(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143772
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】被膜剥離装置および被膜剥離方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20230928BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20230928BHJP
B29K 31/00 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B05B1/02
B29K31:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035195
(22)【出願日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2022049584
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】東田 佳久
【テーマコード(参考)】
4F033
4F401
【Fターム(参考)】
4F033AA04
4F033BA03
4F033CA05
4F033DA01
4F033DA05
4F033EA01
4F033LA07
4F401AD01
4F401AD07
4F401CA02
4F401CA35
4F401CA39
4F401EA46
(57)【要約】
【課題】
被膜付きフィルムからブラシロールによって被膜を剥離するに際し、ブラシロールへの剥離物堆積による剥離性の悪化や、剥離した被膜がベースフィルムへ再付着すること、を抑制する 被膜付きフィルムからの被膜剥離装置および被膜剥離方法を提供する
【解決手段】
本発明の被膜付きフィルムからの被膜剥離装置は、
基材フィルムの少なくとも片面に被膜が形成された被膜付きフィルムから当該被膜を剥離するための装置であって、上記被膜付きフィルムの上記被膜が形成された面に接触して、上記被膜を剥離する剥離部と、上記被膜付きフィルムから剥離されて上記剥離部に付着している上記被膜を、上記剥離部から除去する清掃部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に被膜が形成された被膜付きフィルムから当該被膜を剥離するための装置であって、
前記被膜付きフィルムの前記被膜が形成された面に接触して、前記被膜を剥離する剥離部と、
前記被膜付きフィルムから剥離されて前記剥離部に付着している前記被膜を、前記剥離部から除去する清掃部と、
を備えた、被膜剥離装置。
【請求項2】
前記剥離部が、前記被膜付きフィルムに回転しながら接触するブラシロールである、請求項1の被膜剥離装置。
【請求項3】
前記清掃部が、前記剥離部の前記被膜付きフィルムと接触している箇所とは異なる箇所
に接触する粘着ロールあるいは粘着シートである、請求項1または2の被膜剥離装置。
【請求項4】
前記清掃部が、前記剥離部の前記被膜付きフィルムと接触している箇所とは異なる箇所に接触する布帛である、請求項1または2の被膜剥離装置。
【請求項5】
前記清掃部が、前記剥離部の前記被膜付きフィルムと接触している箇所とは異なる箇所に液体を吹き付けるノズルを有する、請求項1または2の被膜剥離装置。
【請求項6】
基材フィルムの少なくとも片面に被膜が形成された被膜付きフィルムを搬送させながら、前記被膜付きフィルムから前記被膜を剥離する方法であって、
搬送されている前記被膜付きフィルムの前記被膜が形成されている面に剥離部を接触させて、当該剥離部で前記被膜を剥離しながら、前記被膜付きフィルムから剥離されて前記剥離部に付着している前記被膜を、前記剥離部の前記被膜付きフィルムと接触している箇所とは異なる箇所で除去する、被膜剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの表面の被膜を効率よく除去することができる、被膜剥離装置および被膜剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは様々な分野に利用されている一方、マイクロプラスチックなど海洋汚染の原因物とされ、プラスチックによる環境負荷低減が急務となっている。
【0003】
また近年、IoT(Internet of Things)の進化により、コンピュータやスマートフォンに搭載されるCPUなどの電子デバイスが増加し、それに伴い、電子デバイスを駆動するために必要な積層セラミックコンデンサー(MLCC)の数も急激に増加している。このMLCCの一般的な製造方法は、プラスチックの基材フィルム上に離型層を形成した離型フィルムをキャリアシートとして使用し、その離型フィルム上にセラミックグリーンシート層を形成する工程と、そのセラミックグリーンシート層を剥離してセラミックグリーンシートとする工程がある。
【0004】
この工程において、セラミックシートが剥離された離型フィルムは不要物として廃棄されることとなる。すなわち、近年のMLCC数量の急激な増加に伴う離型フィルムの廃棄物増大が環境問題になっており、プラスチックの基材フィルム再利用に向けた取り組みが活発化してきている。
【0005】
廃棄された離型フィルムを再利用するには、回収/粉砕/樹脂チップにした後、再溶融して製膜を行うことで再生フィルムを得ればよい。
【0006】
しかし、離型フィルムに含まれる離型層の成分は、離型性の観点から、一般的には基材フィルムを構成する成分とは異なる組成であるため、離型層が付いた離型フィルムを粉砕し、樹脂チップにした後、再溶融して製膜すると、離型層の成分が異物として存在するため、安定製膜をすることが困難となる。
【0007】
また、製膜できたとしても、得られたフィルムは、離型層が異物として存在していることから、フィルムの着色や、表面組成の変化により、品質劣化が避けられず、元の基材フィルムと同等レベルの品質のフィルムへ再生することができない。
【0008】
したがって、離型フィルムを再生フィルムとしてリサイクルするためには、離型フィルムに含まれる離型層の成分を再生フィルムの品質として問題ないレベルの極微量の残渣にまで除去することが必要である。
【0009】
そして、回収/粉砕/高純度の樹脂チップを得た後、再溶融して再生フィルムとしてリサイクルすることを、環境負荷を増大させることなく、低コストで長期間にわたり、循環させることが望まれるが、これらの実現は極めて困難である。
【0010】
特許文献1では、離型フィルムから離型成分を除去する方法として、基材フィルムと離型層との間に、水溶性樹脂層を形成した離型フィルムを使用して、温水槽に浸漬させた後に離型フィルム表面をブラシロールで擦過させて、離型層を剥離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら特許文献1に開示されている方法では、ブラシロールで擦過することでフィルム表面の離型層を剥離するため、ブラシロールに汚れが堆積していく問題が生じる。つまり連続かつ長時間にわたりブラシロールで擦過した場合には、ブラシロール表面に剥離した被膜が堆積することで、剥離性能の悪化や、ブラシロールに堆積した被膜のフィルム再付着による品質低下、それに付随する後工程のロール汚染など、所期の性能および品質を維持することができない場合があった。
【0013】
これらは、フィルムから被膜を剥離する時間すなわちフィルム走行時間が長いほどより顕著に発生するため、この問題を解消するには装置の運転停止を伴う定期的な清掃や、1回に処理するフィルムの長さを短くすること、などが必要となる。この場合は、単位時間当たりの剥離処理能力が大幅に低下してしまい、非効率である。
【0014】
そこで本発明は、使用後の被膜付きフィルムの表面から、連続かつ長時間にわたり安定して被膜の剥離を行える被膜付きフィルムからの被膜剥離装置および被膜剥離方法、を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の被膜剥離装置は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜が形成された被膜付きフィルムから当該被膜を剥離するための装置であって、
上記被膜付きフィルムの上記被膜が形成された面に接触して、上記被膜を剥離する剥離部と、
上記被膜付きフィルムから剥離されて上記剥離部に付着している上記被膜を、上記剥離部から除去する清掃部と、を有する。
【0016】
本発明の被膜剥離装置は、以下のいずれか、または複数の特徴を有することが好ましい。
・上記剥離部が、上記被膜付きフィルムに回転しながら接触するブラシロールである。
・上記清掃部が、上記剥離部の上記被膜付きフィルムと接触している箇所とは異なる箇所に接触する粘着ロールあるいは粘着シートである。
・上記清掃部が、上記剥離部の上記被膜付きフィルムと接触している箇所とは異なる箇所に接触する布帛である。
・上記清掃部が、上記剥離部の上記被膜付きフィルムと接触している箇所とは異なる箇所に液体を吹き付けるノズルを有する。
【0017】
上記課題を解決する本発明の被膜剥離方法は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜が形成された被膜付きフィルムを搬送させながら、上記被膜付きフィルムから上記被膜を剥離する方法であって、
搬送されている上記被膜付きフィルムの上記被膜が形成されている面に剥離部を接触させて、当該剥離部で上記被膜を剥離しながら、上記被膜付きフィルムから剥離されて上記剥離部に付着している上記被膜を、上記剥離部の上記被膜付きフィルムと接触している箇所とは異なる箇所で除去する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の被膜付きフィルムからの被膜剥離装置および被膜剥離方法を用いれば、被膜剥離によってブラシロールに堆積する汚れを低減し、被膜剥離性能の低下や剥離した被膜がフィルムへ再付着することなく、連続かつ長時間にわたっても被膜付きフィルムから被膜の剥離を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の被膜剥離装置を有する装置の全体概略図である。
【
図2】本発明の被膜剥離装置における、第1の実施形態の剥離装置の概略図である。
【
図3】本発明の被膜剥離装置における、第2の実施形態の剥離装置の概略図である。
【
図4】本発明の被膜剥離装置における、第3の実施形態の剥離装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、基材フィルムの少なくとも片面に被膜が形成された被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する装置および方法について、被膜剥離性能の低下や剥離した被膜のフィルムへの再付着などが起こりにくい手段を鋭意検討した結果、次のような被膜剥離装置および被膜剥離方法を見出すに至った。
【0021】
[対象となる被膜付きフィルム]
本発明の被膜付きフィルムからの被膜剥離装置および被膜剥離方法は、基材フィルムの表面に被膜を有する被膜付きフィルムを対象として、被膜を基材フィルムから剥離して取り除くものであり、被膜は基材フィルムの片面にあっても両面にあってもよく、特に限定されない。
【0022】
被膜付きフィルムの被膜は、環境への負荷等を考慮すると、水溶性樹脂を含む被膜であることが好ましい。中でも、水溶性樹脂として、水溶性のポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、エチレン―ビニルアルコール系樹脂、でんぷんのうちの少なくとも1種を主たる成分とするものがより好ましい。水溶性樹脂を含む被膜は、水溶性樹脂を含む単層体であっても、水溶性樹脂を含む2つ以上の層の積層体であっても、水溶性樹脂を含む層と水溶性樹脂を含まない層の積層体であってもよい。
【0023】
また、被膜を構成する材料は、被膜付きフィルムの使用目的や用途に応じて適宜選択して用いることができる。例えば、離型フィルムのように離型性を付与する場合には、被膜の一部に水溶性樹脂のほかに硬化型シリコーン樹脂を含むことが好ましい。被膜は、水溶性樹脂と硬化型シリコーン樹脂が混合していても、それぞれの層が積層されていてもよい。積層された被膜の場合には、基材フィルムの直上に水溶性樹脂を含む層が存在し、最表面に硬化型シリコーン樹脂を含む層が形成されていることが好ましく、硬化型シリコーン樹脂としては、水の浸透性が高いジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物を用いることが特に好ましい。
【0024】
離型フィルムのように、離型性を付与する場合には、被膜の一部に離型成分を含むことが好ましい。ここでいう離型成分とは、被膜表面の水に対する接触角を大きく、すなわち、被膜の表面エネルギーを小さくする成分であることから、例えば、ジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、フッ素を有する化合物が好ましい。
【0025】
被膜は、要求される機能に応じて、離型成分とその他の異なる成分とが混合していてもよく、それぞれの層が積層されていてもよい。積層された被膜の場合には、離型性の効果を発現させるために、最表面に離型成分を含む層を形成することが好ましい。
【0026】
離型成分を含む層は、薄膜であることが一般的であり、例えば、MLCCに用いられる、離型フィルムでは、厚み1μm以下の被膜である場合が多い。
【0027】
基材フィルムを構成する樹脂としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセテート、ポリエチレンなどから構成される樹脂を用いることができる。特に、再生後の品質安定性に優れる、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルが好ましく、離型フィルムでは、数十μmの厚みのものが用いられる。
【0028】
[被膜剥離装置]
本発明の被膜剥離装置の望ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明に係る実施形態の一例であり、これに何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0029】
図1は本発明の被膜剥離装置を有する装置1の全体図を示す。この装置1は、大別して、被膜付きフィルムの巻出し装置2と、被膜付きフィルムの搬送ロール部3、12と、温水槽4と、ブラシロール5を含む剥離部30と清掃部からなる剥離装置20と、洗浄シャワー装置6と、水滴除去装置7と、駆動ロール部8(8a、8b)、80(80a、80b)と、ベースフィルムの巻取り装置9と、排水槽10とを具備してなる。ここで挙げる各ロール類や装置などは、基本的にフィルム搬送方向と略直交して配置される。
【0030】
巻出し装置2は、被膜付きフィルムを巻出す装置であり、紙管等にロール状に巻き取られた使用後の被膜付きフィルム2aを回転軸に固定して装着する。回転軸はパウダークラッチもしくは駆動モーターなどに連結されており、ロール状の被膜付きフィルムが巻出し時に空転するのを制御できる構造となっている。
【0031】
温水槽4は、温水を満たしてあり、巻出した被膜付きフィルム2aの表面に温水を接触させるための槽で、循環用ポンプ4aと加温用ヒーター4bが付属されている。また、温水を撹拌するための撹拌装置等(図示せず)が付属されている。温水は、被膜付きフィルム2a表面の表層部を剥離しやすくするために、30℃~80℃に加温するのが好ましい。より好ましくは40℃~80℃、特に好ましくは50℃~80℃に加温するのがよい。使用する温水には、被膜付きフィルムとの濡れ性を向上させるために、界面活性剤等を添加して使用してもよい。また、剥離効果を高めるために洗浄水中にイソプロピルアルコールなどのアルコール類を5~20質量%配合してもよい。
【0032】
被膜付きフィルム2aの表面に温水を接触させる別の方法として、走行する被膜付きフィルムの両面にシャワー等により温水を吹き付けてもよい。
【0033】
搬送ロール部3は、被膜付きフィルム2aを搬送しつつ、その表面に温水を接触させた状態を保つものであり、自由回転するロール3aで構成されている。搬送ロール3aおよび軸と軸受け部の材質は特に限定されないが、耐熱性、耐錆性を有する金属や樹脂で構成するのが好ましい。ロール3aの本数は、任意に設けることができるが、被膜付きフィルム2aの搬送速度と被膜付きフィルム2aが温水に接触している時間とを調整するために、2本以上とするのが好ましく、3本以上とするのがより好ましい。
【0034】
剥離装置20は、ブラシロール5を有する剥離部30と、ブラシロール5を清掃/清浄化する清掃部40(50、60)からなる。ブラシロール5は、被膜付きフィルムの表面を機械的に擦過して、被膜付きフィルム2a表面に形成された機能層を剥離するものであり、本発明の被膜剥離装置に好適である。ブラシロール5と被膜付きフィルム2aを挟んで対向する位置には、剥離時の被膜付きフィルム2aをバックアップするための押さえロール5aが配されている。ブラシロール5のブラシは、金属製または樹脂製で構成され、その本数や太さなどは任意に選定できる。ブラシロール5は図示しないモーターにより回転する構造となっており、剥離の状態をみながら適宜回転数を変更できる構成が好ましい(ブラシロール5の回転数は10rpm~1000rpmであるのが好ましい)。また、ブラシロール5の、剥離時における回転方向は特に限定されないが、剥離効果をより高めるために被膜付きフィルム2aの搬送方向とは逆方向となるように接触するのがより好ましい。ブラシロール5は、被膜の形成された面に接触擦過するよう配置し、フィルムの両面に被膜が形成されている場合には、剥離装置20を複数組交互に設置し、フィルム両面にブラシロール5を同一回数当てることが好ましい。
【0035】
清掃部40(50、60)は、被膜を剥離したブラシロール5の表面近傍を清掃するものであり、粘着性を有する粘着ロール部材や粘着シート部材、布帛からなる部材などを具備し、好適なタイミングでこれら部材をブラシロール5の表面に押し当てることで、ブラシロール5の表面とその径方向近傍を清掃する。また、洗浄液をブラシロール5の表面に吹きつけることでブラシロール5の表面とその径方向近傍を清浄化してもよい。洗浄液は、別に設けた洗浄液タンク(図示せず)からポンプ等で供給することが好ましいが、温水槽4もしくは排水槽10から供給してもよい。ブラシロール5の表面に吹き付ける洗浄液は、フィルターなどで濾過してから吹き付けると洗浄効率が向上する。このフィルターの濾過精度は供給する洗浄液の性状を鑑みて適宜選択すればよいが、5~100μmとすることが好ましい。剥離する被膜の性状や装置サイズ等を考慮し、いずれかの方式を適宜選択して剥離装置として適用することができる。
【0036】
洗浄シャワー装置6は、表層が剥離された後のフィルム(ベースフィルム9a)表面に液を吹きつけて洗浄する装置であり、真新しい洗浄水を連続してフィルム面に噴射できるように、その先端がノズル状、スリット状あるいは多孔状構造となっている。洗浄水は、別に設けた洗浄水タンクからポンプ等で供給することが好ましいが、温水槽4からポンプ等で供給してもよい。その場合、循環ポンプと噴射ノズルとの間に、被膜付きフィルムの表面から脱落したセラミック粉末や剥離被膜などの不純物を濾過するためにフィルター部を設け、温水をフィルターなどで濾過してから噴射するのがより好ましい。フィルターの濾過精度は、5~100μmとするのが好ましい。洗浄効果を高めるために、洗浄水は30℃~80℃に加温して用いるのがより好ましい。また、洗浄効果を高めるために洗浄水中にイソプロピルアルコールなどのアルコール類を5~20質量%配合してもよい。使用する洗浄水には、被膜付きフィルムとの濡れ性を向上させるために、界面活性剤等を添加してもよい。また洗浄シャワー装置6では、上記の真新しい洗浄液を噴射する直前に、別の噴射ノズルを設けて、温水槽4の温水を循環ポンプ等で循環噴射して、予備洗浄してもよい。その場合においても、循環ポンプと噴射ノズルとの間に、被膜付きフィルムの表面から脱落したセラミック粉末や剥離被膜などの不純物を濾過するためにフィルター部を設け、温水をフィルターなどで濾過してから噴射するのがより好ましい。フィルターの濾過精度は、5~100μmとするのが好ましい。
【0037】
水滴除去装置7は、被膜を剥離した後のフィルム(ベースフィルム9a)の表面に付着している水滴などを除去する装置で、絞りロール7aとエアーナイフ7bとで構成されている。絞りロール7aはウレタン樹脂やゴムなど比較的柔軟性のある材質のものが好ましく、バネなどで圧力を負荷しながらフィルムの両面からフィルムを挟める構造になっている。
【0038】
エアーナイフ7bは、フィルム面に空気を吹き付けて水滴を吹き飛ばすものであり、スリット状の開口部を有することが最も好ましい。エアーナイフ7bから吹き出す空気は、加熱空気であってもよいし、乾燥空気であってもよい。また、水滴除去装置7として、上記の装置の代わりに、遠赤外線、電熱ヒーターなどで水滴を蒸発せしめてもよい。あるいは上記のエアーナイフ7bと遠赤外線、電熱ヒーターなどを併用してもよい。
図1では、絞りロール7aの搬送方向下流側にエアーナイフ7bを配置しているが、この並び順が逆であってもよい。
【0039】
駆動ロール部8および80は、フィルムを搬送するための装置であり、駆動ロール8a、80aとニップロール8b、80bとで構成される。駆動ロール8a、80aは、モーターで駆動され、フィルムの搬送速度を調整できる。フィルムの搬送速度は、必要な処理量とブラシロール5による剥離の状態を鑑みて適宜選択設定すればよいが、通常5~150m/分の範囲とするのが好ましく、10~120m/分の範囲を選択するのがより好ましい。駆動ロール8a、80aおよびニップロール8b、80bは、搬送時のフィルムのすべり等を防止するため、少なくともどちらかのロール表面にシリコンゴムあるいは樹脂などが被覆されているのが好ましい。また被膜付きフィルム2aやベースフィルム9aの搬送状態やブラシロール5による被膜の剥離状態を観察しながら、駆動ロール部8と80で速度差を与え、フィルムに適宜張力を与えるのが好ましい。張力はフィルムの厚みや剥離物の性状などにより適宜選択すればよいが、大きな張力は設備に負荷を与えることから、20~1000N/m程度の範囲で張力を選択するのが好ましい。
【0040】
巻取り装置9は、被膜剥離後のベースフィルム9aを巻取る装置であり、トルクモーター等でフィルムの巻取り張力をコントロールできる構造になっているものが好適である。
排水槽10は、温水槽4からオーバーフローした温水を排水するための貯留槽であり、濾過フィルター10aを具備し、温水中の不純物を濾過することができる。濾過フィルター10aの濾過精度は、排水処理の状況に合わせ適宜選定すればよいが、1~100μmとするのが好ましい。濾過後の排水を温水槽4へ戻す場合には、濾過精度の細かいフィルターを適用すればよく、温水槽4へ戻さずに廃棄する場合には、廃棄経路の下流側に影響のない範囲で濾過精度を粗くすればよい。また、排水槽10には排水液を外部へ取り出すためのバルブ10bと図示しないポンプが連結されている。
【0041】
剥離装置1は、温水や洗浄水が飛散したり、湯気が浮遊したりするのを防ぐため温水槽4の上部全体を箱状に囲い、天井部にダクトを設けて、排気ファン等により排気できる構造としてもよい。
【0042】
[第1の実施形態]
図2は、本発明における剥離装置20の第1の実施形態であり、以下にて構成を説明する。
図2における剥離装置20は剥離部30と清掃部40から構成されている。剥離部30には、前述のブラシロール5と押さえロール5aを備えており、ブラシの回転により被膜付きフィルム2a表面の被膜を剥離する。清掃部40は、ブラシロール5の被膜付きフィルム2aと接触している箇所とは異なる箇所に対向して配置される清掃ロール41を有している。清掃ロール41は支持材42により把持されており、図示しない移動機構により、ブラシロール5への接触、およびブラシロール5から離間の移動ができる構成で、ブラシロール5に接触している間において、清掃ロール41によりブラシロール5の表面とその径方向近傍の汚れを除去して清掃する。このため清掃ロール41は表面に粘着材を備えたロール、あるいは表面に拭き取り用の布を備えたロールなどが好適であり、ロール状に巻かれた粘着シートからなるロールや、ロール状に巻かれた布帛などからなるロールが好適である。清掃ロール41は回転駆動であっても駆動させない回転自在のフリーロールであっても機能を発現することができる。駆動の場合は、ブラシロール5の表面近傍の清掃状態を確認しながら、ブラシロール5の回転速度に応じて任意に清掃ロール41の回転速度と回転方向を選択し、ブラシロール5と清掃ロール41の回転に差をつけることが好ましい。清掃ロール41がフリーロールの場合は、ブラシロール5の回転に同調して回転することで、ブラシロール表面の汚れを清掃ロールに転写する。また、図示しない移動機構を調整することで、清掃ロール41とブラシロール5との接触圧力の変更制御が可能となり、これにより清掃の状態を調整してもよい。温水槽4を通過後の被膜付きフィルム2aから被膜を除去するため、ブラシロール5の表面は湿潤した状態になっており、粘着材を備えた部材の場合は耐水性も備えたものあることが好ましい。つまり、湿潤していても使用できる粘着ロールまたは粘着シート材を好適に選択して用いることが好ましい。布帛を用いる場合には、ブラシロール5に堆積する汚れの除去作用が高く、かつ毛羽等がなく発塵しないものが好適である。具体例として、極細長繊維を使用した不織布が好ましい。またブラシロール5と清掃部40との接触位置下方には、受け皿(図示せず)を設けておくことが好ましい。これにより、清掃ロール41による清掃時に飛散する剥離された被膜などの異物が、温水槽4に落下混入して温水槽4内を汚染することを低減できる。
【0043】
次いで、
図2の構成からなる剥離装置20を用いて、被膜付きフィルムから被膜を剥離する方法について、下記で説明する。
【0044】
[ブラシロール5による被膜付きフィルム2aからの被膜剥離]
(1)先ず初めに、所定の紙管等にロール状に巻き取られた被膜付きフィルム2aを巻出し装置2に取り付ける。被膜が片面のみの場合は、被膜付きフィルムの被膜面に作用する剥離装置20を作動させるよう準備する。被膜が両面に形成されている場合は、それぞれの面に作用する剥離装置20を作動させるよう準備する。
【0045】
(2)次いで、被膜付きフィルム2aの先端を、予め巻取り装置9の紙管に巻き付けられて、フィルム走行ラインに通しておいたリードフィルムと適当な手段で連結する。温水槽4には予め、所定の温度まで加温した温水を満たしておく。
【0046】
(3)次に、巻出し軸と巻き取り軸に適当な張力を負荷できるよう、駆動ロール部8、80の駆動ロール8a、80aを駆動してフィルムを搬送しつつ、清掃装置20を作動させ、洗浄装置部6から洗浄液を噴射するとともに、エアーナイフ7bから空気を噴射する。合わせて絞りロール7aでフィルムの絞りもおこなう。
【0047】
(4)次いで、ブラシロール5の回転数と、駆動ロール8a、80aの搬送速度を調整する。このとき、被膜付きフィルム2aの表面に温水を所定秒数以上接触させた後に、ブラシロール5で被膜付きフィルムの表層部を擦過することが必要である。フィルムの表面を温水に接触させる時間は、好ましくは0.5秒以上、より好ましくは2秒以上である。被膜付きフィルム表面の温水との接触時間が0.5秒より短いと、被膜付きフィルムの表層部を完全に剥離することができない懸念がある。被膜付きフィルム2a表面の温水との接触時間が長くなるほど剥離効果は向上するが、長すぎても非効率であり、温水槽4内で被膜の成分が溶出して洗浄液(温水)11を著しく汚染してしまうため、その上限はおよそ20秒である。また、ブラシロール5による被膜の剥離は、被膜付きフィルム2aの搬送速度が遅いほど、またブラシロール5の回転数が高いほど大きくなる傾向にあるが、最も効率よく剥離するためには、ブラシロール5の外周速度(V1)と被膜付きフィルム2aの搬送速度(V2)との比であるV1/V2を、2以上とするのが好ましく、より好ましくはV1/V2を5以上とするのがよい。V1/V2が大きいほど剥離効果が大きくなるが、あまり大きいとベースフィルムの表面が過度に傷つくので、その上限はおよそ300である。
【0048】
[清掃部40を用いたブラシロール5の清掃]
上記の様にブラシロール5による被膜の剥離条件を定めた後、清掃ロール41を用いてブラシロール5を清掃する。ブラシロール5による被膜の剥離は連続的に行われるため、フィルムを処理する長さに応じてブラシロール表面が汚れていく。ブラシロール5による被膜の剥離は連続で行いつつ、予め定めた周期(時間、フィルム搬送長さ)で清掃ロール41をブラシロール5へ接触させて、表面近傍を清掃することが好ましい。例えば、剥離開始から10分間は、
図2の待機状態(離間)としておくが、10分経過後に清掃ロール41をブラシロール5に接触させて(
図2のブラシ清掃状態)、そこから1分間だけブラシロール5の表面近傍に堆積した汚れを除去した後、清掃ロール41をブラシロール5aから離間する(
図2の待機状態)、という動作である。その後さらに10分経過後、同様に再び接触と離間を行うシーケンスであれば、清掃ロール41を接触させている間もブラシロール5はフィルムからの被膜除去を続けることが可能で、ブラシロール5の表面を清掃することができ、効率的である。清掃ロール41をブラシロール5へ接触させる周期や接触時間は、フィルム2aの搬送速度や、被膜除去の状態に影響を及ぼすブラシロール5の汚れ具合を鑑みて、使用者が適宜設定すればよい。動作シーケンスでこれらを任意に設定できるようにしておくことが好ましい。なお一連の清掃ロール41を用いたブラシロール5の清掃により、清掃ロール41の表面へ汚れが蓄積していくこととなる。そのため、清掃ロール41は粘着シート、もしくは布帛がロール状に巻かれている部材を適用することが好ましく、ブラシロール5から離間しているタイミングで、清掃ロール41に巻かれている部材の、汚れが付着した表層43のみを剥がすことで、清掃ロール41の表面を短時間で更新することが可能となり、効率的である。
【0049】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の剥離装置20の第2の実施形態であり、以下にて構成を説明する。
図3における剥離装置20は剥離部30と清掃部50から構成されている。剥離部30は、前述の第1の実施形態と同じであり説明を割愛する。清掃部50は、ウェブ状シートの清掃材54を巻出す巻出ロール51と、巻出された清掃材54を支持する拭き取りローラ53と、拭き取りローラ53を経由した清掃材54を巻取る巻取ロール52を有する。拭き取りローラ53は、清掃材54をブラシロール5へ押し当てられるようになっており、ブラシロール5の被膜付きフィルム2aと接触している箇所とは異なる箇所に清掃材54を押し当てられるように配置される。
【0050】
この拭き取りローラ53は、表面が弾性体で覆われていることが好ましく、適度な柔軟性と共に、押し当てたブラシとの間で適度な圧力を生じながら十分に密着していることが重要である。よって弾性体として、発泡性スポンジや合成ゴムなどを使用することが好ましい。具体的には、シリコンスポンジ、ポリエチレンスポンジ、フッ素スポンジ、シリコンゴム、フッ素ゴムなどが好ましい。柔軟性の指標として、ゴム硬度計(JIS K6351準拠)で測定する場合には、そのゴム硬度が15~70度とする構成が好ましい。なお、拭き取りローラ53の形状については、ブラシロールと接触する部分が円筒であることが好ましく、円筒の半径は好適に選択すればよいが、ブラシロール5の径に合わせた凹状にして、ブラシを包むような形状のものとしてもなんら問題はない。
【0051】
巻出しロール51と巻取ロール52は、それぞれ図示しない駆動系に連結され、清掃材54の巻出しおよび巻取りが行われる。拭き取りローラ53の近傍で清掃材54にシワが発生しないように、常に清掃材54に張力を付加した状態とすることが好ましい。そのために、i)ブレーキ力を生じるように巻出ロール51をトルク制御しながら張力を付与した状態で、巻取ロール52で清掃材54を巻き取る、ii)清掃材54を送り出している以外の停止時にも、巻出ロール51へ付与されるトルクにて清掃材54に張力を付与しつづけるようにする、ことが好ましい。
【0052】
清掃材54には粘着材付きのウェブ状シートや、ウェブ状の布帛を用いることが好ましい。粘着材付きのウェブ状シートは、ブラシロール5に堆積する汚れを吸着するに適したものを適宜選択するのが望ましいが、温水槽4通過後の被膜付きフィルム2aから被膜を除去するため、ブラシロール5の表面は湿潤した状態になることから、耐水性を備えたものであることが好ましい。ブラシロール5の表面と清掃材54が接触することでブラシロール5表面の堆積物を掻き落とし、堆積を低減する効果は発現するが、湿潤していても粘着性を発現維持できる清掃材54を好適に選定し、使用することが最も望ましい。
【0053】
ウェブ状の布帛を用いる場合には、ブラシロール5に堆積する汚れの除去作用が高く、かつ毛羽等がなく発塵しないものが好ましい。具体例として、極細長繊維を使用した不織布が好ましい。拭き取りローラ53を介して清掃材54をブラシロール5へ押し当てるに際し、図示しない移動機構により清掃部50全体を移動させてブラシロール5に拭き取りローラ53と清掃材54を押し当ててもよいが、拭き取りローラ53だけを移動させる移動機構(図示せず)を設け、拭き取りローラ53と清掃材54だけを近接させてブラシロール5へ接触させて清掃してもよい。いずれの場合においても、移動機構を調整することで、拭き取りローラ53とブラシロール5の間の接触圧力を変化させて、好適な清掃状態となるような調整をすることができることが好ましい。布帛の場合も、ブラシロール5の表面と清掃材54が接触することでブラシロール5表面の堆積物を掻き落とす効果は発現する。これらの理由から、清掃部50とブラシロール5の接触位置下方には、掻き落とされる剥離した被膜の飛散、水槽4への混入落下防止として受け皿62を設けておくことが好ましい。
【0054】
次いで、
図3の構成からなる剥離装置20を用いて、被膜付きフィルムから被膜を剥離する方法について、下記で説明する。
【0055】
[ブラシロール5による被膜剥離]
上記(1)~(4)と同じであり、説明を割愛する。
【0056】
[清掃部50を用いたブラシロール5の清掃]
清掃部50を用いたブラシロール5の清掃準備として、清掃材54が巻かれたロールを巻出しロール51へセットし、そこから清掃材54を繰り出して拭き取りローラ53を経由して巻取りロール52に巻き付けておく。
【0057】
ブラシロール5による積層フィルム2aからの被膜剥離は、連続的に行われる。よってフィルムを処理する長さに応じてブラシロール5の表面へ剥離物が堆積して汚れていく。そこで予め定めた周期(時間、長さ)で拭き取りローラ53を介して清掃材54をブラシロール5へ接触させ、ブラシロール5の表面を清掃する。例えば、剥離開始から10分間は、
図3の待機状態(離間)の位置としておき、10分経過後、拭き取りローラ53をブラシロール5に近接させて清掃材54を押し当て(
図3のブラシ清掃状態)、1分間だけブラシロール5の表面近傍に堆積した汚れを除去した後、拭き取りローラ53と清掃材54をブラシロール5から離間して待機状態へ戻る、という動作で、さらに10分経過後、再び同様に接触と離間を行っていく、というシーケンスであれば、ブラシロール5は被膜付きフィルム2aからの被膜除去を続けながらブラシロール5も定期的に清掃することができ、効率的である。拭き取りローラ53と清掃材54をブラシロールへ接触させる周期や接触時間は、フィルム2aの搬送速度や、被膜除去の状態に影響を及ぼすブラシロール5の汚れ具合を鑑みて、使用者が適宜設定すればよい。構成する装置の動作シーケンスでこれらを任意に設定できるようにしておくことが好ましい。また、清掃材54よるブラシロール5表面の清掃中は、清掃材54の搬送を停止していてもよいが、巻取りロール52を任意速度で回転させ、清掃材54を少しずつ巻取りながら清掃させることもできる。これにより、ブラシロール5へ接触する清掃材54は未使用で清浄な部分に更新され続けることとなり、ブラシロール5の清浄性は向上する。また、間欠的な接触ではなく、ブラシロール5による被膜剥離を行っている間、清掃材54を任意の速度で巻取りながら、拭き取りローラ53を介して清掃材54をブラシロール5へ接触させつづけてもなんら問題はない。清掃材54の使用量(使用長さ)とブラシロール5による被膜の剥離状態と汚れ具合を鑑みて、連続的に接触させるか予め定めた周期で接触させるかは、使用者が適宜選択すればよい。
【0058】
ブラシロール5による被膜剥離終了時には、
図1における被膜付きフィルム2aとベースフィルム9aを交換する必要がある。このタイミングで、清掃部50で使用後の巻出ロール51と巻取ロール52を取り外し、それぞれ新しいロールに交換するように事前に作業を段取りしたり、あるいは巻出しロール51にセットする清掃材54の長さおよび使用量を設定しておけば、作業による停機時間ロスを減らすことができて効率的である。
【0059】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の剥離装置20の第3の実施形態であり、以下にて構成を説明する。
図4における剥離装置20は剥離部30と清掃部60から構成されている。剥離部30は、前述の第1および第2の実施形態と同じであり説明を割愛する。清掃部60は、洗浄液を吹きつけるノズル61を有している。
【0060】
ノズル61は、図示しない支持部により、ブラシロール5の被膜付きフィルム2aと接触している箇所とは異なる箇所に対向して配置される。ブラシロール5に向けて洗浄液を吐出し吹きつけることで、ブラシロール5の表面と径方向近傍の汚れを洗い落とすことができる。ノズル61の吐出部形態はスリットでも多孔であっても、特に限定されるものではなく、汚れの性質に合わせて洗浄性が高いものを適宜選択し、スリットや孔の形状寸法も適宜変更していけばよい。洗浄液としては、未使用温水タンク(図示せず)から温水をポンプで吸い上げて供給してもよいし、温水槽4もしくは排水槽10からポンプで液を吸い上げて、フィルターで濾過した後に供給してもよい。洗浄液を吹きつけるタイミングは、ブラシロール5の汚れによる被膜剥離の状況を鑑みて使用者が適宜設定することができ、任意の周期を設定し、間欠的に洗浄液を吹きつけてブラシロール5の汚れを落としてもよいし、被膜の剥離中はブラシロール5へ常時吹きつけておいてもよい。
【0061】
ブラシロール5の汚れを洗い流した洗浄液は剥離物が混ざって汚れているため、温水槽4へ流れ込むのは好ましくない。よって剥離装置20が温水槽4の上部に配置されないような被膜付きフィルム2aのパスラインにしてもよいし、ブラシロール5を含めた剥離部30の下側に、汚染した洗浄液の受け皿62を設け、受け皿62からフィルター10aへ連通する配管を設けることで、温水槽4へ汚れた洗浄液が流れこむのを防いでもよい。あるいは別途設けるフィルターにて汚れを除去した後に、温水槽4へ戻しても何ら問題はない。
【0062】
次いで、
図4の構成からなる剥離装置20を用いて、被膜付きフィルムから被膜を剥離する方法について、下記で説明する。
【0063】
[ブラシロール5による被膜剥離]
前述の(1)~(4)と同じであり、割愛する。
【0064】
[清掃部60を用いたブラシロール5の清掃]
上記の様にブラシロール5の剥離条件を定めた後、清掃部60を用いてブラシロールを清掃する。ブラシロール5に対し、押さえロール5aとは異なる方向から吹付ノズル61を対向させて配置しておく。
図4ではブラシロール5と押さえロール5aと吹付ノズル61が一直線上に配置されているが、吹付ノズル61からの吹出は、フィルム2aの走行方向と平行になる位置でも何ら問題はない。ブラシロール5に対し、清浄性がもっとも良くなる任意の角度で洗浄液を吹き出すことが好ましい。吹付ノズル61には、未使用の洗浄液タンク(図示せず)、あるいは温水槽4もしくは排水槽10から、配管とポンプ、フィルターを介して洗浄液が供給される構成である。ブラシロール5によるフィルム2aからの被膜の剥離は連続的に行われるため、フィルムを処理する長さと時間に応じてブラシロール5の表面に剥離物が堆積して汚れていく。そこで予め定めた周期(時間、長さ)で間欠的に吹付ノズル61から洗浄液をブラシロール5へ吹付け、ブラシロール5の表面近傍の汚れを洗い流す。または、ブラシロール5による被膜の剥離をおこなっている間は、洗浄液を吹付ノズル61からブラシロール5に吹付け続け、連続的にブラシロール5を清掃してもなんら問題はない。洗浄液の吹付けは、ポンプのON/OFFで実施してもよいし、配管中にバルブを設け、その開閉でおこなってもよい。吹付ける洗浄液の流量は、ブラシロール5に堆積する剥離物量を確認しつつ、洗い流される状態を観察しながら使用者が適宜調整して定めればよい。またブラシロール5へ吹付けた洗浄液は、フィルムからの剥離物を含有して汚染されているため、温水槽4へ流れ込むことは好ましくない。そこでブラシロール5を洗浄した後の洗浄液を回収するための受け皿62を剥離部下部に設けておき、受け皿62から
図1に示す排水槽10のフィルター10aへ流し込む配管を設けておくことが好適である。
【実施例0065】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
<被膜付きフィルムX>
ポリエチレンテレフタレートからなる厚み30μm、幅300mmの基材フィルム上に、水溶性樹脂を含む層として膜厚0.1μmのポリビニルアルコール樹脂の被膜を形成した。さらにその上に、離型成分を含む層として膜厚0.1μmの硬化型シリコーン樹脂を、特開2015-189226号公報に記載の塗材を参考にして、以下のように形成した。
【0067】
使用材料
・熱硬化型シリコーン、信越化学工業社製、商品名「KS-847T」:100質量部
・白金触媒、信越化学工業社製、商品名「CAT-PL-50T」:3質量部
塗材は、上記の熱硬化性シリコーンおよび白金触媒を、溶剤としてのトルエンとMEKの混合液(トルエン:MEKの質量比は1:1)中に、固形分が1.8質量%となるように溶解させることで調製した。次に前記ポリビニルアルコール樹脂の被膜上に、塗材をバーコーターを用いて塗布し、90℃のオーブンで20秒乾燥させて離型成分の被膜を形成し、被膜付きフィルムを得た。
【0068】
<粘着清掃部材>
ブラシロールの清掃に用いた粘着ロールは、以下の通りである。
・粘着ロール:日東電工株式会社製 エレップ(登録商標)
この粘着ロールはロール状のものを準備し、使用する形態によりロールのまま、もしくはロールから繰り出したシートとして使用した。
【0069】
<布帛清掃部材>
ブラシロールの清掃に用いた布帛(不織布)は以下の通りである。
・超極細繊維織編物:東レ株式会社製 トレシー(登録商標)
この不織布はロール状のものを準備し、使用する形態によりロールのまま、もしくはロールから繰り出したシートとして使用した。
【0070】
<剥離評価方法>
剥離の評価は、市販のダインペン(表面エネルギー:30、70mN/m)を用いて、以下の方法で測定した。室温23℃の環境下で、試料表面にダインペンで描画し、4秒以上その状態を保持する場合は、そのダインペンの表面エネルギーよりも試料表面の表面エネルギーの方が高いと判断した。被膜付きフィルムの離型成分の硬化型シリコーン樹脂が表面に残れば、表面エネルギーは30mN/m未満であるため、いずれのダインペンも試料表面に試薬が弾かれて、描画を保持できない。一方、離型成分の硬化型シリコーン樹脂の被膜が剥離されて、ポリビニルアルコール樹脂が表出している場合には、表面エネルギーが70mN/m以上であるため、いずれのダインペンも描画を保持できる。離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも剥離されて、ポリエチレンテレフタレートが表出している場合には、表面エネルギーが43.8mN/mであるため、30mN/mのダインペンの描画は保持するが、70mN/mのダインペンの描画は保持できない。以上の評価方法により、被膜付きフィルムの被膜が剥離できたか否かを判断した。
【0071】
<フィルムへの異物再付着評価方法>
被膜を剥離したフィルム表面を目視で観察し、表面の清浄状態から剥離した被膜の基材フィルムへの再付着の有無を確認した。特に、剥離装置下流および巻取り装置直前のフィルムを目視観察し、被膜の清浄状態を入念に確認した。また、巻取部の直前に設けられたラインカメラによって、基材フィルムに再付着して巻取り部に持ち込まれる剥離した被膜の個数を数え、フィルム走行速度と走行時間から、フィルム走行100mあたりの回収フィルムに持ち込まれた剥離した被膜の個数を算出し、剥離した被膜の再付着による回収フィルムへの混入を抑制できたか否かを判断した。
【0072】
<被膜付きフィルムからの被膜剥離>
[実施例1]
被膜剥離の準備として、以下を実施した。
被膜付きフィルム2aとして、基材フィルムの片面に被膜が形成された被膜付きフィルムXが長さ約3000m巻かれたロールを、
図1に示す被膜剥離装置を有する装置1の巻出し装置2に設置した。その後、装置1の所定パスを通過させて巻取り装置9に設置したコアへ連結させた。
【0073】
洗浄液11は60℃の温水を用いた。洗浄液11を貯めた温水槽4の中にて、被膜付きフィルム2aが洗浄液11に浸漬している長さが1.5mとなるよう搬送ロール部3aを配置した。フィルムの搬送張力は80N/基材巾とし、搬送速度は60m/分になるよう搬送ロール部8、80を調整した。60m/分の搬送によって、被膜付きフィルム2aに形成された被膜は洗浄液11の中で1.5秒間溶解する条件とした。
【0074】
剥離装置20における剥離部30では、樹脂製のブラシロール5(ブラシロールの毛の材質はナイロン樹脂製で、線径0.15mm、外径80mm)を用い、フィルム搬送方向に対して400rpmで逆回転し、押さえロール5aとの間で被膜付きフィルム2aを挟みながら、フィルムの被膜表面にブラシロール5を回転接触させて被膜を剥離する状態とした。被膜が形成されていない面の清掃装置20は未使用とした。
【0075】
洗浄シャワー装置6は、Φ20のステンレス製中空パイプにΦ3の孔を10mm間隔で開け、中空パイプの片側端を閉止、もう一方の端から洗浄液を20L/分の流量供給することで、剥離後のフィルムに洗浄液を噴射する構成とした。
【0076】
絞りロール7aは、市販のウレタンゴムロールを用い、シャワー装置通過後のフィルムを挟んで付着している液滴を絞る構成で使用した。
【0077】
エアーナイフ7bは、スリット状の吹出口をもつ市販のエアナイフ(エバーロイ スリットエアーノズル)を用い、ブロアからエアを供給して約80m/sの吹出風速にて使用した。
【0078】
[実施例1の清掃部]
清掃部は
図2にて符号40で示す形状とし、清掃ロール41として粘着ロールを用いた。この清掃ロール41は回転自在のフリーロールとして、ブラシロール5に接触させた際に、ブラシロール5とほぼ同周速で逆回転する構成とした。
【0079】
ブラシロール5の清浄は、清掃部40を移動してブラシロール5に近接接触させ、清掃ロール41の表面をブラシロール5の表面から約1mm押し込む位置に調整して行った。ブラシロール5の清掃は間欠的に実施し、被膜付きフィルム2aを300m搬送する毎に、ブラシロール5と清掃ロール41を30秒間接触させた後、離間するシーケンスで行った。清掃後に離間し、次の清掃までの待機時間には、作業者が清掃ロール41表層の粘着シートを剥がし、次の清掃では常に清浄な粘着面をブラシロール5に接触させた。
【0080】
上記状態の準備を完了した後、塗膜付きフィルム2aを搬送させて剥離を開始し、約50分間搬送しながら塗膜の剥離を行い、原反3000mの剥離処理をおこなった。
【0081】
剥離処理後に巻取り装置9に巻き取られたフィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離することができていた。また、剥離中のフィルムの目視に異常は見られず、ラインセンサカメラによる基材フィルムへの被膜の再付着検出個数は12個であった。
【0082】
[実施例2]
清掃部40を
図3に示す清掃部50全体が移動して近接してブラシロール5に接触する装置に変更した以外は、実施例1と同じ装置と設定にて塗膜を剥離した。
【0083】
この時、巻出しロール51に粘着テープが長さ30m巻かれたロールを設置し、拭き取りローラ53を介して巻取りロール52へ粘着テープを繰り出し、清掃材54として使用した。なお、ブラシロール5を清掃している時だけ20mm/sの送り速度で粘着テープを繰り出すように予め動作プログラミングしておくことで、ブラシロール5と清掃材54との接触面は常に清浄な面となるよう設定した。拭き取りローラ53は、Φ80mmのシリコンスポンジ製を設置した。
【0084】
上記状態の準備を完了した後、被膜付きフィルムXからなる被膜付きフィルム2aを搬送させて剥離を開始し、約50分間本装置を用いて被膜を剥離した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離することができていた。また、また、剥離中のフィルムの目視に異常は見られず、ラインセンサカメラによる基材フィルムへの被膜の再付着検出個数は10個であった。
【0085】
[実施例3]
清掃ロール41を粘着ロールの代わりに超極細繊維織編物の布帛からなるロールに変更した以外は、実施例1と同じ装置と設定にて塗膜を剥離した。被膜付きフィルムXからなる被膜付きフィルム2aを約50分間搬送しながら塗膜の剥離処理を行って、剥離処理後に巻取り装置9に巻き取られたフィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離することができていた。また、剥離中のフィルムの目視に異常は見られず、ラインセンサカメラによる基材フィルムへの被膜の再付着検出個数は8個であった。
【0086】
[実施例4]
巻出しロール51を粘着ロールの代わりに超極細繊維織編物の布帛からなるロールに変更し、清掃材54として布帛を用いた以外は、実施例2と同じ装置と設定にて塗膜を剥離した。被膜付きフィルムXからなる被膜付きフィルム2aを約50分間搬送しながら塗膜の剥離処理を行って、剥離処理後に巻取り装置9に巻き取られたフィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離することができていた。また、剥離中のフィルムの目視に異常は見られず、ラインセンサカメラによる基材フィルムへの被膜の再付着検出個数は6個であった。
【0087】
[実施例5]
間欠的なブラシロール5の接触清掃ではなく、ブラシロール5による被膜の剥離を行っている間、清掃材54を5mm/sの速度で巻取りながら、拭き取りローラ53を介して清掃材54をブラシロール5へ接触させつづける条件とした以外は、実施例4と同じ装置と設定にて塗膜を剥離した。被膜付きフィルムXからなる被膜付きフィルム2aを約50分間搬送しながら塗膜の剥離処理を行って、剥離処理後に巻取り装置9に巻き取られたフィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離することができていた。また、剥離中のフィルムの目視に異常は見られず、ラインセンサカメラによる基材フィルムへの被膜の再付着検出個数は3個であった。
【0088】
[実施例6]
清掃部40を
図4に示す清掃部60に変更した以外は、実施例1と同じ装置を準備した。ここで清掃部60におけるスプレー61は市販のスリットノズル(例えば霧のいけうち製)を使用し、ノズル先端とブラシロール5との距離が30mmとなる位置で、フィルム搬送方向とは略直角方向に、押さえロール5a、ブラシロール5、スプレー61が略一直線上に並ぶよう設置した。またノズルから20L/minで洗浄液を吐出するようポンプ流量を調整した。洗浄液は、水槽11から図示しないフィルターを介して吸い上げ、ブラシロール5へ向けて吐出した洗浄液は受け皿62で回収し、図示しない濾過フィルターと配管を通って水槽11へ戻る構成とした。
【0089】
ノズルからの洗浄液吐出によるブラシロール5の清浄は連続的に実施し、ブラシロール5が被膜付きフィルム2aの表面から被膜を剥離している間も洗浄液を吐出しつづける設定とした。
【0090】
上記準備が整った後、被膜付きフィルムXからなる被膜付きフィルム2aを約50分間搬送しながら塗膜の剥離処理を行って、剥離処理後に巻取り装置9に巻き取られたフィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離することができていた。また、剥離中のフィルムの目視に異常は見られず、ラインセンサカメラによる基材フィルムへの被膜の再付着検出個数は1個であった。
【0091】
[比較例1]
清掃部40を作動させなかった以外は、実施例1と同じ装置と設定にて被膜の剥離をおこなった。その結果、時間経過に伴いブラシロール5の表面に剥離した被膜が確認できるほど汚れが蓄積し、被膜の剥離開始から6~7分後には剥離部30を通過したフィルム表面が、目視確認できるほど状態変化があった。これはブラシロール5表面への汚れ蓄積の影響で、被膜の剥離にムラが生じたものと推察された。
【0092】
被膜付きフィルムXからなる被膜付きフィルム2aの搬送開始から約50分間塗膜の剥離処理を行い、剥離処理後に巻取り装置9に巻き取られたフィルムを確認した結果、ポリビニルアルコール樹脂および硬化型シリコーン樹脂の両方が基材フィルム上に残存した。またラインセンサカメラによる基材フィルムへの被膜の再付着検出個数は100個を超えており、著しく悪化した。よって比較例1で得たフィルムの再利用は難しいと判断し、廃棄した。
本発明は、樹脂フィルムや紙フィルム、金属フィルムなどの基材フィルムに被膜が形成された被膜付きフィルムからの被膜剥離装置および被膜剥離方法に適用できるが、これに限られるものではない。