(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143563
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ホバークラフト用スカート構造
(51)【国際特許分類】
B60V 1/16 20060101AFI20230928BHJP
B63B 7/08 20200101ALI20230928BHJP
【FI】
B60V1/16
B63B7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022065390
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】519089004
【氏名又は名称】伊東 嗣泰
(72)【発明者】
【氏名】伊東 嗣泰
(57)【要約】
【課題】 従来のホバークラフトのスカート構造では、浮上高さを大きくすると構造に起因する弊害が生じるため、スカート底部の固定方法を変更したスカート構造を提供する。
【解決手段】 部材(10)を機体外周底部に取り付けられた紐(12)で懸架したことで、浮上高さを大きくしても最適な空気クッション効果が得られるようにしたスカート構造を特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホバークラフトの空気クッションを形成するために機体底部に固定されていた部分を紐(12)で懸架したことで、浮上高さを従来よりも大きくすることが可能になったスカート構造。
【請求項2】
ホバークラフトの空気クッションを形成するために機体底部に固定されていた部分を紐(12)で懸架したことで、浮上高さを従来よりも大きくしたにもかかわらず容易に折りたためることができるスカート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気クッション車両(以下、単にホバークラフトという。)において、空気クッションを形成するためのスカート構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホバークラフトの空気クッションを形成するためのスカート1はコーテイングされた布やビニールシートなどの気密性や柔軟性のある素材で構成される。その断面構造は
図1に示すように、機体2の外形周辺に袋状のスカート1の周辺部を空気が漏れないように固定し、スカート底部を機体の底部に固定してドーナッツ状の空気だまり3を形成する。
そしてリフトファン4で発生した圧力空気をスカート内部に導入し、空気だまり3の形状を保持しつつ、開口部7からスカート外部に流れ出た空気が地面との隙間を作り、スカート1と地面5を直接接触させないことで空気クッション効果が得られる。これによりホバークラフトと地面との間の走行抵抗が極めて低減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ホバークラフトのスカートは空気クッション効果を得て、地面との間の走行抵抗を減少させるための役割を持つが、同時に地面から機体を浮上させて間隔を保つための構造体としての役割も有する。
【0004】
例えば
図4のように乗機姿勢がオートバイのように複数の浮上部の間にまたがるような機体では、操縦者11の下肢11aが機体の下面より突き出ることになる。その場合は機体2を地面5から高く浮上させる必要がある。また操縦者11が複数の浮上部15の間に位置するため、スカートと干渉しないようにスカートの幅も制限される。そのため幅を抑えて高く浮上できるスカートでなければならない。
【0005】
背景技術で述べたような、スカート構造では機体を浮上させる高さを大きくすると次のような欠点や弊害が生じる。
図2のようにスカート1a全体を大きくした場合は浮上高さとともに幅も広がるため、寸法上の制約が発生する場合がある。
【0006】
図3のように底部の固定構造8だけを伸長する方法が考えられるが、この場合スカート1b内の空気が抜けた場合でもスカート1bがほとんど折りたたまれないため、機体の高さが下がらずコンパクトにならないという欠点や、駐機時の重心位置が高くかつ接地面が小さいため不安定になるという欠点が発生する。
本発明は、以上のような欠点をなくすためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、
図5のように部材10を機体底部から懸架した。部材10は機体外周底部に取り付けられた紐12とスカート1cにより定位置に保たれる。圧力空気は空気だまり3を伸張することでスカート1cの形状を適切に保持し、
図1と同様に、開口部7から空気クッション効果が得られるようにスカート1cの内側から外側へ流れる。
【発明の効果】
【0008】
本発明ではスカート1cの浮上高さを大きくしても幅が大きくならず、構造的な制約を受けにくい。また他の構造では、浮上高さを大きくするとそれぞれの構造に起因する弊害が生じるが、本発明の構造では空気クッション効果を有効に機能させることができる。
また浮上高さが大きくなることで、地面との間隔が増大し、このスカート1cを装着したホバークラフトは障害物への踏破性の向上が図れる。
さらにスカート1cを折りたたむ際には紐12もたたまれるためコンパクトに収納できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】最適なスカート構造で浮上高さを高くした場合(断面図)
【
図3】機体底部を伸長した構造で浮上高さを高くした場合(断面図)
【発明を実施するための形態】
【0010】
ホバークラフトのスカート1cは気密性や柔軟性のある膜素材で構成される。リフトファン4からの圧力空気でスカート1cを伸展させた場合に地面と接するスカート1cの下側の空気だまり3の形状が、
図5および
図6のようにドーナッツ形状を成すように、縫合や接着などで膜素材を形成する。スカート1cを浮上させる高さは、おおむね形状によるが、構成される膜素材の物理的特性やスカート内部の空気圧力によっては、可変できるものとする。
【0011】
機体2は、スカート内部の空気の圧力や機体かかる荷重に耐えられるものであれば、
図5および
図6のような平面形状が円、断面形状が平板以外のものでも、本発明を適用できる。リフトファン4はその種類(軸流式、遠心式など)を問わず利用可能で、設置位置もスカート1cの内部に圧力空気を供給できる位置であれば、図示以外の位置でも可能である。
【0012】
図5および
図6のように部材10は機体外周底部に取り付けられた紐12により懸架される。紐12の本数は3本以上であれば、部材10が安定して懸架できる。
取り付け部13aは機体外周底部に、取り付け部13bは部材10に固定されている。
紐12それぞれの両端は取り付け部13a・13bに結束されており、紐12の長さを調整できる。この紐12の太さや材質などは特定せず、スカート1cを折りたたむ際に収納される程度の柔軟性を有すればよい。
また紐と称される以外の名称を持つ類似の要素(索、糸、針金、ワイヤ、チェン、多関節リンクなど)も紐12と同じ機能として使用すれば、本発明に含まれる。
【0013】
気密性・柔軟性のある膜で構成されているスカート1cは機体の外周部分に空気が漏れないように固定され、袋状になったスカート1cの底部は部材10に固定する。
部材10には空気だまり3からの圧力空気をスカート外部へ流す開口部7を有する。開口部7の形状、個数は特定せず、圧力空気が通過するものであれば良い。
リフトファン4で発生した圧力空気が空気だまり3に入りスカート1cを伸張すると紐12に張力が掛かり部材10は定位置に保たれる。圧力空気は中央開口部7を通り、スカート外部に流出する。スカート1cの下側がドーナッツ形状を成すために部材10を地面から適切に位置するように紐12の長さを調整する。
【符号の説明】
【0014】
1 スカート
1aスカート
1bスカート
1cスカート
2 機体
3 空気だまり
4 リフトファン
5 地面
6 リフトファンからの圧力空気の模式的な流れ
7 開口部
8 底部の固定構造
9 推進プロペラ
10 部材
11 操縦者
11a操縦者の下肢
12 紐
13a取り付け部
13b取り付け部
14
図1の場合の幅に相当する位置
15 浮上部