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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143765
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】樹脂複合パネルおよび装置用筐体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/24 20060101AFI20230928BHJP
   F25D 23/06 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
B32B5/24 101
F25D23/06 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033504
(22)【出願日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2022046939
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】福永 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】平塚 翔一
【テーマコード(参考)】
3L102
4F100
【Fターム(参考)】
3L102JA10
3L102LC23
3L102MA01
3L102MB32
4F100AD11B
4F100AD11C
4F100AK41A
4F100AK53B
4F100AK53C
4F100BA03
4F100DC11
4F100DD01
4F100DD11
4F100DH02B
4F100DH02C
4F100DJ01A
4F100GB41
4F100GB51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比強度に優れた樹脂複合パネルを提供すること。
【解決手段】樹脂発泡シートで構成された芯材を備え、芯材が第1の表面1aと第1の表面とは反対面となる第2の表面とを備え、芯材の第1の表面に積層された第1表面材と芯材の第2の表面に積層された第2表面材とが更に備えられ、第1表面材には第1繊維強化樹脂層20aが、第2表面材には第2繊維強化樹脂層20bが備えられており、芯材には第1の表面と第2の表面とに開口した複数の貫通孔1hが設けられ、複数の貫通孔が設けられた部位にも第1繊維強化樹脂層と第2繊維強化樹脂層とが備えられ、複数の貫通孔では、第1繊維強化樹脂層と第2繊維強化樹脂層とが接着し、第1繊維強化樹脂層と第2繊維強化樹脂層との内の少なくとも一方が貫通孔の周縁部で相手方に接近するように曲がっている樹脂複合パネル100を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡シートで構成された芯材を備え、
前記芯材が、第1の表面と、該第1の表面とは反対面となる第2の表面とを備え、
前記芯材の前記第1の表面に積層された第1表面材と、
前記芯材の前記第2の表面に積層された第2表面材とが更に備えられ、
前記第1表面材には第1繊維強化樹脂層が備えられ、
前記第2表面材には第2繊維強化樹脂層が備えられており、
前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とのそれぞれが樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成され、
前記芯材には前記第1の表面と前記第2の表面とに開口した複数の貫通孔が設けられ、
該複数の貫通孔が設けられた部位にも前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが備えられ、
前記複数の貫通孔では、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが接着し、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層との内の少なくとも一方が該貫通孔の周縁部で相手方に接近するように曲がっている樹脂複合パネル。
【請求項2】
前記複数の貫通孔の開口形状が円形又は多角形である請求項1記載の樹脂複合パネル。
【請求項3】
前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが前記複数の貫通孔の中央部で接着され、
前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが接着されている領域が前記中央部から前記貫通孔の周縁部に向かって広がっており、
該貫通孔の周縁部で前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とがそれぞれに分かれ、該周縁部には、前記貫通孔の周面と、前記第1繊維強化樹脂層と、前記第2繊維強化樹脂層とに囲まれて周方向に直交する平面での断面が三角形となるリング状の領域が形成されており、
該領域は、前記繊維強化樹脂材の前記樹脂が溜まった樹脂溜りとなっている請求項1又は2記載の樹脂複合パネル。
【請求項4】
前記複数の貫通孔は、縦横に一定間隔で並んで配列されている請求項1又は2に記載の樹脂複合パネル。
【請求項5】
リング状の締結用部材を更に備え、
該締結用部材は、孔の貫通する方向が前記芯材の前記貫通孔が貫通する方向と共通するように備えられ、
該締結用部材は、前記複数の貫通孔の内の一つの貫通孔よりも径小で、該貫通孔内に配置され、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層との内の少なくとも一方に接着されて固定されおり、
前記締結用部材の固定されている箇所では、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とのそれぞれにも孔が設けられ、
前記締結用部材の前記孔を通じて両面の間を連通する連通孔が設けられている請求項1又は2記載の樹脂複合パネル。
【請求項6】
前記複数の貫通孔を含めた前記芯材の面積に占める前記貫通孔の面積割合は、20%以上80%以下である請求項1又は2記載の樹脂複合パネル。
【請求項7】
発熱機器を備えた装置で前記発熱機器を収容するために用いられる装置用筐体であって、
芯材の両面に表面材が積層された樹脂複合パネルで少なくとも一部が構成されており、
前記樹脂複合パネルは、
樹脂発泡シートで構成された前記芯材を備え、
前記芯材が、第1の表面と、該第1の表面とは反対面となる第2の表面とを備え、
前記芯材の前記第1の表面に積層された第1表面材と、
前記芯材の前記第2の表面に積層された第2表面材とが前記表面材として備えられ、
前記第1表面材には第1繊維強化樹脂層が備えられ、
前記第2表面材には第2繊維強化樹脂層が備えられており、
前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とのそれぞれが樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成され、
前記芯材には前記第1の表面と前記第2の表面とに開口した複数の貫通孔が設けられ、
該複数の貫通孔が設けられた部位にも前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが備えられ、
前記複数の貫通孔では、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが接着し、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層との内の少なくとも一方が該貫通孔の周縁部で相手方に接近するように曲がっている装置用筐体。
【請求項8】
前記樹脂複合パネルには、リング状の締結用部材が更に備えられ、
該締結用部材は、孔の貫通する方向が前記芯材の前記貫通孔が貫通する方向と共通するように備えられ、
該締結用部材は、前記複数の貫通孔の内の一つの貫通孔よりも径小で、該貫通孔内に配置され、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層との内の少なくとも一方に接着されて固定されおり、
前記締結用部材の固定されている箇所では、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とのそれぞれにも孔が設けられ、
前記締結用部材の前記孔を通じて前記樹脂複合パネルの両面の間を連通する連通孔が設けられている請求項7記載の装置用筐体。
【請求項9】
前記複数の貫通孔を含めた前記芯材の面積に占める前記貫通孔の面積割合は、20%以上80%以下である請求項7記載の装置用筐体。
【請求項10】
前記装置が、前記発熱機器としてエンジン又はモーターを搭載した飛行体であり、
該飛行体のボディーである請求項7乃至9の何れか1項に記載の装置用筐体。
【請求項11】
前記飛行体がドローンである請求項10記載の装置用筐体。
【請求項12】
前記装置が、前記発熱機器として半導体モジュールを備えた半導体装置である請求項7乃至9の何れか1項に記載の装置用筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合パネルおよび装置用筐体に関し、より詳しくは、芯材の両面に表面材が積層された樹脂複合パネルと、そのような樹脂複合パネルで少なくとも一部が構成されている装置用筐体とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、優れた軽量性と強度とを兼ね備えることからFRPなどと称される繊維強化樹脂材が広く用いられている。近年、芯材となる樹脂発泡シートに繊維強化樹脂層を含む表面材を積層した樹脂複合パネルがその用途を拡大させている。この種の樹脂複合パネルは、樹脂発泡シートを芯材として備えていることで優れた軽量性を発揮する。また、表面材に繊維強化樹脂層を含む樹脂複合パネルは、前記繊維強化樹脂層が繊維と樹脂とを含む繊維強化樹脂材で構成されているために強度面でも優れている。
【0003】
樹脂発泡シートと繊維強化樹脂層とが積層された樹脂複合パネルは、上記のように軽量性と強度とに優れるだけでなく制振性をも備えていることが知られている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-070389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂複合パネルは、前記のように制振性を有するためにエンジンやモーターなどの駆動時に振動を伴う機器やそれらを制御するインバーターなどを備えた装置の筐体を構成する部材として適しているといえる。
【0006】
ところで樹脂複合パネルには、より高い強度が求められている。樹脂複合パネルの強度を向上する方法としては、繊維強化樹脂層の厚さを増大させることが考えられる。その一方で、樹脂複合パネルを筐体の構成部材としている装置では、コンパクト化や軽量化が求められている。そのため、繊維強化樹脂層の厚さを増大させて質量増加することは望ましいことであるといえない。
【0007】
近年、精密機器とモーターなどの発熱機器とを一つの筐体内に収容しているドローンなどの装置が各種用途に用いられているが、このような装置用の筐体には内部温度の上昇を抑制する機能も求められている。そのような発熱機器を備えた装置の筐体に用いられる樹脂複合パネルでは繊維強化樹脂層の厚さを増大させると放熱性を低下させてしまうことにもなり得る。
【0008】
上記のような事情から、樹脂複合パネルには、樹脂複合パネルの曲げ強度や引張強度などを当該樹脂複合パネルの単位質量当りに換算した比強度などと称される値を向上させることが求められている。しかしながらこれまでの樹脂複合パネルでは比強度を十分に向上させることができていない。そこで本発明は単位質量当りに発揮される強度に優れた樹脂複合パネルを提供し、装置の軽量化に適した装置用筐体の提供を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、
樹脂発泡シートで構成された芯材を備え、
前記芯材が、第1の表面と、該第1の表面とは反対面となる第2の表面とを備え、
前記芯材の前記第1の表面に積層された第1表面材と、
前記芯材の前記第2の表面に積層された第2表面材とが更に備えられ、
前記第1表面材には第1繊維強化樹脂層が備えられ、
前記第2表面材には第2繊維強化樹脂層が備えられており、
前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とのそれぞれが樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成され、
前記芯材には前記第1の表面と前記第2の表面とに開口した複数の貫通孔が設けられ、
該複数の貫通孔が設けられた部位にも前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが備えられ、
前記複数の貫通孔では、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが接着し、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層との内の少なくとも一方が該貫通孔の周縁部で相手方に接近するように曲がっている樹脂複合パネル、を提供する。
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく、
発熱機器を備えた装置で前記発熱機器を収容するために用いられる装置用筐体であって、
芯材の両面に表面材が積層された樹脂複合パネルで少なくとも一部が構成されており、
前記樹脂複合パネルは、
樹脂発泡シートで構成された前記芯材を備え、
前記芯材が、第1の表面と、該第1の表面とは反対面となる第2の表面とを備え、
前記芯材の前記第1の表面に積層された第1表面材と、
前記芯材の前記第2の表面に積層された第2表面材とが前記表面材として備えられ、
前記第1表面材には第1繊維強化樹脂層が備えられ、
前記第2表面材には第2繊維強化樹脂層が備えられており、
前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とのそれぞれが樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成され、
前記芯材には前記第1の表面と前記第2の表面とに開口した複数の貫通孔が設けられ、
該複数の貫通孔が設けられた部位にも前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが備えられ、
前記複数の貫通孔では、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層とが接着し、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層との内の少なくとも一方が該貫通孔の周縁部で相手方に接近するように曲がっている装置用筐体、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単位質量当りに発揮される強度に優れた樹脂複合パネルが提供され、装置の軽量化に適した装置用筐体が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態の樹脂複合パネルを示した概略斜視図である。
図2図2は、樹脂複合パネルの断面図(図1のII-II線矢視断面図)である。
図3図3は、他の実施形態の樹脂複合パネルの断面図である。
図4図4は、締結用部材を備えた樹脂複合パネルを示した概略斜視図である。
図5図5は、図4に示した樹脂複合パネルの断面図(図4のV-V線矢視断面図)である。
図6図6は、締結用部材を備えた樹脂複合パネルを他の部材に固定する方法を示した概略図である。
図7図7は、締結用部材を備えた樹脂複合パネルの他の態様を示した概略図である。
図8図8は、樹脂複合パネルの製法を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態に係る樹脂複合パネルについて説明する。本実施形態の樹脂複合パネルは、図1に示すように長手方向Xと、該長手方向Xに直交する短手方向Yとを有する板状体である。図1に示す樹脂複合パネル100は、平面視における形状が長方形である。該長方形は、前記長手方向Xに沿う長辺と前記短手方向に沿う短辺を有する。樹脂複合パネル100は、前記長手方向Xと前記短手方向Yとに直交する厚さ方向Zを有する。
【0014】
図1、2にも示されているように本実施形態に係る樹脂複合パネル100は、芯材1の両面に表面材2が積層されたサンドイッチ構造となっており、一面側に複数の円形の凹部101が設けられている。樹脂複合パネル100は、第1の表面100aと該第1の表面100aとは反対面となる第2の表面100bとを有し、前記凹部101は、第1の表面100aの側にのみ形成されている。即ち、本実施形態に係る樹脂複合パネル100では第2の表面100bは、平坦面となっているが、第1の表面100aは、複数の凹部が形成された凹凸面となっている。
【0015】
樹脂複合パネル100は、樹脂発泡シートで構成された前記芯材1を備え、前記芯材1が、第1の表面1aと、該第1の表面1aとは反対面となる第2の表面1bとを備えている。樹脂複合パネル100は、前記芯材1の前記第1の表面1aに積層された第1表面材2aと、前記芯材1の前記第2の表面1bに積層された第2表面材2bとが前記表面材2として備えられている。第1表面材2aは、芯材1に接している側とは反対側の面で樹脂複合パネル100の第1の表面100a(凹凸面)を構成している。第2表面材2bは、芯材1に接している側とは反対側の面で樹脂複合パネル100の第2の表面100b(平坦面)を構成している。
【0016】
前記第1表面材2aには前記第1の表面1aに接着している第1繊維強化樹脂層20aが備えられ、前記第2表面材2bには前記第2の表面1bに接着している第2繊維強化樹脂層20bが備えられている。前記第1繊維強化樹脂層20aと前記第2繊維強化樹脂層20bとのそれぞれは。樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成されている。
【0017】
本実施形態では前記第1の表面1aと第1繊維強化樹脂層20aとが繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂によって直接的に接着されているが、前記第1繊維強化樹脂層20aは、別途設けられた接着剤層などの他の層を介して前記第1の表面1aに接着されてもよい。本実施形態では前記第2の表面1bと第2繊維強化樹脂層20bとが繊維強化樹脂材に含まれている前記樹脂によって直接的に接着されているが、前記第2繊維強化樹脂層20bも同様に、別途設けられた接着剤層などの他の層を介して前記第2の表面1bに接着されてもよい。
【0018】
本実施形態の第1表面材2aは、第1繊維強化樹脂層20aのみで構成されている。そのため、本実施形態では第1繊維強化樹脂層20aの表面が樹脂複合パネル100の第1の表面100a(凹凸面)を構成している。また、本実施形態では第2繊維強化樹脂層20bの表面が樹脂複合パネル100の第2の表面100b(平坦面)を構成している。
【0019】
本実施形態では、表面材が繊維強化樹脂層のみで構成された態様を例示しているが、表面材は繊維強化樹脂層以外に塗膜層や樹脂フィルム層などの他の層を備えていてもよい。
【0020】
本実施形態での前記芯材1には、前記第1の表面1aと前記第2の表面1bとに開口した複数の貫通孔1hが設けられている。樹脂複合パネル100は、該複数の貫通孔1hが設けられた部位にも前記第1繊維強化樹脂層20aと前記第2繊維強化樹脂層20bとが備えられている。前記複数の貫通孔1hでは、前記第1繊維強化樹脂層20aと前記第2繊維強化樹脂層20bとが接着している。樹脂複合パネル100の複数の凹部101は、前記第1繊維強化樹脂層20aと前記第2繊維強化樹脂層20bとの内の少なくとも一方が該貫通孔1hの周縁部で相手方に接近するように曲がっていることで形成されている。
【0021】
本実施形態では、図2に示すように、第1繊維強化樹脂層20aが貫通孔1hの形成されている箇所で接着される相手方となる第2繊維強化樹脂層20bに向かって突入しているのに対して第2繊維強化樹脂層20bは貫通孔1hの形成されている箇所で第1繊維強化樹脂層20aに向けて突入しておらず平坦な状態を保っている。本実施形態では、このことにより樹脂複合パネル100の第1の表面100aの側にのみ前記凹部101が設けられている。
【0022】
前記貫通孔1hの周面1cの内側では、第1繊維強化樹脂層20aが樹脂複合パネル100の厚さ方向に向かって延びることで縦壁が形成されている。即ち、前記第1繊維強化樹脂層20aには、貫通孔1hの形成されていない箇所で前記芯材1の第1の表面1aと接着されて凹部101以外の樹脂複合パネル100の基体部分の形成に用いられる基体部201aと、前記凹部101で前記縦壁を構成する縦壁部202aと、該縦壁部202aの内側で前記第2繊維強化樹脂層20bに接着されて前記凹部101の底面を構成している接着部203aとを備える。
【0023】
第1繊維強化樹脂層20aは、前記貫通孔1hの中央部で前記第2繊維強化樹脂層20bと接着されており、前記接着部203aが前記中央部から前記貫通孔1hの周縁部に向かって広がって前記縦壁部202aに達している。即ち、第1繊維強化樹脂層20aは、前記貫通孔1hの周縁部で前記第2繊維強化樹脂層20bと分かれて厚さ方向に立ち上っており、この立上り箇所が前記縦壁部202aとなっている。
【0024】
本実施形態の前記縦壁部202aは、第1繊維強化樹脂層20aが前記第2繊維強化樹脂層20bから垂直に立ち上った状態になっているわけではなく、前記第2繊維強化樹脂層20bから離れる方向に外広がりに傾斜した状態になっている。
【0025】
前記接着部203aの外側で第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bと樹脂複合パネル100の厚さ方向に二股になって分かれている箇所には、繊維強化樹脂材の樹脂が溜まって樹脂溜り21が形成されている。該樹脂溜り21は、前記貫通孔1hの周面1cに沿って形成されており、リング状となっている。前記貫通孔1hの周面1cと、前記第1繊維強化樹脂層20aと、前記第2繊維強化樹脂層20bとに囲まれて周方向に直交する平面での断面が三角形となるリング状の領域が前記樹脂溜り21となっている。
【0026】
素材の機械的特性を考えた場合、曲げ弾性率は、通常、硬質な樹脂でも数GPaに留まる。一方で樹脂発泡シートでは、非発泡(ソリッド)な状態での樹脂の数分の1程度の曲げ弾性率しか示さない。それに対し、FRPは、20GPa~50GPa程度の高い曲げ弾性率を有する。
【0027】
本実施形態では、芯材1の第1の表面1aでの貫通孔1hの開口縁1heにおいて第1繊維強化樹脂層20aが第2繊維強化樹脂層20bに向かって曲げられている。この第1繊維強化樹脂層20aが曲がっている箇所は、L字チャンネルのように機能し、第1繊維強化樹脂層20aが材質的に高強度であるだけでなく構造的にも強度に優れる。
【0028】
本実施形態の樹脂複合パネル100は、第1繊維強化樹脂層20aが曲がった箇所が前記開口縁1heに沿って環状に形成されている。そのため樹脂複合パネル100は、曲げ応力、捻じり応力、引張り応力などの各種の応力が加わった場合でも高い抗力を発揮する。また、本実施形態での前記縦壁部202aも環状となっていて上記応力への抗力を発揮するのに有効に作用する。さらに、本実施形態では、リング状の樹脂溜り21が形成されていることで更なる補強作用が発揮されている。
【0029】
第1繊維強化樹脂層20aを貫通孔1hに突入させることで、第1繊維強化樹脂層20aを平坦な状態にしている場合に比べて余分に繊維強化樹脂材を使用することになるが、一方で貫通孔1hを設けることで芯材1の軽量化が図られる。しかも、上記のように構造的に優れた強度が発揮されることで本実施形態の樹脂複合パネル100は、その質量の割には優れた強度を示し、従来のものに比べて高い比強度を発揮する。
【0030】
本実施形態においては、第1繊維強化樹脂層20aを貫通孔1hに突入させているが、図3に示したような別の実施態様においても同様の効果を得ることができる。この図3に例示の実施態様では、前記第1繊維強化樹脂層と前記第2繊維強化樹脂層との両方が該貫通孔1hの周縁部で相手方に接近するように曲がっている。従って、この実施態様では、前記貫通孔1hに対応した凹部101が第1の表面1aと第2の表面1bの両面に形成され、該第1の表面1aと第2の表面1bの両面が凹凸面となっている。このような態様においても上記のような機能から樹脂複合パネル100に高い比強度を発揮させることができる。
【0031】
上記のような効果を発揮させ易い点において前記貫通孔1hの形状は、開口形状が円形又は多角形であることが好ましい。また、上記のような効果をより顕著に発揮させる上で前記複数の貫通孔1hは、縦横に一定間隔で並んで配列されていることが好ましい。貫通孔1hを配列する方向は長手方向Xや短手方向Yに平行していてもよい。貫通孔1hを配列する方向は長手方向Xや短手方向Yに傾斜する方向であってもよい。貫通孔1hを縦横に一定間隔で並んで配列する場合、複数の貫通孔1hは、見掛け上、千鳥配置となるように設けてもよい。
【0032】
前記貫通孔1hは、直径5mmの円よりも大きな開口形状を有していることが好ましい。前記貫通孔1hの開口形状は、直径7mmの円よりも大きくてもよく、直径9mmの円よりも大きくてもよい。前記貫通孔1hは、直径50mmの円よりも小さな開口形状を有していることが好ましい。前記貫通孔1hの開口形状は、直径40mmの円よりも小さくてもよく、直径30mmの円よりも小さくてもよい。
【0033】
前記樹脂発泡シートの厚さは、0.5mm以上とすることができる。前記樹脂発泡シートの厚さは、0.6mm以上であってもよく、0.8mm以上であってもよい。前記樹脂発泡シートの厚さは、5mm以下とすることができる。前記樹脂発泡シートの厚さは、4.0mm以下であってもよく、3.0mm以下であってもよい。
【0034】
前記樹脂発泡シートは、例えば、ポリエステル系樹脂発泡体、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリカーボネート系樹脂発泡体、アクリル系樹脂発泡体などとすることができる。前記芯材1は、押出発泡法によって得られる押出発泡シートであってもよい。前記芯材1は、型内発泡成形によって得られるシート状の発泡体、又は、型内発泡成形によって得られるブロック状の発泡体をスライス加工することによって作製された樹脂発泡シートであってもよい。
【0035】
前記樹脂発泡シートは、強度に優れる点において、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体などのポリエステル系樹脂発泡体、又は、ポリカーボネート系樹脂発泡体であることが好ましい。前記樹脂発泡シートは、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体であることが特に好ましい。
【0036】
前記樹脂発泡シートの見掛け密度は、100kg/m以上であることが好ましい。前記樹脂発泡シートの見掛け密度は、200kg/m以上であってもよい。前記樹脂発泡シートの見掛け密度は、700kg/m以下であることが好ましい。前記樹脂発泡シートの見掛け密度は、500kg/m以下であってもよい。
【0037】
芯材1の見掛け密度(D)は、該芯材1の複数箇所(例えば、4、5箇所)より切り出した試料の見掛け密度の算術平均値として求めることができる。各試料は、例えば、JIS K7222-2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に記載の方法に基づいて測定することができる。具体的には、元のセル構造を変えないように切断した100cm以上の試験片について、その体積(V(m))と質量(M(kg))とを測定し、体積(V)に対する質量(M)の比率(M/V)を求めることによって見掛け密度を算出することができる。100cm以上の試験片の採取が困難な場合はできるだけ大きな試料を採取して見掛け密度を算出してもよい。
【0038】
第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとのそれぞれの厚さは、0.1mm以上であることが好ましい。これらの厚さは、0.2mm以上であってもよい。これらの厚さは、例えば、1.0mm以下とされる。第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとのそれぞれの厚さは、0.8mm以下であってもよい。第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとのそれぞれの厚さは、共通していても異なっていてもよい。
【0039】
本実施形態で第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとのそれぞれを構成する繊維強化樹脂材は、短繊維と樹脂とを含むものであっても、連続繊維で構成された基材シートと該基材シートに含浸された樹脂とを備えるものであってもよい。樹脂複合パネル100に高い強度を発揮させる上において繊維は連続繊維で構成された基材シートとなって繊維強化樹脂材に備えられていることが好ましい。
【0040】
基材シートは、不織布であってもよく、織布であってもよい。基材シートは、繊維を一方向に引き揃えただけのシート(UD材)であってもよい。基材シートを織布とする場合、織布の織りは、平織であってもよく、綾織であってもよく、朱子織であってもよい。基材シートを構成する繊維は、例えば、アルミナ繊維、バサルト繊維、ロックウール、金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。基材シートを構成する繊維は、例えば、アラミド繊維やポリエーテルエーテルケトン繊維などの樹脂繊維であってもよい。
【0041】
本実施形態の基材シートは、ガラス繊維製であるか炭素繊維製であるかの何れかであることが好ましい。炭素繊維はガラス繊維に比べて熱伝導率に優れる。そのため樹脂複合パネル100が発熱機器を備えた装置の筐体などに用いられる場合に前記基材シートは、炭素繊維製であることが好ましい。炭素繊維は、ピッチ系炭素繊維であってもよくPAN系炭素繊維であってもよい。PAN系炭素繊維は、強度に優れるため樹脂複合パネル100の比強度を高める上で有利である。一方でピッチ系炭素繊維は、熱伝導率に優れるため、樹脂複合パネル100が発熱機器を備えた装置の筐体などに用いられる場合に特に有利となり得る。
【0042】
本実施形態の樹脂複合パネル100は、前記貫通孔1hで第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとが接着しているために厚さ方向に優れた熱伝導性を発揮する。樹脂複合パネル100に優れた熱伝導性を発揮させる上では、前記基材シートは織布であることが好ましく、綾織物や朱子織物よりも目の詰まった状態に仕上げられる平織物であることが特に好ましい。
【0043】
本実施形態の第1繊維強化樹脂層20aや第2繊維強化樹脂層20bでの繊維含有量は、通常、50質量%以上とされる。繊維含有量は、55質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。繊維含有量は、例えば、85質量%以下とされる。繊維含有量は、80質量%以下であってもよく、75質量%以下であってもよい。
【0044】
第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとが接着される前記貫通孔1hは、当該貫通孔1hが形成されている部分も含めた前記芯材1の総面積に対して、例えば、15%以上の面積割合で形成され得る。即ち、前記貫通孔1hの面積をも含めた前記芯材1の厚さ方向視での面積をS1(cm)、前記貫通孔1hの面積(複数の貫通孔1hの面積の合計値)をS2(cm)としたときに、前記芯材の面積(S1)に占める前記貫通孔の面積(S2)の割合([S2/S1]×100%)は、例えば、15%以上とすることができる。該面積割合([S2/S1]×100%)は、20%以上であってもよい。面積割合([S2/S1]×100%)は、例えば、85%以下とすることができる。複数の貫通孔1hは、30%以上の面積割合([S2/S1]×100%)で形成されていることが好ましい。該面積割合は、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましい。一方で、樹脂複合パネル100の軽量性を確保する上で、前記面積割合は80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましい。面積割合([S2/S1]×100%)は、70%以下であってもよく、65%以下であってもよい。
【0045】
前記貫通孔1hの開口面積と同じ面積の円の直径をD(mm)とした場合、複数の貫通孔1hは、隣り合う貫通孔1hとの中心間距離が5D以下となるように配されることが好ましい。前記中心間距離は、4D以下であってもよく、3D以下であってもよい。前記中心間距離は、1.1D以上とすることができる。前記中心間距離は、1.2D以上であってもよく、1.3D以上であってもよく、1.4D以上であってもよい。
【0046】
本実施形態の樹脂複合パネル100は、装置用筐体を構成する場合、前記第1の表面100a(凹凸面)と前記第2の表面100b(平坦面)との内の何れを装置内側、装置外側となるように配置してもよい。前記第2の表面100b(平坦面)が発熱機器を収容する収容空間に面する装置内側となるように配された場合、発熱機器や発熱機器の熱を伝達する放熱機器などを平坦面である第2の表面100bに接触させ易くなる。また、樹脂複合パネル100に機器を当接させない場合、前記第1の表面100a(凹凸面)が発熱機器を収容する収容空間に面する装置内側となるように配置すると受熱面積を大きくすることができる。即ち、何れにおいても樹脂複合パネル100を通じて発熱機器の発する熱を装置外に放出し易くなる。
【0047】
本実施形態のように樹脂複合パネル100の表面材が繊維強化樹脂層のみで構成され、且つ、繊維強化樹脂層での繊維が炭素繊維となっている場合は、筐体の内外表面が黒色となるため、輻射による受熱、放熱にも有利となり得る。
【0048】
前記繊維とともに繊維強化樹脂材を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂複合パネル100に優れた強度を発揮させる上で有利となる点で前記樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましい。即ち、本実施形態の繊維強化樹脂層20a,20bは、基材シートと該基材シートに含浸された未硬化な熱硬化性樹脂とを含むプリプレグシートで構成されることが好ましい。前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0049】
前記繊維強化樹脂材には、前記樹脂とともに無機フィラーが含まれていてもよい。前記無機フィラーとしては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、タルク、クレー、マイカなどの無機粒子や金属粒子などが用いられ得る。
【0050】
熱伝導性に優れた本実施形態の樹脂複合パネル100は、サイリスタやパワートランジスタなどを利用したスイッチング電源として機能するパワーモジュールなどの半導体モジュールを備えた半導体装置の筐体として好適である。
【0051】
本実施形態の樹脂複合パネル100は、軽量性にも優れるため前記発熱機器としてエンジン又はモーターを搭載した飛行体の筐体(ボディー)にも好適に用いられ得る。本実施形態の樹脂複合パネル100は、飛行体の中でも精密機器が搭載されるドローンの筐体(ボディー)を構成するのに特に適している。
【0052】
装置用筐体は、例えば、樹脂複合パネル100と、該樹脂複合パネル100を取付けるフレーム(枠体)とで構成することができる。例えば、直方体形状の装置用筐体は、直方体の各辺に対応するように組み上げられたフレームと、直方体の各面に対応するように前記フレームに取付けられた樹脂複合パネル100とで構成される。
【0053】
直方体形状の装置用筐体は、6面全てが樹脂複合パネル100で構成されなくてもよく、4つの側面パネルを樹脂複合パネル100で構成し、天井パネルと床パネルとは樹脂複合パネル100以外のもの(例えば、金属パネル)で構成してもよい。
【0054】
樹脂複合パネル100をフレームなどに取付けることを考えると、樹脂複合パネル100には、螺子止めや鳩目鋲などで他部材に締結するため孔などが設けられていてもよい。該孔は、樹脂複合パネル100を厚さ方向に貫通し、樹脂複合パネル100の第1の表面100aと第2の表面100bとの間を直線的に連通する連通孔100hとすることができる。孔は、丸孔や角孔とすることができる。孔は、連通する方向とは直交する方向に長い長孔であってもよい。
【0055】
樹脂複合パネル100は、このような孔の周りが補強されていることが好ましい。即ち、樹脂複合パネル100は、リング状の締結用部材を備えることが好ましい。図4図5に示すように、締結用部材3は、例えば、短い円筒状とすることができる。本実施形態の締結用部材3は、当該締結用部材3の中央部を通るように貫通する孔31を有する。以下においては、孔31の貫通方向を締結用部材3の軸方向DLと称する。また、以下においては、該軸方向X3に平行で締結用部材3の中央部を通る仮想軸を中心軸Xcと称し、該中心軸Xcを通り且つ該中心軸Xcに直交する方向を径方向DRと称する。
【0056】
締結用部材3は、孔31の貫通する軸方向DLが前記芯材1の前記貫通孔1hが貫通する方向と共通するように備えられる。本実施形態の締結用部材3の外径は、前記複数の貫通孔1hの内の一つの貫通孔の内径よりも小さい。即ち、本実施形態の締結用部材3は、該貫通孔1hよりも径小となっている。
【0057】
本実施形態では、締結用部材3の外径は、該貫通孔1hの内径よりも一回り小さい。本実施形態での締結用部材3は、芯材1の貫通孔1hの中央部に位置し、貫通孔1hの周面1cとの間に繊維強化樹脂層どうしを接着可能な間隔を設けて配されている。
【0058】
該締結用部材3の固定されている箇所では、前記第1繊維強化樹脂層20aと前記第2繊維強化樹脂層20bとのそれぞれにも孔が設けられ、前記締結用部材3の前記孔31を通じて樹脂複合パネル100の両面の間を連通する連通孔100hが樹脂複合パネル100に設けられている。前記第1繊維強化樹脂層20aの孔と前記第2繊維強化樹脂層20bの孔とは、それらの孔の中心部を前記中心軸Xcが通るように設けられている。
【0059】
図4図5に例示の樹脂複合パネル100では、芯材1の貫通孔1hの周面1cと締結用部材3の外周面3cとが径方向DRにおいて距離を隔てて対向し、これらの間に第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとが厚さ方向Zに重なって接着している接着部203が形成されている。該接着部203は、締結用部材3を径方向外側から囲うように形成されており、円環状となっている。
【0060】
本実施形態では、接着部203の外周縁部から貫通孔1hの周面1cに沿って立ち上がる縦壁部202aと、接着部203の内周縁部から締結用部材3の外周面に沿って立ち上がる第2の縦壁部202a’とが備えられている。
【0061】
本実施形態では、締結用部材3の軸方向DLにおける一端側においては、その外周面3cが、第2繊維強化樹脂層20bに形成された孔の周面に接着されている。締結用部材3の外周面の内、この第2繊維強化樹脂層20bと接着している部分以外については、第1繊維強化樹脂層20aで構成された縦壁部202aに接着されている。即ち、締結用部材3は、第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとの両方に接着されている。第1繊維強化樹脂層20aや第2繊維強化樹脂層20bと締結用部材3との接着は、繊維強化樹脂材に含まれている樹脂や該樹脂とは別に接着剤などを用いて実施され得る。
【0062】
この樹脂複合パネル100は、例えば、前記連通孔100hをよりも細い軸部と、該軸部よりも径大な頭部とを有し、該頭部から延びるように前記軸部が設けられているボルトを使ってフレームなどに固定することができる。図6に例示するように、ボルトBTを使ってこの樹脂複合パネル100をフレームFLに固定する場合、フレームFLに対して進行するようにボルトBTを締め付けた際に、その力を締結用部材3によって支持させることができる。
【0063】
締結用部材3は、高い圧縮強度を有することが好ましい。締結用部材3は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)などの樹脂製であってもよい。締結用部材3は、炭化ケイ素、アルミナ、シリカなどのセラミックス製であってもよい。締結用部材3は、鉄、アルミニウム、銅やそれらの合金などの金属製であってもよい。締結用部材3は、樹脂と金属との複合体であってもよい。
【0064】
樹脂複合パネル100では、内外2重の縦壁部202a,202a’が形成されるように締結用部材3が固定されているためにフレームFLなどの別部材に対して優れた強度で固定され得る。
【0065】
図4図6に例示の態様では、締結用部材3の軸方向DLでの両端面を樹脂複合パネル100の第1の表面100aと第2の表面100bとの両面に露出させており、連通孔100hを締結用部材3の孔31のみで形成させるようにしているが、締結用部材3を用いた樹脂複合パネル100は、例えば、図7に示すようなものであってもよい。
【0066】
図7に例示の樹脂複合パネル100は、締結用部材3が連通孔100hを補強している点においては図4図6に例示の態様と同じである。図7に例示の樹脂複合パネル100は、厚さ方向Zにおいて2つの繊維強化樹脂層の間に挟み込まれた状態で締結用部材3が備えられている。即ち、図7に例示の樹脂複合パネル100では、締結用部材3が第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとに挟まれている。
【0067】
第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとのそれぞれに設けられた孔は、図4図6に例示の態様では締結用部材3の外径に対応する大きさとなっている。一方で、図7に例示の樹脂複合パネル100でのそれらの孔は、締結用部材3の内径に対応するものとなっている。第1繊維強化樹脂層20aの孔は、締結用部材3の孔31を軸方向DLに延長するように締結用部材3の孔31と軸方向DLに重なり合っている。第2繊維強化樹脂層20bの孔も、締結用部材3の孔31を軸方向DLに延長するように締結用部材3の孔31と軸方向DLに重なり合っている。
【0068】
図4図6に例示の態様では連通孔100hが締結用部材3のみで構成されていたが、図7に例示の樹脂複合パネル100では、上記のように第1繊維強化樹脂層20aの孔や第2繊維強化樹脂層20bの孔が連通孔100hの両端部を構成している。尚、これらの例示では、締結用部材3を第1繊維強化樹脂層20aと第2繊維強化樹脂層20bとの両方に接着させているが、締結用部材3は、第1繊維強化樹脂層20aの表面に固定して第1繊維強化樹脂層20aのみに接着させたり、第2繊維強化樹脂層20bの表面に固定して第2繊維強化樹脂層20bのみに接着させたりしてもよい。締結用部材3の使用態様については上記のような態様以外にも各種の態様が考えられる。例えば、締結用部材3のリング形状は円筒状に限らず角筒状などであってもよい。
【0069】
本実施形態では、複数の貫通孔1hの内の一部にのみ締結用部材3を配置しても全部に締結用部材3を配置してもよい。一つの樹脂複合パネル100が複数の締結用部材3を備える場合、複数の締結用部材3の内の一締結用部材と他締結用部材とは、形状や材質が共通していても異なっていてもよい。
【0070】
本実施形態の樹脂複合パネル100の用途等は、上記例示に何等限定されない。また、本実施形態の樹脂複合パネル100は、上記例示の態様に限定されるものではなく、各種変更が加えられ得る。即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例0071】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
(予備積層体作製工程)
・平織の編み込まれた炭素繊維からなる基材シートに未硬化のエポキシ樹脂が45質量%含浸されている繊維強化樹脂材(厚み:0.25mm、目付:200g/m、三菱ケミカル社製「パイロフィルプリプレグ TR3110 392IMP」)を所定の寸法(300mm×300mm)に切り出したものを2枚用意した。
・厚み:1.2mm、坪量:450g/m、所定の寸法(300mm×300mm)のポリエステル樹脂製の樹脂発泡シートを表1に記載の寸法でプロッターカッターにて穴あけ加工を行って芯材とした。
・用意した繊維強化樹脂材と芯材とを表1記載の積層構成とした予備積層体を作製した。予備積層体は、芯材と繊維強化樹脂材との外縁を揃えるようにして作製した。
【0073】
次に、離型処理がされた厚さ4mmのアルミニウム板(寸法:400mm×400mm)を用意した。
アルミニウム板の離型処理はアルミニウム板の上面に離型剤(ケムリースジャパン社製「ケムリース2166」)を塗布して一日放置することにより実施した。なお、アルミニウム板の上面の外周縁部には、後記する封止材やバックバルブを配置するため、離型処理は施さなかった。
【0074】
図8に示すように、上面に離型処理を施したアルミニウム板APをベース板として用い、離型フィルムSP(寸法:400mm×400mm、東レ社製「トレファンYM17S」、厚み:25μm、離型面:艶消し加工)、予備積層体(繊維強化樹脂材FRP/芯材FS/繊維強化樹脂材FRP)、離型フィルムSPの順に重ね合わせて、第2の予備積層体を作製した。はみ出した離型フィルムSPは、過度に樹脂が流出することを抑制するために、マスキングテープで第2の予備積層体の側面に固定した。しかる後、ブリーザークロスBC(AIRTECH社製「AIRWEAVE N4」)を第2の予備積層体の上に配置し、第2の予備積層体を全面的に覆った。ブリーザークロスBCの上にバギングフィルムBF(AIRTECH社製「WL7400」)を被せ、バギングフィルムBFの外周縁部とこれに対向するベース板(アルミニウム板AP)との間を封止材SL(AIRTECH社製のシーラントテープ「GS43MR」)を用いて接合し、バギングフィルムBFによって第2の予備積層体を密封して積層構造体を作製した。なお、バギングフィルムBFはナイロンフィルムで形成され、一部にバックバルブBB(AIRTECH社製「VACVALVE 402A」)を配置したものを用いた。
【0075】
次に、積層構造体をオートクレーブ内に供給し、積層構造体のバックバルブBBを真空ラインと接続し、バギングフィルムBFで密封された空間部を真空度0.10MPaに減圧した。なお、空間部の減圧はその後も継続して行った。しかる後、積層構造体をその表面温度が130℃となるように加熱し、180分間に亘って保持し、エポキシ樹脂を硬化させた。その後、第2の予備積層体を60℃に冷却して片面にのみ凹部の形成された樹脂複合パネルを得た。
【0076】
(測定方法)
(試料の作製)
得られた樹脂複合パネルから長手方向寸法100mm、短手方向寸法40mmの長方形の試料を切り出した。
【0077】
(繊維強化樹脂層の厚み)
デジタルノギス(株式会社ミツトヨ社製 商品名「デジマチックキャリパ」)を使用して、長方形上の4辺の中点付近について測定し、平均値を算出した。
【0078】
(樹脂発泡シートの厚み)
デジタルノギス(株式会社ミツトヨ社製 商品名「デジマチックキャリパ」)を使用して、長方形上の4辺の中点付近について測定し、平均値を算出した。
【0079】
(樹脂発泡シートの見掛け密度)
見掛け密度は次式により算出した。
見掛け密度(kg/m)=樹脂発泡体質量(kg)/ 樹脂発泡体寸法(m)/ 樹脂発泡体厚み(m)
【0080】
(樹脂複合パネルの厚み)
デジタルノギス(株式会社ミツトヨ社製 商品名「デジマチックキャリパ」)を使用して、長方形上の4辺の中点付近について測定し、平均値を算出した。
【0081】
(樹脂複合パネルの比曲げ剛性)
比曲げ剛性は、次式より算出した。
比曲げ剛性(N・m/g)=E×L×T/12/M

E:曲げ弾性率(Pa)
L:試験片短辺長さ(m)
T:試験片厚み(m)
M:試験片質量(g)
【0082】
(ボルト接合評価)
作製された樹脂複合パネルで繊維強化樹脂層どうしが直接接着されている箇所(芯材の貫通孔部分)にφ2.1mmの穴加工を行った。貫通孔の無い芯材を用いている場合は芯材の存在している箇所にφ2.1mmの穴加工を行った。ステンレス製のM2ボルトとM2ボルトに対応したナットを準備し、先の孔にM2ボルトを通して反対側からナットを装着し、M2ボルトに0.15N・mのトルクを負荷して締め付けを行った。その際の樹脂複合パネルの状態から下記のように評価した。
(評価基準)
〇・・・樹脂複合パネルに割れ・座屈等の破損がない。
×・・・樹脂複合パネルに割れ・座屈等の破損がある。
以上の評価結果を下記の表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
以上のことからも、本発明によれば装置用筐体の構成部材に適した軽量性と強度とに優れた樹脂複合パネルが提供されることがわかる。
【符号の説明】
【0085】
1:芯材、1a:第1の表面、1b:第2の表面、1h:貫通孔、
20a:第1繊維強化樹脂層、20b:第2繊維強化樹脂層、21:樹脂溜り、
3:締結用部材、
100:樹脂複合パネル、100h:連通孔、101:凹部、
X:長手方向、
Y:短手方向、
Z:厚さ方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8