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  • 特開-スターティングブロック用固定ピン 図1
  • 特開-スターティングブロック用固定ピン 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143566
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】スターティングブロック用固定ピン
(51)【国際特許分類】
   A63K 3/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A63K3/02
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022065924
(22)【出願日】2022-03-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】522146495
【氏名又は名称】西村 壮史
(72)【発明者】
【氏名】西村 壮史
(57)【要約】
【課題】地面に固定されたスターティングブロックの取り外しを容易にする。
【解決手段】所定長さの棒状のピン本体11及びピン本体11の後端部に固着された頭部12とからなるピン部材と、ピン部材の頭部12に固着され、台板を押圧する弾性部材13と、弾性部材13に応力を加えた状態を維持し、弾性力の発揮を規制する弾性力規制手段14を有する。ブロック用固定ピン10を用いる。スターティングブロックを固定する際は、弾性部材13に応力を加えた状態を維持し、弾性力の発揮を規制する。スターティングブロックを取り外す際は、弾性部材13の弾性力の発揮の規制を解除する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台板の先端部に蹴り板を有するスターティングブロックをこの台板を介して地面に固定するスターティングブロック用固定ピンであって、
所定長さを有し、後端部から先端部方向に向かう外力を、後端部に加えることにより地中に埋設される棒状のピン本体及びピン本体の後端部に固着された頭部とからなるピン部材と、
上記ピン部材の頭部に固着され、上記台板を押圧する弾性部材と、
上記頭部には、上記弾性部材に応力を加えた状態を維持し、弾性力の発揮を規制する弾性力規制手段が設けられ、この頭部に設けられたロック解除手段によって、この弾性部材の弾性力の発揮の規制を解除し、この弾性部材が上記台板を押圧する台板押圧部材と、を有するスターティングブロック用固定ピン。
【請求項2】
上記弾性部材は、コイルばねであり、
上記台板押圧部材は、鉤状に形成され、鉤部により上記コイルばねを縮めた状態を維持することで、このコイルばねの弾性力の発揮を規制する鉤部材と、
上記鉤部を移動させる伸縮解除スイッチと、を備え、
上記伸縮解除スイッチを押圧することにより、上記鉤部が移動し、上記コイルばねの弾性力の発揮の規制を解除する請求項1に記載のスターティングブロック用固定ピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターティングブロック用固定ピン、詳しくは、地面に固定されたスターティングブロックを容易に取り外すことができるスターティングブロック用固定ピンに関する。
【背景技術】
【0002】
陸上競技における短距離種目では、スタート装置としてスターティングブロックを利用することが一般的に行われている。
スターティングブロックは、競技面上に固定される台板、及び台板に対して位置調整可能に組み合わされ、左右の足受け台である一対の蹴り板を主に備えている。
【0003】
この種のスターティングブロックは、例えばスタート練習用等に用いられる簡易的なものも含めると、多種多様なものが存在する。そして、競技の特性上起こりうる不正を防止するための技術的改良が行われ、特許文献1に記載のスターティングブロック等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-179041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スターティングブロックは、一般的に、スターティングブロック用固定ピンを競技面上に打ち込むことにより競技面上に固定される。スターティングブロックを恒常的に固定する場合には特に問題となることはないが、通常は、スターティングブロックを使用していないときは、競技面からスターティングブロックを取り外すことが一般的である。
スターティングブロックを固定するスターティングブロック用固定ピンは、専用のピンが市販されているものではなく、棒状のピン本体のみで構成される。そして、ピン本体の頭部をハンマーなどで叩き、ピン本体を地中に埋設することで、スターティングブロックを固定することができる。
しかしながら、スターティングブロックを取り外すときは、ピン本体を地中から引き抜かなければならないが、引き抜く際に専用の工具が存在しないため、強い力にてピン本体を引き抜かなければならず、非常に大きな労力が必要であった。
【0006】
そこで、発明者は、ピン本体の頭部とスターティングブロックの台板との位置関係に着目し、ピン本体の頭部と台板との間に、地中からピン本体を引き抜く力を作用させる機構を設けることにより、この問題を解決することができることを知見し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、地面に固定されたスターティングブロックを容易に取り外すことができるスターティングブロック用固定ピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、台板の先端部に蹴り板を有するスターティングブロックをこの台板を介して地面に固定するスターティングブロック用固定ピンであって、所定長さを有し、後端部から先端部方向に向かう外力を、後端部に加えることにより地中に埋設される棒状のピン本体及びピン本体の後端部に固着された頭部とからなるピン部材と、上記ピン部材の頭部に固着され、上記台板を押圧する弾性部材と、上記頭部には、上記弾性部材に応力を加えた状態を維持し、弾性力の発揮を規制する弾性力規制手段が設けられ、この頭部に設けられたロック解除手段によって、この弾性部材の弾性力の発揮の規制を解除し、この弾性部材が上記台板を押圧する台板押圧部材と、を有するスターティングブロック用固定ピンである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、スターティングブロック用固定ピンは、台板を介して地面にスターティングブロックを固定するものである。ピン本体を地中に埋め込むときは、ピン本体の後端部から先端部に向かう外力をピン本体に加える(例えば、ハンマー等によりピンの頭部を叩く。)ことによってピン本体を地中に埋め込むことができる。ピン本体が地中に埋め込まれたとき、ピン頭部に固着された弾性部材と、弾性部材に応力を加えた状態を維持するために、弾性力の発揮を規制する弾性力規制手段と、頭部に設けられたロック解除手段は、スターティングブロックの台板より上方に存在する。
ピン本体を地面から抜くときには、ロック解除手段によって、弾性部材の弾性力の発揮の規制を解除する。このとき、弾性部材は弾性部材の復元力により台板を押圧するが、台板は地面に固定されているため、台板の押圧力とは反対方向の力がピン本体に加わる。その結果、ピン本体を引き抜く際に必要な労力を小さくすることができる。
【0010】
ここで、弾性部材は、弾性を有するもの、すなわち応力を加えるとひずみが生じるが、除荷するともとの寸法に戻る性質を有するものであれば基本的にどのようなものでも適用可能である。たとえば、コイルばねを含むばね全般や、高弾性ゴムであってもよい。加工の容易性、製造コストの観点からコイルばねを用いることが好ましい。
弾性力規制手段は、弾性部材に応力を加えた状態を維持するための部材であり、応力を加えた状態を維持するための方法は特に問わない。ワイヤーなどで仮固定する方法、磁力を用いる方法、電気的性質を利用したもの等が挙げられるが、製造の容易性、製造コストの関係から、物理的性質を利用して、応力を加えた状態を維持することが好ましく、例えば、鉤などにより弾性部材を掛止する方法が安易である。
ロック解除手段は、弾性力の発揮の規制を解除するものであり、弾性力規制手段により弾性力を規制する方法によって、ロック解除手段の機構が定まる。たとえば、弾性力規制手段が電磁力を利用したものであれば、ロック解除手段は、電磁力を利用して弾性力の規制を解除するため、例えば電磁スイッチなどが挙げられよう。弾性力規制手段が物理的性質により弾性力を規制しているのであれば、ロック解除手段は、物理的に弾性力を解除すればよい。例えば、鉤などにより弾性部材を掛止することにより、弾性力の規制を行っているのであれば、その鉤を水平移動または回転移動させることにより、弾性部材の掛止を外すことも可能である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記弾性部材は、コイルばねであり、上記台板押圧部材は、鉤状に形成され、鉤部により上記コイルばねを縮めた状態を維持することで、このコイルばねの弾性力の発揮を規制する鉤部材と、上記鉤部を移動させる伸縮解除スイッチと、を備え、上記伸縮解除スイッチを押圧することにより、上記鉤部が移動し、上記コイルばねの弾性力の発揮の規制を解除する請求項1に記載のスターティングブロック用固定ピンである。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、コイルばねや鉤部材、伸縮解除スイッチといった物理的構成にてスターティングブロック用固定ピンを製造することができるため、製造の容易性、製造コストの面で有利である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スターティングブロック用固定ピンは、台板を介して地面にスターティングブロックを固定するものである。ピン本体を地中に埋め込むときは、ピン本体の後端部から先端部に向かう外力をピン本体に加える(例えば、ハンマー等によりピンの頭部を叩く。)ことによってピン本体を地中に埋め込むことができる。ピン本体が地中に埋め込まれたとき、ピン頭部に固着された弾性部材と、弾性部材に応力を加えた状態を維持するために、弾性力の発揮を規制する弾性力規制手段と、頭部に設けられたロック解除手段は、スターティングブロックの台板より上方に存在する。
ピン本体を地面から抜くときには、ロック解除手段によって、弾性部材の弾性力の発揮の規制を解除する。このとき、弾性部材は弾性部材の復元力により台板を押圧するが、台板は地面に固定されているため、台板の押圧力とは反対方向の力がピン本体に加わる。その結果、ピン本体を引き抜く際に必要な労力を小さくすることができる。
【0014】
特に、請求項2に記載の発明によれば、コイルばねや鉤部材、伸縮解除スイッチといった物理的構成にてスターティングブロック用固定ピンを製造することができるため、製造の容易性、製造コストの面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るスターティングブロック用固定ピンを示す正面図である。
図2】(A)本発明に係るスターティングブロック用固定ピンにおけるピン頭部の水平断面図である。(B)本発明に係るスターティングブロック用固定ピンにおけるピン頭部の水平断面図のうち、スイッチ用コイルバネを除外した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るスターティングブロック用固定ピン10は、図1に示すように、ピン本体11と、ピン本体11の後端部に固着されたピン頭部12と、ピン本体11を囲うように設けられるとともに、ピン頭部12の下面にその一端が固着され、ピン本体11の軸線方向に伸縮可能なコイルばね13と、コイルばね13の内側に設けられ、このコイルばね13を縮めた状態を維持するようにコイルばね13を掛止する鉤部材14と、コイルばね13が伸縮可能状態とするために、鉤部材14をピン本体11の中心方向に向かって水平移動させるスイッチ部材15と、を備えている。
【0017】
ピン本体11は、直径1cmの円形状の断面を有する胴部と、先端方向に向かって徐々に直径が小さくなる先端部とからなる棒状の部材である。ピン本体11は、ハンマーでたたいても変形しない硬さを有する金属製である。本実施例では、ピン本体11の長さは12cmにて設計しているが、スターティングブロックを設置する場所により適宜設計されるべきものである。
ピン本体11の後端には、ピン頭部12が溶接により固着されている。
【0018】
ピン頭部12は、内部空間を有する平面視して矩形の部材である。本実施例では、ピン頭部12の大きさは、縦1cm、横3cm、高さ1cmとしているが、スターティングブロックの設置の障害とならなければ、当該大きさは任意である。ピン頭部12は、ピン本体11と同一の材質で構成される。
図2(A)に示すように、ピン頭部12には、上壁、下壁、右側壁、左側壁、前壁、後壁により内部空間が形成されている。そして、ピン頭部12の右側壁及び左側壁にはスイッチ部材15のスイッチ部が嵌合できるようにスイッチ挿入用貫通穴12aが形成されている。このスイッチ挿入用貫通穴12aにスイッチ部材15のスイッチ部が擦動可能に挿入される。
ピン頭部12の前壁及び後壁には、貫通した2つのスリット12bが形成されるとともに、2つのスリットは、前壁及び後壁がピン本体11の中心軸線を基準に左右対称となる位置に形成されている。これらのスリット12bには、スイッチ用コイルばね16を押圧するスイッチ用コイルばね押圧部が擦動可能に挿入されている。
さらに、図2(B)に示すように、ピン頭部12の下壁には、貫通したスリット状の鉤部材挿入穴12cが形成され、この鉤部材挿入穴12cに鉤部材14が挿入されている。
【0019】
スイッチ部材15は、平面視して凸形状の部材であり、スイッチ部とスイッチ用コイルばね押圧部とから構成される。スイッチ部の先端はスイッチ挿入用貫通穴12aを介して、ピン頭部の外部に位置する。スイッチ部の後端はスイッチ用コイルばね押圧部が固着されている。スイッチ用コイルばね押圧部の両端は、ピン頭部12のスリット12bに嵌合されている。スイッチ部の先端から後端に向けて応力を加えると、スイッチ用コイルばね押圧部がスリット12bに沿って移動する。
このスイッチ用コイルばね押圧部の下面には、後述する鉤部材14の後端が固着されている。
【0020】
ピン頭部12の内部空間には断面円形の突出部が固着され、この突出部とスイッチ用コイルばね押圧部との間に、スイッチ用コイルばね16が設けられている。
スイッチ用コイルばね16は、スイッチ部の先端から後端に向けて加えられた応力を除荷した際に、スイッチ部材15が応力を加える前の状態に復元するために設けられている。
【0021】
コイルばね13は、長さ7cm、直径が3cmの大きさのものを使用しているが、スターティングブロックを設置する場所により適宜設計されるべきものである。コイルばね13は、ピン頭部の下面にコイルばね13の一端が固着されている。コイルばね13は、ピン本体11の周りを囲うように設けられている。コイルばね13は、ピン本体11の軸線方向に伸縮可能である。コイルばね13を縮めるときに必要となる応力は、一般的に強いものである必要がある。つまり、後述する鉤部材14によるコイルばねの規制を解除したときに、コイルばね13がスターティングブロックの台板に大きな圧力を与えることができるものでなければならない。
このコイルばね13に応力を与えた(コイルばね13を縮めた)状態を維持するために、鉤部材14がコイルばね13を掛止する。
【0022】
鉤部材14は、水平断面が矩形の棒状部分と、鉛直断面が直角三角形の鉤部分とから構成されている。この鉤部分でコイルばね13を掛止することができる。
鉤部材14は、ピン本体11と同じ素材でできている。鉤部材14の上端部は、鉤部材挿入穴12cを介してスイッチ部材15(より正確には、スイッチ部材15のスイッチ用コイルばね押圧部の下面)に固着されている。そして、棒状部分の一部が鉤部材挿入穴12cの内面と接触している。鉤部材14は、コイルばね13の内側に設けられている。
【0023】
このように構成されたスターティングブロック用固定ピン10を用いて、スターティングブロックを固定するには、ハンマーでスターティングブロック用固定ピン10を叩くことで(つまり、ピン頭部の上面を叩くことで)、鉤部材の先端が台板に接触するまで、ピン本体を地面に打ち込む。これにより、スターティングブロック用固定ピン10により、スターティングブロックを地面に固定することができる。
【0024】
逆に、スターティングブロックを地面から取り外すときは、スイッチ部材15のスイッチ部の先端から後端に向けて応力を加えるように、スイッチ部材15を押圧する。スイッチ部材15を押圧することで、鉤部材14が鉤部材挿入穴12cに沿って移動し、ピン本体に接近し、コイルばね13の掛止が外れる。これにより、コイルばね13が伸縮自在となり、コイルばね13が台板を押圧する。しかしながら、台板は地面に固定されているため、コイルばね13の押圧力とは反対方向の力がピン本体11に加わる。その結果、ピン本体11が上方向(ピン本体が地面から抜ける方向)に移動する。これによって、少ない力でピン本体11を引き抜くことができる。
【符号の説明】
【0025】
10 スターティングブロック用固定ピン、
11 ピン本体、
12 ピン頭部、
13 コイルばね、
14 鉤部材、
15 スイッチ部材。
図1
図2