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特開2023-143704熱可塑性樹脂組成物およびその成形体ならびにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143704
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびその成形体ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230928BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20230928BHJP
   C08L 85/02 20060101ALI20230928BHJP
   C08K 5/3465 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L97/02
C08L85/02
C08K5/3465
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006544
(22)【出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2022049808
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真之
(72)【発明者】
【氏名】前田 麻美
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA01W
4J002AB01Y
4J002AH00Y
4J002BB00W
4J002BB12W
4J002BB21W
4J002BC02W
4J002BG03W
4J002CF00W
4J002CF18W
4J002CL00W
4J002CL05W
4J002CQ01X
4J002EU136
4J002FA04Y
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】
植物系フィラーを含み、機械的特性(機械的強度)が大幅に向上した樹脂組成物、および成形体ならびにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】
熱可塑性樹脂(A)と、植物系フィラー(B)と、下記式(1)で表される化合物(C)とを含む樹脂組成物を調製する。
(式中、Zは環の構成原子として窒素原子を含む単環式または縮合多環式不飽和複素環を示し、Xは単糖残基またはオリゴ糖残基を示し、Rは置換基を示し、kは残基Xの個数を示し、mは置換基Rの個数であり、kは0または1を示し、mは0または1以上の整数を示す。ただし、前記Zが単環式不飽和複素環である場合、kは1である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、植物系フィラー(B)と、下記式(1)
【化1】
(式中、Zは環の構成原子として窒素原子を含む単環式または縮合多環式不飽和複素環を示し、Xは単糖またはオリゴ糖残基を示し、Rは置換基を示し、kは残基Xの個数を示し、mは置換基Rの個数であり、kは0または1を示し、mは0または1以上の整数を示す。ただし、前記Zが単環式不飽和複素環である場合、kは1である)
で表される化合物(C)とを含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記式(1)において、Zが縮合多環式不飽和複素環である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)において、Zがピリミジン環またはプリン環、Xが単糖残基であり、kが1である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
化合物(C)が、下記式(2)で表される化合物である請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化2】
(式中、Xは前記式(1)に同じであり、R,R,Rは同一または異なって水素原子またはアルキル基を示し、R,R,Rは同一または異なって水素原子、アミノ基、置換アミノ基、オキソ基を示し、n1,n3,n5は0または1を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示す。)
【請求項5】
化合物(C)がリボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドである請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
化合物(C)が、アデノシンおよびグアノシンから選択された少なくとも一種を含む請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
化合物(C)の分子量が200~1000である請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
植物系フィラー(B)が、木粉および/またはセルロース繊維を含む請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
植物系フィラー(B)が木粉を含み、この木粉の割合が、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量100質量部に対して、20~80質量部である請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
植物系フィラー(B)がセルロース繊維を含み、このセルロース繊維の割合が、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量100質量部に対して、0.1~50質量部である請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項11】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種を含む請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂と、変性ポリオレフィン系樹脂および/または脂肪族ポリエステル系樹脂とを含む請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物で形成された成形体。
【請求項14】
熱可塑性樹脂(A)と、植物系フィラー(B)と、前記式(1)で表される化合物(C)とを混練し、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法。
【請求項15】
溶媒を用いることなく混練する請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1記載の式(1)で表される化合物(C)および植物系フィラー(B)を熱可塑性樹脂(A)に添加して、機械的特性および/または成形性を向上する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物系フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体、ならびにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来の繊維であるセルロースは、環境負荷が小さく、かつ持続型資源であるとともに、高弾性率、高強度、低線膨張係数などの優れた特性を有する。そのため、幅広い用途、例えば、紙、フィルムやシートなどの材料、樹脂の複合材料(例えば、樹脂の補強材)などに利用されている。また、近年、複合材料の機械的強度を向上させるため、環境負荷に対して配慮したバイオ由来の解繊助剤や分散剤の使用も検討されている。
【0003】
例えば、特開2017-105983号公報(特許文献1)には、セルロース繊維と、解繊助剤と、樹脂とを含む樹脂組成物が開示され、解繊助剤として、尿素や尿素の誘導体、グルコースなどの単糖類やスクロースなどの二糖類の糖、糖アルコール、単糖・二糖の誘導体などを使用して、樹脂組成物の引張弾性率および強度が向上したことが記載されている。
【0004】
また、特開2020-158700号公報(特許文献2)には、繊維状セルロースと分散剤との混合物と、樹脂とを含む複合樹脂が開示され、分散剤としてメラミンなどを使用した複合樹脂の曲げ弾性率が、繊維状セルロースも分散剤も含まない樹脂自体の曲げ弾性率と比べて向上したことが記載されている。
【0005】
また、国際公開第2019/163873号(特許文献3)には、解繊助剤を使用して、疎水化セルロース系繊維と樹脂とを混合した樹脂組成物の製造方法が開示され、ε-カプロラクタムを解繊助剤として使用し、疎水化セルロース繊維を含有する樹脂組成物の曲げ弾性率および曲げ強度が向上したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-105983号公報
【特許文献2】特開2020-158700号公報
【特許文献3】国際公開第2019/163873号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~3の解繊助剤や分散剤を使用しても、セルロース繊維を含む樹脂組成物の機械的特性をさらに向上させることは困難である。
【0008】
従って、本発明の目的は、植物系フィラーを含み、機械的特性が大幅に向上した樹脂組成物、および成形体ならびにこれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂と、植物系フィラーと、所定の構造を有する化合物とを使用すると、機械的特性が大きく向上した樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、[1]熱可塑性樹脂(A)と、植物系フィラー(B)と、下記式(1)で表される化合物(C)とを含む。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Zは環の構成原子として窒素原子を含む単環式または縮合多環式不飽和複素環を示し、Xは単糖またはオリゴ糖残基を示し、Rは置換基を示し、kは残基Xの個数を示し、mは置換基Rの個数であり、kは0または1を示し、mは0または1以上の整数を示す。ただし、前記Zが単環式不飽和複素環である場合、kは1である)
【0013】
前記態様[1]の樹脂組成物は、[2]前記式(1)において、Zは環の構成原子として窒素原子を含む縮合多環式不飽和複素環であってもよい。また、前記態様[1]の樹脂組成物は、[3]前記式(1)において、Zはピリミジン環またはプリン環、Xは単糖残基であり、kは1であってもよい。また、これらの態様[1]~[3]のいずれかの前記樹脂組成物において、[4]化合物(C)は、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Xは前記式(1)に同じであり、R,R,Rは同一または異なって水素原子またはアルキル基を示し、R,R,Rは同一または異なって水素原子、アミノ基、置換アミノ基、オキソ基を示し、n1,n3,n5は0または1を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示す。)
【0016】
前記態様[1]~[4]のいずれかの前記樹脂組成物において、[5]化合物(C)は、リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドであってもよく、特に、前記態様[1]~[5]のいずれかの前記樹脂組成物において、[6]化合物(C)は、アデノシンおよびグアノシンから選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。前記態様[1]~[6]のいずれかの前記樹脂組成物において、[7]前記化合物(C)の分子量は200以上かつ1000以下であってもよい。
【0017】
前記態様[1]~[7]のいずれかの前記樹脂組成物において、[8]前記植物系フィラー(B)は、木粉および/またはセルロース繊維を含んでいてもよい。前記態様[8]の樹脂組成物において、[9]前記植物系フィラー(B)は木粉を含み、この木粉の割合は、樹脂組成物(熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量)100質量部に対して、20~80質量部、好ましくは30~70質量部であってもよい。前記態様[8]の樹脂組成物において、[10]前記植物系フィラー(B)はセルロース繊維を含み、このセルロース繊維の割合は、樹脂組成物(熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量)100質量部に対して、0.1~50質量部、好ましくは1~30質量部であってもよい。
【0018】
前記態様[1]~[10]のいずれかの前記樹脂組成物において、[11]前記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択された少なくとも一種であってもよい。前記態様[1]~[11]のいずれかの前記樹脂組成物において、[12]前記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂と、変性ポリオレフィン系樹脂および/または脂肪族ポリエステル系樹脂とを含んでいてもよい。
【0019】
本発明は、[13]前記態様[1]~[12]のいずれかの樹脂組成物で形成される成形体も包含する。さらに、本発明は、[14]前記樹脂組成物を製造する方法も包含し、この方法では、熱可塑性樹脂(A)と、植物系フィラー(B)と、前記式(1)で表される化合物(C)とを混練することにより、本発明の樹脂組成物を調製できる。具体的には、[15]前記態様[14]の製造方法において、溶媒を用いることなく混練してもよい。
【0020】
また、本発明は、[16]前記式(1)で表される化合物(C)および植物系フィラー(B)を熱可塑性樹脂(A)に添加して、熱可塑性樹脂(A)と植物系フィラー(B)とを含む樹脂組成物の機械的特性および/または成形性、好ましくは機械的特性を向上する方法も包含する。
【0021】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル基」で示し、炭素数が6~10のアリール基は「C6-10アリール基」で示す。
【0022】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「植物系フィラー」とは、植物を材料または原料とするフィラーを意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、熱可塑性樹脂と植物系フィラーと所定の構造を有する化合物とを混合するため、樹脂組成物および成形体の機械的特性を大きく向上できる。また、植物系フィラーに特別な処理(前処理)が必要なく、他の添加剤を加える必要もないため、簡便に樹脂組成物および成形体の機械的特性を向上できる。さらに、所定の分子量を有する化合物は、高温でも熱分解や揮発しにくいため、融点または溶融温度の高い熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物および成形体においても、機械的特性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、植物系フィラー(B)と、所定の構造を有する化合物(C)とを含む。
【0025】
(熱可塑性樹脂(A))
(ベース樹脂としての第1の熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)としては、特に制限されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
これらのうち、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂がさらに好ましく、曲げ強さおよび曲げ弾性率などの機械的強度を大きく向上できるポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。セルロース繊維などの精製した植物系フィラーと高い親和性を有する観点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂がより好ましく、木粉などの精製していない植物系フィラーと高い親和性を有する観点から、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂としては、α-C2-6オレフィンの単独または共重合体、環状ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。α-C2-6オレフィンの単独または共重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(メチルペンテン-1)などのα-C2-6オレフィンの単独重合体;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-(メチルペンテン-1)共重合体などのα-C2-6オレフィンの共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOA)、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体などのα-C2-6オレフィンと共重合性単量体との共重合体などが挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、環状オレフィンの単独重合体(COP)、環状オレフィンと共重合性単量体(エチレンなどのα-C2-6オレフィンなど)との共重合体(COC)などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
これらのうち、少なくともα-C2-6オレフィンの単独または共重合体を含むポリオレフィン系樹脂が好ましい。α-C2-6オレフィンの単独または共重合体としては、ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂の割合は、熱可塑性樹脂(A)中10質量%以上であってもよく、好ましくは、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、特に100質量%が好ましい。
【0029】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン;スチレン共重合体、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系共重合体、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体などのゴム強化ポリスチレン系樹脂などが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0031】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(4-ヒドロキシブタン酸)等のポリヒドロキシアルカン酸;ポリエチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等のC2-4アルキレンC4-8アルカン酸単位を有するホモまたは共重合ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのC2-4アルキレンC8-12アリレート単位を有するホモまたは共重合ポリエステル;ポリ(1,4-シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)などのC5-10シクロアルキレンジC1-4アルキレンC8-12アリレート;ポリフェニレンアリレートなどの全芳香族ポリエステル(ポリアリレート)、およびこれらの共重合体などが挙げられる。ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらのポリエステル系樹脂のうち、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がさらに好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのC2-4アルキレンC8-12アリレート単位を有するホモまたは共重合ポリエステルがより好ましく、特に、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのC3-4アルキレンC8-12アリレート単位を有するホモまたは共重合ポリエステルが好ましく、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(ブチレンテレフタレート単位を有するホモまたは共重合ポリエステル)がより好ましく、ポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。これらのポリエステル系樹脂は、単独または二種以上組み合わせて使用できる。ブチレンテレフタレート単位などのアルキレンアリレート単位の割合は、例えば、ポリエステル系樹脂中、10モル%以上、好ましくは、以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、特に100モル%が好ましい。ブチレンテレフタレート単位などのアルキレンアリレート単位の質量の割合は、例えば、ポリエステル系樹脂中、10質量%以上、好ましくは、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、特に100質量%が好ましい。ポリエステル系樹脂の割合は、熱可塑性樹脂(A)中10質量%以上であってもよく、好ましくは、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、特に100質量%が好ましい。
【0032】
ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられる。脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族モノマー単位で形成されていればよく、例えば、脂肪族ジアミンと脂肪族カルボン酸とのホモポリアミド、例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612など;ラクタムおよび/またはラクタムに対応する脂肪族アミノカルボン酸のホモポリアミド、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12などが挙げられる。脂肪族ポリアミド系樹脂はコポリアミドであってもよい。コポリアミドとしては、例えば、コポリアミド6/66、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12などが挙げられる。脂環族ポリアミド系樹脂としては、少なくとも脂環族モノマー単位を有していればよく、脂肪族モノマーと脂環族モノマーとを組み合わせて形成されていてもよい。例えば、脂環族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミド、例えば、ジアミノメチルシクロヘキサンとアジピン酸との重合体などが挙げられる。芳香族ポリアミド系樹脂としては、少なくとも芳香族モノマーを有していればよく、例えば、メタキシリレンジアミンとテレフタル酸との重合体、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重合体などのポリアミドMXDなどが挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド系樹脂が好ましい。脂肪族モノマー単位の割合は、例えば、ポリアミド系樹脂中、10モル%以上、好ましくは、以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、特に100モル%が好ましい。また、ポリアミド系樹脂の割合は、熱可塑性樹脂(A)中10質量%以上であってもよく、好ましくは、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、特に100質量%が好ましい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂の総量の割合は、熱可塑性樹脂(A)中10質量%以上であってもよく、好ましくは、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、特に100質量%が好ましい。
【0034】
熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)の融点または溶融温度は、例えば、250℃以下、好ましくは100~240℃、さらに好ましくは120~230℃、最も好ましくは150~230℃程度であってもよい。
【0035】
熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)の重量平均分子量(Mw)は、5000~1000000の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、10000~800000、15000~700000、20000~600000、23000~500000、25000~100000であり、最も好ましくは30000~50000程度である。分散度(Mw/Mn)は、例えば、1~5、好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、特に1~1.5であってもよい。なお、熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定できる。
【0036】
(第2の熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)は、他の熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂)と組み合わせて使用してもよい。第2の熱可塑性樹脂は、例えば、前記第1の熱可塑性樹脂に対応し、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物基などで変性された変性熱可塑性樹脂を使用できる。中でも、例えば、第1の熱可塑性樹脂としてのポリオレフィン系樹脂に、第2の熱可塑性樹脂としての変性ポリオレフィン系樹脂を組み合わせると、変性ポリオレフィン系樹脂がポリオレフィン系樹脂と植物系フィラーとの親和性を向上させるためか、樹脂組成物の機械的特性を向上させやすくなる。
【0037】
前記変性ポリオレフィン系樹脂は、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどのハロゲン化ポリオレフィン系樹脂であってもよいが、酸(不飽和カルボン酸など)もしくはその無水物で変性(酸変性)されたポリオレフィン系樹脂(酸変性ポリオレフィン系樹脂)であるのが好ましく、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレンなどの無水マレイン酸変性ポリエチレン系樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(特にエチレン-(メタ)アクリル酸グラフト共重合体)などの酸変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらの変性ポリオレフィン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの変性ポリオレフィン系樹脂のうち、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂などの酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂などの無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0038】
前記変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000~1000000の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に7000~700000、8000~500000、10000~300000、12000~150000、15000~100000であり、最も好ましくは20000~50000程度である。分散度(Mw/Mn)は、例えば、1~5、好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、特に1~1.5であってもよい。なお、変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定できる。
【0039】
前記変性ポリオレフィン系樹脂の酸価は、例えば0.1~250mgKOH/g程度であってもよく、好ましくは1~200mgKOH/g、さらに好ましくは10~100mgKOH/g程度であってもよい。
【0040】
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂との質量比は、前者/後者=100/0~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、99/1~60/40、98/2~70/30、97/3~75/25、95/5~80/20であり、植物系フィラーがセルロース繊維の場合、好ましくは95/5~85/15、より好ましくは95/5~90/10であり、植物系フィラーが木粉の場合、好ましくは95/5~85/15であり、さらに好ましくは92/8~85/15であり、最も好ましくは90/10~87/13である。
【0041】
前記第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂の合計割合は、熱可塑性樹脂(A)中10質量%以上であってもよく、好ましくは、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、特に100質量%が好ましい。
【0042】
本発明では、前記第1の熱可塑性樹脂としてのポリオレフィン系樹脂、特に、α-C2-6オレフィンの単独または共重合体と、前記第2の熱可塑性樹脂としての酸変性ポリオレフィン系樹脂とを組み合わせると、α-C2-6オレフィンの単独または共重合体の植物系フィラーに対する分散性または親和性が向上し、樹脂組成物の機械的特性を有効に向上できる。α-C2-6オレフィンの単独または共重合体と、酸変性ポリオレフィン系樹脂との質量比は、前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂との質量比と好ましい態様も含めて同じであり、具体的には、α-C2-6オレフィンの単独または共重合体と、酸変性ポリオレフィン系樹脂との質量比は、前者/後者=100/0~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、99/1~60/40、98/2~70/30、97/3~75/25、95/5~80/20であり、植物系フィラーがセルロース繊維の場合、好ましくは95/5~85/15、より好ましくは95/5~90/10であり、植物系フィラーが木粉の場合、好ましくは95/5~85/15であり、さらに好ましくは92/8~85/15であり、最も好ましくは90/10~87/13である。
【0043】
前記第2の熱可塑性樹脂の割合は、熱可塑性樹脂(A)中25質量%以下であってもよく、好ましくは、以下段階的に、0~23質量%、0.5~20質量%、1~18質量%、1.5~16質量%、特に2~15質量%が好ましい。
【0044】
なお、前記第1の熱可塑性樹脂としてのα-C2-6オレフィンの単独または共重合体と、前記第2の熱可塑性樹脂としての酸変性ポリオレフィン系樹脂との組み合わせにおいて、α-C2-6オレフィンの単独または共重合体と酸変性ポリオレフィン系樹脂との総量の割合は、例えば、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂全体に対して10質量%以上であってもよく、好ましくは、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、特に100質量%が好ましい。
【0045】
(第3の熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)は、さらに他の熱可塑性樹脂(第3の熱可塑性樹脂)と組み合わせてもよい。第3の熱可塑性樹脂として、生分解性を有する熱可塑性樹脂(生分解性熱可塑性樹脂)を使用すると、第1の熱可塑性樹脂に対する植物系フィラーの分散性や親和性が向上するためか、樹脂組成物の機械的特性を向上させやすくなる。また、第3の熱可塑性樹脂として生分解性熱可塑性樹脂を用いると、本発明の木粉やセルロース繊維などの植物系フィラーと相まって、樹脂組成物の生分解性を高度に向上できる。
【0046】
生分解性熱可塑性樹脂としては、連結基として少なくともエステル結合またはアミド結合を有していることが好ましく、特に、連結基として少なくともエステル結合を有する脂肪族ポリエステル系樹脂である場合が多い。
【0047】
脂肪族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分との反応、ヒドロキシアルカン酸成分(またはヒドロキシアルカン酸と等価なラクトン成分)の反応、脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とヒドロキシアルカン酸成分との反応により調製されるポリエステル系樹脂であってもよい。
【0048】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのアルカンジカルボン酸、好ましくはC2-10アルカン-ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、好ましくはC4-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0049】
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルカンジオール、好ましくはC2-10アルカンジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのポリアルカンジオール、好ましくはジまたはトリC2-4アルカンジオールなどが挙げられる。これらの脂肪族ジオールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0050】
ヒドロキシアルカン酸としては、例えば、グリコール酸、2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、2-ヒドロキシブタン酸(2-ヒドロキシ酪酸)、4-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸(2-ヒドロキシ吉草酸)、4-ヒドロキシペンタン酸、5-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチル-ペンタン酸、4-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘプタン酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、9-ヒドロキシノナン酸、10-ヒドロキシデカン酸などのC1-6アルキル基を有していてもよいヒドロキシC2-15アルカン酸などが例示できる。これらのヒドロキシアルカン酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0051】
これらの脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分およびヒドロキシアルカン酸成分から選択される1種以上から得られる脂肪族ポリエステル系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの脂肪族ポリエステル系樹脂のうち、生分解性、機械的特性および成形性の観点から、生分解性を有する脂肪族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(4-ヒドロキシブタン酸)などのポリヒドロキシアルカン酸;ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペートなどのポリC2-6アルキレンC3-12アルカノエートなどが好適に使用される。
【0052】
前記第1の熱可塑性樹脂と前記第3の熱可塑性樹脂との質量比は、前者/後者=100/0~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、99/1~60/40、98/2~70/30、97/3~75/25、95/5~80/20である。
【0053】
前記第2の熱可塑性樹脂と前記第3の熱可塑性樹脂との質量比は、前者/後者=100/0~0/100程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、90/10~10/90、80/20~20/80、70/30~30/70、60/40~40/60である。
【0054】
前記第3の熱可塑性樹脂の割合は、熱可塑性樹脂(A)中20質量%以下であってもよく、好ましくは、以下段階的に、0~18質量%、0.5~16質量%、1~15質量%、1.5~12質量%であり、特に2~10質量%が好ましい。
【0055】
前記第2の熱可塑性樹脂および第3の熱可塑性樹脂の合計割合は、熱可塑性樹脂(A)中30質量%以下であってもよく、好ましくは、以下段階的に、0~28質量%、1~26質量%、2~25質量%、3~22質量%、特に5~20質量%が好ましい。
【0056】
熱可塑性樹脂(A)の割合は、樹脂組成物中、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量に対して10質量%以上であってもよく、好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上である。植物系フィラーがセルロース繊維を含む場合、熱可塑性樹脂(A)の割合は、樹脂組成物中、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量に対して50質量%以上(例えば、50~99質量%)程度であってもよく、好ましくは、以下段階的に、70質量%以上(例えば、70~95質量%)、80質量%以上(例えば、80~90質量%)であり;植物系フィラーが木粉を含む場合、熱可塑性樹脂(A)の割合は、樹脂組成物中、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量に対して10質量%以上(例えば、10~90質量%)程度であってもよく、好ましくは、以下段階的に、20質量%以上(例えば、20~70質量%)、30質量%以上(例えば、30~50質量%)である。
【0057】
前記の通り、熱可塑性樹脂(A)が、第1の熱可塑性樹脂と、第2および/または第3の熱可塑性樹脂とを含むと、前記第1の熱可塑性樹脂と植物系フィラー(B)との親和性が向上するためか、植物系フィラーを、前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物に高濃度で充填することが可能である。そのため、前記樹脂組成物の機械的強度を大きく向上できる。
【0058】
例えば、第1の熱可塑性樹脂と、第2および/または第3の熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂(A)において、植物系フィラー(B)がセルロース繊維を含む場合、熱可塑性樹脂(A)の合計割合は、樹脂組成物中、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量に対して30質量%以上(例えば、30~99質量%)程度であってもよく、好ましくは、以下段階的に、40質量%以上(例えば、40~90質量%)、50質量%以上(例えば、50~80質量%)であり;植物系フィラー(B)が木粉を含む場合、熱可塑性樹脂(A)の合計割合は、樹脂組成物中、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量に対して30質量%以上(例えば、30~99質量%)程度であってもよく、好ましくは、以下段階的に、40質量%以上(例えば、40~90質量%)、50質量%以上(例えば、50~80質量%)である。
【0059】
(植物系フィラー(B))
植物系フィラー(B)は、植物が材料または原料であれば特に制限はない。なお、本明細書および特許請求の範囲において、「植物系フィラー」とは、「植物フィラー」、「植物性フィラー」、「植物由来フィラー」などと同格の意味で用いる。
【0060】
材料の植物として、木材、草本類、種子毛繊維、竹、サトウキビなどが挙げられる。木材としては、例えば、マツ、ヒノキ、モミ、トウヒ、ツガ、スギ、イチイ、イヌガヤなどの針葉樹;ユーカリ、ブナ、カバ、ポプラ、カエデ、シイ、サクラ、柿などの広葉樹などが挙げられる。草本類としては、例えば、麻、亜麻、マニラ麻、ラミー、ジュート、ケナフ、サイザルなどの麻類;ワラ;バガス;ミツマタなどが挙げられる。種子毛繊維としては、例えば、コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなどが挙げられる。これらの材料は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0061】
これらの材料は、精製せずに使用してもよいし、精製して使用してもよい。植物系フィラーの中でも、精製せずに使用するものとしては、木粉が好ましく、上記の材料などを精製して使用するものとしては、繊維状にしたセルロース繊維が好ましい。木粉とセルロース繊維とは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
木粉およびセルロース繊維の総量の割合は、植物系フィラー(B)中10質量%以上であってもよく、好ましくは、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、特に100質量%が好ましい。
【0063】
植物系フィラー(B)の割合は、樹脂組成物、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量100質量部に対して、例えば0.1~90質量部程度の範囲から選択でき、例えば1~80質量部、好ましくは3~70質量部、さらに好ましくは5~60質量部、最も好ましくは8~55質量部である。植物系フィラー(B)の割合が少なすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、樹脂組成物中への分散性や成形性が低下する虞がある。
【0064】
植物系フィラー(B)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、例えば1~200質量部程度の範囲から選択でき、例えば2~180質量部、好ましくは3~150質量部、さらに好ましくは5~140質量部、最も好ましくは10~130質量部である。植物系フィラー(B)の割合が少なすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、樹脂組成物中への分散性や成形性が低下する虞がある。
【0065】
(木粉)
木粉の原料としては、植物フィラー(B)の項で挙げた木材が挙げられ、これらの中でも、針葉樹が好ましく、ヒノキがさらに好ましい。これらの木材は、例えば、間伐材などを利用してもよく、廃材(建築廃材)などを利用してもよい。
【0066】
木粉の作製方法は、特に制限されず、例えば、木材を粉砕した粉砕物などを使用してもよく、木材を加工する際に生じた木くずなどを使用してもよい。
【0067】
木粉の形状は、特に制限されず、例えば、球状;楕円体状、多角体状、角柱状、円柱状、棒状、不定形状などの異方形状であってもよい。
【0068】
木粉を利用すると、リグニンやヘミセルロースなどの疎水性の非セルロース成分をほどよく含有するためか、オレフィン系樹脂などの疎水性の樹脂を含む樹脂組成物に高濃度で充填することが可能であり、樹脂組成物の強度および弾性率を大きく向上できるという利点がある。そのため、疎水性の樹脂には、セルロース繊維より、木粉を使用する方が好ましい。
【0069】
木粉の粒径は特に制限されないが、篩分け法によるメッシュ通過品としては、例えば、1000μm以下、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。木粉の平均径は、例えば、10~1000μm、好ましくは30~500μm、さらに好ましくは50~300μm、より好ましくは100~250μmである。また、木粉の形状が異方形状である場合、木粉の平均径は、各木粉について長軸径と短軸径との平均値から算出し、100個程度の木粉の平均値について加算平均することにより算出してもよい。
【0070】
木粉の割合は、樹脂組成物、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量100質量部に対して、例えば10~90質量部程度の範囲から選択でき、例えば20~80質量部、好ましくは30~70質量部、さらに好ましくは40~60質量部、最も好ましくは45~55質量部である。特に、前記熱可塑性樹脂(A)が、第1の熱可塑性樹脂と、第2および/または第3の熱可塑性樹脂とを含む場合、木粉の割合は、樹脂組成物、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量100質量部に対して、例えば5~90質量部程度の範囲から選択でき、例えば10~75質量部、好ましくは15~60質量部、さらに好ましくは20~55質量部、最も好ましくは25~50質量部である。木粉の割合が少なすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、樹脂組成物中への分散性や成形性が低下する虞がある。
【0071】
木粉の割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、例えば30~250質量部程度の範囲から選択でき、例えば50~200質量部、好ましくは70~180質量部、さらに好ましくは80~150質量部、より好ましくは90~140質量部、最も好ましくは100~130質量部である。特に、前記熱可塑性樹脂(A)が、第1の熱可塑性樹脂と、第2および/または第3の熱可塑性樹脂とを含む場合、木粉の割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、例えば10~200質量部程度の範囲から選択でき、例えば15~150質量部、好ましくは20~100質量部、さらに好ましくは25~75質量部、最も好ましくは30~60質量部である。木粉の割合が少なすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、樹脂組成物中への分散性や成形性が低下する虞がある。
【0072】
また、木粉の割合は、化合物(C)100質量部に対して、例えば10~10000質量部程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、100~7000質量部、200~5000質量部、250~4000質量部、300~3000質量部、350~2700質量部、400~2500質量部であり、最も好ましくは450~2200質量部である。木粉の割合が少なすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、樹脂組成物中への分散性が低下する虞がある。
【0073】
(セルロース繊維)
セルロース繊維は、パルプ(原料セルロース、セルロース)を解繊することなく、粉状、粒状、チップ状などにして使用してもよく、パルプを解繊して微細化(またはミクロフィブリル化)して使用してもよい。
【0074】
パルプの原料としては、植物系フィラー(B)の項で挙げた植物を使用してもよい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよく、パルプ材を化学的に処理した化学パルプであってもよい。
【0075】
セルロース繊維は、ポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂などの親水性のまたは極性基を有する第1~第3の熱可塑性樹脂(特に第1の熱可塑性樹脂)との親和性が高く、親水性のまたは極性基を有する樹脂の機械的特性を向上させやすい。よって、疎水性の第1~第3の熱可塑性樹脂(特に第1の熱可塑性樹脂)には木粉を使用し、親水性のまたは極性基を有する第1~第3の熱可塑性樹脂(特に第1の熱可塑性樹脂)にはセルロース繊維を使用してもよく、樹脂の特性または極性によって、木粉とセルロース繊維とを使い分けることができる。また、熱可塑性樹脂として、疎水性の第1~第3の熱可塑性樹脂(特に第1の熱可塑性樹脂)と、親水性のまたは極性基を有する第1~第3の熱可塑性樹脂(特に第2および/または第3の熱可塑性樹脂)とを組み合わせると、木粉およびセルロース繊維のそれぞれの植物系フィラーに対して親和性を有する樹脂を含んでいるため、植物系フィラーが、木粉であってもセルロース繊維であっても、前記熱可塑性樹脂または樹脂組成物の機械的特性を向上できるが、より効果的に機械的特性を向上できる点からセルロース繊維が好ましい。
【0076】
セルロース繊維の繊維径はミクロンオーダーであってもよく、ナノメーターサイズであってもよいが、分散性を向上させやすい点からミクロンオーダーであるのが好ましい。セルロース繊維の平均繊維径は、例えば、3nm~500μm程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、10nm~100μm、100nm~90μm、1~80μm、10~70μm、20~60μm、30~50μmであってもよく、特に35~45μmであってもよい。平均繊維径が大きすぎると、樹脂組成物の強度などの特性が低下する虞がある。なお、セルロース繊維の最大繊維径は、例えば1~1000μm程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、4~900μm、5~700μm、10~500μm、15~400μm、20~300μm、30~100μmであってもよく、特に40~80μm程度であってもよい。
【0077】
セルロース繊維の平均繊維長は、例えば0.01μm以上の範囲から選択でき、例えば0.01~500μm、好ましくは0.1~400μmであってもよく、通常1μm以上、例えば5~350μm、好ましくは10~300μm、さらに好ましくは20~200μm、より好ましくは30~180μm、特に50~150μmであってもよい。平均繊維長が短すぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に長すぎると、樹脂組成物中での分散性が低下する虞がある。
【0078】
セルロース繊維の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば5以上の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、5~10000、10~5000、20~3000、50~2000、100~1000であり、特に200~800程度であってもよい。また、アスペクト比が小さすぎると、補強効果が低下する虞があり、アスペクト比が大きすぎると、均一な分散が困難となり、繊維が分解(または損傷)し易くなる虞がある。
【0079】
なお、本明細書および特許請求の範囲では、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
【0080】
セルロース繊維が、平均繊維径がナノメーターサイズのセルロースナノ繊維である場合、セルロースナノ繊維は、慣用の方法、例えば、高圧ホモジナイザー法、水中対抗衝突法、グラインダー法、ボールミル法、二軸混練法などの物理的方法で得られたナノ繊維であってもよく、TEMPO触媒、リン酸、二塩基酸、硫酸、塩酸などを用いた化学的方法で得られたナノ繊維であってもよい。
【0081】
セルロース繊維は、結晶性の高いセルロース繊維であってもよく、セルロースの結晶化度は、例えば40~100%、好ましくは50~100%、さらに好ましくは60~100%、より好ましくは70~100%、最も好ましくは75~99%程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上、特に60~98%であってもよい。また、セルロースの結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、結晶化度は、粉末X線回折装置((株)リガク製「Ultima IV」)などを用いて測定できる。
【0082】
セルロース繊維は、ヘミセルロースやリグニンなどの非セルロース成分を含んでいてもよいが、特に、セルロースナノ繊維の場合、非セルロース成分の割合は繊維状セルロース中30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。セルロース繊維は、非セルロース成分を実質的に含まないセルロース繊維であってもよく、特に、非セルロース成分を含まないセルロース繊維であってもよい。
【0083】
セルロース繊維の重合度は、組成物の機械的特性の点から、500以上であってもよく、好ましくは600以上であってもよく、特に600~100000程度であってもよく、セルロースナノ繊維の場合、粘度平均重合度が、例えば100~10000、好ましくは200~5000、より好ましくは300~2000程度であってもよい。
【0084】
粘度平均重合度は、TAPPI T230に記載の粘度法により測定できる。すなわち、セルロース(セルロース繊維または原料セルロース)0.04gを精秤し、水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとを加え、5分間程度攪拌してセルロースを溶解する。得られた溶液をウベローデ型粘度管に入れ、25℃の条件下で流下速度を測定する。水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとの混合液をブランクとして測定する。これらの測定値に基づいて算出した固有粘度[η]を用い、木質科学実験マニュアル(日本木材学会編、文永堂出版)に記載の下記式に従って粘度平均重合度を算出できる。
【0085】
粘度平均重合度=175×[η]。
【0086】
セルロース繊維の割合は、樹脂組成物、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量100質量部に対して、0.01~80質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.1~50質量部、好ましくは0.5~40質量部、さらに好ましくは1~30質量部、より好ましくは3~20質量部、最も好ましくは5~15質量部である。特に、前記熱可塑性樹脂(A)が、第1の熱可塑性樹脂と、第2および/または第3の熱可塑性樹脂とを含む場合、セルロース繊維の割合は、樹脂組成物、特に、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量100質量部に対して、例えば0.1~100質量部程度の範囲から選択でき、例えば5~75質量部、好ましくは10~70質量部、さらに好ましくは15~60質量部、最も好ましくは20~50質量部である。セルロース繊維の割合が少なすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、分散性や樹脂組成物の成形性が低下する虞がある。
【0087】
熱可塑性樹脂(A)100質量部に対するセルロース繊維の割合は、0.1~100質量部程度の範囲から選択でき、例えば1~50質量部、好ましくは2~45質量部、さらに好ましくは3~30質量部、より好ましくは5~20質量部、最も好ましくは10~15質量部である。特に、前記熱可塑性樹脂(A)が、第1の熱可塑性樹脂と、第2および/または第3の熱可塑性樹脂とを含む場合、セルロース繊維の割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、例えば10~200質量部程度の範囲から選択でき、例えば15~150質量部、好ましくは20~100質量部、さらに好ましくは25~75質量部、最も好ましくは30~60質量部である。セルロース繊維の割合が少なすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、樹脂組成物の成形性が低下する虞がある。
【0088】
また、化合物(C)100質量部に対するセルロース繊維の割合は、例えば10~5000質量部程度の範囲から選択でき、例えば100~4500質量部、好ましくは500~4000質量部、最も好ましくは1000~3000質量部である。また、化合物(C)100質量部に対するセルロース繊維の割合は、熱可塑性樹脂(A)の種類などに応じて、例えば10~1000質量部程度の範囲から選択でき、例えば100~500質量部、好ましくは250~350質量部、最も好ましくは270~330質量部であってもよい。セルロース繊維の割合が少なすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、樹脂組成物中での分散性が低下する虞がある。
【0089】
(化合物(C))
前記式(1)で表される化合物(C)は、植物系フィラー(B)を熱可塑性樹脂(A)中に均一に分散させるための相溶化剤または分散剤として機能し、熱可塑性樹脂(A)中に植物系フィラー(B)を均一に分散できるためか、樹脂組成物の機械的特性を大きく向上できる。
【0090】
前記式(1)において、Zで表される環の構成原子として窒素原子を含む不飽和複素環としては、単環式不飽和複素環、縮合多環式不飽和複素環などが例示できる。これらの不飽和複素環のうち、縮合多環式不飽和複素環が好ましい。また、Zで表される不飽和複素環は、置換基Rを有していてもよい。
【0091】
単環式不飽和複素環としては、環の構成原子として窒素原子の数は、少なくとも1つ、好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2、特に2である複素環が好ましく、例えば、イミダゾリン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環などの不飽和または芳香族複素5員環;ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環などの不飽和または芳香族複素6員環などが例示でき、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環などの不飽和または芳香族複素6員環が好ましく、芳香族複素6員環がさらに好ましく、特にピリミジン環が好ましい。
【0092】
縮合多環式不飽和複素環としては、環の構成原子として窒素原子の数は、少なくとも1つ、好ましくは1~4、さらに好ましくは2~4、特に4である複素環が好ましく、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、ヒポキサンチン環などの不飽和または芳香族複素6員環と不飽和または芳香族複素5員環とが縮合した縮合二環式不飽和または芳香族複素環;キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環などの2つの不飽和または芳香族複素6員環が縮合した縮合二環式不飽和または芳香族複素環;カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環などの縮合三環式不飽和または芳香族複素環などが例示でき、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環などの不飽和または芳香族複素6員環と不飽和または芳香族複素5員環とが縮合した縮合二環式不飽和または芳香族複素環が好ましく、さらに不飽和または芳香族複素6員環と不飽和または芳香族複素5員環とが縮合した縮合二環式芳香族複素環が好ましく、特にプリン環が好ましい。
【0093】
なお、単環式不飽和複素環、縮合多環式不飽和複素環として例示した複素環は、水素添加(水素化)されている複素環も含む意味で用いる。例えば、プリン環の1位の窒素原子と6位の炭素原子とにそれぞれ1つずつ水素原子が添加(付加)した複素環も、プリン環に含むものとする。
【0094】
前記式(1)において、置換基Rとしては、例えば、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノ基、置換アミノ基などの1価の基、酸素原子(またはオキソ基[=O])などの2価の基などが挙げられる。
【0095】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。好ましいアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキル基である。
【0096】
ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1-6アルキル基などが挙げられる。好ましいヒドロキシアルキル基としては、以下、段階的に、ヒドロキシC1-4アルキル基、ヒドロキシC1-3アルキル基、ヒドロキシC1-2アルキル基、最も好ましくはヒドロキシメチル基である。
【0097】
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジアシルアミノ基などが挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基などが挙げられる。ジアシルアミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのジC2-5アシルアミノ基などが挙げられる。
【0098】
これらの基Rのうち、好ましい基Rとしては、ヒドロキシ基、アルキル基、アミノ基、置換アミノ基、オキソ基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基などのC1-2アルキル基が好ましく、置換アミノ基としては、ジC1-2アルキルアミノ基が好ましい。なかでも、ヒドロキシ基、アミノ基、置換アミノ基、オキソ基が好ましく、特にアミノ基、オキソ基が好ましく、セルロース繊維との親和性向上から、アミノ基が最も好ましい。なお、オキソ基は、ケト-エノール互変異性によって、ヒドロキシ基に変換されていてもよい。
【0099】
基Rの置換数mは、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば、それぞれ0~8の整数であってもよい。好ましくは以下段階的に、0~6、0~4、0~3であり、特に好ましくは0~2である。また、置換数mが2以上である場合、同一の環Zに置換する2以上の基Rの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。
【0100】
基Rのうち、酸素原子(またはオキソ基[=O])などの2価の基の置換位置は、通常、環Zの炭素原子に結合している。また、1価の基の置換位置は、特に限定されないが、環Zの炭素原子に結合していることが多い。なかでも、ヒドロキシ基、アミノ基、置換アミノ基は、通常、環Zの炭素原子に結合している。
【0101】
前記式(1)において、Xで表される単糖残基またはオリゴ糖残基は、単糖類またはオリゴ糖類のヒドロキシ基が脱離してできる1つのヒドロキシ基を除いた1価の基を意味する。また、糖類とは、糖とその誘導体とを含む意味で用いる。好ましい基Xは、単糖残基、二糖乃至四糖のオリゴ糖残基が挙げられる。
【0102】
単糖残基としては、例えば、アラビノース、リボース、デオキシリボース、キシロースなどのペントース;グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトースなどのヘキソースなどの単糖類からヒドロキシ基が脱離してできる1つのヒドロキシ基を除いた残基が例示でき、ペントース残基が好ましく、特にリボース残基、デオキシリボース残基が好ましい。
【0103】
二糖残基としては、例えば、トレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、パラチノースなどの二糖類からヒドロキシ基が脱離してできる1つのヒドロキシ基を除いた残基が例示できる。
【0104】
三糖残基としては、マルトトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオースなどの三糖類からヒドロキシ基が脱離してできる1つのヒドロキシ基を除いた残基が例示できる。
【0105】
四糖以上のオリゴ糖残基としては、マルトテトラオースなどの四糖以上のオリゴ糖類からヒドロキシ基が脱離してできる1つのヒドロキシ基を除いた残基が例示できる。
【0106】
これらのうち、単糖残基、二糖残基、三糖残基がさらに好ましく、単糖残基、二糖残基が特に好ましく、単糖残基が最も好ましい。
【0107】
前記式(1)において、残基Xの個数(置換数)であるkは0または1であり、前記Zが単環式不飽和複素環であるときは、kは1である。Zにかかわらず、kは1であるのが好ましい。kが1であり、基Xを有していると、化合物(C)の分子量が増加し、化合物(C)が高温でも揮発しにくくなるという利点がある。
【0108】
特に、化合物(C)は、核酸塩基と、糖類とがグリコシド結合した結合体であるのが好ましく、なかでも核酸塩基と、単糖類とがグリコシド結合により結合しているヌクレオシドが好ましく、核酸塩基の炭素原子または窒素原子と、単糖類の1位の炭素原子とでグリコシド結合を形成しているヌクレオシドがさらに好ましい。核酸塩基は、誘導体であってもよい。なお、ヌクレオシドとは、核酸塩基と糖類とがグリコシド結合している化合物の総称を意味する。
【0109】
核酸塩基としては、ピリミジン塩基、プリン塩基などが挙げられる。ピリミジン塩基としては、チミン、シトシン、ウラシル、5-メチルシトシン、15-ヒドロキシメチルシトシンなどが挙げられる。プリン塩基としては、プリン、アデニン、グアニン、イソグアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、テオフィリン、テオブロミン、カフェイン、尿酸などが挙げられる。これらの中でも、プリン塩基が好ましく、アデニン、グアニンがさらに好ましい。なお、ピリミジン塩基とは、ピリミジンとピリミジンから誘導されるピリミジン誘導体とを含む意味で用い、プリン塩基とは、プリンとプリンから誘導されるプリン誘導体とを含む意味で用いる。また、ピリミジン誘導体、プリン誘導体とは、ピリミジン骨格、プリン骨格に、前記式(1)のRで表される置換基が修飾した化合物であってもよい。
【0110】
単糖類、オリゴ糖類としては、それぞれ単糖残基、オリゴ糖残基に対応する糖類が挙げられる。
【0111】
化合物(C)のうち、プリン塩基と糖類とが結合した結合体は、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
【0112】
【化3】
【0113】
(式中、Xは前記式(1)に同じであり、R,R,Rは同一または異なって水素原子またはアルキル基を示し、R,R,Rは同一または異なって水素原子、アミノ基、置換アミノ基、オキソ基を示し、n1,n3,n5は0または1を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示す。)
【0114】
なお、前記実線と破線との二重線は、基R,R,Rと環の炭素原子との結合、環を構成する原子間の結合を意味する。環の場合、例えば、n1が0のとき、1位の窒素原子は二重結合を有する(-N=または=N-)。n3が0のときの3位の窒素原子、n5が0のときの7位の窒素原子についても同様である。
【0115】
前記式(2)において、Xは好ましい態様も含めて前記式(1)と同じである。また、R,R,Rのアルキル基、R,R,Rの置換アミノ基としては、前記式(1)のRと同様のものが挙げられる。なお、オキソ基は、ケト-エノール互変異性によって、ヒドロキシ基に変換されていてもよい。
【0116】
n1,n3,n5が1である場合、好ましいR,R,Rとしては、水素原子、メチル基などのC1-2アルキル基が好ましく、特に、水素原子が好ましい。
【0117】
好ましいRとしては、水素原子、アミノ基、オキソ基が挙げられ、水素原子、アミノ基がさらに好ましく、特に、水素原子が好ましい。
【0118】
好ましいRとしては、水素原子、アミノ基、オキソ基が挙げられ、アミノ基、オキソ基がさらに好ましく、特に、水素原子が好ましい。また、Rがアミノ基であるとき、Rは水素原子、オキソ基である場合が多い。
【0119】
好ましいRとしては、水素原子、アミノ基、オキソ基が挙げられ、水素原子、オキソ基がさらに好ましく、特に、水素原子が好ましい。
【0120】
前記式(2)で表される化合物のうち、Rが水素原子またはアミノ基、Rがアミノ基またはオキソ基、Rが水素原子である化合物が好ましく、Rが水素原子またはアミノ基、Rがアミノ基またはオキソ基、Rが水素原子である化合物がさらに好ましく、特に、R,Rが水素原子、Rがアミノ基である化合物が好ましい。
【0121】
前記式(1)のZが単環式不飽和複素環、Xが単糖残基、k=1である具体的な化合物(C)としては、Zがピリミジン環、Xがリボース残基であるリボヌクレオシド、例えば、5-メチルウリジン(リボシルチミン)、ウリジン、シチジンなど;Zがピリミジン環、Xがデオキシリボース残基であるデオキシリボヌクレオシド、例えば、チミジン、デオキシウリジン、デオキシシチジンなど;5-メチルシチジンなど、メチル基などで修飾された修飾ヌクレオシドなどが挙げられる。これらの中で、チミジン、デオキシウリジン、デオキシシチジンなどのZがピリミジン環、Xがデオキシリボース残基であるデオキシリボヌクレオシドが好ましく、チミジンがさらに好ましい。これらの化合物は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0122】
前記式(1)のZが縮合多環式不飽和複素環、Xが単糖残基、k=1である具体的な化合物(C)としては、Zがプリン環、Xがリボース残基であるリボヌクレオシド、例えば、アデノシン、グアノシン、イノシンなど;Zがプリン環、Xがデオキシリボース残基であるデオキシリボヌクレオシド、例えば、デオキシアデノシン、デオキシグアノシンなど;1-メチルアデノシン、N-メチルアデノシン、7-メチルグアノシンなど、メチル基などで修飾された修飾ヌクレオシドなどが例示できる。これらの中で、Zがプリン環、Xがリボース残基であるリボヌクレオシドが好ましく、アデノシン、グアノシンがさらに好ましい。これらの化合物は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0123】
これらの化合物(C)のうち、Zが縮合多環式不飽和複素環、Xが単糖残基、k=1である化合物が好ましく、Zがプリン環、Xがリボース残基であるリボヌクレオシド(C1)がさらに好ましく、プリン塩基とリボースとのN-グリコシド結合体がより好ましく、特にアデノシン、グアノシンが好ましい。
【0124】
Zがプリン環、Xがリボース残基であるリボヌクレオシド(C1)の割合は、例えば、化合物(C)全体に対して10モル%以上であってもよく、好ましくは、以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、特に100モル%が好ましい。
【0125】
化合物(C)の分子量は、100以上の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、120~10000、140~8000、150~5000、170~3000、180~2000、200~1000、220~800であり、特に、250~700程度であってもよい。分子量が低すぎると、高温の混練時に揮発してしまい、樹脂組成物中の植物系フィラー(B)の分散性が低下する虞がある。
【0126】
化合物(C)の割合は、植物系フィラー(B)100質量部に対して1~60質量部程度の範囲から選択でき、例えば1.5~55質量部、好ましくは2~50質量部、さらに好ましくは2.5~40質量部、より好ましくは3~37質量部、最も好ましくは4~35質量部程度であってもよい。化合物(C)の割合が植物系フィラー(B)に対して少なすぎると分散剤としての作用(効果)が不足し、樹脂組成物中の植物系フィラー(B)の分散性や強度が低下する虞があり、化合物(C)が多すぎると、樹脂組成物中の低分子量化合物比率が大きくなることで、樹脂組成物の物性が低下する虞がある。
【0127】
また、化合物(C)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して0.5~60質量部程度の範囲から選択でき、例えば1~50質量部、好ましくは2~40質量部、さらに好ましくは2.5~35質量部、より好ましくは3~30質量部、最も好ましくは3.5~27質量部程度であってもよい。化合物(C)の割合が熱可塑性樹脂(A)に対して少なすぎると、樹脂組成物の強度が低下する虞があり、逆に、化合物(C)の割合が多すぎると、樹脂組成物中の低分子量化合物比率が大きくなることで、樹脂組成物の物性が低下する虞が生じる。
【0128】
また、化合物(C)の割合は、熱可塑性樹脂(A)、植物系フィラー(B)および化合物(C)の総量に対して、例えば0.5~40質量%であってもよく、好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは1.5~20質量%、より好ましくは2~15質量%、最も好ましくは2.5~10質量%程度であってもよい。化合物(C)の割合が少なすぎると、化合物(C)による植物系フィラーを樹脂組成物中に分散させる効果が小さくなり、強度低下の虞があり、化合物(C)の割合が多すぎると、樹脂組成物および成形体の機械的特性が低下する虞がある。
【0129】
(添加剤)
本発明の樹脂組成物は、必要により、種々の添加物、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤などの安定化剤;帯電防止剤;リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤などの難燃剤;難燃助剤;耐衝撃改良剤;流動性改良剤;充填剤などの補強材;着色剤;色相改良剤;滑剤;離型剤;分散剤;抗菌剤;防腐剤などを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0130】
添加剤の合計割合は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部であってもよい。
【0131】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、植物系フィラー(B)と、前記式(1)で表される化合物(C)とを混練する混練工程を経て製造できる。この方法では、化合物(C)が相溶化剤または分散剤として作用し、熱可塑性樹脂(A)に植物系フィラー(B)を効率よく分散できるようである。そのため、予め植物系フィラー(B)のセルロース繊維などに微細化処理を施したり、セルロースの表面のヒドロキシ基に修飾処理を施したりする必要がなく、また、植物系フィラー(B)の分散液(スラリー液)の調製、植物系フィラー(B)と樹脂とのエマルジョンの調製なども不要であり、混練という一段階の操作で簡便に前記樹脂組成物を調製できる。また、本発明の樹脂組成物は、所定の分子量の化合物(C)を使用すると、高温でも揮発しにくいため、高温の処理条件が求められる融点の高いポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂においても、混練という一段階の操作で簡便な方法で調製できる。
【0132】
混練は、例えば、熱可塑性樹脂(A)と、植物系フィラー(B)と、化合物(C)とを少なくとも熱可塑性樹脂(A)が溶融した状態で混練できれば、特に制限されず、慣用の方法、例えば、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、一軸または二軸押出機などの押出機などが利用でき、高い剪断力が作用可能なニーダ、二軸押出機などを好適に使用してもよい。
【0133】
混練工程は、空気中、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、開放系で行ってもよく、通常、密閉した混練系で行う場合が多い。希ガスとしては、アルゴンなどが挙げられる。
【0134】
混練温度としては、例えば、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(または軟化点)以上の温度(またはガラス転移温度以上、セルロースの分解温度未満の温度)であればよく、例えば、270℃以下、好ましくは100~260℃、さらに好ましくは150~250℃、特に180~240℃程度であってもよい。混練時間は、特に限定されないが、本発明の方法では、短時間で樹脂組成物を得られることが多いため、混練時間は、例えば1分~5時間、好ましくは3分~3時間、さらに好ましくは5分~1時間、最も好ましくは8~30分程度であってもよい。
【0135】
なお、混練工程において、各成分は、複数回に分けて混練系に添加してもよい。例えば、熱可塑性樹脂(A)と植物系フィラー(B)と化合物(C)とを含む組成物を予め混練し、さらに添加剤を加えてもよい。
【0136】
[成形体]
本発明の成形体は、前記樹脂組成物で形成されている。成形体の形状は、特に制限されず、例えば、フィルム、シート、板などの二次元的構造、管、棒、チューブ、中空品などの三次元的構造などであってもよく、ハウジング、ケーシングなどであってもよい。
【0137】
成形体は、得られた樹脂組成物を、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などにより成形してもよい。
【実施例0138】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。各種評価方法および使用した原料を下記に示す。
【0139】
[評価方法]
(曲げ強度および曲げ弾性率)
ISO 178に準拠して、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
【0140】
(アイゾット衝撃強度(ノッチ付き))
ISO 180に準拠して、アイゾット衝撃強度を測定した。
【0141】
[使用原料]
(熱可塑性樹脂)
PA6:ポリアミド6、ユニチカ(株)製、「ユニチカナイロン A1030BRL」
PP:ポリプロピレン、プライムポリマー(株)製、「プライムポリプロ J105G」
PP-MAH:無水マレイン酸変性ポリプロピレン、理研ビタミン(株)製、「リケエイドMG-400P」
PBT:ポリブチレンテレフタレート、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、「ノバデュラン 5010R5」
PLA:ポリ乳酸、ユニチカ(株)製、「テラマック TE-2000」。
【0142】
(植物系フィラー)
セルロース繊維:植物由来のパルプ(化学修飾されていない)シートを2mm×5mm角程度のチップ状に裁断したもの、平均繊維径約40μm、平均繊維長1mm以上
木粉:ヒノキ木粉、60メッシュふるい通過品。
【0143】
(化合物(C))
アデノシン:東京化成工業(株)製
グアノシン:東京化成工業(株)製。
【0144】
(比較化合物)
スクロース:東京化成工業(株)製
スクロースオクタアセテート:東京化成工業(株)製。
【0145】
[実施例1および比較例1~3]
表1に示す質量割合の各成分を二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)で、温度240℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製した。なお、混練物のストランド化とカットが安定的に実施できたものをペレット化「可」、熱劣化し実施できなかったものをペレット化「不可」とした。得られた樹脂組成物を、射出成形機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片を用いて、曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。実施例1および比較例1~3の配合割合および評価結果を表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
表1から明らかなように、PA6とセルロース繊維のみを含む比較例1に比べ、アデノシンを添加する実施例1では、曲げ強度と曲げ弾性率を向上できた。一方、スクロースを添加する比較例2では、混練物が熱劣化したため、ペレット化することができなかった。また、スクロースオクタアセテートを含む比較例3では、混練自体は可能であったものの、実施例1や比較例1に比べると、曲げ強度と曲げ弾性率が低くなった。
【0148】
[実施例2~3および比較例4~6]
表2に示す質量割合の各成分を用い、二軸押出機の温度を200℃、射出成形機のシリンダー温度を210℃、金型温度を40℃に変更する以外は、実施例1と同様にペレット状の樹脂組成物を調製し、短冊状試験片を得た。得られた試験片を用いて、アイゾット衝撃強度、曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。実施例2~3および比較例4~6の配合割合および評価結果を表2に示す。
【0149】
【表2】
【0150】
表2から明らかなように、PPとPP-MAHとセルロース繊維のみを含む比較例4に比べ、アデノシンまたはグアノシンを添加した実施例2~3では、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度を向上できた。一方、スクロースを添加する比較例5では、混練物が熱劣化したため、ペレット化することができなかった。また、スクロースオクタアセテートを含む比較例6では、混練自体は可能であったものの、実施例2、実施例3や比較例4に比べると、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度が低くなった。
【0151】
[実施例4~5および比較例7~9]
表3に示す質量割合の各成分を用い、射出成形機の金型温度を70℃に変更する以外は、実施例1と同様にペレット状の樹脂組成物を調製し、短冊状試験片を得た。得られた試験片を用いて、曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。実施例4~5および比較例7~9の配合割合および評価結果を表3に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
表3から明らかなように、PBTとセルロース繊維のみを含む比較例7に比べ、アデノシンまたはグアノシンを添加した実施例4~5では、曲げ強度、曲げ弾性率を向上できた。一方、スクロースを添加する比較例8では、混練物が熱劣化したため、ペレット化することができなかった。また、スクロースオクタアセテートを含む比較例9では、混練自体は可能であったものの、実施例4、実施例5や比較例7に比べると、曲げ強度、曲げ弾性率が低くなった。
【0154】
[実施例6~9および比較例10~11]
表4に示す質量割合の各成分を二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)で、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/hで混練し、混練物を水槽に吐出した。混練物が冷えた後に目開き8mmのメッシュを通過できるまで粉砕機にて粉砕した。得られた粉砕物を、射出成形機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」)を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片を用いて、曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。実施例6~9および比較例10~11の配合割合および評価結果を表4に示す。
【0155】
【表4】
【0156】
表4から明らかなように、PP、PP-MAH、木粉のみを含む比較例10に比べ、アデノシンまたはグアノシンを添加した実施例6~9では、曲げ強度と曲げ弾性率を向上できた。一方、スクロースオクタアセテートを含む比較例11では、実施例6~9、比較例10に比べると曲げ強度と曲げ弾性率が低くなった。
【0157】
[実施例10~11および比較例12~13]
表5に示す質量割合の各成分を二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)で、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/hで混練し、混練物を水槽に吐出した。混練物が冷えた後に目開き8mmのメッシュを通過できるまで粉砕機にて粉砕した。得られた粉砕物を、射出成形機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」)を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片を用いて、曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。実施例10~11および比較例12~13の配合割合および評価結果を表5に示す。
【0158】
【表5】
【0159】
表5から明らかなように、PP、PP-MAH、セルロース繊維のみを含む比較例12に比べ、アデノシンを添加した実施例10では、曲げ強度と曲げ弾性率を向上できた。さらに、PP、PP-MAH、セルロース繊維、PLAを含む比較例13に比べ、アデノシンを添加した実施例11では、曲げ強度と曲げ弾性率を向上できた。なお、実施例10と実施例11とを比較すると、PPおよびPP-MAHと、PLAとを含む実施例11の方が曲げ強度と曲げ弾性率ともに大きかった。アデノシンによる作用に加え、PPにPP-MAHとPLAとを併用することにより、疎水性樹脂であるPPに対するセルロース繊維の分散性や相溶性をさらに改善できるためか、曲げ強度と曲げ弾性率とをさらに高められることが分かった。一方、アデノシンを含まない比較例12と13とを比較すると、PLAを含む比較例13の方が曲げ弾性率がわずかに向上するものの、曲げ強度が低下してしまい、PPにPP-MAHとPLAとを併用するだけでは強度向上効果が見られないことが分かった。
【0160】
[実施例12~15および比較例14~15]
表6に示す質量割合の各成分を二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)で、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/hで混練し、混練物を水槽に吐出した。混練物が冷えた後に目開き8mmのメッシュを通過できるまで粉砕機にて粉砕した。得られた粉砕物を、射出成形機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」)を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片を用いて、曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。実施例12~15および比較例14~15の配合割合および評価結果を表6に示す。
【0161】
【表6】
【0162】
表6から明らかなように、PP、PP-MAH、木粉のみを含む比較例14に比べ、アデノシンを添加した実施例12では、曲げ強度と曲げ弾性率を向上できた。さらに、PP、PP-MAH、木粉、PLAを含む比較例15に比べ、アデノシンを添加した実施例13~15では、曲げ強度と曲げ弾性率を向上できた。なお、実施例12と、PP、PP-MAHおよびPLAを含む実施例13~15とで、曲げ強度および曲げ弾性率を比較すると、同等であるか若しくは実施例13~15の方が大きくなる傾向であった。アデノシンによる作用に加え、PPにPP-MAHとPLAとを併用することにより、疎水性樹脂であるPPに対する木粉の分散性や相溶性をさらに改善できるためか、曲げ強度と曲げ弾性率とをさらに高められることが分かった。一方、アデノシンを含まない比較例14と15とを比較すると、PLAを含む比較例15の方が曲げ弾性率がわずかに向上するものの、曲げ強度が低下してしまい、PPにPP-MAHとPLAとを併用するだけでは強度向上効果が見られないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と植物系フィラーとを含み、高い機械的特性を有している。そのため、例えば、植物系フィラーを含有する熱可塑性樹脂として、より高い機械的強度が要求される成形品などに有効に利用できる。また、種々の樹脂成形品に利用でき、例えば、電気・電子部品の梱包材料;壁材などの建築資材;土木資材;農業資材;容器や緩衝材などの包装資材;日用品などの生活資材などに利用できる。また、液晶ディスプレイ基板や太陽電池基板などの種々の材料;光学シートなどの他;高い強度を有するため、ボディ、フード、ドア、ドライブシャフトなどの自動車部品;ゴルフシャフト、テニスラケットフレームなどのスポーツ用品;釣り竿などのレジャー用品などにも利用できる。また、各種分野の成形部材、例えば、ケーシング、ハウジングなどの成形体に利用できる。