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特開2023-143643革シボを有する樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143643
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】革シボを有する樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20230928BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20230928BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230928BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20230928BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/165
B33Y10/00
B33Y50/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167058
(22)【出願日】2022-10-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2022050728
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512209689
【氏名又は名称】SOLIZE株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 崚汰
(72)【発明者】
【氏名】務台 光平
(72)【発明者】
【氏名】川村 一
(72)【発明者】
【氏名】池野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 和雄
(72)【発明者】
【氏名】西本 悟
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA29
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL03
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】3D造形を用い、革シボを有する樹脂成形品を製造する製造方法において、革シボの再現性を向上する。
【解決手段】革シボを有する樹脂成形品の製造方法は、3D造形装置に造形データを入力し、革シボの元となる中間シボを有する中間品を造形する3D造形ステップと、3D造形ステップで造形された中間品に後処理を施すことで完成品としての樹脂成形品を得る後処理ステップと、を備える。そして、3D造形ステップで入力する造形データである入力データにおけるシボ高さは、3D造形ステップにおける積層ピッチの120%以上である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
革シボを有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記製造方法は、
3D造形装置に造形データを入力し、前記革シボの元となる中間シボを有する中間品を造形する3D造形ステップと、
前記3D造形ステップで造形された前記中間品に後処理を施すことで完成品としての前記樹脂成形品を得る後処理ステップと、を備え、
前記3D造形ステップで入力する前記造形データである入力データにおけるシボ高さは、前記3D造形ステップにおける積層ピッチの120%以上である、
製造方法。
【請求項2】
前記入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの200%以上である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
完成品である前記樹脂成形品が有する前記革シボのシボ高さは、積層ピッチの70%以上130%以下であり、
前記入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの300%以下である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
完成品である前記樹脂成形品が有する前記革シボのシボ高さは、積層ピッチの70%以上130%以下であり、
前記入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの200%以上300%以下である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記製造方法は、
前記入力データを作成するデータ作成ステップを更に備え、
前記データ作成ステップでは、現物データをシボ高さ方向で伸長することで入力データを作成する、
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記3D造形装置は、MJF方式の3D造形装置である、
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、革シボを有する樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
革シボ形状の造形に関する方法として、インクジェットによる方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-104988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、3D造形を用いて革シボ形状を製造することが求められている。
本発明が解決しようとする課題は、3D造形を用い、革シボを有する樹脂成形品を製造する製造方法において、革シボの再現性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様に係る製造方法は、
革シボを有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記製造方法は、
3D造形装置に造形データを入力し、前記革シボの元となる中間シボを有する中間品を造形する3D造形ステップと、
前記3D造形ステップで造形された前記中間品に後処理を施すことで完成品としての前記樹脂成形品を得る後処理ステップと、を備え、
前記3D造形ステップで入力する前記造形データである入力データにおけるシボ高さは、前記3D造形ステップにおける積層ピッチの120%以上である、
製造方法である。
【0006】
3D造形装置の造形精度の問題があるため、入力データにおけるシボ形状(シボ高さを含む)と3D造形による造形物(中間品)におけるシボ形状とは、当然一致せず、再現性が問題となる。発明者は、MJF方式の3D造形を用いた造形方法での革シボの再現性向上を阻害する要因として次の点に着目した。すなわち、中間品の形状は、3D造形の積層ピッチに影響をうけ、積層ピッチが大きいとその分精度が下がる。そのため、製造しようとする樹脂成形品の形状が革シボのように細かい形状である場合、その形状を精度よく再現できない。
そこで、本態様では、3D造形ステップで3D造形装置に入力する造形データ(入力データ)におけるシボ高さは、3D造形ステップにおける積層ピッチの120%以上である。これにより、入力データにおけるシボ高さが積層ピッチの120%未満である場合と比較して、中間シボに革シボの形状を精度よく再現でき、その結果、完成品における革シボの再現性を向上することができる。
【0007】
第2の態様に係る製造方法は、第1の態様において、
前記入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの200%以上である。
【0008】
本態様では、入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの200%以上である。このため、中間シボに革シボの形状をより一層精度よく再現でき、その結果、完成品における革シボの再現性をより一層向上することができる。
【0009】
第3の態様に係る製造方法は、第1の態様において、
完成品である前記樹脂成形品が有する前記革シボのシボ高さは、積層ピッチの70%以上130%以下であり、
前記入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの300%以下である。
【0010】
本態様では、完成品である樹脂成形品が有する革シボのシボ高さは、積層ピッチの70%以上130%以下である。ここで、入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの300%以下であるので、後処理ステップを容易にすることができる。
【0011】
第4の態様に係る製造方法は、第1の態様において、
完成品である前記樹脂成形品が有する前記革シボのシボ高さは、積層ピッチの70%以上130%以下であり、
前記入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの200%以上300%以下である。
【0012】
本態様では、入力データにおけるシボ高さは、積層ピッチの200%以上300%以下である。このため、中間シボに革シボの形状をより一層精度よく再現でき、その結果、完成品における革シボの再現性をより一層向上することができる。また、後処理ステップを容易にすることができる。
【0013】
第5の態様に係る製造方法は、第1~第4の何れかの態様において、
前記製造方法は、
前記入力データを作成するデータ作成ステップを更に備え、
前記データ作成ステップでは、現物データをシボ高さ方向で伸長することで入力データを作成する。
【0014】
本態様では、データ作成ステップで、現物データをシボ高さ方向で伸長することで入力データを作成する。このため、現物データにおけるシボ高さが低い場合であっても、中間品にシボの形状を強調して反映させることができ、その結果、完成品における革シボの再現性をより一層向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、3D造形を用い、革シボを有する樹脂成形品を製造する製造方法において、革シボの再現性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】3D造形装置における積層方向、キャリッジ移動方向及びローラ移動方向の関係を示す図である。
図2】造形方向について説明するための図である。
図3】造形方向が水平である場合において、積層ピッチとシボ高さが再現性に与える影響を説明する図である。
図4】造形方向が垂直である場合において、積層ピッチとシボ高さが再現性に与える影響を説明する図である。
図5】造形方向が垂直直交である場合と垂直平行である場合との再現性の違いを説明する図である。
図6】シボ高さの測定方法の一例を説明する図である。
図7】タイプ1の現物を示す写真である。
図8】タイプ2の現物を示す写真である。
図9】タイプ3の現物を示す写真である。
図10】現物のシボ形状と3D造形による中間品のシボ形状との比較図の一例である。
図11】現物のシボ形状と3D造形による中間品のシボ形状との比較図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る、革シボを有する樹脂成形品の製造方法(以下、単に「製造方法」という。)について説明する。
【0018】
本実施形態に係る製造方法は、概ね、次の手順を踏む。
(1)革シボを有する現物をスキャンして、現物データを作成する。
(2)現物データのシボ高さを測定する。
(3)現物データを処理し、シボ高さを変更したデータ(入力データ)を作成する。
(4)入力データを3D造形装置に入力し、中間シボを有する中間品を造形する。
(5)造形された中間品に後処理(表面除去処理など)を施し、完成品を得る。
【0019】
次に、各ステップについて詳細に説明する。
【0020】
(1:現物データの作成)
このステップでは、革シボを有する現物をスキャンして、現物データを作成する。
現物とは、本発明の造形方法により再現しようとする革シボを有する物である。革シボとは、革の表面にある立体的なシワ模様又はこれに似せたシワ模様を意味する。現物の例を図7図9に示す。
【0021】
(2:現物データのシボ高さの測定)
このステップでは、現物データのシボ高さを測定する。
シボ高さとは、シボの山の高さを意味し、具体的には、シボの山の頂点と底面との高低差を意味する。シボ高さの測定方法は、特に限定されないが、例えば次の方法である。
すなわち、図6に示すように、複数(図では3箇所)の測定位置での高さ分布を取得し、それぞれの測定位置における最大高低差の平均をシボ高さとする。
【0022】
(3:入力データの作成)
このステップでは、現物データを、シボ高さ方向で伸長することで、データが有するシボのシボ高さを所定の入力シボ高さにまで大きくする。
入力シボ高さは、シボ形状の再現性の観点から、3D造形における積層ピッチの120%以上である。但し、200%以上であることがより好ましく、200%以上300%以下であることが更に好ましい。
入力シボ高さは、例えば、90μm以上330μm以下である。
【0023】
(4:中間品の造形)
このステップでは、入力データを3D造形装置に入力し、中間シボを有する中間品を造形する。
【0024】
3D造形装置は、一例として、MJF方式の3D造形装置である。
MJF方式とは、マルチジェットフュージョン(multi jet fusion)方式の略称であり、概ね次のような方式である。
(a)粉末材料を薄い層状に配置する。
(b)層状に配置された粉末材料のうち、造形に必要な部分にインクを噴き付ける。
(c)融解エネルギーを加えることで、インクが噴き付けられた部分を硬化させる。
(d)上記(a)~(c)を繰り返す。
【0025】
3D造形は、所定の造形方向で行う。
造形方向とは、3D装置の構成に対し、どのような姿勢のシボを造形するかを表す概念である。造形方向は、特に限定されないが、例えば、図2に示す水平表、水平裏、垂直直交、垂直平行、45度表、45度裏が挙げられる。なお、図1に示す+Z方向は積層方向、Y方向はローラ移動方向、X方向はキャリッジ移動方向である。ローラは、粉末材料を薄い層状に配置するため構成であり、キャリッジは、インクを吹き付けるための構成である。
図2に示すように、
・水平表とは、シボ高さ方向が積層方向を向く造形方向をいう。
・水平裏とは、シボ高さ方向が積層方向とは反対方向を向く造形方向をいう。
・垂直直交とは、シボ高さ方向がキャリッジ移動方向を向く造形方向をいう。
・垂直平行とは、シボ高さ方向がローラ移動方向を向く造形方向をいう。
・45度表とは、シボ高さ方向が積層方向に対し45度の方向を向く造形方向をいう。
・45度裏とは、シボ高さ方向が積層方向に対し135度の方向を向く造形方向をいう。
【0026】
3D造形装置は、特に限定されないが、例えばMJF5200(HP.Inc社製)を用いる。
3D造形における積層ピッチは、3D造形装置の性能と設定により定まり、特に限定されないが、例えば60~100μmである。
【0027】
粉末材料は、特に限定されないが、例えばPA12を用いる。
粉末材料の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば積層ピッチの50%以上80%以下であり、例えば40~60μmである。
【0028】
(5:後処理)
後処理ステップでは、造形された中間品に後処理を施し、完成品を得る。後処理として何を行うかについては、特に限定されないが、例えば化学研磨等を行う。後処理を経ることで、完成品の樹脂成形品のシボ高さは中間品のシボ高さよりも低くなる場合がある。完成品の樹脂成形品のシボ高さは、例えば80~120μmである。
【0029】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0030】
本実施形態では、3D造形ステップで3D造形装置に入力する造形データ(入力データ)におけるシボ高さは、3D造形ステップにおける積層ピッチの120%以上(より好ましくは200%以上)である。
これにより、入力データにおけるシボ高さが積層ピッチの120%未満である場合と比較して、中間シボに革シボの形状を精度よく再現でき、その結果、完成品における革シボの再現性を向上することができる。
【0031】
図3は、造形方向が水平(水平表又は水平裏)である場合において、積層ピッチとシボ高さが再現性に与える影響を説明する図である。
図3(a)は積層ピッチが小さい場合、図3(b)は積層ピッチが大きい場合を示す。これらの図から判るように、積層ピッチが小さいとシボの再現性は高いが、積層ピッチが大きいと再現性は低くなる。ここで、図3(c)に示すように、シボ高さを拡大することで、再現したいシボの形状を造形物に反映しやすくできる。その結果、積層ピッチの大きさの再現性への悪影響を低減することができる。
【0032】
図4は、造形方向が垂直(垂直直交又は垂直平行)である場合において、積層ピッチとシボ高さが再現性に与える影響を説明する図である。
図4(a)は積層ピッチが小さい場合、図4(b)は積層ピッチが大きい場合を示す。これらの図から判るように、積層ピッチが小さいとシボの再現性は高いが、積層ピッチが大きいと再現性は低くなる。ここで、図4(c)に示すように、シボ高さを拡大することで、再現したいシボの形状を造形物に反映しやすくできる。その結果、積層ピッチの大きさの再現性への悪影響を低減することができる。
【0033】
図5は、造形方向が垂直直交である場合と垂直平行である場合との再現性の違いを説明する図である。
キャリッジは移動しながらインクを塗布するので、インクの塗布タイミングに誤差が生じると、キャリッジ移動方向で塗布エリアに誤差が生じる。
ここで、造形方向が垂直平行の場合、インクの塗布エリアに誤差が生じると、シボの谷が埋まるように塗布されてしまう。そのため、塗布エリアの誤差がシボの再現性に大きく影響する。これに対し、造形方向が垂直直交の場合、シボ高さ方向がキャリッジの動き方向と同じ方向になる。そのため、インクの塗布エリアに誤差が生じたとしても、その誤差がシボの再現性に与える影響が少ない。
【0034】
ところで、仮に、中間シボのシボ高さが低い場合(例えば完成品である樹脂成形品が有する革シボのシボ高さに対して110%未満である場合)、後処理ステップにより完成品である樹脂成形品が有する革シボのシボ高さを実現することが困難になる。
そこで、中間シボのシボ高さは、完成品である樹脂成形品が有する革シボのシボ高さの110%以上であることが好ましい。
【実施例0035】
次に、本発明の製造方法について実施例を用いて説明する。
【0036】
粉末材料、3D造形装置(設定含む)は、次のようにした。
粉末材料:PA12(平均粒径は50μmである。)
装置:MJF5200(モード:advance)(積層ピッチは80μmである。)
【0037】
現物については、タイプの異なる3種類の現物(タイプ1~タイプ3、図7図9参照)を用いた。
入力データについては、シボ高さを100μm、200μm、300μmとする3パターンとした。
造形方向については、水平表、水平裏、垂直直交、垂直平行、45度表、45度裏の6パターンとした。
つまり、合計54パターン(3×3×6)で実施した。なお、各パターンについて入力データを作り直して複数回実施し、結果としてはその平均とした。
【0038】
例として、タイプ1、200μm、45度裏の結果を図10に示し、タイプ2、200μm、垂直平行の結果を図11に示す。各図のパターンにつき、入力データを作り直して6回実施した結果を示している。
また、全ての結果を纏めたものを表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1における「シボ高さ」は、3D造形により得られた中間品におけるシボ高さである。
表1における「再現性」は、現物のシボ形状を再現できているかという観点から評価したものである。A,B,Cいずれも使用に耐えられる再現性であるが、CよりBが好ましく、BよりAが更に好ましいことを意味する。
【0041】
表1から判るように、再現性に関し、100μm、200μm、300μmの何れのパターンでも使用に耐えられるものが得られた。但し、100μmよりも200μm、300μmの方が好ましい結果となったものが多く、更にこのうち200μmの方が更に好ましい結果となったものが多かった。また、造形方向を垂直平行にした実施例は、垂直直交にした実施例よりも、再現性が良い結果となったものが多かった。
【0042】
シボ高さに関し、入力シボ高さが100μmの例では充分な中間シボのシボ高さ(概ね100μm以上)となっていないものが散見されるのに対し、入力シボ高さが200μm、300μmの例ではいずれのパターンでも充分な高さが得られた。なお、後処理ステップを経た完成品のシボ高さは、概ね80~120μmとすることが好ましいので、中間品のシボ高さに必要な高さは、上述のとおり概ね100μmとなる。
【0043】
以上、本発明に係る製造方法を実施例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0044】
(変形例の説明)
なお、上記では、3D造形装置として、MJF方式の3D造形装置を用いる方法を説明したが、本開示はこれに限定されない。3D造形装置としては、例えば、以下の方式の3D造形装置を用いることができる。

・SLS(Selective Laser Sintering)方式
・バインダージェッティング(Binder jetting)方式
・SLA(Stereo Lithography Apparatus)方式
【0045】
SLS方式は、概ね次のような方式である。
(a)粉末材料を薄い層状に配置する。
(b)層状に配置された粉末材料のうち、造形に必要な部分にレーザーを照射し、溶融エネルギーを加え硬化させる。
(c)上記(a)~(b)を繰り返す。
【0046】
バインダージェッティング方式は、概ね次のような方式である。
(a)粉末材料を薄い層状に配置する。
(b)層状に配置された粉末材料のうち、造形に必要な部分に結合剤を噴きつけ、硬化させる。
(c)上記(a)~(b)を繰り返す。
【0047】
SLA方式は、概ね次のような方式である。
(a)液体材料を満たしたプールの中に、造形物が作られるプラットフォームを浸ける。
(b)プラットフォームの位置を液面から薄い層状高さ分だけ下げた位置に配置する。
(c)レーザーを液面に造形に必要な部分だけ照射させ、硬化させる。
(d)プラットフォームの位置を(c)の位置から薄い層状高さ分だけ下げ、液体を下げた高さに配置する。
(e)上記(c)~(d)を繰り返す。
【0048】
MJF方式、SLS方式、バインダージェッティング方式及びSLA方式は、いずれも、樹脂材料を用いた3D造形方式であり、また、一層ずつ造形を行うものであって積層ピッチ(一層当たりの厚みをいう。)という概念を有する。なお、各方式の3D造形における積層ピッチは、3D造形装置の性能と設定により定まり、特に限定されないが、例えば60~100μmである。このため、上記いずれの方式においても、本発明の方法が有効である。例えば、上記のいずれの方式においても、入力データにおけるシボ高さを積層ピッチの120%以上(好ましくは200%以上、更に好ましくは200%以上300%以下)とすることで、革シボの再現性を向上することができる。
【0049】
特に、MJF方式及びSLS方式は、共に、樹脂粉末床溶融結合方式である。樹脂粉末床溶融結合方式とは、樹脂の粉末材料を用いた粉末床溶融方式を意味する。MJF方式では、粉末材料を硬化させるためにインク及び溶融エネルギーを用いるのに対し、SLS方式では、粉末材料を硬化させるためにレーザーを用いる点で相違するが、この相違は本発明の効果に対する影響は小さいと考えられる。よって、MJF方式により実施した実施例の結果は、SLS方式にも特に妥当する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11