具の連結構造。
【請求項8】
撹拌アームと、当該撹拌アームの先端に取着される撹拌羽根とを備えた撹拌機であって、
請求項1~請求項7のいずれかに記載の金具の連結構造を備え、
前記第1金具は、前記撹拌アームと一体回転可能な羽根取付金具であり、
前記第2金具は、前記撹拌羽根に固定される羽根金具である、撹拌機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金具の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1金具と、第2金具と、シャフトとを備え、シャフトにより第1金具と第2金具が回転可能に連結された構成の金具の連結構造がある。例えば、特許文献1には、撹拌アーム(羽根アーム)と、当該撹拌アームの先端に取着される撹拌羽根(掻取羽根)とを備えた撹拌機(攪拌装置)であって、撹拌羽根に固定された第2金具(固定ブラケット)がシャフト(取付ピン)により撹拌アーム先端の第1金具(第1、第2の対向部)に軸支された構造を備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6461240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような金具の連結構造の場合、第2金具がシャフト回りを回動する際に、第1金具と第2金具が摺動し、摺動面が摩耗して摩耗粉が発生するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、第1金具と第2金具とが摺動して摩耗することを防止可能な金具の連結構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1金具と、第2金具と、シャフトとを備えた金具の連結構造であって、一対のワッシャをさらに備え、前記第1金具は、一対の腕部と、当該一対の腕部に設けられた一対の支持孔とを備え、前記第2金具は、被支持孔を備えるとともに、前記一対の腕部の間に配置され、前記一対のワッシャは、前記一対の腕部の内側において前記第2金具を挟むよう配置され、前記シャフトは、前記一対の支持孔、前記被支持孔及び前記一対のワッシャに挿通されて前記第1金具と前記第2金具とを回転可能に連結するよう構成される、金具の連結構造が提供される。
【0007】
本発明によれば、一対のワッシャが第1金具と第2金具の間に配置されることで、第1金具と第2金具の摺動面の摩耗を防止することが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記腕部と前記第2金具の少なくとも一方が、前記一対のワッシャの脱落を防止する脱落防止構造を備えている。
【0010】
好ましくは、前記脱落防止構造は、前記シャフトと垂直な方向のうち少なくとも上方以外の方向への前記ワッシャの移動を規制する。
【0011】
好ましくは、前記脱落防止構造は、溝又は突起である。
【0012】
好ましくは、前記ワッシャの厚みは、当該ワッシャが配置される側の前記腕部と前記第2金具の間の最大のクリアランスよりも大きい。
【0013】
好ましくは、前記脱落防止構造は、前記第2金具に形成された溝である。
【0014】
好ましくは、前記ワッシャは樹脂製である。
【0015】
また、本発明によれば、撹拌アームと、当該撹拌アームの先端に取着される撹拌羽根とを備えた撹拌機であって、上記の金具の連結構造を備え、前記第1金具は、前記撹拌アームと一体回転可能な羽根取付金具であり、前記第2金具は、前記撹拌羽根に固定される羽根金具である、撹拌機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る撹拌機1及びこれを備えた蒸気釜100の全体図である。
図2図1の撹拌機1の撹拌アーム5及び撹拌羽根6を示す拡大図である。
図3図3Aは、図1の撹拌機1の羽根金具8の正面図であり、図3Bは、同羽根金具8の平面図であり、図3Cは、同羽根金具8の側面図である。
図4図1の撹拌機1の金具の連結構造Xを示す斜視図である。
図5図4の金具の連結構造Xの分解斜視図である。
図6図4のA-A線断面図である。
図7】腕部70Lと接続部82の左側面85Lとの間の最大クリアランスCLを示す説明図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る金具の連結構造Xの羽根金具8の接続部82の拡大斜視図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る金具の連結構造Xにおける腕部70Lと接続部82の突起87Lとの間の最大クリアランスCLを示す説明図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る金具の連結構造Xを示す模式図である。
図11】本発明の第5実施形態に係る金具の連結構造Xを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0018】
1.第1実施形態
1.1 蒸気釜100の構成
まず、本発明の第1実施形態に係る撹拌機1を備えた蒸気釜100の全体構成について説明する。蒸気釜100は、被撹拌物である食材を加熱しながら撹拌することの可能な装置である。蒸気釜100は、食品が収容される処理槽101と、処理槽101内の食品を撹拌する撹拌機1とを備える。
【0019】
処理槽101は、上部が開放された容器であり、上部から食品が投入され、内部に収容される。処理槽101の外側には、処理槽101の底面及び側面の少なくとも一部を覆うようにジャケット102が設けられており、ジャケット102と処理槽101との間には、蒸気を導入可能な空間(蒸気室)が設けられている。ジャケット102の側方には蒸気導入口103が設けられており、蒸気導入口103に接続された給蒸路(不図示)から蒸気室へ高温の蒸気を供給することにより、処理槽101内の食品を間接的に加熱することができる。また、ジャケット102の底壁には、ドレンソケット104が設けられており、蒸気の凝縮水はドレンソケット104に接続された排水路(不図示)を経由して外部へ排出される。
【0020】
処理槽101は、フレーム105から浮いた状態で、処理槽101を側方から挟むように設けられた1対の軸部材106により支持されている。軸部材106の一方は、伝達機構107を介して傾動ハンドル108に接続されており、傾動ハンドル108を操作することで処理槽101を傾動可能となっている。処理槽101を傾動させることにより、処理後の食品を効率的に取り出すことが可能となっている。
【0021】
1.2 撹拌機1の構成
撹拌機1は、処理槽101内の食品を攪拌する。本実施形態の撹拌機1は、図1に示すように、昇降装置2と、撹拌駆動装置3と、回転盤4と、撹拌アーム5と、撹拌羽根6とを備える。昇降装置2は、撹拌駆動装置3と、これに取り付けられた回転盤4、撹拌アーム5及び撹拌羽根6を昇降可能に構成される。
【0022】
具体的には、昇降装置2は、昇降ハンドル20を備え、昇降ハンドル20を回転させることで、撹拌駆動装置3を回転軸21回りに回動させる。これにより、本実施形態の昇降装置2は、撹拌駆動装置3を、撹拌羽根6が処理槽101内に配置された状態(図1参照)と撹拌羽根6が処理槽101の上部に持ち上げられた状態(不図示)との間で移動させることが可能となっている。
【0023】
撹拌駆動装置3は、処理槽101の上方に張り出すように配置されるハウジング30内に、モータ等の駆動源(不図示)を配置して構成される。撹拌駆動装置3は、駆動源の動力により回転盤4を回転駆動させる。
【0024】
回転盤4は、円盤状の部材であり、撹拌駆動装置3の下方に配置され、撹拌駆動装置3の駆動源によって回転可能である。回転盤4の底部には、円盤の中心よりも径方向外側の偏心した位置に撹拌アーム5の基端が取り付けられている。そして、回転盤4が回転すると、撹拌アーム5が円盤の中心の周りを旋回するように回転する。
【0025】
撹拌アーム5は、棒状に形成され、少なくとも先端側の一部がモータ(不図示)によって自転可能に構成されている。また、撹拌アーム5は、図2に示すように、その先端部に、羽根取付金具7を備えている。
【0026】
撹拌羽根6は、図2に示すように、一対の羽根板60を備える。羽根板60は、処理槽101の底面に沿って湾曲した形状となっており、処理槽101の底面に付着した食品を撹拌可能となっている。また、本実施形態の撹拌羽根6は、羽根金具8を介して撹拌アーム5の先端の羽根取付金具7に取り付けられる。
【0027】
羽根金具8は、図3A図3Cに示すように、中央に形成される中央部80と、中央部80から左右両側(すなわち、略水平方向)に延びる一対の羽根取付板81L,81Rと、中央部80から上方に延びる接続部82とを備える。羽根取付板81L及び羽根取付板81Rは、それぞれ板状に形成され、図3Cの側面図に示すように、左右で互いに異なる方向に傾くよう設けられている。また、羽根取付板81L及び羽根取付板81Rには、それぞれ羽根板60を取り付けるための複数の取付孔83が形成されている。そして、取付孔83に固定ピン(不図示)等を挿通させて左右の羽根板60を取り付ける。これにより、羽根取付板81Lに取り付けられる羽根板60及び羽根取付板81Rに取り付けられる羽根板60は左右で互いに異なる方向に傾いた状態で固定される。
【0028】
このような構成により、撹拌羽根6が撹拌動作を行う際、羽根板60が適切な角度で食品に当接し、効果的に食品の撹拌を行うことが可能となっている。ただし、上記説明した羽根板60の形状及び羽根取付金具7による羽根板60の取り付け構造については、従来既知の任意の構成を適用することができる。なお、接続部82の構成については、後述する。
【0029】
以上のような構成によって、撹拌アーム5が回転盤4の中心周りの旋回と自転とを行うことにより、撹拌羽根6が処理槽101内で撹拌動作を行い、処理槽101内の食品が撹拌される。撹拌機1が処理槽101内の食品を撹拌することにより、食品の処理効率を高めることができる。
【0030】
ところで、本実施形態の撹拌機1において、上記説明した撹拌アーム5の羽根取付金具7と羽根金具8とは、図2に示すように、シャフト9ととともに、金具の連結構造Xを構成し、撹拌アーム5と撹拌羽根6とは、この金具の連結構造Xにより連結されている。以下、図2図7を参照して、金具の連結構造Xについて詳細に説明する。
【0031】
1.3 金具の連結構造X
本実施形態に係る金具の連結構造Xは、撹拌羽根6を撹拌アーム5に取り付けるために用いられる。金具の連結構造Xは、具体的には、図2,4,6に示すように、撹拌アーム5の先端部に形成された第1金具としての羽根取付金具7と、撹拌羽根6に固定される第2金具としての羽根金具8と、これらを相対回転可能に軸支するシャフト9とを備える。なお、羽根取付金具7及び羽根金具8は、いずれもステンレス等の金属製とされる。また、本実施形態の金具の連結構造Xは、図5及び図6に示すように、左右一対のワッシャ10L,10Rをさらに備えている。
【0032】
以下、各構成を具体的に説明する。なお、以下の説明では、羽根金具8のうち、接続部82以外の構成は省略し、羽根金具8の接続部82を単に羽根金具8とも呼ぶこととする。
【0033】
羽根取付金具7は、図4図6に示すように、一対の腕部70L,70Rと、当該一対の腕部70L,70Rに設けられ、シャフト9が挿通される一対の支持孔71L,71Rとを備える。一対の腕部70L,70Rの向かい合う内側面72L,72Rは、それぞれ平らな面となっており、これらの間に羽根金具8の接続部82が配置される。
【0034】
羽根金具8の接続部82は、図5及び図6に示すように、略直方体の上部が半円柱状に削られた形状をなし、円柱の軸方向に貫通してシャフト9を挿通する被支持孔としての挿通孔84を備える。また、接続部82の軸方向(左右方向)の両面(左側面85L及び右側面85R)には、ワッシャ10L,10Rが配置される左右一対の溝86L,86Rが形成されている。溝86L,86Rは、ワッシャ10L,10Rの形状に沿うよう、有底の筒状となっている。
【0035】
シャフト9は、図4及び図6に示すように、半ねじの六角ボルト90と、ナット91とから構成される。
【0036】
ワッシャ10L,10Rは、図5に示すように、薄い円盤状の部材であり、それぞれ中央に貫通孔11L,11Rを備える。本実施形態において、ワッシャ10L,10Rは樹脂製とされ、ワッシャ10Lとワッシャ10Rは同一の構成である。一対のワッシャ10L,10Rは、図6及び図7に示すように、一対の腕部70L,70Rの内側において羽根金具8の接続部82を挟むよう配置される。
【0037】
このように、ワッシャ10L,10Rが羽根取付金具7と羽根金具8の間に配置されることで、羽根取付金具7と羽根金具8の相対回転の際の摺動面の摩耗を防止することが可能となっている。特に、本実施形態のように蒸気釜100の撹拌機1が上記金具の連結構造Xを備えていることで、撹拌の際、羽根取付金具7と羽根金具8の摺動面の摩耗により摩耗粉が食品に混入しないようになっている。
【0038】
以上の構成の金具の連結構造Xは、シャフト9の六角ボルト90を、羽根取付金具7の腕部70Lの支持孔71L、ワッシャ10L、羽根金具8の挿通孔84、ワッシャ10R及び腕部70Rの支持孔71Rに挿通し、ナット91を締結することで構成される。なお、挿通孔84の内径は六角ボルト90の呼び径よりも大きく形成されており、締結状態において羽根金具8は羽根取付金具7に対して自由に回転できるようになっている。
【0039】
1.4 脱落防止構造
ところで、このような金具の連結構造Xにおいてワッシャ10L,10Rを設ける場合、万が一ワッシャ10L,10Rが破損すると、ワッシャ10L,10Rがシャフト9から脱落するおそれがある。そして、本実施形態のように金具の連結構造Xが食品を撹拌する撹拌機1に用いられる場合、脱落したワッシャ10L,10Rが食品に混入するおそれがある。
【0040】
この点、本実施形態に係る金具の連結構造Xでは、図6及び図7の模式図に示すように、羽根金具8がワッシャ10L,10Rの脱落防止構造として溝86L,86Rを備えている。すなわち、ワッシャ10L,10Rの一部が溝86L,86R内に配置されていることで、ワッシャ10L,10Rのシャフト9に垂直な方向への移動が規制される。したがって、仮にワッシャ10L,10Rが破損しても、ワッシャ10L,10Rが脱落しないようになっている。
【0041】
さらに、本実施形態の金具の連結構造Xでは、ワッシャ10Lの厚みTLが、腕部70Lの内側面72Lと羽根金具8の左側面85Lの間の最大のクリアランス(最大クリアランスCL)よりも大きくなっている(TL>CL)。ここで、最大クリアランスCLは、図7に示すように、ワッシャ10L,10R及び羽根金具8が最も腕部70R側へ寄ったときの腕部70Lの内側面72Lと羽根金具8の左側面85Lとの間の隙間である。この最大クリアランスCLは、以下の式1で規定される。
(式1)最大クリアランスCL=(一対の腕部70L,70R間の幅W1)-(羽根金具8の幅W2)-(反対側のワッシャ10Rの厚みTR)+(反対側の溝86Rの深さDR)
【0042】
同様に、本実施形態に係る金具の連結構造Xでは、ワッシャ10Rの厚みTRが、腕部70Rの内側面72Rと羽根金具8の右側面85Rの間の最大のクリアランス(最大クリアランスCR、不図示)よりも大きくなっている(TR>CR)。ここで、最大クリアランスCRは、ワッシャ10L,10R及び羽根金具8が最も腕部70L側へ寄ったときの腕部70Rの内側面72Rと羽根金具8の右側面85Rの間との隙間である(不図示)。この最大クリアランスCRは、以下の式2で規定される。
(式2)最大クリアランスCR=(一対の腕部70L,70R間の幅W1)-(羽根金具8の幅W2)-(反対側のワッシャ10Lの厚みTL)+(反対側の溝86Lの深さDL)
【0043】
本実施形態の金具の連結構造Xは、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TRが同じ側の最大クリアランスCL,CRよりも大きくなっていることで、ワッシャ10L,10Rが溝86L,86Rから抜け出せないようになっている。したがって、ワッシャ10L,10Rの脱落を確実に防止することが可能となっている。
【0044】
ただし、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TRは、それぞれ溝86L,86Rの深さDL,DRよりも大きくなっている(図7参照)。これは、軸方向においてワッシャ10L,10Rの全てが溝86L,86Rに収容され、ワッシャとして機能しなくなることを防ぐためである。
【0045】
以上のことから、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TR及び溝86L,86Rの深さDL,DRは、以下の条件を満たすよう設定される。
(式3)TL>W1-W2-TR+DR
(式4)TR>W1-W2-TL+DL
(式5)TL>DL
(式6)TR>DR
【0046】
なお、上記の各式は、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TRがそれぞれ異なり、溝86L,86Rの深さDL,DRがそれぞれ異なる場合の条件である。ワッシャ10Lと厚みTLとワッシャ10Rの厚みTRが同じ厚みT、溝86Lの深さDLと溝86Rの深さDRが同じ深さDである場合は、上記式3と式4はいずれも下記式7となり、上記式5と式6はいずれも下記式8となる。
(式7)T>(W1-W2+D)/2
(式8)T>D
【0047】
上記の条件を満たすことで、ワッシャ10L,10Rが羽根取付金具7と羽根金具8の相対回転の際の摺動面の摩耗を防止しつつ、ワッシャ10L,10Rの脱落を確実に防止することが可能となっている。そして、ワッシャ10L,10Rの脱落を防止することで、ワッシャ10L,10Rの食品への混入を防止することが可能となっている。
【0048】
2.第2実施形態
次に、図8を用いて、本発明の第2実施形態に係る金具の連結構造Xについて説明する。本実施形態の金具の連結構造Xは、第1実施形態に係る金具の連結構造Xに類似しており、羽根金具8の構成のみが異なっている。したがって、以下では、第1実施形態との相違点のみを説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0049】
本実施形態の羽根金具8は、図8に示すように、脱落防止構造としての溝86L,86Rの上半分の内壁面が存在せず、ワッシャ10L,10Rは溝86L,86Rによって上方向の移動が規制されていない。このような構成であっても、上方以外の方向への移動が規制されていれば、ワッシャ10L,10Rの脱落を防止することが可能である。
【0050】
3.第3実施形態
次に、図9を用いて、本発明の第3実施形態に係る金具の連結構造Xについて説明する。本実施形態の金具の連結構造Xは、第1実施形態に係る金具の連結構造Xに類似しており、主に羽根金具8の構成のみが異なっている。したがって、以下では、第1実施形態との相違点のみを説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0051】
本実施形態の羽根金具8は、図9に示すように、羽根金具8の接続部82の左側面85L及び右側面85Rに、脱落防止構造として溝ではなく突起87L,87Rが設けられている。突起87L,87Rは、ワッシャ10L,10Rの周囲を囲むよう、シャフト9の軸方向に沿って外側に向かって突出している。なお、突起87L,87Rは、ワッシャ10L,10Rを囲む全周に亘って連続的に設けられていてもよく、複数に分割されて設けられていても良い。このような構成であっても、ワッシャ10L,10Rの脱落を防止することが可能である。
【0052】
また、本実施形態の金具の連結構造Xでも、ワッシャ10Lの厚みTLが、腕部70Lの内側面72Lと羽根金具8の間の最大のクリアランス(最大クリアランスCL)よりも大きくなっている(TL>CL)。ただし、本実施形態において、最大クリアランスCLは、図9に示すように、ワッシャ10L,10R及び羽根金具8が最も腕部70R側へ寄ったときの腕部70Lの内側面72Lと突起87Lの先端との間の隙間である。この最大クリアランスCLは、以下の式9で規定される。
(式9)最大クリアランスCL=(一対の腕部70L,70R間の幅W1)-(羽根金具8の幅W2)-(反対側のワッシャ10Rの厚みTR)-(同じ側の突起87Lの高さHL)
【0053】
同様に、本実施形態に係る金具の連結構造Xでは、ワッシャ10Rの厚みTRが、腕部70Rの内側面72Rと羽根金具8の間の最大のクリアランス(最大クリアランスCR、不図示)よりも大きくなっている(TR>CR)。ここで、最大クリアランスCRは、ワッシャ10L,10R及び羽根金具8が最も腕部70L側へ寄ったときの腕部70Rの内側面72Rと突起87Rの先端との間の隙間である(不図示)。この最大クリアランスCRは、以下の式10で規定される。
(式10)最大クリアランスCR=(一対の腕部70L,70R間の幅W1)-(羽根金具8の幅W2)-(反対側のワッシャ10Lの厚みTL)-(同じ側の突起87Rの高さHR)
本実施形態の金具の連結構造Xでも、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TRが同じ側の最大クリアランスCL,CRよりも大きくなっていることで、ワッシャ10L,10Rが突起87L,87Rから抜け出せないようになっている。したがって、ワッシャ10L,10Rの脱落を確実に防止することが可能となっている。
【0054】
ただし、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TRは、それぞれ突起87L,87Rの高さHL,HRよりも大きくなっている(図9参照)。これは、軸方向においてワッシャ10L,10Rの全てが突起87L,87Rの内側に収容され、ワッシャとして機能しなくなることを防ぐためである。
【0055】
以上のことから、本実施形態において、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TR及び突起87L,87Rの高さHL,HRは、以下の条件を満たすよう設定される。
(式11)TL>W1-W2-TR-HL
(式12)TR>W1-W2-TL-HR
(式13)TL>HL
(式14)TR>HR
【0056】
なお、ワッシャ10Lと厚みTLとワッシャ10Rの厚みTRが同じ厚みT、突起87L,87Rの高さHL,HRが同じ高さHである場合は、上記式11と式12は下記式15となり、上記式13と式14はいずれも下記式16となる。
(式15)T>(W1-W2-H)/2
(式16)T>H
【0057】
本実施形態の金具の連結構造Xでも、上記の条件を満たすことで、ワッシャ10L,10Rが羽根取付金具7と羽根金具8の相対回転の際の摺動面の摩耗を防止しつつ、ワッシャ10L,10Rの脱落を確実に防止することが可能となっている。そして、ワッシャ10L,10Rの脱落を防止することで、ワッシャ10L,10Rの食品への混入を防止することが可能となっている。
【0058】
4.第4実施形態
次に、図10を用いて、本発明の第4実施形態に係る金具の連結構造Xについて説明する。本実施形態の金具の連結構造Xは、第1実施形態に係る金具の連結構造Xに類似しており、主に羽根取付金具7及び羽根金具8の構成のみが異なっている。したがって、以下では、第1実施形態との相違点のみを説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0059】
本実施形態の金具の連結構造Xは、脱落防止構造として、羽根金具8側ではなく羽根取付金具7側に溝73L,73Rが形成されている。具体的には、溝73L,73Rは、それぞれ羽根取付金具7の腕部70L,70Rの内側面72L,72Rの、支持孔71L,71Rと同心となる位置に設けられる。溝73L,73Rは、ワッシャ10L,10Rの形状に沿うよう、有底の筒状となっている。
【0060】
このように、脱落防止構造が羽根取付金具7側に設けられた溝73L,73Rであっても、ワッシャ10L,10Rの脱落を防止することが可能である。なお、本実施形態においても、溝73L,73Rの深さを第1実施形態と同様、深さDL,DRと規定することで、最大クリアランスCL,CRは上記式1及び式2で与えられる。また、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TR及び溝73L,73Rの深さDL,DRが式3~式6の条件を満たすことで、ワッシャ10L,10Rが羽根取付金具7と羽根金具8の相対回転の際の摺動面の摩耗を防止しつつ、ワッシャ10L,10Rの脱落を確実に防止することが可能となっている。
【0061】
5.第5実施形態
次に、図11を用いて、本発明の第5実施形態に係る金具の連結構造Xについて説明する。本実施形態の金具の連結構造Xは、第3実施形態に係る金具の連結構造Xに類似しており、主に羽根取付金具7及び羽根金具8の構成のみが異なっている。したがって、以下では、第3実施形態との相違点のみを説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0062】
本実施形態の金具の連結構造Xは、脱落防止構造として、羽根金具8側ではなく羽根取付金具7側に突起74L,74Rが形成されている。具体的には、突起74L,74Rは、それぞれ羽根取付金具7の腕部70L,70Rの内側面72L,72Rの、支持孔71L,71R(図5参照)と同心となる位置に設けられる。突起74L,74Rは、ワッシャ10L,10Rの周囲を囲むよう、シャフト9の軸方向に沿って内側に向かって突出している。
【0063】
このように、脱落防止構造が羽根取付金具7側に設けられた突起74L,74Rであっても、ワッシャ10L,10Rの脱落を防止することが可能である。なお、本実施形態においては、突起74L,74Rの高さを第3実施形態と同様、高さHL,HRと規定することで、最大クリアランスCL,CRは上記式9及び式10で与えられる。また、ワッシャ10L,10Rの厚みTL,TR及び突起74L,74Rの高さHL,HRが式11~式14の条件を満たすことで、ワッシャ10L,10Rが羽根取付金具7と羽根金具8の相対回転の際の摺動面の摩耗を防止しつつ、ワッシャ10L,10Rの脱落を確実に防止することが可能となっている。
【0064】
6.その他の変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0065】
上記実施形態において、撹拌機1は蒸気釜100に用いられるものであった。しかしながら、本発明は、蒸気釜以外、例えば、蒸気ニーダに用いられる撹拌機(撹拌装置)にも用いることができる。また、撹拌機1は、食品以外の被撹拌物を撹拌するものであっても良い。
【0066】
上記実施形態では、撹拌機1における羽根取付金具7が第1金具として一対の腕部70L,70Rを備え、羽根金具8が第2金具として一対の腕部70L,70Rの間に配置される構成であった。しかしながら、撹拌機1における羽根金具8が第1金具として一対の腕部を備え、羽根取付金具7が第2金具として当該一対の腕部の間に配置される構成とすることも可能である。
【0067】
上記実施形態において、撹拌機1は撹拌アーム5及び撹拌羽根6を1つずつのみ備えていた。しかしながら、本発明は、複数の撹拌アーム5及び撹拌羽根6を備えた撹拌機1にも適用することができる。
【0068】
上記実施形態において、金具の連結構造Xは撹拌機1に用いられるものであった。しかしながら、本発明は、第1金具と、第2金具と、シャフトとを備える任意の金具の連結構造に適用することができる。
【0069】
上記実施形態においては、それぞれ羽根取付金具7又は羽根金具8のいずれか一方のみが、脱落防止構造として一対の溝又は突起を備えていた。しかしながら、一方側を溝、他方側は突起とする構成や、片側は第1金具側(羽根取付金具7側)、他方側は第2金具側(羽根金具8側)に溝/突起を設けた構成とすることも可能である。
【0070】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 :撹拌機
2 :昇降装置
3 :撹拌駆動装置
4 :回転盤
5 :撹拌アーム
6 :撹拌羽根
7 :羽根取付金具(第1金具)
8 :羽根金具(第2金具)
9 :シャフト
10L,10R :ワッシャ
11L,11R :貫通孔
20 :昇降ハンドル
21 :回転軸
30 :ハウジング
60 :羽根板
70L,70R :腕部
71L,71R :支持孔
72L,72R :内側面
73L,73R :溝(脱落防止構造)
74L,74R :突起(脱落防止構造)
80 :中央部
81L,81L :羽根取付板
82 :接続部
83 :取付孔
84 :挿通孔(被支持孔)
85L :左側面
85R :右側面
86L,86R: 溝(脱落防止構造)
87L,87R :突起(脱落防止構造)
90 :六角ボルト
91 :ナット
100 :蒸気釜
101 :処理槽
102 :ジャケット
103 :蒸気導入口
104 :ドレンソケット
105 :フレーム
106 :軸部材
107 :伝達機構
108 :傾動ハンドル
CL,CR :最大クリアランス
D,DL,DR :深さ
H,HL,HR :高さ
T,TL,TR :厚み
X :金具の連結構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11