(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014377
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】組成物、および組成物を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20230119BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20230119BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230119BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K9/04
C08K3/013
C08K3/34
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194111
(22)【出願日】2022-12-05
(62)【分割の表示】P 2019558750の分割
【原出願日】2018-04-16
(31)【優先権主張番号】62/490,939
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/708,608
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502159859
【氏名又は名称】スペシャルティ ミネラルズ (ミシガン) インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】ワーネット,パトリック シー
(57)【要約】
【課題】高い熱安定性を有する高温用途の組成物を実現する。
【解決手段】本発明による組成物は、ポリオレフィンと、表面処理成分を含む無機鉱物の粒子と、1種の熱安定剤とを含んでいる。無機鉱物は、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、シリカ、または、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、およびシリカの任意の組合せを含んでいる。表面処理成分は非極性末端および極性末端を有する非イオン性界面活性剤を含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、
表面処理成分を含む無機鉱物の粒子と、
1種の熱安定剤と、
を含む組成物であって、
前記無機鉱物は、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、シリカ、または、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、およびシリカの中の任意の組合せを含み、
前記表面処理成分は、非極性末端および極性末端を有する非イオン性界面活性剤を含むものである、
組成物。
【請求項2】
前記無機鉱物の粒子は0.1乃至10μの中央粒径を含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記無機鉱物はタルクを含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記表面処理成分の重量百分率対前記組成物中の前記無機鉱物の重量百分率の比が0.1乃至5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記表面処理成分の重量百分率対前記組成物中の前記無機鉱物の重量百分率の比が0.4乃至0.8である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記表面処理成分は、前記熱安定剤を吸着し得る前記粒子上の部位をブロックし、前記熱安定剤は前記組成物の0.02乃至1.0重量%を構成するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
組成物を形成する方法であって、
タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、およびシリカからなる群の中の1種以上の要素からなる無機鉱物の粒子の表面上に、非極性末端および極性末端を有する非イオン性界面活性剤を含む表面処理被覆を形成すること、
前記被覆された粒子と、1種の熱安定剤を含むポリオレフィンとを溶融配合して、ポリオレフィンマトリックス全体に分散された前記被覆された粒子を含む組成物を形成すること、
を含み、
前記表面処理被覆は、前記熱安定剤が前記ポリオレフィンマトリックス全体に分散されるように、前記配合期間中に前記粒子への前記熱安定剤の吸着を抑制するものである、
方法。
【請求項8】
前記無機鉱物がタルクを含むものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤対前記無機鉱物の比が0.1乃至5重量%である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤対前記無機鉱物の比が0.4乃至0.8重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記無機鉱物の粒子は0.1乃至10μの中央粒径を含むものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記表面処理被覆は、前記熱安定剤を吸着し得る前記無機鉱物の粒子上の部位をブロックし、前記熱安定剤は前記組成物の0.02乃至1.0重量%を構成するものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
ポリオレフィンと、
表面処理成分の被覆を含む表面処理を有する無機鉱物の粒子と、
熱安定剤と、
を含む組成物であって、
前記無機鉱物は、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、およびシリカからなる群から選択され、
前記表面処理成分は、官能化ポリエーテルおよび炭素系ポリマーからなる群から選択され、
前記表面処理成分は、前記粒子への前記熱安定剤の吸着を抑制し、それによって、前記熱安定剤が、前記ポリオレフィンにおいて分散状態を維持することができ、高温環境への暴露による前記組成物の劣化を低減することができるものである、
組成物。
【請求項14】
前記無機鉱物がタルクである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記表面処理成分がポリソルバート20(PO-20)である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
PO-20対タルクの比が0.1乃至5重量%である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
PO-20対タルクの比が0.4乃至0.8重量%である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記表面処理成分がポリソルバート20(PO-20)である、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
PO-20対タルクの比が0.1乃至5重量%である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
PO-20対タルクの比が0.4乃至0.8重量%である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記表面処理成分は、高温環境への暴露によって生じる特性の劣化に対する前記ポリオレフィンの耐性を低下させるであろう、前記ポリオレフィンにおける前記熱安定剤を吸着し得る前記粒子上の部位、をブロックするものである、請求項13に記載の組成物。
【請求項22】
前記表面処理成分が、前記ポリオレフィンと前記粒子の親和性を向上させる親水性および親油性成分である、請求項13に記載の組成物。
【請求項23】
組成物を形成する方法であって、
タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、およびシリカからなる群から選択された無機鉱物の粒子の表面上に、官能化ポリエーテルおよび炭素系ポリマーからなる群から選択された表面処理被覆を形成すること、
前記被覆された粒子と、熱安定剤を含むポリオレフィンとを溶融配合して、ポリオレフィンマトリックス全体に分散された前記被覆された粒子を含む組成物を形成すること、
を含み、
前記表面処理被覆は、前記熱安定剤が前記ポリオレフィンマトリックス全体に分散されるように、前記配合期間中に前記粒子への前記熱安定剤の吸着を抑制するものである、
方法。
【請求項24】
前記無機鉱物がタルクである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記表面処理被覆がポリソルバート20(PO-20)である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
PO-20対タルクの比が0.1乃至5重量%である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
PO-20対タルクの比が0.4乃至1.0重量%である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記表面処理被覆がポリソルバート20(PO-20)である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
PO-20対タルクの比が0.1乃至5重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
PO-20対タルクの比が0.4乃至1.0重量%である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記表面処理被覆は、高温環境への暴露により生じる特性の劣化に対する前記ポリオレフィンの耐性を低下させるであろう、前記ポリオレフィンマトリックスにおける前記熱安定剤を吸着し得る前記粒子上の部位、をブロックするものである、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用途において熱安定性を示す組成物に関する。特に、本発明は、ポリマー、表面処理または被覆された無機鉱物、および熱安定剤を含む組成物に関する。
【0002】
本発明の組成物は広範囲の高温用途における部品に有用である。
【0003】
本願は、2017年4月27日付の米国特許出願第62/490939号の優先権を主張する2017年9月19日付の米国特許出願第15/708608号の優先権を主張するものであり、ここでこれらの両出願を参照により組み込む。
【背景技術】
【0004】
技術水準の説明
例えばポリオレフィンのような或るポリマーは、熱安定剤と共に使用するときその熱安定性が高いので、高温用途に特に有用である。そのような用途における部品、例えば、自動車のボンネット(フード)の下にある部品は、一度に数分または数時間の間、周囲温度をはるかに超える高温に曝される。ポリオレフィンは、例えば脆化によって示されるような熱不安定性の発現前の何時間もの間にそのような使用状態に置かれ得る。但し、ポリオレフィンは、そのままでは、或る用途または適用例について剛性が不充分である可能性がある。さらに、熱への暴露の周期的な性質によって、結果的に、部品が膨張および収縮して、寸法に不安定性が生じ、即ち、部品の形状が使用期間中に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【0006】
必要とされるものは、高い熱安定性を有する一方で、広範な高温用途について高い寸法安定性および高い剛性をも有するポリオレフィン組成物である。
【0007】
発明の概要
本発明の実施形態には組成物が含まれ、その組成物は、ポリオレフィンと、表面処理成分の被覆(コーティング)を含む表面処理を有する無機鉱物の粒子と、熱安定剤とを含んでいる。その無機鉱物は、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土(clay)、およびシリカからなる群から選択され、その表面処理成分は、官能化ポリエーテルおよび炭素系ポリマーからなる群から選択され、その表面処理成分は、その粒子への熱安定剤の吸着を抑制し、それによって、熱安定剤が、ポリオレフィンにおいて分散配置された状態(distributed)を維持することができ、高温環境への暴露に起因する組成物の劣化を低減することができる。
【0008】
上述の実施形態は、以下の複数の特徴のいずれか1つまたは組合せを含んでもよい。
無機鉱物はタルクである;
表面処理成分はポリソルバート20(polysorbate 20:ポリソルベート20)(PO-20)である;
PO-20対タルクの比は0.1乃至5重量%である;
PO-20対タルクの比は0.4乃至0.8重量%である;
熱安定剤はポリオレフィン全体に均一に分散配置されている;および
表面処理成分は、高温環境への暴露によって結果的に生じる特性の劣化に対するポリオレフィンの耐性を低下させるであろう、ポリオレフィンにおける熱安定剤を吸着し得る粒子上の各部位、をブロックする(遮る、塞ぐ);および
表面処理成分は、ポリオレフィンおよび粒子の親和性(compatibility:適合性、相溶性)を向上させる。
【0009】
本発明の実施形態は組成物を形成する方法を含み、その方法は、無機鉱物の粒子の表面上に表面処理被覆を形成することを含んでいる。その無機鉱物は、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、およびシリカからなる群から選択される。また、その表面処理被覆は、官能化ポリエーテルおよび炭素系ポリマーからなる群から選択される。その方法は、さらに、その被覆された粒子と、熱安定剤を含むポリオレフィンとを溶融配合して、ポリオレフィンマトリックス(母材)全体に分散されたその被覆された粒子を含む組成物を形成することを含んでいる。その表面処理被覆は、熱安定剤がポリオレフィンマトリックス全体に分散された形態で、その配合期間中にその粒子への熱安定剤の吸着を抑制する。
【0010】
上述の実施形態は、以下の複数の特徴のいずれか1つまたは組合せを含んでいる。
無機鉱物はタルクである;
表面処理成分はポリソルバート20(PO-20)である;
PO-20対タルクの比は0.1乃至5重量%である;
PO-20対タルクの比は0.4乃至0.8重量%である;
熱安定剤はポリオレフィンマトリックス全体に均一に分散配置されている;および
表面処理成分は、高温環境への暴露によって結果的に生じる特性の劣化に対するポリオレフィンの耐性を低下させるであろう、ポリオレフィンマトリックス中の熱安定剤を吸着できる粒子上の各部位、をブロックする(遮る、塞ぐ)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ポリオレフィンと、未処理タルクと、ポリソルバート20で被覆されたタルクとに関する長期熱エイジング(LTHA)の試験結果を示している。
【
図2】
図2は、ポリオレフィンと、未処理タルクと、ポリソルバート20で被覆されたタルクとに関する長期熱エイジング(LTHA)の試験結果を示している。
【
図3】
図3は、ポリオレフィンと、未処理タルクと、タルク濃度20重量%のポリソルバート20で被覆されたタルクとに関するLTHA試験結果を示している。
【
図4】
図4は、ポリオレフィンと、未処理タルクと、タルク濃度40重量%のポリソルバート20で被覆されたタルクとに関するLTHA試験結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
ポリオレフィンの寸法安定性および剛性(stiffness)は、ポリオレフィンポリマーに無機粒子を含ませることによって、複合ポリマー樹脂を形成するようにして、改善されてもよい。例示的な無機材料には、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土またはシリカが含まれる。或る無機鉱物粒子は、極性と非極性または疎水性の双方の領域または部位を有する。その極性の領域または部位は、熱安定剤として典型的に使用される、例えば、高分子ヒンダード(hindered)アミン類、フェノール系化合物類、およびチオエーテル類のような、極性種(polar species)を優先的に吸着する傾向がある。
【0013】
タルク粒子は、例えば、非極性または疎水性の表面および極性エッジ(端縁、端部)を有する板状(プレート状)の構造を有する。ポリマーに組み込まれたタルクは、タルク粒子の極性エッジに優先的に、ポリオレフィンに加えられた熱安定剤を吸着する。高温に曝されたときにポリマーに熱安定性を与えるために、熱安定剤がポリオレフィンポリマー全体に分散された状態を維持することが、重要である。熱安定性のためにポリオレフィンに存在するタルクによる熱安定剤の吸着によって、熱エネルギに対するポリマーの耐性が減少する。従って、熱安定剤の吸着によって、タルクがポリマーに添加されなかったとした場合よりもはるかに早い時間に複合組成物の脆化が生じるようになる。これは、高温環境におけるタルク強化ポリオレフィン系のプラスチックの開発以来、長期的な問題であった。
【0014】
熱安定剤の吸着の問題は、タルクによって吸着される量を補うために、例えばナイロンのようなより高価な加工樹脂を使用するか、高価な熱安定剤(例えば、高分子(polymeric)ヒンダードアミン)の量を増加させることによって対処されてもよい。しかし、これらの代替手段は、高温環境での適用のためのタルク-ポリオレフィン複合材料の熱劣化の促進の問題を軽減する費用効果の高い方法ではない可能性がある。
【0015】
本発明は、タルクに充分に強く吸着してポリオレフィンポリマーにおける熱安定剤を吸着する部位をブロックしタルクとポリオレフィンマトリックスの双方と親和性(compatibility:適合性、相溶性)のある表面処理(部)を含んでいる。それにより、その表面処理によって、ポリマーマトリックス中で熱安定剤が、高温に曝される部品(部分)の寿命(耐用期間)を、ポリオレフィンと溶融配合する前にタルクにその表面処理が加えられなかったとする場合よりもはるかに長く、伸ばすことを維持できるようになる。溶融配合は、ポリマーを他の添加剤と溶融ブレンドするプロセスである。そのような表面処理の開発が課題である。その少なくとも一部の理由は、溶融配合期間中に脱着することなくタルク鉱物の極性エッジに充分強く吸着しかつポリオレフィンマトリックスとの親和性(適合性、相溶性)を依然として有する表面処理、を特定する必要があるからである。
【0016】
本発明の態様は組成物を含み、その組成物は、ポリオレフィンと、表面処理成分の被覆を含む表面処理(部)を有する無機鉱物の粒子と、熱安定剤とを含んでいる。無機鉱物は、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土およびシリカからなる群から選択される。表面処理成分は、官能化ポリエーテルおよび炭素系ポリマーからなる群から選択されてもよい。表面処理成分は、粒子への熱安定剤の吸着を抑制し、それによって、熱安定剤は、高温環境に曝されたことに起因する組成物の劣化を低減することができる。
【0017】
上述の態様において、被覆は粒子の表面を部分的または完全に覆う。被覆の厚さは、タルク粒子の表面にわたって均一であってもよい。
【0018】
上述の態様において、熱安定剤は、粒子表面に優先的に吸着されるのではなく、ポリマー全体に分散配置される。表面処理成分は、熱エネルギに対するポリマーの耐性を減少させるであろう、ポリマー中の熱安定剤を吸着し得る粒子上の複数の部位、をブロックする、と考えられる。その結果、熱安定剤は、高温環境における熱への暴露に対する耐熱性を向上させることができる。
【0019】
表面処理成分対粒子の比は0.1乃至1重量%であってもよい。組成物中の無機粒子の量または配合(添加)量は、0.1乃至1重量%、1乃至10重量%、10乃至20重量%、20乃至30重量%、30乃至40重量%、または40重量%超であってもよい。
【0020】
好ましい表面処理成分は、ポリオキシエチレン(polyoxyethylene)(20)ソルビタンモノラウラート(sorbitan monolaurate)またはポリソルバート(polysorbate)20(PO-20)である。PO-20は、非極性末端と極性末端を有する非イオン性界面活性剤である。PO-20の構造は次のようなものである。
【化1】
【0021】
PO-20の一般的な市販形態には、クロダ社(Croda)製のトゥイーン(Tween(登録商標))20およびバスフ社(BASF)製のティーマズ(TMAZ(米国の登録商標)20が含まれる。好ましい無機鉱物はタルクである。好ましい被覆レベルの範囲は、0.4乃至0.8重量%のPO-20/タルク重量、である。
【0022】
PO-20は、タルク粒子とポリオレフィンの間の親和剤(compatibilizer:相溶化剤)として機能する。その結果、それによってポリオレフィンにおける粒子の均一な分散(dispersion)が促進される。さらに、PO-20は、タルクの極性エッジに吸着し、熱安定剤の吸着をブロック(遮断、阻止)する。
【0023】
タルク粒子の中央粒径(粒度)は、0.1乃至10μ(ミクロン、μm)、またはより狭くは、0.5乃至1μ、1乃至1.5μ、1.5乃至2μ、2乃至3μ、3乃至5μ、または5乃至10μとすることができる。
【0024】
ポリオレフィン中の熱安定剤は、典型的には0.05乃至1.0重量%の範囲の濃度で樹脂製造業によって一般的に添加される。これらの熱安定剤は、最も一般的には、立体障害アミン(sterically hindered amines)、フェノール系の化合物(phenolic based compounds)、およびチオ-エーテル(thio-ethers)のクラス(類)から選択され、単独でまたは互いに組合せで加えられる。熱安定剤は、組成物の0.02乃至1.0重量%、またはより狭くは組成物の、0.02乃至0.05重量%、0.05乃至0.07重量%または0.07乃至1.0重量%であってもよい。
【0025】
本発明は、ポリオレフィンに対する代替的設計の樹脂の使用に対する費用効果の高い解決手段であり、タルクによって吸着される量を補償するために追加的なより高価な熱安定剤を加えるよりも費用効果が高い。本発明は、タルク表面への吸着を補償するために追加の熱安定剤を加えるのではなく、問題の発生原因(タルク表面)を処理することを含む。
【0026】
高温用途とは、使用期間中および耐用期間(寿命)の全体または一部にわたって部品が高温に曝されるような用途を指す。高温への暴露は、各高温への暴露の後に続いて、次の高温への暴露まで周囲温度付近または周囲温度への温度低下が生じるような、反復的な暴露、に対応し得る。代替的に、高温への暴露は、部品の耐用期間を通じて連続的に生じてもよい。
【0027】
高温への暴露の温度は、特定の用途に応じて決まる。その高温は、周囲温度より高い任意の温度であってもよい。周囲温度は20乃至25℃であってもよい。より狭くは、高温とは、40乃至50℃、50乃至100℃、100乃至120℃、または120℃超、の温度を指し得るであろう。
【0028】
高温用途には、限定されることなく、自動車のボンネット(フード)の下、自動車室内、家電機器(洗濯機、乾燥機、オーブン、冷蔵庫)および飛行機エンジンが含まれる。自動車ボンネット下での用途における高温への暴露は、100乃至120℃であり、暴露の期間は、暴露ごとに異なり、数分乃至数時間の間で続くことがある。車室内での用途における高温への暴露は、40乃至120℃であり、暴露の期間は、暴露ごとに異なり、数分乃至数時間の間で続き得る。一般的に、高温用途は、顧客が指定した高温範囲、曝露の時間期間、および曝露の頻度で、顧客によって指定される。
【0029】
高温用途で使用される部品の特性は、その耐用期間(寿命)中に時間とともに低下または劣化する傾向がある。特に、熱への暴露によって、結果的にポリマーの脆化が生じる。“脆化”(Embrittlement)とは、材料の延性が失われ、材料が脆くなることを指す。脆化によって、部品は破壊(fracture)および破損(failure)を生じやすくなり、もはや部品は役に立たなくなる。従って、熱または高温への暴露によって、部品の耐用期間(寿命)が短くなる。高温への暴露に対する部品の耐性は、部品が指定の高温に晒されたときの脆化までの時間(期間)によって特徴付けられてもよい。
【0030】
熱への暴露の試験は、熱エイジング(経年変化、老化)と称される。典型的には、加速(促進)熱エイジングが用いられる。加速エイジングとは、生成物または製品をはるかに短い時間に過大(過酷)な条件に晒すことによって、比較的長い時間にわたる通常の使用条件下での部品の応答を決定または測定しようとする手順である。熱エイジング用の過大な条件は、通常の使用期間中に経験する温度より高いエイジング温度に対応する。エイジング因子は、エイジング試験から観察された応答から通常の使用条件下での応答(例えば、脆化までの時間)を計算するために決定され採用されたものであってもよい。例えば、200時間の脆化までの時間が150℃のエイジング温度で観察されてもよい。 100~120℃の通常の使用温度では、脆化までの時間が約400時間に対応し得る。
【0031】
部品の熱安定性は、長期熱エイジング(LTHA)試験によって認定される。部品が対流式オーブン内に配置され、或る時間期間において高温に曝される。部品の特性が監視され、部品の脆化に要する暴露時間が識別または特定される。
【0032】
例示的な手順は、ポリプロピレンに関する熱暴露ガイドラインに関するASTM標準手順番号D-3045である。その試験用の機器は、ドラフト(Fume Hood)内への換気付きのブルーMエレクトリック社(Blue M Electric)の電気対流式オーブンである。そのオーブンは、例えば150℃のような指定されたエイジング温度に設定され、適切なウォームアップ時間後に標本(specimen:試料、被検査物、試験片)がそのオーブン内に配置される。
【0033】
エイジング試験の1つの目的は、標本が長い時間期間に熱風に曝されたときの酸化またはその他の劣化に対する耐性の順位(ランキン)を決定することであてもよい。
【0034】
別の目的は、標本の破損(不具合、故障)から認定された脆化までの時間を決定または測定することである。破損の評価は主観的である可能性があるので、一貫性または整合性のために、破損は、(1)色変化=錆色のある任意の酸化領域の観察、または(2)脆性破損=標本全体の視覚的亀裂(クラック、ひび割れ)、のいずれかとして定義されてもよい。冷却した標本を手で保持して、フレックス・バー(屈曲棒)の両側を検査し、そのバーを静かに曲げて脆性/亀裂(cracks)を検査する。
【0035】
複数の標本が、全てが破損するまで、例えば1日に2回のように、定期的に検査されてもよい。試料が破損したとき、それらの試料をオーブンから取り出すことができる。破損率(レート)は、破損までの時間数として報告される1つの試料(sample)当り5つの標本に対する破損時間の平均値として報告されてもよい。
【0036】
熱安定剤は、限定されることなく、例えばバスフ社(BASF)製のチマスソルブ(Chimassorb)(登録商標)2020およびウビノール(Uvinol)(登録商標)4050のようなヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizers)、例えばペンタエリスリチルテトラキス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(pentaerythrityl tetrakis-3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl) propionate)およびオクタセシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(octacecyl 3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl) propionate:3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタセシル)のようなフェノールおよびヒンダードフェノール(phenolic and hindered phenols)、または、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル(dilauryl thiodipropionate:ジラウリルチオジプロピオナート)、チオジプロピオン酸ジステアリル(distearyl thiodipropionate:ジステアリルチオジプロピオナート)、およびジオクタデシルジスルフィド(dioctadecyl disulfide)のようなチオエーテル(thioethers)の複数のクラスとすることができる。これらのクラスの熱安定剤を、単独でまたは共に併用して、ポリオレフィン系の高分子系(ポリマーシステム)の熱安定性を向上させることができる。
【0037】
幾つかの態様において、表面処理成分は、タルクへの熱安定剤の吸着を減少させるためにポリエーテルおよび官能化ポリエーテルを含んでいる。一般的な化学構造式は次の通りである。
H-(OCHR(CH2)x,CHR1)n-OH
ここで、nは繰返し単位(分子量)の数であり、xは0(ゼロ)または整数であり、Rはアルキル基であり、Oは酸素であり、Cは炭素であり、Hは水素であり、R1は官能基でり、その官能基は、限定されることなく、カルボン酸アルキル(alkyl carboxylate:アルキルカルボキシラート)、アルキルアミン(alkyl amine)、アルキルアミド(alkyl amide)、アルキルチオール(alkyl thiol)、アルキル硫酸塩(alkyl sulfate:アルキルスルファート)、スルホン酸アルキル(alkyl sulfonate:アルキルスルホナート)、リン酸アルキル(alkyl phosphate:アルキルリン酸塩、アルキルホスファート)またはホスホン酸アルキル(alkyl phosphonate:アルキルホスホナート)、等であってもよい。
【0038】
タルクの表面処理に有用なポリエーテルおよび官能化ポリエーテルは、ポリ(エチレングリコール)(poly(ethylene glycol))、ポリ(エチレングリコール)ビス-(カルボキシメチル)エーテル(poly (ethylene glycol) Bis-(carboxymethyl) ether)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(poly (ethylene glycol) dimethyl ether)、およびポリ(エチレングリコール-400)ジステアラート(poly (ethylene glycol-400) distearate)等、および官能化ポリエーテル(functionalized polyethers)(カルボン酸アルキル(alkyl carboxylate)、アルキルアミン(alkyl amine)、アルキルアミド(alkyl amide)、アルキル硫酸塩(alkyl sulfate)、アルキルチオール(alkyl thiol)、スルホン酸アルキル(alkyl sulfonate)、リン酸アルキル(alkyl phosphate)、ホスホン酸アルキル(alkyl phosphonate))からなる群から選択されてもよい。但し、カルボン酸アルキル官能基が好ましい。ポリエーテル(polyethers)および官能化ポリエーテルポリマー(functionalized polyether polymers)を生成するために使用される方法には、制限がない。上述の物質の任意の組合せを使用してもよい。本発明のポリエーテルおよび官能化ポリエーテルは、イオン重合またはラジカル重合等によって、またはポリエーテルおよび官能化ポリエーテルを生成することが知られている任意の他のプロセスによって、製造してもよい。
【0039】
ポリエーテルおよび官能化ポリエーテルの分子量範囲は、約1000乃至約10,000,000a.m.u.であり、好ましい範囲は約1,000乃至約1,000,000 a.m.u.である。分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)によって決定または測定することができる。分子量は、数平均または重量平均の分子量を指してもよい。
【0040】
本発明の別の態様は、熱安定剤の吸着レベルを低下させるために、タルクを表面処理するための炭素系ポリマー被覆の使用に関する。また、炭素系ポリマーの定義には、マレイン酸/オレフィンコポリマー(共重合体)も含まれる。
【0041】
タルクの表面処理に有用な炭素系ポリマーは、官能化ポリオレフィン:マレイン酸/オレフィンコポリマー(共重合体)、マレイン酸/スチレンコポリマー、からなる群から選択されてもよい。但し、マレイン酸/スチレンコポリマーが好ましい。また、炭素系ポリマーの群には、任意の沸点の鉱油および任意の融点のパラフィンワックス(蝋)も含まれる。x/y比は約100:1乃至約1:100の範囲とすることができる。但し、好ましい範囲は約10:1乃至約1:10である。Cは炭素であり、Oは酸素であり、Hは水素であり、Rは官能基である。Rは、炭素との結合を形成できる任意の基であってもよい。これには、限定されることなく、アルキルカルボン酸塩(alkyl carboxylates)、アルキルアミン(alkyl amines)、アルキルアミド(alkyl amides)、アルキルチオール(alkyl thiols)、アルキル硫酸塩(alkyl sulfates)、アルキルスルホン酸塩(alkyl sulfonates)、アルキルリン酸塩(alkyl phosphates)、およびアルキルホスホン酸塩(alkyl phosphonates)、等が含まれる。
【0042】
炭素系ポリマーの分子量は、約100乃至約10,000,000a.m.u.の範囲であってもよく、好ましい範囲は約200乃至約2,000,000a.m.u.である。
【0043】
本発明の別の態様は、次のような化学構造式を有する官能化ポリジアルキル(functionalized polydialkyl)の、好ましくはポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)の、表面処理成分の使用に関する。
[Si(CH3)(R)- O-Si(CH3)(R)-O] n
ここで、nは繰返し単位の数(分子量)であり、CH3はメチル基であり、Siは珪素(シリコン)であり、Oは酸素であり、Rは官能化アルキル基である。アルキル基は、限定されることなく、カルボン酸塩、アミン、アミド、チオール、硫酸塩、およびリン酸塩、等で官能化されていてもよい。
【0044】
本発明において有用なシロキサンポリマー(siloxane polymers)は、官能化アルキルポリジメチルシロキサン(functionalized alkyl polydimethylsiloxane)(カルボン酸塩、アミン、アミド、チオール、硫酸塩、リン酸塩)(但し、カルボン酸塩が好ましい)、ビス-(12-ヒドロキシステアラート)末端ポリジメチルシロキサン(Bis-(12-hydroxystearate) terminated polydimethylsiloxane)(アルドリッチ・ケミカル社製(Aldrich Chemical Co.)、米国532331ウィスコンシン州ミルウォーキー,ウエスト・セイント・ポール・アヴェニュー1001)、およびポリ(ジメチルシロキサン)-グラフト-ポリアクリラート(Poly(Dimethylsiloxane)-Graft-Polyacrylates)(アルドリッチ社製(Aldrich))からなる群から選ばれてもよい。 シロキサンポリマーを製造するのに使用される方法に制限がない。本発明のシロキサンポリマーは、イオン重合またはラジカル重合等、またはシロキサンポリマーを生成することが知られている他の任意のプロセスによって、製造してもよい。
【0045】
シロキサンポリマーの分子量範囲は、約1000乃至約1,000,000原子質量単位(a.m.u.)であり、好ましくは約1000乃至約100,000a.m.u.の範囲である。その分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定することができる。
【0046】
本発明において有用なシランは化学構造式SiR4を有する。ここで、Siは珪素であり、Rは珪素と共有結合を形成できる任意の基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、官能化アルキル基、および官能化アルコキシ基、およびその任意の組合せ)であり得る。次のようなシラン類が本発明において有用であり得る。即ち、オクチルトリエトキシシラン(Octyltriethoxysilane)(モメンティヴ シルクエスト(Momentive Silquest(登録商標))A-137シラン)、トリアミノ官能性シラン(Triamino functional silane)(モメンティヴ シルクエスト(Momentive Silquest(登録商標)A-1130シラン)、ビス-(γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン(Bis-(gamma-trimethoxysilylpropyl) amine)(モメンティヴ シルクエスト(Momentive Silquest(登録商標)A-1170シラン)であり、これらの全てはモメンティヴ・パーフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials)より市販されている。
【0047】
表面処理を受け入れ可能な、例えば、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土またはシリカのような任意の無機鉱物が、ここで記載するポリマーで被覆されてもよい。但し、タルクが好ましい無機鉱物である。特に有用なタルクは、両表面処理を受け入れできるもの(タルク)であり、ポリオレフィンフィルムの生成において後で使用することができるものである。例示的なタルクは、限定されることなく、典型的には、実験または経験的化学式Mg3Si4O10(OH)2および比重約2.6乃至約2.9を有するであろう。好ましいタルクは、他に限定されることなく、約0.1μ乃至約10μの平均または中央粒径を有することができるであろう。但し、その好ましい平均または中央粒径は約0.5μ乃至約7μである。タルクは、約0.01重量%乃至約10重量%のここに記載するポリマーで被覆し得る。但し、被覆の好ましい処理レベルは、ポリマーの重量に基づいて(を基準にして)約0.25重量%乃至2重量%である。
【0048】
ここに記載するポリマー被覆の全ては、任意の便利な乾燥粉末混合操作によってタルクに施されて(塗布または付着されて)もよい。或る方法は、タルクにポリソルバート20表面処理を適用する(施す)こと、タルクおよびポリソルバートの両流れを所望の速度で結合して目的の表面処理を達成させること、および、弱い(mild)乃至高い剪断の攪拌を加えてタルク表面上に被覆を完全(徹底的)に結合させ分散配置すること、を含んでいる。
【0049】
被覆がタルクに適用または施される(塗布、付着)温度は、約0℃乃至約500℃、好ましくは約30℃乃至約200℃、より好ましくは約60℃乃至約80℃の範囲である。その適用温度は、特定の被覆が融解を必要とする場合、より高いレベルに調整すべきである。
【0050】
タルクがいったん被覆されると、タルクとポリオレフィンの組成物または複合材料もしくは複合物が形成され得る。例えば押出または溶融混合のような溶融加工法を使用して、被覆されたタルクとポリオレフィンの複合材料を形成してもよい。限定されることなく、その被覆されたタルクを、押出機に加えても、または先に配合(混合、コンパウンド)されたマスターバッチとして押出機に加えてもよい。配合されたマスターバッチとは、樹脂と被覆されたタルクとがより高い濃度でコンパウンダ(配合器)で予め混合され、例えば押出機で、樹脂と溶融混合することによって目標の鉱物濃度まで希釈されること、を意味する。
【0051】
その溶融物をダイス(die)に通すことによって、または例えば、射出成型(モールド)、熱成形シート、ブロー成型または回転成型を使用することによって、その混合物から部品を形成してもよい。
【0052】
本発明に適していると考えられるポリオレフィンは、例えば透明な結晶であり得る、任意のポリオレフィンであってもよい。非限定的な例には、2乃至12の範囲の炭素数を有するα-オレフィンの結晶性ホモポリマー、または、2種以上の結晶性コポリマーまたはエチレン-酢酸ビニルコポリマーと、他の樹脂とのブレンド(混合物)、が含まれる。また、ポリオレフィン樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー(ethylene-propylene copolymers)、ポリ-1-ブテン(poly-1-butene)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(ethylene-vinyl acetate copolymers)、等であり、また、低密度および中密度ポリエチレンであり得る。追加の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリ-r-メチルペンテン-1(poly-r-methylpentene-1)、およびエチレン-プロピレンのランダムまたはブロックコポリマー、およびエチレン-プロピレン-ヘキセンコポリマー、によって表される。それらの中でも、エチレンとプロピレンのコポリマー、および、これにさらに、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、およびオクテン-1から選択された1種または2種を含むコポリマー(所謂LLDPE)が、メタロセン触媒ポリマー(metallocene catalyzed polymers)と同様に特に適している。
【0053】
本発明において使用されるポリオレフィン樹脂を生成または製造する方法は、限定されない。例えば、その樹脂は、イオン重合またはラジカル重合によって製造することができる。イオン重合によって得られるポリオレフィン樹脂の例には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-2、およびポリ-4-メチルペンテンのようなホモポリマー、およびエチレンとα-オレフィンとを共重合することによって得られるエチレンコポリマー、が含まれ、ここで、例えば、プロピレン、ブテン-1,4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1、およびオクタデセン-1のような3乃至18の炭素原子を有するα-オレフィンが、α-オレフィンとして使用される。これらのα-オレフィンは、個々に(単独で)または2種類以上のものとして使用することができる。他の例には、例えばプロピレンとブテン-1のコポリマーのようなプロピレンコポリマーが含まれる。ラジカル重合によって得られるポリオレフィン樹脂の例には、エチレン単独か、またはエチレンとラジカル重合性モノマーを共重合することによって得られるエチレンコポリマー、が含まれる。ラジカル重合性モノマーの例には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸エステルおよびそれらの酸無水物(acid anhydrides)のような、不飽和カルボン酸、および例えば酢酸ビニルのようなビニルエステルが含まれる。不飽和カルボン酸のエステルの具体例には、アクリル酸エチル(ethyl acrylate)、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate)およびメタクリル酸グリシジル(glycidyl methacrylate)が含まれる。これらのラジカル重合性モノマーは、個々に(単独で)または2種類以上のものとして使用することができる。
【0054】
例
ポリオレフィンおよびタルク組成物の長期熱エイジング試験が行われた。
【0055】
第1組のエイジング試験において、PO-20(Tween20)で被覆されたタルクを含む組成物および被覆なしのタルクを含む組成物が調べられた。ポリオレフィンは、米国テキサス州ロングビューのフリント・ヒル・リソース・ポリマーズ社(Flint Hill Resources Polymers, LLC)製のポリプロピレン(PP)コポリマー(cPPフリント(Flint)5325HS(20メルト・インデックス(溶融流動指数))であった。2種のタルクが使用された。第1のタルクは、スペシャルティ・ミネラルズ・インコーポレーテッド(Specialty Minerals Incorporated)によって供給されたタルクロン(Talcron(登録商標))MP15-38タルクであった。MP15-38はその中央粒径が2.0μである。第2のタルクであるマイクロタフ(Microtuff)AG191(MTAG191)は、スペシャルティ・ミネラルズ・インコーポレーテッド(Specialty Minerals Incorporated)によっても供給され、中央粒径が1.8μである。使用された被覆はPO-20であった。次のような組成物が試験された。
(1)PPコポリマー中の、表面処理されていないMP15-38タルク、
(2)PPコポリマー中の、0.25重量%のPO-20/タルク重量%、という被覆レベルで研究室においてPO-20で処理されたMP15-38タルク、
(3)PPコポリマー中の、0.5重量%のPO-20/タルク重量%、という被覆レベルで研究室においてPO-20で処理されたMP15-38タルク、
(4)PPコポリマー中の、1.0重量%のPO-20/タルク重量%、という被覆レベルで研究室においてPO-20で処理されたMP15-38タルク、
(5)PPコポリマー中の、0.5~0.8%という被覆レベルで製造施設においてPO-20で処理されたMTAG191タルク。
【0056】
PPコポリマー中の3つの異なるタルク配合(充填)レベル:20重量%、30重量%および40重量%、が試験された。複数の標本が、ここに記載されるASTM標準手順番号D-3045に従って長期熱エイジングに曝された。破損または脆化までの時間数を示すLTHA(long-term heat aging)の結果が表1および
図1に示されている。
【0057】
タルク20重量%の配合(添加)レベルでは、全ての被覆されたタルク組成物(2)~(5)について破損までの時間数の大幅な改善が示され、最良のものは(5)であった。タルク30重量%では、組成物(2)について相対的な改善はさほど大きくないが、組成物(5)は依然として劇的な改善を示している。タルク40重量%では、組成物(2)は改善を示さず、一方、組成物(3)~(5)は依然として相対的な改善を示している。被覆レベルがより小さい場合の破砕までの時間数の改善がより小さいことは、最小被覆濃度に対する高感度性(敏感性)を示している。
【0058】
【0059】
第2組のエイジング試験において、PO-20ポリマーで被覆されたタルクを含む組成物が調べられた。ポリオレフィンはポリプロピレンコポリマー(cPP)であった。次のような組成物が試験された。
(6)ウルトラタルク(Ultratalc)609、表面処理されていないタルク(中央粒径0.8μ)、
(7)マイクロタフ(Microtuff)AG609、生産施設において0.8重量%のPO-20で表面処理された(中央粒径0.8μ)。
【0060】
両タルクとも、スペシャルティ・ミネラルズ・インコーポレイテッド(Specialty Minerals Incorporated)製であった。cPPにおいて調べられたタルク濃度は20重量%および40重量%であった。タルク組成物は、タルク濃度0重量%のcPPポリマーと比較された。
【0061】
図2は、熱エイジング研究の結果を示している。20重量%の配合(添加)量では、表面処理を含まないウルトラタルク(Ultratalc)609と比較して、マイクロタフ(Microtuff)AG609(0.8%のPO-20で被覆されたタルク)に対する脆化までの時間数の改善が大幅に良好である。40重量%の配合量において、マイクロタフ(Microtuff)AG609は依然として優れているが、脆化までの時間数が減少する。
【0062】
第3組のエイジング試験において、ポリマーで被覆されたタルクを含む組成物が調べられた。ポリオレフィンは、米国テキサス州ロングヴュー(Longview)にあるフリント・ヒル・リソース社(Flint Hill Resources Polymers, LLC)製の、ポリプロピレン(PP)コポリマー(cPPフリント(Flint)5325HS(20メルト・インデックス))であった。次のような3種のタルクが調べられ、その全てがスペシャルティ・ミネラルズ・インコーポレイテッド(Specialty Minerals Incorporated)製であった。
(8)ウルトラタルク(Ultratalc)609-中央粒径0.8μ、表面処理なし、
(9)マイクロタフ(Microtuff)AG-609(MTAG609)-0.8重量%のPO-20の表面処理を含む中央粒径0.8μ、
(10)フレックスタルク(Flextalc)610-中央粒径1μ、表面処理なし。
【0063】
タルクの2つの配合レベル:20重量%および40重量%、が調べられた。LTHAの各結果が、それぞれのタルク濃度について、
図3および4に示されている。20重量%の配合量では、表面処理されたMTAG609で最良の結果が得られた。FT610およびUT609(表面処理されていないタルク)試料では、脆化までの時間数が大幅に減少する。相対的に見て、類似の結果が、40重量%の配合レベルについて示されている。
【0064】
要約の記載を含めて本発明の例示された実施形態の上述の説明は、網羅的であることまたは本発明を開示された正確な形態に限定することを意図していない。ここでは本発明の特定の実施形態および例を例示を目的として説明したが、関連する技術分野の専門家が認識するように、本発明の範囲内で様々な変形が可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、
表面処理成分を含む無機鉱物の粒子と、
1種の熱安定剤と、
を含む組成物であって、
前記無機鉱物は、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、シリカ、または、タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、およびシリカの中の任意の組合せを含み、
前記表面処理成分は、非極性末端および極性末端を有する非イオン性界面活性剤を含むものである、
組成物。
【請求項2】
前記無機鉱物の粒子は0.1乃至10μの中央粒径を含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記無機鉱物はタルクを含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記表面処理成分の重量百分率対前記組成物中の前記無機鉱物の重量百分率の比が0.1乃至5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記表面処理成分の重量百分率対前記組成物中の前記無機鉱物の重量百分率の比が0.4乃至0.8である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記表面処理成分は、前記熱安定剤を吸着し得る前記粒子上の部位をブロックし、前記熱安定剤は前記組成物の0.02乃至1.0重量%を構成するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
組成物を形成する方法であって、
タルク、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、粘土、およびシリカからなる群の中の1種以上の要素からなる無機鉱物の粒子の表面上に、非極性末端および極性末端を有する非イオン性界面活性剤を含む表面処理被覆を形成すること、
前記被覆された粒子と、1種の熱安定剤を含むポリオレフィンとを溶融配合して、ポリオレフィンマトリックス全体に分散された前記被覆された粒子を含む組成物を形成すること、
を含み、
前記表面処理被覆は、前記熱安定剤が前記ポリオレフィンマトリックス全体に分散されるように、前記配合期間中に前記粒子への前記熱安定剤の吸着を抑制するものである、
方法。
【請求項8】
前記無機鉱物がタルクを含むものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤対前記無機鉱物の比が0.1乃至5重量%である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤対前記無機鉱物の比が0.4乃至0.8重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記無機鉱物の粒子は0.1乃至10μの中央粒径を含むものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記表面処理被覆は、前記熱安定剤を吸着し得る前記無機鉱物の粒子上の部位をブロックし、前記熱安定剤は前記組成物の0.02乃至1.0重量%を構成するものである、請求項7に記載の組成物。