(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143698
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】正極シート、電池及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01M 4/02 20060101AFI20230928BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20230928BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230928BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230928BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003589
(22)【出願日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】202210302390.2
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522442283
【氏名又は名称】チューハイ コスミクス バッテリー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ジアジアン
(72)【発明者】
【氏名】シア,ディングオ
(72)【発明者】
【氏名】リ,スリ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジアンウェン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050FA12
5H050FA17
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】本発明は、正極シート、電池及び電子機器を提供する。
【解決手段】本発明の第1の態様は正極シートを提供し、前記正極シートは、正極集電体と、正極活物質を含む、前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活性層とを含み、前記正極シートの長手方向及び厚み方向からなる平面において、前記正極活物質の粒子の、前記正極シートの長手方向における最長距離をaとし、前記正極シートの厚み方向における最長距離をbとし、且つ、25μm*25μm以上の領域内で、a/b≧3を満たす正極活物質の粒子数をNとし、N≧2である。本発明にて提供される正極活物質は、比較的規則的な形態構造を有し、アコーディオン積層構造を形成しやすく、正極活物質の構造の完全性を向上させるのに役立ち、さらに、正極シートの圧密密度及び電池のサイクル性能を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートであって、前記正極シートは、正極集電体と、正極活物質を含む、前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活性層とを含み、
正極シートの長手方向及び厚み方向からなる平面において、前記正極活物質の粒子の、前記正極シートの長手方向における最長距離をaとし、前記正極シートの厚み方向における最長距離をbとし、且つ25μm*25μm以上の領域内で、a/b≧3を満たす正極活物質の粒子数をNとし、N≧2であることを特徴とする正極シート。
【請求項2】
前記正極活物質は、Lin-xNaxCo1-yMeyO2(0.70≦n≦1で、0<x≦0.15で、0≦y≦0.15であり、Meは、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Mn、Y、La、Sr、W、Sc、Ce、P、Nb、V、Ta、Teから選択される1つ又は複数である)であることを特徴とする請求項1に記載の正極シート。
【請求項3】
前記正極活物質のX線回折パターンに、002結晶面に対応する002ピーク、102結晶面に対応する102ピーク、及び103結晶面に対応する103ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の正極シート。
【請求項4】
前記002結晶面の回折角2θ=18.6°±0.5°であり、前記102ピークに対応する回折角2θ=41.7°±0.5°であり、前記103ピークに対応する回折角2θ=47.1°±0.5°であることを特徴とする請求項3に記載の正極シート。
【請求項5】
前記正極活物質のX線回折パターンには、101結晶面に対応する101ピーク、及び004結晶面に対応する004ピークを有し、且つ前記101ピークと004ピークとのピーク強度比はmであり、m≧1.5であることを特徴とする請求項1に記載の正極シート。
【請求項6】
前記正極活物質の粒度は6~18μmであることを特徴とする請求項1に記載の正極シート。
【請求項7】
前記正極活物質は、≧4KNの作用力下で、導電率≧1E-4S/cmであり、≧30KNの作用力下で、圧密密度≧3.75g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の正極シート。
【請求項8】
前記正極シートの圧密密度≧4.0g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の正極シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の正極シートを含むことを特徴とする電池。
【請求項10】
請求項9に記載の電池を含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極シート、電池及び電子機器に関し、電気化学技術の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、タブレットなどの消費者向け電子製品の薄型化が進むにつれて、電池のエネルギー密度に対する要求も高まる一方である。電池のエネルギー密度を向上させるために、電池の充電終止電圧及び正極シートの圧密密度を向上させるのは有効な方法の1つであり、従来の正極活物質として、コバルト酸リチウムの構造は不規則な球体であり、圧密密度の向上には限界があり、そして、充電電圧≧4.55V(vs.Li)である場合、コバルト酸リチウムに不可逆性相変化、即ちO3相のH1-3相への不可逆性相変化が発生し、H1-3相のイオン伝導率及び電子伝導度率が悪いため、コバルト酸リチウムの容量の減衰が加速され、それにより、コバルト酸リチウム構造の破壊が加速され、電池のサイクル性能に影響を与える。正極シートの圧密密度及び電池のサイクル性能をどのように向上させるかは、当業者が解決すべき技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、正極シートを提供し、正極シートの圧密密度及び電池のサイクル性能を向上させるために用いられる。
【0004】
本発明は、上記の正極シートを含む電池及び電子機器をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様では、正極シートを提供し、前記正極シートは、正極集電体と、正極活物質を含む、前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活性層とを含み、
正極シートの長手方向及び厚み方向からなる平面において、前記正極活物質の粒子の前記正極シートの長手方向における最長距離をaとし、前記正極シートの厚み方向における最長距離をbとし、且つ25μm*25μm以上の領域内で、a/b≧3を満たす正極活物質の粒子数をNとし、N≧2である。
【0006】
本発明は、正極シートを提供し、CP(横断面研磨、cross-section)技術を用いて正極シートを処理した後、SEM結像テストを行い、
図1は、本発明の一実施例にて提供される正極シートのCP-SEM図であり、
図1から分かるように、正極シートは、正極集電体100と、前記正極集電体100の表面に設けられた正極活性層とを含み、正極活性層はいくつかの正極活物質の粒子200を含み、
図1において丸で囲んだ2つの正極活物質の粒子を例とし、当該正極活物質は長尺状であり、当該正極活物質の粒子の前記正極シートの長手方向における最長距離をaとし、当該正極活物質の粒子の前記正極シート厚み方向における最長距離をbとし、且つ、25μm*25μm以上の大きさで、当該平面の任意の位置からサンプルを取り、a/b≧3を満たす正極活物質の粒子数をNとし、サンプル取り範囲内で、a/b≧3を満たす正極活物質の粒子数Nは、いずれも2以上である。本発明にて提供される正極活物質は、比較的規則的な形態構造を有し、アコーディオン積層構造を形成しやすく、正極活物質の構造の完全性を向上させるのに役立ち、さらに、正極シートの圧密密度及び電池のサイクル性能を向上させる。
【0007】
具体的な実施形態において、前記正極活物質は、コバルト酸リチウムであり、その構造式はLin-xNaxCo1-yMeyO2(0.70≦n≦1で、0<x≦0.15で、0≦y≦0.15であり、Meは、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Mn、Y、La、Sr、W、Sc、Ce、P、Nb、V、Ta、Teから選択される1つ又は複数である)である。なお、正極活物質は、異なる脱リチウム状態で、n値も異なり、正極シートをフォーメーションして容量テストする前に、正極活物質(粉体状態)中のn値は1であり、正極シートをフォーメーションして容量テストした後に、当該正極シートを含む電池の動作電圧は3.6~4.0Vであるとき、n値は0.70~1に低下し、これは、主に、電池の初回充放電時に、一部のリチウムイオンは、正負極表面の保護層であるCEI膜及びSEI膜を形成するために用いられて、一部のLi+の不可逆性損失になるため、フォーメーションして容量テストした後の正極シート中の正極活物質のLi含有量が低下する。
【0008】
正極活物質に対するXRDテストから分かるように、本発明にて提供されるコバルト酸リチウムは、一般のコバルト酸リチウムと異なる特徴的なピークを有し、具体的には、前記正極活物質のX線回折パターンは、002結晶面に対応する002ピーク、102結晶面に対応する102ピーク、及び103結晶面に対応する103ピークを有し、上記の結晶相構造を有するコバルト酸リチウムは、一般のコバルト酸リチウムに比較してより低いプラットフォーム電圧を有し、且つ、複数のプラットフォーム電圧を有し、同じ終止電圧で、より高い放電グラム当たり容量及び比較的安定な構造を有し、電池の容量及びサイクル性能を向上させるのに役立つ。
【0009】
さらに、前記002結晶面の回折角2θ=18.6°±0.5°で、前記102ピークに対応する回折角2θ=41.7°±0.5°で、前記103ピークに対応する回折角2θ=47.1°±0.5°である。
【0010】
前記正極活物質のX線回折パターンには、さらに、101結晶面に対応する101ピーク及び004結晶面に対応する004ピークを有し、且つ、前記101ピークと004ピークとのピーク強度比をmとし、m≧1.5である場合、正極材料の構造安定性を一層向させるのに役立ち、それにより、リチウムイオンの脱離と吸蔵により有利になり、そうでなければ、正極材料の構造安定性が悪くなり、反応が不完全である状態や、結晶性が悪いなどの状態により、電気化学的性能が低下する可能性がある。
【0011】
マルバーンレーザー粒度計での測定により、前記正極活物質の粒度は6~18μmであり、粒度は、正極活物質の粒子の大きさである。
【0012】
本発明にて提供される正極活物質の特殊構造に基づいて、本発明にて提供される正極活物質は、≧4KNの作用力下で、導電率≧1E-4S/cmであり、≧30KNの作用力下で、圧密密度≧3.75g/cm3であり、具体的なテスト方法は、下記の通りである。粉末状の正極活物質を容器内に置き、一定の外力の作用でそれを圧密した後、導電率及び圧密密度のテストを行い、粉末の導電率テストに使用されるのは、4探針の原理であり、本発明にて提供される正極活物質は、良好な導電性能を有し、且つ、正極シートの圧密密度を向上させるに役立つことを表す。
【0013】
単位面積内の正極活物質の粒子数Nの数を増加するために、前記正極シートの圧密密度≧4.0g/cm3である。
【0014】
テストにより、正極材料のグラム当たり容量≧196mAh/g(3.0~4.5V、vs.Li)であり、且つ、3.0~4.5V電圧下で、0.1C充放電を初めて行う時、それが得た放電グラム当たり容量をC0mAh/gに定義し、放電を開始してから4.4Vまでの放電グラム当たり容量はC1mAh/gであり、3.8V~3.7V電圧範囲内のグラム当たり容量はC2mAh/gであり、且つC1/C0≧9%で、C2/C0≧25%である。
【0015】
本発明では、さらに、上記の正極活物質の製造方法を提供し、具体的には、少なくともCo、Na元素含有の化合物NaxCoO2(0.68<x<0.74)を製造するステップ1と、Co、Na含有の化合物NaxCoO2とリチウム元素含有の化合物を脱イオン水に分散させ、イオン交換反応を行い、NaxCoO2中のNaイオンの一部をLiイオンに置換して、正極材料を得るステップ2とを含む。
【0016】
1つの具体的な実施形態では、正極材料の製造は、具体的には、ステップ1-1、ステップ1-2、及びステップ2を含む。
【0017】
ステップ1-1において、Co元素含有の化合物やナトリウム元素含有の化合物を必要な化学量割合で秤量した後、高速混合機器、サンドミル機器、ボールミル機器、コルター混合機器、傾斜型混合機器のうちの1つの混合機器を使用して、均一になるまで十分に混合して、混合材料を取得し、混合中に、水、アルコール又は他の溶媒を加え、均一に混合した後、乾燥すればよい。
【0018】
ここで、コバルト元素含有の化合物は、水酸化コバルト、四酸化三コバルト、ドープ型四酸化三コバルト、酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルトのうちの1つ又は複数であり得、ナトリウム含有の化合物は、ナトリウム含有の酸化物、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウムのうちの1つ又は複数であり得、
また、ドープ元素Me含有の化合物をさらに加えることができ、前記ドープ元素Meは、Al、Mg、Ti、Zr、Ni、Mn、Y、La、Sr、W、Sc、Ce、P、Nb、V、Ta、Teの1つ又は複数を含み、具体的には、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン等のドープ元素を含有する化合物であり得、
さらに、コバルト含有の化合物、ナトリウム含有の化合物及びMe含有の化合物は、Na:Co:Me=x:(1-y):yに従い、0.68<x<0.74で、0≦y≦0.15であり、化合物が均一になるまで十分に混合するために、混合時間を少なくとも4hにし、当業者は、SEM電子顕微鏡で化合物の混合状態を観察することができる。
【0019】
ステップ1-2において、ステップ1-1で製造された混合物料をるつぼに装填した後、マッフル炉、トンネル炉、ローラーハースキルン炉、管状炉等の高温焼結機器に入れ、空気又は酸素雰囲気で高温焼結を行い、第1の化合物NaxCo1-yMeyO2を取得し、0.68<x<0.74で、0≦y≦0.15である。
【0020】
さらに、前記焼結の温度は700~900℃であり、時間は8~50hである。
【0021】
ステップ2において、ステップ1-2で合成して取得した第1の化合物とリチウム含有化合物とを必要な割合で混合して脱イオン水に分散させ、イオン交換反応を行い、ナトリウムイオン及びリチウムイオンの水溶液での自由移動拡散作用により、第1の化合物中のNaイオンの大部分をLiイオンに置換し、反応が終了した後、反応生成物を洗浄し、乾燥すると、正極材料が得られる。
【0022】
リチウム元素含有の化合物は、炭酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウムのうちの1つ又は複数であり得、必要がある場合、炭素含有の化合物又は高速イオン伝導体化合物等をいくつ加えて、正極材料の導電性を改善することができる。
【0023】
リチウム含有化合物と第1の化合物との質量比≧1であり、さらに1~3であり、溶剤と第1の化合物との質量比≧5であり、さらに20~150である。
【0024】
使用される反応機器には、湿式被覆反応機器、共沈反応機器など、密閉機能及び撹拌能力付きの密閉容器機器が含まれ、反応中の撹拌速度は10~200rpmであり、反応温度は70~125℃であり、反応時間≧5Hであり、さらに、反応時間は10~15Hであり、
送風オーブン、真空乾燥オーブン、回転炉、箱形乾燥機など、乾燥に使用される機器は、乾燥温度は80~180℃で、乾燥時間≧10Hである。
【0025】
上記の正極活物質を製造した上で、接着剤と導電剤とを組み合わせて、正極活性層スラリーを製造して、正極集電体の少なくとも1つの表面に塗布して正極活性層を取得し、最後に、乾燥と圧延により正極シートを取得し、ここで、正極集電体は、アルミニウム箔であり得、接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)から選択される1つ又は複数であり、導電剤は、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性グラファイト、導電性炭素繊維、炭素カーボンナノチューブ、単腕カーボンナノチューブ、多腕カーボンナノチューブから選択される1つ又は複数であり、正極活物質、導電剤及び接着剤の質量比は(70~99):(0.5~15):(0.5~15)であり、さらに、正極活物質、導電剤及び接着剤の質量比は(80~98):(1~10):(1~10)である。
【0026】
本発明の第2の態様では、上記のいずれかに記載の正極シートを含む電池を提供する。
【0027】
本発明にて提供される電池は、具体的には、上記の正極シートを、負極シート、セパレータ及び電解液と共に組み込んで電池を取得し、ここで、負極シートは、負極集電体と、負極集電体の表面に設けられた負極活性層とを含み、負極活性層は、負極活物質、導電剤及び接着剤を含み、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、チタン酸リチウム、珪素炭素、酸化珪素から選択された1つ又は複数であり、導電剤及び接着剤の種類は、正極活性層と同じであり、負極活物質、導電剤及び接着剤の質量比は(70~99):(0.5~15):(0.5~15)であり、さらに、負極活物質、導電剤及び接着剤の質量比は(80~98):(1~10):(1~10)である。
【0028】
負極シートの製造中に、上記の負極活物質、導電剤及び接着剤を一定の割合で混合した後、溶媒に分散させて負極活性層スラリーを取得し、負極集電体の表面に塗布して、負極シートを取得し、負極集電体は銅箔であってもよい。
【0029】
セパレータは、当分野の一般の材料、例えばポリプロピレンを基材とする材料、又はそれに加え片面又は両面にセラミックがコーティングされた接着剤塗布セパレータである。
【0030】
電解液は、当分野の一般の材料であり、エチレン・カーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、炭酸プロピレン(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む有機溶媒と、リチウム塩と、下記式に示される構造を有する、質量が電解液の総質量の0.1~10%である添加剤と、を含む。
【化1】
【0031】
本発明にて提供される正極活物質は、高電圧電池に適用し、前記電池の動作電圧は具体的には3.0~4.5Vであり、当該電圧条件で、正極活物質が高いグラム当たり容量及び構造安定性を有するため、当該正極活物質を含む電池もよい容量及びサイクル性能を備える。
【0032】
本願の第3の態様では、本発明の第2の態様にて提供される電池を含む電子機器をさらに提供する。前記電池は、前記電子機器の電源又はエネルギー蓄積ユニットとして使用されることができる。前記電子機器は、モバイル機器(例えば携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電気トラック等)等であってもよいが、これらに限定されない。
【0033】
携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等の電子機器に対して、通常、薄型化が求められ、リチウムイオン電池を電源として用いることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の実施は、以下の利点を少なくとも有する。
1、本発明にて提供される正極活物質は、比較的規則的な形状構造を有し、アコーディオン積層構造を形成しやすく、正極シートの圧密密度及び電池のサイクル性能を向上させるのに役立つ。
2、本発明にて提供される正極活物質は、一般のコバルト酸リチウムよりもより低いプラットフォーム電圧及び複数のプラットフォーム電圧を有し、同じ終止電圧で、より高い放電グラム当たり容量及び比較的安定な構造を有し、電池の容量及びサイクル性能を向上させるのに役立つ。
3、本発明にて提供される電池は、良い容量及びサイクル性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施例にて提供される正極シートのCP-SEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下では、本発明の実施例を参照しながら、本発明の実施例における技術案を明確で、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は、本発明の実施例の一部にすぎず、全部の実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて、創造的な労働なしに得た全ての他の実施例は、何れも本発明の保護範囲に属する。
【0037】
下記の実施例に使用される実験方法は、特に説明しない限り、何れも一般的な方法であり、下記の実施例に使用される試薬や材料等は、特に説明しない限り、何れも商業的に入手可能である。
実施例1
【0038】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、下記のステップ(1)~ステップ(4)を含む。
【0039】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末及び29.105kgの硝酸コバルト六水和物粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
【0040】
(2)30gの混合料を取って、セラミックるつぼに装填し、機器の型番がVBF-1200Xであるピット型マッフル炉を使用して、高温焼結を行い、焼結の昇温グラフの昇温レートは5℃/minであり、750℃に昇温すると、定温焼結を10h行い、焼結後、常温まで自然に降温させた後、サンプルを取り出して、焼結後のコバルト、ナトリウム含有化合物Na0.69CoO2を得る。
【0041】
(3)反応容器に200mlの脱イオン水、10.49gの水酸化リチウム一水和物及び10.59gの塩化リチウムを加え、78℃の水温で、回転速度が20rpmである条件で、5min間撹拌した後、10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤取し、78℃、20rpmの回転速度を維持する条件で、反応を8H継続させる。
【0042】
(4)反応終了後、反応生成物を取り出して、脱イオン水で3回吸引・濾過・洗浄した後、90℃の送風乾燥オーブンで8H乾燥して正極材料を得た。
実施例2
【0043】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0044】
(3)反応容器に200mlの脱イオン水、10.49gの水酸化リチウム一水和物及び21.71gの臭化リチウムを加え、78℃の水温で、回転速度が20rpmである条件で、5min間撹拌した後、10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤取し、78℃、20rpmの回転速度を維持する条件で、反応を8H継続させる。
実施例3
【0045】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0046】
(3)反応容器に200mlの脱イオン水、10.49gの水酸化リチウム一水和物及び33.46gのヨウ化リチウムを加え、78℃の水温で、回転速度が20rpmである条件で、5min間撹拌した後、10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤取し、78℃、20rpmの回転速度を維持する条件で、反応を8H継続させる。
実施例4
【0047】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0048】
(3)反応容器に200mlの脱イオン水、10.49gの水酸化リチウム一水和物及び6.48gのフッ化リチウムを加え、78℃の水温で、回転速度が20rpmである条件で、5min間撹拌した後、10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤取し、78℃、20rpmの回転速度を維持する条件で、反応を8H継続させる。
実施例5
【0049】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0050】
(3)反応容器に200mlの脱イオン水、16.78gの水酸化リチウム一水和物及び3.69gの炭酸リチウムを加え、78℃の水温で、回転速度が20rpmである条件で、5min間撹拌した後、10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤取し、78℃、20rpmの回転速度を維持する条件で、反応を8H継続させる。
実施例6
【0051】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0052】
(3)反応容器に200mlの脱イオン水、16.78gの水酸化リチウム一水和物及び16.96gの塩化リチウムを加え、78℃の水温で、回転速度が20rpmである条件で、5min間撹拌した後、10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤取し、78℃、20rpmの回転速度を維持する条件で、反応を8H継続させる。
実施例7
【0053】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0054】
(3)反応容器に200mlの脱イオン水、16.78gの水酸化リチウム一水和物及び4.24gの塩化リチウムを加え、78℃の水温で、回転速度が20rpmである条件で、5min間撹拌した後、10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤取し、78℃、20rpmの回転速度を維持する条件で、反応を8H継続させる。
実施例8
【0055】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0056】
(3)反応容器に200mlの脱イオン水、10.49gの水酸化リチウム一水和物及び10.59gの塩化リチウムを加え、78℃の水温で、回転速度が30rpmである条件で、5min間撹拌した後、10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤取し、78℃、30rpmの回転速度を維持する条件で、反応を8H継続させる。
実施例9
【0057】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0058】
(1)2.138kgの酸化ナトリウム粉末及び29.105kgの硝酸コバルト六水和物粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の酸化ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例10
【0059】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0060】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末及び7.493kgの酸化コバルトを秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の酸化ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例11
【0061】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0062】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末及び9.293kgの水酸化コバルト粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例12
【0063】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0064】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末及び8.026kgの四酸化三コバルト粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例13
【0065】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0066】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末、9.200kgの水酸化コバルト粉末及び50.98gのナノアルミナ粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例14
【0067】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0068】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末、9.014kgの水酸化コバルト粉末及び152.94gのナノアルミナ粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例15
【0069】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0070】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末、8.828kgの水酸化コバルト粉末及び254.9gのナノアルミナ粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例16
【0071】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0072】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末、9.200kgの水酸化コバルト粉末及び40.30gのナノ酸化マグネシウム粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例17
【0073】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0074】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末、9.014kgの水酸化コバルト粉末及び120.91gのナノ酸化マグネシウム粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例18
【0075】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0076】
(1)3.656kgの炭酸ナトリウム粉末、8.828kgの水酸化コバルト粉末及び201.52gのナノ酸化マグネシウム粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例19
【0077】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0078】
(1)2.138kgの酸化ナトリウム粉末及び9.293kgの水酸化コバルト粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の酸化ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例20
【0079】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0080】
(1)2.138kgの酸化ナトリウム粉末、9.200kgの水酸化コバルト粉末及び50.98gのナノアルミナ粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の酸化ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例21
【0081】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0082】
(1)2.138kgの酸化ナトリウム粉末、9.014kgの水酸化コバルト粉末及び152.94gのナノアルミナ粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
実施例22
【0083】
本実施例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は、以下のとおりである。
【0084】
(1)2.138kgの酸化ナトリウム、8.828kgの水酸化コバルト粉末及び254.9gのナノアルミナ粉末を秤量し、それを高速混合機器に入れ、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の酸化ナトリウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
比較例1
【0085】
本比較例にて提供される正極材料は一般のノンドープコバルト酸リチウムであり、その化学組成はLi1.003CoO2であり、製造方法は、下記のステップ(1)~ステップ(4)を含む。
【0086】
(1)Li:Co=100.3:100のモル比で炭酸リチウム及び市場で購入した一般のドープされていない球状のCo3O4粒子を秤量し、実施例と同じ撹拌機器を使用して、300rpmで、2種類の物質を3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸リチウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
【0087】
(2)30gの混合料を取って、セラミックるつぼに装填し、機器の型番がVBF-1200Xであるピット型マッフル炉を使用して、高温焼結を行い、焼結の昇温グラフの昇温レートは5℃/minであり、1050℃に昇温すると、定温焼結を10h行い、焼結後、常温まで自然に降温させた後、サンプルを取り出して、焼結後のコバルト、リチウム化含有化合物Li1.003CoO2を得る。
【0088】
(3)焼結して得たコバルト酸リチウムに対して粉砕・研磨処理を行った後、再度粉末をマッフル炉に置いて、950℃で、8h焼結し、その後、焼結生成物に対して粉砕処理を行って、D50が15.2μmである、何のドープ被覆もないLi1.003CoO2を得る。
比較例2
【0089】
本比較例にて提供される正極材料は、高電圧ドープ被覆コバルト酸リチウムであり、その化学組成はLi1.0028Co0.982Al0.014Mg0.002La0.002O2である。
【0090】
当該正極材料の製造方法は、ステップ(1)~ステップ(3)を含む。
【0091】
(1)Li:Co:Mg=100.28:98.2:0.2のモル比で、炭酸リチウム及び市場で購入した一般のAl及びLaがドープされている球状Co3O4粒子並びに酸化マグネシウム粒を秤量し、当該Co3O4粒子の化学量論比はCo:Al:La=98.2:1.4:0.2であり、実施例と同じ撹拌機器を使用して、300rpmで、2種類の物質を3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出し、混合料に白色の炭酸リチウムの小さな白点がないことを確認した後、材料を均一に混合したと見なす。
【0092】
(2)30gの混合料を取って、セラミックるつぼに装填し、機器の型番がVBF-1200Xであるピット型マッフル炉を使用して、高温焼結を行い、焼結の昇温グラフの昇温レートは5℃/minであり、1030℃に昇温すると、定温焼結を10h行い、焼結後、常温まで自然に降温させた後、サンプルを取り出して、焼結後のコバルト、ナトリウム含有化合物Li1.0028Co0.982Al0.014Mg0.002La0.002O2を得る。
【0093】
(3)焼結して得られたコバルト酸リチウムに対して粉砕・研磨処理を行った後、それと二酸化チタンをCo:Ti=98.2:0.2のモル比で秤量し、その後、2種類の材料を高速混合機器に入れ、材料の混合工程を設定し、300rpmで3分間混合した後、500rpmで5分間混合してから、1000rpmで10分間混合した後、混合料を取り出して、再度粉末をマッフル炉に置いて、950℃で、8h焼結し、その後、焼結生成物に対して粉砕処理を行って、D50が14.8μmである、ドープ被覆型の高電圧コバルト酸リチウム材料であるLi1.0028Co0.982Al0.014Mg0.002La0.002Ti0.002O2を得る。
比較例3
【0094】
本比較例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は以下のとおりである。
【0095】
(3)10.49gの水酸化リチウム一水和物、10.59gの塩化リチウム及び10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム元素含有の化合物Na0.69CoO2を秤量して、混合器に入れて、均一に混合した後、300℃で、高温焼結を5H行う。
比較例4
【0096】
本比較例にて提供される正極材料の製造方法は、実施例1を参照することができ、相違点は下記の通りである。
【0097】
(3)10.49gの水酸化リチウム一水和物、10.59gの塩化リチウム及び10gのステップ2で得たコバルト、ナトリウム含有化合物Na0.69CoO2を秤量して、混合器に入れ、均一に混合した後、250℃で、5H高温焼結する。
【0098】
実施例1~22及び比較例1~4にて提供される正極材料に対してXRDテスト、導電率テスト及び圧密密度テストを行い、XRDテストで得た結晶面の回折角、ピーク強度比及び導電率、圧密密度テストの結果は表1に示すとおりである。
【0099】
【0100】
表1のデータから、比較例1~2と比較して、本発明にて提供される正極活物質は、いずれも002結晶面、102結晶面、103結晶面に対応する特徴的なピークを有し、且つ、8KNの作用力下で、導電率≧1E-4S/cmであり、30KNの作用力下で、圧密密度≧3.75g/cm3であることを見出し、本発明にて提供される正極活物質は、よりよい放電グラム当たり容量、構造安定性、導電性能を有するとともに、本発明にて提供される正極活物質は、圧密されやすく、正極シートの圧密密度を向上させるのに役立つことを表す。
【0101】
表1の実施例1~12にて提供されるXRDデータから分かるように、異なる製造原料及び比例関係は、正極材料の相のピーク位置及びピーク強度に対して一定の影響があり、実施例13~22にて提供されるXRDデータから分かるように、ドープ元素の含有量の増加に伴って、正極材料のうち101結晶面と004結晶面とのピーク強度比が顕著に増加し、比較例3~4から分かるように、焼結方式を用いてイオン交換反応を行うことと比較して、本発明にて提供される溶液法で製造された正極材料の101結晶面/004結晶面ピーク強度比mは顕著に増加する。
【0102】
実施例1~22及び比較例1~4にて提供される正極活物質に対してボタン電池容量テストを行い、ボタン電池の製造方法は、下記のとおりである。正極活物質、導電性カーボンブラック(SP)及びPVDFを、8:1:1の重量比で混合し、溶媒に分散させて、正極活性層スラリーを取得し、当該スラリーをアルミニウム箔集電体に塗布し、圧延して正極シートを製造し、その後、正極シートを金型で直径が12mmのミニウエハーに打ち抜いた後、乾燥・秤量処理してから、Ar保護雰囲気でのグローブボックスにおいて、2025のボタン型電池ケースを使用して、Li金属ウエハーで負極を作り、一般の高電圧コバルト酸リチウム電解液と共にボタン型電池を組み立てる。ボタン型電池の製造が完了した後、一般の環境で4H静置した後、初回充放電容量テストを行い、テスト条件は、0.1Cで4.5Vになるまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電した後に終了し、3min間静置した後、0.1Cで3.0Vになるまで放電し、初回放電グラム容量C0mAh/gをそれぞれ記録するとともに、放電が開始してから4.4Vまでの電圧終止範囲内での放電グラム当たり容量C1mAh/gであると定義し、放電容量において、3.8V~3.7Vの放電電圧の範囲で放電されるグラム当たり容量はC2mAh/gであり、C1/C0及びC2/C0を計算し、結果は表2に示すとおりである。
【0103】
実施例1~22及び比較例1~2に提供される正極活物質に対して、一定量の増幅を行った後、それを導電性カーボンブラック、PVDFと96:2:2の重量比で混合し、溶媒に分散させて、正極活性層スラリーを製造し、正極アルミニウム集電体の表面に塗布し、表2に示す圧密密度にしたがって圧延した後に、正極シートが製造され、正極シートに対してCP処理を行った後に、SEM結像テストを行い、増幅倍数は5000である場合(即ち、サンプル取り領域は25μm*25μmである)、a/b≧3の正極活物質の粒子数Nを統計し、統計結果は表2に示すとおりである。
【0104】
正極シートを、負極シート、セパレータ及び電解液と共に組み込んでリチウムイオン電池を取得し、ここで、負極シートの製造方法は、人造黒鉛、スチレンジエンゴム(SBR)と、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウムと、導電性カーボンブラックとを94:3:2:1の重量比で混合し、混合物を水中に分散させ、公転-自転混合装置で混合した後に、負極活性層スラリーを得て、負極の銅集電体に塗布して、負極シートを得る。
【0105】
電解液は、エチレン・カーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、炭酸プロピレン(PC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む有機溶媒と、下記構造を有する添加剤とを含む。
【化2】
【0106】
続いて、リチウムイオン電池のサイクル性能をテストし、サイクル性能テストの過程は下記の通りである。25℃で、1Cの充電レートで4.50Vまで定電流充電してから、0.05Cの充電レートで4.50Vまで定電圧充電し、その後、1Cの放電レートで3.0Vまで放電し、このような充放電サイクルを500回繰り返し、1回目のサイクル時の放電容量及び500回目のサイクル時の放電容量を測定し、サイクル後の容量保持率=(500回目のサイクル時の放電容量)/(1回目のサイクル時の放電容量)*100%でサイクル後の容量保持率を算出し、結果は表2に示すとおりである。
【0107】
【0108】
表2から分かるように、本発明にて提供される正極活物質で製造された正極シートは、高い圧密密度に適用することができ、正極シートのアコーディオン積層構造により、同じ領域範囲内で、a/b≧3を満たす粒子数Nも顕著に多くなり、正極活物質の粒子の規則性が高くなり、且つ、ドープ元素の含有量の増加に伴って、この条件を満たす粒子数も顕著に多くなることを表し、実施例13~22から分かるように、正極活物質中のドープ元素の含有量の増加に伴って、粒子数Nも多くなり、粒子の規則性が顕著に高くなり、リチウムイオン電池のサイクル性能を向上させるのに役立つことを表す。
【0109】
表2から分かるように、本発明にて提供される正極活物質のグラム当たり容量は、顕著に増加し、具体的には、C1/C0≧9%で、C2/C0≧25%であり、本発明にて提供される、特殊構造を有する正極活物質は、より多くの充放電プラットフォームを有するとともに、より高いグラム当たり容量で発揮することを説明し、また、正極活物質がより低いプラットフォーム電圧を有することに基づいて、非常に良い構造安定性を有し、それによりリチウムイオン電池の500回のサイクルを経た後の容量保持率はいずれも80%以上であり、高電圧下で、よいサイクル性能を有する。
【0110】
上記をまとめると、本発明にて提供される正極活物質により、リチウムイオン電池は、高電圧で高い放電グラム当たり容量及び優れたサイクル性能を有することができ、リチウムイオン電池に対する薄型化の要求を満たすことができる。
【0111】
最後に、以上の各実施例は、本発明の技術案を説明するために使用されるだけで、限定するものではないことを理解されたい。前述の各実施例を参照しながら本発明について詳細に説明したが、当業者であれば、前述の各実施例に記載の技術案を修正するか、又はその技術的特徴の一部又は全部に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換により、該当する技術案の本質が本発明各実施例技術案の範囲から逸脱することはない。
【符号の説明】
【0112】
100…正極集電体、
200…正極活物質。