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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014358
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/24 20060101AFI20230119BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230119BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20230119BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20230119BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20230119BHJP
   H10K 50/852 20230101ALI20230119BHJP
   H10K 50/828 20230101ALI20230119BHJP
   H10K 50/818 20230101ALI20230119BHJP
   H10K 102/10 20230101ALN20230119BHJP
   H10K 102/20 20230101ALN20230119BHJP
【FI】
H05B33/24
H05B33/14 A
H05B33/02
H05B33/28
H10K85/00
H10K50/852
H10K50/828
H10K50/818
H10K102:10
H10K102:20
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193946
(22)【出願日】2022-12-05
(62)【分割の表示】P 2021077519の分割
【原出願日】2016-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】北原 弘昭
(57)【要約】
【課題】マイクロキャビティ構造を有するOLEDから発せられる光の分光分布がピークにおいて高強度を有するようにする。
【解決手段】第1透光性部材210は、発光装置10から発せられる光の強度を強める層として機能している。第1透光性部材210は、屈折率nを有している。第1透光性部材210の厚さは、(λ/4n)の偶数倍と異なっており、詳細には、(λ/4n)の奇数倍と実質的に等しくなっている。この場合、第1透光性部材210によって波長λの光による強め合いの干渉を生じさせることができる。これにより、発光装置10から発せられる光の強度が高いものとなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置であって、
第1透光性部材と、
第2透光性部材と、
反射層と、
前記第1透光性部材と前記第2透光性部材の間の半透過反射層と、
前記第2透光性部材と前記反射層の間にあって、発光層を含む有機層と、
を備え、
前記発光装置は、波長λにピークを有する分光分布の光を発し、
前記第1透光性部材は、前記第2透光性部材の反対側で前記第1透光性部材の屈折率nよりも低い媒質に接し、
前記第1透光性部材の厚さは、以下の式(1)で定義される値tの90%以上110%以下である発光装置。
【数1】
m:mは0以上の整数
φ:前記半透過反射層と前記第2透光性部材の間での反射の位相シフト
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
基板を備え、
前記基板は、前記媒質として機能している発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第1透光性部材は、前記第2透光性部材の反対側で気相に接し、
前記気相は、前記媒質として機能している発光装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第1透光性部材の厚さは、50nm以上100nm以下である発光装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記半透過反射層は、銀を含む発光装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の発光装置において、
複数の前記反射層と、複数の透光部と、を備え、
前記複数の反射層と前記複数の透光部は、交互に並んでいる発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光装置として、有機発光ダイオード(OLED)が開発されている。OLEDは、有機層を備え、この有機層は、有機エレクトロルミネッセンスによって光を発する発光層を含んでいる。OLEDは、第1電極(例えば、アノード電極)及び第2電極(例えば、カソード電極)をさらに備え、第1電極及び第2電極は、有機層を挟んで互いに対向している。OLEDでは、第1電極及び第2電極を用いて有機層に電圧を印加することで、発光層から光を発する。
【0003】
特許文献1には、OLEDの一例について記載されている。このOLEDの第1電極は、ITO(Indium Tin Oxide)層、金属薄膜層及びITO層の積層構造からなっている。2つのITO層の間に金属薄膜層を設けることによって、第1電極の抵抗が低いものとなる。金属薄膜層の厚さは、一定の範囲にあり、具体的には、特許文献1には、金属薄膜層の厚さが薄すぎると金属薄膜層の安定性が低いものとなり、金属薄膜層の厚さが厚すぎると金属薄膜層によって可視光が反射されることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、OLEDの一例について記載されている。このOLEDは、マイクロキャビティ構造を有している。このOLEDは、拡散防止層(例えば、ITO又はIZO(Indium Zinc Oxide))、Ag合金層及び第1電極を備えている。Ag合金層は、拡散防止層と第1電極の間にあって、マイクロキャビティ構造(共振器)の半透過反射層として機能している。特許文献2には、OLEDの製造プロセス中の加熱によって、Ag合金層に含まれる銀が拡散することが記載されている。拡散防止層は、銀のこのような拡散を防止するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-69984号公報
【特許文献2】特開2005-108644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献2に記載されているように、近年、マイクロキャビティ構造を有するOLEDが開発されている。このようなOLEDでは、OLEDから発せられる光の分光分布がピークにおいて高強度を有することが重要となる。本発明者は、OLEDから発せられる光の分光分布がピークにおいて高強度を有するための新規な構造について検討した。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、マイクロキャビティ構造を有するOLEDから発せられる光の分光分布がピークにおいて高強度を有するようにするが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一例は、
発光装置であって、
第1透光性部材と、
第2透光性部材と、
反射層と、
前記第1透光性部材と前記第2透光性部材の間の半透過反射層と、
前記第2透光性部材と前記反射層の間にあって、発光層を含む有機層と、
を備え、
前記発光装置は、波長λにピークを有する分光分布の光を発し、
前記第1透光性部材は、前記第2透光性部材の反対側で前記第1透光性部材の屈折率nよりも低い媒質に接し、
前記第1透光性部材の厚さは、(λ/4n)の偶数倍と異なる発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る発光装置を示す断面図である。
図2図1に示した共振器の一例を示す図である。
図3図1に示した発光装置の動作を説明するための図である。
図4】発光装置からの光の輝度と第1透光性部材の光路長の関係の一例を示すグラフである。
図5図4に示したグラフの横軸を第1透光性部材の厚さで置き換えたグラフを示す図である。
図6】第1透光性部材の最適厚さと半透過反射層の厚さの関係の一例を示すグラフである。
図7】半透過反射層の反射率と半透過反射層の厚さの関係の一例を示すグラフである。
図8図1の変形例を示す図である。
図9図8に示した発光装置の動作を説明するための図である。
図10】実施例に係る発光装置を示す平面図である。
図11図10から有機層及び第2電極を取り除いた図である。
図12図11から絶縁層を取り除いた図である。
図13図10のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る発光装置10を示す断面図である。発光装置10は、基板100、第1透光性部材210、半透過反射層220、第2透光性部材230、有機層240及び反射層250を備えている。本図に示す例において、基板100は、第1面102及び第2面104を有している。第2面104は、第1面102の反対側にある。第1透光性部材210、半透過反射層220、第2透光性部材230、有機層240及び反射層250は、基板100の第1面102上にある。半透過反射層220、第2透光性部材230、有機層240及び反射層250は、共振器200として機能している。半透過反射層220は、第1透光性部材210と第2透光性部材230の間にある。有機層240は、第2透光性部材230と反射層250に間にあって、発光層(例えば、後述する図2の発光層(EML)246)を含んでいる。本図に示す例において、発光装置10は、基板100の第2面104側から、波長λにピークを有する分光分布の光を発する。第1透光性部材210は、基板100(媒質)に接しており、基板100の屈折率は、第1透光性部材210の屈折率nよりも低い。
【0012】
第1透光性部材210の厚さは、(λ/4n)の偶数倍と異なっている。詳細には、第1透光性部材210の厚さは、(λ/4n)の奇数倍と実質的に等しくなっており、(λ/4n)の奇数倍の例えば90%以上110%以下である。より詳細には、第1透光性部材210の厚さは、以下の式(1)で定義される値tと実質的に等しく、値tの例えば90%以上110%以下である。
【数1】
ただし、mは0以上の整数であり、φは半透過反射層220と第2透光性部材230の間での反射の位相シフトであり、以下の式(2)に示すようになる。
【数2】
ただし、nは第2透光性部材230の屈折率であり、nは半透過反射層220の屈折率であり、kは半透過反射層220の消衰係数である。
【0013】
本図に示す例においては、図3を用いて後述するように、第1透光性部材210によって波長λの光による強め合いの干渉を生じさせることができる。これにより、基板100の第2面104から発せられる光の強度が高いものとなる。
【0014】
図2は、図1に示した共振器200の一例を示す図である。共振器200は、半透過反射層220、反射層250及び第1層200(1)~第k層200(k)(本図に示す例ではk=5として、第1層200(1)、第2層200(2)、第3層200(3)、第4層200(4)及び第5層200(5))を含んでいる。第1層200(1)~第k層200(k)は、半透過反射層220と反射層250の間にある。第1層200(1)は、第2透光性部材230として機能し、第2層200(2)は、有機層240の正孔注入層(HIL)242として機能し、第3層200(3)は、有機層240の正孔輸送層(HTL)244として機能し、第4層200(4)は、有機層240の発光層(EML)246として機能し、第5層200(5)は、有機層240の電子輸送層(ETL)248として機能している。
【0015】
半透過反射層220は、共振器200のハーフミラーとして機能している。一例において、半透過反射層220は、金属、具体的には、Ag、Ag合金及びAu合金の少なくとも一つを含んでいる。半透過反射層220の透過率は、半透過反射層220の厚さによって調整することができる。一例において、半透過反射層220の厚さは、3nmから40nmである。
【0016】
第2透光性部材230は、アノードとして機能している。第2透光性部材230は、透光性を有しており、一例において、酸化物半導体、具体的には、ITO(Indium Tin Oxide)又はIZO(Indium Zinc Oxide)を含んでいる。
【0017】
有機層240は、HIL242、HTL244、EML246及びETL248を含んでいる。HIL242及びHTL244を介して注入された正孔とETL248を介して注入された電子がEML246において再結合する。これにより、EML246から光が発せられる。なお、有機層240に含まれる層は、本図に示す例に限定されるものではない。一例において、有機層240は、ETL248と反射層250の間に電子注入層(EIL)を含んでいてもよい。
【0018】
反射層250は、カソードとして機能するとともに、共振器200のミラーとして機能している。一例において、反射層250は、金属、具体的には、Ag、Ag合金、Al及びAl合金の少なくとも一つを含んでいる。
【0019】
共振器200では、第1層200(1)~第k層200(k)(本図に示す例では、k=5)に関する以下の式(3)で定義される値Mが1以上の整数と実質的に等しく、例えばm-1/8以上m+1/8(mは1以上の整数である。)である。
【数3】
ただし、nは第i層200(i)の屈折率であり、dは第i層200(i)の厚さであり、φは半透過反射層220と第1層200(1)の間での反射の位相シフトであり(上記した式(2))、φは反射層250と第k層200(k)の間での反射の位相シフトである。
【0020】
共振器200は、マイクロキャビティとして機能している。具体的には、上記した式(3)で定義される値Mが1以上の整数と実質的に等しい場合、波長λの光について強め合いの干渉が生じている。このため、共振器200の半透過反射層220から発せられる光では、波長λの光の強度が高いものとなっている。
【0021】
図3は、図1に示した発光装置10の動作を説明するための図である。本図に示す例において、発光装置10は、基板100の第2面104側から光L1及び光L2を発している。光L1は、共振器200から半透過反射層220側に発せられ、基板100と第1透光性部材210の界面で反射し、第1透光性部材210と半透過反射層220の界面で反射した、基板100の第2面104から発せられている。光L2は、共振器200の半透過反射層220から発せられ、基板100と第1透光性部材210の界面で反射することなく基板100の第2面104から発せられている。
【0022】
基板100は、透光性を有している。一例において、基板100は、ガラス又は樹脂を含んでいる。基板100は、可撓性を有していてもよいし、又は可撓性を有していなくてもよい。
【0023】
第1透光性部材210は、透光性を有している。一例において、第1透光性部材210は、酸化物半導体、具体的には、ITO又はIZOを含んでいる。第1透光性部材210の材料は、第2透光性部材230の材料と同一でもよいし、又は第2透光性部材230の材料と異なっていてもよい。
【0024】
第1透光性部材210の屈折率nは、基板100の屈折率より高く、半透過反射層220の屈折率より低い。このため、第1透光性部材210から基板100に光が入射してこの光が第1透光性部材210と基板100の界面で反射した場合、この光の位相は、反射の際に反転しない。これに対して、第1透光性部材210から半透過反射層220に光が入射してこの光が半透過反射層220と第1透光性部材210の界面で反射した場合、この光の位相は、反射の際にπだけ反転する。
【0025】
第1透光性部材210は、半透過反射層220を基板100に固定させる層として機能している。詳細には、基板100がガラスからなり、半透過反射層220が金属からなる場合、発光装置10の製造プロセスでの加熱によって半透過反射層220が基板100から剥がれやすいことがある。基板100と半透過反射層220の間に第1透光性部材210を設けることによって、半透過反射層220が基板100から剥離することを防止することができる。
【0026】
さらに、第1透光性部材210は、半透過反射層220に含まれる物質が基板100に拡散することを防止する層として機能している。特に、半透過反射層220が銀(例えば、Ag又はAg合金)を含む場合、発光装置10の製造プロセス中の加熱によって、半透過反射層220中の銀が拡散しやすい。本図に示す例においては、半透過反射層220が銀を含んでいても、基板100に銀が拡散することを第1透光性部材210が防止している。
【0027】
さらに、第1透光性部材210は、発光装置10から発せられる光の強度を強める層として機能している。詳細には、本図に示す例では、光L1と光L2によって強め合いの干渉が生じている。具体的には、光L1と光L2の光路差は、2nd(d:第1透光性部材210の厚さ)である。第1透光性部材210の屈折率nは基板100の屈折率より高いため、光L1の位相は、基板100と第1透光性部材210の界面での反射において反転しない。これに対して、第1透光性部材210の屈折率nは半透過反射層220の屈折率より低いため、光L1の位相は、第1透光性部材210と半透過反射層220の界面での反射においてπだけ反転する。第1透光性部材210の厚さdは、以下の式(4)を満たしており、このため、光L1と光L2によって強め合いの干渉が生じている。
【数4】
【0028】
図4は、発光装置10からの光の輝度と第1透光性部材210の光路長の関係の一例を示すグラフである。本図に示すグラフの横軸は、第1透光性部材210の屈折率nと第1透光性部材210の厚さdの積nd(第1透光性部材210の光路長)を示している。本図に示す例では、基板100は、屈折率につき約1.52のガラス基板であり、第1透光性部材210は、屈折率nにつき約2.09のIZO層であり、半透過反射層220は、厚さにつき約18nm、屈折率nにつき約0.16、消衰係数kにつき約4.2のAg合金層であり、第2透光性部材230は、屈折率nにつき約2.09のIZO層であり、波長λは、約625nmである。
【0029】
本図に示すように、発光装置10からの光の輝度は、第1透光性部材210の光路長ndがλ/4の偶数倍又はその近傍にあるとき、極小値をとる。これに対して、発光装置10からの光の輝度は、第1透光性部材210の光路長ndがλ/4の奇数倍又はその近傍にあるとき、極大値をとる。このようにして、第1透光性部材210の厚さは、(λ/4n)の偶数倍と異なっていることが好ましく、より詳細には、(λ/4n)の奇数倍と実質的に等しくなっていることが好ましい。
【0030】
図5は、図4に示したグラフの横軸を第1透光性部材210の厚さで置き換えたグラフを示す図である。本図に示すように、発光装置10からの光の輝度は、第1透光性部材210の厚さが約75nm(図4に示したグラフのλ/4の近傍に相当)にあるとき、最大値をとっている。
【0031】
図6は、第1透光性部材210の最適厚さと半透過反射層220の厚さの関係の一例を示すグラフである。第1透光性部材210の厚さが最適厚さであるとき、発光装置10からの光の輝度は、例えば図5に示したように最大値をとる(言い換えると、図5に示した例の最適厚さは、約75nmである。)。図7は、半透過反射層220の反射率と半透過反射層220の厚さの関係の一例を示すグラフである。
【0032】
図6に示すように、第1透光性部材210の最適厚さは、半透過反射層220の厚さに依存している。具体的には、半透過反射層220の厚さが約18nm(図4及び図5に示した例における厚さ)であるとき、第1透光性部材210の最適厚さは、約75nmである。さらに、半透過反射層220の厚さが0~7.5nmであるとき、第1透光性部材210の最適厚さは、約98nmである。さらに、半透過反射層220の厚さが35nm以上であるとき、第1透光性部材210の最適厚さは、約53nmである。
【0033】
図6及び図7に示す結果より、第1透光性部材210の最適厚さは、上述した式(1)に従うといえる。言い換えると、第1透光性部材210の最適厚さは、位相シフトを考慮しない最適厚さt(t=(λ/4n)*(2m+1))を中心として変動しており、その変動幅は、位相シフトに相当する厚さt(t=(λ/n)*(φ/2π))になるといえる。このため、第1透光性部材210の最適厚さは、t±t/2と示すことができ、式t±t/2から上述した式(1)が導出される。
【0034】
具体的には、図7に示すように、半透過反射層220の厚さが0~7.5nmであるとき、半透過反射層220の反射率は低く、このため、半透過反射層220の厚さが0~7.5nmであるとき、位相シフトは、ほぼ無視することができる。一方、半透過反射層220の厚さが厚くなるにつれ、半透過反射層220における位相シフトも大きくなり、特に、半透過反射層220の厚さが35nm以上であるとき、位相シフトは、上述した式(2)にほぼ従っていると推測される。上記した式(2)に基づいて、位相シフトφは、n=2.09、n=0.16、k=4.2のとき、約0.3πradであり、0.15λ(約94nm)の光路長に相当し、IZO(第1透光性部材210)の厚さで約45nmに相当する。一方、図6に示すように、第1透光性部材210の最適厚さは、約53nmと約98nmの間で変動しており、この変動幅(約45nm)は、位相シフトも相当する厚さとほぼ等しくなっている。このようにして、第1透光性部材210の最適厚さは、上述した式(1)に従っているといえる。
【0035】
図6に示す結果より、一例において、第1透光性部材210の厚さは、50nm以上100nm以下であることが好ましい。具体的には、図6に示す例において、第1透光性部材210の最適厚さは、おおよそ50nm以上100nm以下の範囲内で変動している。このため、発光装置10からの光の輝度は、第1透光性部材210の厚さが50nm以上100nm以下であるとき、おおよそ最大値をとることができる。
【0036】
図8は、図1の変形例を示す図である。本図に示す例において、第1透光性部材210、半透過反射層220、第2透光性部材230、有機層240及び反射層250は、基板100から反射層250、有機層240、第2透光性部材230、半透過反射層220及び第1透光性部材210の順で並んでいる。第1透光性部材210は、第2透光性部材230の反対側で気相260(媒質)に接しており、気相260の屈折率は、第1透光性部材210の屈折率nよりも低い。一例において、気相260は空気である。
【0037】
第1透光性部材210の厚さは、(λ/4n)の偶数倍と異なっており、詳細には、(λ/4n)の奇数倍と実質的に等しくなっており、より詳細には、上記した式(1)で定義される値tと実質的に等しくなっている。本図に示す例においては、図9を用いて後述するように、第1透光性部材210によって波長λの光による強め合いの干渉を生じさせることができる。これにより、基板100の第2面104から発せられる光の強度が高いものとなる。
【0038】
図9は、図8に示した発光装置10の動作を説明するための図である。本図に示す例において、発光装置10は、基板100の第1面102側から光L1及び光L2を発している。光L1は、共振器200の半透過反射層220から発せられ、第1透光性部材210と気相260の界面で反射し、第1透光性部材210と半透過反射層220の界面で反射した、第1透光性部材210から発せられている。光L2は、共振器200の半透過反射層220から発せられ、第1透光性部材210と気相260の界面で反射することなく第1透光性部材210から発せられている。
【0039】
第1透光性部材210の屈折率nは、基板100の屈折率より高く、気相260の屈折率より低い。このため、第1透光性部材210から気相260に光が入射してこの光が第1透光性部材210と気相260の界面で反射した場合、この光の位相は、反射の際に反転しない。これに対して、第1透光性部材210から半透過反射層220に光が入射してこの光が半透過反射層220と第1透光性部材210の界面で反射した場合、この光の位相は、反射の際にπだけ反転する。
【0040】
本図に示す例では、光L1と光L2によって強め合いの干渉が生じている。具体的には、光L1と光L2の光路差は、2nd(d:第1透光性部材210の厚さ)である。第1透光性部材210の屈折率nは気相260の屈折率より高いため、光L1の位相は、基板100と第1透光性部材210の界面での反射において反転しない。これに対して、第1透光性部材210の屈折率nは半透過反射層220の屈折率より低いため、光L1の位相は、第1透光性部材210と半透過反射層220の界面での反射においてπだけ反転する。第1透光性部材210の厚さdは、上記した式(4)を満たしており、このため、光L1と光L2によって強め合いの干渉が生じている。
【0041】
以上、本実施形態によれば、第1透光性部材210は、発光装置10から発せられる光の強度を強める層として機能している。第1透光性部材210は、屈折率nを有している。第1透光性部材210の厚さは、(λ/4n)の偶数倍と異なっており、詳細には、(λ/4n)の奇数倍と実質的に等しくなっており、より詳細には、上記した式(1)で定義される値tと実質的に等しくなっている。この場合、第1透光性部材210によって波長λの光による強め合いの干渉を生じさせることができる。これにより、発光装置10から発せられる光の強度が高いものとなる。
【実施例0042】
図10は、実施例に係る発光装置10を示す平面図である。図11は、図10から有機層120及び第2電極130を取り除いた図である。図12は、図11から絶縁層140を取り除いた図である。図13は、図10のA-A断面図である。
【0043】
図13を用いて発光装置10の概要について説明する。発光装置10は、基板100、第1透光性部材210、半透過反射層220、第1電極110、有機層120及び第2電極130を備えている。本図に示す基板100は、図1に示した基板100と同様である。本図に示す第1透光性部材210は、図1に示した第1透光性部材210と同様である。本図に示す半透過反射層220は、図1に示した半透過反射層220と同様である。本図に示す第1電極110は、第2透光性部材230として機能しており、本図に示す第2透光性部材230は、図1に示した第2透光性部材230と同様である。本図に示す有機層120は、有機層240として機能しており、本図に示す有機層240は、図1に示した有機層240と同様である。本図に示す第2電極130は、反射層250として機能しており、本図に示す反射層250は、図1に示した反射層250と同様である。このようにして、半透過反射層220、第1電極110(第2透光性部材230)、有機層120(有機層240)及び第2電極130(反射層250)は、共振器200として機能している。
【0044】
次に、図10図12を用いて、発光装置10の平面レイアウトの詳細について説明する。発光装置10は、基板100、複数の第1電極110、複数の第1接続部112、第1配線114、複数の第2電極130、複数の第2接続部132、第2配線134及び複数の絶縁層140を備えている。
【0045】
基板100の形状は、第1面102に垂直な方向から見た場合、一対の長辺及び一対の短辺を有する矩形である。ただし、基板100の形状は、本図に示す例に限定されるものではない。基板100の形状は、第1面102に垂直な方向から見た場合、例えば円でもよいし、又は矩形以外の多角形であってもよい。
【0046】
複数の第1電極110は、互いに離間して位置しており、具体的には、基板100の長辺に沿って一列に並んでいる。複数の第1電極110のそれぞれは、基板100の短辺に沿って延伸している。
【0047】
複数の第1電極110のそれぞれは、複数の第1接続部112のそれぞれを介して、第1配線114に接続している。第1配線114は、基板100の一対の長辺の一方に沿って延伸している。外部からの電圧は、第1配線114及び第1接続部112を介して第1電極110に供給される。なお、本図に示す例において、第1電極110及び第1接続部112は、互いに一体となっている。言い換えると、発光装置10は、第1電極110として機能する領域及び第1接続部112として機能する領域を有する導電層を備えている。
【0048】
複数の第2電極130のそれぞれは、複数の第1電極110のそれぞれに重なっている。複数の第2電極130は、互いに離間して位置しており、具体的には、基板100の長辺に沿って一列に並んでいる。複数の第2電極130のそれぞれは、基板100の短辺に沿って延伸しており、具体的には、基板100の短辺に沿って延伸する一対の長辺及び基板100の長辺に沿って延伸する一対の短辺を有している。
【0049】
複数の第2電極130のそれぞれは、複数の第2接続部132のそれぞれを介して、第2配線134に接続している。第2配線134は、基板100の一対の長辺の他方に沿って延伸している。外部からの電圧は、第2配線134及び第2接続部132を介して第2電極130に供給される。
【0050】
複数の絶縁層140のそれぞれは、複数の第1電極110のそれぞれに重なっている。複数の絶縁層140は、互いに離間して位置しており、具体的には、基板100の長辺に沿って一列に並んでいる。複数の絶縁層140のそれぞれは、基板100の短辺に沿って延伸しており、具体的には、基板100の短辺に沿って延伸する一対の長辺及び基板100の長辺に沿って延伸する一対の短辺を有している。
【0051】
複数の絶縁層140のそれぞれは、開口142を有している。図13を用いて後述するように、開口142内において、第1電極110、有機層120及び第2電極130は、発光部152として機能する領域(第1電極110、有機層120及び第2電極130の積層構造)を有している。言い換えると、絶縁層140は、発光部152を画定している。発光部152(開口142)は、基板100の短辺に沿って延伸しており、具体的には、基板100の短辺に沿って延伸する一対の長辺及び基板100の長辺に沿って延伸する一対の短辺を有している。
【0052】
次に、図13を用いて、発光装置10の断面の詳細を説明する。発光装置10は、基板100、第1電極110、有機層120、第2電極130及び絶縁層140を備えている。基板100は、第1面102及び第2面104を有している。第2面104は、第1面102の反対側にある。第1電極110、有機層120、第2電極130及び絶縁層140は、基板100の第1面102上にある。絶縁層140の開口142内において、第1電極110、有機層120及び第2電極130は、発光部152として機能する領域を有しており、この領域において、第1電極110、有機層120及び第2電極130は、互いに重なっている。
【0053】
基板100は、透光性を有している。一例において、基板100は、ガラスを含んでいる。他の例において、基板100は、樹脂を含んでいてもよい。
【0054】
第1電極110は、透光性及び導電性を有している。具体的には、第1電極110は、透光性及び導電性を有する材料を含んでおり、例えば金属酸化物、具体的には例えば、ITO(Indium Tin Oxide)及びIZO(Indium Zinc Oxide)の少なくとも1つを含んでいる。これにより、有機層120からの光は、第1電極110を透過することができる。
【0055】
有機層120は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層を含んでいる。正孔注入層及び正孔輸送層は、第1電極110に接続している。電子輸送層及び電子注入層は、第2電極130に接続している。発光層は、第1電極110と第2電極130の間の電圧によって光を発する。
【0056】
第2電極130は、光反射性及び導電性を有している。具体的には、第2電極130は、光反射性及び導電性を有する材料を含んでおり、例えば金属、具体的には例えば、Al、Ag及びMgAgの少なくとも1つを含んでいる。これにより、有機層120からの光は、第2電極130をほとんど透過することなく、第2電極130で反射される。言い換えると、本図に示す例において、発光装置10は、ボトムエミッションであり、有機層120からの光のほとんどは、第2面104側から出射される。
【0057】
なお、第2電極130の光反射性に起因して、第2電極130は、遮光性を有している。このため、本図に示す例では、有機層120からの光が第2電極130から漏れることが抑制されている。
【0058】
絶縁層140は、透光性を有している。一例において、絶縁層140は、有機絶縁材料、具体的には例えばポリイミドを含んでいる。他の例において、絶縁層140は、無機絶縁材料、具体的には例えば、シリコン酸化物(SiO)、シリコン酸窒化物(SiON)又はシリコン窒化物(SiN)を含んでいてもよい。
【0059】
本図に示すように、第2電極130は端部130a及び端部130bを有し、絶縁層140は端部140a及び端部140bを有している。端部130a及び端部140aは、互いに同じ方向を向いている。端部130b及び端部140bは、互いに同じ方向を向いており、それぞれ、端部130a及び端部140aの反対側にある。
【0060】
基板100の第1面102は、平面視または、基板に垂直な方向から見て複数の領域102a、複数の領域102b複数の領域102cを有している。複数の領域102aのそれぞれは、第2電極130の端部130aと重なる位置から端部130bと重なるまで広がっている。複数の領域102bのそれぞれは、第2電極130の端部130aと重なる位置から絶縁層140の端部140aと重なる位置まで(又は第2電極130の端部130bと重なる位置から絶縁層140の端部140bと重なる位置まで)広がっている。複数の領域102cのそれぞれは、互いに隣接する2つの絶縁層140のうちの一方の絶縁層140の端部140aと重なる位置から他方の絶縁層140の端部140bと重なる位置まで広がっている。
【0061】
領域102aは、第2電極130と重なっており、このため、発光装置10は、領域102a、領域102b及び領域102c(透過領域あるいは低遮光領域)と重なる領域の中で、領域102aと重なる領域で最も低い光線透過率を有している。領域102cは、第2電極130及び絶縁層140のいずれとも重なっておらず、このため、発光装置10は、領域102a、領域102b及び領域102cと重なる領域の中で、領域102cと重なる領域で最も高い光線透過率を有している。領域102bは、第2電極130と重ならず絶縁層140と重なっており、このため、発光装置10は、領域102bと重なる領域においては、領域102aと重なる領域における光線透過率よりも高く、かつ領域102cと重なる領域における光線透過率よりも低い光線透過率を有している。
【0062】
本図に示す例では、発光装置10の全体としての光線透過率が高いものとなっている。詳細には、本図に示す例では、光線透過率の高い領域の幅、すなわち、領域102cの幅d3が広くなっており、具体的には、領域102cの幅d3は、領域102bの幅d2よりも広くなっている(d3>d2)。このようにして、発光装置10の全体としての光線透過率は、高いものとなっている。
【0063】
本図に示す例では、発光装置10が特定の波長の光を多く吸収することが防止されている。詳細には、本図に示す例では、光が絶縁層140を透過する領域の幅、すなわち、領域102bの幅d2が狭くなっており、具体的には、領域102bの幅d2は、領域102cの幅d3よりも狭くなっている(d2<d3)。絶縁層140は、特定の波長の光を吸収することがある。このような場合においても、本図に示す例では、絶縁層140を透過する光の量が少ない。このようにして、発光装置10が特定の波長の光を多く吸収することが防止されている。
【0064】
なお、領域102cの幅d3は、領域102aの幅d1よりも広くてもよいし(d3>d1)、領域102aの幅d1よりも狭くてもよいし(d3<d1)、又は領域102aの幅d1と等しくてもよい(d3=d1)。
【0065】
一例において、領域102aの幅d1に対する領域102bの幅d2の比d2/d1は、0以上0.2以下であり(0≦d2/d1≦0.2)、領域102aの幅d1に対する領域102cの幅d3の比d3/d1は、0.3以上2以下である(0.3≦d3/d1≦2)。より具体的には、一例において、領域102aの幅d1は、50μm以上500μm以下であり、領域102bの幅d2は、0μm以上100μm以下であり、領域102cの幅d3は、15μm以上1000μm以下である。
【0066】
本図に示す例において、発光装置10は、半透過OLEDとして機能している。具体的には、第2電極130と重ならない領域は、透光部154として機能している。このようにして、発光装置10では、複数の発光部152及び複数の透光部154が交互に並んでいる。複数の発光部152から光が発せられていない場合、人間の視覚では、第1面102側の物体が第2面104側から透けて見え、第2面104側の物体が第1面102側から透けて見える。さらに、複数の発光部152からの光は、第2面104側から主に出力され、第1面102側からはほとんど出力されない。複数の発光部152から光が発せられている場合、人間の視覚では、第2面104側の物体が第1面102側から透けて見える。
【0067】
一例において、発光装置10は、自動車のハイマウントストップランプとして用いることができる。この場合、発光装置10は、自動車のリアウインドウに貼り付けることができる。さらに、この場合、発光装置10は、例えば、赤色の光を発する。
【0068】
次に、図10図13に示した発光装置10の製造方法について説明する。
【0069】
まず、基板100の第1面102上に第1透光性部材210を形成する。一例において、第1透光性部材210は、スパッタリングにより形成された導電層をパターニングすることにより形成される。
【0070】
次いで、半透過反射層220を形成する。一例において、半透過反射層220は、蒸着によって形成される。
【0071】
次いで、第1電極110(第2透光性部材230)、第1接続部112及び第2接続部132を形成する。一例において、第1電極110、第1接続部112及び第2接続部132は、スパッタリングにより形成された導電層をパターニングすることにより形成される。
【0072】
次いで、絶縁層140を形成する。一例において、絶縁層140は、基板100の第1面102上に塗布された感光性樹脂をパターニングすることにより形成される。
【0073】
次いで、有機層120(有機層240)を形成する。一例において、有機層120は、蒸着により形成される。他の例において、有機層120は、塗布により形成されてもよい。この場合、絶縁層140の開口142内に有機層120の材料を塗布する。
【0074】
次いで、第2電極130(反射層250)を形成する。一例において、第2電極130は、マスクを用いた真空蒸着により形成される。
【0075】
このようにして、図10図13に示した発光装置10が製造される。
【0076】
本実施例によれば、実施形態と同様にして、第1透光性部材210は、発光装置10から発せられる光の強度を強める層として機能している。第1透光性部材210は、屈折率nを有している。第1透光性部材210の厚さは、(λ/4n)の偶数倍と異なっており、詳細には、(λ/4n)の奇数倍と実質的に等しくなっており、より詳細には、上記した式(1)で定義される値tと実質的に等しくなっている。この場合、第1透光性部材210によって波長λの光による強め合いの干渉を生じさせることができる。これにより、発光装置10から発せられる光の強度が高いものとなる。
【0077】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0078】
10 発光装置
100 基板
102 第1面
102a 領域
102b 領域
102c 領域
104 第2面
110 第1電極
112 第1接続部
114 第1配線
120 有機層
130 第2電極
130a 端部
130b 端部
132 第2接続部
134 第2配線
140 絶縁層
140a 端部
140b 端部
142 開口
152 発光部
154 透光部
200 共振器
210 第1透光性部材
220 半透過反射層
230 第2透光性部材
240 有機層
242 HIL
244 HTL
246 EML
248 ETL
250 反射層
260 気相
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13