IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図1
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図2
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図3
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図4
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図5
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図6
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図7
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図8
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図9
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図10
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図11
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図12
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図13
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図14
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図15
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図16
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143549
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/224 20060101AFI20230929BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
H01G4/224 100
H01G4/30 511
H01G4/30 514
H01G4/30 516
H01G4/30 201M
H01G4/30 201C
H01G4/30 201F
H01G4/30 201H
H01G4/30 201A
H01G4/30 201K
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050981
(22)【出願日】2022-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大西 浩介
(72)【発明者】
【氏名】村松 諭
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 由紀枝
(72)【発明者】
【氏名】西村 亮
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC05
5E001AD05
5E001AF06
5E001AG00
5E001AH03
5E001AJ01
5E001AJ04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG01
5E082GG10
5E082GG12
5E082HH43
5E082JJ03
5E082JJ06
5E082JJ13
5E082JJ26
5E082PP09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】衝撃によるセラミック素体に割れや欠けの発生や内部電極と外部電極の電気的接続の外れを抑制するた積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサ100は、T方向に積層された複数のセラミック層1aと複数の第1、第2内部電極2、3を有し、高さ方向に相互に対向する第1主面1A、第2主面1Bと、L方向で対向する第1端面1C、第2端面1Dと、T方向とL方向に直交する幅方向で対向する第1側面、第2側面とを有するセラミック素体1を備える。第1端面と第1主面の一部に形成され、第2主面に形成されず第1内部電極と電気的に接続する第1外部電極4と、第2端面と第1主面の一部とに形成され、第2主面には形成されず第2内部電極と電気的に接続する第2外部電極と、第1主面と第2主面との間を貫通する2以上の貫通部材6、7と、第2主面の少なくとも一部に形成され、貫通部材を覆う強化層8と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に積層された複数のセラミック層と複数の第1内部電極と複数の第2内部電極とを有し、前記高さ方向において相互に対向する第1主面および第2主面と、前記高さ方向に直交する長さ方向において相互に対向する第1端面および第2端面と、前記高さ方向および前記長さ方向に直交する幅方向において相互に対向する第1側面および第2側面とを有するセラミック素体を備え、
前記第1端面の少なくとも一部と、前記第1主面の一部とに形成され、前記第2主面には形成されていない、前記第1内部電極と電気的に接続された第1外部電極と、
前記第2端面の少なくとも一部と、前記第1主面の一部とに形成され、前記第2主面には形成されていない、前記第2内部電極と電気的に接続された第2外部電極と、
前記セラミック素体の前記第1主面と前記第2主面との間を貫通して形成された、少なくとも2つの貫通部材と、
前記セラミック素体の前記第2主面の少なくとも一部に形成され、前記セラミック素体から露出した前記貫通部材を覆った強化層と、を備えた、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
少なくとも1つの前記貫通部材が、導電性であり、前記第1外部電極と電気的に接続され、
少なくとも1つの別の前記貫通部材が、導電性であり、前記第2外部電極と電気的に接続された、
請求項1に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記第1外部電極と電気的に接続された導電性の前記貫通部材が、前記第1内部電極と電気的に接続され、
前記第2外部電極と電気的に接続された導電性の前記貫通部材が、前記第2内部電極と電気的に接続された、
請求項2に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記貫通部材が、樹脂製、または、ゴム製である、
請求項1に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記第1内部電極と前記第1外部電極とが、前記セラミック素体の前記第1端面において電気的に接続され、
前記第2内部電極と前記第2外部電極とが、前記セラミック素体の前記第2端面において電気的に接続された、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記貫通部材が柱状である、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記貫通部材が筒状である、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
強化層の材質がDLCである、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記セラミック素体の高さ寸法が100μm以下である、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
前記セラミック素体の前記第1主面に、第2強化層が形成された、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項11】
前記第2強化層が、前記セラミック素体の前記第1主面における、前記第1外部電極、および、第2外部電極のいずれもが形成されていない部分に形成された、
請求項10に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項12】
前記第2強化層が、前記セラミック素体の前記第1主面の全面に形成され、
前記第1外部電極の一部、第2外部電極の一部が、それぞれ、前記第2強化層の上に形成された、
請求項10に記載された積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関し、更に詳しくは、セラミック素体を貫通して形成された貫通部材と、セラミック素体の表面に形成された強化層とを備えた積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサが、電子機器や電気機器に広く使用されている。従来の一般的な積層セラミックコンデンサは、セラミック素体の両端に、それぞれ、外部電極がキャップ状に形成されていた。すなわち、外部電極が、セラミック素体の端面に形成されるだけではなく、端面から、両主面(実装面と天面)の一部、および、両側面の一部に延出されて形成されていた。なお、これらの延出された部分は、外部電極の折返し部と呼ばれる場合がある。
【0003】
一方、近時、電子機器や電気機器の小型化、軽量化が進み、積層セラミックコンデンサを含む電子部品にも、小型化、軽量化が求められている。この要求に応えた積層セラミックコンデンサとして、L字型外部電極を備えた積層セラミックコンデンサが知られている。
【0004】
特許文献1(WO2018/220901A1公報)に、L字型外部電極を備えた積層セラミックコンデンサ(セラミック電子部品)が開示されている。図17に、特許文献1に開示された積層セラミックコンデンサ1000を示す。
【0005】
積層セラミックコンデンサ1000は、セラミック素体101を備えている。セラミック素体101の内部に、内部電極102、103が形成されている。内部電極102はセラミック素体101の一方の端面に引出され、内部電極103はセラミック素体101の他方の端面に引出されている。
【0006】
セラミック素体101の一方の端部に外部電極104が形成され、セラミック素体101の他方の端部に外部電極105が形成されている。内部電極102が外部電極104に電気的に接続され、内部電極103が外部電極105に電気的に接続されている。
【0007】
外部電極104は、セラミック素体101の一方の端面と、実装面側の主面の一部とに形成され、天面側の主面には形成されていない。同様に、外部電極105は、セラミック素体101の他方の端面と、実装面側の主面の一部とに形成され、天面側の主面には形成されていない。積層セラミックコンデンサ1000を、側面と平行な面で切断し、その断面を見たとき、外部電極104、105は、L字型をしている。そのため、外部電極104、105は、L字型外部電極と呼ばれる。
【0008】
L字型外部電極である外部電極104、105を備えた積層セラミックコンデンサ1000は、セラミック素体101の天面側の主面に外部電極が形成されていないため、薄層化(低背化)により小型化がはかられている。また、外部電極の一部分が省略されているため、軽量化がはかられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2018/220901A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したとおり、積層セラミックコンデンサを含む電子部品に対し、小型化、軽量化が求められており、近時、高さ寸法が100μm以下といった、超薄層化された積層セラミックコンデンサも実用化されつつある。
【0011】
一方、積層セラミックコンデンサを含む電子部品は、一般的に、真空吸着ノズル備えたマウンターで吸着し、基板などに実装されることが多い。
【0012】
このような状況のもと、薄層化され、かつ、L字型外部電極を備えた積層セラミックコンデンサにおいて、マウンターで基板などに実装する際の衝撃によって、セラミック素体に割れや欠けが発生して、IR(絶縁抵抗)が劣化したり、内部電極と外部電極との間の電気的接続が外れて(断線して)、電気的特性が変動したりする虞が発生している。すなわち、外部電極が、キャップ状ではなく、L字型であることによって、外部電極でセラミック素体を十分に保護することができず、衝撃によって、セラミック素体に割れや欠けが発生したり、内部電極と外部電極との間の電気的接続が外れたりする虞が発生している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その手段として本発明の一実施形態にかかる積層セラミックコンデンサは、高さ方向に積層された複数のセラミック層と複数の第1内部電極と複数の第2内部電極とを有し、高さ方向において相互に対向する第1主面および第2主面と、高さ方向に直交する長さ方向において相互に対向する第1端面および第2端面と、高さ方向および長さ方向に直交する幅方向において相互に対向する第1側面および第2側面とを有するセラミック素体を備え、第1端面の少なくとも一部と、第1主面の一部とに形成され、第2主面には形成されていない、第1内部電極と電気的に接続された第1外部電極と、第2端面の少なくとも一部と、第1主面の一部とに形成され、第2主面には形成されていない、第2内部電極と電気的に接続された第2外部電極と、セラミック素体の第1主面と第2主面との間を貫通して形成された、少なくとも2つの貫通部材と、セラミック素体の第2主面の少なくとも一部に形成され、セラミック素体から露出した貫通部材を覆った強化層と、を備えたものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態にかかる積層セラミックコンデンサは、衝撃によって、セラミック素体に割れや欠けが発生したり、内部電極と外部電極との間の電気的接続が外れたりすることが抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。
図2】積層セラミックコンデンサ100の断面図であり、図1の一点鎖線矢印で示すX-X部分を示している。
図3】積層セラミックコンデンサ100の分解斜視図である。
図4】積層セラミックコンデンサ100の分解斜視図である。
図5図5(A)、(B)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の実装方法の一例を示す説明図である。
図6図6(A)~(C)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例において実施される工程を示す説明図である。
図7図7(D)~(F)は、図6(C)の続きであり、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例において実施される工程を示す説明図である。
図8】積層セラミックコンデンサ200の断面図である。
図9】積層セラミックコンデンサ200の分解斜視図である。
図10図10(A)~(C)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ200の製造方法の一例において実施される工程を示す説明図である。
図11図11(D)~(F)は、図10(C)の続きであり、それぞれ、積層セラミックコンデンサ200の製造方法の一例において実施される工程を示す説明図である。
図12図12(A)は、積層セラミックコンデンサ300の平面透視図である。図12(B)は、積層セラミックコンデンサ300の断面図であり、図12(A)の一点鎖線矢印で示すY-Y部分を示している。図12(C)は、積層セラミックコンデンサ300の断面図であり、図12(A)の一点鎖線矢印で示すZ-Z部分を示している。
図13図13(A)は、積層セラミックコンデンサ400の平面透視図である。図13(B)は、積層セラミックコンデンサ400の断面図であり、図13(A)の一点鎖線矢印で示すY-Y部分を示している。図13(C)は、積層セラミックコンデンサ400の断面図であり、図13(A)の一点鎖線矢印で示すZ-Z部分を示している。
図14】積層セラミックコンデンサ500の断面図である。
図15】積層セラミックコンデンサ600の断面図である。
図16】積層セラミックコンデンサ700の断面図である。
図17】特許文献1に開示された積層セラミックコンデンサ1000の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0018】
[第1実施形態]
図1図4に、それぞれ、第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100を示す。ただし、図1は、積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ100の断面図であり、図1の一点鎖線矢印で示すX-X部分を示している。図3は、積層セラミックコンデンサ100の分解斜視図であり、後述するセラミック素体1から、後述する強化層8を取り外した状態を示している。図4も、積層セラミックコンデンサ100の分解斜視図であり、セラミック素体1から、更に後述する第1外部電極4、第2外部電極5を取り外すとともに、セラミック素体1を後述する複数のセラミック層1aに分解した状態を示している。なお、各図には、積層セラミックコンデンサ100の高さ方向T、長さ方向L、幅方向Wを示しており、以下の説明において、これらの方向に言及する場合がある。なお、本実施形態においては、セラミック層1aが積層される方向を、高さ方向Tとしている。
【0019】
積層セラミックコンデンサ100は、複数のセラミック層1aが積層されたセラミック素体1を備えている。セラミック素体1は、直方体形状からなり、高さ方向Tにおいて相互に対向する第1主面1Aおよび第2主面1Bと、高さ方向Tに直行する長さ方向Lにおいて相互に対向する第1端面1Cおよび第2端面1Dと、高さ方向Tおよび長さ方向Lに直行する幅方向Wにおいて相互に対向する第1側面1Eおよび第2側面1Fと、を有している。なお、セラミック素体1において、第1主面1Aが実装面であり、第2主面1Bが天面である。
【0020】
セラミック素体1(セラミック層1a)の材質は任意であり、たとえば、BaTiOを主成分とする誘電体セラミックを使用することができる。ただし、BaTiOに代えて、CaTiO、SrTiO、CaZrOなど、他の材質を主成分とする誘電体セラミックを使用してもよい。
【0021】
セラミック層1aの層数は任意である。セラミック層1aの厚さ寸法も任意であるが、たとえば、0.3μm以上、3.0μm以下程度であることが好ましい。セラミック素体1の寸法も任意であるが、本実施形態においては、高さ方向Tの寸法を100μm、長さ方向Lの寸法を400μm、幅方向Wの寸法を200μmとした。
【0022】
セラミック素体1は、所定の層間に第1内部電極2が形成され、別の所定の層間に第2内部電極3が形成されている。第1内部電極2は、セラミック素体1の第1端面1Cに引出されている。第2内部電極3は、セラミック素体1の第2端面1Dに引出されている。
【0023】
第1内部電極2、第2内部電極3は、それぞれ、2層以上からなる。第1内部電極2と第2内部電極3とは、通常、高さ方向Tにおいて、交互に配置されている。第1内部電極2、第2内部電極3の厚さ寸法は任意であるが、たとえば、0.1μm以上、2.0μm以下程度であることが好ましい。
【0024】
第1内部電極2、第2内部電極3の主成分の材質は任意であるが、本実施形態においては、Niを使用した。ただし、Niに代えて、Cu、Ag、Pd、Auなど、他の金属を使用してもよい。また、NiやCu、Ag、Pd、Auなどは、他の金属との合金であってもよい。
【0025】
セラミック素体1の一方の端部に、第1外部電極4が形成されている。第1外部電極4は、L字型外部電極である。すなわち、積層セラミックコンデンサ100を第1側面1Eおよび第2側面1Fと平行な面で切断し、その断面を見たとき、第1外部電極4はL字型をしている。具体的には、第1外部電極4は、セラミック素体1の第1端面1Cの全部と、第1主面1Aの一部と、第1側面1Eの一部と、第2側面1Fの一部とに形成されていて、第2主面1Bには形成されていない。なお、第1側面1E、第2側面1Fに形成された第1外部電極4は、省略してもよい。
【0026】
セラミック素体1の他方の端部に、第2外部電極5が形成されている。第2外部電極5も、L字型外部電極である。具体的には、第2外部電極5は、セラミック素体1の第2端面1Dの全部と、第1主面1Aの一部と、第1側面1Eの一部と、第2側面1Fの一部とに形成されていて、第2主面1Bには形成されていない。なお、第1側面1E、第2側面1Fに形成された第2外部電極5は、省略してもよい。
【0027】
第1外部電極4は、セラミック素体1の第1端面1Cにおいて、第1内部電極2と電気的に接続されている。第2外部電極5は、セラミック素体1の第2端面1Dにおいて、第2内部電極3と電気的に接続されている。
【0028】
第1外部電極4、第2外部電極5の構造、主成分の材質、形成方法は任意であるが、本実施形態においては、第1外部電極4、第2外部電極5を、それぞれ、導電性ペーストを焼き付けて形成した第1層と、めっきによって形成した第2層、第3層、第4層との多層構造に形成した。具体的には、導電性ペーストを焼き付けて形成した第1層は、主成分にNiを使用した。ただし、Niに代えて、Cu、Ag、Pd、Auなど、他の金属を使用してもよい。また、NiやCu、Ag、Pd、Auなどは、他の金属との合金であってもよい。また、めっきによって形成した第2層は主成分にCuを使用し、第3層は主成分にNiを使用し、第4層は主成分にSnを使用した。なお、図3の断面図においては、見やすくするために、第1外部電極4、第2外部電極5を多層(第1層~第4層)には示さず、1層に示している。
【0029】
第1外部電極4の厚さ寸法は任意であるが、本実施形態においては、セラミック素体1の第1主面1Aにおいてにおいて10μm程度とし、第1端面1Cにおいて10μm程度とした。同様に、第2外部電極5の厚さ寸法も任意であるが、本実施形態においては、セラミック素体1の第1主面1Aにおいてにおいて10μm程度とし、第2端面1Dにおいて10μm程度とした。
【0030】
積層セラミックコンデンサ100は、セラミック素体1の第1主面1Aと第2主面1Bとの間を貫通して形成された、第1貫通部材6と、第2貫通部材7とを備えている。本実施形態においては、第1貫通部材6、第2貫通部材7を金属製とした。したがって、第1貫通部材6、第2貫通部材7は、導電性を備えている。
【0031】
第1貫通部材6、第2貫通部材7の具体的な主成分(金属)の材質は任意であるが、本実施形態においては、Niを使用した。ただし、Niに代えて、Cu、Ag、Pd、Auなど、他の金属を使用してもよい。また、NiやCu、Ag、Pd、Auなどは、他の金属との合金であってもよい。なお、第1貫通部材6、第2貫通部材7は、金属製ではなく、導電性樹脂などであってもよい。
【0032】
第1貫通部材6、第2貫通部材7は、セラミック素体1に衝撃(応力)が加わっても、セラミック素体1への影響をできるだけ小さくするために設けられたものである。すなわち、第1貫通部材6、第2貫通部材7は、一方向から衝撃が加わった場合、セラミック素体1への影響をできるだけ小さくしたうえで、衝撃を反対方向に逃がす機能を有している。また、第1貫通部材6、第2貫通部材7は、両方向(上下両方向)から衝撃が加わった場合、セラミック素体1への影響ができるだけ小さくなるように、衝撃を緩和したり、吸収したり、支えたりする機能を有している。
【0033】
第1貫通部材6、第2貫通部材7の形状は任意であるが、本実施形態においては、円柱状にした。第1貫通部材6、第2貫通部材7を、円柱状に代えて、4角柱状や5角柱状など、他の柱状に置き換えてもよい。第1貫通部材6、第2貫通部材7の寸法も任意であるが、本実施形態においては、直径を30μm程度とした。なお、第1貫通部材6、第2貫通部材7の高さ方向Tの寸法は、セラミック素体1の高さ方向Tの寸法と同じである。
【0034】
第1貫通部材6は、セラミック素体1の内部において、第1内部電極2と電気的に接続されている。また、第1貫通部材6は、セラミック素体1の第1主面1Aにおいて、第1外部電極4と電気的に接続されている。
【0035】
第2貫通部材7は、セラミック素体1の内部において、第2内部電極3と電気的に接続されている。また、第2貫通部材7は、セラミック素体1の第1主面1Aにおいて、第2外部電極5と電気的に接続されている。
【0036】
セラミック素体1の第2主面1Bに、強化層8が形成されている。強化層8は、セラミック素体1の機械的強度を向上させるために設けられたものである。すなわち、セラミック素体1に加わる衝撃(応力)を、緩和するために設けられたものである。
【0037】
強化層8の材質は任意であるが、本実施形態においては、材質にDLC(Diamond-Like Carbon;ダイヤモンドライクカーボン)を使用した。DLCは、高い硬度、高い耐摩耗性、高い耐腐食性などを備えている。また、DLCは、十分な電気的絶縁性を備えている。強化層8の寸法も任意であるが、本実施形態においては、厚さを5μm程度とした。この値は、セラミック素体1の機械的強度を向上させるために、必要十分な値だからである。
【0038】
強化層8は、セラミック素体1の第2主面1Bから露出した、第1貫通部材6と第2貫通部材7とを覆っている。本実施形態においては、セラミック素体1の第2主面1Bの全面に、強化層8が形成されている。ただし、強化層8は、少なくとも、セラミック素体1の第2主面1Bから露出した、第1貫通部材6と第2貫通部材7とを覆っていればよい。
【0039】
積層セラミックコンデンサ100は、上述したとおり、第1外部電極4、第2外部電極5にL字型外部電極を採用している。この第1の目的は薄層化(低背化)であるが、第1外部電極4、第2外部電極5にL字型外部電極を採用することは、第2主面1B側からセラミック素体1に加わる衝撃を緩和するうえでも極めて好ましい。すなわち、第1外部電極4、第2外部電極5にL字型外部電極を採用すれば、セラミック素体1の第2主面1Bに外部電極は形成されず平坦になり、そこに形成される強化層8も平坦になる。一方、第1外部電極4、第2外部電極5が、仮に、セラミック素体1の第2主面1Bにも外部電極が形成されたキャップ状であれば、そこに形成される強化層8は平坦にならず、段差が発生する。平坦な強化層8は、段差のある強化層8よりも、衝撃を緩和(吸収)する効果が高い。積層セラミックコンデンサ100は、第1外部電極4、第2外部電極5にL字型外部電極を採用しており、強化層8を平坦にすることができるため、キャップ状の外部電極を採用した場合に比べて、衝撃を緩和する効果が高い。
【0040】
(積層セラミックコンデンサ100の実装方法の一例)
積層セラミックコンデンサ100は、たとえば、図5(A)、(B)に示す方法で基板などに実装される。図5(A)、(B)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の実装方法の一例を示す説明図である。なお、図5(A)は、実装される積層セラミックコンデンサ100をセラミック素体1の第2側面1Fの方向から見ている。図5(B)は、実装される積層セラミックコンデンサ100をセラミック素体1の第2主面1Bの方向から見ている。
【0041】
まず、積層セラミックコンデンサ100は、セラミック素体1の第2主面1Bに形成された強化層8において、真空吸着ノズルによって吸着される。真空吸着ノズルは、内部に管が形成されている。積層セラミックコンデンサ100が吸着されるときには、管の内部の圧力は、真空にされるか、または、大気圧よりも減圧される。
【0042】
次に、真空吸着ノズルを移動させることによって、真空吸着ノズルに吸着された積層セラミックコンデンサ100が、基板上に載置される。
【0043】
次に、真空吸着ノズルの管の内部の圧力が、大気圧と等しくされる。この結果、真空吸着ノズルから積層セラミックコンデンサ100が外れる。このあと、たとえばリフローはんだによって、積層セラミックコンデンサ100が基板の電極に固定され、電気的に接続される。以上により、積層セラミックコンデンサ100の基板などへの実装が完了する。
【0044】
以上の工程においては、真空吸着ノズルによって積層セラミックコンデンサ100を基板上に載置するときに、積層セラミックコンデンサ100に大きな衝撃が加わる。より具体的には、真空吸着ノズルと基板との両側から、積層セラミックコンデンサ100に大きな衝撃が加わる。薄層化され、かつ、L字型外部電極を備えた従来の積層セラミックコンデンサにおいては、このときに、セラミック素体に割れや欠けが発生したり、内部電極と外部電極との電気的接続が外れたりする虞があった。
【0045】
これに対し、積層セラミックコンデンサ100では、強化層8によって、この衝撃が緩和される。また、積層セラミックコンデンサ100では、第1貫通部材6、第2貫通部材7によって、この衝撃が緩和される。より正確には、強化層8、第1貫通部材6、第2貫通部材7によって、衝撃によるセラミック素体1への影響が緩和される。
【0046】
なお、これらの効果を大きくするためには、真空吸着ノズルで積層セラミックコンデンサ100を吸着するときには、図5(A)、(B)に示すように、真空吸着ノズルを積層セラミックコンデンサ100の第1貫通部材6、第2貫通部材7が形成されている部分に当接させることが好ましい。
【0047】
本実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100においては、積層セラミックコンデンサ100を基板などに実装するときなどに発生する衝撃が、強化層8、第1貫通部材6、第2貫通部材7によって緩和されるため、セラミック素体1に割れや欠けが発生することが抑制されるとともに、第1内部電極2と第1外部電極4との間の電気的接続や第2内部電極3と第2外部電極5との間の電気的接続が外れることが抑制されている。
【0048】
そして、積層セラミックコンデンサ100においては、セラミック素体1に割れや欠けが発生することに起因する、IR(絶縁抵抗)の劣化が抑制されている。また、積層セラミックコンデンサ100においては、第1内部電極2と第1外部電極4との間の電気的接続や第2内部電極3と第2外部電極5との間の電気的接続が外れる(断線する)ことに起因する、電気的特性の変動が抑制されている。
【0049】
(積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例)
積層セラミックコンデンサ100は、たとえば、図6(A)~図7(F)に示す製造方法で製造することができる。
【0050】
まず、図6(A)に示す、未焼成セラミック素体11を作製する。未焼成セラミック素体11は、複数のセラミックグリーンシート11aと、第1内部電極2を形成するための複数の導電性ペースト12と、第2内部電極3を形成するための複数の導電性ペースト13とが積層され、加圧され、一体化されたものからなる。
【0051】
図示は省略するが、まず、誘電体セラミックスの粉末、バインダー樹脂、溶剤などを用意し、これらを湿式混合してセラミックスラリーを作製する。
【0052】
次に、キャリアフィルム上に、セラミックスラリーをダイコータ、グラビアコーター、マイクログラビアコーターなどを用いてシート状に塗布し、乾燥させて、セラミックグリーンシートを作製する。
【0053】
次に、所定のセラミックグリーンシートの主面に、第1内部電極2、第2内部電極3を形成するために、予め用意した導電性ペースト12、13を所望のパターン形状に塗布(たとえば印刷)する。なお、外層となるセラミックグリーンシートには、導電性ペーストは塗布しない。なお、導電性ペーストには、たとえば、溶剤、バインダー樹脂、金属粉末(たとえばNi粉末)などを混合したものを使用することができる。
【0054】
次に、セラミックグリーンシートを所定の順番に積層し、加熱圧着して一体化させ、図6(A)に示す未焼成セラミック素体11を作製する。なお、一般的な製造ラインにおいては、多数個の積層セラミックコンデンサ100を高い生産性で製造するために、マザーセラミックグリーンシートを作製し、それらに導電性ペースト12、13を塗布し、マザーセラミックグリーンシートを積層し、加圧し、一体化させてマザー未焼成セラミック素体を作製し、そのマザー未焼成セラミック素体を個々に分割して未焼成セラミック素体11を作製する場合が多い。
【0055】
次に、図6(B)に示すように、未焼成セラミック素体11の両主面間を貫通させて、第1貫通部材6を形成するための貫通孔14、第2貫通部材7を形成するための貫通孔15を形成する。貫通孔14、15は、たとえば、レーザー光の照射により形成する。
【0056】
次に、図6(C)に示すように、貫通孔14に、予め用意した第1貫通部材6を形成するための導電性ペースト16を充填し、貫通孔15に、予め用意した第2貫通部材7を形成するための導電性ペースト17を充填する。
【0057】
なお、上述したように、マザー未焼成セラミック素体を作製し、そのマザー未焼成セラミック素体を個々に分割して未焼成セラミック素体11を作製する場合には、貫通孔14、15を形成し、貫通孔14に導電性ペースト16を充填し、貫通孔15に導電性ペースト17を充填した後に、そのマザー未焼成セラミック素体を個々に分割して未焼成セラミック素体11を作製することが好ましい。
【0058】
次に、未焼成セラミック素体11を、所定のプロファイルで焼成して、図7(D)に示すセラミック素体1を完成させる。このとき、セラミックグリーンシート11aが焼成されてセラミック層1aになり、セラミックグリーンシート11aの主面に塗布された導電性ペースト12、13が同時に焼成されて第1内部電極2、第2内部電極3になる。また、貫通孔14に充填された導電性ペースト16、貫通孔15に充填された導電性ペースト17も焼成されて、導電性ペースト16が第1貫通部材6になり、導電性ペースト17が第2貫通部材7になる。
【0059】
次に、図7(E)に示すように、セラミック素体1の第2主面1Bに、強化層8を形成する。上述したとおり、本実施形態においては強化層8の材質にDLCを使用しているが、この場合には、たとえば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、含酸素炭化水素類、含窒素炭化水素類などを原料として、熱CVD、プラズマCVD、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法などの方法によって、セラミック素体1の第2主面1Bに強化層8を製膜する。ただし、強化層8の原料や形成方法は、これらには限られない。
【0060】
次に、図7(F)に示すように、セラミック素体1の表面に第1外部電極4、第2外部電極5を形成する。具体的には、導電性ペーストを塗布し、焼き付けることによって、第1層を形成する。続いて、めっきにより、第2層、第3層、第4層をそれぞれ形成する。
【0061】
以上により、第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0062】
[第2実施形態]
図8図9に、それぞれ、第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200を示す。ただし、図8は、積層セラミックコンデンサ200の断面図である。図9は、積層セラミックコンデンサ200の分解斜視図である。
【0063】
第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200は、上述した第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100の構成の一部に変更を加えた。具体的には、積層セラミックコンデンサ100では、第1貫通部材6、第2貫通部材7が柱状(円柱状)であった。積層セラミックコンデンサ200は、これを変更し、第1貫通部材26、第2貫通部材27を、筒状(円筒状)にした。すなわち、第1貫通部材26は、内部に空洞の筒部26aを備えている。第2貫通部材27は、内部に空洞の筒部27aを備えている。ただし、筒部26a、27aの内部には、他の材質(たとえば強化層28の材質など)が充填されていてもよい。また、第1貫通部材26、第2貫通部材27を、円筒状に代えて、4角筒状や5角筒状など、他の筒状に置き換えてもよい。
【0064】
第1貫通部材26、第2貫通部材27の材質は任意であるが、積層セラミックコンデンサ100の第1貫通部材6、第2貫通部材7と同じく、Niを使用した。
【0065】
積層セラミックコンデンサ200においても、セラミック素体1の第2主面1Bに強化層28が形成されているが、セラミック素体1の第2主面1Bに露出した第1貫通部材26の筒部26aに対応する部分に孔28aが形成され、第2貫通部材27の筒部27aに対応する部分に孔28bが形成されている。孔28a、28bは、強化層28を形成する工程において、製造技術上の問題によって空いたものである。なお、上述したように、第1貫通部材26の筒部26aと、第2貫通部材27の筒部27aとは、強化層28の材質によって埋められていてもよい。
【0066】
積層セラミックコンデンサ100は、第1貫通部材6、第2貫通部材7が、内部が詰まった柱状であることに起因して、衝撃が加わったときなどに、第1貫通部材6とセラミック素体1との間や、第2貫通部材7とセラミック素体1との間に、クラックが発生する虞があった。これに対し、積層セラミックコンデンサ200は、第1貫通部材26、第2貫通部材27が、内部に空洞(筒部26a、筒部27a)を有する筒状であるため、第1貫通部材26とセラミック素体1との間や、第2貫通部材27とセラミック素体1との間に、クラックが発生することが抑制されている。
【0067】
(積層セラミックコンデンサ200の製造方法の一例)
積層セラミックコンデンサ200は、たとえば、図10(A)~図11(F)に示す製造方法で製造することができる。
【0068】
まず、図10(A)に示す、未焼成セラミック素体11を作製する。
【0069】
次に、図10(B)に示すように、未焼成セラミック素体11の両主面間を貫通させて、第1貫通部材26を形成するための貫通孔14、第2貫通部材27を形成するための貫通孔15を形成する。
【0070】
次に、未焼成セラミック素体11を、所定のプロファイルで焼成して、図10(C)に示すセラミック素体1を完成させる。
【0071】
次に、図11(D)に示すように、めっき、蒸着法、スパッタリング法などにより、貫通孔14の内部に第1貫通部材26を形成し、貫通孔15の内部に第2貫通部材27を形成する。形成された第1貫通部材26は、内部に空洞の筒部26aを備え、形成された第2貫通部材27は、内部に空洞の筒部27aを備えている。
【0072】
次に、図11(E)に示すように、セラミック素体1の第2主面1Bに、強化層28を形成する。形成された強化層28は、孔28a、28bを備えている。
【0073】
最期に、図11(F)に示すように、セラミック素体1の表面に第1外部電極4、第2外部電極5を形成することによって、第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200が完成する。
【0074】
[第3実施形態]
図12(A)~(C)に、それぞれ、第3実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ300を示す。ただし、図12(A)は、積層セラミックコンデンサ300の平面透視図である。図12(B)は、積層セラミックコンデンサ300の断面図であり、図12(A)の一点鎖線矢印で示すY-Y部分を示している。図12(C)も、積層セラミックコンデンサ300の断面図であり、図12(A)の一点鎖線矢印で示すZ-Z部分を示している。
【0075】
第3実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ300は、上述した第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100の構成の一部に変更を加えた。具体的には、積層セラミックコンデンサ100では、第1貫通部材6が、第1内部電極2と電気的に接続されていた。また、積層セラミックコンデンサ100では、第2貫通部材7が、第2内部電極3と電気的に接続されていた。これに対し、積層セラミックコンデンサ300では、第1貫通部材36と第1内部電極2とは電気的に接続されておらず、第2貫通部材37と第2内部電極3とは電気的に接続されていない。なお、積層セラミックコンデンサ300では、第1貫通部材36の数が2つに増やされたうえで、第1内部電極2の幅方向Wにおける両側に形成され、第2貫通部材37の数が2つに増やされたうえで、第2内部電極3の幅方向Wにおける両側に形成されている。
【0076】
積層セラミックコンデンサ300においては、第1貫通部材36、第1内部電極2は、電気的な接続には使用されていないため、金属製から、樹脂製、ゴム製など、非導電性の材質に置き換えることもできる。もちろん、金属製であってもよい。なお、樹脂製、ゴム製であれば、金属製よりも、より高い効果で、衝撃を緩和できる場合がある。
【0077】
積層セラミックコンデンサ300においても、第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100などと同じように、衝撃が、強化層8、第1貫通部材26、第2貫通部材27によって緩和されるため、セラミック素体1に割れや欠けが発生することが抑制されるとともに、第1内部電極2と第1外部電極4との間の電気的接続や第2内部電極3と第2外部電極5との間の電気的接続が外れることが抑制されている。
【0078】
また、積層セラミックコンデンサ300は、第1貫通部材26の数を2つに増やし、第2貫通部材27の数を2つに増やしているため、衝撃を緩和する効果が向上している。
【0079】
[第4実施形態]
図13(A)~(C)に、それぞれ、第4実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ400を示す。ただし、図13(A)は、積層セラミックコンデンサ400の平面透視図である。図13(B)は、積層セラミックコンデンサ400の断面図であり、図13(A)の一点鎖線矢印で示すY-Y部分を示している。図13(C)も、積層セラミックコンデンサ400の断面図であり、図13(A)の一点鎖線矢印で示すZ-Z部分を示している。
【0080】
第4実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ400は、上述した第3実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ300に、更に変更を加えたものである。具体的には、積層セラミックコンデンサ300では、第1貫通部材26、第2貫通部材27が柱状(円柱状)であったが、積層セラミックコンデンサ400では、第1貫通部材46、第2貫通部材47を筒状(円筒状)にした。すなわち、第1貫通部材46は内部に空洞の筒部46aを有し、第2貫通部材47は内部に空洞の筒部47aを有している。なお、積層セラミックコンデンサ400では、強化層48において、筒部46a、47aに対応する部分に、それぞれ、孔48aが形成されている。
【0081】
積層セラミックコンデンサ400においても、衝撃によって、セラミック素体1に割れや欠けが発生することが抑制されるとともに、第1内部電極2と第1外部電極4との間の電気的接続や第2内部電極3と第2外部電極5との間の電気的接続が外れることが抑制されている。
【0082】
[第5実施形態]
図14に、第5実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ500を示す。ただし、図14は、積層セラミックコンデンサ500の断面図である。
【0083】
第5実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ500は、上述した第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100に、更に構成を追加したものである。具体的には、積層セラミックコンデンサ500は、セラミック素体1の第1主面の第1外部電極4、第2外部電極が形成されていない部分に、第2強化層58を形成されている。
【0084】
積層セラミックコンデンサ500は、セラミック素体1に割れや欠けが発生することを抑制する効果や、第1内部電極2と第1外部電極4との間の電気的接続や第2内部電極3と第2外部電極5との間の電気的接続が外れることを抑制する効果が、積層セラミックコンデンサ100に比べて、更に向上している。
【0085】
なお、積層セラミックコンデンサ500において、第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200と同じように、第1貫通部材6、第2貫通部材7の形状を、柱状(円柱状)から筒状(円筒状など)に変更してもよい。また、積層セラミックコンデンサ500において、第3実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ300と同じように、第1貫通部材6が第1内部電極2に電気的に接続されず、第2貫通部材7が第2内部電極3に電気的に接続されないようにしてもよい。
【0086】
[第6実施形態]
図15に、第6実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ600を示す。ただし、図15は、積層セラミックコンデンサ600の断面図である。
【0087】
第6実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ600は、上述した第5実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ500の構成の一部を変更したものである。具体的には、積層セラミックコンデンサ500では、第2強化層58が、セラミック素体1の第1主面の第1外部電極4、第2外部電極5が形成されていない部分に形成されていた。積層セラミックコンデンサ600は、これを変更し、第2強化層68を、第1外部電極4、第2外部電極5の形成されている部分も含めて、第1外部電極4、第2外部電極5の上から、セラミック素体1の第1主面1Aの全面に形成した。
【0088】
積層セラミックコンデンサ600においても、セラミック素体1に割れや欠けが発生することを抑制する効果や、第1内部電極2と第1外部電極4との間の電気的接続や第2内部電極3と第2外部電極5との間の電気的接続が外れることを抑制する効果が、積層セラミックコンデンサ100に比べて、更に向上している。
【0089】
なお、積層セラミックコンデンサ600を基板などに実装するときには、たとえば、セラミック素体1の第1端面1Cに形成された第1外部電極4と、基板の電極との間に、はんだフィレットを形成し、セラミック素体1の第2端面1Dに形成された第2外部電極5と、基板の電極との間に、はんだフィレットを形成するなどして、積層セラミックコンデンサ600を基板に固定するとともに、電気的接続をはかればよい。
【0090】
[第7実施形態]
図16に、第7実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ700を示す。ただし、図17は、積層セラミックコンデンサ700の断面図である。
【0091】
第7実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ600も、上述した第5実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ500の構成の一部を変更したものである。具体的には、積層セラミックコンデンサ500では、第2強化層58が、セラミック素体1の第1主面の第1外部電極4、第2外部電極5が形成されていない部分に形成されていた。積層セラミックコンデンサ700は、これを変更し、第2強化層78を、セラミック素体1の第1主面1Aの全面に形成したうえで、第2強化層78の上に、第1外部電極4、第2外部電極5を形成した。
【0092】
積層セラミックコンデンサ700においても、セラミック素体1に割れや欠けが発生することを抑制する効果や、第1内部電極2と第1外部電極4との間の電気的接続や第2内部電極3と第2外部電極5との間の電気的接続が外れることを抑制する効果が、積層セラミックコンデンサ100に比べて、更に向上している。
【0093】
以上、第1実施形態~第7実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100、200、300、400、500、600、700について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【0094】
たとえば、積層セラミックコンデンサ100などでは、第1貫通部材6、第2貫通部材7が円柱状であったが、これに代えて、4角柱状や5角柱状など、他の柱状としてもよい。また、積層セラミックコンデンサ200などでは、第1貫通部材26、第2貫通部材27が円筒状であったが、これに代えて、4角筒状や5角筒状など、他の筒状としてもよい。
【0095】
また、積層セラミックコンデンサ200など、第1貫通部材26、第2貫通部材27が筒部26a、27aを備えるものにおいては、それらの内部に、他の材質(たとえば強化層28の材質など)が充填されてもよい。
【0096】
また、積層セラミックコンデンサ100などでは、第1貫通部材6、第2貫通部材7の数が、それぞれ1つであり、積層セラミックコンデンサ300などでは、第1貫通部材36、第1内部電極2の数が、それぞれ2つであったが、これらの数は任意であり、いずれも、増減することができる。
【0097】
また、第1貫通部材6、26、36、46、第2貫通部材7、27、37、47の材質は金属には限られず、電気的な導通が求められない場合には、樹脂やゴムなど、導電性をもたない材質を使用してもよい。
【0098】
また、強化層8、28、48、第2強化層58、68、78の材質は任意であり、例示したDLC(Diamond-Like Carbon)には限られず、衝撃を緩和する効果が期待できるものであれば、あらゆる材質を使用することができる。たとえば、樹脂やゴムなどを使用してもよい。
【0099】
本発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサは、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0100】
この積層セラミックコンデンサにおいて、少なくとも1つの貫通部材が、導電性であり、第1外部電極と電気的に接続され、少なくとも1つの別の貫通部材が、導電性であり、第2外部電極と電気的に接続されることも好ましい。この場合には、貫通部材を、電気的接続の経路として使用することができる。
【0101】
第1外部電極と電気的に接続された導電性の貫通部材が、第1内部電極と電気的に接続され、第2外部電極と電気的に接続された導電性の貫通部材が、第2内部電極と電気的に接続されることも好ましい。この場合には、貫通部材を、電気的接続の経路として使用することができる。
【0102】
貫通部材が、樹脂製、または、ゴム製であることも好ましい。すなわち、貫通部材が唯一で必須の電気的接続の経路でない場合には、貫通部材は非導電性であってもよい。貫通部材を、樹脂製、または、ゴム製にすれば、衝撃を緩和する効果が向上する。
【0103】
第1内部電極と第1外部電極とが、セラミック素体の第1端面において電気的に接続され、第2内部電極と第2外部電極とが、セラミック素体の第2端面において電気的に接続されることも好ましい。本発明においては、これらの部分において、第1内部電極と第1外部電極との間の電気的接続や、第2内部電極と第2外部電極との間の電気的接続が外れる(断線する)ことが抑制される。
【0104】
貫通部材は、たとえば、柱状とすることができる。あるいは、貫通部材は、たとえば、筒状とすることができる。
【0105】
強化層の材質が、DLC(Diamond-Like Carbon)であることも好ましい。この場合には、セラミック素体に割れや欠けが発生することを抑制し、内部電極と外部電極との間の電気的接続外れることを抑制することができる。
【0106】
セラミック素体の高さ寸法は、たとえば、100μm以下とすることができる。本発明は、セラミック素体が超薄層化された場合に、特に有益である。セラミック素体の高さ寸法は、100μmよりも、更に小さくしてもよい。
【0107】
セラミック素体の第1主面に、第2強化層が形成されることも好ましい。この場合には、セラミック素体に割れや欠けが発生することを抑制する効果や、内部電極と外部電極との間の電気的接続が外れることを抑制する効果が、更に向上する。第2強化層は、たとえば、セラミック素体の第1主面における、第1外部電極、および、第2外部電極のいずれもが形成されていない部分に形成することができる。
【0108】
あるいは、セラミック素体の第1主面の全面に第2強化層を形成し、第1外部電極の一部、第2外部電極の一部を、それぞれ、第2強化層の上に形成してもよい。この場合には、第1外部電極、第2外部電極の機能を低下させることなく、セラミック素体に割れや欠けが発生することを抑制する効果や、内部電極と外部電極との間の電気的接続が外れることを抑制する効果を向上させることができる。
【符号の説明】
【0109】
1・・・セラミック素体
1A・・・第1端面
1B・・・第2端面
1C・・・第1端面
1D・・・第2端面
1E・・・第1側面
1F・・・第2側面
2・・・第1内部電極
3・・・第2内部電極
4・・・第1外部電極
5・・・第2外部電極
6、26、36、46・・・第1貫通部材
7、27,37、47・・・第2貫通部材
8、28、48・・・強化層
58、68、78・・・第2強化層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17