(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143644
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】CO2固定化システム及びCO2固定化方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/16 20060101AFI20230928BHJP
B28C 5/42 20060101ALI20230928BHJP
B09B 3/38 20220101ALI20230928BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B28C7/16
B28C5/42
B09B3/38 ZAB
B09B5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168605
(22)【出願日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022048366
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】坂根 英之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢三
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
(72)【発明者】
【氏名】丹 秀男
(72)【発明者】
【氏名】坂井 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】亀井 良至
(72)【発明者】
【氏名】高村 尚
(72)【発明者】
【氏名】小野 かよこ
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 昭治
(72)【発明者】
【氏名】リン ブーンケン
(72)【発明者】
【氏名】田中 真弓
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐麻
(72)【発明者】
【氏名】閑田 徹志
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
【テーマコード(参考)】
4D004
4G056
【Fターム(参考)】
4D004AA33
4D004CA10
4D004CA13
4D004CA15
4D004CB01
4D004CB46
4D004CC03
4D004CC20
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA20
4G056AA06
4G056CD47
4G056CE05
(57)【要約】
【課題】CO
2の排出量を削減すると共に、未使用の生コンを適切に処理できるCO
2固定化システム及びCO
2固定化方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るCO
2固定化システム1は、未使用の生コンCに水Wを注入する水注入手段3と、水注入手段3によって水Wが注入された未使用の生コンCを生コン車2から受けて生コンCから骨材C1を分離する振動篩5と、振動篩5の下方に位置するタンク6と、タンク6の内部に設けられ、振動篩5から落下した生コンCを撹拌して生コンCをスラリー状に改質する撹拌機7と、タンク6から延び出す配管8と、配管8を介してタンク6からスラリー状の生コンCを受け入れる原水槽を有し、スラリー状の生コンCを固液分離する濁水処理設備10とを備える。濁水処理設備10は、原水槽に受け入れられた生コンCに炭酸ガスを供給して生コンCに炭酸ガスを固定化させる炭酸ガス供給装置を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コン車の内部に収容された未使用の生コンに水を注入する水注入手段と、
前記水注入手段によって水が注入された前記未使用の生コンを前記生コン車から受けて前記生コンから骨材を分離する振動篩と、
前記振動篩の下方に位置するタンクと、
前記タンクの内部に設けられ、前記振動篩から落下した前記生コンを撹拌して前記生コンをスラリー状に改質する撹拌機と、
前記タンクから延び出す配管と、
前記配管を介して前記タンクからスラリー状の前記生コンを受け入れる原水槽を有し、スラリー状の前記生コンを固液分離する濁水処理設備と、
を備え、
前記濁水処理設備は、
前記原水槽に受け入れられた前記生コンに炭酸ガスを供給して前記生コンに前記炭酸ガスを固定化させる炭酸ガス供給装置を有する、
CO2固定化システム。
【請求項2】
前記生コンに固定化された前記炭酸ガスの量を測定する測定部を有する、
請求項1に記載のCO2固定化システム。
【請求項3】
前記生コン車の内部に収容された未使用の生コンに凝結遅延剤を添加する凝結遅延剤添加手段を備える、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項4】
複数の前記振動篩、及び複数の前記タンクを備え、
複数の前記振動篩は、前記生コン車から生コンを受け入れる第1振動篩と、前記第1振動篩から落下した生コンを受け入れる第2振動篩とを含んでおり、
複数の前記タンクは、前記第1振動篩の下方に位置する第1タンクと、前記第2振動篩の下方に位置する第2タンクとを含んでおり、
前記第1タンクから前記第2振動篩の上方まで延びる移送管と、
前記移送管に設けられており、前記第1タンクから前記第2振動篩に生コンを搬送するポンプと、を備え、
前記配管は、前記第2タンクから延び出している、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項5】
前記濁水処理設備は、前記原水槽から延びると共に密閉された管路を有し、
前記炭酸ガス供給装置は、前記管路を通る生コンに炭酸ガスを供給する、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項6】
前記管路に設けられており、前記管路を通る前記生コン及び炭酸ガスを撹拌する撹拌装置を備える、
請求項5に記載のCO2固定化システム。
【請求項7】
前記生コン車から投入された生コンから粗骨材を分離するスクリューコンベアを備える、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項8】
前記炭酸ガス供給装置は、DAC装置、前記生コン車、及び、現場に配置された機械設備、の少なくともいずれかから排出された炭酸ガスを前記生コンに供給する、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項9】
前記原水槽に受け入れられる前記生コンのpHが13以下である、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項10】
前記濁水処理設備は、前記炭酸ガス供給装置によって炭酸ガスが供給された生コンを凝集する凝集槽を有し、
前記凝集槽に凝集された凝集物が載せられるポーラスコンクリートを備え、
前記凝集物は、前記ポーラスコンクリートの上において乾燥される、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項11】
前記水注入手段は、前記生コン車の内部に収容された生コンの量の5倍以上の水を注入する、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項12】
前記水注入手段、前記振動篩、前記タンク、前記撹拌機、前記配管、及び前記濁水処理設備が現場に設けられており、
前記濁水処理設備が既設の濁水処理設備である、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項13】
前記炭酸ガス供給装置は、前記原水槽からの前記生コンを受け入れる受容槽と、前記受容槽から延在しており前記生コンが通る経路部と、前記経路部を通る前記生コンに微細気泡としての前記炭酸ガスを供給する微細気泡供給部と、を有する、
請求項1又は2に記載のCO2固定化システム。
【請求項14】
前記経路部の一端及び他端は前記受容槽に接続されており、
前記生コンは、前記経路部及び前記受容槽を循環し、
前記微細気泡供給部は、前記経路部の一端から出て前記経路部の他端に向かう前記生コンに前記微細気泡を供給する、
請求項13に記載のCO2固定化システム。
【請求項15】
前記受容槽が受け入れる前記生コンにおけるセメントと水の比が1:Xである(但しXは2以上の実数である)、
請求項13に記載のCO2固定化システム。
【請求項16】
前記受容槽に設けられており、前記微細気泡が供給された前記生コンを撹拌する撹拌部材を備える、
請求項14に記載のCO2固定化システム。
【請求項17】
生コン車の内部に収容された未使用の生コンに水を注入する工程と、
前記水が注入された前記未使用の生コンを振動篩が受けて、前記振動篩が前記生コンから骨材を分離する工程と、
前記振動篩から落下した前記生コンをタンクの内部において撹拌して前記生コンをスラリー状に改質する工程と、
前記タンクからスラリー状の前記生コンを濁水処理設備の原水槽に移送する工程と、
前記原水槽に受け入れられた前記生コンに炭酸ガスを供給して前記生コンに前記炭酸ガスを固定化する工程と、
を備える、
CO2固定化方法。
【請求項18】
前記炭酸ガスを固定化する工程は、
前記原水槽からの前記生コンを受容槽に受け入れる工程と、
前記受容槽から延在する経路部に前記生コンを通す工程と、
前記経路部を通る前記生コンに微細気泡供給部が微細気泡としての前記炭酸ガスを供給する工程と、を備える、
請求項17に記載のCO2固定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、未使用の生コンに炭酸ガスを固定化するCO2固定化システム及びCO2固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9-123156号公報には、未使用生コンクリートの再利用方法が記載されている。この再利用方法では、アジテータ車から未使用の生コンクリートが分離装置に供給される。分離装置は、供給された生コンクリートをふるい分けする供給部と、ふるい分けされた生コンクリートを排出する排出部とを有する。供給部には、グルコン酸等の凝結遅延剤を0.05~0.5%含有する水溶液を生コンクリートに噴射する2つの噴射ノズルが設けられる。
【0003】
供給部のふるい目の下部、及び排出部のふるい目の下部には、ホッパーが設けられる。供給部のふるい目の下部に位置するホッパーは、セメントと凝結遅延剤を含む細骨材含有スラッジ水を捕集する。排出部のふるい目の下部に位置するホッパーは、寸法20~40mmの粗骨材を捕集する。寸法20~40mmの粗骨材は、積み上げ保存され、再度原料骨材として用いられる。
【0004】
細骨材含有スラッジ水は、スクリュー型分級機、振動ふるい型分級機又はトロンメル分級機に供給され、細骨材が分離される。細骨材が分離されたセメントスラッジ水はスラッジ水タンクに貯留され、翌日以降、輸送管によりバッチャープラントに輸送される。バッチャープラントに輸送されたセメントスラッジ水は、フレッシュコンクリートの原料として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、セメントを製造するときには大量のCO2(炭酸ガス)が排出されることがあり、当該セメントを使ってコンクリート構造物が構築されるとCO2の排出量が増大するという問題が起こりうる。また、未使用の生コンが減っていないという現状がある。よって、CO2を削減すると共に未使用の生コンを適切に処理することが求められる。
【0007】
本開示は、CO2の排出量を削減すると共に、未使用の生コンを適切に処理できるCO2固定化システム及びCO2固定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るCO2固定化システムは、(1)生コン車の内部に収容された未使用の生コンに水を注入する水注入手段と、水注入手段によって水が注入された未使用の生コンを生コン車から受けて生コンから骨材を分離する振動篩と、振動篩の下方に位置するタンクと、タンクの内部に設けられ、振動篩から落下した生コンを撹拌して生コンをスラリー状に改質する撹拌機と、タンクから延び出す配管と、配管を介してタンクからスラリー状の生コンを受け入れる原水槽を有し、スラリー状の生コンを固液分離する濁水処理設備と、を備える。濁水処理設備は、原水槽に受け入れられた生コンに炭酸ガスを供給して生コンに炭酸ガスを固定化させる炭酸ガス供給装置を有する。
【0009】
このCO2固定化システムでは、生コン車の内部に収容された未使用の生コンに水が注入される。水の注入によって生コンのアルカリ度を低減させることができる。振動篩は、生コン車から生コンを受け入れて生コンから骨材を分離する。振動篩の下方にはタンクが設けられ、タンクの内部には振動篩から落下した生コンをスラリー状に改質する撹拌機が設けられる。タンクからは配管が延び出しており、スラリー状の生コンは当該配管を介して濁水処理設備に供給されて固液分離される。従って、未使用の生コンを濁水処理設備によって適切に処理することができる。また、濁水処理設備は、生コンに炭酸ガスを供給して生コンに炭酸ガスを固定化させる炭酸ガス供給装置を備える。例えば、現場で排出される炭酸ガスを炭酸ガス供給装置が生コンに供給して生コンに炭酸ガスを固定化させることにより、生コンを適切に処理できると共に現場からのCO2の排出量を削減することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、CO2固定化システムは、生コンに固定化された炭酸ガスの量を測定する測定部を有してもよい。この場合、生コンに固定化された炭酸ガスの量が測定部によって測定されるので、削減されたCO2の量を測定部によって測定することができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、CO2固定化システムは、生コン車の内部に収容された未使用の生コンに凝結遅延剤を添加する凝結遅延剤添加手段を備えてもよい。この場合、未使用の生コンに凝結遅延剤が添加されるので、生コンを炭酸ガスと反応しやすくすることができる。従って、CO2の排出量をより削減することができる。
【0012】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、CO2固定化システムは、複数の振動篩、及び複数のタンクを備えてもよい。複数の振動篩は、生コン車から生コンを受け入れる第1振動篩と、第1振動篩から落下した生コンを受け入れる第2振動篩とを含んでおり、複数のタンクは、第1振動篩の下方に位置する第1タンクと、第2振動篩の下方に位置する第2タンクとを含んでいてもよい。CO2固定化システムは、第1タンクから第2振動篩の上方まで延びる移送管と、移送管に設けられており、第1タンクから第2振動篩に生コンを搬送するポンプと、を備えてもよく、配管は、第2タンクから延び出していてもよい。この場合、複数の振動篩、及び複数のタンクが設けられることにより、生コンから粗骨材及び細骨材を分離させることができる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、濁水処理設備は、原水槽から延びると共に密閉された管路を有し、炭酸ガス供給装置は、管路を通る生コンに炭酸ガスを供給してもよい。この場合、密閉された管路を通る生コンに炭酸ガスが供給されるので、管路からの炭酸ガスの漏れを抑制すると共に、生コンに対する炭酸ガスの固定をより効率よく行うことができる。従って、現場からのCO2の排出量を一層削減することが可能となる。
【0014】
(6)上記(5)において、CO2固定化システムは、管路に設けられており、管路を通る生コン及び炭酸ガスを撹拌する撹拌装置を備えてもよい。この場合、密閉された管路の中で生コンと炭酸ガスとが撹拌されるので、生コンへの炭酸ガスの固定化を一層促進させることができる。従って、CO2の排出量の更なる削減に寄与する。
【0015】
(7)上記(1)~(6)のいずれかにおいて、CO2固定化システムは、生コン車から投入された生コンから粗骨材を分離するスクリューコンベアを備えてもよい。この場合、スクリューコンベアによって生コンから粗骨材を分離することができる。
【0016】
(8)上記(1)~(7)のいずれかにおいて、炭酸ガス供給装置は、DAC装置、生コン車、及び、現場に配置された機械設備、の少なくともいずれかから排出された炭酸ガスを生コンに供給してもよい。この場合、DAC装置、生コン車、及び、現場に配置された機械設備から排出された炭酸ガスを生コンへのCO2の固定化のために有効利用することができる。
【0017】
(9)上記(1)~(8)のいずれかにおいて、原水槽に受け入れられる生コンのpHが13以下であってもよい。この場合、生コンのpHが13以下であることにより、生コンへの炭酸ガスの反応を一層促進できる。従って、炭酸ガスの固定化を促進して、現場からのCO2の排出量をより確実に低減させることができる。
【0018】
(10)上記(1)~(9)のいずれかにおいて、濁水処理設備は、炭酸ガス供給装置によって炭酸ガスが供給された生コンを凝集する凝集槽を有してもよい。CO2固定化システムは、凝集槽に凝集された凝集物が載せられるポーラスコンクリートを備えてもよく、凝集物は、ポーラスコンクリートの上において乾燥されてもよい。この場合、ポーラスコンクリートに凝集物が載せられることにより、凝集物から水分を除去し、凝集物を効率よく乾燥させることができる。
【0019】
(11)上記(1)~(10)のいずれかにおいて、水注入手段は、生コン車の内部に収容された生コンの量の5倍以上の水を注入してもよい。この場合、大量の水の注入によって生コンのpHをより下げることができるので、生コンに対する炭酸ガスの反応をより促進させることができる。従って、炭酸ガスの固定化をより促進して、現場からのCO2の排出量を一層確実に低減させることができる。
【0020】
(12)上記(1)~(11)のいずれかにおいて、水注入手段、振動篩、タンク、撹拌機、配管、及び濁水処理設備が現場に設けられていてもよく、濁水処理設備が既設の濁水処理設備であってもよい。この場合、現場で生コンに対する炭酸ガスの固定化を行うことができると共に、既設の濁水処理設備を炭酸ガスの固定化のために有効利用することができる。
【0021】
(13)上記(1)~(12)のいずれかにおいて、炭酸ガス供給装置は、原水槽からの生コンを受け入れる受容槽と、受容槽から延在しており生コンが通る経路部と、経路部を通る生コンに微細気泡としての炭酸ガスを供給する微細気泡供給部と、を有してもよい。この場合、濁水処理設備において、受容槽は原水槽からの生コンを受け入れる。受容槽が受け入れた生コンは、受容槽から延在する経路部を通る。炭酸ガス供給装置は微細気泡供給部を有し、微細気泡供給部は経路部を通る生コンに微細気泡としての炭酸ガスを供給する。生コンに微細気泡としての炭酸ガスが供給されることにより、生コンと炭酸ガスとの反応効率を一層高めることができる。よって、生コンに対する炭酸ガスの固定率をより高めることができる。
【0022】
(14)上記(13)において、経路部の一端及び他端は受容槽に接続されていてもよく、生コンは、経路部及び受容槽を循環し、微細気泡供給部は、経路部の一端から出て経路部の他端に向かう生コンに微細気泡を供給してもよい。この場合、生コンは経路部及び受容槽を循環し、循環する生コンに微細気泡としての炭酸ガスが供給される。よって、生コンに対する微細気泡としての炭酸ガスの供給を複数回行うことができるので、生コンに対する炭酸ガスの固定率を更に高めることができる。
【0023】
(15)上記(13)又は(14)において、受容槽が受け入れる生コンにおけるセメントと水の比が1:Xであってもよい(但しXは2以上の実数である)。この場合、セメントに対する水の倍率がX以上であることにより、経路部における生コンの搬送をスムーズに行うことができる。
【0024】
(16)上記(14)において、CO2固定化システムは、受容槽に設けられており、微細気泡が供給された生コンを撹拌する撹拌部材を備えてもよい。この場合、微細気泡が供給された生コンが撹拌部材によって撹拌されるので、生コンに対する炭酸ガスの固定化を一層促進させることができる。従って、生コンに対する炭酸ガスの固定率を更に高めることができる。
【0025】
本開示に係るCO2固定化方法は、(17)生コン車の内部に収容された未使用の生コンに水を注入する工程と、水が注入された未使用の生コンを振動篩が受けて、振動篩が生コンから骨材を分離する工程と、振動篩から落下した生コンをタンクの内部において撹拌して生コンをスラリー状に改質する工程と、タンクからスラリー状の生コンを濁水処理設備の原水槽に移送する工程と、原水槽に受け入れられた生コンに炭酸ガスを供給して生コンに炭酸ガスを固定化する工程と、を備える。
【0026】
このCO2固定化方法では、生コン車の内部に収容された未使用の生コンに水が注入されるので、水の注入によって生コンのアルカリ度を低減させることができる。生コン車からは未使用の生コンが振動篩に受け入れられ、振動篩は生コンから骨材を分離する。振動篩からは骨材以外の生コンが落下し、落下した生コンは撹拌機によってスラリー状に改質される。そして、スラリー状に改質された生コンは濁水処理設備に移送され、濁水処理設備の原水槽に受け入れられた生コンは炭酸ガスが供給されて炭酸ガスが固定化される。従って、前述したCO2固定化システムと同様、例えば、現場で排出される炭酸ガスを生コンに供給して生コンに炭酸ガスを固定化させることにより、生コンを適切に処理できると共に現場からのCO2の排出量を削減することができる。
【0027】
(18)上記(17)において、炭酸ガスを固定化する工程は、原水槽からの生コンを受容槽に受け入れる工程と、受容槽から延在する経路部に生コンを通す工程と、経路部を通る生コンに微細気泡供給部が微細気泡としての炭酸ガスを供給する工程と、を備えてもよい。この場合、原水槽からの生コンを受容槽が受け入れて、この生コンは受容槽から延在する経路部を通る。経路部を通る生コンに対しては、微細気泡供給部によって微細気泡としての炭酸ガスが供給される。生コンに微細気泡としての炭酸ガスが供給されることにより、生コンと炭酸ガスとの反応効率を一層高めることができるので、生コンに対する炭酸ガスの固定率をより高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、CO2の排出量を削減すると共に、未使用の生コンを適切に処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係るCO
2固定化システムの構成を示す概略構成図である。
【
図2】
図1のCO
2固定化システムの濁水処理設備の構成を示す概略構成図である。
【
図3】凝結遅延剤の添加量と打ち重ねが可能な時間間隔との関係の例を示すグラフである。
【
図4】第1変形例に係るCO
2固定化システムの振動篩及びタンクを示す概略構成図である。
【
図5】第2変形例に係るCO
2固定化システムを示す概略構成図である。
【
図6】第3変形例に係るCO
2固定化システムの構成を示す概略構成図である。
【
図7】
図6のCO
2固定化システムの受容槽、経路部及び微細気泡供給部の構成を示す概略構成図である。
【
図8】(a)は、炭酸ガスの注入時間に対する水中の炭酸ガスの濃度の測定の結果を示すグラフである。(b)は、上記の測定の経過日数と水中に残留した炭酸ガスの割合の例を示すグラフである。
【
図9】(a)は、炭酸ガスの注入頻度と炭酸ガスの固定率との関係を測定した結果を示すグラフである。(b)は、炭酸ガスの注入総量と炭酸ガスの固定率との関係を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るCO2固定化システム及びCO2固定化方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0031】
CO2固定化システム1は、建設現場A(現場)に設けられる。建設現場Aは、例えば、比較的大規模な建設現場であり、建設現場Aには濁水処理設備10が設置されている。CO2固定化システム1は、建設現場Aにおいて発生した未使用の生コンCを建設現場Aの内部で処理する。従って、CO2固定化システム1によって、例えば、建設現場Aからは戻りコン(発注したものの生コン車から荷下ろしせず返品する生コン)は生じない。
【0032】
CO2固定化システム1は、既設の濁水処理設備10を用いて泥水又はコンクリートの洗い水を含む濁水を炭酸ガスで中性化(炭酸化)し、凝集剤で濁度を下げて得られた処理水を排出する。CO2固定化システム1は、濁水処理設備10を備えることによって、残コン(未使用の生コン)を建設現場Aにおいて処理する。
【0033】
CO2固定化システム1は、生コン車2(アジテータ車)の内部に収容された未使用の生コンCに水Wを注入する水注入手段3と、生コン車2の内部に収容された未使用の生コンCに凝結遅延剤Gを添加する凝結遅延剤添加手段4とを有する。水注入手段3は、例えば、生コン車2の内部に収容された未使用の生コンCの量(一例として容積)の5倍以上且つ5000倍以下の水Wを注入する。また、水注入手段3は、当該生コンCの量の10倍以上、50倍以上、又は100倍以上の水Wを注入してもよいし、1000倍以下の水Wを注入してもよい。
【0034】
凝結遅延剤Gは、例えば、超遅延剤である。生コンCへの水Wの注入によって生コンCのpHを低下させ、生コンCへの凝結遅延剤Gの添加によって生コンCの凝結速度を調整する(遅くする)。例えば、生コン車2に収容された生コンCは、生コン車2の内部において撹拌(一例として高速撹拌)される。
【0035】
生コン車2は、例えば、嵩上げ部2bを有し、嵩上げ部2bによって生コン車2の生コンCの排出位置が嵩上げされている。例えば、生コン車2の生コンCの排出位置は嵩上げ部2bによって振動篩5の天端よりも高くなっている。従って、生コン車2から振動篩5の天端に効率よく生コンCを排出することが可能である。
【0036】
CO2固定化システム1は、生コン車2から生コンCを受ける振動篩5と、振動篩5の下方に位置するタンク6(ピット)とを有する。生コン車2からは流動性が高い生コンCが振動篩5に排出される。振動篩5は、水注入手段3から水Wが注入された未使用の生コンCを生コン車2から受けて生コンCから骨材C1を分離する。すなわち、振動篩5は、生コンCに配合されている材料の分離を行う。
【0037】
振動篩5は、例えば、生コン車2から延在するように配置され、生コン車2から離隔するに従って斜め下方に延在している。振動篩5は、生コン車2から生コンCを受け入れて生コンCから骨材C1を分離する。振動篩5は、生コンCから砕砂を沈降させ、セメントから砕砂を分離する。
【0038】
この場合、生コンCの砕砂のみが細粒分として水中に分散されて濁水処理設備10に供給されるので、生コンCへの炭酸ガスの接触を一層効率化できる。なお、上記の分離は、水槽内における遠心分離によって行われてもよい。例えば、振動篩5は、生コンCに含まれる寸法が5mm以上の骨材C1を振るいながら生コンCを水によって洗浄する。一例として、骨材C1は、粗骨材及び細骨材である。
【0039】
振動篩5から分離される骨材C1以外の生コンCは、振動篩5からタンク6に落下する。タンク6には振動篩5から落下した生コンC及び水Wが貯留される。タンク6の内部には生コンC及び水Wを撹拌する撹拌機7が設けられている。撹拌機7は、振動篩5から落下した生コンCを撹拌して生コンCをスラリー状(懸濁水状)に改質する。例えば、タンク6は矩形状を呈する。一例として、平面視におけるタンク6の対角線上に複数(例えば2つ)の撹拌機7が配置される。しかしながら、撹拌機7の数及び配置態様は上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0040】
CO2固定化システム1は、タンク6から延び出す配管8と、タンク6の内部に設けられたポンプ9とを有する。タンク6の内部において撹拌機7によって撹拌された生コンCは、ポンプ9により、配管8を通って濁水処理設備10に供給される。水注入手段3、振動篩5、タンク6、撹拌機7、配管8及び濁水処理設備10は建設現場Aに設けられる。
【0041】
図2は、濁水処理設備10を示す概略構成図である。
図1及び
図2に示されるように、濁水処理設備10は原水槽11を有し、配管8を通ったスラリー状の生コンCは原水槽11に供給される。本実施形態において、濁水処理設備10はスラリー状の生コンC(セメント粒子)を固液分離する。
【0042】
原水槽11は、配管8を介してタンク6からスラリー状の生コンCを受け入れる。原水槽11に受け入れられる時点において、例えば、生コンCのpHは13以下とされている。すなわち、生コン車2の内部において水Wが注入されて振動篩5及びタンク6に移動した時点で生コンCのpHは13以下とされている。
【0043】
濁水処理設備10は、既設の濁水処理設備であり、例えば、建設現場Aに予め設けられている。濁水処理設備10は、原水槽11から延びる管路12を有する。管路12は密閉されている。例えば、原水槽11はポンプ11bを備え、ポンプ11bによって原水槽11のスラリー状の生コンCが管路12に通される。例えば、管路12において、生コンCのpHが測定される。
【0044】
濁水処理設備10は、原水槽11に受け入れられた生コンCに炭酸ガスを供給して生コンCに炭酸ガスを固定化させる炭酸ガス供給装置15を有する。例えば、炭酸ガス供給装置15は、生コンCに炭酸ガスを供給して生コンCを中和する。例えば、炭酸ガス供給装置15は管路12に接続される配管15bを有し、配管15bを介して管路12を通る生コンCに炭酸ガスを供給する。
【0045】
炭酸ガス供給装置15は、例えば、炭酸ガスボンベ15cを有し、炭酸ガスボンベ15cから配管15bを介して炭酸ガスを生コンCに供給する。炭酸ガス供給装置15は、例えば、加圧によって炭酸ガスを生コンCに供給する。また、炭酸ガス供給装置15は、二酸化炭素回収装置であるDAC装置から炭酸ガスを生コンCに供給してもよい。この場合、大気から二酸化炭素(炭酸ガス)を直接吸収したDAC装置から炭酸ガス供給装置15によって生コンCに炭酸ガスを供給でき、DAC装置に貯留された二酸化炭素を有効利用できる。
【0046】
炭酸ガス供給装置15は、生コン車2から排出された排ガスを炭酸ガスとして生コンCに供給してもよい。この場合、生コン車2からの排ガスを生コンCへのCO2の固定化のために有効利用できる。また、炭酸ガス供給装置15は、建設現場Aに配置された機械設備から排出された炭酸ガスを生コンCに供給してもよい。建設現場Aに配置された機械設備は、例えば、発電機、建設機械、又は重機である。この場合、建設現場Aに配置された機械設備からの排ガスを生コンCへのCO2の固定化のために有効利用することができる。
【0047】
例えば、炭酸ガス供給装置15は、生コンC及び炭酸ガスを撹拌する撹拌装置15dを有する。撹拌装置15dは、例えば、密閉された管路12の内部に配置されたラインミキサーである。撹拌装置15dは、管路12に対する配管15bの合流部15fよりも生コンCの流路の下流側に配置されており、管路12を通る生コンCと合流部15fにおいて管路12に合流した炭酸ガスとを混合撹拌する。これにより、生コンCへのCO2の固定化を促進することが可能である。
【0048】
例えば、CO2固定化システム1は、管路12を通る生コンCに希硫酸を供給する希硫酸供給手段16を備えていてもよい。希硫酸は、生コンCのpHを必要に応じて更に低下させるために設けられる。この場合、生コンCへの炭酸ガスの反応を促進させることができる。但し、希硫酸供給手段16は省略されてもよい。
【0049】
例えば、CO2固定化システム1は、生コンCに固定化された炭酸ガスの量を測定する測定部21を備える。測定部21は、生コンCに固定化された炭酸ガスの量を測定し、測定の結果得られた値を定量的に評価してもよい。測定部21は、例えば、濁水処理設備10において生コンCに固定化された炭酸ガスの量を数値化して表示する表示部を有する。一例として、測定部21は、炭酸ガス供給装置15が供給する炭酸ガスの濃度と、管路12から排出された炭酸ガスの濃度との差分に時間と流量を積算した値を表示する。
【0050】
なお、測定部21は、溶存炭酸ガスセンサによって固定化された炭酸ガスの濃度を測定してもよい。また、測定部21は、X線で炭酸カルシウムの量を測定することによって固定化された炭酸ガスの濃度を測定してもよい。測定部21は、生コンC中のセメント水和物の炭酸化度、すなわち、炭酸化によってセメント水和物中に含まれるCaO(酸化カルシウム)のどの程度の割合が炭酸カルシウムになるかの指標を用いてもよい。一例として、測定部21は、以下の式(1)によってコンクリートの中性化領域1m
3あたりにおけるセメントのCO
2吸収量A
upを算出してもよい。
【数1】
【0051】
式(1)において、γcは炭酸化度、Cはコンクリートの単位セメント量(kg/m3)、CaOはセメントのCaO量(%)、MCO2はCO2のモル質量(=44.0g/mol)、MCaOはCaOのモル質量(=56.1g/mol)である。炭酸化度は、例えば、生コンCにおけるセメント水和物の種類、又は炭酸化のときの環境条件によって定めることが可能である。例えば、炭酸化度は、0.5、0.75又は0.8であってもよいし、コンクリート硬化体中の炭素及び水素(CH)のみがCO2の固定に寄与するものとして0.35~0.37とされてもよい。但し、測定部21による生コンCに固定化された炭酸ガスの量を測定する方法は、上記の例に限られず、適宜変更可能である。
【0052】
例えば、CO2固定化システム1はPAC槽17を有する。PAC槽17は配管17bを介して管路12に接続されている。PAC槽17にはアルミ系凝集剤が貯留されている。アルミ系凝集剤は、例えば、ポリ塩化アルミニウム又はアルミニウム塩である。PAC槽17からは配管17bを介して管路12を通る生コンCにアルミ系凝集剤が添加される。
【0053】
濁水処理設備10は、炭酸ガス供給装置15によって炭酸ガスが供給された生コンCを凝集する凝集槽18と、高分子凝集剤を貯留する高分子溶解槽19とを有する。凝集槽18には、炭酸ガスが供給された生コンC、及び高分子溶解槽19からの高分子凝集剤が流れ込む。高分子溶解槽19は、例えば、撹拌機及びポンプを有し、高分子溶解槽19の撹拌機によって高分子凝集剤が高分子溶解槽19において混合撹拌される。そして、高分子溶解槽19のポンプによって高分子凝集剤が凝集槽18に移送される。
【0054】
凝集槽18は、炭酸ガスが供給された生コンC及び高分子凝集剤を混合撹拌するミキサー18bを有する。ミキサー18bで生コンCが高分子凝集剤と共に混合撹拌されることにより、生コンCの残渣がフロック状(塊状)となり、凝集槽18において生コンCが固液分離され凝集槽18の下部に凝集物C2が蓄積する。凝集物C2は、炭酸カルシウムを含んでいる。
【0055】
凝集槽18は、蓋の機能を有する平板を備えていてもよい。また、凝集槽18は、供給された炭酸ガスの一部が反応しきらずにガスの状態で大気に放出される機構を有していてもよい。この場合、凝集槽18は、炭酸ガスを放出する小孔を有する。この小孔には、例えば、流量計、炭酸ガス濃度計、及び記録設備が配置されている。この場合、ロスとなって凝集槽18から大気に放出される炭酸ガスの測定及び管理を行うことができる。
【0056】
凝集槽18は、例えば、側面視において下方に向かうに従って凝集槽18の幅が小さくな縮小部18cを有する。凝集槽18の内部で生じた凝集物C2は縮小部18cに蓄積される。例えば、縮小部18cは開放可能とされており、縮小部18cに蓄積された凝集物C2を凝集槽18から取り出すことが可能である。
【0057】
例えば、CO2固定化システム1は、凝集槽18から取り出された凝集物C2が載せられるポーラスコンクリート20を備える。この場合、凝集物C2は、ポーラスコンクリート20に載せられた状態で乾燥される。ポーラスコンクリート20に代えてポーラス板又は軽石が用いられてもよい。乾燥した凝集物C2は、例えば、残土(一例として一般残土)となり、盛土又はコンクリート資材として用いることが可能である。
【0058】
なお、凝集槽18の凝集物C2は、図示しない汚泥槽及び脱水処理機に移送され、当該脱水処理機において濾水と脱水ケーキに分離されてもよい。当該濾水は、例えば、タンク6(又は原水槽11)に移送されてもよい。また、当該脱水ケーキは、建設現場Aにおいて再利用されてもよいし、建設現場A以外の場所において再利用されてもよいし、産業処理されてもよい。
【0059】
濁水処理設備10は、凝集槽18において凝集物C2が除去された水が供給される沈殿槽22と、沈殿槽22からオーバーフローした水が貯留される処理水槽23とを有する。沈殿槽22には、凝集槽18の上澄水が供給される。沈殿槽22では、水と沈殿物C3とを分離して、水を更に清浄にする。
【0060】
沈殿槽22は、例えば、pHセンサ24と、濁度測定センサ25とを有する。一例として、pHセンサ24及び濁度測定センサ25は、沈殿槽22の上部に設けられる。pHセンサ24は沈殿槽22から処理水槽23に供給される水のpHを測定し、濁度測定センサ25は沈殿槽22から処理水槽23に供給される水の濁度を測定する。
【0061】
濁水処理設備10は、例えば、pHセンサ24から水のpHの測定データを受信すると共に、濁度測定センサ25から水の濁度の測定データを受信する水質監視盤26を有する。水質監視盤26を監視することによって沈殿槽22の水のpH及び濁度を把握することが可能である。なお、前述した測定部21が水質監視盤26と同じ位置に配置されていてもよい。
【0062】
沈殿槽22には、例えば、沈殿槽22からタンク6(又は原水槽11)まで延びる配管が設けられている。pHセンサ24によって測定されたpH、及び濁度測定センサ25によって測定された濁度のいずれかが基準を満たさない場合、当該配管を介して沈殿槽22の水がタンク6(又は原水槽11)に戻される。
【0063】
pHセンサ24によって測定されたpH、及び濁度測定センサ25によって測定された濁度が基準を満たす場合、沈殿槽22の水が処理水槽23に移送される。処理水槽23に移送された水は、例えば河川等に放流される。なお、処理水槽23からの放流水がタンク6(又は原水槽11)に戻されてもよい。更に、pHセンサ24は原水槽11に設けられてもよい。また、pHセンサ24は凝集槽18に設けられてもよい。この場合、原水槽11及び凝集槽18のそれぞれにおいてもpHを測定することが可能である。
【0064】
続いて、本実施形態に係るCO2固定化方法の工程について説明する。本実施形態に係るCO2固定化方法は、CO2固定化システム1によって行われる。まず、生コン車2に収容された未使用の生コンCに水Wを注入する(水を注入する工程)。このとき、水注入手段3が生コン車2の内部に水Wを注入して、水WのpHを低下させる。
【0065】
次に、生コン車2から振動篩5に生コンCを排出し、振動篩5によって生コンCから骨材C1を分離する(骨材を分離する工程)。例えば、振動篩5によって生コンCから粗骨材及び細骨材の両方が分離される。この場合、生コンCの搬送経路における生コンCの詰まりをより確実に抑制できる。振動篩5によってふるいにかけられてタンク6に落下した生コンCは、撹拌機7によって撹拌される。水Wと共に生コンCが撹拌されることによって生コンCがスラリー状に改質される(スラリー状に改質する工程)。
【0066】
タンク6においてスラリー状に改質された生コンCは、配管8を経由して、濁水処理設備10の原水槽11に移送される(原水槽に移送する工程)。原水槽11に移送されたスラリー状の生コンCは、管路12に入り込み、管路12において炭酸ガス供給装置15から炭酸ガスが供給される(炭酸ガスを供給する工程)。密閉された管路12で炭酸ガスが供給された生コンCは撹拌装置15dによって撹拌される。以上の過程を経て、生コンCに炭酸ガスが固定化される。
【0067】
炭酸ガスが固定化された生コンCは、凝集槽18に送り出され、凝集槽18において固液分離される(固液分離する工程)。固液分離の結果得られた生コンCの凝集物C2は、凝集槽18から取り出されてポーラスコンクリート20の上で乾燥される(乾燥する工程)。一方、凝集槽18の上澄水は沈殿槽22に移送され、更に沈殿槽22の上澄水がpHセンサ24及び濁度測定センサ25によって測定される。測定の結果、pH及び濁度において基準を満たす上澄水が処理水槽23を介して濁水処理設備10の外部に放流される(放流する工程)。以上の工程を経て、CO2固定化方法の一連の工程が完了する。
【0068】
次に、本実施形態に係るCO2固定化システム1及びCO2固定化方法から得られる作用効果についてより詳細に説明する。CO2固定化システム1では、生コン車2の内部に収容された未使用の生コンCに水Wが注入される。水Wの注入によって生コンCのアルカリ度を低減させることができる。振動篩5は、生コン車2から生コンCを受け入れて生コンCから骨材C1を分離する。このように、骨材C1を予め分離することにより、配管8又は濁水処理設備10において生コンCが詰まること(閉塞)を抑制できる。振動篩5の下方にはタンク6が設けられ、タンク6の内部には振動篩5から落下した生コンCをスラリー状に改質する撹拌機7が設けられる。タンク6からは配管8が延び出しており、スラリー状の生コンCは配管8を介して濁水処理設備10に供給されて固液分離される。従って、未使用の生コンCを濁水処理設備10によって適切に処理することができる。
【0069】
また、濁水処理設備10は、生コンCに炭酸ガスを供給して生コンCに炭酸ガスを固定化させる炭酸ガス供給装置15を備える。例えば、建設現場Aで排出される炭酸ガスを炭酸ガス供給装置15が生コンCに供給して生コンCに炭酸ガスを固定化させることにより、生コンCを適切に処理できると共に建設現場AからのCO2の排出量を削減することができる。
【0070】
本実施形態において、CO2固定化システム1は、生コンCに固定化された炭酸ガスの量を測定する測定部21を有する。この場合、生コンCに固定化された炭酸ガスの量が測定部21によって測定されるので、削減されたCO2の量を測定部21によって測定することができる。従って、建設現場Aにおいて生コンCに固定化されたCO2の量を定量的に評価することが可能である。
【0071】
本実施形態において、CO2固定化システム1は、生コン車2の内部に収容された未使用の生コンCに凝結遅延剤Gを添加する凝結遅延剤添加手段4を備える。よって、未使用の生コンCに凝結遅延剤Gが添加されるので、生コンCを炭酸ガスと反応しやすくすることができる。従って、CO2の排出量をより削減することができる。
【0072】
ところで、生コンCには凝結遅延剤Gのみが添加されてもよい。例えば、処理した日の翌日に凝結遅延剤Gが添加される場合には、セメント量×0.6wt%の凝結遅延剤Gが添加されてもよい。また、
図3に示されるように、生コンCの温度によって打重ね可能な時間間隔が変動するので、生コンCの温度に応じて凝結遅延剤Gの添加量が調整されてもよい。
【0073】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態において、濁水処理設備10は、原水槽11から延びると共に密閉された管路12を有し、炭酸ガス供給装置15は、管路12を通る生コンCに炭酸ガスを供給する。よって、密閉された管路12を通る生コンCに炭酸ガスが供給されるので、管路12からの炭酸ガスの漏れを抑制すると共に、生コンCに対する炭酸ガスの固定をより効率よく行うことができる。従って、建設現場AからのCO
2の排出量を一層削減することが可能となる。
【0074】
本実施形態において、CO2固定化システム1は、管路12に設けられており、管路12を通る生コンC及び炭酸ガスを撹拌する撹拌装置15dを備える。よって、密閉された管路12の中で生コンCと炭酸ガスとが撹拌されるので、生コンCへの炭酸ガスの固定化を一層促進させることができる。従って、CO2の排出量の更なる削減に寄与する。
【0075】
本実施形態において、炭酸ガス供給装置15は、DAC装置、生コン車2、及び、建設現場Aに配置された機械設備、の少なくともいずれかから排出された炭酸ガスを生コンに供給する。従って、DAC装置、生コン車2、及び、建設現場Aに配置された機械設備から排出された炭酸ガスを生コンCへのCO2の固定化のために有効利用することができる。
【0076】
本実施形態において、原水槽11に受け入れられる生コンCのpHが13以下であってもよい。この場合、生コンCのpHが13以下であることにより、生コンCへの炭酸ガスの反応を一層促進できる。従って、炭酸ガスの固定化を促進して、現場からのCO2の排出量をより確実に低減させることができる。
【0077】
本実施形態において、濁水処理設備10は、炭酸ガス供給装置15によって炭酸ガスが供給された生コンCを凝集する凝集槽18を有する。CO2固定化システム1は、凝集槽18に凝集された凝集物C2が載せられるポーラスコンクリート20を備えてもよく、凝集物C2は、ポーラスコンクリート20の上において乾燥されてもよい。この場合、ポーラスコンクリート20に凝集物C2が載せられることにより、凝集物C2から水分を除去し、凝集物C2を効率よく乾燥させることができる。
【0078】
本実施形態において、水注入手段3は、生コン車2の内部に収容された生コンCの量の5倍以上の水Wを注入する。よって、大量の水Wの注入によって生コンCのpHをより下げることができるので、生コンCに対する炭酸ガスの反応をより促進させることができる。従って、炭酸ガスの固定化をより促進して、建設現場AからのCO2の排出量を一層確実に低減させることができる。
【0079】
本実施形態において、水注入手段3、振動篩5、タンク6、撹拌機7、配管8、及び濁水処理設備10が建設現場Aに設けられており、濁水処理設備10が既設の濁水処理設備である。従って、建設現場Aで生コンCに対する炭酸ガスの固定化を行うことができると共に、既設の濁水処理設備10を炭酸ガスの固定化のために有効利用することができる。そして、既設の濁水処理設備10に対して少量の機器を追加すればよいので、既設の濁水処理設備10を用いてCO2固定化システム1を容易に構築することができる。
【0080】
本実施形態に係るCO2固定化方法は、生コン車2の内部に収容された未使用の生コンCに水Wを注入する工程と、水Wが注入された未使用の生コンCを振動篩5が受けて、振動篩5が生コンCから骨材C1を分離する工程と、振動篩5から落下した生コンCをタンク6の内部において撹拌して生コンCをスラリー状に改質する工程と、タンク6からスラリー状の生コンCを濁水処理設備10の原水槽11に移送する工程と、原水槽11に受け入れられた生コンCに炭酸ガスを供給して生コンCに炭酸ガスを固定化する工程と、を備える。
【0081】
このCO2固定化方法では、生コン車2の内部に収容された未使用の生コンCに水Wが注入されるので、水Wの注入によって生コンCのアルカリ度を低減させることができる。生コン車2からは未使用の生コンCが振動篩5に受け入れられ、振動篩5は生コンCから骨材C1を分離する。振動篩5からは骨材C1以外の生コンCが落下し、落下した生コンCは撹拌機7によってスラリー状に改質される。そして、スラリー状に改質された生コンCは濁水処理設備10に移送され、濁水処理設備10の原水槽11に受け入れられた生コンCは炭酸ガスが供給されて炭酸ガスが固定化される。従って、前述したCO2固定化システム1と同様、例えば、建設現場Aで排出される炭酸ガスを生コンCに供給して生コンCに炭酸ガスを固定化させることにより、生コンCを適切に処理できると共に建設現場AからのCO2の排出量を削減することができる。
【0082】
次に、第1変形例に係るCO
2固定化システム31について
図4を参照しながら説明する。なお、CO
2固定化システム31の一部の構成は、前述したCO
2固定化システム1の一部の構成と同一である。よって、以下の説明では、CO
2固定化システム1の構成と重複する部分の説明を適宜省略する。
【0083】
CO2固定化システム31は、濁水処理設備10に生コンCが供給されるまでの構成がCO2固定化システム1とは異なっている。CO2固定化システム31は、複数の振動篩、及び複数のタンクを備える。CO2固定化システム31において、複数の振動篩は第1振動篩5A及び第2振動篩5Bであり、複数のタンクは第1タンク6A及び第2タンク6Bである。
【0084】
第1振動篩5Aは、生コン車2から生コンCを受け入れる。第1タンク6Aは第1振動篩5Aの下方に設けられる。第1振動篩5Aは、例えば、未使用の生コンCを生コン車2から受けて生コンCから粗骨材C4を分離する。第1振動篩5Aは、例えば、生コンCを受け入れる第1振動篩5Aの箇所から離隔するに従って斜め下方に延在している。
【0085】
第1振動篩5Aから分離される粗骨材C4以外の生コンCは、第1振動篩5Aから第1タンク6Aに落下する。第1タンク6Aには、第1振動篩5Aから落下した生コンC(粗骨材C4以外の生コンC)及び水が貯留される。第1タンク6Aの内部には撹拌機7が設けられている。
【0086】
CO2固定化システム31は、第1タンク6Aから第2振動篩5Bに生コンCを搬送するポンプ32と、第1タンク6Aから第2振動篩5Bの上方まで延びる移送管34とを有する。ポンプ32は、移送管34に設けられており、移送管34を介して生コンCを第1タンク6Aから第2振動篩5Bに送出する。
【0087】
第2振動篩5Bは移送管34から生コンCを受け入れ、第2タンク6Bは第2振動篩5Bの下方に設けられる。第2振動篩5Bは、生コンCを移送管34から受けて生コンCから細骨材C5を分離する。第2振動篩5Bは、生コンCを受け入れる第2振動篩5Bの箇所から離隔するに従って斜め下方に延在している。細骨材C5が除去された生コンCは、第2振動篩5Bから第2タンク6Bに落下する。第2タンク6Bには第2振動篩5Bから落下した生コンC及び水が貯留され、第2タンク6Bの内部には撹拌機7が設けられている。第2タンク6Bからは配管8が延び出しており、第2タンク6Bに落下した生コンCは撹拌機7によって撹拌されて配管8を介して濁水処理設備10に移送される。
【0088】
以上、第1変形例に係るCO2固定化システム31は、複数の振動篩、及び複数のタンクを備え、複数の振動篩は、生コン車2から生コンCを受け入れる第1振動篩5Aと、第1振動篩5Aから落下した生コンCを受け入れる第2振動篩5Bとを含んでおり、複数のタンクは、第2振動篩5Bの下方に位置する第1タンク6Aと、第2振動篩5Bの下方に位置する第2タンク6Bとを含む。CO2固定化システム31は、第1タンク6Aから第2振動篩5Bの上方まで延びる移送管34と、移送管34に設けられており、第1タンク6Aから第2振動篩5Bに生コンCを搬送するポンプ32とを備える。配管8は、第2タンク6Bから延び出している。このCO2固定化システム31によれば、複数の振動篩、及び複数のタンクが設けられることにより、生コンCから粗骨材C4及び細骨材C5を分離させることができる。
【0089】
続いて、第2変形例に係るCO
2固定化システム41について
図5を参照しながら説明する。CO
2固定化システム41は、生コンCが投入されるスクリューコンベア45と、スクリューコンベア45を収容するタンク46とを有する。スクリューコンベア45には生コン車2から生コンCが投入され、スクリューコンベア45は生コンCから骨材C6を分離する。例えば、骨材C6は、粗骨材及び細骨材の両方である。
【0090】
生コンCの骨材C6以外の細粒分は、タンク46の内部において撹拌機7によって撹拌される。タンク46の内部の生コンCの細粒分は、ポンプ52によって配管51を介して密閉槽56に移送される。密閉槽56に移送された生コンCには炭酸ガス供給装置65から気化器66を介して炭酸ガスが供給される。密閉槽56の内部において炭酸ガスが供給された生コンCは撹拌機7によって撹拌される。これにより、生コンCへの炭酸ガスの固定化が促進される。
【0091】
密閉槽56の内部にはpH計63が設けられており、炭酸ガスが供給される生コンCのpHがpH計63によって測定される。pH計63には制御盤64が接続されており、pH計63によって測定されたpHの値は制御盤64によって把握及び制御可能とされている。密閉槽56の内部において炭酸ガスが固定化された生コンCは、スラリー引き抜きポンプ62を介して配管61に移送されて乾燥される。以上、第2変形例に係るCO2固定化システム41は、生コンCから骨材C6を分離するスクリューコンベア45を備える。従って、スクリューコンベア45によって生コンCから骨材C6を分離することができる。
【0092】
次に、第3変形例に係るCO
2固定化システム70について
図6を参照しながら説明する。前述したCO
2固定化システム1では、炭酸ガスの一部しか固定されず、炭酸ガスの多くの部分が空気中に放出される場合がある。CO
2固定化システム70では、生コンC(セメント混合排水)に対する炭酸ガスの固定率をより高めることが可能である。
【0093】
CO2固定化システム70は、微細気泡としての炭酸ガスを生コンCに供給する炭酸ガス供給装置71を備える。「微細」とは、例えば、肉眼で外形を視認できない程度に小さいことを示している。一例として、「微細気泡」とは、1μm以下の大きさを有する気泡を言う。当該大きさとは、例えば、気泡径の平均である。「微細気泡」は、例えば、ナノバブル、マイクロバブル、又はナノバブル及びマイクロバブルの双方を含む気泡であってもよい。「微細気泡」は、ファインバブル(登録商標)又はウルトラファインバブル(登録商標)であってもよい。
【0094】
炭酸ガス供給装置71は、例えば、管路12に配置されている。炭酸ガス供給装置71は、原水槽11に収容された生コンCに微細気泡としての炭酸ガスを供給する微細気泡供給装置である。具体例として、炭酸ガス供給装置71は、生コンCの搬送経路である管路12における撹拌装置15dの上流側に配置されている。第3変形例において、撹拌装置15dは生コンCのpHを調整するために設けられ、炭酸ガス供給装置71は生コンCに炭酸ガスを固定化させるために設けられる。
【0095】
この場合、炭酸ガス供給装置71は、管路12における原水槽11と撹拌装置15dの間に配置されている。しかしながら、炭酸ガス供給装置71は、管路12における撹拌装置15dの下流側(管路12における撹拌装置15dと凝集槽18の間)に配置されていてもよい。また、炭酸ガス供給装置71は、配管8(濁水処理設備の外部)に配置されていてもよい。このように炭酸ガス供給装置71の配置場所は適宜変更可能である。
【0096】
例えば、炭酸ガス供給装置71は、微細気泡としての炭酸ガスを生コンCに断続的に注入する。
図7は、炭酸ガス供給装置71の構成を模式的に示す断面図である。炭酸ガス供給装置71は、原水槽11からの生コンCを受け入れる受容槽72と、受容槽72から延在しており生コンCが通る経路部73と、経路部73を通る生コンCに微細気泡としての炭酸ガスを供給する微細気泡供給部74とを有する。更に、炭酸ガス供給装置71は、受容槽72の内部に挿入された撹拌部材78と、受容槽72から経路部73に生コンCを汲み上げるポンプ79を有する。
【0097】
例えば、受容槽72が受け入れる生コンCにおけるセメントと水の比は、1:Xである(但しXは2以上の実数である)。Xの値は、例えば、3以上であってもよいし、6以上であってもよい。一例として、Xの値の上限は15である。撹拌部材78は、回転することによって微細気泡が供給された生コンCを撹拌する。
【0098】
受容槽72は、例えば、生コンCが収容される有底筒状の収容部72bと、収容部72bを塞ぐ蓋部72cとを有する。収容部72bには、例えば、原水槽11から延びる管路12が接続されており、当該管路12を介して原水槽11から生コンCを受け入れる。また、収容部72bには撹拌装置15d(又は凝集槽18)から延びる管路12が接続されており、当該管路12を介して炭酸ガスが固定された生コンCが撹拌装置15d(又は凝集槽18)に向かって搬送される。蓋部72cは、例えば、収容部72bを密閉する。この場合、受容槽72から受容槽72の外部に炭酸ガスが漏れ出すことを抑制することができる。
【0099】
受容槽72、経路部73及び微細気泡供給部74は、例えば、炭酸ガス供給装置71における生コンCの循環経路Rを構成する。ポンプ79の駆動によって、生コンCは循環経路Rを循環する。例えば、ポンプ79が駆動して生コンCが循環経路Rを循環しているときに撹拌部材78は回転せず、ポンプ79が駆動していない(生コンCが循環経路Rを循環していない)ときに撹拌部材78が回転してもよい。この場合、循環しておらず受容槽72に収容されている生コンCに対して炭酸ガスの固定化を更に促進することができる。
【0100】
生コンCは、経路部73の一端73bから受容槽72の外部に流出し、経路部73の他端73cから受容槽72の内部に流入する。すなわち、一端73bは受容槽72から受容槽72の外部に生コンCが流出する流出部であり、他端73cは受容槽72の内部に生コンCが流入する流入部である。
【0101】
微細気泡供給部74は、経路部73の途中部分73d(経路部73における一端73bと他端73cとの間)に設けられている。微細気泡供給部74は、経路部73を通る生コンCに微細気泡としての炭酸ガスを供給する。よって、経路部73の一端73bから微細気泡供給部74(途中部分73d)までの部分には炭酸ガスが供給される前の生コンCが通り、経路部73の微細気泡供給部74(途中部分73d)から他端73cまでの部分には炭酸ガスが供給された後の生コンCが通る。
【0102】
例えば、受容槽72における経路部73の一端73bの高さは、受容槽72における経路部73の他端73cの高さよりも高い。従って、炭酸ガスが供給される前の生コンCが一端73bから微細気泡供給部74に向かって流出し、炭酸ガスが供給された後の生コンCが他端73cを介して受容槽72に戻ってくる。このとき、微細気泡供給部74によって生じた炭酸ガスの微細気泡が生コンCと共に受容槽72の下部に戻ってくる。よって、より多くの炭酸ガスが固定された生コンCを微細気泡と共に受容槽72の下部に貯めることができるので、受容槽72における生コンCへの炭酸ガスの固定化が撹拌部材78の撹拌等によって更に促進される。
【0103】
例えば、循環経路Rにおける生コンCの循環は、一定量の生コンCに対して、一定時間の間に行われる。この一定時間は、例えば、30分以上且つ2日以下である。例えば、一定時間は、炭酸ガス供給装置71が受け入れる生コンCの量に応じて決定される。すなわち、炭酸ガス供給装置71による生コンCへの炭酸ガスの固定化は、一定量の生コンCに対してバッチ処理として行われる。例えば、生コンCへの炭酸ガスの固定化は、一定時間の間で生コンCが循環経路Rを複数回循環しているときに行われる。この場合、生コンCへの炭酸ガスの固定率をより高めることができると共に、CO2固定化システム70の外部に放出される炭酸ガスを最小限にすることができる。
【0104】
炭酸ガスが固定化された生コンCは、炭酸塩(例えば炭酸カルシウム)となって、例えば、受容槽72の下部に沈殿する。受容槽72の下部に沈殿した炭酸塩は、例えば、脱水処理設備に搬送されて、処理される。また、受容槽72に対し、原水槽11から延びる管路12より、撹拌装置15d(又は凝集槽18)から延びる管路12の方が高い位置に接続されている。従って、受容槽72の下部に当該炭酸塩が沈殿すると共に、受容槽72の上澄水を撹拌装置15d(又は凝集槽18)に移送できる。
【0105】
前述したように、経路部73の一端73bは経路部73の他端73cよりも高い位置に設けられる。従って、受容槽72の下部に沈殿した当該炭酸塩でなく、受容槽72の上部に位置する水分が多い(粒径が小さい)生コンCが一端73bから微細気泡供給部74に、向かう。よって、微細気泡供給部74において生コンCが目詰まりすることを抑制することができる。
【0106】
炭酸ガス供給装置71は、例えば、受容槽72の内部の生コンCのpHを測定するpH計75と、受容槽72の内部の炭酸ガスの濃度を測定する濃度測定センサ76とを有する。pH計75によって測定されたpH、及び濃度測定センサ76によって測定された炭酸ガスの濃度は前述した水質監視盤26(
図6参照)によって監視可能とされていてもよい。この場合、水質監視盤26を監視することによって受容槽72のpH、及び炭酸ガスの濃度を把握することが可能である。
【0107】
ところで、炭酸ガス供給装置71において生コンCへの炭酸ガスの固定化を促進させると、熱によって生コンCの温度が上昇することがある。生コンCの温度が上昇しすぎると、生コンCへの炭酸ガスの固定化に影響が及ぶ可能性があるため、炭酸ガス供給装置71における生コンCの温度管理は重要である。
【0108】
よって、炭酸ガス供給装置71は、受容槽72における生コンCの温度を測定する温度センサ77を有する。温度センサ77によって測定された温度は、pH計75及び濃度測定センサ76と同様、水質監視盤26において監視可能とされていてもよい。この場合、受容槽72の温度管理を行うことができる。更に、炭酸ガス供給装置71は、生コンCを冷却させる冷却手段を有していてもよい。この冷却手段としては、例えば経路部73を通る生コンCと熱交換を行うラジエータが挙げられるが、特に限定されない。
【0109】
例えば、微細気泡供給部74は、炭酸ガスボンベ15cから炭酸ガスの供給を受ける。しかしながら、微細気泡供給部74は、炭酸ガスボンベ15c以外から炭酸ガスの供給を受けてもよい。微細気泡供給部74は、例えば、スタティックミキサー式によって微細気泡供給部74の内部において炭酸ガスを破砕することによって炭酸ガスの微細気泡を生じさせる。一例として、微細気泡供給部74は、筒状部と、筒状部の内部に形成された突起部とを有する。
【0110】
微細気泡供給部74の外部から微細気泡供給部74の内部に炭酸ガスTが導入される。微細気泡供給部74の内部に導入された炭酸ガスTは、生コンCと共に、微細気泡供給部74の突起部に衝突しながら微細気泡供給部74の筒状部の軸線方向に沿って移動する。炭酸ガスTが生コンCと共に当該突起部への衝突を繰り返すことによって炭酸ガスTが微細気泡に変化する。より具体的には、微細気泡供給部74において炭酸ガスTがせん断流により引きちぎられて崩壊することによって微細気泡が生じる。そして、微細気泡に変換した炭酸ガスTが生コンCに固定化される。なお、炭酸ガスTは、加圧されて生コンCに溶解されてもよい。
【0111】
以上、微細気泡供給部74がスタティックミキサー式によって炭酸ガスTの微細気泡を生じさせる例について説明した。しかしながら、微細気泡供給部74は、スタティックミキサー式に代えて、又はスタティックミキサー式と共に、旋回液流式及びベンチュリー式(エゼクター式ベンチュリー式)の少なくともいずれかによって炭酸ガスTの微細気泡を生じさせてもよい。
【0112】
旋回液流式では、高速液旋回流によって気相が粉砕されて炭酸ガスTの微細気泡を生じさせる。ベンチュリー式では、管路の収縮及び拡大によって気相が粉砕されて炭酸ガスTの微細気泡を生じさせる。微細気泡供給部74が生じさせる炭酸ガスTの微細気泡の径(一例として気泡径の平均値)は、例えば、10nm以上且つ1μm以下である。
【0113】
微細気泡供給部74では、例えば、微細気泡が均一に分散し、水中に微細気泡が長期間残存する。以上、微細気泡供給部74の構成及び機能等について説明した。しかしながら、微細気泡供給部74の構成(形状等)及び機能については上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0114】
次に、第3変形例に係るCO2固定化方法の例について説明する。前述した実施形態に係るCO2固定化方法と、第3変形例に係るCO2固定化方法との相違点は、炭酸ガス供給装置71を用いて生コンCへのCO2の固定化を更に促進させる点である。より具体的には、前述した炭酸ガスを固定化する工程は、原水槽11からの生コンCを受容槽72に受け入れる工程を有する。
【0115】
図7に示されるように、生コンCを受容槽72に受け入れる工程では、原水槽11から管路12を通って流れてきた一定量の生コンCを受容槽72に受け入れる。次に、受容槽72から延在する経路部73に生コンCを通す(生コンを通す工程)。経路部73に通された生コンCは、微細気泡供給部74に達し、微細気泡供給部74において微細気泡とされた炭酸ガスTが供給される(炭酸ガスを供給する工程)。
【0116】
このとき、微細気泡供給部74には炭酸ガスTが供給されており、微細気泡供給部74は炭酸ガスTを前述した筒状部の内部に通して生コンCと共に炭酸ガスTを前述した突起部に繰り返し衝突させる。これにより、炭酸ガスTが微細気泡に変化すると共に、微細気泡に変化した炭酸ガスTが生コンCに撹拌されながら混ざり合うので、生コンCへの炭酸ガスTの固定化が促進される。
【0117】
例えば、所定時間おきに循環経路Rに生コンCを循環させながら微細気泡としての炭酸ガスTを生コンCに供給することにより、炭酸ガス供給装置71において生コンCへの炭酸ガスTの固定化を促進させる。そして、受容槽72に一定量の生コンCを受け入れて一定時間が経過した後に、炭酸ガスTが固定された生コンCを炭酸ガス供給装置71から排出し、炭酸ガス供給装置71における炭酸ガスの固定化の一連の工程が完了する。
【0118】
続いて、第3変形例に係るCO2固定化システム70及びCO2固定化方法から得られる作用効果について詳細に説明する。第3変形例に係るCO2固定化システム70及びCO2固定化方法では、原水槽11からの生コンCを受け入れる受容槽72と、受容槽72から延在しており生コンCが通る経路部73と、経路部73を通る生コンCに微細気泡としての炭酸ガスTを供給する微細気泡供給部74と、を有する。よって、受容槽72は原水槽11からの生コンCを受け入れる。受容槽72が受け入れた生コンCは、受容槽72から延在する経路部73を通る。炭酸ガス供給装置71は微細気泡供給部74を有し、微細気泡供給部74は経路部73を通る生コンCに微細気泡としての炭酸ガスTを供給する。生コンCに微細気泡としての炭酸ガスTが供給されることにより、生コンCと炭酸ガスTとの反応効率を一層高めることができる。よって、生コンCに対する炭酸ガスTの固定率をより高めることができる。
【0119】
第3変形例において、経路部73の一端73b及び他端73cは受容槽72に接続されており、生コンCは、経路部73及び受容槽72を循環し、微細気泡供給部74は、経路部73の一端73bから出て経路部73の他端73cに向かう生コンCに微細気泡を供給する。従って、生コンCは経路部73及び受容槽72を循環し、循環する生コンCに微細気泡としての炭酸ガスTが供給される。よって、生コンCに対する微細気泡としての炭酸ガスTの供給を複数回行うことができるので、生コンCに対する炭酸ガスTの固定率を更に高めることができる。
【0120】
第3変形例において、受容槽72が受け入れる生コンCにおけるセメントと水の比は1:Xである(但しXは2以上の実数である)。従って、セメントに対する水の倍率がX以上であることにより、経路部73における生コンCの搬送をスムーズに行うことができる。
【0121】
第3変形例において、CO2固定化システム70は、受容槽72に設けられており、微細気泡が供給された生コンCを撹拌する撹拌部材78を備える。従って、微細気泡が供給された生コンCが撹拌部材78によって撹拌されるので、生コンCに対する炭酸ガスTの固定化を一層促進させることができる。従って、生コンCに対する炭酸ガスTの固定率を更に高めることができる。
【0122】
次に、微細気泡を供給する微細気泡供給部74を有する炭酸ガス供給装置71、及び微細気泡供給部74を有しない炭酸ガス供給装置等を用いて、炭酸ガスの注入効果を確認する実験を行ったので、その結果について説明する。まず、微細気泡を供給する微細気泡供給部74による炭酸ガスの水中注入効果と、通常の曝気装置(エアーストーン又はラインミキサ等)による炭酸ガスの水中注入効果を検証した結果を
図8(a)に示す。
【0123】
図8(a)に示されるように、通常の曝気装置(
図8(a)の比較例)では、60秒かけて曝気しても炭酸ガスの濃度が600mg/Lにしか達していない。これに対し、微細気泡供給部74(
図8(a)の実施例)では、5秒かけて炭酸ガスを水中に注入するだけで1050mg/L(飽和濃度90%)に達した。このように、微細気泡供給部74を用いて水中に炭酸ガスを供給する場合には、短時間で大量の炭酸ガスを注入できることを確認した。
【0124】
図8(b)は、微細気泡供給部74を用いた場合(実施例1)、及び通常の曝気装置を用いた場合(実施例2)における炭酸ガスの水中保持濃度の減衰率を示している。
図8(b)に示されるように、通常の曝気装置を用いた場合には、水中への炭酸ガスの供給を止めてから1日経過する度に炭酸ガスの水中保持濃度が減少した。これに対し、微細気泡供給部74を用いた場合には、水中への炭酸ガスの供給を止めてから2日経過しても炭酸ガスの水中保持濃度を100%近くに維持できた。このように微細気泡供給部74を用いて炭酸ガスを水中に供給する場合、水中における炭酸ガスの濃度を長期間高く維持できることが分かった。
【0125】
図9(a)は、セメントと水の比率を1:15としたセメント混合水(セメント乾燥重量1.33g)に対して、200mLの炭酸ガスを100分の間で1回、5回(1回あたりの炭酸ガスの量は40mL)又は10回(1回あたりの炭酸ガスの量は20mL)に分けて注入し、そのときの炭酸ガスの固定率を測定した。
図9(a)に示されるように、10回(1回あたりの炭酸ガスの量が20mL)炭酸ガスを注入した場合における炭酸ガスの固定率が最も高く、1回200mLの炭酸ガスを注入した場合における炭酸ガスの固定率が最も低かった。このように、回数を多くして少量の炭酸ガスを注入する場合に、炭酸ガスの固定率をより高められることが分かった。
【0126】
図9(b)は、セメントと水の比率を1:15としたセメント混合水20mL(セメント乾燥重量1.33g)に対し、炭酸ガスの注入回数を10回にして、1回当たりの注入量を10mL(合計100mL)、20mL(合計200mL)、40mL(合計400mL)とした場合における炭酸ガスの固定率を示している。
図9(b)に示されるように、セメントと水の比率が1:15であるセメント混合水20mLに対しては、1回当たり20mLの炭酸ガスを10回注入する場合が最も炭酸ガスの固定率が高いことが分かった。そして、1回当たり40mLの炭酸ガスを10回注入する場合が最も炭酸ガスの固定率が低かった。このように、セメントと水の比率等に応じて適切な炭酸ガスの量(
図9(b)の場合は20mL(合計200mL))があることが分かった。
【0127】
以上、本開示に係るCO2固定化システム及びCO2固定化方法の実施形態及び種々の変形例について説明した。しかしながら、本開示に係るCO2固定化システム及びCO2固定化方法は、前述した実施形態又は変形例に限定されず、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、CO2固定化システムの各部の構成、形状、大きさ、材料、数及び配置態様、並びに、CO2固定化方法の工程の内容及び順序は上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0128】
例えば、前述の実施形態では、生コンCに水Wが注入される例について説明した。しかしながら、水Wは、純水以外の水であってもよく、例えば、炭酸ガスが溶解した炭酸水であってもよい。また、タンク6の内部の水Wが炭酸水であってもよい。水Wは、CO2を含むガスがマイクロバブル、又はウルトラファインバブルとして供給された炭酸水であってもよい。また、生コンCに炭酸ガスを固定化する方法としては、ミルのような装置に入れて回転しながら生コンCに炭酸ガスを接触させてもよく、種々の方法を採用できる。
【0129】
また、生コンCに追加された水Wは、リサイクルのためタンク6又は水注入手段3に戻されてもよい。すなわち、水Wは、再度生コン車2の内部に収容された生コンCに注入されてもよい。例えば、複数の現場のそれぞれにおける未使用の生コンCの発生情報を(例えばリアルタイムで)集約し、生コンCに固定化する炭酸ガスの量、及び薬剤の量等を表示してもよい。更に、生コンCへの炭酸ガスの固定を自動で(又は部分的に自動で)行うCO2固定化システムであってもよい。このように、CO2固定化システムの機能も適宜変更可能である。
【0130】
前述の第3変形例では、撹拌部材78を有する炭酸ガス供給装置71について説明した。しかしながら、この撹拌部材78は省略することも可能である。また、炭酸ガス供給装置71がバッチ処理によって生コンCへの炭酸ガスの固定化を促進する例について説明した。しかしながら、炭酸ガス供給装置71は、バッチ処理ではなく、連続的に生コンCへの炭酸ガスの固定化を促進してもよい。このように、前述した第3変形例においても種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0131】
1…CO2固定化システム、1m3…中性化領域、2…生コン車、2b…嵩上げ部、3…水注入手段、4…凝結遅延剤添加手段、5…振動篩、5A…第1振動篩、5B…第2振動篩、6…タンク、6A…第1タンク、6B…第2タンク、7…撹拌機、8…配管、9…ポンプ、10…濁水処理設備、11…原水槽、11b…ポンプ、12…管路、15…炭酸ガス供給装置、15b…配管、15c…炭酸ガスボンベ、15d…撹拌装置、15f…合流部、16…希硫酸供給手段、17…PAC槽、17b…配管、18…凝集槽、18b…ミキサー、18c…縮小部、19…高分子溶解槽、20…ポーラスコンクリート、21…測定部、22…沈殿槽、23…処理水槽、24…pHセンサ、25…濁度測定センサ、26…水質監視盤、31…CO2固定化システム、32…ポンプ、34…移送管、41…CO2固定化システム、45…スクリューコンベア、46…タンク、51…配管、52…ポンプ、56…密閉槽、61…配管、62…スラリー引き抜きポンプ、63…pH計、64…制御盤、65…炭酸ガス供給装置、66…気化器、70…CO2固定化システム、71…炭酸ガス供給装置、72…受容槽、72b…収容部、72c…蓋部、73…経路部、73b…一端、73c…他端、74…微細気泡供給部、75…pH計、76…濃度測定センサ、77…温度センサ、78…撹拌部材、79…ポンプ、A…建設現場、C…生コン、C1…骨材、C2…凝集物、C3…沈殿物、C4…粗骨材、C5…細骨材、C6…骨材、G…凝結遅延剤、T…炭酸ガス、W…水。