(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143560
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】撮像装置および光学素子
(51)【国際特許分類】
H04N 23/52 20230101AFI20230928BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20230928BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20230928BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230928BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20230928BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20230928BHJP
G03B 15/02 20210101ALI20230928BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20230928BHJP
G03B 15/04 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
H04N5/225 430
H04N5/225 100
H04N5/225 600
G03B15/00 V
G03B15/00 S
G03B17/55
G03B17/02
G03B15/02 G
G03B15/03 F
G03B15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022065383
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000104168
【氏名又は名称】カツラ電工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水眞 潔
【テーマコード(参考)】
2H053
2H100
2H104
5C122
【Fターム(参考)】
2H053CA45
2H100CC04
2H100EE05
2H104CC06
5C122EA36
5C122GE01
5C122GE11
5C122GG01
(57)【要約】
【課題】ヒータの短絡故障を抑制しつつ撮像画像の品質を高めることができる撮像装置および光学素子を提供する。
【解決手段】撮像装置1は、撮像部31と、遮光部材331と、透光性基板32と、ヒータ36と、ヒータ36の導電パターン361全体を覆うように設けられた樹脂層37と、樹脂層37を覆うカバー部材35と、遮光部材331の外側に配置された発光部381と、を備える。そして、樹脂層37は、撮像部31に投影される投影領域A1を含み且つ発光部381の配光領域A2の外側に位置する第1部位371と、第1部位371を囲繞し第1部位371に比べて厚さTh2が厚い第2部位372と、を有する。また、カバー部材35は、第1部位371における透光性基板32側とは反対側全体を覆っている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
筒状であり前記撮像部に対して前記撮像部の撮像方向側に配置され、前記撮像部の側方から前記撮像部へ入射する光を遮る遮光部材と、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成され前記遮光部材の前記撮像方向側に配置される透光性基板と、
前記透光性基板における前記撮像部側に配設された導電パターンを有するヒータと、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する樹脂から形成され、前記透光性基板の前記撮像部側において、前記導電パターン全体を覆うように設けられた樹脂層と、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成され、前記樹脂層における前記透光性基板側とは反対側を覆うカバー部材と、
前記遮光部材の外側に配置され前記撮像方向に向かって光を放射する少なくとも1つの発光部と、を備え、
前記樹脂層は、前記樹脂層の厚さ方向に直交する面内において前記撮像部に投影される投影領域を含み且つ前記少なくとも1つの発光部の配光領域の外側に位置する第1部位と、前記樹脂層の厚さ方向に直交する面内において前記第1部位を囲繞し前記第1部位に比べて厚さが厚い第2部位と、を有し、
前記カバー部材は、厚さ方向における一面側が前記第1部位における前記透光性基板側とは反対側全体を覆っている、
撮像装置。
【請求項2】
前記第2部位は、前記第1部位よりも前記透光性基板側とは反対側に突出しており、
前記カバー部材は、前記第2部位における前記第1部位より前記透光性基板側とは反対側に突出した部分の内側に嵌入され、周面が前記第2部位に接触している、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2部位における前記透光性基板側とは反対側は、前記遮光部材における前記撮像方向側の端部に当接している、
請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2部位および前記カバー部材は、前記少なくとも1つの発光部の配光領域の外側に配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成された透光性基板と、
前記透光性基板の厚さ方向における一面側に配設された導電パターンを有するヒータと、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する樹脂から形成され、前記透光性基板の前記一面側において、前記導電パターン全体を覆うように設けられた樹脂層と、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成され、前記樹脂層における前記透光性基板側とは反対側を覆うカバー部材と、を備え、
前記樹脂層は、第1部位と、前記樹脂層の厚さ方向に直交する面内において前記第1部位を囲繞し前記第1部位に比べて厚さが厚い第2部位と、を有し、 前記カバー部材は、前記第2部位の内側において前記第1部位における前記透光性基板側とは反対側全体を覆っている、
光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラと、カメラを収容する筐体と、筐体の前面部に設けられた保護ガラスと、保護ガラスの裏面側に蒸着された金属製のガラスヒータと、を備える車載用監視カメラが提案されている(例えば特許文献1参照)。この車載用監視カメラは、車両本体の外部側に取り付けられた状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の監視カメラは、外部に曝される部分の温度が急激に変動しうる。このため、保護ガラスの表面のみならずガラスヒータが設けられた裏面側も結露してしまうことがある。そうすると、ガラスヒータが結露により短絡故障してしまう虞がある。そこで、保護ガラスの裏面側に電気的絶縁性を有するポリマ樹脂をコーティングすることによりガラスヒータの短絡故障を防止する技術が提供されている。しかしながら、この場合、ポリマ樹脂をある程度の厚さ以上にコーティングする必要があり、ポリマ樹脂のコーティング膜の厚さが厚くなると、その分、カメラにより撮像して得られる画像の品質が低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、ヒータの短絡故障を抑制しつつ撮像画像の品質を高めることができる撮像装置およびヒータ付き透光性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る撮像装置は、
撮像部と、
筒状であり前記撮像部に対して前記撮像部の撮像方向側に配置され、前記撮像部の側方から前記撮像部へ入射する光を遮る遮光部材と、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成され前記遮光部材の前記撮像方向側に配置される透光性基板と、
前記透光性基板における前記撮像部側に配設された導電パターンを有するヒータと、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する樹脂から形成され、前記透光性基板の前記撮像部側において、前記導電パターン全体を覆うように設けられた樹脂層と、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成され、前記樹脂層における前記透光性基板側とは反対側を覆うカバー部材と、
前記遮光部材の外側に配置され前記撮像方向に向かって光を放射する少なくとも1つの発光部と、を備え、
前記樹脂層は、前記樹脂層の厚さ方向に直交する面内において前記撮像部に投影される投影領域を含み且つ前記少なくとも1つの発光部の配光領域の外側に位置する第1部位と、前記樹脂層の厚さ方向に直交する面内において前記第1部位を囲繞し前記第1部位に比べて厚さが厚い第2部位と、を有し、
前記カバー部材は、厚さ方向における一面側が前記第1部位における前記透光性基板側とは反対側全体を覆っている。
【0007】
他の観点から見た本発明に係る光学素子は、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成された透光性基板と、
前記透光性基板の厚さ方向における一面側に配設された導電パターンを有するヒータと、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する樹脂から形成され、前記透光性基板の前記一面側において、前記導電パターン全体を覆うように設けられた樹脂層と、
電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成され、前記樹脂層における前記透光性基板側とは反対側を覆うカバー部材と、を備え、
前記樹脂層は、前記樹脂層の厚さ方向に直交する面内において前記撮像部に投影される投影領域を含み且つ前記少なくとも1つの発光部の配光領域の外側に位置する第1部位と、前記樹脂層の厚さ方向に直交する面内において前記第1部位を囲繞し前記第1部位に比べて厚さが厚い第2部位と、を有し、
前記カバー部材は、前記第2部位の内側において前記第1部位における前記透光性基板側とは反対側全体を覆っている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂層が、撮像部に投影される投影領域を含み且つ発光部の配光領域の外側に位置する第1部位と、第1部位を囲繞し第1部位に比べて厚さが厚い第2部位と、を有する。また、カバー部材は、第2部位の内側において第1部位における透光性基板側とは反対側全体を覆っている。これにより、樹脂層およびカバー部材によりヒータの導電パターンが封止されているので、導電パターンの結露によるヒータの短絡故障が抑制される。また、樹脂層の第1部位の厚さが第2部位の厚さよりも極端に薄く設定されることにより、発光部から第2部位に入射し第2部位内を伝播する光が第1部位との境界部分で減衰する。これにより、発光部から放射された光が撮像部の投影領域内まで伝播することが抑制されるので、その分、撮像部の撮像画像の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】(A)実施の形態に係る透光性基板、樹脂層およびカバー部材の平面図であり、(B)は(A)のB-B線における断面図である。
【
図5】(A)は比較例1に係る撮像装置で撮像した画像を示す図であり、(B)は比較例2に係る撮像装置で撮像した画像を示す図であり、(C)は実施の形態に係る撮像装置で撮像した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る撮像装置および光学素子について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る撮像装置は、後述する透光性基板の外側の温度のみが広い温度範囲または広い湿度範囲で変化し且つ透光性基板の内側の温度が常温(5℃~30℃)雰囲気となるような環境で使用可能なものである。前述の透光性基板の外側の環境は、例えば温度が氷点下の温度から比較的高い温度までの温度範囲(-40℃以上150℃以下)内である環境、或いは、温度が0℃以上100℃未満の温度範囲内である場合において湿度が0%以上98%以下の湿度範囲内である環境である。
【0011】
図1および
図2に示すように、本実施の形態に係る撮像装置1は、撮像部31と、遮光部材331と、支持部材332と、透光性基板32と、カバー部材35と、枠体391、392と、複数(
図2では12個)の発光モジュール38と、を備える。また、撮像装置1は、
図1に示すように、ヒータ36と、樹脂層37と、を備える。なお、
図1では、撮像部31の撮像方向AR1を+Y方向としている。以下の説明において、撮像部31の撮像方向を適宜+Y方向として説明する。ここで、透光性基板32と、カバー部材35と、ヒータ36と、樹脂層37と、から、撮像装置1に使用される光学素子が構成されている。撮像部31は、レンズ群(図示せず)と、レンズ群を保持する鏡筒311と、制御ユニット312と、を有する。制御ユニット312は、レンズ群を透過した映像光が結像される撮像素子312aと、撮像素子312aの動作を制御する制御基板312bと、を有する。撮像素子312aは、例えばCMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等である。制御基板312bは、外部から制御信号を受信するとともに、撮像素子312aにより撮像して得られる映像信号を外部へ送信するためのインタフェース(図示せず)を有する。また、制御ユニット312は、発光モジュール38を点灯駆動する駆動回路(図示せず)と、駆動回路を制御する点灯制御モジュール(図示せず)と、を有し、駆動回路は、導電線L1を介して発光モジュール38に接続されている。
【0012】
遮光部材331は、円筒状であり、撮像部31に対して撮像部31の撮像方向AR1側(+Z方向側)に配置され、撮像部31の側方から撮像部31へ入射する光を遮る。また、遮光部材331の+Y方向側の端部には、その全周に亘って溝331aが形成されている。溝331aの内側には、エラストマ、ゴム等から形成された円環状のパッキン34が嵌入されている。
【0013】
発光モジュール38は、複数の発光部381と、複数の発光部381が実装され、複数の発光部381それぞれへ電力を供給するための導電パターン(図示せず)が形成された回路基板382と、を有する。ここで、複数の発光部381は、
図2に示すように、遮光部材331の外側において遮光部材331の外周に沿って配置されている。複数の発光部381は、それぞれ、例えば
図2に示すような耐熱温度が比較的高いチップLED(Light Emitting Diode)であり、撮像部31の撮像方向AR1、即ち、+Y方向に向かって光を放射する。また、発光部381は、例えば青紫色光を放射するLED素子と、青紫色光を波長の異なる光に変換する波長変換部材と、を有し、白色光を放射するものである。
【0014】
支持部材332は、円筒状であり、枠体391を支持する。支持部材332の内径は、遮光部材331の内径よりも長く、遮光部材331は、支持部材332の内側に配置されている。また、支持部材33は、遮光部材331の内側に配置された状態で撮像部31を支持する。更に、支持部材33には、例えば撮像装置1の筐体(図示せず)に固定するための固定部材(図示せず)が取り付けられている。
【0015】
透光性基板32は、電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する絶縁体材料から板状に形成され遮光部材331の撮像方向AR1側に配置される。絶縁体材料としては、例えば透明なガラスを採用することができる。また、透明なガラスとしては、例えばTEMPAX-Float(登録商標)ガラスを採用することができる。透光性基板32の厚さ(
図3(B)のT1参照)は、例えば3mm程度に設定される。また、
図3(A)に示すように、透光性基板32の周部2箇所には、ヒータ36へ電力を供給するための導電線(図示せず)を半田付けするための電極ランド32aが配設されている。
【0016】
枠体391は、
図1に示すように、透光性基板32の+Y方向側から透光性基板32の周部に当接した状態で配置され、螺子42により支持部材332に固定されている。これにより、枠体391は、透光性基板32の周部を保持した状態で支持部材332に固定される。枠体392は、支持部材332に固定されている。
【0017】
ヒータ36は、
図3(A)に示すように、長尺であり、透光性基板32の-Y方向側においてX軸方向に沿って延在するように配設された複数の導電パターン361と、複数の導電パターン361それぞれの両端部に接続される2つの電極362と、を有する。導電パターン361は、それぞれ、例えばITO(Indium Tin Oxide)から形成された透明導電膜である。電極362は、例えばAgのような導電パターン361に通電できる金属から形成されており、一部が前述の電極ランドに連続している。
図3(B)に示す導電パターン361の厚さT2は、例えば60nm程度に設定される。また、電極362は、導電線(図示せず)を介してヒータ電源(図示せず)に電気的に接続されている。そして、ヒータ電源から電極362を介して導電パターン361へ電流が供給されることにより、導電パターン361が発熱する。ここで、ヒータ36は、透光性基板32の周囲温度に対して温度上昇値が+40℃~+50℃となるまで加熱するように設定されている。なお、透光性基板32における電極362が形成された部分の外側の部分に、電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁部材(図示せず)が設けられていてもよい。
【0018】
樹脂層37は、透明なシリコーン樹脂から形成され、
図1に示すように、透光性基板32の-Y方向側において、導電パターン361を覆うように設けられている。樹脂層37は、
図1に示すように、Z軸方向に直交する面内において撮像部31に投影される投影領域A1を含む第1部位371と、Z軸方向に直交する面内において第1部位371を囲繞する第2部位372と、を有する。ここで、第2部位372は、その厚さTh2が第1部位371の厚さTh1に比べて厚くなっており、第1部位371よりも透光性基板32側とは反対側、即ち、-Y方向側に突出している。この第2部位372の厚さTh2は、防水性が確保できる厚みであれば特に限定されず、例えば0.5mm以上の厚さに設定することができる。また、第1部位371の厚さTh2は、防水性を確保しつつできるだけ薄いほうが好ましく、例えば1μm以上3μm以下に設定することができる。これにより、発光部381から放射され樹脂層37の第2部位372に入射した光のうち厚さの薄い第1部位371側へ伝播する光が低減される。この第1部位371の厚さTh2が薄くなるほど第1部位371側への光の伝播が抑制されるので、その分、撮像部31で撮像して得られる画像の画質が向上することになる。また、第1部位371は、発光部381の配光領域A2の外側に位置しており、発光部381から放射される光は、第1部位371に直接入射しない。
【0019】
カバー部材35は、透明なガラスから円板状に形成され、
図1に示すように、樹脂層37の第1部位371の-Z方向側全体を覆うように設けられている。カバー部材35の外径は、遮光部材331の+Y方向側の端部の外径よりも短く設定されており、Y軸方向からみてカバー部材35の周部が、遮光部材331の内側に収まっている。
図3(B)に示すカバー部材35の厚さTh4は、0.3mm以上0.7mm以下に設定される。なお、カバー部材35の厚さTh4が、0.7mmよりも厚くなると、ヒータ36からの熱が、カバー部材35における-Y方向側の面近傍まで十分に伝わらなくなりカバー部材35の-Y方向側の面に結露が生じる虞がある。このため、カバー部材35の厚さT4は、少なくとも0.7mm以下に設定するのが好ましい。また、カバー部材35は、
図1に示すように、樹脂層37の第2部位372における第1部位371より-Z方向側に突出した部分の内側に嵌入された状態で、+Z方向側が樹脂層37の第1部位371における透光性基板32側とは反対側、即ち、-Z方向側の全体を覆っている。そして、カバー部材35の周面は、樹脂層37の第2部位372に接触している。
【0020】
ここで、本実施の形態に係る撮像装置1の性能について、比較例と比較しながら説明する。比較例1に係る撮像装置は、本実施の形態において、樹脂層37およびカバー部材35が無い構成を有するものである。
図4に示すように、比較例2に係る撮像装置9001は、カバー部材35が無く、Z軸方向に直交する面内において厚さTh91が一定の樹脂層937を備えるものである。なお、
図4において、本実施の形態に係る撮像装置1と同様の構成については同一の符号を付している。ここで、樹脂層937の厚さは、10μmに設定されている。比較例2に係る撮像装置9001で撮像して得られた画像は、
図5(A)に示す比較例1に係る撮像装置で撮像して得られる画像に比べて、
図5(B)に示すように画像の周部が白くぼやけた画像となっている。これは発光部381から放射され樹脂層9351に入射した光が、樹脂層9351内を撮像部31への投影領域A1の周部にまで伝播したためと考えられる。一方、本実施の形態に係る撮像装置1で撮像して得られた画像は、
図5(A)に示す画像と同様に、
図5(C)に示すように画像全体に亘って白くぼやけた部分は発生しなかった。このことから、本実施の形態に係る撮像装置1では、発光部381から樹脂層37の第2部位372に入射した光が第2部位372と第1部位371との間の境界部分で減衰され、撮像部31へ投影される投影領域A1にまで伝播することが抑制されていることが判る。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態に係る撮像装置1によれば、樹脂層37が、撮像部31へ投影される投影領域A1を含む第1部位371と、第1部位371を囲繞し第1部位371に比べて厚さTh2が厚く第1部位371よりも-Z方向側に突出している第2部位372と、を有する。ここで、第1部位371は、発光部381の配光領域A2の外側に位置している。また、カバー部材35は、第2部位372の内側において第1部位371における-Z方向側全体を覆っている。これにより、樹脂層37およびカバー部材35によりヒータ36の導電パターン361が封止されるので、導電パターン361の結露によるヒータ36の短絡故障が抑制される。また、樹脂層37の第1部位371の厚さが第2部位372の厚さよりも極端に薄く設定されていることにより、発光部381から第2部位372に入射し第2部位372内を伝播する光が、第1部位371との境界部分で減衰する。これにより、発光部381から放射された光が撮像部31への投影領域A1内まで伝播することが抑制されるので、撮像部31の撮像画像の品質を高めることができる。
【0022】
ところで、従来、監視カメラとして、撮像部と、撮像部の撮像方向側に配置され、前述のような透光性基板の厚さ方向における一面側にヒータの導電パターンが形成された光学素子と、撮像部の撮像方向側を照明する発光部と、を備えるものがある。このような監視カメラでは、光学素子として、導電パターンへの水滴付着に起因した短絡故障を防止するために、導電パターン全体を覆う防水膜が設けられたものが採用される。防水膜としては、例えば水密性を有するシリコ-ン樹脂、ウレタン樹脂等から形成されたものが採用される。また、このような光学素子を採用する監視カメラでは、発光部から放射された光が、防水膜を伝播して撮像部に回り込むことを抑制するために、撮像部への投影領域を含む位置に前述のヒータを有する光学素子を配置し、発光部の撮像方向側の位置には、ヒータを備えない別の光学素子を配置するとともに、これらの2つの光学素子の間に遮光部材を配置したものがある。ところが、このような監視カメラでは、発光部の撮像方向側に配置された光学素子が結露、氷結すると、発光部から放射された光が光学素子で乱反射されてしまい照明量が低下してしまう虞がある。また、2つの光学素子を備えることにより、その分、部品点数が増えることにもなる。更に、この監視カメラでは、2つの光学素子の間にヒータの導電パターンへ電力を供給する電極等を配置するスペースを設ける必要があり、その分、監視カメラの筐体が大型化してしまう。
【0023】
これに対して、本実施の形態に係る撮像装置1によれば、透光性基板32における発光部381の配光領域A2に含まれる部分にまでヒータ36の導電パターン361が設けられている。これにより、透光性基板32における発光部381の配光領域A2に含まれる部分の結露、氷結が抑制されるので、発光部381から放射される光の乱反射に起因した照明量の低下を抑制できる。また、本実施の形態は、透光性基板32、樹脂層37およびカバー部材35からなる1つの光学素子を備える構成であるため、その分、部品点数を削減でき、撮像装置1全体の小型化を図ることができる。
【0024】
また、本実施の形態に係る撮像装置1では、カバー部材35は、樹脂層37の第2部位372における第1部位371より-Z方向側に突出した部分の内側に嵌入され、その周面が第2部位372に接触している。これにより、カバー部材35の周縁と樹脂層37の第2部位372との間に隙間が形成されないので、ヒータ36の導電パターン361の防水性を高めることができる。
【0025】
更に、本実施の形態に係る樹脂層37の第2部位372およびカバー部材35は、全て発光部381それぞれの配光領域A2の外側に配置されている。これにより、発光部381から放射された光が直接第2部位372またはカバー部材35へ入射することが抑制される。従って、発光部381から放射された光が、第2部位372内またはカバー部材35内に直接入射して撮像部31への投影領域A1内に伝播することが抑制されるので、撮像部31の撮像画像の品質を高めることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、実施の形態において、カバー部材35が、その周面或いはその周面および周部の-Y方向側の面に黒色の塗料が塗布されたものであってもよい。
【0027】
実施の形態では、透光性基板32が、透明なガラスから形成されている例について説明したが、これに限定されるものではなく、透光性基板32が、電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する樹脂、セラミックス結晶材料のような他の絶縁体材料から形成されたものであってもよい。また、実施の形態では、樹脂層37がシリコーン樹脂から形成されている例について説明したが、これに限定されるものではなく、電気的絶縁性および耐熱性があり且つ透光性を有する樹脂であれば他の樹脂であってもよい。例えば樹脂層37が、透明なウレタン樹脂、エポシキ樹脂、フッ素樹脂等から形成されていてもよい。更に、実施の形態では、カバー部材35が、透明なガラスから形成されている例について説明したが、これに限定されるものではなく、カバー部材35が、電気的絶縁性を有し且つ透光性を有する樹脂、セラミックス結晶材料のような他の絶縁体材料から形成されたものであってもよい。
【0028】
実施の形態では、透光性基板32、樹脂層37およびカバー部材35が透明な材料から形成される例について説明したが、これに限定されるものではなく、透光性を有する材料から形成されるものであってもよい。例えば撮像装置1の用途に応じて赤外線の波長帯域の光のみを透過する材料から形成されていてもよい。
【0029】
実施の形態では、発光部381が、チップLEDである例について説明したが、これに限定されず、例えば発光部381が有機EL(Electro Luminescence)素子のような他の種類の発光素子を利用したものであってもよい。
【0030】
以上、本発明の各実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、透光性基板の外側の温度のみが広い温度範囲または広い湿度範囲で変化し且つ透光性基板の内側の温度が常温(5℃~30℃)雰囲気となるような環境で使用される監視カメラとして好適である。ここで、前述の透光性基板の外側の環境は、例えば温度が氷点下の温度から比較的高い温度までの温度範囲(-40℃以上150℃以下)内である環境、或いは、温度が0℃以上100℃未満の温度範囲内である場合において湿度が0%以上98%以下の湿度範囲内である環境である。
【符号の説明】
【0032】
1:撮像装置、31:撮像部、32:透光性基板、32a:電極ランド、34:パッキン、35:カバー部材、36:ヒータ、37:樹脂層、38:発光モジュール、41:固定部材、42:螺子、311:鏡筒、312:制御ユニット、312a:撮像素子、312b:制御基板、331:遮光部材、331a:溝、332:支持部材、361:導電パターン、362:電極、371:第1部位、372:第2部位、381:発光部、382:回路基板、391,392:枠体、A1:投影領域、A2:配光領域、AR1:撮像方向、L1:導電線