(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143809
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】電動自転車のモータにより提供されるモータ補助を制御する方法および装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20230928BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20230928BHJP
【FI】
B60L15/20 Z
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023042705
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】10 2022 202 975.5
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】マネバルト,メルリン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】レック,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ワインマン,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】エベルレ,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】レイシゲ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バウムガートナー,ダニエル
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA18
5H125AB03
5H125BA00
5H125CA01
5H125EE09
5H125EE41
5H125EE52
5H125EE53
5H125EE62
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、電動自転車のモータにより提供されるモータ補助を制御する方法に関するものである。
【解決手段】制御係数が定義された時間インターバルにわたって変化する程度を定義する制御係数の可変変化率を算出し、現在速度が目標速度より大きい場合に制御係数がデクリメントされ、現在速度が目標速度より小さい場合に制御係数がインクリメントされるように算出された制御係数の変化率にもとづいて、現在存在する制御係数を適合させ、モータの制御のために算出されたモータ補助に、計算された制御係数を付加することで、より大きい制御係数が、比較的小さい制御係数よりも大きいモータ補助をもたらすように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・制御係数が定義された時間インターバルにわたって変化する程度を定義する制御係数の可変変化率を算出すること(101)であって、現在速度が目標速度より大きい場合に前記制御係数がデクリメントされ、前記現在速度が前記目標速度より小さい場合に前記制御係数がインクリメントされるように前記変化率が選択される、算出することと、
・前記制御係数の前記算出された変化率にもとづいて、現在存在する制御係数を適合させること(102)と、
・モータ(3)の制御のために算出されたモータ補助に、計算された制御係数を付加すること(103)であって、より大きい制御係数が、比較的小さい制御係数よりも大きいモータ補助をもたらす、付加することと、を包含する電動自転車(1)の前記モータ(3)により提供されるモータ補助を制御する方法(100)。
【請求項2】
前記変化率は、前記現在速度および現在加速度にもとづいて算出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変化率は、さらに、他の測定量、特に勾配、最大モータトルク、乗手トルク、および/または地面認識によって認識される前記自転車(1)の地面にもとづいて算出されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
・前記変化率は、現在速度が等加速度で増加する場合に、前記制御係数のより速いデクリメントをもたらし、
・前記変化率は、現在加速度が等速度で増加する場合に、前記制御係数のより速いデクリメントをもたらすことを特徴とする、請求項2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
・前記変化率が現在速度と最高速度との差に比例する、あるいは
・前記変化率が現在加速度に比例し、かつ現在速度と最高速度との逆数差に比例することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記変化率の可能な値が予め定義されたインターバルに制限され、ならびに/あるいは前記制御係数が「0」の最小値、および「1」の最大値に制限されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記制御係数が、最大許容モータトルクと乗手により要求されるトルクのうちのそれぞれ小さいほうに適用され、特にこれに乗算されて、前記モータによって提供されるべき要求トルクが算出されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記変化率は、予め定義された速度インターバル内で、目標速度に向けて現在速度が変化する場合に、前記速度インターバルを上回るおよび/または下回る速度の場合ほど大きく変化しないことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
・最大速度を超えることが許される最大時間長が定義され、
・前記変化率は、前記現在速度が前記最大時間長内に前記最大速度未満に低下するように、または前記モータ補助がゼロに低下するように前記制御係数がデクリメントされるよう選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
電動自転車(1)のモータ(3)により提供されるモータ補助を制御するための装置であって、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法を実行するように設定された制御ユニット(2)を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車のモータにより提供されるモータ補助を制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動自転車では、速度に関して制御(abregeln)できることが必要である。したがって、そのような電動自転車は、例えば最大補助速度の点で制御される必要がある。EUにおいて、例えば、ペデレックは許容誤差なしで25km/hに、Sペデレックは45km/hに制御されることが必要である。製品差別化のために異なった最大補助速度への制御が所望されることも多く、比較的低価格の駆動装置は、例えば高価格の駆動装置より低い速度に制御される。
【0003】
典型的には、最大補助速度の制御のために、最大許容モータ補助、例えばモータトルク、モータの出力、および/または補助比率が速度の増加とともに低減される。その場合、例えば20km/h~25km/hの速度インターバル(Geschwindigkeitsintervall)において、自転車のモータによって最大限利用可能にされるトルクが全トルクから0のトルクに低減される。最も単純な場合、簡単な線形補間がそのために使用される。
【0004】
制御での難しさは、これが乗手に可能な限り快適で、かつ知覚できないように行われるべきであるということである。そのため、制御のために幅広いランプ(Rampe)、したがって広い速度インターバルが有利である。その際、モータ補助の速い変動が乗手の足に邪魔になると感じられる可能性があるということにも注意を払わなければならない。しかし逆に、最大許容最終速度に近くてもモータによる補助を引き続き行うことも望ましい。したがって、制御のために幅狭いランプ、したがって小さい速度インターバルも有利である。
【発明の概要】
【0005】
本発明による電動自転車のモータにより提供されるモータ補助を制御する方法は、制御係数(Abregelfaktor)が定義された時間インターバルにわたって変化する程度を定義する制御係数の可変変化率を算出することであって、現在速度が目標速度より大きい場合に制御係数がデクリメントされ、現在速度が目標速度より小さい場合に制御係数がインクリメントされるように変化率が選択される、算出することと、制御係数の算出された変化率にもとづいて、現在存在する制御係数を適合させることと、モータの制御のために算出されたモータ補助に、計算された制御係数を付加することであって、より大きい制御係数が、比較的小さい制御係数よりも大きいモータ補助をもたらす、付加することと、を包含する。
【0006】
制御係数は、最初に算出されるモータ補助がどれだけ大きく制限されるべきかを決定する。その場合、モータの制御のために算出されるモータ補助は、特に補助係数、モータの制御のために算出されるモータ出力、および/またはモータの制御のために算出されるモータトルクによって表される。したがって特に、最初に補助係数、所望のモータ出力および/または所望のモータトルクが、例えば提供される乗手トルク、すなわち電動自転車の乗手がペダルに加えるトルクにもとづいて算出される。これらの所望の値は、制御係数に従い低減される。
【0007】
制御係数の可変変化率は、制御係数がその時間的推移でどのように変化するのかを表す。制御係数が、例えば時間の経過に対して示される場合、変化率はこの曲線の勾配を表す。
【0008】
変化率は、現在速度が目標速度より大きい場合に制御係数がデクリメントされ、現在速度が目標速度より小さい場合に制御係数がインクリメントされるように選択される。現在速度が目標速度に等しい場合、変化率はゼロであり、したがって制御係数は一定である。その場合、より大きい制御係数が、比較的小さい制御係数よりも小さいモータ補助の制限を表す。制御係数がゼロに等しい場合、モータ補助は、完全に阻止される。したがって、モータ補助は、現在速度を目標速度に調節しようとし、eバイクが目標速度より速く走行する場合にモータ補助が低減され、これがよりゆっくりと走行する場合にモータ補助が可能な限り増加される。
【0009】
目標速度は、モータ補助による動作時に電動自転車が制限されるべき速度である。これは、換言すると、目標速度を上回る場合、モータによるモータ補助が少なくとも長期的に提供されるべきでないということを意味する。しかし制限は、目標速度を短期的に超えることができないということを意味するのではない。本発明によれば制御係数の変化率が変更される、すなわちインクリメントまたはデクリメントされるので、現在速度が目標速度より大きい場合でもモータ補助が提供されるということが起こり得る。目標速度は様々に選択することができる。したがって、目標速度は、例えば最大補助速度、またはごく短期的ではあっても最大補助速度を超えることが許されない場合には最大補助速度より小さい速度である。
【0010】
目標速度(例えば25km/h)に最高速度(例えば27.5km/h、したがって目標速度より高い)が設定された場合、変化率は、最高速度の超過以降は制御係数がゼロになるように選択されることが好ましい。そのために、特に目標速度と最高速度との間の速度のときに、加速度と現在速度にもとづいて最高速度に達するまでの時間を予測でき、したがって変化率を設定でき、それによりモータ補助が可能な限り調和的に終わる。
【0011】
制御係数の算出された変化率にもとづいて、現在存在する制御係数の適合が行われる。その場合、制御係数の変化率は、目標速度を超える場合にモータ補助が時間とともに減少し、目標速度未満の場合に時間とともに増加するように算出されることが好ましい。現在存在する制御係数はそれに応じて変更される。したがって、変化率は、時間インターバルに対する制御係数の変化を定義する。この変化は、現在存在する制御係数に算入される。
【0012】
制御係数は、特に、補助係数、算出されたモータ出力および/または算出されたモータトルクに乗算される値であり、これ、またはこれらに制御係数が付加される。
【0013】
したがって、制御コンフォート(Abregelkomfort)が少なくとも維持される場合に、より高い最終速度が達成されることが可能になる。同時に、方法はさらなる最適化も可能にし、特に、モータ補助を算出する様々な方法を本発明による方法と組み合わせることもできる。したがって例えば、モータ補助が行われるべき大きさ、およびモータ補助が本発明による方法にもとづいて制御される大きさが任意の方法によって算出される。
【0014】
変化率は、予定速度または目標速度が可能な限り調節制御される(einregeln)ように設定されることが好ましい。これに加えて、変化率は、モータ出力があまりに突然に増加または減少することが決してない、ならびに/あるいは加速度があまりに突然に変化することが決してないように設定されることが好ましい。任意的に、変化率は、最大許容速度の達成が予想される(projizieren)場合に、モータ出力が0になるように設定される。さらに任意的に、最大許容速度を超えた場合にモータ出力を低下させる期間が定義されることにより、法的に許容される最大許容速度を超える一時的な通り越し(Ueberschwinger)を反映させることができる。
【0015】
従属請求項は、本発明の好ましい発展形態を示す。
【0016】
変化率は、現在速度と現在加速度にもとづいて算出されることが好ましい。その場合、現在速度および現在加速度は、特に自転車のセンサ系により検知される。存在する加速度が、目標速度の大きいオーバーシュート(Ueberschiessen)につながる可能性があることを示す場合、特に相応の変化率によって制御係数の速い低下が引き起こされる。それにより最大補助速度が目標速度よりはるかに高くなることが回避される。
【0017】
その場合、変化率が、さらに他の測定量、特に勾配、最大モータトルク、乗手トルクおよび/または地面認識によって認識される自転車の地面にもとづいて算出される場合が有利である。したがって例えば勾配での制御は、発車時(例えば、はずみがつく)よりも緩やかに行うことができる。これに代えて、またはこれに加えて、未舗装道(Trail)での制御は、起伏のある地面上の乗手を最大限に補助するために、比較的急激に(ruppiger)に行うことができる。
【0018】
さらに、変化率が、現在速度が等加速度で増加する場合に、制御係数のより速いデクリメントをもたらし、変化率が、現在加速度が等速度で増加する場合に、制御係数のより速いデクリメントをもたらす場合に有利である。特に、変化率が目標速度および/または最高速度に近づいた場合に、制御係数のより速いデクリメントをもたらすことが有利である。それにより、特に高い速度、および特に高い現在加速度の場合に特に高い変化率が特に選択されることが達成され、それによって特に速い反応の制御が行われる。
【0019】
変化率が現在速度と目標速度との差に比例する場合も有利である。それにより目標速度を調節制御する簡単な方法が提供される。
【0020】
これに加えて、変化率が現在加速度に比例し、現在速度と最高速度との逆数差に比例する場合が有利である。それにより最高速度の場合に完全に制御する簡単な方法が提供される。
【0021】
変化率が、現在速度と最高速度との差で除算される現在加速度以下である場合も有利である。このようにして、現在加速度と現在速度に依存した変化率を簡単に数学的に迅速に算出できる。その場合、変化率は、現在速度と加速度から予想される、目標速度を超える最大補助速度の超過の時点に制御係数が常に十分に小さくなるように選択される。
【0022】
変化率の可能な値が、予め定義されたインターバル、例えば[-10/s..10/s]に制限される場合も有利である。それによって、モータ補助の過度に唐突な開始と終了が回避される。それにより、例えば、速度が速く低下する場合にモータが過度に速く再び始動することを回避できる。したがって例えば、跳躍中、車輪と、それに伴い自転車のモータが惰性回転する(frei drehen)ことができ、そのことにより検出される速度が高くなる。このことは、非常に高い変化率をもたらし、その結果、制御係数が非常に低くなり、これと結びついた制御は、変化率が制限されない場合、かなり急激に行われる。着地時に、モータ補助が最初に制御されるとしても、車輪が急激に制動され、そこから算出された速度にもとづいて、正となった変化率がモータ補助を相応に突然再び開始させるであろう。しかし変化率が予め定義されたインターバルに制限される場合には、これは回避される。したがって、モータの緩やかな始動が達成される。
【0023】
制御係数が最大許容モータトルクと乗手により要求されるトルクのうちのそれぞれ小さいほうに適用され、特にこれに乗算され、それによりモータにより提供されるべき要求トルクが算出される場合も有利である。したがって、要求されるモータトルクが最初に制限され、次いで制御係数が適用される。したがって、制御係数は、制限を表すだけでなく、要求トルクに適用される。それにより、モータ補助を提供するときの移行が緩やかであることが確保される。
【0024】
さらに、制御係数が0の最小値、および1の最大値に制限される場合が有利である。制御係数がそのように定義されることによって、制御係数を簡単な乗算で、算出された補助パラメータに適用することができる。したがって例えば、補助係数、算出されるモータ出力、または算出されるモータトルクを簡単に制御係数に乗算することができ、これらに制御係数が付加される。
【0025】
変化率は、予め定義された速度インターバル内で、目標速度に向けて現在速度が変化する場合に、速度インターバルを上回るおよび/または下回る速度の場合ほど大きく変化しない場合も有利である。それにより、提供されるモータ補助が目標速度に向けて緩やかに調節される(einschwingen)ことが達成される。
【0026】
最大速度を超えることが許される最大時間長が定義され、変化率が、現在速度が最大時間長内に最大速度未満に低下するように、またはモータ補助がゼロに低下するように制御係数がデクリメントされるよう選択される場合も有利である。したがって変化率は、特に最大時間長の終わりに近づくに従い、制御係数がより速くデクリメントされるように変化する。それによって、特に法的規制を確実に遵守することを確保できる。乗手自身が十分な強さで踏み、最高速度を超える場合、モータ補助は、特にゼロに低下する。
【0027】
電動自転車のモータにより提供されるモータ補助を制御するための装置は、本発明による方法を実行するように設定された制御ユニットを備える。装置は、方法のすべての利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】電動自転車のモータにより提供される補助を制御する方法のフローチャートである。
【
図2】本発明による方法が実行される装置を備える電動自転車の模式図である。
【
図3】可変変化率と現在速度と現在加速度との関係を示す図である。
【
図4】可変変化率と現在速度との有利な関係を示す図である。
【
図5】モータの制御のために算出されるモータトルクの印加を例示的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【0030】
図1は、電動自転車1のモータにより提供されるモータ補助を制御する本発明による方法100のフローチャートを示す。
図2において、モータ3と制御ユニット2を備える関連する自転車1が示される。電動自転車1の制御ユニット2によって方法100が実行され、それに対応してモータ3が制御される。
【0031】
方法は、第1のステップ101と、第2のステップ102と、第3のステップ103を包含する。方法100の開始後、最初に第1のステップ101が実行される。
【0032】
第1のステップ101において、制御係数が時間的な時間インターバル(zeitlisches Zeitintervall)にわたって変化する程度を定義する制御係数の可変変化率の算出が行われる。この場合、制御係数は0~1の値の範囲の係数であり、したがって最小値が0であり、最大値が1である。
【0033】
制御係数は、モータ補助を制限する度合いを表す係数である。したがって、制御係数は、例えば算出される補助係数、モータの制御のために算出されるモータ出力、および/またはモータの制御のために算出されるトルクに乗算され、それによりこれらの値が制限され、したがって提供される自転車のモータ補助が制限される。補助係数は、自転車1の乗手により提供される乗手トルクに依存して供給されるべきモータトルクを表す係数である。補助係数を制御係数に乗算した場合、結果として生じる補助係数が減少し、モータ補助も減少する。同じように、モータの制御のために算出されるモータ出力を制御係数に乗算することができ、またはモータの制御のために算出されるトルクを制御係数に乗算してこれを低減することができる。制御係数が値1をとることができることに言及しておく。この場合、モータ補助の制限は行われない。制御係数は値0をとることもでき、それによりモータ補助が完全に阻止される。
【0034】
制御係数の可変変化率が算出される。変化率は、連続的に算出し直されるため可変である。したがって、ここに記載される方法はループにおいて実行されるのが好ましい。可変変化率は、定義された時間インターバルにわたって制御係数が変化する程度を定義する。変化率が高い場合、制御係数は、変化率が比較的低い場合よりも時間の経過にわたって速く変化する。
【0035】
変化率は、現在速度が目標速度より大きい場合に、制御係数がデクリメントされるように、かつ現在速度が目標速度より小さい場合に、制御係数がインクリメントされるように選択される。したがって、変化率は現在速度と目標速度に依存する。その場合、現在速度は、自転車1の速度センサ系によって検出される速度である。目標速度は、制御過程の完了後に自転車1が移動すべき速度である。目標速度は適用可能な値である。変化率が正の値である場合、制御係数はその時間推移で大きくなり、すなわちインクリメントされる。変化率が負の値である場合、制御係数は、その時間推移で小さくなり、すなわちデクリメントされる。
【0036】
現在速度が目標速度を上回る時間が長いほど、制御係数がさらにデクリメントされる。制御係数が低下すると同時にモータ補助が減少し、それによって現在速度が低下するか、または最終的な措置において、モータ補助が全く無くなっても提供されなければならない自転車1の乗手によって加えられなければならない力が増加する。現在速度が目標速度を下回る場合、変化率は、制御係数がインクリメントされるように選択され、そのことによって最終的に制御係数が値1になり、それに伴い提供されるモータ補助が制御係数で低減されない。したがって、目標速度を下回ると、短時間の後、完全なモータ補助が提供される。同時に、目標速度を上回ると、変化率および制御係数に従ってモータ補助が減少する。しかし、本発明によれば、変化率のみが算出され、これにもとづいて制御係数が算出されるということに言及しておく。これは、モータ補助がオーバーシュートすることにもつながり得る。したがって、例えば目標速度を上回り、同時にモータ補助が提供されないということが必ずしも確実には起こらない。しかし、そのような時点に、モータ補助が減少する方向に制御係数が連続的に変化するように変化率が選択されることが確保される。
【0037】
例示的な実施形態において、速度に依存して可変変化率の算出が行われる。したがって例えば次式にもとづいて変化率を算出でき、dfaは変化率である。
【0038】
【0039】
ここで、vは現在速度であり、目標速度は例示的に25km/hに選択され、制御過程が、20km/h~25km/hの速度インターバルで実行される。その場合、20km/hの値は、制御過程が始まる速度を表す例示的な値を表し、5km/hの値は、例示的に制御過程が行われる速度インターバルを表す。したがってこの場合、制御は、例えば20km/hの速度で始まり、25km/hの速度で完了する。したがって、25km/hという速度は、変化率が0に等しい目標速度である。
【0040】
現在速度と目標速度にもとづいて変化率を算出することに代えて、変化率は、任意的に、さらに現在加速度にもとづいて算出される。したがって変化率は、例えば次式にもとづいて算出される。
【0041】
【0042】
ここで、aは現在加速度であり、vは現在速度であり、vmaxは目標速度である。上記の式によれば、変化率は、現在速度と目標速度の差で除算される現在加速度以下である。
【0043】
その際、いかなる場合も、現在速度が等加速度で上昇するときの変化率によって制御係数がより速くデクリメントされ、現在加速度が等速度で上昇するときの変化率によって、制御係数がより速くデクリメントされるということが目指される。それにより、変化率と、2つの異なったパラメータ、ここでは現在速度および現在加速度との間に関係が成り立つ。これは、例えば変化率の例示的特性マップを示す
図3に示される。この場合、第1の軸に沿って、変化率df
aが-8~+2の値の範囲で示される。これらの値は、制御係数が1sでどれだけ変化するのかを示す。変化率が正の場合、制御係数はインクリメントされる。変化率が負の場合、制御係数はデクリメントされる。第2の軸上には加速度aが示される。この場合、-1~2の値の範囲が示される。その場合、正の値は正の加速度に相当し、負の値は負の加速度、すなわち減速度に相当する。第3の軸上には、目標速度からの現在速度の偏差Δvが示される。したがって、第3の軸上に記載される値は、現在速度から目標速度を引いて求められる。速度差、したがって偏差Δvが0未満の場合、現在速度は目標速度を下回る。速度差、したがって偏差Δvが0より大きい場合、現在速度は目標速度を上回る。
【0044】
現在速度と加速度に依存する変化率を読み取ることができる面が形成されることがわかる。したがって例えば、目標速度を上回る特に高い速度および加速度では、変化率に特に高い値が選択されることを認識できる。すなわち、その場合、変化率は、比較的高い値で負に選択され、そのことにより制御係数は(高い値であるため)速く、(負の符号であるため)デクリメントされて値0になる。すなわち、モータ補助は、特に速く減少する。現在速度が目標速度に等しい場合、すなわち偏差Δvが0に等しい場合、および現在加速度aが0に等しい場合、変化率は0の値に選択され、現在存在する制御係数がそのまま維持される。
【0045】
すなわち、制御のための目標速度は、例えば25km/hに定義される。これに加えて、補助が一時的にのみ許されることにより、目標速度を超える速度範囲が定義されることが好ましい。つまり、モータ補助は、定義された時間内に終了しなければならない。25km/hを下回る場合、補助が再び増加する。これに加えて、目標速度の超過を予想する、もしくは不可能にするために加速度が考慮される。
【0046】
図3において、変化率を現在速度に依存してどのように選択できるのかが例示的に示される。
図4は、加速度が0に選択された
図3に示される面の断面として示すか、または代替的に、現在加速度に依存しない変化率の算出を示す。
図4において、y軸に沿って変化率df
aが-2~+2の値の範囲で示される。これらの値は、制御係数が1sでどれだけ変化するのかを示す。x軸上には、目標速度からの現在速度の偏差Δvが示される。
【0047】
その場合、
図4から、変化率は、速度に依存して、目標速度に向けて定義された速度インターバル10を下回る場合、速度インターバル10内の場合よりも速く変化することがわかる。同じように、変化率は、速度に依存し、定義された速度インターバル10を上回る場合、速度インターバル10内の場合よりも速く変化する。これは、現在速度が目標速度からさらに逸脱する場合に、システムが速度変化に対してより敏感に反応することを意味する。このようにして、変化率がごくわずかに変更されることにより、目標速度の近くで目標速度への緩やかな調節制御が行われることを達成できる。しかし目標速度からさらに逸脱すると、例えば最高速度を長期間上回るか、または最低速度を長期間下回ることを回避するために、システムの速い反応を達成することができる。速度インターバル10の限界は、好ましくは最低速度と最高速度によって定義される。
【0048】
任意的に、変化率は予め定義されたインターバルに制限される。これは、変化率に対して最小値と最大値が定義され、変化率がこのインターバルの範囲外になり得ないことを意味する。したがって、
図3によれば、変化率を、例えば-8~2のインターバルに制限することができる。計算による変化率df
aの制限は、次のようになり得る。
【0049】
【0050】
変化率のそのような制限によって、速度が速く低下した場合に、モータ3が過度に速く再び始動することを回避できる。したがって例えば、自転車1の車輪が、跳躍中に惰性回転し、それにより高い現在速度が検出されるということが起こる。しかしこの速度は、車輪の惰性回転によって達成されるにすぎないため、理論的には高すぎる。提供されるモータ補助が即座に完全に制御されることを回避するために、変化率を制限することが有利である。したがって、モータ補助は、跳躍中に経過する時間内にわずかに低減されるが、これが自転車1の急激な制動につながるほどには低減されない。したがって、跳躍後の着地のモータ3の緩やかな始動を達成することができる。
【0051】
第2の方法ステップ102において、制御係数の算出された変化率にもとづいて現在存在する制御係数の適合が行われる。そのために、例えば、制御係数の最後の設定以降の時間インターバルが算出され、この時間インターバル内に制御係数がどれだけ変化したのかが、算出された変化率にもとづいて算出される。そのために、変化率が、例えば時間インターバルに乗算され、算出された値が現在制御係数に加算される。したがって、制御係数が新たに設定される。これは数学的表現では、以下のようになり得る。
【0052】
【0053】
ここで、関数fa(t)は制御係数の時間の経過を示し、dfaは変化率を示し、dtは制御係数の最後の設定以降の時間インターバルを示す。その場合、制御係数は、これが0より小さくならず、かつ1より大きくならないように選択される。
【0054】
第3のステップ103において、モータ3の制御のために算出される補助係数、モータ3の制御のために算出されたモータ出力、および/またはモータ3の制御のために算出されたモータトルクに、第2のステップ102からの計算された制御係数が付加される。このために、上述の値が制御係数に乗算される。そのようにして計算された値は、モータ補助を制御するための目標値として提供され、モータ3によって乗手のために提供される。
【0055】
特に、法的規制を満たさなければならない場合、最大速度を超えることが許される最大時間長が定義されれば有利である。この場合、変化率は、現在速度が最大時間内に最大速度を下回るように制御係数がインクリメントされるよう選択される。したがって例えば、速度を最大速度に低下させなければならない残り時間インターバルを連続的に算出することができる。時間インターバルの持続時間が低下するにしたがって、制御係数は、例えば、より速くデクリメントされ、すなわち変化率が大きくなる。
【0056】
モータ補助と加速度との関係が既知であるか、またはこの関係を推定できる場合、これを有利に利用することができる。例えば、動作状態において、限界速度から可能な限り調和的に0に達するように加速度が適合されることが制御の目標であり得る。例えば、自転車1は、15km/hを出発点として一定の加速をする。20km/hの速度から、介入する、およびシステム性能を適合させる制御を決定でき、それにより算出された加速度が均一に低減され、それにより加速度は25km/hの最高速度で可能な限り0になる。この場合、そのために必要な制御変化は、この関係を知ることにより算定される。その場合、所望の加速度変化から(動作点に依存して)モータ補助の必要な変化、したがって関連する制御係数の変化が求められる。
【0057】
図5は、従来技術との違いを明確にするための本発明による方法100のフローチャートを示す。従来の方法が例として
図5の上に示される。これまでは、制御係数20が選択され、乗算ステップ22において最大許容モータトルク21に乗算されることが一般的であった。その結果生じるモータトルク23が、比較ステップ25において、乗手によって要求されるモータトルク24と比較され、これらの2つの値26のうちのそれぞれ小さいほうがモータ3の制御のために提供され、速度制御による要求モータトルクが表される。
【0058】
図5の下に本発明の原理が再び示される。したがって、最初に比較ステップ33において、最大許容モータトルク31が乗手により要求されるモータトルク30と比較され、これらの両方のトルクのうちの小さいほうが選択される。これが乗算ステップ34において制御係数32に乗算され、結果として生じるモータトルク35が、速度制御によって要求されるモータトルクとして提供される。
【0059】
したがって、電動自転車の速度に関する制御のための方法が提供される。その場合、例えば、補助係数および/または現在/最大モータトルク/モータ出力に適用される制御係数が決定されるということは、いずれの制御にも共通する。この制御係数は、従来、速度に依存したランプから直接求められる。
【0060】
本発明によれば、制御係数は、速度(または加速度等々)に依存して直接定義されるのではなくなり、むしろ制御係数の変化率が定義される。最も簡単な実現形態(速度に依存するだけ)では、変化率は、現在速度が制御速度を上回る場合に負であり、現在速度が制御速度を下回る場合に正である。これは線形関係によって最も簡単に定義できる。
【0061】
好ましい一実施形態では、変化率は、自転車1の現在速度と現在加速度に依存する。これらは一緒に位相空間を形成する(現在の関連する動的挙動の完全な表現)。これに加えて、さらに、システム全体の現在性能を考慮することができる。変化率は、継続的に現在速度と加速度(または他の量)に依存して適合される。
【0062】
補助が一時的に目標速度を超えることも可能であるが、超過が長く続く場合にシステムが補助を確実に終了することがわかる。変化率を巧みに選択することによって、これを有利に利用することができる。
【0063】
変化率は、現在速度と加速度から予想される最高速度超過の時点に制御係数が常に十分に小さくなるように選択されることが好ましい。
【0064】
上記の開示の他に、
図1~
図5の開示が明示的に参照される。
【符号の説明】
【0065】
1 自転車
2 制御ユニット
3 モータ
10 速度インターバル
20 制御係数
21 最大許容モータトルク
22 乗算ステップ
23 結果として生じるモータトルク
24 要求されるモータトルク
25 比較ステップ
26 値
30 最大許容モータトルク
31 要求されるモータトルク
32 制御係数
33 比較ステップ
34 乗算ステップ
35 結果として生じるモータトルク
100 方法
101 第1のステップ
102 第2のステップ
103 第3のステップ
a 加速度
dfa 変化率
Δv 目標速度からの現在速度の偏差
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・制御係数が定義された時間インターバルにわたって変化する程度を定義する制御係数の可変変化率を算出すること(101)であって、現在速度が目標速度より大きい場合に前記制御係数がデクリメントされ、前記現在速度が前記目標速度より小さい場合に前記制御係数がインクリメントされるように前記変化率が選択される、算出することと、
・前記制御係数の前記算出された変化率にもとづいて、現在存在する制御係数を適合させること(102)と、
・モータ(3)の制御のために算出されたモータ補助に、計算された制御係数を付加すること(103)であって、より大きい制御係数が、比較的小さい制御係数よりも大きいモータ補助をもたらす、付加することと、を包含する電動自転車(1)の前記モータ(3)により提供されるモータ補助を制御する方法(100)。
【請求項2】
前記変化率は、前記現在速度および現在加速度にもとづいて算出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変化率は、さらに、他の測定量、特に勾配、最大モータトルク、乗手トルク、および/または地面認識によって認識される前記自転車(1)の地面にもとづいて算出されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
・前記変化率は、現在速度が等加速度で増加する場合に、前記制御係数のより速いデクリメントをもたらし、
・前記変化率は、現在加速度が等速度で増加する場合に、前記制御係数のより速いデクリメントをもたらすことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
・前記変化率が現在速度と最高速度との差に比例する、あるいは
・前記変化率が現在加速度に比例し、かつ現在速度と最高速度との逆数差に比例することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記変化率の可能な値が予め定義されたインターバルに制限され、ならびに/あるいは前記制御係数が「0」の最小値、および「1」の最大値に制限されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記制御係数が、最大許容モータトルクと乗手により要求されるトルクのうちのそれぞれ小さいほうに適用され、特にこれに乗算されて、前記モータによって提供されるべき要求トルクが算出されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記変化率は、予め定義された速度インターバル内で、目標速度に向けて現在速度が変化する場合に、前記速度インターバルを上回るおよび/または下回る速度の場合ほど大きく変化しないことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
・最大速度を超えることが許される最大時間長が定義され、
・前記変化率は、前記現在速度が前記最大時間長内に前記最大速度未満に低下するように、または前記モータ補助がゼロに低下するように前記制御係数がデクリメントされるよう選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
電動自転車(1)のモータ(3)により提供されるモータ補助を制御するための装置であって、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法を実行するように設定された制御ユニット(2)を備える装置。
【外国語明細書】