(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143810
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】電動自転車の駆動ユニットを運転する方法、および、電動自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20230928BHJP
【FI】
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023042706
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】10 2022 202 979.8
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】マネバルト,メルリン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】レイシゲ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】エベルレ,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】レック,ヨーゼフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、電動自転車の駆動ユニットを運転する方法を提供する。
【解決手段】電動自転車(100)の運転者の筋力により発生される運転者トルクの時間的な実際トルク推移を求めるステップと、求めた実際トルク推移の外挿により未来のトルク推移を見積もるステップと、見積もった未来のトルク推移が、予め決めた第1のタイムスパン内で、予め決めた第1のトルク閾値を下回るか否かを求めるステップと、見積もった未来のトルク推移が、第1のタイムスパン内で第1のトルク閾値を下回るとき、駆動ユニット(102)により発生されるモータトルクを制御して減少させるステップとを含む、電動自転車(100)の駆動ユニット(102)を運転する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動自転車(100)の駆動ユニット(102)を運転する方法であって、
-前記電動自転車(100)の運転者の筋力により発生される運転者トルク(10)の時間的な実際トルク推移(1)を求めるステップと、
-求めた前記実際トルク推移(1)の外挿により未来のトルク推移(2)を見積もるステップと、
-見積もった前記未来のトルク推移(2)が、予め決めた第1のタイムスパン(3)内で、予め決めた第1のトルク閾値(4)を下回るか否かを求めるステップと、
-見積もった前記未来のトルク推移(2)が、前記第1のタイムスパン(3)内で前記第1のトルク閾値(4)を下回るとき、前記駆動ユニット(102)により発生されるモータトルク(5)を制御して減少させるステップと、
を含む、電動自転車(100)の駆動ユニット(102)を運転する方法。
【請求項2】
前記モータトルク(5)を制御して減少させる前記ステップは、前記モータトルク(5)を、予め決めたトルク値(53)に、特に値ゼロに、予め決めた第2のタイムスパン(7)内で減少させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2のタイムスパン(7)は、予め決めたゼロ秒より多い最低タイムスパンである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第2のタイムスパン(7)は、前記第1のタイムスパン(3)より小さい、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記第2のタイムスパン(7)は、少なくとも2ms、好ましくは、少なくとも5ms、特に最大100msである、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記モータトルク(5)を制御して減少させる前記ステップを、予め決めた減少勾配(55)で実施する、請求項2から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
さらに、
-見積もった前記未来のトルク推移(2)による前記第1のトルク閾値(4)の前記下回りまでの継続時間としての第3のタイムスパン(6)を求めるステップと、
-前記第2のタイムスパン(7)および/または前記減少勾配(55)を、求めた前記第3のタイムスパン(6)に応じて適合するステップと、
を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記モータトルク(5)を制御して減少させる前記ステップは、
-前記第2のタイムスパン(7)の第1の部分タイムスパン(71)における第1の減少勾配(55)での前記モータトルク(5)の第1の減少のステップと、
-前記第2のタイムスパン(7)の第2の部分タイムスパン(72)における第2の減少勾配(56)での前記モータトルク(5)の第2の減少のステップと、
を含み、
-前記第2の部分タイムスパン(72)は、前記第1の部分タイムスパン(71)の後に位置し、かつ
-前記第2の減少勾配(56)の値は、前記第1の減少勾配(55)の値より小さい、
請求項6または7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記モータトルク(5)を制御して減少させる前記ステップを指数関数的な減少の形態で実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
さらに、
-前記運転者トルク(10)の瞬時値(8)を、予め決めた第2のトルク閾値(9)と比較するステップと、
-求めた前記瞬時値(8)が前記第2のトルク閾値(9)以下であるとき、前記駆動ユニット(102)をオフにするステップと、
を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記第2のトルク閾値(9)は、前記第1のトルク閾値(4)より小さい、請求項10記載の方法。
【請求項12】
さらに、
-前記電動自転車(100)の運転中の前記運転者トルク(10)の前記時間的な実際トルク推移(1)を記録するステップと、
-少なくとも1つの閾値および/または少なくとも1つのタイムスパンを、機械学習により、記録した前記時間的な実際トルク推移(1)に基づいて適合するステップと、
を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記外挿を、求めた前記時間的な実際トルク推移(1)の多項近似により、特に線形近似により実施する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
電動自転車であって、
駆動ユニット(102)と、
前記駆動ユニット(102)を制御して操作すべく、構成されている制御ユニット(103)と、
を備え、
前記制御ユニット(103)は、さらに、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法を実施すべく、構成されている、
電動自転車。
【請求項15】
さらに、
チェーンリング(106)と、
クランク機構(104)と、
を備え、チェーンリング(106)とクランク機構(104)とは、互いに剛結されている、
請求項14記載の電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車の駆動ユニットを運転する方法および電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者により発生される運転者トルクをモータ力によりアシストすべく、駆動ユニットを備える電動自転車は、公知である。一般に、モータによるアシストは、その際、運転者が自らもある程度の運転者トルクを加えるときだけ、すなわち、運転者によるペダル操作中のみ、実施される。運転者がペダル操作をストップすると、アシストするモータトルクの発生がストップするようになっているか、または例えば法規に基づいて規制されている。一般に、その際、駆動ユニットはオフにされる。このことは、しかし、パワートレーンの望ましくない反応に至らしめることが多い。一方では、オフにより、駆動ユニットまたはパワートレーンの望ましくない音発生が生じることがある。他方では、駆動ユニットの短時間のオーバトラベルにより、ペダルに対する短い逆向きの力導入が生じることがあり、このことは、運転者の足にいわゆる「キックバック」(英「Kickback」)により知覚されてしまうことがある。このことが特に明らかに生じるのは、駆動ユニットがパワートレーンを、ペダル運動なしには駆動することができない場合である(いわゆる運転者フリーホイールの組み込みなし)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
請求項1の特徴を備える本発明に係る方法は、これに対して、電動自転車の駆動ユニットの望ましくない音発生とキックバックとが顕著に減少され得るか、または完全に防止され得る点で優れている。このことは、
-電動自転車の運転者が、特に電動自転車の運転中、筋力により発生する運転者トルクの時間的な実際トルク推移を求めるステップと、
-求めた実際トルク推移の外挿により未来のトルク推移を見積もるステップと、
-見積もった未来のトルク推移が、予め決めた第1のタイムスパン内で、予め決めた第1のトルク閾値を下回るか否かを求めるステップと、
-見積もった未来のトルク推移が、第1のタイムスパン内で第1のトルク閾値を下回るとき、駆動ユニットにより発生されるモータトルクを制御して減少させるステップと、
を含む方法により達成される。
【0004】
換言すれば、本方法では、運転者トルクの実際トルク推移の検出が、特に記録により実施される。すなわち、時間的な実際トルク推移は、好ましくは、過去に位置し、ある瞬間的な時点でのトルクの瞬間的な値までのトルク推移を表している。例えば実際トルク推移は、トルクセンサによって求められる。
【0005】
検出したこの実際トルク推移に基づいて、外挿により、運転者トルクのトルク推移が将来的にどうなるかを見積もる。こうして求めた未来のトルク推移は、特に、上述の瞬間的な時点から出発して未来へと至る、好ましくは、少なくとも、予め決めたタイムスパンの間、例えば少なくとも5msの、好ましくは、数秒までの、例えば10秒までのタイムスパンの間の時間的なトルク推移を表している。
【0006】
続いて、見積もった未来のトルク推移が、予め決めた第1のタイムスパン内で、予め決めた第1のトルク閾値を下回るか否かを分析する。このような下回りが認められたときは、続いて、好ましくは、この認定に直接応答して、モータトルクの、制御した減少を実施する。
【0007】
見積もった未来のトルク推移が、第1のトルク閾値を第1のタイムスパン内で下回らなければ、好ましくは、駆動ユニットの通常運転が、妨げられることなく続行され得る。
【発明の効果】
【0008】
本方法は、これにより、運転者のペダル操作のストップ、またはペダル操作の、ある特定の下側のトルク限界値の下回りが、既に事前に、そのような状態に至る前に検出され得るという利点を提供する。見積もったこの未来の操作態様に応じて駆動ユニットを制御することで、これによりモータトルクの減少は、特に、ある程度の時間的な余裕をもって準備されることができ、その結果、例えば駆動ユニットのストップがそれほど突然ではないことで、キックバックおよび/または音発生は、顕著に減じられ得るか、または完全に抑制され得る。これにより、例えば運転者の要求が、特に高信頼性に、精緻にかつパワートレーンの意想外な反応なしに実現され得るため、運転者にとって特に快適な運転が提供され得る。
【0009】
好ましくは、時間的な実際トルク推移を、時間的に不連続の、特に、互いに予め決めた間隔を置いて位置する複数の時点で、その都度求める。例えば、常に1msまたは数ミリ秒の間隔を置いて、その都度、運転者トルクに関する1つの測定サンプルを検出してもよい。好ましくは、求めた時間的な実際トルク推移と見なされるのは、その際、少なくとも、最後に検出した2つの測定サンプルである。すなわち、外挿は、少なくとも、運転者トルクに関する最後に検出した2つの測定サンプルを基に実施され得る。これにより、本方法の特に簡単に実現可能な実施が可能とされ得る。
【0010】
好ましくは、予め決めた第1のトルク閾値は、少なくとも-2Nm、好ましくは、最大5Nm、特に好ましくは、2Nmである。
【0011】
特に本方法は、電動自転車の駆動ユニットの運転中に実施される。さらに好ましくは、本方法は、自転車の運転者が、少なくとも、予め決めた運転者トルクを加えているときだけ、すなわち、運転者が、能動的にペダリングしている間だけ、実施される。
【0012】
従属請求項は、本発明の好ましい発展形を示している。
【0013】
好ましくは、モータトルクを制御して減少させるステップは、モータトルクを、予め決めたトルク値に、予め決めた第2のタイムスパン内で減少させるステップを含んでいる。好ましくは、予め決めたトルク値は、0Nmである。これにより、運転者トルクが第1のトルク閾値を下回るであろうと認識されたとき、駆動ユニットの運転が、高信頼性に、かつまさに決められた通りに減少あるいは制限されることが保証される。
【0014】
好ましくは、第2のタイムスパンは、予め決めたゼロ秒より多い最低タイムスパンである。すなわち、第2のタイムスパンは、ゼロ秒より大きい。このことは、特に、モータトルクが急激に減少されるのではなく、徐々に減少されることを意味する。これにより、駆動ユニットのキックバックおよび音発生は、特に高信頼性に顕著に減少され得るか、または完全に防止され得る。
【0015】
特に好ましくは、第2のタイムスパンは、第1のタイムスパンより小さい。すなわち、モータトルクは、まだ、未来のトルク推移による第1のトルク閾値の下回り前に、予め決めたトルク値に減少される。これにより、特に高信頼性に、第1のトルク閾値の、外挿により求められる下回り前に、モータトルクが既に十分に減少されていることが保証される。
【0016】
好ましくは、第2のタイムスパンは、少なくとも2ms、好ましくは、少なくとも5ms、特に最大100msである。これにより、同時に、十分に遅く、かつ十分に速いモータトルクの減少が実施されることが保証され得る。
【0017】
さらに好ましくは、モータトルクを制御して減少させるステップを、予め決めた減少勾配で実施する。減少勾配と見なされるのは、その際、総減少の量の、この総減少が実施されるタイムスパンに対する予め決めた比である。換言すれば、減少勾配は、時間的なモータトルク推移の傾きに相当する。特に減少勾配は、この場合、負である。好ましくは、減少勾配は、本方法の特に簡単な実施のために、一定であってもよい。代替的に好ましくは、減少勾配は、可変、特に、制御した減少の開始時には、減少勾配の極めて大きな値、すなわち、モータトルクの速いあるいは強い減少が存在し、達成すべき予め決めたトルク値に近付けば、減少勾配の値が顕著により小さく、すなわち、モータトルクのより遅いあるいはより弱い減少が実施されるように可変である。これにより、駆動ユニットを穏やかにオフにすることができ、ひいては、例えば駆動ユニットの電気モータのロータを穏やかに制動させることができるため、特に高信頼性に、トルク減少によって駆動ユニットの音発生またはキックバックが生じることは、防止され得る。
【0018】
好ましくは、本方法は、さらに、
-特に瞬間的な時点から出発し、見積もった未来のトルク推移による第1のトルク閾値の下回りまでの継続時間として規定されている第3のタイムスパンを求めるステップと、
-第2のタイムスパンおよび/または減少勾配を、求めた第3のタイムスパンに応じて適合するステップと、
を含んでいる。換言すれば、第2のタイムスパンおよび/または減少勾配を、見積もった未来のトルク推移が第1のトルク閾値を下回るまでの継続時間に応じて可変に適合する。すなわち、例えば、小さい第3のタイムスパンが認められたときは、モータトルクの極めて強い減少を短時間で実施する。同様に、より大きな第3のタイムスパンのときは、第2のタイムスパンおよび/または減少勾配を高めることができる。これにより、十分に高速の減少が特に高信頼性に保証されていれば、ペダル操作の比較的低速の減退時、駆動ユニットの特に穏やかなオフが可能とされ得る。
【0019】
特に好ましくは、モータトルクを制御して減少させるステップは、
-第2のタイムスパンの第1の部分タイムスパンにおける第1の減少勾配でのモータトルクの第1の減少のステップと、
-第2のタイムスパンの第2の部分タイムスパンにおける第2の減少勾配でのモータトルクの第2の減少のステップと、
を含んでいる。第2の部分タイムスパンは、この場合、時間的に、第1の部分タイムスパンの後、特に直後に位置している。さらに第2の減少勾配の値は、第1の減少勾配の値より小さい。好ましくは、第1の部分タイムスパンおよび第2の部分タイムスパンは、互いに予め決めた固定の比で規定されている。代替的に好ましくは、この比は、第2のタイムスパン全体に応じて適合されてもよい。これにより、モータトルクの、まずは、大きな値の減少勾配で、続いて、より小さな値の減少勾配での実質的に二段の減少が実施される。これにより、簡単かつ高信頼性に、駆動ユニットの最適なオフプロセスが提供されることができ、この最適なオフプロセスは、高信頼性にキックバックおよび音発生を防止することができる。
【0020】
好ましくは、モータトルクを制御して減少させるステップを指数関数的な減少の形態で実施する。これにより、特に簡単に、制御した減少の開始時、単位時間あたりの強い減少と、その後の減少の低速の減退とを可能にする関数関係が実装され得る。
【0021】
好ましくは、本方法は、さらに、
-運転者トルクの瞬時値を、予め決めた第2のトルク閾値と比較するステップと、
-求めた瞬時値が第2のトルク閾値以下であるとき、駆動ユニットをオフにするステップと、
を含んでいる。特にオフは、その際、即座に実施される。好ましくは、オフと見なされるのは、その際、100%のモータトルクの減少である。これにより、例えば付加的なオフ基準が提供されることができ、これにより、例えば極めて低い運転者トルクに基づき必要であるとき、駆動ユニットを高信頼性にオフにすることができる。
【0022】
特に好ましくは、第2のトルク閾値は、第1のトルク閾値より小さい。特に第2のトルク閾値は、最大0Nm、好ましくは、最大-5Nm、特に好ましくは、最大-10Nmである。
【0023】
好ましくは、本方法は、さらに、
-電動自転車の運転中の運転者トルクの時間的な実際トルク推移を記録するステップと、
-少なくとも1つの閾値および/または少なくとも1つのタイムスパンを、機械学習により、記録した時間的な実際トルク推移に基づいて適合するステップと、
を含んでいる。好ましくは、その際、記録したトルク推移に続いて、運転者のペダリングのストップが伴われたか否かの評価を実施し、有利には、この情報に基づいて適合が実施される。換言すれば、運転者トルクの時間的な実際トルク推移を、電動自転車の運転のより長い期間にわたって監視および記録し、そして閾値および/またはタイムスパンを自己学習式に、この記録した実際トルク推移の分析を基に、例えば制御ユニットにより適合する。特に好ましくは、この場合、第1のトルク閾値および/もしくは第2のトルク閾値ならびに/または第1のタイムスパンおよび/もしくは第2のタイムスパンを自己学習式に適合する。特に好ましくは、付加的または代替的に、第1の減少勾配および/もしくは第2の減少勾配ならびに/または第1の部分タイムスパンおよび/もしくは第2の部分タイムスパンを自己学習式に適合し得る。これにより、予め決める閾値および/またはタイムスパンの最適化を実施することができ、これにより、本方法の実施を特に高信頼性に、精緻にかつ運転者にとって高い快適性を伴って可能にすることができる。この場合、特に、以下に常に、学習するアルゴリズムにとって、運転者が、実際にペダリングを止めようとしたか、または運転者が、さらにペダリングしようとしたかが看取可能であるようになっていてもよい。この事後的な情報は、向後の閾値を相応に適合するために使用可能である。
【0024】
さらに好ましくは、外挿を、求めた時間的な実際トルク推移の多項近似により、特に好ましくは、線形近似により実施する。すなわち、求めた実際トルク推移に基づいて将来の推移の予想を可能にする関数、例えば仮想関数を求める。特に、実際トルク推移を、この場合、数学的な関数として求める。多項近似は、特にこの数学的な関数の一次導関数に基づいて求められる。線形近似と見なされるのは、その際、特に、実際トルク推移の瞬間的な傾きを有する直線である。これにより簡単に、十分に長いタイムスパンのために、未来のトルク推移の精緻な見積もりが可能とされ得る。
【0025】
さらに本発明は、駆動ユニットと、制御ユニットとを備える電動自転車に想到する。制御ユニットは、この場合、駆動ユニットを制御して操作すべく、構成されている。さらに制御ユニットは、説明した方法を実施すべく、構成されている。
【0026】
好ましくは、電動自転車は、チェーンリングとクランク機構とを備えている。チェーンリングとクランク機構とは、その際、互いに機械的に剛結、特にフリーホイールなしに結合されている。チェーンリングとクランク機構との間にフリーホイールを有しない電動自転車の場合、本発明に係る方法は、最適な走行快適性に特に有利に作用する。それというのも、駆動ユニットをオフにする際のキックバックおよび/または音発生は、フリーホイールのない電動自転車において特に顕在化することがあるからである。
【0027】
以下に、本発明の実施例について添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の好ましい一実施例による電動自転車を運転する方法が実施される電動自転車の簡略化した概略図である。
【
図2】本方法で求められる時間的なトルク推移を簡略化して示す図である。
【
図3】本方法で求められる代替的な時間的なトルク推移を簡略化して示す図である。
【
図4】本方法により提供され得る時間的なモータトルク推移を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、電動自転車100の簡略化した概略図を示している。電動自転車100は、駆動ユニット102を備え、駆動ユニット102は、電気モータとして形成されている。駆動ユニット102は、電動自転車100のボトムブラケット108の領域内に配置されており、クランク機構104を介して加えられる電動自転車100の運転者の人力の踏力を、電気モータにより発生されるモータトルクによりアシストすべく、設けられている。
【0030】
さらに電動自転車100は、電気エネルギアキュムレータ109を備え、エネルギアキュムレータ109により、駆動ユニット102に電気エネルギを供給することが可能である。
【0031】
駆動ユニット102には、さらに制御ユニット103が内蔵されている。
【0032】
電動自転車100のクランク機構104は、チェーンリング106に剛結、すなわち相対回動不能に、特にフリーホイールなしに結合されている。チェーンリング106により、自転車チェーン109が駆動され、自転車チェーン109を介して、電動自転車100の後輪110が駆動される。駆動ユニット102は、この場合、運転者トルクに対して付加的にモータトルクをチェーンリング106に加えることができるように、機械的にチェーンリング106に連結されている。
【0033】
制御ユニット103は、この場合、駆動ユニット102を電動自転車100の運転者のペダル操作に応じて操作すべく、構成されている。詳細には、駆動ユニット102は、運転者の筋力により発生される運転者トルクに応じてモータトルクが発生され、これにより、運転者をペダリングの際にモータによりアシストすることができるように、制御されて操作される。その際、モータトルクは、予め決めた最低運転者トルクを伴ったペダル操作中にのみ発生されるようになっている。すなわち、運転者が、ペダリングをストップすると、または運転者トルクが、この最低運転者トルクを下回ると、駆動ユニット102の運転もストップしなければならない。
【0034】
制御ユニット103は、この場合、本発明の好ましい一実施例による駆動ユニット102を運転する方法を実施すべく、構成されている。本方法により、電動自転車100の走行運転中、つまり、特に前進中、運転者がペダリングを止めたとき、駆動ユニット102によるモータ力アシストの最適化されたオフが提供され得る。このとき、駆動ユニット102のモータトルクの減少は、キックバックおよび音発生が顕著に減少され得るか、または完全に回避され得るように実施され得る。
【0035】
本方法のフローについて、以下に
図2ないし4に関連付けて詳しく説明する。
【0036】
図2は、電動自転車100の走行中に検出され得るトルク記録50の例示的な図を示している。この場合、運転者トルク10を時間20に応じて示してある。運転者トルク10は、トルクセンサ107(
図1参照)により検出され得る。
図2のトルク記録50には、これにより、運転者トルク10の例示的な時間的な実際トルク推移1を示してある。
【0037】
図2に看取可能であるように、運転者トルク10の実測値は、時間20にわたって周期的に、例えば正弦振動に類似して変化する。
【0038】
本方法では、制御ユニット103により、運転者が筋力により発生させると見込まれる未来のトルク推移2を見積もる。この見積もりについて、以下に、
図2に例示的に仮定した瞬間的な時点21を基に説明する。本方法のより良好なトレーサビリティのために、この瞬間的な時点21は、例示的な実際トルク推移1の中央に置かれている。本方法を実際に実施するにあたっては、この瞬間的な時点21では、実際トルク推移1の、破線21の左側に位置する部分のみが、例えば記録により既知である。曲線1の、破線21の右側に位置する部分は、これにより未来に位置することになるであろう。
【0039】
本方法では、未来のトルク推移2を、求めた実際トルク推移1の外挿により、瞬間的な時点21から出発して見積もる。外挿は、この場合、求めた時間的な実際トルク推移1の線形近似により実施される。詳細には、瞬間的な時点21での実際トルク推移1の勾配が特定される。これにより、未来のトルク推移2は、時点21での実際トルク推移1の傾きを有する直線として得られる。
【0040】
例えば、時間的な実際トルク推移1は、電動自転車100の走行中、不連続の複数の時点でその都度、運転者トルク10に関する瞬間的な値を検出することにより、求め得る。この場合、線形近似による外挿は、勾配を、運転者トルク10の最後に検出した2つの値と、それらの時間的な間隔とに基づいて求めることにより、実施可能である。これにより、未来のトルク推移2の見積もりは、特に簡単に実施可能である。
【0041】
見積もった未来のトルク推移2を基に、続いて、この見積もった未来のトルク推移2が、瞬間的な時点21から出発する予め決めた第1のタイムスパン3内で、予め決めた第1のトルク閾値4を下回るか否かを求める。
【0042】
第1のトルク閾値4は、例えば0Nm、代替的には、好ましくは低いトルク値、例えば2Nmと定められていてもよい。
【0043】
図2のトルク記録50において該当するように、第1のタイムスパン3内で第1のトルク閾値4を下回らなければ、例えば、運転者がペダル操作をさらに続行しようとしていると確認することができる。この場合、駆動ユニット102の、制御された操作は、通常運転で続けられ得る。
【0044】
例えば、見積もった未来のトルク推移2が、第1のタイムスパン3内で第1のトルク閾値4を下回るか否かを求めることは、第3のタイムスパン6であって、瞬間的な時点21から出発して、見積もった未来のトルク推移2による第1のトルク閾値4の下回りの時点22までの継続時間を規定する第3のタイムスパン6を求めることにより、実施され得る。この第3のタイムスパン6をその後、第1のタイムスパン3と比較する。第3のタイムスパン6が第1のタイムスパン3より大きければ、下回りは認識されない。
【0045】
見積もった未来のトルク推移2が、第1のタイムスパン3内で第1のトルク閾値4を下回る別のケースは、例示的に
図3に示してある。このケースでは、第3のタイムスパン6は、第1のタイムスパン3より小さい。
【0046】
図3に示したケース、つまり、見積もった未来のトルク推移2が、第1のタイムスパン3内で第1のトルク閾値4を下回るケースが生じると、本方法では、制御ユニット103により、駆動ユニット102により発生されるモータトルクの、制御した減少が引き起こされる。
【0047】
モータトルクの、制御した減少の実施については、以下に
図4に関連付けて説明する。
図4は、その際、本方法の実施中であって、
図3に示したトルク記録50が提示されているケースのモータモーメント記録59を示している。その際、
図4には、モータトルク5を時間20に応じて示してある。
【0048】
図4は、その際、見積もった未来のトルク推移2が、第1のタイムスパン3内で第1のトルク閾値4を下回ることが
図3に示した検知に応答した、モータトルク5の減少を示している。この場合、
図4に示すように、瞬間的な時点21(
図3の時点21に相当)で、ある瞬間的なトルク51から出発した、制御した減少の開始が実施される。
【0049】
モータトルク5の減少を、その際、モータトルク5が、この瞬間的なトルク51から、予め決めた第2のタイムスパン7内で、予め決めたトルク値53、好ましくは0Nmであるトルク値53まで実施されるように、実施する。このとき、モータトルク5の減少を2つのフェーズで実施する:まずは、第1の減少を第2のタイムスパン7の第1の部分タイムスパン71において第1の減少勾配55で実施する。第1の減少の直後に、モータトルク5の第2の減少を第2のタイムスパン7の第2の部分タイムスパン72において第2の減少勾配56で実施する。特に、これにより第1の部分タイムスパン71と第2の部分タイムスパン72との合計は、第2のタイムスパン7に相当する。
【0050】
その際、第1の減少勾配55および第2の減少勾配56ならびに第1の部分タイムスパン71および第2の部分タイムスパン72は、制御した減少の開始時に直ぐに、極めて強いトルク減少が、短時間で実施され、続いてトルク減少のより穏やかな減退が、トルク値53まで実施されるように形成されている。特に、その際、両部分タイムスパン71,72において、それぞれ、モータトルク5の指数関数的な減少が実施される。
【0051】
好ましくは、第1の部分タイムスパン71は、この場合、第2のタイムスパン7全体の最大20%、特に好ましくは、最大10%に相当する。さらに好ましくは、モータトルク5は、第1の部分タイムスパン71内で、予め決めた第1の減少量54bの分だけ減少され、第1の減少量54bは、総減少量54aの少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%である。特に総減少量54aは、瞬間的なモータトルク51と、予め決めたトルク値53との差に相当する。
【0052】
本発明の好ましい一発展形において、タイムスパンおよび/または閾値および/または減少勾配は、制御ユニット103により可変に適合可能に形成されている。これらのパラメータの1つまたは複数のパラメータが、第3のタイムスパン6に応じて実施されると、特に有利である。この第3のタイムスパン6が、見積もった未来のトルク推移2による第1のトルク閾値4の下回りまでの、見積もった継続時間を規定するので、これにより駆動ユニット102のトルク減少のプロセスは、特に柔軟にかつ最適に、瞬間的な走行運転に適合され得る。例えば、より大きな第3のタイムスパン6が認められたときは、第2のタイムスパン7を増大させることができる。さらに、例えば、より大きな第3のタイムスパン6が認められたときは、第1の減少勾配55および/または第2の減少勾配56の値を減じることができる。これにより、例えばより大きな第3のタイムスパン6のとき、キックバックおよび望ましくない音発生を特に高信頼性に減少させるべく、駆動ユニット102を特に穏やかにオフにすることが実施され得る。
【0053】
さらに本方法は、運転者トルク10の瞬間的な値8(
図2参照)の付加的な監視を含んでいてもよく、この瞬間的な値8を、予め決めた第2のトルク閾値9と比較する。第2のトルク閾値9は、例えば僅かに第1のトルク閾値4より上に位置していることができる(
図2参照)。
【0054】
本方法では、この場合、運転者トルク10の瞬間的な値8が、第2のトルク閾値9に到達するか、または下回るとき、駆動ユニット102を即座にオフにする。すなわち、値0Nmへの即座のトルク減少を引き起こす。これにより、直前に差し迫った運転者のペダリングのストップ時、高信頼性に、このストップの実際の時点で、駆動ユニット102がモータトルクをもはや発生しないことが防止されることが保証され得る。
【0055】
さらに、制御ユニット103が、タイムスパンおよび/または閾値および/または減少勾配を自己学習式に機械学習により適合、すなわち最適化すべく、形成されていると、特に有利である。このことは、電動自転車100の走行運転中、より長い期間にわたって記録される、記録された時間的な実際トルク推移1に基づいて実施され得る。例えば、これにより、ペダリングのストップが差し迫ったときの、本方法により提供される駆動ユニット102のオフプロセスは、特に正確に電動自転車100の運転者の個々人の走行スタイルに適合されることができ、これにより、本方法の高い精度と、可能な限り最高の走行快適性とを提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 実際トルク推移
2 未来のトルク推移
3 第1のタイムスパン
4 第1のトルク閾値
5 モータトルク
6 第3のタイムスパン
7 第2のタイムスパン
8 瞬間的な値
9 第2のトルク閾値
10 運転者トルク
20 時間
21 時点、破線
22 時点
50 トルク記録
51 瞬間的なトルク
53 トルク値
54a 総減少量
54b 第1の減少量
55 第1の減少勾配
56 第2の減少勾配
59 モータモーメント記録
71 第1の部分タイムスパン
72 第2の部分タイムスパン
100 電動自転車
102 駆動ユニット
103 制御ユニット
104 クランク機構
106 チェーンリング
107 トルクセンサ
108 ボトムブラケット
109 電気エネルギアキュムレータ
109 自転車チェーン
110 後輪
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動自転車(100)の駆動ユニット(102)を運転する方法であって、
-前記電動自転車(100)の運転者の筋力により発生される運転者トルク(10)の時間的な実際トルク推移(1)を求めるステップと、
-求めた前記実際トルク推移(1)の外挿により未来のトルク推移(2)を見積もるステップと、
-見積もった前記未来のトルク推移(2)が、予め決めた第1のタイムスパン(3)内で、予め決めた第1のトルク閾値(4)を下回るか否かを求めるステップと、
-見積もった前記未来のトルク推移(2)が、前記第1のタイムスパン(3)内で前記第1のトルク閾値(4)を下回るとき、前記駆動ユニット(102)により発生されるモータトルク(5)を制御して減少させるステップと、
を含む、電動自転車(100)の駆動ユニット(102)を運転する方法。
【請求項2】
前記モータトルク(5)を制御して減少させる前記ステップは、前記モータトルク(5)を、予め決めたトルク値(53)に、特に値ゼロに、予め決めた第2のタイムスパン(7)内で減少させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2のタイムスパン(7)は、予め決めたゼロ秒より多い最低タイムスパンである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第2のタイムスパン(7)は、前記第1のタイムスパン(3)より小さい、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記第2のタイムスパン(7)は、少なくとも2ms、好ましくは、少なくとも5ms、特に最大100msである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記モータトルク(5)を制御して減少させる前記ステップを、予め決めた減少勾配(55)で実施する、請求項2記載の方法。
【請求項7】
さらに、
-見積もった前記未来のトルク推移(2)による前記第1のトルク閾値(4)の前記下回りまでの継続時間としての第3のタイムスパン(6)を求めるステップと、
-前記第2のタイムスパン(7)および/または前記減少勾配(55)を、求めた前記第3のタイムスパン(6)に応じて適合するステップと、
を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記モータトルク(5)を制御して減少させる前記ステップは、
-前記第2のタイムスパン(7)の第1の部分タイムスパン(71)における第1の減少勾配(55)での前記モータトルク(5)の第1の減少のステップと、
-前記第2のタイムスパン(7)の第2の部分タイムスパン(72)における第2の減少勾配(56)での前記モータトルク(5)の第2の減少のステップと、
を含み、
-前記第2の部分タイムスパン(72)は、前記第1の部分タイムスパン(71)の後に位置し、かつ
-前記第2の減少勾配(56)の値は、前記第1の減少勾配(55)の値より小さい、
請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記モータトルク(5)を制御して減少させる前記ステップを指数関数的な減少の形態で実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
さらに、
-前記運転者トルク(10)の瞬時値(8)を、予め決めた第2のトルク閾値(9)と比較するステップと、
-求めた前記瞬時値(8)が前記第2のトルク閾値(9)以下であるとき、前記駆動ユニット(102)をオフにするステップと、
を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記第2のトルク閾値(9)は、前記第1のトルク閾値(4)より小さい、請求項10記載の方法。
【請求項12】
さらに、
-前記電動自転車(100)の運転中の前記運転者トルク(10)の前記時間的な実際トルク推移(1)を記録するステップと、
-少なくとも1つの閾値および/または少なくとも1つのタイムスパンを、機械学習により、記録した前記時間的な実際トルク推移(1)に基づいて適合するステップと、
を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記外挿を、求めた前記時間的な実際トルク推移(1)の多項近似により、特に線形近似により実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
電動自転車であって、
駆動ユニット(102)と、
前記駆動ユニット(102)を制御して操作すべく、構成されている制御ユニット(103)と、
を備え、
前記制御ユニット(103)は、さらに、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施すべく、構成されている、
電動自転車。
【請求項15】
さらに、
チェーンリング(106)と、
クランク機構(104)と、
を備え、チェーンリング(106)とクランク機構(104)とは、互いに剛結されている、
請求項14記載の電動自転車。
【外国語明細書】