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特開2023-143758プラズマ処理チャンバ内を流れる無線周波数電流スペクトルの非侵襲検知のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143758
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理チャンバ内を流れる無線周波数電流スペクトルの非侵襲検知のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023028124
(22)【出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】22164269
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521396983
【氏名又は名称】インペダンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ガーン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】スカリン,ポール
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084CC04
2G084CC33
2G084DD55
2G084HH21
2G084HH25
2G084HH42
2G084HH43
(57)【要約】
【課題】 プラズマチャンバの外部のロケーションからRFスペクトルを検出するために使用される誘導ループに関連付けられた問題および限界の多くを克服すること。
【解決手段】 無線周波数電流スペクトルの非侵襲検知のためのシステムが、プラズマ処理チャンバと、プラズマ生成器と、抵抗器を有するシャントコネクタとを備え、シャントコネクタが、チャンバと生成器との間の地帰経路における開口部にまたがって取り付けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数電流スペクトルの非侵襲検知のためのシステムであって、
プラズマ処理チャンバと、
プラズマ生成器と、
抵抗器を有するシャントコネクタと
を備え、
前記シャントコネクタが、前記チャンバと前記生成器との間の地帰経路における開口部にまたがって取り付けられる、システム。
【請求項2】
前記システムが、前記地帰経路内の電流だけを検出するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムが、前記地帰経路を通じて流れる電流が、前記抵抗器において電圧を生成するように構成される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記抵抗器の両端間の電圧降下を検知し、RF信号を出力するように構成された増幅器をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記シャントコネクタが、前記チャンバのビューポートにまたがって取り付けられるように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記増幅器から前記RF信号を取り出し、処理および分析のために前記RF信号をデジタル信号にコンバートするように構成されたデジタル化回路をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記出力されたRF信号が、RF帯域の交流電流信号である、請求項4または6に記載のシステム。
【請求項8】
前記抵抗器および増幅器を囲む収納容器をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムが、前記シャントコネクタおよび前記抵抗器が、前記地帰経路の一部として、電流が流れるための経路を作り出すように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記シャントコネクタおよび前記抵抗器によって作り出された前記経路が、前記地帰経路内の電流の流れと同じ方向に向けられる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記シャントコネクタが、接地シャントストラップ、ケーブル、バー、およびロッドのうちの少なくとも1つを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
プラズマ処理チャンバ内を流れる無線周波数電流スペクトルの非侵襲検知のための方法であって、
抵抗器を有するシャントコネクタを用意するステップと、
前記チャンバとプラズマ生成器との間の地帰経路における開口部にまたがって前記シャントコネクタを取り付けるステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記地帰経路内の電流だけを検出するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記地帰経路を通じて流れる電流が、前記抵抗器において電圧を生成する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記チャンバのビューポートにまたがって前記シャントコネクタを取り付けるステップをさらに含む、請求項12または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、プラズマシステムにおける無線周波数の電流信号の遠隔検知および分析に関する。
【背景技術】
【0002】
材料のプラズマ処理は、現代の工業生産に偏在するものである。一般的な例は、半導体業界での集積回路の製造中にトランジスタを形成するための層のエッチングおよび堆積である。プラズマ処理は、ほんの数例を挙げれば、太陽電池板、フラットパネルディスプレイ、薄膜コーティング、および医療デバイスの製造でも使用される。
【0003】
処理プラズマは、真空チャンバの中で低圧で生成される。空気は抜かれ、ガスレシピが、選ばれたガス圧でチャンバに追加される。ガスをプラズマ状態に励起するために、通常、電気エネルギーであるエネルギーが、真空チャンバに供給される。プラズマは、処理中に、製造中の製品の表面を変化させるのに必要なイオンを生み出す。
【0004】
無線周波数(RF: radio-frequency)帯域の電気エネルギーは、一般に、プラズマプロセスに電力供給するために使用される。DC、パルスDC、およびマイクロ波電力も、一般に使用される。RF範囲は、典型的には、数十キロヘルツと数百メガヘルツとの間である。RFプラズマでは、RF生成器は、電力伝達を最大化するためにマッチングネットワークを通じて、電力をプラズマチャンバに供給する。電力は、いくつかの異なる方式で、プラズマに連結されることが可能である。1つの構成では、プラズマを励起するために、RFを電力源とした電極が使用されることが可能である。電力供給された電極と対電極との間に印加された電場(E場)、および/またはチャンバ容器本体によるプロセスガスの絶縁破壊が、プラズマを形成する。RF電流は、生成器から、電力供給された電極に、ならびにプラズマを通じて対電極および/またはチャンバ本体に流れる放電を維持する。電流は、次いで、地帰経路(ground return path)を通じて生成器まで還流する。電子は、その親原子および分子からはぎ取られ、電場の中を前後に振動し、その過程で背景ガスを電離させ、したがって、プラズマを維持する。
【0005】
別の構成では、RF電力は、RFアンテナを通じてプラズマに連結される。アンテナは、背景ガスと直接接触している必要はない。アンテナを通じて流れるRF電流は、電流の流れの方向に対して直角な、時間的に変化する磁場を誘導する。磁場は、一般に、誘電体窓を通じてチャンバに連結される。破壊が発生すると、磁場は、RF電流を流すE場をプラズマ内に誘導する。自由電子は、RF場で振動し、背景ガスを電離させ、したがって、プラズマを維持する。他の多くのプラズマ反応器形状およびプラズマ生成メカニズムが存在し、本発明が、これらに適用されることも可能である。
【0006】
RF連結メカニズムのタイプに関わらず、電極またはアンテナとプラズマとの間の界面領域が形成される。この領域は、プラズマシースと呼ばれる。シースは、非線形RFインピーダンスを有する。必然的に、基本駆動周波数の調波が生成される。結果として、RFプラズマ電圧および電流は、変化に富んだ調波スペクトルを有することができる。プラズマプロセスのRF調波の特徴は、基本的なプラズマパラメータ、プラズマ化学、チャンバ形状、チャンバ表面状態、およびチャンバの機械的特性を含む多くの変数によって決定される。したがって、調波スペクトルは、プラズマプロセスの調子および性能についての重要な情報を含む。プラズマ反応器形状に応じて、1つまたは複数の駆動周波数が存在することになる。各基本駆動周波数の調波スペクトル、および相互変調周波数。RFを電力源としたプラズマ反応器で生成されたRF調波スペクトルを測定するための非侵襲検知装置が非常に望ましい。正確に測定された調波スペクトルの特徴は、プロセス性能をリアルタイムにモニタするために使用されることが可能である。RFプラズマプロセスでRFスペクトルを測定するために、多くの方法および検知装置が開発されてきた。
【0007】
RF生成器とプラズマチャンバとの間の伝送線またはRF経路内を流れるRF電圧および電流スペクトルを測定するために、VIセンサが一般に使用される。VI検知素子は、一般に、下りのRF電圧および電流信号を測定するために、接地遮蔽(grounded shielding)の下の、電流搬送導体のすぐ近くに持って来られる。
【0008】
WO2014/016357A2では、VIセンサ装置が説明されている。このセンサは、RF給電線と直列に接続されるように設計されている。このセンサは、一般にこのタイプのセンサの場合のように、伝送線のセクションを含む。プラズマに接続されたRF線上の電圧信号を判定するために、ブロードバンド容量性ピックアップ(broadband capacitive pick-up)(E場プローブ)が使用される。プラズマに接続されたRF線内のRF電流を判定するために、誘導ループ(inductive loop)(Bドットプローブ)が使用される。電圧および電流ピックアップは、VIセンサ構造のRF伝送線セクションに埋め込まれる。電流および電圧を表す信号は、アナログデジタルコンバータ(ADC: analog-to-digital converter)に伝えられ、デジタル化された信号は、フィールドプログラマブルゲートアレイで処理される。直線的に配置されたVIセンサは非常に重要なツールだが、プラズマシステム構成に大きな変更を加えないと、設置するのが難しくなるおそれがある。VIセンサは、本発明によって提供された装置ほど、プラズマ状態の変化に敏感でない場合もある。
【0009】
検知デバイスの別のグループは、プラズマ処理システムの領域が、システムに印加されたRF電圧、およびシステムを通じて流れるRF電流に関連付けられた電磁場に「漏れる」ことがあるという事実を使用する。RFの時間的に変化する電場および磁場は、任意の遮蔽されていない、または不適切に接地された領域を通じて放射する。
【0010】
プラズマからの発光をモニタするためにしばしば使用されるチャンバビューポートは、処理チャンバから漏れるRF場をモニタすることが可能な、プラズマシステムにおけるギャップまたは開口部の例である。いくつかの従来技術の発明は、時間的に変化する電(E)場センサ、および/または時間的に変化する磁(B)場センサを使用して、ビューポートなど、プラズマ処理システムにおける開口部から放射するRFスペクトルを検知する。E場スペクトルを検出するために、容量性ピックアップが典型的に使用され、その一方で、B場スペクトルを検出するために、誘導ループが典型的に使用される。
【0011】
検知されたRFスペクトルの処理および分析を通じて、プラズマプロセスは、リアルタイムにモニタされることが可能である。測定されたRFスペクトルの詳細な較正の必要性を回避するために、特定の処理条件をベースラインまたはフィンガープリントとするために、統計的方法が使用されることが可能である。これは、典型的には、既知の「健全な」プロセスのために行われる。その後のプロセスは、同じ目標値に対して、統計的に著しい変化がないかチェックするために、ベースラインと比較されることが可能である。全体の変化が単一の周波数チャネルで容易に検出されることになる一方で、他の変化は、より微妙な差異を含むことがあり、例えば小さな空気の漏れ、またはわずかなウエハの置き間違いなど、これらを検出するために、RF調波スペクトルからの多くのデータチャネルを使用した多変量解析を必要とすることがある。
【0012】
ElahiおよびGhoranneviss(IEEE transactions on plasma science, vol.38, no.11, 2010年11月)は、IR-T1トカマクのチャンバ容器の外側に設置された誘導ループを使用した、チャンバの内側のプラズマ電流を検知することによるプラズマ位置の判定のための斬新な技法を提示している。
【0013】
WO2018/177965A1では、プラズマチャンバのビューポートの近くを流れるプラズマ電流を外部のロケーションから検知するために、特別にデザインされた磁気ループアンテナが使用される装置が説明されている。アンテナは、慎重にデザインされ、較正される。アンテナの出力は、アンテナによって検出された周波数スペクトルを見るために、スペクトル分析器に連結される。発明者は、プラズマの共振特徴を検出するための周波数分析技法を説明している。この装置、および直線的に配置されたVIセンサ、ならびにOES検出器との間に十分な一致が得られている。
【0014】
WO2004/006298A2では、RFアンテナを利用してプラズマシステムからのRF放射をリモートに検知する装置が説明されている。アンテナは、調波信号を検出することができ、分析のための処理ユニットに連結される。処理ユニットは、プラズマツールコントローラに連結され、ここで、検知されたRF信号は、測定された信号レベルに基づいてプラズマプロセスのパラメータを調節および維持するために使用される。
【0015】
米国特許出願公開第2007/0227667号は、プラズマチャンバ壁の平面の内側に置かれた2つの磁気ループアンテナから成る装置を説明している。アンテナは、容量的に連結されたプラズマ反応器の2つの電極の近くに置かれる。各ループを通り抜ける磁束によって生成された電圧信号が、信号処理ユニットに連結される。プラズマからチャンバ壁に流れる電流は、このように計算される。
【0016】
以下を含めて、プラズマシステムのビューポートウィンドウまたは他の領域から生じたRF場を測定するために使用される誘導/磁気ループタイプの検知装置には、いくつかの限界がある。
a)ガラスウィンドウが、磁場を減衰させ、減衰は、周波数依存である。したがって、チャンバの内側で調波信号の相対強度の正確な反射を得ることは難しい。
b)プラズマ駆動周波数が低くなると(例えば、400kHz)、波長が大きくなり、検出のために十分な信号レベルが逃れるように、システムにおける大きいビューポートまたはギャップを必要とする。
c)いくつかのチャンバには、特にRF磁場の漏出をブロックするために、ウィンドウの内側に接地したメッシュ遮蔽がある。
d)ループの向き、配置、および寸法は、検知された信号レベルを判定するのに重要であり、これは、メンテナンス後にループを元の場所に戻した後、繰り返し可能な測定を行うのを難しくする。
e)誘導ループは、ループを通り抜ける磁束を検知するために使用されるので、これは、例えば近くのプラズマチャンバからなど、意図したもの以外の発生源からの干渉の影響を受けやすい。
f)設置場所における温度の変動は、例えばチャンバが加熱されると、ループの寸法、およびしたがって、ループ信号レベルを、プラズマプロセス中に変動させるおそれがあり、故障状態と誤って解釈されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、プラズマチャンバの外部のロケーションからRFスペクトルを検出するために使用される誘導ループに関連付けられた問題および限界の多くを克服する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の独立した態様では、無線周波数電流スペクトルの非侵襲検知のためのシステムが提供され、プラズマ処理チャンバと、プラズマ生成器と、抵抗器を有するシャントコネクタとを備え、シャントコネクタが、チャンバと生成器との間の地帰経路における開口部にまたがって取り付けられる。
【0019】
システムは、地帰経路内の電流だけを検出するように構成されてもよい。
【0020】
センサは、さらに、地帰経路を通じて流れる電流が、抵抗器において電圧を生成するように構成されてもよい。
【0021】
システムは、抵抗器の両端間の電圧降下を検知し、RF信号を出力するように構成された増幅器をさらに備えることができる。
【0022】
任意選択により、シャントコネクタは、チャンバのビューポートにまたがって取り付けられるように構成される。
【0023】
システムは、増幅器からRF信号を取り出し、処理および分析のためにRF信号をデジタル信号にコンバートするように構成されたデジタル化回路をさらに備えることができる。
【0024】
出力されたRF信号は、RF帯域の交流電流信号でもよい。
【0025】
システムは、抵抗器および増幅器を囲む収納容器をさらに備えることができる。
【0026】
システムは、シャントコネクタおよび抵抗器が、地帰経路の一部として、電流が流れるための経路を作り出すように構成されてもよい。
【0027】
任意選択により、シャントコネクタおよび抵抗器によって作り出された経路が、地帰経路内の電流の流れと同じ方向に向けられる。
【0028】
シャントコネクタは、接地シャントストラップ、ケーブル、バー、およびロッドのうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0029】
本発明の第2の独立した態様では、プラズマ処理チャンバ内を流れる無線周波数電流スペクトルの非侵襲検知のための方法が提供され、抵抗器を有するシャントコネクタを用意することと、チャンバとプラズマ生成器との間の地帰経路における開口部にまたがってシャントコネクタを取り付けることとを含む。
【0030】
方法は、地帰経路内の電流だけを検出することをさらに含むことができる。
【0031】
任意選択により、地帰経路を通じて流れる電流が、抵抗器において電圧を生成する。
【0032】
方法は、チャンバのビューポートにまたがってシャントコネクタを取り付けることをさらに含むことができる。
【0033】
本出願は、ここから、添付の図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本教示によるセンサが使用されることが可能なシステムの概観を示す図である。
図2図1のシステムにおけるセンサの配置ロケーションをより詳しく示す図である。
図3】チャンバのビューポートに据え付けられた本教示によるセンサ、およびセンサの内部構成を示す図である。
図4】本教示によるセンサを用いて達成されたテスト結果を示す図である。
図5】本教示によるセンサを用いて達成されたさらなるテスト結果を示す図である。
図6】本教示によるセンサが障害を検出するためにどのように使用されることが可能であるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、斬新な観点からRFスペクトルの検知にアプローチする。本発明は、全てのRFプラズマ電流の発生源が、RF生成器であること、およびこれらのRF電流が、地帰経路を通じて生成器に帰らなければならないことを使用する。これは、図1に示されている。特に、図1は、接地102に接続されたRF生成器101(またはプラズマ生成器)を示す。マッチユニット103は、当技術分野で知られているように、RF生成器101とプラズマチャンバ104との間の伝送線またはRF経路において提供される。RFプラズマ電流は、RF生成器からチャンバ104まで、下りの経路105を流れる。RFプラズマ電流は、地帰経路106を介してチャンバ104から生成器まで帰る。
【0036】
従来技術のデバイスは、発生源(例えば、RF生成器101)と地帰経路106の出発点との間の下りの経路105でRF電流スペクトルを検知する。以下でより詳しく概説されるように、本教示による装置は、地帰経路の出発点と生成器との間の行程の帰り区間、すなわち地帰経路106で、RF電流を検知する。RFプラズマ反応器に関して、地帰経路の出発点は、典型的には、金属チャンバ容器本体である。
【0037】
以下でより詳しく説明されるように、本教示によるセンサが提供され、センサは、ビューポートなど、プラズマシステムの地帰経路における開口部にまたがって取り付けられた、RF電流検知素子を有するシャントコネクタを備える。シャントコネクタは、接地シャントストラップ、ケーブル、バー、またはロッド等を含むことができる。従来技術の誘導ループセンサと違って、ビューポートを通じて放出された時間的に変化する磁場は検知されない。代わりに、RF電流だけが、地帰経路を通じた生成器までの帰りの行程で抵抗的に検知される。典型的なプラズマプロセスは、10数アンペアの電流によって駆動されることがある。下りの行程では、これらの電流は、明確に定義および制限された電流経路を通じて導かれる。帰りの行程では、帰りの電流は、例えばチャンバ本体等の、地帰要素の表面積全体にわたって拡散する。したがって、センサは、a)センサの表面積と、センサが設置された地帰領域の全表面積との比、およびb)検知抵抗器の抵抗、によって決定された、わずかな帰りの電流を「見る」または検出するだけになる。下りの電流の100万分の1よりかなり小さい電流が、生成器に帰る行程で、センサを通じて流れることになり得る。これは、マイクロアンペアのオーダーになることがあり、検出のための検知抵抗器でマイクロボルトを生成する。
【0038】
RF電流検知抵抗器の出力は、信号処理ユニットに連結されてもよい。信号処理ユニットは、従来技術の遠隔RFプラズマセンサの設計ではレポートされたことがない遠隔検知されたRFスペクトルに関する情報をもたらす。測定値は、a)調波と基本周波数との間の位相、b)パルスRFおよび周波数同調プラズマプロセスにおける調波スペクトル分析、c)弧のrms検出、および個々のパルスRFプロフィールのrms検出、を含む。
【0039】
既知の「健全な」プラズマプロセス状態のスペクトルフィンガープリンティングに基づく統計的方法が使用されてもよい。スペクトル成分の位相および振幅の変動が分析され、障害スコアは、各新しいプロセス測定が原因である。したがって、閾値は、検出されたプロセス障害をユーザに知らせるように構成されることが可能である。位相測定値は、プラズマ化学およびプラズマインピーダンスの小さい変化の影響を特に受けやすい。調波間の位相を測定する能力は、例えば、標準的なエンドポインティング技術が現在不十分な場合、本教示によるセンサを、低オープンエリアエッチング中に発生するかすかなプロセス変化の検出のための非常に有用な診断ツールにする。
【0040】
当技術分野で知られているように、十分に遮蔽されたRFシステムでは、中心導体を流れる電流は、囲んでいる接地遮蔽を流れる電流によって遮蔽される。これらの電流は、システムがRFエネルギーを「放射」しないよう、互いに相殺する。本発明は、接地遮蔽の不連続性を使用する。前に論じられた従来技術の誘導ループセンサと違って、本センサは、電流が互いに完全に相殺されない領域内の地帰経路において挿入され、地帰電流の測定を可能にする。
【0041】
図2に移ると、図2は、本教示によるセンサの配置ロケーションをより詳しく示している。現代のプラズマツールでは、ビューポートサイズが小型化され、ビューポートを通じたRF漏出を最小限にするために、RF遮蔽が追加される。光検出器は常にビューポートを必要とするが、地帰遮蔽にギャップが存在するか、追加された場合に、RF電流の調波スペクトルが判定されることが可能な、プラズマシステムの多くの領域がある。本発明の能力を示すために、ビューポートは、例示的ケースとして使用されることになる。それでも、本教示によるセンサは、地帰経路における任意の適切な開口部にまたがって置かれてもよいことが理解されよう。
【0042】
図2は、プラズマチャンバ104の2つの図を示す。特に、図2は、プラズマチャンバ104に入るRF電流、すなわち中央の矢印201、および、チャンバ壁を通じて地帰行程を始めるRF電流、すなわち周辺の矢印202を示す。2つのビューポートが示されている。第1のビューポート203には、本教示によるセンサ(図示せず)が取り付けられている。第2のビューポート204にはセンサがない。センサのない第2のビューポート204には、ビューポートキャビティを通じた電流の流れを可能にするための完全な伝導経路がない、すなわち、その前面がガラスから作られている。それでも、センサが第1のビューポート203に取り付けられると、ビューポートを横切るまたは通じたRF電流の流れのための経路205が作り出される。この電流の流れは、本教示によるセンサで測定されることが可能である。
【0043】
ビューポート203に設置されたセンサの向きは、図3を参照しながらより詳しく説明されるような、RF電流の検知に重要である。図2は、容量的に連結されたプラズマチャンバ104に対して、RF電流が、チャンバ電極およびプラズマボリュームへと、ならびにこれらを通じて、主に垂直方向に進むこと、すなわち、中央の矢印201を示す。したがって、帰りの電流は、逆方向、すなわち周辺矢印202で、チャンバ壁を主に垂直に流れなければならない。図2の水平、すなわち矢印206を含む他の方向にも、プラズマから壁へのいくらかの電流の流れがあることになる。
【0044】
図3に移ると、図3は、ビューポート203にまたがって据え付けられた、本教示によるセンサ301を描写しており、RFの帰りの電流は、方向AからBに流れる。方向AからBは、図2に示された電流の流れ202と適合する。理論上は、示された方向CからDに流れるRF電流は少ないはずである(この方向は、図2の電流の流れ206と適合する)。当業者に知られているように、複雑なプラズマ処理システムでは、いくつかの方向に流れる電流があり得るので、関心のある電流を測定するためにセンサが向けられることが可能である。
【0045】
図3は、センサ301の内部構成も描写している。前述のように、センサ301は、検知抵抗器R1を含む。地帰経路は、抵抗性が非常に低い伝導/金属材料および表面から作り上げられる。したがって、検知抵抗器R1は、検出のためにセンサを通じた十分な電流の流れを可能にするために、低い抵抗値を有していなければならない。図3のR1には、1Ohm未満の抵抗値がある。電流の流れに比例した電圧差が、抵抗器R1の両端間に生成され、この電圧差が測定される。回路は、RF電流を電圧信号VOUTにコンバートするための、増幅器U1をさらに含む。すなわち、図3は、電流の流れの方向と直列の低い値の抵抗器R1と、R1間の電圧降下を検知するための差動増幅器U1とを備える測定回路を示している。増幅器の出力は、電圧信号に限定されず、これは、電流信号などの任意のRF出力でよいことを理解されたい。
【0046】
抵抗性検知素子R1および増幅器U1は、センサのアナログフロントエンドの主要な要素である。アナログフロントエンドは、ビューポートを通じて放出され得る電場および磁場からアナログ回路を遮蔽するために、接地された金属筐体に収納されてもよい。それでも、これは不可欠というわけではなく、非金属収納容器が使用されてもよい。U1の出力は、処理および分析のためのデジタル化回路に連結されてもよい。抵抗性検知素子を使用する大きな利点は、a)誘導ループセンサと違って、周波数に応じた、平らな場合のレスポンス、b)誘導ループセンサと違って、広い温度範囲にわたって抵抗が安定していること、およびc)誘導ループセンサに比べて、コモンモード阻止が達成されやすいこと、である。
【0047】
任意のRF電流検知素子が使用されてもよいことを理解されたい。発明者は、上述の検知抵抗器が最も便利な要素であることを発見したが、低インピーダンスキャパシタまたはインダクタも、抵抗器の代わりに使用されてよい。キャパシタまたはインダクタが使用される場合、代替の検出回路が必要になるはずである。地帰経路における電流を検知するために、他の方法、すなわち、シャントコネクタまたはシャントコネクタの周囲の変流器におけるホール効果センサが適用されてもよい。
【0048】
アナログ電圧出力VOUTは、RF帯域の交流電流(AC: alternating current)信号である。有用な方式で分析および視覚化されることが可能な形で周波数スペクトルを抽出するために、信号処理ユニットが使用される。同軸ケーブルが、AC信号を信号処理ユニットに搬送する。電流波形をサンプリングするためにADCが使用される。典型的には、512個のサンプルのデータブロックが、第1の工程として記録される。ブロックサイズは、任意に選ばれ、種々の要件を満たすために変化させることができる。データブロックは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に伝達され、ここで、高速フーリエ変換(FFT: fast Fourier transform)が実行される。FFTは、時間ドメインのAC波形を周波数スペクトルに変換する。周波数スペクトルは、格納、および平均化を含むさらなる処理のために、マイクロプロセッサに送られる。信号対雑音比を低減させるために、複数のFFTが一緒に平均される。
【0049】
本教示によるセンサの実用的な例が、図4を参照しながら提供される。比較のために、センサは、ビューポートを通じて放出された電場を測定するために、別個のE場検出器を組み込むことができる。上述のように、センサは、E場を測定しない。E場検出器は、センサ電流規模測定のための妥当な基準点を与える。センサの機能を示すために、センサは、図1に示された容量的に連結されたプラズマ反応器に取り付けられた。この例では、反応器には、それぞれ直径300mmの2つの平行な平板電極がある。RF電力は、13.56MHzで供給される。プラズマを形成するために使用される背景ガスは、流量が100SCCMのアルゴンであり、およそ2Paの圧力で保持された。図4は、時間の関数としてプロットされた基本的な13.56MHz周波数成分の振幅を示しているが、生成器からのRF電力は、20Wから150Wまで増加されている。電流プロフィールは、電圧プロフィールを非常に良く追跡する。データは較正されておらず、電流スケールは、約10個のデータ単位である。
【0050】
すなわち、図4では、RF電流スペクトルの基本的な(13.56MHz)成分の振幅のセンサ測定値が、窓から放出されたRF電圧スペクトルの基本的な成分と比較して示されている。処理電力の変化は、センサによって容易に識別されることが可能である。センサの向きは、図3に示されているように、AからBである。
【0051】
図5は、E場プローブ測定値と比較した、センサからの基本的な電流振幅の測定値を示しており、センサは、図3に示されたCからDの向きに設置された。電圧振幅は、E場プローブが、向きの影響を受けやすくないので、予想通り、図4に示されたものに非常に似ている。それでも、電流振幅は、低い10の規模まで著しく低下した。これは、センサが地帰電流の影響を真に受けやすいことを確認し、電流の予想された低下は、設置されたセンサの他の向きで見られる。
【0052】
図6は、基本的な電流信号振幅の振動が、ガス供給線上の不調の圧力値とどのように相関するかを示しており、圧力値は、本教示によるセンサ/プローブが、プラズマプロセスの調子および性能をモニタする能力を示す。
【0053】
したがって、プラズマチャンバの外部の非侵襲ロケーションから、プラズマシステムにおけるRF電流スペクトルを検知するためのセンサが、本教示によって提供される。処理された信号は、プロセスの調子および安定性を判定するために使用されることが可能である。
【0054】
センサは、ビューポートなど、プラズマシステムの地帰経路における開口部にまたがって取り付けられたRF電流検知素子を有するシャントコネクタを備える。電流検知抵抗器の出力は、RF電流波形をサンプリングするための測定システムに連結され、RF電流波形は、その後、調波周波数スペクトルを分析するために、フーリエ空間にデジタル化およびコンバートされる。基本的な周波数に対する各調波成分の位相角度だけでなく、各調波成分の振幅が測定される。位相測定値は、プラズマのRFインピーダンスの変化の影響を特に受けやすい。
【0055】
本発明は、本明細書で説明された実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、訂正または修正されることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】