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特開2023-143793基板処理方法及びこれを用いた選択的蒸着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143793
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】基板処理方法及びこれを用いた選択的蒸着方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/02 20060101AFI20230928BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230928BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20230928BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C23C16/02
C23C16/455
C23C16/30
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040352
(22)【出願日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】10-2022-0037245
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0019757
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523062062
【氏名又は名称】エスケイ スペシャルティ コンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】512293921
【氏名又は名称】インダストリー-ユニバーシティー コーペレイション ファンデーション ハンヤン ユニバーシティー エリカ キャンパス
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ソンウン チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンフン クァク
(72)【発明者】
【氏名】ジフン イ
(72)【発明者】
【氏名】ウヒ キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン イ
(72)【発明者】
【氏名】ソヒョン イ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030BA10
4K030BA17
4K030BA18
4K030BA29
4K030BA38
4K030BA42
4K030BA44
4K030CA02
4K030DA02
4K030HA01
5F058BC02
5F058BC03
5F058BE03
5F058BE10
5F058BF23
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
5F058BJ10
(57)【要約】
【課題】蒸着選択度のさらなる改善
【解決手段】本発明の基板処理方法は、第1表面領域および第1表面領域と異なる表面状態を有する第2表面領域を有する基板を提供するステップと、蒸着抑制剤を含む基板表面処理組成物に前記基板を露出させるステップと、HFを含む後処理組成物に前記基板を露出させるステップとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
第1表面領域および前記第1表面領域と異なる表面状態を有する第2表面領域を有する基板を提供するステップと、
蒸着抑制剤を含む基板表面処理組成物に前記基板を露出させるステップと、
HFを含む後処理組成物に前記基板を露出させるステップを備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記後処理組成物に前記基板を露出させるステップは、HFを含む液状の後処理組成物に前記基板を浸漬(dipping)することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記液状の後処理組成物は、5%~15%のHF希釈溶液であることを特徴とする、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記液状の後処理組成物は、10%のHF希釈溶液であることを特徴とする、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記後処理組成物に前記基板を露出させるステップは、HFを含む気相後処理組成物を前記基板上に供給することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記蒸着抑制剤は、前記第1表面領域および前記第2表面領域に対する吸着度が異なるヘッド部と、前記ヘッド部と反対側の端部に配置される末端部と、前記ヘッド部と前記末端部を繋ぐボディー部を有することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記ヘッド部は、チオールまたはホスホン酸(phosphonic acid)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記ヘッド部は、複数のヘッドグループを有することを特徴とする、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記ボディー部は、フッ素(F)で置換または非置換のC4~C18のアルキレンからなるチェーン構造体を含むことを特徴とする、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記ボディー部は、複数の前記チェーン構造体を有することを特徴とする、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記末端部は、前記ボディー部の前記チェーン構造体に対応する非反応性モイエティを有し、
前記非反応性モイエティは、-CH3または-CF3であることを特徴とする、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記基板表面処理組成物に前記基板を露出させるステップは、液状の基板表面処理組成物に前記基板を浸漬することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記基板表面処理組成物に前記基板を露出させるステップは、気相の基板表面処理組成物を前記基板上に供給すること含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記第1表面領域は、導電性または金属性の表面領域であり、前記第2表面領域は、誘電性の表面領域であることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項15】
基板上に薄膜を領域選択的に蒸着するための選択的蒸着方法であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の基板処理方法により基板を処理するステップと、
処理された前記基板を蒸着反応物ガスに露出させ、前記基板の第1表面領域または第2表面領域に前記薄膜を選択的に蒸着するステップと、
を備えることを特徴とする選択的蒸着方法。
【請求項16】
前記第1表面領域は、導電性または金属性の表面領域であり、前記第2表面領域は、誘電性の表面領域であり、
シリコン含有膜、ハフニウム含有膜、またはルテニウム含有膜を含む前記薄膜を前記第2表面領域上に選択的に蒸着することを特徴とする、請求項15に記載の選択的蒸着方法。
【請求項17】
前記薄膜は、ALDまたはCVD方法により蒸着されることを特徴とする、請求項15に記載の選択的蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及びこれを用いた選択的蒸着方法に関するもので、後続の薄膜の蒸着を抑制するための蒸着抑制剤(Inhibitor)を用いた基板処理方法及びこれを用いて基板上に薄膜を選択的に蒸着する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造は、一般的に蒸着、フォトリソグラフィ、エッチング工程の反復的な遂行によって行われる。
【0003】
半導体デバイスのダウンスケーリングに伴い、半導体デバイス製造の複雑性が増しており、半導体デバイスを生産するコストも増加している。例えば、露光装置の分解能より小さい回路パターンを形成するためにダブルパターニングなどの工程が使われているが、その分、製造工程が増え、複雑性が増加してしまう。これを解決するために、EUVのような極紫外線を使用した露光装置を用いたパターニング技術が使われているが、EUV露光装置は高価なため、生産費用の増加を避けられない問題点がある。
【0004】
そこで、半導体デバイスの製造工程の複雑化を避けながらも費用効率的なパターニング技術の開発が持続的に要求されており、半導体デバイスを成す薄膜の領域選択的蒸着(Area Selective Deposition)は、高度にダウンスケーリングされた技術ノードにおいて有望なパターニング技術の一つである。薄膜の領域選択的蒸着は、半導体デバイス構造の所望の表面領域(例えば、導電性表面領域または誘電性表面領域)にのみ膜を選択的に蒸着することによって、高価のフォトリソグラフィー工程を省略することができる。
【0005】
このような薄膜の領域選択的蒸着は、多様な方法で試みられている。例えば、特許文献1(韓国公開特許公報第2020-0000457号)では、導電性表面領域(例えば、チャンネル領域)と誘電性表面領域を有する基板の表面を水素プラズマで表面処理し、導電性表面領域を水素終結させるようにし、誘電性表面領域は-OH終結を維持するようにする。このように互いに異なる表面状態を持つ領域に対して蒸着選択度を有する反応ガス(例えば、水素終結された表面にのみ選択的に吸着されて蒸着される反応ガス)に基板を露出させることによって、例えば導電性表面領域にのみ薄膜を選択的に蒸着させる。
【0006】
しかし、このようなプラズマ表面処理による領域選択的蒸着の場合、十分に厚い膜を形成できるほどの蒸着選択度を提供できない問題がある。
【0007】
十分な厚さの薄膜を領域選択的に蒸着できる方法として、蒸着抑制剤の自己組織化単層(Self-Assembled Monolayer)を使用する方法が知られている。蒸着抑制剤の自己組織化単層は、後続の薄膜蒸着用の前駆体に対して反応性である基板表面の作用基を遮断したり除去したりすることによって、互いに異なる表面領域間の蒸着選択度を増加させることができる。
【0008】
このような蒸着抑制剤の自己組織化単層を活用する工程は、基板表面上の異なる領域の選択的蒸着の他に、半導体蒸着装置内で望まない領域に蒸着が行われることを防止するのにも使われている(特許文献2:米国特許第7,914,847号)。すなわち、蒸着装置内での薄膜の蒸着は、基板上の所望の領域ではない他の露出表面上でも発生するので、多数の基板が順次蒸着処理される間、蒸着装置のリアクターの露出表面上に薄膜が累積的に堆積される。累積的に堆積した膜は、リアクター表面から剥離または剥がれて基板表面を汚染させうる。特許文献2では、リアクター表面に望まない膜の堆積の量を減らしたり防止したりするために、リアクター表面上に保護用の自己組織化単層(SAM)を形成する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許公報第2020-0000457号
【特許文献2】米国特許第7,914,847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
蒸着抑制剤の自己組織化単層を使用した領域選択的薄膜蒸着法は、プラズマ表面処理による領域選択的薄膜蒸着法に比べ、十分な厚さの蒸着が行われるまで互いに異なる組成の表面領域間の選択度を維持できるが、依然として選択度のさらなる改善が求められる。
【0011】
特に、領域選択的原子層蒸着工程(Area-Selective Atomic Layer Deposition、AS-ALD)中に後続の薄膜蒸着を抑制するための蒸着抑制剤物質を基板上に溶液塗布したり気相吸着させる過程で、薄膜蒸着を望まない領域(非蒸着領域)だけでなく薄膜蒸着領域にも蒸着抑制剤化合物の分子が吸着し、これにより薄膜蒸着の選択度が十分に得られない問題がある。
【0012】
本発明は、領域選択的薄膜蒸着を行うにあたり、蒸着選択度をさらに改善できる基板処理方法及びこれを用いた領域選択的薄膜蒸着法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様による基板処理方法は、第1表面領域および前記第1表面領域と異なる表面状態を有する第2表面領域を含む基板を提供するステップと、蒸着抑制剤を含む基板表面処理組成物に前記基板を露出させるステップと、HFを含む後処理組成物に前記基板を露出させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2態様による選択的蒸着方法は、基板上に薄膜を領域選択的に蒸着するための方法であり、本発明の第1態様による基板処理方法で基板を処理するステップと、処理された前記基板を蒸着反応物ガスに露出させ、前記基板の第1表面領域または第2表面領域に前記薄膜を選択的に蒸着するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、領域選択的薄膜蒸着を行うにあたり、蒸着選択度をさらに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】本発明の一実施例による基板処理方法及び選択的蒸着方法を説明するための概略的断面図である。
図1b】本発明の一実施例による基板処理方法及び選択的蒸着方法を説明するための概略的断面図である。
図1c】本発明の一実施例による基板処理方法及び選択的蒸着方法を説明するための概略的断面図である。
図1d】本発明の一実施例による基板処理方法及び選択的蒸着方法を説明するための概略的断面図である。
図1e】本発明の一実施例による基板処理方法及び選択的蒸着方法を説明するための概略的断面図である。
図1f】本発明の一実施例による基板処理方法及び選択的蒸着方法を説明するための概略的断面図である。
図2】本発明の一実施例による基板処理方法に使用される蒸着抑制剤化合物の概略的構造を示す図面である。
図3】本発明の一実施例による基板処理方法の後処理工程を行った後における、後処理組成物の濃度による基板表面領域の接触角を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図1a~図1fを参照して、導電層または金属層に対して誘電体層上にシリコン酸化物膜のような誘電体膜または金属酸化物膜を領域選択的に蒸着するための基板処理方法および蒸着方法を説明する。
【0018】
具体的には、本発明の一実施例によれば、下地基板のタングステン(W)金属層に対してシリコン酸化物誘電体層上にシリコン酸化物膜を選択的に蒸着するための基板処理方法および選択的蒸着方法を提供する。ただし、本発明はこれに限らず、シリコン酸化物膜の領域選択的蒸着以外に、ハフニウム酸化物膜などのハフニウム含有膜やルテニウム酸化物膜などのルテニウム含有膜の領域選択的蒸着にも適用できる。
【0019】
図1aに示すように、表面状態が異なる2つ以上の表面領域を有する、パターニングされた基板1が提供される。例えば、パターニングされた基板1は、誘電体層10、誘電体層10に埋め込まれた金属層20、および誘電体層10と金属層20との間に形成された拡散バリア層15を含む。
【0020】
図1aでは、基板上の第1表面領域としての金属層20表面領域と、第2表面領域としての誘電体層10表面領域が同一の平面上に配置される構成を図示しているが、本発明はこれに限らず、第1表面領域と第2表面領域が互いに異なる平面上に配置されてもよい。例えば、第1表面領域または第2表面領域が基板上のトレンチまたは溝の底面/側壁面であってもよい。
【0021】
金属層20は、例えば、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、またはタングステン(W)を含有することができ、第1表面領域を規定する。誘電体層10は、例えば、ローk誘電体材料、シリコン酸化膜(SiO2)、または金属含有誘電体材料(金属酸化物、金属窒化物、または金属酸窒化物など)を含むことができ、第2表面領域を規定する。拡散バリア層15は、TaN、TiN、TaSiN、またはTiSiNを含むことができる。
【0022】
ただし、本発明の第1表面領域と第2表面領域はこれに限らず、後述する蒸着抑制剤の吸着程度が異なる別途の領域の組み合わせであってもよい。例えば、金属窒化物(SiN)の表面領域と金属酸化物(SiO2)の表面領域が蒸着抑制剤に対して吸着程度が異なる場合、金属窒化物の表面領域と金属酸化物の表面領域を含む基板1を使用してもよい。
【0023】
基板1は、自己組織化単層を形成できる蒸着抑制剤に露出されることによって表面改質処理され、その結果、図1bに示すように、基板1の金属層20の表面領域上には蒸着抑制剤化合物の分子が選択的に吸着され、自己組織化単層30が形成される。
【0024】
ここで、図2を参照して、互いに異なる表面状態の複数の表面領域を有する基板の表面を改質処理するための蒸着抑制剤の化合物についてより具体的に説明する。
【0025】
蒸着抑制剤の化合物は、第1表領域および第1の表面領域と異なる表面状態を有する第2表領域を含む基板に薄膜を領域選択的に蒸着するために基板表面を処理するのに使われる。
【0026】
ここで、表面状態が異なるとは、蒸着抑制剤の化合物の分子が基板の異なる表面領域に吸着される程度が異なることを意味し、例えば、第1の表面領域に係る膜と第2の表面領域に係る膜がそれぞれ導電性/金属性膜と誘電性(dielectric)膜で互いに異なったり、すべてが誘電性膜であってもその造成に相違があったり(例えば、金属窒化膜と金属酸化膜とはすべて誘電性膜であるが、蒸着抑制用の基板表面処理剤の化合物の分子が吸着される程度が異なる場合がある)、表面処理などによって表面終結状態が水素終結(H-termination)とヒドロキシル終結(OH-termination)などで互いに異なったり、表面状態が親水性と疎水性で異なる場合などを含むが、これに限定されない。
【0027】
本発明の基板処理方法に使用される蒸着抑制剤の化合物は、図2に示すように、基板表面の第1表面領域または第2表面領域に選択的に吸着される(すなわち、第1表面領域および第2表面領域に対して吸着度が異なる)反応性のヘッド部Hと、基板上に選択的に蒸着されるべき薄膜の蒸着反応物に対して非反応性または不活性(inert)の末端部Tと、ヘッド部Hと末端部Tを連結し、膜構造物を形成する機能をするボディー部Bを含む分子構造を有する。
【0028】
自己組織化単層は、それを成している化合物の分子が所定の表面状態を有する基板表面領域に選択的に吸着し、化合物の分子が同じ方向に自ら配列することにより、所定の基板表面領域上に自発的に形成される3次元の組織体である。蒸着抑制剤の化合物の分子は、化合物が基板上に供給された初期には、分子のランダムな塊を形成したり、2次元的に配列された相(phase)を形成するが、時間がたつにつれ、化合物の分子の反応性のヘッド部Hが基板表面の所定の表面状態を有する領域上に選択的に吸着し、次いで、ボディー部Bがファンデルワールス力によって基板表面に垂直な方向に密にパッキングされて、基板上の所定の表面領域に3次元結晶質または半結晶質の構造を形成する。これにより、蒸着抑制剤化合物の分子のヘッド部Hは、基板上に配列され、一方、末端部Tは基板から離間して配列される。
【0029】
このように自己組織化された単層は、薄膜の蒸着のための蒸着反応物(例えば、ALD用前駆体)が自己組織化単層が選択的に形成された基板の表面領域上へ拡散することを防止し、該表面領域上のアクティブサイト(蒸着反応物が吸着できる反応性の作用基があるサイト)を該蒸着反応物に対して非反応性または不活性の末端部Tに代替することによって、薄膜の蒸着を抑制する。これに比べ、自己組織化単層が形成されていない基板表面領域(蒸着領域)上には、蒸着反応物が自由に拡散して該基板表面領域上のアクティブサイトに吸着され、薄膜を形成するようになり、その結果、領域選択的蒸着を達成することができる。
【0030】
蒸着抑制剤化合物のヘッド部Hは、下地基板表面の所定の表面領域に選択的な吸着を可能にする部分であり、そのために下地基板表面の所定の表面領域と化合的吸着が可能な反応性モイエティまたは官能基(ヘッドグループ)を有する。
【0031】
例えば、本発明の一実施例による基板処理方法に使用される蒸着抑制剤化合物のヘッド部Hは、反応性モイエティまたはヘッドグループとして、チオール(thiol)またはホスホン酸(phosphonic acid)を含む。チオールまたはホスホン酸は、酸性(acidic)の性質を持っているので、相対的に酸性の下地表面よりは塩基性またはアルカリ性の下地表面に結合しようとする傾向が強い。例えば、シリコン酸化膜のような誘電体膜の場合、表面に酸性のヒドロキシル基を持つので、チオールまたはホスホン酸のヘッドグループは相対的にシリコン酸化膜のような誘電体膜よりは、これと共に下地基板表面に存在するCuやWなどの金属膜、TiN膜、水素終結されたシリコン膜上により吸着されやすい性質を有する。
【0032】
蒸着抑制剤化合物の分子のヘッド部Hは、図2に示すように、1つまたは複数のヘッドグループ(HG)を有することができる。
【0033】
例えば、本発明の一実施例による基板処理方法に使用される基板表面処理剤化合物の分子のヘッド部Hは、オクタデシルホスホン酸(ODPA: Octadecylphosphonic acid)またはパーフルオロデシルホスホン酸(PFDPA: Perfluorodecylphosphonic acid)のように一つのヘッドグループを有することができ、二つのヘッドグループ(例えば、ジチオールまたはビスホスホン酸)を有することができる。
【0034】
ヘッド部Hが複数のヘッドグループ(HG)を有することにより、一つのヘッドグループ(HG)を有する場合に比べ、より大きな下地基板への吸着力を提供することができ、自己組織化単層に化合物分子が吸着されていないヴォイドが生じることを抑制することができる。これにより、後続の薄膜蒸着工程での蒸着反応物(例えば、ALD前駆体)が自己組織化単層のヴォイドを通して下地基板のアクティブサイト(蒸着反応物が吸着できる反応性作用基のあるサイト)に拡散し、薄膜が蒸着されてはならない下地基板表面領域(非蒸着領域)に薄膜が蒸着されることを抑制することができる。
【0035】
また、ヘッド部Hのヘッドグループ(HG)が一つの場合に比べ、後続の薄膜蒸着工程中の基板の加熱などにより、吸着されていたヘッド部が下地基板から離脱されることを抑制し、熱的安定性を向上させることができる。
【0036】
また、下地基板上に蒸着抑制剤化合物を含む処理組成物が供給されてから自己組織化単層が形成されるまでの時間を短縮させることで、生産性を向上させることができる。
【0037】
図2の(b)および(d)では、ヘッド部Hが2つの反応性ヘッドグループ(HG)を有する場合を示したが、本発明はこれに限らず、3つ以上の反応性ヘッドグループを有してもよい。
【0038】
また、本実施例では、反応性ヘッドグループとしてチオールやホスホン酸を例示しているが、本発明はこれに限らず、他の反応性ヘッドグループを有することができる。
【0039】
蒸着抑制剤化合物の分子の末端部Tは、下地基板表面上のアクティブサイトの代わりに非反応性または不活性表面を提供する機能をする部分である。すなわち、前述したように、蒸着抑制剤化合物の自己組織化単層が形成された状態で、蒸着抑制剤化合物の分子の末端部Tは基板表面から離間して組織化され、この末端部Tは、後続の蒸着工程の蒸着反応物(例えばALD前駆体)に非反応性であるため、蒸着反応物が自己組織化単層が形成された表面領域に吸着され、該表面領域に薄膜が形成されることを抑制する。
【0040】
このような末端部Tの非反応性のモイエティとしては、-CH3や-CF3などを挙げることができるが、本発明はこれに限らず、蒸着反応物と反応しない非反応性グループであればよい。特に、末端部Tの組成と蒸着反応物の種類によって、非反応性程度が変わることがあるので、後続の蒸着工程の蒸着反応物に応じて非反応性が最大化されるよう末端部Tの組成および化学構造を定めることが好ましい。
【0041】
蒸着抑制剤化合物の分子の末端部Tは、図2に示すように、1つまたは複数の非反応性モイエティを有することができるが、複数の非反応性モイエティT1、T2を有することがより好ましい。これにより、後続の蒸着工程での蒸着領域と非蒸着領域との間の蒸着選択度をより向上させることができる。すなわち、蒸着抑制剤化合物の分子の末端部Tが複数の非反応性モイエティを有することによって、非反応性モイエティの表面密度を増加させることができ、非蒸着領域における蒸着反応物との蒸着反応をさらに抑制することができる。
【0042】
図2の(c)および(d)では、末端部Tの非反応性のモイエティとして2つを図示しているが、本発明はこれに限らず、3つ以上の非反応性のモイエティを有してもよい。
【0043】
また、末端部Tが複数の非反応性のモイエティを有する場合、それぞれの非反応性のモイエティは同じであってもよく、このうち少なくとも一つが異なってもよい。ただし、合成のしやすさの観点から末端部Tの複数の非反応性のモイエティがすべて同じであることが好ましい。
【0044】
蒸着抑制剤化合物の分子のボディー部Bは、ヘッド部Hと末端部Tを繋ぐ部分であり、自己組織化単層の膜構造の維持を担当する部分である。すなわち、ヘッド部Hが下地基板上の所定の表面領域に吸着されると、ボディー部Bは、他の分子のボディー部との間のファンデルワールス力によって下地基板の表面領域に垂直な方向に配列しながら密にパッキングされ、これにより自己組織化単層の膜構造を維持できるようにする。
【0045】
蒸着抑制剤化合物によって構成された自己組織化単層が後続する薄膜蒸着工程で蒸着反応物の拡散を遮断する能力は、ボディー部Bがどれほど密な有機層を形成できるかに大きく影響を受ける。すなわち、ボディー部Bがよく整列された有機層を形成できない場合、蒸着反応物が下地基板のアクティブサイトまで拡散して入り込む確率が高くなり、これは薄膜蒸着の選択度の低下だけでなく欠陥発生の原因ともなる。このようなボディー部Bがよく整列された(半結晶性)密な有機遮単層を形成できるかは、ボディー部Bの構造(複数のチェーン構造体)、長さ(例えば、アルキルチェーンの長さ)および組成/種類に影響を受ける。
【0046】
蒸着抑制剤化合物の分子のボディー部Bは、図2に示すように、1つまたは複数のチェーン構造体B1、B2を有し、複数のチェーン構造体B1、B2を有することがより好ましい。 ボディー部Bが複数のチェーン構造体を有することによって、ボディー部Bのパッキン密度が相対的に大きくなり、これにより、後続の蒸着工程で蒸着領域と非蒸着領域との間の蒸着選択度をさらに向上させることができる。
【0047】
本発明の蒸着抑制剤化合物のボディー部Bのチェーン構造体B1、B2は同じであっても、或いは異なっていてもよく、それぞれ独立してフッ素に置換または未置換されたC4~C18のアルキルチェーンまたはアルキレンからなることができる。
【0048】
例えば、ボディー部Bのそれぞれのチェーン構造体は-(CH2)p(CF2)q-の化学式で表され、ここでpおよびqはそれぞれ独立して0以上18以下の定数であり、p+qは4以上18以下であることが好ましい。ボディー部Bのチェーン構造体を成すアルキルチェーンの長さ(p+q)が4より小さいと、自己組織化がほとんどされなく(すなわち、アルキルチェーンが下地基板の表面領域に垂直な方向に立つことができず基板表面に横たわった構造になる)、アルキルチェーンの長さ(p+q)が19以上になると、アルキルチェーンが折れやすくなり、分子量が大きくなって蒸気圧が小さくなり、気相形成が難しくなる問題がある。
【0049】
qがゼロでない場合、-(CH22-がヘッド部Hに連結され、残りは-(CF2)m-からなるか(この場合、末端部Tは-CF3であることが好ましい)、ボディー部Bのチェーン構造体全体が-(CF2)q-からなること(すなわち、p=0)が好ましい(この場合も末端部Tは‐CF3であることが望ましい)。
【0050】
図2の(c)及び(d)では、ボディー部Bの複数のチェーン構造体が同じ長さを有しているが、本発明はこれに限らず、それぞれのチェーン構造体が互いに異なる長さを有してもよい。
【0051】
また、ボディー部Bの複数のチェーン構造体は、同じ組成を有しても、異なる組成を有してもよい。ただし、化合物の合成のしやすさの観点から、ボディー部Bの複数のチェーン構造体すべてが同じ組成を有することが好ましい。
【0052】
本発明の一実施例による基板処理方法に使用される蒸着抑制剤化合物は、化学式1~6で表されることができる。
【0053】
【化1】
【0054】
ここで、nは4~18の整数である。ただし、本発明はこれに限らず、例えば、前記化学式1または化学式2において、ボディー部Bのアルキルチェーンや末端部Tの-CH3における少なくとも1つの水素がフッ素(F)に置き換えられた構造を有することもできる。
【0055】
図1bに戻り、蒸着抑制剤による基板表面処理工程についてより具体的に説明する。蒸着抑制剤による基板表面処理工程は湿式プロセスまたは乾式プロセスで行うことができる。
【0056】
湿式プロセスでは、蒸着抑制剤化合物を水、アルコール(例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、メタノール)または有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート(PC)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)などに溶かすことで希釈して処理溶液を得る。特に、本実施例では、ODPAまたはPFDPAのようなホスホン酸系化合物をトルエンまたはテトラヒドロフラン(THF)で溶かすことで希釈して処理溶液を得た。
【0057】
蒸着抑制剤化合物と溶媒の重量比は1:0(希釈なし)~1:10000であることが好ましい。処理溶液のpH値を調整するために酸(例えば、HCl、HF、クエン酸)および/または塩基(例えば、NH4OH、テトラメチルアンモニウム(TMAH))を添加してもよく、処理溶液のpH値は、約6.0~約8.0であることが好ましい。
【0058】
本発明の一実施例による湿式基板表面処理工程では、図1aに示した基板1を処理溶液中に18時間浸漬させた。このとき、処理溶液の温度は、約室温(25℃)~約120℃に維持することが好ましい。
【0059】
乾式プロセスでは、蒸着抑制剤化合物を真空チャンバで蒸発または昇華させて、処理対象の基板に供給する。蒸着抑制剤化合物の蒸気圧および分子量によってはトルエンやTHFのような溶媒に分散させてから蒸発させることも可能であるが、蒸着抑制剤化合物の分子が基板に吸着する割合を高めるために、化合物を直接加熱によって蒸発または昇華させることがより好ましい。乾式プロセスの際、チャンバ内の温度は概ね室温(25℃)~約300℃に維持することが好ましい。また、N2、Ar、Heおよび/またはH2のようなキャリアガスを使用することができる。
【0060】
このように表面処理された基板1に対して水接触角(Water Contact Angle)を測定し、蒸着抑制剤化合物の基板1への吸着程度を確認した。
【0061】
タングステン(W)からなる金属層20の表面領域の接触角は、湿式基板表面処理工程前には37°程度であったが、蒸着抑制剤化合物を含有する処理溶液によって湿式処理された後には140°にまで増加した。
【0062】
ところが、シリコン酸化膜からなる誘電体層10の表面領域の接触角度は、湿式基板表面処理前に10°程度であったものが45°程度に増加した。これは、図1bに示すように、蒸着抑制剤化合物の分子がシリコン酸化膜の誘電体層10の表面領域に比べてタングステンの金属層20の表面領域に相対的に多く吸着されるが、シリコン酸化膜の誘電体層10の表面領域にも一部吸着が起きることを意味する。これは、後続の薄膜蒸着工程で、金属層20の表面領域に対するシリコン酸化膜の誘電体層10の表面領域上への金属酸化物薄膜の蒸着選択度が十分に大きくない可能性があることを表す。
【0063】
一方、乾式プロセスにより基板表面処理工程を行った場合、タングステン(W)からなる金属層20の表面領域の接触角は、乾式基板表面処理工程前には37°程度であったが、乾式表面処理後には117°にまで増加した。
【0064】
ところが、シリコン酸化膜からなる誘電体層10の表面領域の接触角も、乾式基板表面処理前に10°程度であったものが94°程度にまで大きく増加し、湿式基板表面処理に比べて乾式基板表面処理の際に、蒸着抑制剤化合物の分子がシリコン酸化膜の誘電体層10の表面領域に相対的に多く吸着したことが分かる。これは、乾式基板表面処理工程の温度が湿式基板表面処理工程に比べて高いためであると推測される。したがって、乾式プロセスによって基板表面処理工程を行う場合、後続の薄膜蒸着の選択度が湿式プロセスによって基板表面処理工程を行う場合に比べてはるかに低くなりうる。
【0065】
そこで本発明では、蒸着抑制剤による湿式または乾式の基板表面処理工程後、かつ薄膜蒸着工程の前に、シリコン酸化膜の誘電体層10上に吸着された蒸着抑制剤化合物の分子を選択的に除去するための後処理工程を実施する。
【0066】
すなわち、本実施例による基板処理方法においては、蒸着抑制剤を用いた湿式または乾式の基板表面処理後に、HFを含有する後処理剤で基板表面を処理する後処理工程を実施する。
【0067】
例えば、図1cに示すように、乾式プロセスにより基板1表面上に蒸着抑制剤化合物の分子が吸着した状態で、基板1をHFを含む希釈溶液(10%HF溶液)に浸漬(浸漬時間:1秒)する後処理工程を行う。このような後処理工程前後の基板の表面のタイプによる接触角の変化を表1に表した。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から分かるように、蒸着抑制剤化合物を含む処理組成物による乾式の基板表面処理工程直後のシリコン酸化膜の誘電体層10の表面領域の接触角は94°程度であったが、HF含有後処理剤による後処理工程後にはシリコン酸化膜の誘電体層10の表面の接触角が19°程度まで減少した。これに比べ、タングステン(W)からなる金属層の表面の接触角は、後処理工程前に117°程度であったものが111°程度に減少するにとどまり、図1dに示したように、HFを用いた湿式の後処理工程により、シリコン酸化膜の誘電体層10の表面上に吸着されていた蒸着抑制剤化合物の分子が実質的に選択的に除去されたことが分かる。
【0070】
このように、HFを用いた湿式の後処理工程後、タングステンの金属層20の表面領域に比べてシリコン酸化膜の誘電体層10の表面上から蒸着抑制剤を選択的に除去することができたのは、シリコン酸化膜の誘電体層10上の蒸着抑制剤の吸着密度が相対的にタングステンの金属層20上の蒸着抑制剤の吸着密度に比べて小さく、HF含有後処理溶液40が基板表面にまで浸透しやすく、さらにシリコン酸化膜の誘電体層10がタングステンの金属層20に比べてHF含有後処理溶液によってエッチングされやすいたのであると推測される。ただし、本発明は、このような本発明の後処理工程の作用原理に限定されない。
【0071】
このようなHF含有後処理剤による蒸着抑制剤の選択的除去の程度は、HF含有後処理溶液の濃度および後処理工程の時間によって異なることがあり、本発明による基板処理方法において、後処理工程のHF含有後処理溶液の濃度は5%~15%であるが、8%~15%であってもよく、より具体的には10%前後または約10%であってもよい。
【0072】
例えば、図3に示すように、後処理工程の時間を1秒に維持したまま、後処理溶液の濃度を1%HFから20%HFに変化させながら、基板上の表面領域の組成による接触角の変化を測定した結果、シリコン酸化膜の表面の場合、後処理溶液の濃度が高くなるにつれて全体的に接触角が小さくなり(すなわち、後処理溶液のHF濃度が高くなるほどシリコン酸化膜の表面に吸着された蒸着抑制剤化合物の分子がより多く除去される)、5%HFより濃度が高くなると、接触角の傾きが大きくなり始め、8%HFより濃度が高くなると、接触角が急に小さくなる(つまり、シリコン酸化膜の表面に吸着した蒸着抑制剤化合物の分子がより多く除去される)。
【0073】
これに比べ、テンステン(W)のような金属層20の表面領域は、HF含有後処理溶液の濃度が高くなっても接触角の変化がシリコン酸化物の誘電体層10に比べて非常に小さいことが分かる。
【0074】
したがって、HF含有後処理溶液の濃度を5%または8%以上にすることで、基板上のシリコン酸化物の誘電体層10の表面領域と、タングステンの金属層20の表面領域との間の薄膜の蒸着選択度を大きく向上させることができる。これに比べ、HF含有後処理溶液の濃度を5%より小さくすれば、シリコン酸化膜の誘電体層の表面上に吸着された蒸着抑制剤の除去が十分ではないので、タングステンの金属層表面に対する蒸着選択度を十分に大きくすることができない。
【0075】
一方、HF含有後処理溶液の濃度が15%より高い場合には、接触角の減少(選択度の増加)がほとんど起きない反面、シリコン酸化膜の誘電体層のエッチング程度が必要以上に多くなり、半導体設計上のシリコン酸化膜の誘電体層の厚さが維持されないことがありうる。
【0076】
また、後処理工程に使われるHF含有希釈溶液の濃度は、後処理工程の時間に従って変えることができる。例えば、後処理工程の時間を長くすれば、同じ程度の蒸着抑制剤の除去に必要なHF含有希釈溶液の濃度を低くし、逆に後処理工程の時間を短くする場合、同じ程度の蒸着抑制剤の除去に必要なHF含有希釈溶液の濃度を高めることが好ましい。
【0077】
本実施例では、後処理工程の時間を1秒としたが、本発明はこれに限らず、後処理工程に使われるHF含有希釈溶液の濃度に応じて0.5秒~5秒の範囲内で調節してもよい。
【0078】
また、本実施例では、後処理工程をHF含有希釈溶液による湿式プロセスで行ったが、本発明はこれに限らず、HFを含有する後処理ガスを用いた乾式または気相後処理工程も可能である。
【0079】
HFを使用した後処理工程に続き、図1eに概略的に示したように、基板1を蒸着ガスに露出させることで金属層20に対して誘電体層10上に金属酸化物膜13を選択的に蒸着させる。金属酸化物膜13は、SiO2、HfO2、ZrO2、またはAl23を含むことができ、本実施例では金属酸化物膜13としてシリコン酸化膜を形成した。金属酸化物膜13は、例えば、ALDまたはプラズマ強化ALD(PEALD)によって蒸着されることができるが、ALDによる蒸着がより好ましい。
【0080】
例えば、金属酸化物膜13は、本発明のHF含有希釈液で後処理された基板1を、金属含有前駆体(SiO2の場合、モノシラン、ジシラン等の高次シラン、NPS(Neopentasilane)、3MS等のアルキルシラン、MCS、HDCS等のハロゲン化シラン、DIPAS、BEMAS、TSA等のアミノシランを使用することができ、その中でもアミノシランを使用することが好ましい)および酸化剤(例えば、H2O、H22、プラズマ励起O2またはO3)に交互に露出させることで、ALDにより堆積させることができる。
【0081】
蒸着抑制剤処理組成物による基板表面処理工程及びHF含有後処理剤による後処理工程を乾式プロセスで行う場合、これら処理工程と後処理工程を金属酸化物膜の蒸着工程、例えばALD工程にインテグレーションしてもよい。例えば、ALD反応チャンバ内をパージガスによりパージした後、第1のパルスにおいて、蒸着抑制剤化合物を含む処理組成物を導入して基板表面を乾式または気相処理し(例えば、基板表面上に蒸着抑制剤化合物の分子を吸着させ)、第2のパルスにおいて、HFを含有する気相後処理剤を導入して基板表面を後処理し、第3のパルスにおいて、シリコン含有前駆体を導入して基板の誘電体層10の表面領域上にシリコン含有前駆体を吸着させ、第4のパルスにおいて、酸素供給反応剤を供給してシリコン含有前駆体との反応によって基板上の誘電体層10の表面領域に選択的にシリコン酸化膜のような金属酸化物膜13を形成することができる。この際、各パルスの持続時間は、約1.5秒~3.0秒であることが好ましい。
【0082】
誘電体層10の表面領域上に所望の厚さの金属酸化物膜13が形成されれば、図1fに示すように、基板1の金属層20の表面領域から蒸着抑制剤の自己組織化単層30を除去する。このとき、自己組織化単層30の除去は、湿式プロセスまたは乾式プロセスによって行うことができる。湿式プロセスとしては、エタノールまたはイソプロピルアルコール超音波洗浄が使用できる。乾式プロセスにおいては、基板を約400℃~600℃に加熱したり、および/またはプラズマ処理により自己組織化単層30を除去することができる。プラズマ処理においては、プラズマソースによって励起された水素ガス(H2)に露出させたり、プラズマソースによって励起された酸素(O2)に露出させたり、または、これらの組み合わせにより、自己組織化単層30を基板1から除去することができる。
【0083】
このような選択的蒸着方法を通じて、図1fに示すように、選択的に蒸着された金属酸化物膜13は、金属層20の上に自己整列されたビア40を形成する。すなわち、本発明の一実施例によれば、リソグラフィ工程およびエッチング工程を使わず、自己整列されたビア40を形成することができる。
【0084】
本発明の実施例に関する前述の説明は、例示および説明の目的で提示されている。本発明を開示された正確な形態に制限したり包括しようとするものではない。この説明及び以下の請求範囲は、説明の目的のみに使用された用語を含み、これは制限的に解釈されない。当業者は前記の教示を考慮して様々な修正および変形が可能であることが分かる。当業者は図面に示した多様な構成要素に関する様々な等価の組合および代替物を認識することができる。したがって、本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ本明細書に添付された請求項によって制限されることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 基板
10 誘電体層(シリコン酸化膜層)
13 金属酸化物膜(シリコン酸化物膜)
20 金属層(タングステン層)
30 自己組織化単層
40 ビア
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2
図3