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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143800
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】抗インフルエンザウイルス剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20230928BHJP
   A61K 36/54 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/49 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/76 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/324 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20230928BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230928BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230928BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230928BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230928BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K36/54
A61K36/48
A61K36/49
A61K36/76
A61K36/73
A61K36/232
A61K36/324
A61K36/28
A61K36/752
A61K31/4166
A61P31/16
A61K9/12
A61K9/72
A61K9/20
A61K9/16
A61K8/9789
A61Q11/00
A61Q19/10
A61K8/49
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041584
(22)【出願日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2022050779
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保田 瑞菜
(72)【発明者】
【氏名】今井 美菜子
(72)【発明者】
【氏名】谷川 瑛二
(72)【発明者】
【氏名】浅野 年紀
(72)【発明者】
【氏名】森戸 由紀子
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD61
4B018ME09
4B018ME14
4B117LC04
4B117LG18
4C076AA24
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA49
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC35
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC681
4C083AC682
4C083CC23
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD16
4C083DD21
4C083EE05
4C083EE31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA14
4C086ZB33
4C088AB12
4C088AB26
4C088AB33
4C088AB41
4C088AB51
4C088AB59
4C088AC02
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC06
4C088AC13
4C088BA08
4C088CA03
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088MA13
4C088MA34
4C088MA35
4C088MA41
4C088MA52
4C088MA55
4C088MA57
4C088MA59
4C088NA14
4C088ZB33
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、新規な抗インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤、インフルエンザウイルスに対する予防剤または治療剤を提供することにある。
【解決手段】
抗ライノウイルス剤を見出すべく鋭意検討した結果、意外にも、ブドウ種子などの特定の成分が抗ライノウイルス活性を有しもつことを見出した。
すなわち、本発明は、月桂樹エキス、ネムノキ樹皮エキス、栗渋皮エキス 、月見草エキス、ヤナギ樹皮エキス、ターミナリアベレリカエキス、ビワエキス、シシウドエキス、ムラサキツメクサエキス、ベニノキエキス、フランキンセンスエキス、マリーゴールドエキス、バナバ葉エキス、チンピエキス、じゃばら果実末、アラントインからなる群から少なくとも1種を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤、である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
月桂樹エキス、ネムノキ樹皮エキス、栗渋皮エキス、月見草エキス、ヤナギ樹皮エキス、ターミナリアベレリカエキス、ビワエキス、シシウドエキス、ムラサキツメクサエキス、ベニノキエキス、フランキンセンスエキス、マリーゴールドエキス、バナバ葉エキス、チンピエキス、じゃばら果実末、アラントインからなる群から少なくとも1種を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤。
【請求項2】
請求項1に記載の抗インフルエンザウイルス剤を含有する、抗インフルエンザウイルス用である飲食品、医薬部外品、医薬品、衛生用品、または化粧品。
【請求項3】
請求項1に記載の抗インフルエンザウイルス剤を含有する、抗インフルエンザウイルス用である、口腔内又は鼻内適用剤。
【請求項4】
喉スプレー、鼻内スプレー、飴、チュアブル錠、顆粒剤、吸入器またはトローチである請求項3に記載の適用剤。
【請求項5】
請求項1に記載の抗インフルエンザウイルス剤を含有し、インフルエンザウイルス感染症の予防または改善のために用いられるものである旨の表示を付した飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは毎年多くの国民が罹患し悩まされるウイルス性の急性感染症である。インフルエンザはインフルエンザウイルスが上気道に感染して起こる感染症であり、発熱,悪寒,筋肉痛,全身倦怠感などの症状を呈す。風邪と混同されることもあるが、インフルエンザは風邪とは異なり、全身に及ぶ症状が急激に起こることである。さらに感染力が強いために周囲に急速に伝播する。インフルエンザ発症時には早期の対症療法が主体であるが、日常生活に症状は辛く、日常生活に支障をきたすことがあり、適切な予防が重要である。特に免疫力が低下した患者では肺炎などの合併症を引き起こすこともあり注意が必要である。
【0003】
現在のインフルエンザ予防法としては、インフルエンザワクチンが効果的であるが、インフルエンザウイルスは表面抗原のアミノ酸配列の一部を少しずつ変異させ、病原性の高いウイルスや薬物に耐性を持つウイルスが出現することもありワクチンも確実な予防手段とは言えない。
【0004】
そこで、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤、インフルエンザウイルス感染症に対する予防や治療に使用することができる素材が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】上仲 一義(2018),熊本保健科学大学研究誌,No.16,p1~9
【非特許文献2】伊賀瀬 道也(2018),薬理と治療,Vol.46,No.8,p1369~1373
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規な抗インフルエンザウイルス剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは新たな抗インフルエンザウイルス剤を見出すべく鋭意検討した結果、意外にも、月桂樹エキス、ネムノキ樹皮エキス、栗渋皮エキス、月見草エキス、ヤナギ樹皮エキス、ターミナリアベレリカエキス、ビワエキス、シシウドエキス、ムラサキツメクサエキス、ベニノキエキス、フランキンセンスエキス、マリーゴールドエキス、バナバ葉エキス、チンピエキス、じゃばら果実末、アラントインが、抗インフルエンザウイルス活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)月桂樹エキス、ネムノキ樹皮エキス、栗渋皮エキス、月見草エキス、ヤナギ樹皮エキス、ターミナリアベレリカエキス、ビワエキス、シシウドエキス、ムラサキツメクサエキス、ベニノキエキス、フランキンセンスエキス、マリーゴールドエキス、バナバ葉エキス、チンピエキス、じゃばら果実末、アラントインからなる群から少なくとも1種を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤、
(2)(1)に記載の抗インフルエンザウイルス剤を含有する、抗インフルエンザウイルス用である飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品、または化粧品、
(3)(1)に記載の抗インフルエンザウイルス剤を含有する、抗インフルエンザウイルス用である、口腔内または鼻内適用剤、
(4)喉スプレー、鼻内スプレー、飴、チュアブル錠、顆粒剤、吸入器、またはトローチである(3)に記載の適用剤、
(5)(1)記載の抗インフルエンザウイルス剤を含有し、インフルエンザウイルス感染症の予防または改善のために用いられるものである旨の表示を付した飲食品、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、抗インフルエンザウイルス作用を有する。本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、上気道関連疾患などのインフルエンザウイルス感染症の予防剤または治療剤として使用できる。また、本発明は、インフルエンザウイルス感染症の拡大阻止、感染者の症状軽減のために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いる月桂樹エキスはクスノキ科ゲッケイジュ属の葉に由来し、水またはエタノールなど食品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。
【0011】
本発明に用いるネムノキ樹皮エキスは、マメ科ネムノキ亜科ネムノキ属ネムノキの樹皮に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のネムノキ樹皮エキスを使用することもできる。
【0012】
本発明に用いる栗渋皮エキスは、ブナ科クリ属の果皮に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販の栗渋皮エキスを使用することもできる。
【0013】
本発明に用いる月見草エキスはアカバナ科マツヨイグサ属メマツヨイグサの種子に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販の月見草エキスを使用することもできる。
【0014】
本発明に用いるヤナギ樹皮エキスはヤナギ科ヤナギ属の樹皮に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のヤナギ樹皮エキスを使用することもできる。
【0015】
本発明に用いるターミナリアベレリカエキスはシクンシ科モモタマナ属の果実に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のターミナリアベレリカエキスを使用することもできる。
【0016】
本発明に用いるビワエキスはバラ科ビワ属の果実に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに市販のビワエキスを使用することもできる。
【0017】
本発明に用いるシシウドエキスはセリ科シシウド属の根茎に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のシシウドエキスを使用することもできる。
【0018】
本発明に用いるムラサキツメクサエキスは、マメ科シャジクソウ属の葉に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のムラサキツメクサエキスを使用することもできる。
【0019】
本発明に用いるベニノキエキスはベニノキ科ベニノキ属の種子に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のベニノキエキスを使用することもできる。
【0020】
本発明に用いるフランキンセンスエキスはカンラン科ボスウェリア属の樹木に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のフランキンセンスエキスを使用することもできる。
【0021】
本発明に用いるマリーゴールドエキスはキク科コウオウソウ属の花に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のマリーゴールドエキスを使用することもできる。
【0022】
本発明に用いるバナバ葉エキスはミソハギ科サルスベリ属の葉に由来し、水またはエタノールなど食品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。
【0023】
本発明に用いるチンピエキスはミカン科ミカン属ウンシュウミカンの果実に由来し、水またはエタノールなど飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品または化粧品原料の製造に使用可能な溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができる。また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥などの処理により、軟エキス、乾燥エキス末、エキス末なども使用することができる。さらに、市販のチンピエキスを使用することもできる。
【0024】
本発明に用いるじゃばら果実末は、ミカン科ミカン属じゃばらの果実に由来し、乾燥果実の形で使用される。本発明に用いる果実末としては、例えば乾燥刻み加工品を更に細かく粉砕した粉末状の乾燥品としてもよい。
【0025】
本発明の上記のエキス、果実末は、抗インフルエンザウイルス作用を有することから、抗インフルエンザウイルス剤として有用である。
【0026】
本発明に用いるアラントインは、分子量=158.121からなる物質である。アラントインは、抗インフルエンザウイルス作用を有することから、本発明の抗インフルエンザウイルス剤として有用である。
【0027】
本発明のエキス、果実末およびアラントインは、抗インフルエンザウイルス作用を有するので、インフルエンザウイルス感染症の予防剤または治療剤として使用できる。インフルエンザウイルス感染症とは、インフルエンザウイルスの感染によって引き起こされる全身症状、具体的には例えば、発熱、関節痛、咳、咽頭痛等である。
【0028】
本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、そのままあるいは他の成分と混合し、飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品、化粧品、または試薬として使用できる。
【0029】
本発明における上記エキス、果実末、及びアラントインの配合量は特に制限されるものではないが、化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品、衛生用品、または試薬で提供する場合、それぞれ組成物全体に対して0.000001~10質量%、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%である。
【0030】
本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品、化粧品、または試薬など、種々の態様で提供することが可能であり、かかる製品は抗インフルエンザウイルス用として好適である。剤形としては、例えば喉、鼻内、口腔内、手指、マスク、衣類、インテリア用品などへのスプレー剤、うがい薬、練り歯磨き、マウスウォッシュ、ハンドソープ、喉飴、チューインガム、咳止めドロップ、トローチの形態とすることが好ましい。インフルエンザウイルスは鼻や喉などの上気道から感染しやすいため、特に喉、鼻内、または口腔への適用剤が好ましい。
【0031】
本発明において、抗インフルエンザウイルス用とは、インフルエンザウイルス感染症の治療またはインフルエンザウイルス感染症の症状軽減または改善、インフルエンザウイルスの感染予防、インフルエンザウイルスの不活化なども含まれる。また、抗インフルエンザウイルス用であることは、製品名、製品の本体、容器または包装への表示、あるいは商品に関するポスターやテレビCM、インターネットを含む宣伝のために用いられる広告、店頭POP、説明会などでの説明などにより判断することができる。また、本発明の抗インフルエンザウイルス剤、抗インフルエンザウイルス剤を含む飲食品、医薬品、医薬部外品、衛生用品、化粧品、およびこれらの説明書は、抗インフルエンザウイルス用、インフルエンザウイルスの不活化のために用いられる旨の表示、インフルエンザウイルスによる感染予防のために用いられる旨の表示を付したものであり得る。
【0032】
投与形態としては、特に限定されるものではないが、飲食品が好ましい。飲食品として使用する場合の剤形としては、カプセル剤、散剤、タブレット剤、飴剤、シロップ剤、顆粒剤、吸入器等が挙げられる。これらは、公知の方法で製造することができる。製造に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、飲食品に含有可能な種々の添加物を配合することができる。
【実施例0033】
以下に、実施例および試験例を記載し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【0034】
抗ウイルス作用を評価する試験方法は、ウイルスを直接不活化するかを評価する不活化試験やウイルスが細胞内で増殖することを抑制するかを評価する増殖抑制試験等がある。本試験では、より広い抗ウイルススペクトルを獲得するため、不活化試験と増殖抑制試験を組み合わせた試験系を用いて抗ウイルス作用を評価した(試験例1の抗ウイルス作用試験)。本試験系から得られた抗ウイルス素材については、不活化作用、増殖抑制作用またはそのどちらもの作用を有することが示唆される。
【0035】
(試験品の調製)
使用した試験品を以下に示す。
月桂樹エキス:商品名「ローレッシュ」(常磐植物化学研究所製)。主指標成分としてデアセチルラウレノビオリドを1.0%以上含有する。
ネムノキ樹皮エキス:ネムノキの樹皮を水分量が10%以下になるように抽出し、得られたエキス。
栗渋皮エキス:栗の渋皮の抽出エキス。主指標成分として総ポリフェノールを20%以上含有する。
月見草エキス:月見草の種子の含水エタノール抽出エキス。主指標成分として没食子酸骨格を有するポリフェノール類を60%以上含有する。
ヤナギ樹皮エキス:ヤナギの樹皮または枝の含水エタノール抽出エキス。主指標成分としてサリシンを15%以上含有する。
ターミナリアベレリカエキス:ターミナリアベレリカ果実の抽出エキス。主指標成分としてポリフェノールを35%以上含有する。
ビワエキス:ビワの葉のエタノール抽出エキス。
シシウドエキス:シシウドの根茎の水抽出エキス。主指標成分としてオストール0.07%以上含有する。
ベニノキエキス:ベニノキの葉の含水エタノール抽出エキス。
フランキンセンスエキス:フランキンセンスの抽出エキス。主指標成分としてボスウェリック酸を60%含有する。
マリーゴールドエキス:マリーゴールドの花の抽出エキス。主指標成分としてルテインが20.0%以上含有する。
バナバ葉エキス:商品名「コロソリン酸-18%」(常磐植物化学研究所製)。主指標成分としてコロソリン酸を18%以上含有する。
チンピエキス:ウンシュウミカンの果皮の水抽出エキス。
じゃばら果実末:主指標成分としてナリルチンを含有する。
アラントイン:パームケア・アジア社製。
【0036】
上記試験品を蒸留水またはDMSOで100mg/mLとなるように溶解し、蒸留水で20倍希釈し細胞毒性試験の原液とした。この液を蒸留水で2倍段階希釈して試験用試料とした。
【0037】
(細胞毒性確認試験)
ウイルス感染用細胞であるMDCK細胞をあらかじめ96ウエルプレートに播種して37℃のCOインキュベータで1日間培養した。培養後、上清を除き細胞維持培地(0.42%BSA加EMEM)0.1mLに交換した。細胞毒性確認用試料の原液および2倍段階希釈した試験試料を加え、COインキュベータで培養した。培養後、5%クリスタルバイオレット加メタノールを1ウエル当たり0.1mL加え、室温で15分間静置して細胞を染色した。染色後、水道水で各ウエルを洗浄して風乾後、エタノールを各ウエルに0.05mL加え、クリスタルバイオレットを溶出した後、マイクロプレートリーダーで700nmを参照波長として585nmの吸光度を測定した。試験は、n=3(ウエル)で実施し、PBSの生細胞率を100%として各試験品を添加して培養した細胞の生細胞率を算出した。
試験品の細胞毒性は、以下の式(1)により求めた生細胞率を基準値とし、基準値以上を細胞毒性なしと判定した。
式(1)基準値=100-(PBSの生細胞率の標準偏差×2)
【0038】
試験例1:抗ウイルス作用試験
(ウイルス液の調製)
ウイルスを発育鶏卵の漿尿膜腔に接種し、ふ卵器で培養後、漿尿液を採取し、ホローファイバーカートリッジで濃縮したウイルスを保存ウイルス液として-80℃に保存した。試験では、PBSおよびEMEMで希釈して用いた。
(プラーク形成抑制試験)
細胞毒性確認試験の結果を基に、ウイルス感染細胞に毒性を示さなかった最高濃度の110倍の濃度になるよう試験品を溶解した後、蒸留水で5倍に希釈した液を調製した。
試験品1.0mLに1.0×104PFU/mLとなるよう調製したウイルス液0.1mLを加え試験管ミキサーで攪拌した後、25℃の恒温槽内で1時間静置した。1時間作用後、EMEMで20倍に希釈し、プラーク形成抑制試験試料とした。なお、陽性対照として、Oseltamivirを用いた。陰性対照として、各種溶媒(水、DMSO)をプラーク形成抑制試験試料と同濃度になるように作製し用いた。MDCK細胞をあらかじめ6ウエルプレートに播種して37℃のCOインキュベータで1~4日間培養した。ウイルスを接種する前に、培養上清を除き新しい細胞維持培地(0.42%BSA加EMEM)に交換した。次いで、プラーク形成抑制試験試料0.2mLを各ウエルに接種し、37℃で1時間細胞に感染させた。ウイルス感染後、プラーク形成用培地(アガロースを含む)を1ウエルあたり3mL加えた。アガロースを固化させた後、COインキュベータで培養した。培養後、各ウエルに4%ホルマリン加PBS2mL(ホルマリン/PBS)を加え室温で1時間静置した。1時間後、各ウェルのホルマリン/PBSおよびアガロースを除去し、1%クリスタルバイオレット、5%メタノール加PBS1mLを添加して室温で10分程度間静置し、細胞を染色した。水道水で洗浄後、風乾してウイルスの増殖により形成されたプラーク数を計測した。
(判定)
プラーク形成抑制活性は、試験品の各溶媒(水、DMSO)のプラーク数の平均値(A)および各試験品を添加した際に形成されたプラーク数(B)から、抑制率を算出した。式(2)を以下に示す。なお、プラーク形成数が0の試験品は便宜的にプラーク形成抑制率100%として表記した。本試験においては、プラーク形成抑制率が50%以上の試験品を抗インフルエンザウイルス作用ありと判定した。
式(2)プラーク形成抑制率(%)=(1-(A÷B))×100
結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から、月桂樹エキス、ネムノキ樹皮エキス、栗渋皮エキス 、月見草エキス、ヤナギ樹皮エキス、ターミナリアベレリカエキス、ビワエキス、シシウドエキス、ムラサキツメクサエキス、ベニノキエキス、フランキンセンスエキス、マリーゴールドエキス、バナバ葉エキス、チンピエキス、じゃばら果実末、アラントインは抗インフルエンザウイルス作用を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤は、飲食品、医薬部外品、医薬品、衛生用品の分野に利用可能である。さらに、本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、本発明の素材スクリーニング等を行うに際し、陽性対照薬として用いることができる。