(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014364
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】空気圧工具
(51)【国際特許分類】
B25C 1/04 20060101AFI20230119BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20230119BHJP
B25C 7/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B25C1/04
B25F5/00 F
B25C7/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194052
(22)【出願日】2022-12-05
(62)【分割の表示】P 2019086671の分割
【原出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏司
(57)【要約】
【課題】制御バルブの小型化及び応答性能の向上を図る。
【解決手段】釘打機100は、圧縮空気の空気圧によって駆動する打撃機構20と、空気源から供給され、打撃機構20を駆動する圧縮空気を溜めるメインチャンバ5と、メインチャンバ5から独立して空気源から供給される圧縮空気を溜めるヘッドバルブチャンバ38を有すると共に、ヘッドバルブチャンバ38の圧力変動に伴って作動し、メインチャンバ5から打撃機構20への圧縮空気の供給を可能にするヘッドバルブ30と、ヘッドバルブチャンバ38の圧縮空気を排気させることでヘッドバルブ30を作動させるトリガバルブ50と、トリガバルブ50の作動を無効にする第2制御バルブ60とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気の空気圧によって駆動する駆動機構と、
空気源から供給され、前記駆動機構を駆動する圧縮空気を溜めるメインチャンバと、
前記メインチャンバから独立して空気源から供給される圧縮空気を溜める第1チャンバを有すると共に、前記第1チャンバの圧力変動に伴って作動し、前記メインチャンバから前記駆動機構への圧縮空気の供給を可能にするヘッドバルブと、
前記第1チャンバの圧縮空気を排気させることで前記ヘッドバルブを作動させるトリガバルブと、
前記トリガバルブの作動を無効にする制御バルブと、
を備える、空気圧工具。
【請求項2】
前記トリガバルブは、圧縮空気を溜める第2チャンバを有し、
前記制御バルブは、非作動時に、前記トリガバルブの前記第2チャンバの圧縮空気を排気させて前記ヘッドバルブの前記第1チャンバから圧縮空気を排気させることで当該ヘッドバルブを作動させる、
請求項1に記載の空気圧工具。
【請求項3】
前記制御バルブは、前記トリガバルブの内部に配置される、
請求項1又は2に記載の空気圧工具。
【請求項4】
トリガの操作に基づいて前記制御バルブを所定のタイミングで作動させるタイマーバルブを備え、
前記制御バルブは、前記タイマーバルブの制御により作動し、前記トリガバルブの前記第2チャンバの圧縮空気の充填状態を維持することで前記ヘッドバルブの前記第1チャンバと前記トリガバルブとを遮断する、
請求項2に記載の空気圧工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気圧工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリンダを有する本体と、シリンダの内部にスライド可能に設けられたピストンと、ピストンに連結されたドライバとを備え、圧縮空気によりピストンを駆動することで被打込部材に釘を打ち込む釘打機が広く利用されている。
【0003】
圧縮空気を利用した釘打機は、ピストンの作動を制御するヘッドバルブと、ヘッドバルブを作動させるトリガバルブと、トリガバルブを作動させるトリガ機構と、本体の先端側に設けられたノーズ部から突出するコンタクトアームとを備えている。釘打機は、例えば、トリガレバーを引き操作された状態でコンタクトアームが被打込部材に押し付けられた場合に、ドライバにより被打込部材に釘を打ち出す打ち込み動作(以下、コンタクト打ちという)が可能となっている。
【0004】
コンタクト打ちでは、釘の打ち込み後、トリガを引いたままでコンタクトアームを被打込材へ押し付ける毎に連続的に釘の打込みが行えるので、素早い作業に向いている。これに対し、不用意な動作を規制するため、トリガが引かれた後、コンタクトアームが被打込材に押し付けられずに所定時間経過後すると、ヘッドバルブを非作動とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1等に開示される従来の釘打機では、以下のような問題があった。タイマー機構は、圧縮空気を用いた制御が一般的に採用されているが、その多くはシリンダの内部への圧縮空気の流入を制御するヘッドバルブの作動を制御する構造となっている。ヘッドバルブでは、チャンバに対して流入又は排気させる圧縮空気の流量が多くなるため、ヘッドバルブの作動を制御する切換バルブも大型化してしまうという問題があった。また、切換バルブの大型化に伴い、切換バルブの作動時の応答性も低下しまうという問題があった。
【0007】
そこで、本開示は、上記課題を解決するために、制御バルブの小型化及び応答性能の向上を図ることが可能な空気圧工具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る空気圧工具は、圧縮空気の空気圧によって駆動する駆動機構と、空気源から供給され、前記駆動機構を駆動する圧縮空気を溜めるメインチャンバと、前記メインチャンバから独立して空気源から供給される圧縮空気を溜める第1チャンバを有すると共に、前記第1チャンバの圧力変動に伴って作動し、前記メインチャンバから前記駆動機構への圧縮空気の供給を可能にするヘッドバルブと、前記第1チャンバの圧縮空気を排気させることで前記ヘッドバルブを作動させるトリガバルブと、前記トリガバルブの作動を無効にする制御バルブと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御バルブによりトリガバルブの作動を無効にすることで、ヘッドバルブの作動の制御することができるので、制御バルブの小型化を図ることができる。また、制御バルブの小型化により作動の応答性の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係る釘打機の側面断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るトリガバルブ及び第2制御バルブの側面断面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るスイッチバルブ及び第1制御バルブの側面断面図である。
【
図4】第1の実施の形態に係るタイマーバルブの側面断面図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す要部拡大図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す要部拡大図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す要部拡大図である。
【
図8A】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す図である。
【
図8B】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す要部拡大図である。
【
図9A】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す図である。
【
図9B】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す要部拡大図である。
【
図10】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す要部拡大図である。
【
図11】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作を示す要部拡大図である。
【
図12A】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時のトリガバルブの動作を示す図である。
【
図12B】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時のトリガバルブの動作を示す図である。
【
図12C】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時のトリガバルブの動作を示す図である。
【
図12D】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時のトリガバルブの動作を示す図である。
【
図12E】第1の実施の形態に係る釘打機における打ち込み動作時のトリガバルブの動作を示す図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る釘打機の側面断面図である。
【
図14】第2の実施の形態に係るトリガバルブ、スイッチバルブ及び制御バルブの側面断面図である。
【
図15A】第2の実施の形態に係るタイマーバルブの側面断面図である。
【
図15B】第2の実施の形態に係るタイマーバルブの第1区間及び第2区間を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<第1の実施の形態>
[釘打機100の構成例]
図1は、第1の実施の形態に係る釘打機100の側面断面図である。
図2は、第1の実施の形態に係るトリガバルブ50及び第2制御バルブ60の側面断面図である。
図3は、第1の実施の形態に係るスイッチバルブ70、第1制御バルブ40の側面断面図である。
図4は、第1の実施の形態に係るタイマーバルブ80の側面断面図である。
【0013】
釘打機100は、空気圧工具の一例であり、
図1に示すように、ノーズ部2を有する本体1、作業者が把持するグリップ部4及び被打込部材に打ち込む釘が装填されるマガジン部6を備えている。本体1及びグリップ部4の筐体は、例えばハウジング1aによって一体的に形成されている。また、釘打機100は、ヘッドバルブ30と、トリガ機構10と、トリガバルブ50と、第2制御バルブ60と、スイッチバルブ70と、第1制御バルブ40と、タイマーバルブ80とを備えている。
【0014】
なお、本実施の形態において、釘打機100のノーズ部2側を釘打機100の下側とし、その反対側を釘打機100の上側とする。また、釘打機100の本体1側を釘打機100の前側とし、釘打機100のグリップ部4側を釘打機100の後側とする。
【0015】
本体1の内部は中空であり、本体1の内部には圧縮空気の空気圧によって駆動する打撃機構(駆動機構)20が配置されている。打撃機構20は、ドライバ22と、ピストン24と、シリンダ26とを有している。ドライバ22は、シリンダ26の内部を上下方向(軸方向)に往復移動し、マガジン部6から送り出された釘の頭部に打撃を与えることで釘を被打込部材に打ち込む。ピストン24は、ドライバ22の上端部に連結され、シリンダ26の上方側に設けられたピストン上室24aに流入する圧縮空気に応じてシリンダ26内を往復移動する。シリンダ26は、円筒体であって、本体1を構成するハウジング1aの内部に配置され、ドライバ22及びピストン24を上下方向に往復可能に収容する。ピストン24とヘッドバルブ30との間には、ピストン24の上方側への移動を規制する環状の係止部25が設けられている。
【0016】
本体1の下端部には、ノーズ部2が設けられている。ノーズ部2は、本体1の下端部から下方側に所定の長さだけ突出している。ノーズ部2には、ドライバ22により送り出された釘を外部に打ち出す射出口3が形成されている。射出口3は、ドライバ22及びシリンダ26と同軸上に配置される。
【0017】
本体1の上部側の内壁とシリンダ26の上部側の外周部との間、及びグリップ部4の内部には、圧縮空気が供給及び充填されるメインチャンバ5が設けられている。本体1の下部側の内壁とシリンダ26の下部側の外周部との間には、ピストン24を上死点にリターンさせるためのブローバックチャンバ28が設けられている。ブローバックチャンバ28には、スイッチバルブ70に連通する第1接続路29の一端部が連通している。
【0018】
シリンダ26の軸方向の略中間位置であってシリンダ26の円周方向には、複数の小孔27が所定間隔を空けて形成されている。複数の小孔27は、シリンダ26に設けられた逆止弁27aを介してブローバックチャンバ28に連通している。なお、ピストン24が小孔27より下方側の下死点に位置する場合に、シリンダ26の圧縮空気がブローバックチャンバ28の内部に小孔27を介して流入する。また、ピストン24が上死点に位置する場合に、ブローバックチャンバ28の内部の圧縮空気は大気に放出されて、ブローバックチャンバ28内は大気圧となる。
【0019】
ヘッドバルブ30は、シリンダ26への圧縮空気の供給及び遮断を行い、メインチャンバ5から供給される圧縮空気を用いて打撃機構20を駆動する。ヘッドバルブ30は、基部32と、可動部34とを有している。基部32は本体1内の上端側に配置され、可動部34は基部32の下方側に配置されている。可動部34は、基部32と可動部34との間に介在された付勢バネ36によって、基部32とは所定の隙間を空けた状態でシリンダ26側に付勢されている。可動部34の下面は付勢状態(ヘッドバルブ30がオフ状態)において係止部25の上面に当接しており、メインチャンバ5とピストン上室24aとの間が遮断された構造となっている。
【0020】
基部32と可動部34との間の隙間は、メインチャンバ5の内部の圧縮空気が供給されるヘッドバルブチャンバ38として機能する。ヘッドバルブチャンバ38には第2接続路39の一端部が連通し、第2接続路39の他端側はトリガバルブ50に連通している。可動部34は、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気の状態に応じて、本体1を構成するハウジング1aの内壁に沿ってスライドし、ピストン上室24aとメインチャンバ5との間を開閉操作する。ピストン上室24aは、ハウジング1aに形成された開口部1bを介して外部に連通している。
【0021】
グリップ部4は、本体1の後方側の側部に本体1の延在方向(シリンダ26の軸方向)に対して略直交する方向に取り付けられている。グリップ部4の後端部には、エアプラグ8が設けられている。エアプラグ8には、図示しないエアホースの一端部が接続され、エアホースの他端部が図示しないコンプレッサに接続される。エアコンプレッサは、打撃機構20を駆動するための圧縮空気を生成し、エアホース及びエアプラグ8を経由して生成した圧縮空気をメインチャンバ5の内部に供給する。
【0022】
トリガ機構10は、トリガレバー11と、コンタクトレバー12と、コンタクトアーム14と、押圧部材15とを有している。トリガレバー11は、スイッチバルブ70をオン(作動)させるレバーであり、本体1の後方側の側面であってグリップ部4の下方側に軸部を支点として回動可能に取り付けられている。コンタクトレバー12は、トリガレバー11の内部に配置され、トリガレバー11に連動して前端側を支点に回動する。コンタクトレバー12の前端部は、後端側に設けられた例えば捻りバネによって下部側に付勢され、押圧部材15の上端面に当接する。なお、コンタクトレバー12においてバネによる付勢はなくてもよい。
【0023】
コンタクトアーム14は、ノーズ部2の下端部から下方側に突出した状態でノーズ部2の外周部に取り付けられている。コンタクトアーム14は、図示しないバネによって下方側に付勢され、被打込部材への押し付け動作に伴ってノーズ部2に対して相対的に上下方向に往復移動する。押圧部材15は、コンタクトアーム14に連結され、コンタクトアーム14の上方側への移動に伴って、コンタクトレバー12の前端側を押し上げる。これにより、トリガバルブ50のトリガバルブステム58が押し上げられ、トリガバルブ50が作動(オン)する。
【0024】
マガジン部6は、連結された一連の連結釘を装填可能に構成され、グリップ部4の下方側に設けられている。マガジン部6の前端側はノーズ部2に連結され、マガジン部6の後端側は取付アーム部7を介してグリップ部4に連結されている。マガジン部6に装填された連結釘は、ノーズ部2に対してスライド可能に設けられた送り爪によってノーズ部2の射出口3に案内され、下降するドライバ22によって衝撃が加えられることで被打込部材に打ち込まれる。
【0025】
トリガバルブ50は、
図1及び
図2に示すように、コンタクトアーム14の被打込部材への押し付け状態に基づいてヘッドバルブ30を作動させる。トリガバルブ50は、グリップ部4の前端側であって、スイッチバルブ70に隣接して配置されている。トリガバルブ50は、ハウジング52と、パイロットバルブ54と、キャップ56と、トリガバルブステム58とを有している。
【0026】
ハウジング52は、上下方向の略中間部に通路53を有している。通路53は、ヘッドバルブ30に連通する第2接続路39の一端部に連通している。また、通路53は、トリガバルブ50のオン時に排気路56aに連通可能となっている。
【0027】
パイロットバルブ54は、ハウジング52の内側に隙間S1を空けて配置されている。パイロットバルブ54の下部側の周縁部には、Oリング54a,54bが上下方向に所定間隔を空けて取り付けられている。Oリング54aは、トリガバルブ50の非作動時に、通路53と排気路56aとの間の通路を遮断し、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気が通路53から外部に漏れ出すことを防止する。また、Oリング54aはハウジング52の内壁に押し当てられており、パイロットバルブ54の上方側への移動が規制される。Oリング54bは、後述する空室55と排気路56aとの間を遮断する。
【0028】
キャップ56は、上方側のパイロットバルブ54との間に空室55を空けてハウジング52の内側に取り付けられている。空室55は、トリガバルブ50の非作動時にパイロットバルブ54とトリガバルブステム58との隙間S2及びパイロットバルブ54の通路54cを介してメインチャンバ5に連通し、圧縮空気が充填されるチャンバとして機能する。なお、本実施の形態において、トリガバルブ50の空室55における圧縮空気を溜める容積は、ヘッドバルブ30のヘッドバルブチャンバ38における圧縮空気を溜める容積よりも小さく構成される。そのため、トリガバルブ50の空室55に対する圧縮空気の流入及び流出量は、ヘッドバルブ30のヘッドバルブチャンバ38に対する圧縮空気の流入及び流出量よりも少ない。
【0029】
トリガバルブステム58は、パイロットバルブ54及びキャップ56の内側に配置され、キャップ56を起点として上下方向に移動可能に設けられている。トリガバルブステム58の上端側は、圧縮バネ57によってコンタクトレバー12側(下方側)に付勢されている。圧縮バネ57は、パイロットバルブ54とトリガバルブステム58との間に介在され、トリガバルブステム58の押圧に応じて伸縮する。トリガバルブステム58の下端部はキャップ56の下面から所定の長さだけ突出しており、コンタクトレバー12に当接可能である(
図1参照)。トリガバルブステム58の上下方向の略中間位置の周縁部には、Oリング58a,58bが上下方向に所定間隔を空けて取り付けられている。Oリング58a,58bは、トリガバルブ50の非作動時に、空室55の圧縮空気がトリガバルブステム58とキャップ56との隙間S3から外部に漏れ出すことを防止する。
【0030】
ハウジング52とキャップ56との間には、排気路56aが設けられている。排気路56aは、トリガバルブ50の作動時にトリガバルブステム58の押し上げにより空室55が閉じた場合に通路53に連通し、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気を大気中に排気する。
【0031】
第2制御バルブ60は、
図1及び
図2に示すように、トリガバルブ50の内部に組み込まれ、タイマーバルブ80の計時による規定時間の経過後におけるトリガバルブ50の作動を無効にする。第2制御バルブ60は、シリンダ61と、制御バルブステム62と、シール部材65とを有している。
【0032】
シリンダ61は、上下方向に延びる中空を有する円筒体であって、トリガバルブ50の後方側の下部であってトリガバルブステム58に隣接した位置に配置されている。シリンダ61の前壁の上下方向の略中間位置には、トリガバルブ50の空室55に連通する第1通路61aが形成されている。シリンダ61の後壁の上下方向の略中間位置には、排気路61dに連通する第2通路61bが形成されている。シリンダ61の後壁の下部には、第1制御バルブ40に連通する第4接続路69の一端部が連通している。シリンダ61の内壁には、後述するバネ64を支持するための支持部61cが設けられている。
【0033】
制御バルブステム62は、上下方向に延びる円柱体であって、シリンダ61の内部に上下方向にスライド可能である。制御バルブステム62の下部側に設けられた取付部62aには、その円周方向に沿って第4接続路69と第1通路61a及び第2通路61bとの間を遮断するOリング63が装着されている。制御バルブステム62は、バネ64によって下方側に付勢されている。バネ64は、取付部62aと支持部61cとの間に介在され、タイマーバルブ80から供給される圧縮空気に応じて伸縮する。バネ64には、例えば圧縮バネやコイルバネを用いることができる。制御バルブステム62は、シリンダ61内の底面と制御バルブステム62の下面との間に第4接続路69から圧縮空気が供給されると、バネ64の弾性力に抗してシリンダ61内の底面に対して上昇する。一方、制御バルブステム62は、シリンダ61内の底面と制御バルブステム62の下面との間の圧縮空気が第4接続路69を介して排気されると、シリンダ61内の上昇位置から降下して底面に当接する。
【0034】
シール部材65は、シリンダ61の内部であって、制御バルブステム62の上方側に配置されている。シール部材65は、取付部材67に一体的に取り付けられ、取付部材67とシリンダ61の内部の天面との間に介挿されたバネ66によって下方側に付勢されている。シール部材65は、制御バルブステム62の上昇に伴ってバネ66の弾性力に抗して押し上げられることで第1通路61aを開き、第1通路61aと第2通路61bとを連通させる。これにより、第1通路61a及び第2通路61bを介して、空室55と排気路61dとが連通する。また、シール部材65は、制御バルブステム62の下降に伴って押し下げられることで第1通路61aを閉じ、第1通路61aと第2通路61bとの間の経路を遮断する。
【0035】
スイッチバルブ70は、第1制御バルブ40と第2制御バルブ60との間に配置され、トリガレバー11の引き操作に基づいてタイマーバルブ80を作動させる。スイッチバルブ70は、シリンダ71と、スイッチバルブステム72と、押圧部材74と、ダイヤフラム75と、シール部材76とを有している。
【0036】
シリンダ71は、上下方向に延びる中空を有する円筒体であって、スイッチバルブステム72を上下方向にスライド可能に収容する。シリンダ71には、共通シリンダ81の前端側が嵌め込まれ、共通シリンダ81に形成された第3接続路49の一端部が接続される。シリンダ71の内部は、外部と連通しており、大気圧となっている。スイッチバルブ70を構成する共通シリンダ81の下面側には、タイマーバルブ80に連通する第6接続路89の一端部が連通している。スイッチバルブ70を構成する共通シリンダ81の上面側には、ブローバックチャンバ28に連通する第1接続路29の他端部が連通している。
【0037】
スイッチバルブステム72は、上下方向に延びる円柱体であって、シリンダ71の内部に上下移動可能に配置されている。スイッチバルブステム72は、スイッチバルブステム72の下端側とシリンダ71の下面との介挿された圧縮バネ73によってトリガレバー11側(下側)に向かって付勢されている。スイッチバルブステム72の下端部72aは、シリンダ71の下面から下方側に突出し、コンタクトレバー12(
図1参照)に当接可能に設けられる。スイッチバルブステム72は、トリガレバー11の引き操作時にコンタクトレバー12によって押し上げられ、圧縮バネ73の弾性力に抗してシリンダ71の内部を上昇する。
【0038】
押圧部材74は前後方向に延びる円柱体であって、その前端部は共通シリンダ81側からシリンダ71の内部に突出可能に設けられる。シリンダ71の内部を臨む押圧部材74は、スイッチバルブステム72の押し上げによりスイッチバルブステム72の上端部72bに衝突し、後方側に押圧される。つまり、押圧部材74では、スイッチバルブステム72の上下方向の動作が前後方向の動作に変換される。押圧部材74の後端側は、固定部材74aによって係止され、押圧部材74がシリンダ71側に脱落しないようになっている。
【0039】
ダイヤフラム75は、例えばゴム等の樹脂材料からなる弾性変形可能な薄膜であり、スイッチバルブステム72側の大気圧領域とシール部材76側の圧縮空気領域とを分離する。ダイヤフラム75は、押圧部材74の後端側に取り付けられ、押圧部材74の動作に連動してシリンダ71の内部を前後方向に移動する。ダイヤフラム75の周縁部は、固定部材74a,74bによって挟持された状態で取り付けられている。
【0040】
シール部材76は、例えばゴム等の樹脂材料からなり、取付部材77に一体的に取り付けられている。取付部材77は、取付部材77の後端側と共通支持部48との間に介挿されたバネ78によって前方側に付勢されている。被シール部材79は、前後方向に移動するシール部材76に当接可能に設けられ、シール部材76の前方側への移動を規制する。
【0041】
シール部材76は、押圧部材74の押圧時に、バネ78の弾性力に抗して後方側に移動し、メインチャンバ5に連通する共通通路CPとタイマーバルブ80に連通する第6接続路89との間を遮断する一方で、タイマーバルブ80に連通する第6接続路89と大気圧のブローバックチャンバ28に連通する第1接続路29とを連通する。一方、シール部材76は、押圧部材74の非押圧時に、メインチャンバ5に連通する共通通路CPとタイマーバルブ80に連通する第6接続路89とを接続する一方で、タイマーバルブ80に連通する第6接続路89と大気圧のブローバックチャンバ28に連通する第1接続路29との間を遮断する。
【0042】
共通シリンダ81の内部であって、スイッチバルブ70のシール部材76と第1制御バルブ40のシール部材44との間には、空室SPが設けられている。空室SPは、メインチャンバ5に連通する共通通路CPの一端部に連通している。空室SPは、共通通路CP、第4接続路69、第6接続路89のそれぞれに連通可能である。
【0043】
第1制御バルブ40は、
図1及び
図3に示すように、タイマーバルブ80によって作動し、第2制御バルブ60を作動させる圧縮空気の供給を制御する。本実施の形態において第1制御バルブ40は、スイッチバルブ70及びタイマーバルブ80と共通する共通シリンダ81の内部に配置される。第1制御バルブ40は、押圧部材42と、ダイヤフラム43と、シール部材44とを有している。第1制御バルブ40の押圧部材42等の各部品は、スイッチバルブ70の押圧部材74等の各部品とは共通する構成であると共にそれぞれ対称位置に配置される。
【0044】
第1制御バルブ40を構成する共通シリンダ81の下面側には、第2制御バルブ60に連通する第4接続路69の他端部が連通している。スイッチバルブ70を構成する共通シリンダ81の上面側には、スイッチバルブ70のシリンダ71の内部に連通する第3接続路49の他端部が連通している。
【0045】
押圧部材42は、前後方向に延びる略円柱体であって、後述するタイマーバルブ80によって後端面を押圧されることで前方側に移動する。押圧部材42の前端側は固定部材41aによって係止されており、押圧部材42がタイマーバルブ80側に脱落しないようになっている。
【0046】
ダイヤフラム43は、例えばゴム等の樹脂材料からなる弾性変形可能な薄膜で構成される。ダイヤフラム43は、押圧部材42の先端側に取り付けられ、押圧部材42の動作に連動して共通シリンダ81内を前後方向に移動する。ダイヤフラム43の周縁部は、固定部材41a,41bによって挟持された状態で取り付けられている。
【0047】
シール部材44は、例えばゴム等の樹脂材料からなり、取付部材45に取り付けられている。取付部材45は、取付部材45の前端側と共通支持部48との間に介挿されたバネ46によって前方側に付勢されている。被シール部材47は、前後方向に移動するシール部材44に対して当接可能に設けられ、シール部材44の後方側への移動を規制する。
【0048】
シール部材44は、押圧部材42の非押圧時に被シール部材47に当接し、メインチャンバ5に連通する共通通路CPと第2制御バルブ60に連通する第4接続路69とを接続する。一方、シール部材44は、押圧部材42の押圧時にバネ46の弾性力に抗して前方側に移動することで被シール部材47から離間し、第2制御バルブ60に連通する第4接続路69とスイッチバルブ70のシリンダ71の内部に連通する第3接続路49とを接続する。
【0049】
タイマーバルブ80は、
図1及び
図4に示すように、トリガレバー11が引き操作された状態で規定時間が経過する際に、第1制御バルブ40及び第2制御バルブ60等を作動させることで打ち込み動作を制限する。つまり、タイマーバルブ80は、トリガレバー11の操作に基づいて作動し、第1制御バルブ40及び第2制御バルブ60を所定のタイミングで作動させることでヘッドバルブ30の作動を無効にさせる。タイマーバルブ80は、共通シリンダ81と、第1タイマーピストン84と、第1ピストン軸部85と、第2タイマーピストン86と、第2ピストン軸部87とを有している。
【0050】
共通シリンダ81は、前後方向に延びる中空の円筒体であって、第1タイマーピストン84及び第2タイマーピストン86を前後方向にスライド可能に収容する。共通シリンダ81の内部は、仕切部81aを介して2つの第1室82と第2室83とに仕切られる。第1室82は密閉された閉空間で構成され、第1室82の内部には大気が充填されている。これにより、第1室82内に他の空間から圧縮空気やゴミ等が流入できないようになっている。
【0051】
第1タイマーピストン84は、共通シリンダ81の内径と略同一の径を有する円筒体であって、共通シリンダ81の内部を前後方向にスライドする。第1タイマーピストン84は、圧縮バネ99によって第1制御バルブ40側(前方側)に付勢されている。圧縮バネ99は、第1タイマーピストン84の基端側に形成された凹部と第1室82の内部の後壁との間に介挿され、共通シリンダ81に対して流入又は流出する圧縮空気に応じて伸縮する。第1タイマーピストン84の周縁部には、その円周方向に沿って凹部84aが形成されている。凹部84aには、共通シリンダ81の内壁との間を密閉するOリング88aが装着されている。これにより、第1室82は、Oリング88aよりも後方側の第1空間82aと、Oリング88aよりも前方側の第2空間82bとにさらに仕切られる。
【0052】
Oリング88aは、凹部84aの内部で前後方向に移動可能な状態、つまり遊びを有した状態で装着される。凹部84aには、Oリング88aが凹部84a内の前壁に密着した場合に、第2空間82bの大気を第1空間82aに流すためのバイパス通路84bが形成されている。
【0053】
本実施の形態では、第1タイマーピストン84が前進する場合、Oリング88aが凹部84a内の後方側に移動し、凹部84a内の後壁との間を密閉する。そのため、この場合に、第2空間82bから第1空間82aに凹部84aを経由して大気が流れることはない。一方、第1タイマーピストン84が後退する場合、Oリング88aが凹部84a内の前方側に移動し、凹部84aの前壁との間を密閉するが、バイパス通路84bは開いているので、凹部84aを経由して第1空間82aから第2空間82bに大気が流れる。このように、本実施の形態においてOリング88a、凹部84a及びバイパス通路84bは、逆止弁として機能する。
【0054】
第1タイマーピストン84の凹部84aには、第1タイマーピストン84の前後方向(厚み方向)に貫通する通路84cが形成され、通路84cを経由して第2空間82b側から第1空間82a側に大気の流入が可能となっている。通路84cには、絞り部84dが設けられている。絞り部84dは、通路84cの一部の経路の断面積を小さく(幅を狭く)することで構成され、第2空間82bから第1空間82aに流れる大気の単位時間当たりの流量を一定に制限する。これにより、第1タイマーピストン84における第1制御バルブ40を作動させるまでの移動速度を制御することができる。
【0055】
第1ピストン軸部85は棒状の円柱体であって、第1ピストン軸部85の後端部が第1タイマーピストン84の前端部に一体形成されている。第1ピストン軸部85は、仕切部81aに形成された貫通孔81bを貫通し、第1室82内から第2室83内に延出する。第1ピストン軸部85の前端面は第2タイマーピストン86の後端面に取り付けられており、第1タイマーピストン84の付勢力を第2タイマーピストン86に伝達可能となっている。仕切部81aにはOリング88bが設けられ、第1室82の内部の密閉状態を確保している。
【0056】
第2タイマーピストン86は、共通シリンダ81の内径と略同一の径を有する円筒体であって、第2室83内にスライド可能に配置されている。第2タイマーピストン86の周縁部には、その円周方向に沿って凹部86aが形成されている。凹部86aには、共通シリンダ81の内壁との間を密閉するOリング88cが装着されている。これにより、第2室83は、Oリング88cよりも後方側の第1空間83aと、Oリング88cよりも前方側の第2空間83bとにさらに仕切られる。
【0057】
第2空間83bにはスイッチバルブ70に連通する第6接続路89の一端部が連通しており、第2空間83b内への圧縮空気の供給又は第2空間83b内から圧縮空気の排気が可能となっている。
【0058】
第2ピストン軸部87は棒状の円柱体であって、第2ピストン軸部87の後端部が第2タイマーピストン86の前端部に一体的に取り付けられている。第2ピストン軸部87の前端側は、第2タイマーピストン86と第1制御バルブ40との間に形成された貫通孔81cにスライド可能に配置される。第2ピストン軸部87の前端部は、第1制御バルブ40の共通シリンダ81の内部に出没可能に設けられ、第1制御バルブ40を構成する押圧部材42の後端面を押圧することで第1制御バルブ40を作動させる。
【0059】
[釘打機100の動作例]
次に、第1の実施の形態に係る釘打機100の打ち込み動作の一例について説明する。
図5~
図11は、第1の実施の形態に係る釘打機100における打ち込み動作を示す図である。
図12A~
図12Eは、第1の実施の形態に係る釘打機100における打ち込み動作時のトリガバルブ50の動作の一例を示す図である。
【0060】
図1に示した釘打機100のエアプラグ8に図示しないエアホースが接続され、エアホース等を介してメインチャンバ5の内部に圧縮エアが供給されると、
図5に示すように、共通通路CPから空室SPの内部に圧縮空気が流入する。流入した圧縮空気は、第6接続路89を経由してタイマーバルブ80の第2室83の第2空間83bに供給される。これに伴い、第2タイマーピストン86の前面が圧縮空気により後方側に付勢され、第1タイマーピストン84等が圧縮バネ99の弾性力に抗して後退していく。つまり、タイマーバルブ80がタイマーセット中の状態となる。
【0061】
このとき、タイマーバルブ80の第1室82の第1空間82aの大気が圧縮され、圧縮された大気が第1空間82aから第2空間82bに向かって流れることで、Oリング88aが凹部84a内の前方側に移動する。これにより、第1タイマーピストン84の外周面と共通シリンダ81の内壁との間の隙間Sa、凹部84aの後壁とOリング88aとの間の隙間Sb、及びバイパス通路84bとが連通し、第1空間82aの大気が隙間Sa,Sb及びバイパス通路84bを経由して第2空間82bに流れる。なお、通路84cは絞り部84dの抵抗が高くなるため、大気はほぼ流れない。
【0062】
また、空室SPに流入した圧縮空気は、第4接続路69を経由して第2制御バルブ60のシリンダ61の内部に供給される。第2制御バルブ60の制御バルブステム62及びシール部材65は、シリンダ61の内部の底面と制御バルブステム62の下面との間に供給された圧縮空気により上昇し、第2制御バルブ60が作動する。これにより、第1通路61aが開き、第1通路61aと第2通路61bとが連通する。
【0063】
なお、
図2に示したように、トリガバルブ50の空室55には、通路54cを介してメインチャンバ5内の圧縮空気が供給される。また、ヘッドバルブチャンバ38には、隙間S1及び通路53を経由してメインチャンバ5内の圧縮空気が供給される。
【0064】
図6に示すように、タイマーバルブ80の第2室83への圧縮空気の供給が続くと、第1タイマーピストン84の後端面が第1室82の内部の後壁に当接する。これにより、第1タイマーピストン84が共通シリンダ81の内部の初期位置に到達し、タイマーバルブ80がスタンバイ状態となる。
【0065】
図7に示すように、作業者によりトリガレバー11が引き操作されると、コンタクトレバー12によりスイッチバルブ70のスイッチバルブステム72が押し上げられ、スイッチバルブ70が作動する。スイッチバルブステム72の押し上げにより押圧部材74が後方側に押圧され、押圧部材74によりシール部材76が後方側に移動する。これにより、第6接続路89が閉じて、共通通路CPと第6接続路89との連通状態を遮断する。一方、シール部材76の後方側への移動により、第6接続路89と第1接続路29とが連通する。これに伴い、タイマーバルブ80の第2室83の第2空間83bの圧縮空気が第6接続路89及び第1接続路29を経由して大気圧のブローバックチャンバ28へ排気される。タイマーバルブ80の内部の圧縮空気の排気に伴い、圧縮バネ99の付勢力により第1タイマーピストン84及び第2タイマーピストン86が第1制御バルブ40側に前進し、タイマーバルブ80による計時(タイマー)がスタートする。
【0066】
このとき、タイマーバルブ80の第1室82の第2空間82bの大気は、圧縮されることで絞り部84d及び通路84cを通過して第1空間82aに流れる。第1空間82aに流れる大気の流量は、絞り部84dにより一定に制限されるため、第1空間82aの内部に流れる大気の流量も減少する。そのため、第1タイマーピストン84は絞り部84dを通過する大気の流量と圧縮バネ99の付勢力とに基づいてゆっくり前進する。タイマーバルブ80の規定時間は計時中となる。
【0067】
なお、第1タイマーピストン84の凹部84aでは、第2空間82bから流入する大気によりOリング88aが凹部84aを後方側に移動し、Oリング88aと凹部84aの後壁との間の通路が閉じられる。そのため、第2空間82bの大気が、凹部84aを経由して第1空間82aに流れることはない。
【0068】
図8A及び
図8Bに示すように、トリガレバー11が引き操作された状態かつタイマーバルブ80の規定時間の経過前に、コンタクトアーム14が被打ち込み部材に押し当てられると、押圧部材15が押し上げられる。これに伴って、トリガレバー11の前端側が押し上げられると、さらにトリガレバー11によりトリガバルブ50のトリガバルブステム58が押し上げられ、トリガバルブ50が作動する。
【0069】
図12Cに示すように、トリガバルブステム58が押し上げられると、Oリング58a,58bも上方側に移動し、空室55の圧縮空気がトリガバルブステム58とシリンダ61の外壁面との隙間S3から第2制御バルブ60の第1通路61aを通過する。第1通路61aを通過した圧縮空気は、シリンダ61の内部を通過して第2通路61b及び排気路61dを経由して外部に排気される。
【0070】
これに伴い、
図8A及び
図12Dに示すように、パイロットバルブ54は、メインチャンバ5の内部の圧縮空気により圧縮バネ57の弾性力に抗して押し下げられ、パイロットバルブ54の下面がキャップ56の上面に当接する。これにより、通路53と排気路56aとが連通し、ヘッドバルブチャンバ38の圧縮空気が第2接続路39、トリガバルブ50の内部及び排気路56aを経由して大気中(外部)に排気される。
【0071】
ヘッドバルブチャンバ38の圧縮空気が排気されると、
図8Aに示すように、ヘッドバルブ30の可動部34がメインチャンバ5の内部の圧縮空気により押し上げられ、可動部34と係止部25との間が開放されることで、ピストン上室24aにメインチャンバ5から圧縮空気が流入し、ピストン24がシリンダ26の内部を急速に降下していく。
【0072】
図9Aに示すように、ピストン24がさらに降下すると、ピストン24に連結されたドライバ22により釘が被打込部材に打ち込まれる。また、ピストン24がシリンダ26の内部の下部側まで降下すると、シリンダ26の内部の圧縮空気が小孔27を介してブローバックチャンバ28の内部に流入する。流入した圧縮空気は、
図9Bに示すように、第1接続路29を経由して作動中のスイッチバルブ70の内部に流入し、さらに第6接続路89を経由してタイマーバルブ80の第2室83の第2空間83bに流入する。これにより、タイマーバルブ80の第1タイマーピストン84及び第1ピストン軸部85が共通シリンダ81の内部を再び後退していき、タイマーバルブ80がリセットされる。
【0073】
図10に示すように、
図7にしたトリガレバー11が引き操作された時点(タイマーバルブ80の作動時)から規定時間以内にコンタクトアーム14が被打込部材に押し付けられない場合、タイマーバルブ80の第2タイマーピストン86が規定時間の経過時に第1制御バルブ40を押圧可能な作動位置に移動し、さらに第2室83の前端部まで移動する。このとき、タイマーバルブ80の第2室83の圧縮空気は、第6接続路89、スイッチバルブ70の内部、及び第1接続路29を経由してブローバックチャンバ28の内部に排気される。
【0074】
第1制御バルブ40の押圧部材42は、第2ピストン軸部87により後方側から押圧される。押圧部材42は、共通シリンダ81の内部を前進することで取付部材45を介してシール部材44を押圧し、シール部材44を前方側に移動させる。シール部材44が前方側に移動すると、第4接続路69と共通通路CPとの連通状態が遮断される一方で、第4接続路69と第3接続路49とが連通する。これに伴い、
図12Bに示す状態において、第2制御バルブ60の制御バルブステム62の下面とシリンダ61の内部の底面との間の圧縮空気は、第4接続路69、第1制御バルブ40の内部及び第3接続路49を経由してブローバックチャンバ28から外部に排気される。これにより、
図12Aに示すように、第2制御バルブ60の制御バルブステム62及びシール部材65が降下することで第1通路61aがシール部材65により閉じられ、第1通路61aと第2通路61bとの連通が遮断される。
【0075】
図11に示すように、
図7に示したトリガレバー11が引き操作された状態でタイマーバルブ80の規定時間が経過した後に、コンタクトアーム14が被打ち込み部材に押し当てられると、これに連動して押圧部材15が押し上げられる。これに伴って、コンタクトレバー12の前端側が押し上げられると、トリガバルブ50のトリガバルブステム58が押し上げられ、トリガバルブ50が作動する。
図12Eに示すように、トリガバルブステム58が押し上げられると、Oリング58a,58bも上方側に移動するが、第2制御バルブ60の第1通路61aはシール部材65により閉じられているので、空室55の圧縮空気は外部に排気されずにそのまま残る。つまり、空室55の圧縮空気の充填状態が維持される。また、空室55と排気路56aとは、Oリング54aにより遮蔽される。したがって、ヘッドバルブチャンバ38の内部の圧縮空気は、排気路56aを介して外部に排気されることはない。そのため、作業者がトリガレバー11を引き操作した状態で、コンタクトアーム14を被打込部材に押し付けた場合でも、ヘッドバルブ30が作動せず、打ち込み動作は実行されない。
【0076】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、トリガバルブ50の空室55に対する圧縮空気の充填又は排気を第2制御バルブ60により制御する。これにより、トリガバルブ50の空室55の容積はヘッドバルブ30のヘッドバルブチャンバ38の容積よりも小さく、ヘッドバルブ30のヘッドバルブチャンバ38よりもトリガバルブ50の空室55の方が流入及び流出させる圧縮空気の流量も少ないため、第2制御バルブ60の小型化を図ることができる。その結果、第2制御バルブ60の小型化により釘打機100の小型化を図ることができる。さらに、第2制御バルブ60の小型化により第2制御バルブ60の作動の応答性の向上を図ることもできる。
【0077】
<第2の実施の形態>
上記特許文献1等に開示される従来の釘打機のタイマー機構の構造では、一定の抵抗を付与することでタイマーバルブの移動速度を一定に保持し、予め設定された規制時間経過に切換バルブを作動させるように構成される場合がある。そのため、切換バルブを作動させる段階で、タイマーバルブの荷重(押圧力)が不足してしまい、安定した状態で切換バルブを制御することができないという問題があった。そこで、上記課題を解決するために、第2の実施の形態に係る釘打機200の構成を採用する。
【0078】
第2の実施の形態に係るタイマーバルブ280では、上記第1の実施の形態のタイマーバルブ80とは異なる構成を採用している。同様に、第2の実施の形態に係るスイッチバルブ270及び制御バルブ240についても、上記第1の実施の形態のスイッチバルブ70及び第2制御バルブ60等とは異なる構成を採用している。なお、その他の釘打機200の構成、機能及び動作は、第1の実施の形態の釘打機100の構成等を共通するため、詳細な説明については省略する。また、第2の実施の形態のトリガバルブ50は、内部に制御バルブを配置しない以外は第1の実施の形態のトリガバルブ50と構成等が略共通しているため、詳細な説明は省略する。
【0079】
[釘打機200の構成例]
図13は、第2の実施の形態に係る釘打機200の側面断面図である。
図14は、第2の実施の形態に係るトリガバルブ50、スイッチバルブ270及び制御バルブ240の側面断面図である。
図15Aは第2の実施の形態に係るタイマーバルブ280の側面断面図であり、
図15Bは第1区間R1及び第2区間R2を説明するための図である。
【0080】
釘打機200は、
図13等に示すように、シリンダ26の内部をスライド可能なピストン24と、ピストン24に取り付けられて被打込部材に釘を打ち込むドライバ22とを有する打撃機構20と、打撃機構20を駆動するための圧縮空気が供給されるヘッドバルブチャンバ38と、ヘッドバルブチャンバ38に供給された圧縮空気を用いて打撃機構20を駆動するヘッドバルブ30と、ヘッドバルブ30を作動させるトリガバルブ50と、トリガバルブ50の作動に伴って作動するヘッドバルブ30の作動を無効にする制御バルブ240と、制御バルブ240を作動させることで所定時間経過後にヘッドバルブ30の作動を無効にさせるタイマーバルブ280と、トリガレバー11の操作に基づいてタイマーバルブ280を作動させるスイッチバルブ270とを備えている。
【0081】
スイッチバルブ270は、
図13及び
図14に示すように、トリガバルブ50の後方側に隣接して配置され、トリガレバー11の操作に基づいてタイマーバルブ280を作動させる。スイッチバルブ270は、シリンダ272と、スイッチバルブステム274とを有している。
【0082】
シリンダ272は、上下方向に延びる中空を有する円筒体であって、スイッチバルブステム274を上下方向にスライド可能に収容する。シリンダ272の上部側には、通路272aが形成されている。通路272aは、メインチャンバ5に連通し、通路272aを介してシリンダ272の内部にメインチャンバ5の内部の圧縮空気を流入させる。
【0083】
シリンダ272の上下方向の略中間位置には第5接続路59の一端部が連通し、第5接続路59の他端部がタイマーバルブ280に連通している。第5接続路59は、スイッチバルブ270とタイマーバルブ280とを接続し、第5接続路59を介してタイマーバルブ280に対して圧縮空気の供給又は排気が可能となっている。シリンダ272の第5接続路59よりも下方側には第1接続路29の一端部が連通し、第1接続路29の他端部がブローバックチャンバ28に連通している。第1接続路29は、スイッチバルブ270とブローバックチャンバ28との間を接続し、第1接続路29を介してスイッチバルブ270に圧縮空気の供給又はスイッチバルブ270からの圧縮空気の排気が可能となっている。
【0084】
スイッチバルブステム274は、シリンダ272の内部に収容され、圧縮バネ276によってトリガレバー11側(下側)に向かって付勢されている。圧縮バネ276は、スイッチバルブステム274の上端面とシリンダ272内の天面との間に介在され、トリガレバー11の引き操作に応じて伸縮する。スイッチバルブステム274の下端部はシリンダ272の下面から下方側に突出しており、トリガレバー11の引き操作時にその下端部がコンタクトレバー12に当接する。
【0085】
スイッチバルブステム274の上下方向の略中間位置の周縁部には、シリンダ272の内壁との間の密着を図るOリング274aが装着されている。スイッチバルブステム274は、トリガレバー11の非引き操作時に、Oリング274aにより第5接続路59と第1接続路29との間の経路を閉じると共に通路272aと第5接続路59とを連通する。一方、スイッチバルブステム274は、トリガレバー11の引き操作時に、コンタクトレバー12によって圧縮バネ276の弾性力に抗して押し上げられ、Oリング274aにより通路272aと第5接続路59との間の経路を閉じると共に、第5接続路59と第1接続路29とを連通する。
【0086】
制御バルブ240は、
図13及び
図14に示すように、タイマーバルブ280の制御によってヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50との間の経路を連通又は遮断する。制御バルブ240は、タイマーバルブ280の前方側に隣接する位置であって、ヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50との間に配置されている。制御バルブ240は、シリンダ242と、制御バルブステム244とを有している。なお、シリンダ242の一部は、ハウジング1aの一部を共有した構造となっている。
【0087】
シリンダ242は、前後方向に延びる中空を有する円筒体であって、制御バルブステム244を前後方向にスライド可能に収容する。シリンダ242の上面側には、ヘッドバルブチャンバ38に連通する第2接続路39の一端部が連通している。シリンダ242の下面側には、トリガバルブ50に連通する第3接続路49の一端部が連通すると共に、メインチャンバ5に連通する通路242cが形成されている。
【0088】
制御バルブステム244は、前後方向に延びる円柱体であって、シリンダ242の内部に配置されている。制御バルブステム244は、圧縮バネ246によってタイマーバルブ280(後方側)に付勢されている。圧縮バネ246は、シリンダ242の内部の前壁と制御バルブステム244の前端面との間に介在され、タイマーバルブ280による押圧に応じて伸縮する。制御バルブステム244の前後方向の略中間位置の周縁部には、シリンダ242の内壁との密着を図るためのOリング244a,244bが前後方向に所定間隔を空けて装着されている。
【0089】
制御バルブステム244は、タイマーバルブ280の非押圧時、つまりタイムアウト前に、シリンダ242の内部の後端側に位置し、Oリング244bによって第2接続路39と通路242cとの間の経路を閉じる一方で第2接続路39と第3接続路49との間の経路を開く。これにより、ヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50とが接続される。これに対し、制御バルブステム244は、タイマーバルブ280の押圧時、つまりタイムアウト後に、シリンダ242の内部の前端側に移動し、第2接続路39と通路242cとの間の経路を開く一方でOリング244aによって第2接続路39と第3接続路49との間の経路を閉じる。これにより、ヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50との間が遮断される。
【0090】
タイマーバルブ280は、
図13、
図15A及び
図15Bに示すように、トリガレバー11が引き操作された状態でかつ予め設定された規定時間が経過した後にコンタクトアーム14が被打込部材に押し付けられた場合に、制御バルブ240を作動させることで打ち込み動作を無効にする。
【0091】
タイマーバルブ280は、シリンダ290と、第1タイマーピストン284と、第1ピストン軸部285と、第2タイマーピストン294と、第2ピストン軸部295とを有している。
【0092】
シリンダ290は、前後方向に延びる中空を有する円筒体であって、第1タイマーピストン284及び第2タイマーピストン294を前後方向にスライド可能に収容する。シリンダ290の内部は、仕切部290aを介して収容部の一例である第1室281と第2室291とに仕切られる。第1室281は、密閉された閉空間(閉回路)で構成され、他の空間である第2室291及びメインチャンバ5等とは互いに遮断されている。第1室281の内部には、タイマーバルブ280を作動させる際に用いる大気(空気)が予め充填されている。これにより、第1室281の内部に他の空間からゴミや油等の不純物が流入することを防止できるようになっている。
【0093】
第1タイマーピストン284は、シリンダ290の内径と略同一の径を有する円筒体であって、シリンダ290の内壁に沿ってスライドする。第1タイマーピストン284は、圧縮バネ289によって制御バルブ240側(前方側)に付勢されている。圧縮バネ289は、第1タイマーピストン284の基端側に形成された凹部と第1室281の内部の後壁との間に介在され、第1タイマーピストン284の前進又は後退に応じて伸縮する。第1タイマーピストン284は、タイマーバルブ280による計時が所定時間経過する際に制御バルブ240を押圧する作動位置に移動可能である。
【0094】
第1タイマーピストン284の周縁部には、その円周方向に沿って凹部284aが形成されている。凹部284aには、シリンダ290の内壁との間を密閉するOリング286が装着されている。これにより、第1室281は、Oリング286よりも後方側の第1空間281aと、Oリング286よりも前方側の第2空間281bとにさらに仕切られる。第1空間281aと第2空間281bとは、Oリング286により互いに遮蔽される。
【0095】
シリンダ290の内部の下部側には、前後方向に延びる第1通路282a及び第2通路282bが上下に並んで設けられている。第1通路282aの前端部は第2空間281bに連通し、第1通路282aの後端部は第1空間281aに連通している。第2通路282bの前端部は第2空間281bに連通し、第2通路282bの後端部は第1空間281aに連通している。
【0096】
第1通路282aの経路途中には、逆止弁287が設けられている。逆止弁287は、例えば、第1通路282aを開閉するボール287aと、ボール287aを後方側に付勢するバネ287bとを有している。第1タイマーピストン284が第1室281の内部を後退する場合には、第1空間281aから第1通路282aに流入する大気によりボール287aがバネ287bの弾性力に抗して前方側に移動することで第1通路282aが開き、第1室281の第1空間281aの大気が第2空間281bに流入する。第1タイマーピストン284が第1室281の内部を前進する場合には、第2空間281bから第1通路282aに流入する大気及びバネ287bがボール287aに作用し、ボール287aにより第1通路282aが閉じられるため、シリンダ290の第2空間281bの大気が第1通路282aを介して第1空間281aに流入(逆流)することはない。
【0097】
第2通路282bの経路途中には、圧縮生成部の一例である絞り部288が設けられている。絞り部288は、第2通路282bの一部の経路の断面積を小さく(幅を狭く)することで構成される。絞り部288は、第2空間281bから第2通路282bに流入する大気の単位時間当たりの流量を一定に制限することで、第1タイマーピストン284等を移動させるための圧縮空気を生成する。これにより、第2ピストン軸部295が制御バルブ240の制御バルブステム244を押圧するまでの移動速度を制御することができる。また、第1タイマーピストン284が第1室281の内部の初期位置から制御バルブ240を作動させる作動位置まで移動する際の規定時間は、タイマーバルブ280の絞り部288を通過する流量及び圧縮バネ289のバネ係数等によって決定される。本実施の形態において規定時間は、例えば3秒~10秒であるが、これらに限定されることはない。また、本実施の形態では、制御バルブ240が作動位置からヘッドバルブチャンバ38とトリガバルブ50との間の通路を遮断する位置まで移動する時間は、規定時間よりも大幅に短い時間に設定される。そのため、規定時間が経過すると、その直後にヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間の通路が制御バルブ240により遮断される。
【0098】
図15Aに示すように、第2通路282bの略中間位置と第1タイマーピストン284が収容される位置のシリンダ290との間には、シリンダ290を構成する隔壁290eを厚み方向(上下方向)に貫通するバイパス通路282cが形成されている。バイパス通路282cは、シリンダ290の第2空間281bから第1空間281aに大気を流す第2通路282bとは別の異なる通路である。
【0099】
第1タイマーピストン284の移動範囲は、
図15Bに示すように、トリガレバー11の引き操作時から制御バルブ240を作動させるまで規定時間を計時するための第1区間R1と、制御バルブ240を押圧するための第2区間R2とを含む。本実施の形態では、シリンダ290を移動する第1タイマーピストン284の後端部284eを基準としたとき、第1区間R1は、第1タイマーピストン284の初期位置と、バイパス通路282cの後縁との間の区間である。また、第2区間R2は、バイパス通路282cの後縁と制御バルブ240を押圧する作動位置との間の区間である。
【0100】
本実施の形態では、第2区間R2における第1タイマーピストン284に対する抵抗(第2抵抗)は、第1区間R1における第1タイマーピストン284に対する抵抗(第1抵抗)よりも小さくなるように構成される。具体的には、第1区間R1では、第2空間281bから第1空間281aまでの大気が通過する通路が第2通路282bの絞り部288となる。第2区間R2では、第2空間281bから第1空間281aまでの大気が通過する通路が絞り部288よりも断面積が大きくかつ流動抵抗が小さいバイパス通路282cとなる。
【0101】
図15Aに戻り、第1ピストン軸部285は棒状の円柱体であって、第1ピストン軸部285の後端部が第1タイマーピストン284の前端部に取り付けられている。第1ピストン軸部285は仕切部290aに形成された貫通孔290bに挿通され、その前端側が第1室281の内部から第2室291の内部に延出する。第1ピストン軸部285の前端部は第2タイマーピストン294の後端部に取り付けられており、第1タイマーピストン284の押圧力を第2タイマーピストン294に伝達可能となっている。仕切部290aにはOリング290cが取り付けられ、第1室281の密閉状態を確保している。
【0102】
第2タイマーピストン294は、シリンダ290の内径と略同一の径を有する円筒体であって、第1ピストン軸部285による押圧に応じて第2室291の内部を前進又は後退する。第2タイマーピストン294の周縁部には、その円周方向に沿って凹部294aが形成されている。凹部294aには、シリンダ290の内壁との間を密閉するためのOリング296が装着されている。これにより、第2室291は、Oリング296よりも後方側の第1空間291aと、Oリング296よりも前方側の第2空間291bとにさらに仕切られる。
【0103】
第1空間291aには、ハウジング1aの外部に連通する通路290fが形成されている。第2空間291bにはスイッチバルブ270に連通する第5接続路59の一端部が接続されており、第5接続路59を介してタイマーバルブ280への圧縮空気の供給又はタイマーバルブ280から圧縮空気の排気が可能となっている。
【0104】
第2ピストン軸部295は棒状の円柱体であって、第2ピストン軸部295の後端部が第2タイマーピストン294の前端部に取り付けられている。第2ピストン軸部295は、第2タイマーピストン294と制御バルブ240との間に形成された貫通孔290dの内部を前後方向に移動可能である。第2ピストン軸部295の前端部は、制御バルブ240のシリンダ242の内部に出没可能に設けられ、制御バルブ240を構成する制御バルブステム244の後端面を押圧することで制御バルブ240を作動させる。
【0105】
本実施の形態において、タイマーバルブ280は、
図13及び
図15Aに示すように、第1タイマーピストン284及び第2タイマーピストン294の移動方向がシリンダ26の軸方向(ドライバ22の移動方向)とは異なる向き、本実施の形態では直交する方向となるように、グリップ部4の内部に配置されている。また、タイマーバルブ280は、第1タイマーピストン284及び第2タイマーピストン294の移動方向がグリップ部4の延在方向に沿った方向、すなわちグリップ部4の延在方向と平行となるように、グリップ部4の内部に配置されている。
【0106】
[釘打機200の動作例]
次に、第2の実施の形態に係る釘打機200の打ち込み動作の一例について
図13~
図15等を参照して説明する。
【0107】
図13に示した釘打機200のエアプラグ8にエアホースが接続されると、メインチャンバ5の内部に圧縮空気が供給される。メインチャンバ5の内部に供給された圧縮空気は、スイッチバルブ270の内部及び第5接続路59を経由してタイマーバルブ280の第2空間291bに供給される。
【0108】
これに伴い、第2タイマーピストン294が圧縮空気により後方側に付勢されることで、第1タイマーピストン284がシリンダ290の内部の初期位置まで後退する。
【0109】
続けて、作業者によりトリガレバー11が引き操作されると、コンタクトレバー12によりスイッチバルブ270のスイッチバルブステム274が押し上げられ、スイッチバルブ270が作動する。これにより、タイマーバルブ280内の圧縮空気が、第5接続路59、スイッチバルブ270の内部及び第1接続路29を経由して、大気圧のブローバックチャンバ28に排気される。
【0110】
シリンダ290の第2空間291bの圧縮空気が排気されると、第1タイマーピストン284は、圧縮バネ289の付勢により前進する。
図15A及び
図15Bに示すように、第1タイマーピストン284の後端部284eが第1区間R1を通過する場合、第2空間281bから第2通路282bに流入する大気は、第2通路282bの絞り部288を通過して第1空間281aに流入する。第1空間281aに供給される大気の流量は、絞り部288により一定に制限される。これにより、第1タイマーピストン284は、シリンダ290の内部の初期位置からゆっくり前進してき、タイマーバルブ280の計時(タイマー)がスタートする。タイマーバルブ280は、第2区間R2に到達するまで設定された規定時間の計時を行う。
【0111】
続けて、第1タイマーピストン284の後端部が第2区間R2のバイパス通路282cを通過し始めると、バイパス通路282cの連通先が第2空間281bから第1空間281aに切り替わる。本実施の形態では、バイパス通路282cの断面積が絞り部288の断面積よりも大きく設計されており、バイパス通路282cの流動抵抗の方が絞り部288の流動抵抗よりも小さくなっている。そのため、第2空間281bから流入する大気は、第2通路282bの絞り部288ではなく、バイパス通路282cを通過し、第1空間281aに流入する。この場合、第2空間281bから第1空間281aに流入する大気の流量は、第1区間R1よりも第2区間R2の方が多くなる。したがって、第1タイマーピストン284の移動速度についても第1区間R1よりも第2区間R2の方が上昇する。
【0112】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、第1タイマーピストン284が移動する際の負荷を制御バルブ240の作動直前の第2区間R2で軽減することで、第1タイマーピストン284等の移動速度を速くすることができ、第2ピストン軸部295により制御バルブステム244を強い荷重で押すことができる。これにより、制御バルブ240を確実かつ高精度に作動させることができる。また、第2の実施の形態によれば、第1タイマーピストン284を収容する第1室281を閉空間で構成するので、第1区間R1では一定の抵抗を第1タイマーピストン284に対して常時付与できる。これにより、第1タイマーピストン284の移動速度の一定に維持することができ、計時の安定化を図ることができる。
【0113】
また、タイマーバルブ280の第1タイマーピストン284の移動方向が、打撃機構20の移動方向とは直交する方向となるように、タイマーバルブ280をグリップ部4の内部に配置するので、タイマーバルブ280が打撃機構20の打ち込み動作時に発生する衝撃を受けてしまうことを防止できる。これにより、タイマーバルブ280の誤作動を防止でき、タイマーバルブ280の動作の安定化を図ることができる。
【0114】
なお、第2の実施の形態において、第2区間R2における第1タイマーピストン284に対する抵抗を、第1区間R1における第1タイマーピストン284に対する抵抗よりも小さくする手段としては、通路の面積を変化させることに限定されない。例えば、絞り部288よりも断面積が大きい複数のバイパス通路282cを設けるようにしても良い。
【0115】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。具体的には、上記実施の形態では、空気圧工具の一例として、釘打機100,200について説明したが、これに限定されることはない。例えば、空気圧工具として、ネジ締め工具やネジ打ち工具等についても本発明を適用することができる。
【0116】
また、上記第2の実施の形態では、制御バルブ240をヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間に配置した例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、制御バルブ240をトリガバルブ50の内部に配置することもできる。また、上記第2の実施の形態では、ヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間の通路を制御バルブ240により遮断する構造としたが、これに限定されることはない。例えば、制御バルブ240によりヘッドバルブ30の作動を機械的に無効にする構造を採用することもできる。また、上記第2の実施の形態では、制御バルブ240の移動範囲を第1区間R1と第2区間R2とに分けたが、これに限定されることはない。例えば、タイマーバルブ280により最初の段階から制御バルブ240を押圧した状態で作動させ、所定時間の経過時にヘッドバルブ30とトリガバルブ50との間の通路を完全に遮断する構成を採用することもできる。さらに、上記第1及び第2の実施の形態では、第2制御バルブ60及び制御バルブ240を押圧して作動させる構成としたが、これに限定されることはなく、第2制御バルブ60及び制御バルブ240を引くことで作動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 本体
4 グリップ部
5 メインチャンバ
11 トリガレバー(トリガ)
20 打撃機構(駆動機構)
22 ドライバ
24 ピストン
26 シリンダ
28 ブローバックチャンバ
30 ヘッドバルブ
38 ヘッドバルブチャンバ(第1チャンバ)
40 第1制御バルブ
50 トリガバルブ
60 第2制御バルブ
55 空室(第2チャンバ)
80 タイマーバルブ
84 第1タイマーピストン
85 第1ピストン軸部
88 絞り部
100,200 釘打機(空気圧工具)
280 タイマーバルブ
282c バイパス通路
284 第1タイマーピストン(弁体)
285 第1ピストン軸部(弁体)
R1 第1区間
R2 第2区間