(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143649
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】通話装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20230928BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
H04R1/10 101A
H04R1/00 327A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172702
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2022048628
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514066561
【氏名又は名称】株式会社パナソニックシステムネットワークス開発研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 進也
(72)【発明者】
【氏名】田方 健志
【テーマコード(参考)】
5D005
5D017
【Fターム(参考)】
5D005BA02
5D005BA10
5D005BA13
5D005BA15
5D017BA03
(57)【要約】
【課題】利用者の耳の形状に関する個人差に関係なく、利用者の耳孔内の声帯振動伝達部位と骨導マイクとの当接状態を安定化することができ、さらに、利用者の発声などの動作に伴う異音が発生し難く、また、発生した異音が骨導マイクに収音され難いものとする。
【解決手段】利用者の発声を収音する骨導マイク11と、受信した通話相手の音声等を再生する気導レシーバ12と、骨導マイクおよび気導レシーバを収容する筐体13と、筐体に取り付けられた先端ラバー14(第1弾性体)およびマイクラバー15(第2弾性体)と、を備え、筐体は、利用者の耳珠3に対向する側に開口部51を有し、先端ラバーは、利用者の少なくとも耳珠と相反する側の外耳道壁5に当接するように形成され、マイクラバーは、骨導マイクを保持した状態で開口部の周縁部に弾性的に支持され、開口部から突出した部分に、利用者の耳珠周辺に当接する当接面42を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の発声を収音する骨導マイクと、
受信した通話相手の音声を再生する気導レシーバと、
前記骨導マイクおよび前記気導レシーバを収容する筐体と、
前記筐体に取り付けられた第1弾性体および第2弾性体と、を備え、
前記筐体は、利用者の耳珠に対向する側に開口部を有し、
前記第1弾性体は、利用者の少なくとも耳珠と相反する側の外耳道壁に当接するように形成され、
前記第2弾性体は、前記骨導マイクを保持した状態で前記開口部の周縁部に弾性的に支持され、前記開口部から突出した部分に、利用者の耳珠周辺に当接する当接面を有することを特徴とする通話装置。
【請求項2】
前記第2弾性体は、前記骨導マイクを包み込む袋状をなすマイク収容部を有し、そのマイク収容部が、前記当接面が形成された壁部を有することを特徴とする請求項1に記載の通話装置。
【請求項3】
前記第2弾性体は、その外周にフランジ部を有し、そのフランジ部が前記開口部の周縁部に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の通話装置。
【請求項4】
前記筐体は、前記気導レシーバの再生音を導く通路部を有し、
前記気導レシーバは、前記通路部の一端側に配置され、
前記第1弾性体は、前記通路部の他端側に配置され、前記通路部を伝搬した再生音を外耳道に導く貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の通話装置。
【請求項5】
前記第2弾性体の前記当接面は、円弧状に膨出した形状、および平坦な形状のいずれかに形成されたことを特徴とする請求項1に記載の通話装置。
【請求項6】
前記第2弾性体の前記当接面は、耳奥側に向けて次第に高くなるように傾斜した形状、平坦な形状、および耳奥側に向けて次第に低くなるように傾斜した形状のいずれかに形成されたことを特徴とする請求項1に記載の通話装置。
【請求項7】
前記第1弾性体は、中実構造および中空構造のいずれかに形成されたことを特徴とする請求項1に記載の通話装置。
【請求項8】
さらに、前記第2弾性体における前記当接面と相反する側の面と前記筐体との間に設けられた第3弾性体を備えたことを特徴とする請求項1に記載の通話装置。
【請求項9】
前記第1弾性体と前記第2弾性体とが一体的に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の通話装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクとレシーバとを備え、利用者の頭部に装着される通話装置、特に、骨導マイクと気導レシーバとが同一の筐体に収容されて、利用者の耳に挿入して使用される通話装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクとレシーバとを備え、利用者の頭部に装着される通話装置が広く普及している。また、近年、骨導マイクと気導レシーバとが同一の筐体に収容されて、利用者の耳に挿入して使用される通話装置が提案されている。
【0003】
このような構成の通話装置として、従来、気導レシーバが収容された装着部と、装着部に弾性部材を介して支持された骨伝導マイクとからなり、装着部が、利用者の耳の舟状窩の空間に収まるように形成され、弾性部材の弾性変形力により骨伝導マイクが外耳道壁に押し当てられるようにした技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、骨導マイクと気導レシーバとが、硬質な合成樹脂材料で形成された筐体内に収容され、筐体が外耳道と相互補完的な形状に形成され、筐体が外耳道に緊密に嵌まり合うことで、骨導マイクが配置された筐体の外面を外耳道壁に密着させるようにした技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2583838号公報
【特許文献2】特開平5-115092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、骨伝導マイクと外耳道壁との当接状態が安定化することで、外耳道壁から利用者の発声を安定的に収音できるが、これには、舟状窩の空間に装着部が適切に収められることが重要となる。しかしながら、舟状窩の空間の形状には大きな個人差があり、舟状窩の空間に装着部が適合しない場合が多々ある。この場合、舟状窩の空間と装着部の間に大きな隙間ができて、骨導マイクと外耳道壁との当接状態を安定化できないという問題がある。また、気導レシーバの気密性を確保できないために音響性能が低下するという問題も発生する。また、利用者の舟状窩の空間に対して装着部が大きすぎることで、装着自体ができないという問題も発生する。
【0007】
また、特許文献2の技術では、硬質な筐体が外耳道と相互補完的な形状に形成されることで、骨伝導マイクと外耳道壁との当接状態が安定化される。しかしながら、外耳道は、利用者の発声などの動作に応じて変形する。このため、特許文献2の技術のように、硬質な筐体では、外耳道の変形に適切に追随できないため、筐体と外耳道壁との接触状態が変化し、異音の原因になる。さらに、特許文献2の技術では、骨導マイクが筐体に直接固定されているため、筐体と外耳道壁との接触状態が変化することで異音が発生すると、その異音が顕著に骨導マイクに収音されるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、利用者の耳の形状に関する個人差に関係なく、利用者の耳孔内の声帯振動伝達部位と骨導マイクとの当接状態を安定化することができ、さらに、利用者の発声などの動作に伴う異音が発生し難く、また、発生した異音が骨導マイクに収音され難い通話装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通話装置は、利用者の発声を収音する骨導マイクと、受信した通話相手の音声を再生する気導レシーバと、前記骨導マイクおよび前記気導レシーバを収容する筐体と、前記筐体に取り付けられた第1弾性体および第2弾性体と、を備え、前記筐体は、利用者の耳珠に対向する側に開口部を有し、前記第1弾性体は、利用者の少なくとも耳珠と相反する側の外耳道壁に当接するように形成され、前記第2弾性体は、前記骨導マイクを保持した状態で前記開口部の周縁部に弾性的に支持され、前記開口部から突出した部分に、利用者の耳珠周辺に当接する当接面を有する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、骨導マイクが第2弾性体を介して筐体に対して弾性的に支持される。このため、利用者の耳の形状に関する個人差に関係なく、利用者の耳孔内の声帯振動伝達部位と骨導マイクとの当接状態を安定的かつ確実に維持することができる。さらに、骨導マイクが第2弾性体を介して声帯振動伝達部位に当接する。このため、利用者の発声などの動作に伴う異音が発生し難く、また、発生した異音が骨導マイクに収音され難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る通話装置の使用状態を示す斜視図
【
図6】
図4に示すA-A線で切断した通話装置の断面図
【
図7】
図3に示すB-B線で切断した通話装置の断面図
【
図8】
図3に示すC-C線で切断した通話装置の断面図
【
図9】第1実施形態に係るマイクラバーとその変形例を示す斜視図
【
図10】マイクラバーに関する変形例に係る通話装置を示す断面図
【
図11】先端ラバーに関する変形例に係る通話装置を示す断面図
【
図12】介装ラバーが追加された変形例に係る通話装置を示す断面図
【
図14】第3実施形態に係る通話装置の使用状態および当接範囲を示す斜視図
【
図17】第3実施形態の変形例に係る通話装置を示す斜視図
【
図18】第4実施形態に係る通話装置の使用状態および当接部位を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、利用者の発声を収音する骨導マイクと、受信した通話相手の音声を再生する気導レシーバと、前記骨導マイクおよび前記気導レシーバを収容する筐体と、前記筐体に取り付けられた第1弾性体および第2弾性体と、を備え、前記筐体は、利用者の耳珠に対向する側に開口部を有し、前記第1弾性体は、利用者の少なくとも耳珠と相反する側の外耳道壁に当接するように形成され、前記第2弾性体は、前記骨導マイクを保持した状態で前記開口部の周縁部に弾性的に支持され、前記開口部から突出した部分に、利用者の耳珠周辺に当接する当接面を有する構成とする。
【0013】
これによると、骨導マイクが第2弾性体を介して筐体に対して弾性的に支持される。このため、利用者の耳の形状に関する個人差に関係なく、利用者の耳孔内の声帯振動伝達部位(耳珠)と骨導マイクとの当接状態を安定的かつ確実に維持することができる。さらに、骨導マイクが第2弾性体を介して声帯振動伝達部位(耳珠)に当接する。このため、利用者の発声などの動作に伴う異音が発生し難く、また、発生した異音が骨導マイクに収音され難くなる。
【0014】
また、第2の発明は、前記第2弾性体は、前記骨導マイクを包み込む袋状をなすマイク収容部を有し、そのマイク収容部が、前記当接面が形成された壁部を有する構成とする。
【0015】
これによると、第2弾性体が、骨導マイクを弾性的に且つ安定に保持することができる。
【0016】
また、第3の発明は、前記第2弾性体は、その外周にフランジ部を有し、そのフランジ部が前記開口部の周縁部に固定された構成とする。
【0017】
これによると、骨導マイクが、第2弾性体の柔軟性に富む薄肉のフランジ部を介して筐体に対して弾性的に支持される。このため、第2弾性体の当接面から利用者の発声が声帯振動として伝達された場合に、骨導マイクの面振動が過度に阻害されず、骨導マイクが適切に利用者の発声を収音することができる。
【0018】
また、第4の発明は、前記筐体は、前記気導レシーバの再生音を導く通路部を有し、前記気導レシーバは、前記通路部の一端側に配置され、前記第1弾性体は、前記通路部の他端側に配置され、前記通路部を伝搬した再生音を外耳道に導く貫通孔を有する構成とする。
【0019】
これによると、気導レシーバの再生音を適切に外耳道に導くことができる。
【0020】
また、第5の発明は、前記第2弾性体の前記当接面は、円弧状に膨出した形状、および平坦な形状のいずれかに形成された構成とする。
【0021】
これによると、利用者の耳孔内の形状に適切に対応し、また、利用者の嗜好に合った装着感を得ることができる。
【0022】
また、第6の発明は、前記第2弾性体の前記当接面は、耳奥側に向けて次第に高くなるように傾斜した形状、平坦な形状、および耳奥側に向けて次第に低くなるように傾斜した形状のいずれかに形成された構成とする。
【0023】
これによると、利用者の耳孔内の形状に適切に対応し、また、利用者の嗜好に合った装着感を得ることができる。
【0024】
また、第7の発明は、前記第1弾性体は、中実構造および中空構造のいずれかに形成された構成とする。
【0025】
これによると、利用者の耳孔内の形状に適切に対応し、また、利用者の嗜好に合った装着感を得ることができる。
【0026】
また、第8の発明は、さらに、前記第2弾性体における前記当接面と相反する側の面と前記筐体との間に設けられた第3弾性体を備えた構成とする。
【0027】
これによると、第2弾性体に突発的に大きな変位が発生しても、第2弾性体が筐体に突き当たることによる振動が第3弾性体により抑制されるため、骨導マイクが異音を収音し難くなる。
【0028】
また、第9の発明は、前記第1弾性体と前記第2弾性体とが一体的に形成された構成とする。
【0029】
これによると、部品点数を削減することができる。
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る通話装置の使用状態を示す斜視図である。
図2は、通話装置の使用状態を示す断面図である。
図3は、通話装置の平面図である。
図4は、通話装置の側面図である。
図5は、通話装置の分解斜視図である。
図6は、
図4に示すA-A線で切断した通話装置の断面図である。
図7は、
図3に示すB-B線で切断した通話装置の断面図である。
図8は、
図3に示すC-C線で切断した通話装置の断面図である。
【0032】
図1,
図2に示すように、通話装置1は、利用者の耳2に挿入して使用される。なお、本実施形態では、通話装置1が利用者の右側の耳2に挿入して使用されるものであるが、通話装置1が利用者の左側の耳に挿入して使用されるものであってもよく、この場合、通話装置1は図示するものと左右対称に現れる。
【0033】
図6に示すように、通話装置1は、骨導マイク11と、気導レシーバ12と、筐体13と、先端ラバー14(第1弾性体)と、マイクラバー15(第2弾性体)とを備えている。
【0034】
骨導マイク11は、利用者の発声を収音するための振動検出素子を有する。骨導マイク11は、マイクラバー15を介して利用者の耳孔内の声帯振動伝達部位として耳珠3に当接する。骨導マイク11は、利用者の耳珠3から声帯振動として伝搬する利用者の発声を収音する。
【0035】
気導レシーバ12は、例えばダイナミック型のドライバーユニットで構成される。気導レシーバ12は、受信した通話相手の音声等を再生する。なお、気導レシーバ12で再生される音は、通話相手の音声に限定されず、例えば周囲音や保留音などが含まれてもよい。
【0036】
筐体13は、ケース21(外装筐体)と、カバー22(外装筐体)と、シャーシ23(内装筐体)とを備えている。ケース21およびカバー22は、骨導マイク11および気導レシーバ12を収容する本体部を構成する。
【0037】
シャーシ23は、気導レシーバ12を保持するレシーバ保持部31を備える。シャーシ23は、気導レシーバ12の再生音を外耳道4に導く通路部32を備える。通路部32は、長手方向に延びるように形成されている。通路部32の一端(外側の端部)側に気導レシーバ12が配置され、通路部32の他端(内側の端部)側に先端ラバー14が配置される。シャーシ23には、通路部32の一部を形成する筒状部33が設けられている。
図5に示すように、筒状部33は、ケース21に設けられた開口部55に挿通されて外部に突出する。筒状部33には、先端ラバー14が取り付けられる。
【0038】
マイクラバー15は、骨導マイク11を弾性的に保持する。具体的には、マイクラバー15が、骨導マイク11を包み込む袋状をなすマイク収容部41を有する。マイク収容部41は、利用者の耳珠3に当接する当接面42を有する第1壁部43と、骨導マイク11を挟んで第1壁部43と相反する側の第2壁部44とを有する。マイクラバー15は、例えばシリコーンゴムで形成することができる。
【0039】
カバー22には、利用者の耳珠3に対向する側に開口部51が形成されている(
図5参照)。開口部51には、マイクラバー15のマイク収容部41が嵌まり込む。このとき、マイクラバー15のマイク収容部41における第1壁部43が開口部51から突出した状態になる。この開口部51から突出した第1壁部43の外面側には、利用者の耳珠3に当接する当接面42が形成されている。
【0040】
先端ラバー14は、利用者の外耳道4と相互補完的な形状に形成されている。具体的には、先端ラバー14は、外耳道4の第1カーブに沿う向きに突出する形状に形成されている。これにより、先端ラバー14は、利用者の外耳道4に全周に渡って当接し、気導レシーバ12の気密性を確保して音響特性を高めることができる。先端ラバー14には、気導レシーバ12の再生音を外耳道4に導く貫通孔61が中心部に設けられている。先端ラバー14は、例えばシリコーンゴムで形成することができる。
【0041】
図5に示すように、マイクラバー15は、マイク収容部41の外周にフランジ部45を有する。フランジ部45は、筐体13を構成するカバー22とシャーシ23との間に挟み込まれて筐体13に対して固定される。具体的には、シャーシ23に、突条部34が設けられている。
図7に示すように、シャーシ23の突条部34と、カバー22における開口部51の周縁部との間に、マイクラバー15のフランジ部45が挟み込まれる。フランジ部45は、突条部34の外側に回り込むようにL字形の断面形状に形成されている。
図8に示すように、フランジ部45および突条部34は、骨導マイク11の導線引き出し部71に対応する部分を除く全周に渡って形成されている。
【0042】
また、骨導マイク11の導線引き出し部71は、骨導マイク11からリッツ線(導線)が引き出された部分がボンド材料で補強された構成となっている。さらに、
図5に示すように、マイクラバー15には、骨導マイク11の導線引き出し部71を保持する筒状部46が設けられている。これにより、骨導マイク11が、導線引き出し部71と共にマイクラバー15に弾性的に保持される。
【0043】
このように本実施形態では、骨導マイク11がマイクラバー15に弾性的に支持される。特に、マイクラバー15の柔軟性に富む薄肉のフランジ部45が筐体13に対して固定される。このため、マイクラバー15において利用者の耳珠3に当接する当接面42から利用者の発声が声帯振動として伝達された場合に、骨導マイク11の面振動が過度に阻害されず、骨導マイク11が適切に利用者の発声を収音することができる。
【0044】
また、本実施形態では、骨導マイク11を保持するマイクラバー15が主に利用者の耳孔内の声帯振動伝達部位に当接し、骨導マイク11の周辺において筐体13が耳孔壁面に直接当接し難い状態になる。また、筐体13が耳孔壁面に接触することで異音が発生しても、その異音がマイクラバー15を通過する際に減衰するため、異音が骨導マイク11に収音され難い。また、利用者の発声などの動作に応じて外耳道4が変形しても、その外耳道4の変形に対してマイクラバー15が適宜に弾性変形して適切に追随するため、異音が発生し難い。このため、骨導マイク11に収音される異音を低減することができる。
【0045】
また、通話装置1を利用者が使用する際には、利用者が通話装置1を把持して通話装置1を耳孔に軽く押し込むことで、通話装置1が耳孔に挿入される。これにより、マイクラバー15の当接面42が利用者の耳珠3に当接すると同時に、先端ラバー14が耳珠3と相反する側の外耳道壁5に当接する。このとき、マイクラバー15が利用者の耳珠3に押しつけられることで、マイクラバー15が弾性変形し、そのマイクラバー15の弾性変形力により、マイクラバー15が利用者の耳珠3に比較的高い圧力で当接する。また、先端ラバー14は、気密性を確保するために外耳道4に全周に渡って当接するが、特に、後側の外耳道壁5に当接する部分は、マイクラバー15が利用者の耳珠3に押しつけられた際の反力により比較的高い圧力で当接する。これにより、骨導マイク11がマイクラバー15を介して利用者の耳珠3に当接した状態を安定的かつ確実に維持することができる。
【0046】
なお、先端ラバー14は、利用者の外耳道4と相互補完的ではない形状に形成され、耳珠3と相反する後側の外耳道壁5にのみ当接し、前側の外耳道壁5には当接しない構成としてもよい。これにより、気導レシーバ12の気密性は確保できないものの、マイクラバー15を利用者の耳珠3に押しつけるための適切な反力を得ることができる。
【0047】
また、マイクラバー15においては、骨導マイク11を包み込む袋状をなすマイク収容部41の第2壁部44から筒状部46に至る部分に、切れ込み47が形成されている。切れ込み47が開くようにマイク収容部41を変形させることで、骨導マイク11がマイク収容部41の内部に収容される。
【0048】
また、ケース21およびカバー22にはそれぞれ、互いに嵌合した状態でケーブルキャップ16が螺合により取り付けられるねじ部52,53が設けられている。ねじ部52,53には、骨導マイク11から引き出されたリッツ線を集束したケーブルが挿通されるケーブル挿通孔54が形成されている。
【0049】
次に、本実施形態に係るマイクラバーとその変形例について説明する。
図9は、本実施形態に係るマイクラバーとその変形例を示す斜視図である。
図10は、マイクラバー15に関する変形例に係る通話装置を示す断面図である。
【0050】
マイクラバー15は、骨導マイク11を包み込む袋状をなすマイク収容部41を有する。マイク収容部41には、利用者の耳珠3に当接する当接面42が形成されている。当接面42は、耳珠3に十分な圧力で適切に当接するように、耳珠3の形状に対応する形状に形成される。当接面42は、以下のような形状が可能である。ここで、X軸は、通話装置1の使用状態における上下方向に対応し、Y軸は、通話装置1の使用状態における内外方向に対応する。
【0051】
マイクラバー15の当接面42のX軸方向の形状に関して、本実施形態では、
図9(A)に示すように、マイクラバー15の当接面42が、円弧状に膨出した形状、すなわち、X軸方向の中心部が高くなる円弧状の断面形状をなしている。
【0052】
また、
図9(C),(E)に示す変形例でも、本実施形態と同様に、マイクラバー15の当接面42が、円弧状に膨出した形状、すなわち、X軸方向の中心部が高くなる円弧状の断面形状をなしている。
【0053】
一方、
図9(B),(D),(F)に示す変形例では、マイクラバー15の当接面42が、X軸方向に関して平坦な形状をなしている。
【0054】
また、マイクラバー15の当接面42のY軸方向の形状に関して、本実施形態では、
図9(A)に示すように、マイクラバー15の当接面42が、内側(耳奥側)に向けて次第に高くなる上り坂の形状をなしている(
図6参照)。
【0055】
また、
図9(B)に示す変形例でも、マイクラバー15の当接面42が、内側に向けて次第に高くなる上り坂の形状をなしている。
【0056】
一方、
図9(C),(D)に示す変形例では、マイクラバー15の当接面42が、Y軸方向に関して平坦な形状をなしている(
図10(A)参照)。
【0057】
また、
図9(E),(F)に示す変形例では、マイクラバー15の当接面42が、内側に向けて次第に低くなる下り坂の形状をなしている(
図10(B)参照)。
【0058】
なお、
図6、および
図10(A),(B)に示すように、マイクラバー15の当接面42の形状が変化しても、マイクラバー15に保持された骨導マイク11の位置に変化はない。すなわち、マイクラバー15の当接面42が、Y軸方向に関して傾斜した形状(上り坂の形状、または、下り坂の形状)である場合、Y軸方向の一端から他端に向けて、マイク収容部41における当接面42側の第1壁部43の厚みが次第に大きくなり、または、第1壁部43の厚みが次第に小さくなる。
【0059】
次に、先端ラバーに関する変形例について説明する。
図11は、先端ラバーに関する変形例に係る通話装置を示す断面図である。
【0060】
図6に示した例では、先端ラバー14が、中実構造となっている。一方、本変形例では、先端ラバー81が、中空構造(中抜き構造)となっている。具体的には、先端ラバー81は、筐体13側が開口した構造となっている。
【0061】
先端ラバー81は、外面部82と筒状取付部83とを有する。外面部82は、
図6に示した例の先端ラバー14の外面形状と同様である。筒状取付部83は、筐体13の筒状部33に嵌め込まれ、気導レシーバ12の再生音を利用者の外耳道4に導く貫通孔61が形成されている。
【0062】
ここで、
図11に示す例では、先端ラバー81の後側部分81aおよび前側部分81bの両方が中空構造となっているが、後側部分81aおよび前側部分81bのいずれか一方のみが中空構造で、他方が中実構造となる構成であってもよい。
【0063】
次に、介装ラバーが追加された変形例について説明する。
図12は、介装ラバーが追加された変形例に係る通話装置を示す断面図である。
【0064】
図6に示した例では、マイクラバー15が、その外周部のみでカバー22およびシャーシ23に支持され、マイクラバー15とシャーシ23との間に隙間が形成されている。一方、本変形例では、マイクラバー15が、その外周部のみでカバー22およびシャーシ23に支持されているが、マイクラバー15とシャーシ23との間に介装ラバー91(第3弾性体)が設けられている。
【0065】
介装ラバー91は、マイクラバー15のマイク収容部41において利用者の耳珠3に当接する当接面42と骨導マイク11を挟んで相反する側の第2壁部44とシャーシ23との間に設けられている。介装ラバー91は、マイクラバー15およびシャーシ23のいずれか一方に固着される。なお、介装ラバー91は、マイクラバー15およびシャーシ23の両方に固着されてもよい。介装ラバー91は、例えばポリウレタンエラストマーで形成される。介装ラバー91は、マイクラバー15と異なる材料で形成されてもよく、また、マイクラバー15と同一の材料で形成されてもよい。
【0066】
図6に示した例のように、マイクラバー15とシャーシ23との間に隙間が形成されている場合、マイクラバー15に突発的に大きな変位が発生すると、マイクラバー15がシャーシ23に突き当たることで、骨導マイク11が異音を収音することがある。一方、本変形例では、マイクラバー15とシャーシ23との間に設けられた介装ラバー91により、骨導マイク11に収音される異音を低減することができる。また、介装ラバー91により、マイクラバー15の不要な振動を減衰させる制振や、マイクラバー15の不要な振動を抑制する免振を図ることができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図13は、第2実施形態に係る通話装置を示す断面図である。
【0068】
通話装置101は、骨導マイク111と、気導レシーバ112と、筐体113と、先端ラバー114(第1弾性体)と、マイクラバー115(第2弾性体)とを備えている。骨導マイク111がマイクラバー115に収容されて弾性的に支持されている点は第1実施形態と同様である。気導レシーバ112は、例えばバランスドアーマチュア型のドライバーユニットで構成される。このような構成により、通話装置101の小型化を図ることができる。
【0069】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
図14は、第3実施形態に係る通話装置の使用状態および当接範囲を示す斜視図である。
図15は、通話装置の分解斜視図である。
図16は、通話装置の斜視図である。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。また、同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付してその説明を適宜に省略する。なお、
図14(A),
図16では、ケーブルキャップ16(
図15参照)が省略されている。
【0070】
図14(A)に示すように、第3実施形態に係る通話装置201は、第1実施形態(
図1参照)と同様に、利用者の耳2に挿入して使用される。また、マイクラバー15は、第1実施形態と同様に、耳珠3に対して後方から当接する。すなわち、
図14(B)に示すように、マイクラバー15は、耳珠3の後側の面に当接する。
【0071】
図15に示すように、通話装置201では、第1実施形態(
図5参照)と比較して、骨導マイク11が小型化されている。これにより、第1実施形態と比較して、マイクラバー15が、耳孔の奥側のより外耳道4に近い部位に当接する。
【0072】
ところで、通話装置201に設けられる弾性体には種々の役割がある。第1の役割は、密閉性(気密性)を確保することである。第2の役割は、外耳道4の変形に適切に追随することである。第3の役割は、骨導マイク11の接圧を確保することである。
【0073】
本実施形態では、
図16に示すように、弾性体として、先端ラバー14とマイクラバー15とが設けられている。先端ラバー14は、第1の役割を担う部分Aと、第3の役割を担う部分Cとを有する。部分Aは、外耳道4に全周に渡って当接して、密閉性(気密性)を確保する。部分Cは、第1弾性体として、耳珠と相反する側の外耳道壁に当接して、骨導マイク11の接圧を確保する。マイクラバー15は、第2の役割を担う部分Bを有する。部分Bは、第2弾性体として、耳珠に当接して、外耳道4の変形に適切に追随する。
【0074】
次に、第3実施形態の変形例について説明する。
図17は、第3実施形態の変形例に係る通話装置を示す斜視図である。なお、
図17では、ケーブルキャップ16(
図15参照)が省略されている。
【0075】
図17(A),(B),(C)に示す例は、1つのラバーを備えた1ピース構成である。
図17(A)に示す例では、ラバー211が設けられている。ラバー211は、第1の役割を担う部分Aと、第2の役割を担う部分Bと、第3の役割を担う部分Cとを有する。
図17(B)に示す例では、ラバー221が設けられている。ラバー221は、第2の役割を担う部分Bと、第3の役割を担う部分Cとを有する。第1の役割を担う部分Aは存在しないため、密閉性(気密性)は確保できない。
図17(C)に示す例では、ラバー231が設けられている。ラバー231は、第2の役割を担う部分Bと、第3の役割を担う部分Cとを有する。第1の役割を担う部分Aは存在しないため、密閉性(気密性)は確保できない。なお、ラバー231は、筐体を構成するものであってもよく、また、硬質な筐体の全体を覆うものであってもよい。
【0076】
図17(D),(E),(F)に示す例は、2つのラバーを備えた2ピース構成である。
図17(D)に示す例では、ラバー241,242が設けられている。ラバー241は、第1の役割を担う部分Aと、第2の役割を担う部分Bとを有する。ラバー242は、第3の役割を担う部分Cを有する。
図17(E)に示す例では、ラバー251,252が設けられている。ラバー251は、第1の役割を担う部分Aを有する。ラバー252は、第2の役割を担う部分Bと、第3の役割を担う部分Cとを有する。
図17(F)に示す例は、第3実施形態(
図16参照)である。
【0077】
図17(G)に示す例は、3つのラバーを備えた3ピース構成である。
図17(G)に示す例では、ラバー271,272,273が設けられている。ラバー271は、第1の役割を担う部分Aを有する。ラバー272は、第2の役割を担う部分Bを有する。ラバー273は、第3の役割を担う部分Cを有する。
【0078】
ここで、
図17(D),(F),(G)に示す例では、第1弾性体としての部分Cと第2弾性体としての部分Bとが別体で構成されている。一方、
図17(A),(B),(C),(E)に示す例では、第1弾性体としての部分Cと第2弾性体としての部分Bとが一体的に形成された構成となっている。
【0079】
なお、本変形例は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0080】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。
図18は、第4実施形態に係る通話装置の使用状態および当接部位を示す斜視図である。
図19は、通話装置の分解斜視図である。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。また、同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付してその説明を適宜に省略する。なお、
図18(A)では、ケーブルキャップ16(
図19参照)が省略されている。
【0081】
図18(A)に示すように、第4実施形態に係る通話装置301は、第1実施形態(
図1参照)と同様に、利用者の耳2に挿入して使用される。また、マイクラバー15は、耳珠周辺に対して後方から斜め下向きに当接する。すなわち、
図18(B)に示すように、マイクラバー15は、耳珠周辺、具体的には、耳珠3から珠間切痕6の周辺に至る範囲に当接する。マイクラバー15の当接範囲は、第3実施形態(
図14(B)参照)に比較して、珠間切痕6側に拡大されている。
【0082】
図19に示すように、通話装置301では、第3実施形態(
図15参照)と同様に、第1実施形態(
図5参照)と比較して、骨導マイク11が小型化されている。これにより、第1実施形態と比較して、マイクラバー15が、耳孔の奥側のより外耳道に近い部位に当接する。
【0083】
ところで、
図2に示したように、耳2において、耳甲介7から外耳道壁5に至る部位が、くの字に湾曲した形状をなしている。このため、第1実施形態に係る通話装置1では、耳甲介7から外耳道壁5に至る部位の形状に適合するように全体的な外形が形成されている。このような構成は、第3実施形態に係る通話装置201、および本実施形態に係る通話装置301でも同様である。これにより、正規の装着状態において、利用者が違和感なく通話装置1,201,301を使用することができる。
【0084】
一方、本実施形態に係る通話装置301では、第1実施形態に係る通話装置1(
図5参照)、および第3実施形態に係る通話装置201(
図15参照)とは、骨導マイク11およびマイクラバー15の配置が異なっている。
【0085】
具体的には、第1実施形態に係る通話装置1(
図5参照)、および第3実施形態に係る通話装置201(
図15参照)では、先端ラバー14、ケース21およびカバー22に対して、骨導マイク11およびマイクラバー15が前後方向に配置される。これにより、違和感のない正規の装着状態では、マイクラバー15が耳珠3に当接する。
【0086】
一方、
図19に示すように、本実施形態に係る通話装置301では、先端ラバー14、ケース21およびカバー22に対して、骨導マイク11およびマイクラバー15が前後方向より上下方向側に傾斜した位置に配置される。これにより、違和感のない正規の装着状態では、マイクラバー15が、耳珠3から珠間切痕6の周辺に至る範囲に当接する。
【0087】
このように本実施形態では、マイクラバー15が、耳珠3から珠間切痕6の周辺に至る範囲に当接する。これにより、声帯から伝搬する振動に対して骨導マイク11が適切な向きに配置され、収音の効率を高めることができる。このため、骨導マイク11の収音レベルの増加および安定化を図ることができる。
【0088】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。また、本出願における通話装置は、例えば有線タイプヘッドセットやBluetooth(登録商標)などの無線タイプヘッドセット、フルワイヤレスヘッドセット、トランシーバやインターコニュニケーション(インカム)やヘッドマウントディスプレイなどがあげられる。また、本出願における通話装置は、音声通話に限らず音声認識やボイスレコーダー(録音)などの用途にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係る通話装置は、利用者の耳の形状に関する個人差に関係なく、利用者の耳孔内の声帯振動伝達部位と骨導マイクとの当接状態を安定化することができ、さらに、利用者の発声などの動作に伴う異音が発生し難く、また、発生した異音が骨導マイクに収音され難い効果を有し、マイクとレシーバとを備え、利用者の頭部に装着される通話装置、特に、骨導マイクと気導レシーバとが同一の筐体に収容されて、利用者の耳に挿入して使用される通話装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0090】
1,101,201,301 通話装置
2 耳
3 耳珠
4 外耳道
5 外耳道壁
6 珠間切痕
7 耳甲介
11,111 骨導マイク
12,112 気導レシーバ
13,113 筐体
14,81,114 先端ラバー(第1弾性体)
15,115 マイクラバー(第2弾性体)
32 通路部
41 マイク収容部
42 当接面
43 第1壁部
44 第2壁部
45 フランジ部
51 開口部
61 貫通孔
91 介装ラバー(第3弾性体)