(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143846
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ウェハ接触面用のレーザ粗面化された反応結合炭化ケイ素
(51)【国際特許分類】
C04B 41/91 20060101AFI20230928BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230928BHJP
B23K 26/352 20140101ALI20230928BHJP
C04B 35/573 20060101ALI20230928BHJP
C04B 41/80 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C04B41/91 E
H01L21/68 N
B23K26/352
C04B35/573
C04B41/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023045611
(22)【出願日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】17/656,481
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス クームス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン コッポラ
(72)【発明者】
【氏名】マイク アガジャニアン
(72)【発明者】
【氏名】アーロン クリス
【テーマコード(参考)】
4E168
5F131
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168CB03
4E168DA02
4E168DA28
4E168DA37
4E168DA40
4E168DA45
4E168JA12
4E168JA15
5F131AA02
5F131EB53
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】 (修正有)
【課題】制御された粗さを伴うセラミックデバイスを作製する方法、およびその方法によって得られた制御された粗さを伴うセラミックデバイスを提供する。
【解決手段】制御された粗さを伴うセラミックデバイスを作製する方法は、デフォーカスレーザビームを用いてセラミック基板の表面を粗くすることと、粗面のすべてを除去することなく粗面の1つ以上の部分を除去することと、を含む。必要に応じて、セラミックデバイスは、反応結合炭化ケイ素を含んでいてもよく、デバイスを用いてウェハ表面にクランプ吸引を適用できるよう、デバイス内に開口部を形成してもよい。制御された粗さを伴うセラミック表面も開示されている。デフォーカスレーザビームを用いて、表面が相手側要素に貼り付くのを防ぎ、適切な耐摩耗性を有するほど十分に粗くしてもよいが、表面を相手側要素にクランプするのに十分な吸引が形成されることを妨げるほど粗くはできない。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された粗さを有するセラミックデバイスを作製する方法であって、
第1の表面を有するセラミック基板を用意することと、
前記第1の表面を粗面化することによって粗面を生成することと、
前記粗面の第2の部分を除去することなく、前記粗面の第1の部分を除去することと
を含む方法。
【請求項2】
前記粗面化することは、前記第1の表面上にデフォーカスレーザビームを送ることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粗面化することは、前記第1の表面上にデフォーカスレーザビームを繰り返して送ることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粗面化することは、前記第1の表面の第1の部分上に前記デフォーカスレーザビームを第1の回数だけ送り、前記第1の表面の第2の部分上に前記デフォーカスレーザビームを第2の回数だけ送り、前記第1の回数を前記第2の回数よりも大きくして、前記粗面が平均粗さの異なる第1及び第2の部分を有するようにすることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミック基板は反応結合炭化ケイ素材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記セラミックデバイスはエンドエフェクタ用の真空装置である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
セラミックデバイスであって、
デフォーカスレーザビームによって生成された制御された粗さを有する第1の表面であって、前記第1の表面は、相手側要素との1つ以上の境界面特性をもたらすように構成されている、前記表面と、
第2の粗さを有する第2の表面であって、前記制御された粗さは前記第2の粗さとは異なる、前記第2の表面と
を含む前記セラミックデバイス。
【請求項8】
前記1つ以上の境界面特性は、高耐摩耗性、真空シール、低摩擦、及び低粘着性を含む請求項7に記載のセラミックデバイス。
【請求項9】
前記セラミックデバイスは反応結合炭化ケイ素を含む請求項8に記載のセラミックデバイス。
【請求項10】
前記デバイスは真空エンドエフェクタの要素であり、前記第1の表面は、
前記デバイスがウェハに貼り付くのを防ぐことと、
前記第1の表面と前記ウェハとの間の境界面に真空シールを設けることと
を行うように構成されている請求項7に記載のセラミックデバイス。
【請求項11】
吸引チャンバを真空源に接続するための開口部をさらに含む請求項10に記載のセラミックデバイス。
【請求項12】
エンドエフェクタを作製する方法であって、
反応結合炭化ケイ素材料で形成された表面を有する基板を用意することと、
レーザビームのデフォーカス部分を前記基板表面にわたって送ることによって粗面を形成することと、
前記粗面の一部を除去して、前記粗面の接触部分を隆起させたままにすることと、
前記接触部分を前記エンドエフェクタのアームに接続することと
を含む前記方法。
【請求項13】
前記基板表面はセラミック表面を含み、前記粗面の平均表面粗さ(Ra)は前記セラミック表面の平均表面粗さ(Ra)よりも大きい請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粗面の前記平均表面粗さは0.3~1.1μmの範囲である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粗面の前記平均表面粗さは0.36~0.44μmの範囲である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基板表面はセラミック表面を含み、前記レーザビームを前記セラミック表面にわたって複数回送りながら、前記レーザビームの前記デフォーカス部分を前記セラミック表面に入射する請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御された粗さを伴うセラミックデバイスを作製する方法、およびセラミックデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の取り扱いでは非効率的であるかそうでない場合には望ましくない処理システム、たとえば、ウェハの装填及び取り出し、化学機械平坦化(CMP)、エッチング、堆積、パッシベーション、及び他のプロセスを行うためのシステムでは、ロボット装置を用いてウェハを取り扱うことができる。ロボット装置は、とりわけ、ウェハをスタックから1つ以上の処理ポート内に装填するためのエンドエフェクタを有する場合がある。エンドエフェクタは、1つ以上の真空引きアイレットを通して吸引を適用することによってウェハを保持することができる。エンドエフェクタは、フォーク形状、ヘラ形状、または別の好適な構成を有することができる。ウェハ接触アイレットは、エンドエフェクタの1つ以上の端部に位置する場合がある。動作時には、真空引きアイレットは、転送及び取り扱うために個々のウェハをつかんで保持する。ウェハは、シリコン、半導体材料、または他の材料で形成することができる。
【0003】
エンドエフェクタの例は以下の文献で述べられている。米国特許出願公開第2022/0051928号(2022年2月17日に公開)(Transfer Device,Transfer System,and End Effector)、第2020/0206954号(2020年7月2日に公開)(Apparatus,System and Method for Providing a Conformable Cup for an End Effector)、及び第2018/0215049号(2018年8月2日に公開)(Suction Apparatus for an End Effector,End Effector for Holding Substrates and Method of Producing an End Effector)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0051928号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0206954号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0215049号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2021/0331985号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2018/0099379号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2017/0291279号明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示は、制御された粗さを伴うセラミックデバイスを作製する方法に関する。本方法は、デフォーカスレーザビームを用いてセラミック基板の表面を粗くすることと、粗面の別の部分を除去することなく粗面の1つ以上の部分を除去することと、を含む。必要に応じて、セラミックデバイスは反応結合炭化ケイ素を含んでいてもよい。必要に応じて、セラミックデバイスを用いてウェハ表面にクランプ吸引を適用できるように、開口部を形成してもよい。
【0006】
また本開示は、デフォーカスレーザビームによって生成された制御された粗さを有する表面と、第2の粗さを有する第2の表面と、を含むセラミックデバイスに関する。第1の表面を用いて、ウェハなどの相手側要素との境界面を形成してもよい。第1の表面は、相手側要素との所望の境界面を実現するための1つ以上の特性、たとえば、好適な粗さ及び適切な耐摩耗性を有していてもよい。必要に応じて、セラミックデバイスは、反応結合炭化ケイ素を含んでいてもよく、たとえば半導体ウェハの裏面であり得る相手側要素へのクランプ吸引を確立するための開口部を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示による、反応結合炭化ケイ素セラミック基板を製造するためのプリフォーム材料の例の概略断面図である。
【
図2】
図1のプリフォーム材料から作られた反応結合炭化ケイ素材料の概略断面図であり、この中に真空引きアイレットが機械加工され得る図である。
【
図3】本開示により構成されたエンドエフェクタの平面図(一定の比率で描かれてはいない)である。
【
図4】
図3に例示したエンドエフェクタの断面図であり、
図3の線分4-4に沿って見た図である。
【
図5】
図3及び4に例示したエンドエフェクタの真空引きアイレットに対するセラミック基板の平面図である。
【
図6】
図5に例示した基板の平面図であり、セラミック基板の上面全体がデフォーカスレーザによって粗面化された後の図である。
【
図7】デフォーカスレーザパスの数の関数としての反応結合炭化ケイ素の表面粗さのグラフである。
【
図8】
図3に例示したエンドエフェクタの真空引きアイレットを作製する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面の全体にわたって、同様の要素は同様の参照数字及び他の文字によって示される。図面は、本開示の例示及び説明の目的上、非限定的な例を示しており、一定の比率で描かれてはいない。
【0009】
反応結合炭化ケイ素(RB-SiC、またはSi/SiC)(セラミック材料の例)は、半導体機器、工業用摩耗、熱管理、炉部品、装甲などの種々の製品及びシステムにおいて用いられる場合がある。反応結合炭化ケイ素の魅力的な特性としては、低熱膨張、高熱伝導率、高硬度、高耐摩耗性、高剛性、及び化学的不活性が挙げられる。
【0010】
反応結合炭化ケイ素は、溶融した元素シリコン(Si)を、真空または不活性雰囲気において相互接続された炭化ケイ素(SiC)粒子と炭素(C)との多孔質の塊と接触させる反応浸透によって形成される多相材料である。相互接続された炭化ケイ素粒子と炭素との塊の中に、溶融シリコンが毛細管作用によって引き込まれ、シリコンが塊中の炭素と反応してさらなる炭化ケイ素を形成するように、湿潤状態が形成される。結果として生じる反応結合炭化ケイ素材料は、主に炭化ケイ素を含むが、未反応の相互接続シリコンも含む。
【0011】
浸透プロセスを
図1及び2に例示する。
図1は、相互接続された炭化ケイ素粒子22及び炭素24を含む多孔質の塊(またはプリフォーム)20の概略断面図である。
図2は、溶融シリコンによる浸透及びその後の冷却後の反応結合炭化ケイ素材料(セラミック材料)26の概略断面図である。浸透は真空または不活性雰囲気において行ってもよい。
【0012】
例示したプロセスでは、反応結合炭化ケイ素材料26(
図2)が、3つの要素:(1)元の炭化ケイ素粒子22、(2)反応形成された炭化ケイ素(Si+C=>SiC)28、(3)残留(未反応)元素シリコン30で構成されるミクロ構造を有するように、溶融シリコンがプリフォーム20(
図1)内に反応的に浸透する。シリコン30は、反応して固化した三成分ミクロ構造22、28、30が十分に密になるように、その液体状態から固化するにつれて拡大する。
【0013】
したがって、用語を本明細書で用いる場合、反応結合炭化ケイ素は十分に密であり、連続的なシリコンマトリックス中の炭化ケイ素粒子の二相複合体である。反応結合炭化ケイ素は以下の文献で述べられている。米国特許出願第17/248,309号(2021年1月19日に出願)及び米国特許出願公開第2021/0331985号(2021年10月28日に公開)、第2018/0099379号(2018年4月12日に公開)、ならびに第2017/0291279号(2017年10月12日に公開)。米国特許出願第17/248,309号及び米国出願特許公開第2021/0331985号、第2018/0099379号、ならびに第2017/0291279号の全開示が、参照によりその全体において本明細書に援用される。
【0014】
次に
図3を参照して、エンドエフェクタ32は、少なくとも1つのアーム34と、1つ以上の真空引きアイレット(または真空パッド)36、38とを有している。各真空引きアイレット36、38は、周囲40、小さくした厚さt
1の主セクション42(
図4)、より大きい厚さt
2の少なくとも1つのウェハ接触部分44、小さくした厚さt
1の内側セクション46、及び真空ポート48を有する。主セクション42は、周囲40の内側に位置する。少なくとも1つのウェハ接触部分44は、主セクション42の内側に位置する。内側セクション46は、少なくとも1つのウェハ接触部分44の内側に位置する。小さくした厚さt
1は、より大きい厚さt
2よりも小さい。真空ポート48は、内側セクション46の内側に位置する。
【0015】
必要に応じて、主セクション及び内側セクション42、46の上面50、52は、以下に詳細に説明するように、好適な機械加工プロセスによって形成してもよい。例示した構成では、ウェハ接触部分44の上面54を、デフォーカスレーザによって粗面化して、以下に詳細に説明するように、その後に機械加工しない。
図3では、ウェハ接触部分44の上面54は、そのレーザで粗面化した表面テクスチャを概略的に表すために、点描によって例示している。本開示の一態様によれば、反応結合炭化ケイ素はレーザ粗面化にとって理想的である。なぜならば、複合材料の2つの微細構造相が異なる速度で除去されるからである。
【0016】
それぞれの場合において、主セクション、ウェハ接触セクション、及び内側セクション42、44、46を含む各真空引きアイレット36、38は、反応結合炭化ケイ素材料の1つの一体部片に形成してもよい。
図4に例示したように、真空ポート48の長さは、内側セクション46の小さくした厚さt
1と同じであり、真空ポート48は、エンドエフェクタアーム34内に位置する真空源56に接続されている。
【0017】
真空引きアイレット36、38の各1つは、本質的に同じ構造及び構成を有していてもよく、本質的に同じ方法で作製(製造)してもよく、同じ真空源56に接続してもよく、本質的に同じ方法で動作してもよい。真空引きアイレット36、38(ウェハ接触装置の例)は、好適な接着剤または接続装置(図には例示せず)によってエンドエフェクタアーム34に接続されている。しかし、本開示は、添付の特許請求の範囲においてそのような特徴が言及される範囲を除いて、図面に例示され、本明細書に記載される特定の構成及びプロセスには限定されない。
【0018】
動作時には、ウェハ接触部分44の上面全体54が、半導体ウェハー(例示せず)の裏面と接触してもよい。そのような接触が起こると、ウェハ接触部分44の上面54の本質的にすべてを含む平面は、少なくともウェハ接触部分44の近傍において、ウェハの裏面を含む平面と一致する。内側セクション46の上面52、ウェハの裏面、及びウェハ接触部分44の内向きの表面58は、吸引チャンバ60を形成する(
図4)。空気(または別のガス)が、真空源56によって吸引チャンバ60から真空ポート48を通して除去されて、チャンバ60内に吸引を確立して、ウェハをエンドエフェクタ32にしっかりと付着(またはクランプ)させる。
【0019】
以下に詳細に説明するように、所望のデフォーカスレーザ粗面化によって、ウェハ接触部分44の上面54が十分に粗くなって、上面54がウェハの裏面に貼り付くのを防ぐ。しかし、上面54は、空気(または別のガス)が、上面54とウェハの裏面との間の接触境界面を通して吸引チャンバ60内に漏れることを可能にして、ウェハがエンドエフェクタ32に付着するのを妨げるほど、粗くなくてもよい。
【0020】
動作時には、エンドエフェクタ32に接続された好適なロボットシステムがエンドエフェクタアーム34を動かして、アイレット36、38がウェハー(例示せず)の底面と接触するようにする。そして真空が、エンドエフェクタ32を通して引かれ、真空アイレット(またはパッド)36、38を通して適用されて、ウェハをエンドエフェクタ32にしっかりと取り付ける。そして、ロボットシステムがウェハを別の所望の場所に移動させる。その後、真空源56からの真空の適用を中断して、ウェハを真空パッド36、38から解放し、エンドエフェクタ32をウェハから離せるようにする。
【0021】
次に
図5及び6を参照して、真空パッド36、38の個々の1つに対するセラミック基板62に、研削、スライス、または別の好適な手法によって形成された共通の上面64を設けてもよい。共通の上面64の平均表面粗さ(Ra)は約0.2ミクロン(μm)であり得る。これは、ウェハのクランプ表面に貼り付くのを防ぐには、平坦または滑らかすぎる場合がある。上面全体64を、デフォーカスレーザによって粗面化して、
図6に示す粗面化された上面66を生成してもよい。粗面66は、
図5に示す表面64よりも粗い。デフォーカスレーザを用いたレーザ粗面化によって、表面64は粗面化されるが、表面64が切断されることはない。
【0022】
デフォーカスレーザを、所望する回数だけ表面64にわたって通して、顧客が要求する所望の表面粗さを実現してもよい。必要に応じて、粗面化されたセラミック基板68の厚さは、ウェハ接触部分44(
図3)のより大きい厚さt
2と同じであってもよい。粗面化された上面66の粗さ(
図6の点描によって概略的に表す)は、最終製品36(38)におけるウェハ接触部分44の上面54(
図3)の粗さと同じであってもよい。
【0023】
図5に例示したセラミック基板62にデフォーカスレーザ粗面化を施した後に、粗面66に好適な機械加工プロセスを施す。これは、放電加工(EDM)、集光レーザ加工、または別の機械加工プロセスであり得る。機械加工(緩和)プロセスによって、粗面化されたセラミック基板68から材料が除去されて、小さくした厚さの主セクション及び内側セクション42、46の上面50、52が生成され、またウェハ接触部分44の上面54または任意の他の部分に影響することなく、ウェハ接触部分44の内側58及び外側70が確立される。機械加工プロセスは、ウェハ接触部分44を主セクション及び内側セクション42、46の上面50、52上に隆起させたままにし、ウェハ接触部分44の上面54を、デフォーカスレーザ粗面化プロセスによって形成された所望の表面粗さで残す。
【0024】
必要に応じて、アイレット36、38の代わりにまたはそれに加えて、エンドエフェクタは、ウェハの裏面をエンドエフェクタのアームにクランプするための真空チャンバを確立するためのリングを有していてもよい。リングは、貼り付くことなく所望のクランプを得るために、リングがウェハと接触する表面上にデフォーカスレーザ粗面化によって確立された好適な粗さを有していてもよい。
【0025】
したがって、本開示によれば、反応結合炭化ケイ素材料は、表面が、デフォーカスレーザ粗面化によって形成された好適な粗さを有して、裏面ウェハ汚染を防ぎ、粗面化されたデバイスが長い耐用年数(摩耗が小さい)を有することを可能にする。ウェハ接触面54は、ウェハに貼り付くのを防ぐために十分に粗くなくてはならない。ウェハ接触面54が平坦で滑らかすぎると、「光学的接触」または「接触結合」と言われる現象によってウェハの裏面に張り付いて望ましくない傾向がある。この現象は以下の文献で述べられている。A Study of Glass Surfaces in Optical Contact,Lord Rayleigh,Proc.Phys. Soc.,A156,326(1936),and Optical Contacting Grows More Robust,Chris Myatt,Nick Traggis,and Kathy Li Dessau,Laser Focus World,2006年1月1日。ウェハと「貼り付く」境界面は、特にエンドエフェクタ32がウェハを効率的かつ迅速にクランプしてアンクランプ(解放)する必要がある半導体製造システムと関連して、許容できない場合がある。
【0026】
他方では、ウェハ接触面54の粗さは、ウェハの裏面との境界面を通して真空漏れを可能にするほど、または、望ましくない早期摩耗を可能にするほど粗くてはいけない。接触面が粗すぎると、適切な真空クランプが実現できない場合がある。すなわち、空気(または別のガス)が、粗すぎる表面の山と谷との間で、ウェハと反応結合炭化ケイ素材料との間で漏れる可能性がある。また、粗すぎる(尖った)表面は、ベアリング比が低いために急速に摩耗する可能性がある。
【0027】
本開示では、半導体製造設備を通してウェハをロボットで移動させるために使用できる真空エンドエフェクタ(真空EE)のウェハ接触面に対して、反応結合炭化ケイ素材料を有利に用いている。ポリマー、金属、及び酸化物セラミックなどの他の可能なウェハ接触材料と比較して、反応結合炭化ケイ素は、高純度、高硬度、及び一貫したトライボロジー境界面が得られる。反応結合炭化ケイ素がウェハ表面に触れる用途では、十分に管理された表面粗さが必要とされ得る。ウェハ接触面が滑らかすぎると、光学接触結合を介してウェハが貼り付く場合があり、表面が粗すぎると、真空漏れが発生して、堅固なクランプができなくなる場合がある。
【0028】
したがって、本開示では、反応結合炭化ケイ素で形成され、エンドエフェクタアセンブリ上に配置されたウェハ接触コンポーネントの所望の制御された粗さを生成するためのレーザ粗面化方法について説明する。前述したように、反応結合炭化ケイ素は、炭化ケイ素(SiC)と元素シリコン(Si)との二相複合材料であり、二相は異なる速度で機械加工されるため、粗面化に特に適している場合がある。
【0029】
粗面化プロセスは、レーザビームを基板62の表面64に印加することによって行ってもよい。必要に応じて、レーザビームは、ビーム波長(λ)が1,064ナノメートル(nm)の100ワット(W)レーザビームを生成するように構成されたファイバレーザツールであるDMG Mori Laser Tech45 シェイプマシンツールによって生成してもよい。レーザビームはデフォーカスしなくてはならない。すなわち、ビームの理想的な焦点をセラミック基板62の表面64から変位させなくてはならない。基板表面64は粗面化しなくてはいけないが、切断してはならない。本開示の一態様によれば、粗面は平均粗さ(Ra)が0.3~1.1μmの範囲でなくてはならない。本開示の別の態様によれば、粗面は平均粗さ(Ra)が0.36~0.44μmの範囲であってもよい。必要に応じて、平均表面粗さはMitutoyo SJ-210表面粗さ計によって測定してもよい。
【0030】
動作時には、レーザビームのデフォーカスを、レーザビームの理想的な焦点を、基板表面64から離れて、基板表面64に直交する方向に、0.9~1.1ミリメートル(mm)の範囲の距離だけ変位させることによって行ってもよい。そのデフォーカス部分がウェハ表面に入射する点でのレーザビームの強度は、7.2~8.8Wの範囲であってもよい。レーザビームは、90~110キロヘルツ(kHz)の範囲のパルス周波数(f)でパルス状にしてもよい。レーザビームのパルス持続時間(t)は、109~132ナノ秒(ns)の範囲であってもよい。レーザビームのトラッキング速度(v)、すなわち、ビームの入射部分が基板表面64の平面内で基板表面64にわたって移動する速度は、2,250~2,750ミリメートル/秒(mm/s)の範囲であってもよい。
【0031】
必要に応じて、異なる表面場所において異なる数のレーザパスを用いることによって、粗さ勾配を伴うコンポーネントを形成することができる。
図7は、前述したデフォーカスレーザによって行われるパスの数の関数としての反応結合炭化ケイ素材料の平均表面粗さRa(μm)のグラフである。
【0032】
本開示は、本明細書に記載のアイレット36、38の製造または使用に限定されない。またレーザ粗面化プロセスは、エンドエフェクタパッド、リング、及びカップなど、セラミック、特に反応結合炭化ケイ素の表面を備えた種々の他のデバイスを製造するために用いてもよい。また本明細書に記載のレーザ粗面化プロセスは、半導体製造プラントにおいて使用され得る種々の他のデバイス、特にウェハと接触するデバイス、及び真空ウェハーピンチャック、真空ウェハースルーホールチャック、及び静電チャックなどの制御された表面粗さが望まれるデバイスを製造するために用いてもよい。また本明細書に記載のレーザ粗面化プロセスは、ベアリングシール、シリンダライナ、人間の人口関節(股関節、膝など)、接合面、及びエアベアリング面など、デバイスの1つ以上の表面が制御された粗さを有することが望ましい種々の他のデバイス、特にセラミックデバイスを製造するために用いてもよい。
【0033】
次に、
図8を参照して、本開示の一態様によれば、デフォーカスレーザ制御粗面化プロセスは、セラミック基板62を用意するステップと、レーザビームのデフォーカス部分を所望する回数だけ基板表面64にわたって送って粗面66を形成するステップ(ステップ100)と、そして粗面66の1つ以上の部分を機械加工(除去)して、接触部分44を浮き彫りの表面50、52上方に隆起させたままにするステップ(ステップ102)と、を含む。本開示の好ましい態様によれば、接触部分44の表面54及び周囲の浮き彫りの表面50、52は、(材料の1つの単一部片の)互いに一体であってもよく、反応結合炭化ケイ素材料(または別の好適なセラミック材料)で形成してもよい。必要に応じて、接触部分44の表面54の制御された粗さを用いて、半導体ウェハの裏面に隣接した吸引チャンバ60を確立してもよい。
【外国語明細書】