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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143850
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】コロナウイルス感染症予防用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/14 20060101AFI20230928BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230928BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230928BHJP
   A23L 33/185 20160101ALI20230928BHJP
   A23G 4/06 20060101ALI20230928BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61K38/14
A61P31/14
A61K47/02
A61K36/48
A61K9/20
A23L33/105
A23L33/185
A23G4/06
A23G3/34 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045934
(22)【出願日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2022047380
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506112410
【氏名又は名称】株式会社トップライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100152250
【弁理士】
【氏名又は名称】峰松 勝也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征也
(72)【発明者】
【氏名】モハメド ハゼム カラジ
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4C076
4C084
4C088
【Fターム(参考)】
4B014GB06
4B014GB13
4B014GG13
4B014GK03
4B014GK05
4B014GK11
4B014GK12
4B014GL10
4B014GP01
4B018LB01
4B018MD20
4B018MD57
4B018ME14
4B018MF01
4C076AA36
4C076AA69
4C076BB01
4C076CC35
4C076DD30
4C076FF01
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA34
4C084BA44
4C084CA15
4C084MA01
4C084MA35
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZB33
4C088AB59
4C088AC04
4C088BA17
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZB33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】口腔内に投与され、注射をする必要が無く簡便で安価に感染を抑制することができる、新型コロナウイルス感染症等に有効な予防用組成物を提供する。
【解決手段】新型コロナウイルスの外殻に突出するスパイク蛋白に親和性が高いコンカナバリンA(ConA)とアルカリ成分とを口腔内に投与することにより、口腔内、咽頭部又は喉頭部においてウイルスの感染力を無力化して、気道や肺胞の上皮細胞にウイルスが侵入して増殖するのを阻止することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンカナバリンA(ConA)とアルカリ成分とを含有し、口腔内に投与されることを特徴とする、コロナウイルス感染症予防用組成物。
【請求項2】
口腔内、咽頭部又は喉頭部の一部又は全部において、コンカナバリンA(ConA)の濃度が20μg/mL以上、且つ、pHが9.0以上となるように用いられることを特徴とする、請求項1に記載のコロナウイルス感染症予防用組成物。
【請求項3】
コンカナバリンA(ConA)の濃度が20~80μg/mLの範囲、且つ、pHが9.0~11.0の範囲となるように用いられることを特徴とする、請求項2に記載のコロナウイルス感染症予防用組成物。
【請求項4】
コロナウイルス感染症が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)であることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のコロナウイルス感染症予防用組成物。
【請求項5】
コンカナバリンA(ConA)を含有するナタマメ粉末と、アルカリ成分として水酸化カルシウムとを含有することを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のコロナウイルス感染症予防用組成物。
【請求項6】
飴、ガム又トローチであることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のコロナウイルス感染症予防用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルス感染症の予防用組成物に関する。より詳しくは、口腔内に投与され、注射をする必要が無く簡便で安価に感染を抑制することができる、新型コロナウイルス感染症等に有効な予防用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間と動物の接触する機会が多い特定の集団や地域において、新たなウイルス感染症が突然発生して急増する、アウトブレイクやエピデミックが度々発生している。医療が発達した現代でも新たな治療方法の確立には数年単位の時間がかかり、交通機関の発達により短時間で感染が急拡大することから世界的に大きな問題となっている。
【0003】
2002年に中国広東省で発生したキクガシラコウモリが自然宿主と推定されるコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS)のエピデミックや、2012年にサウジアラビアで発生したヒトコブラクダが自然宿主と推定されるコロナウイルスによる中東呼吸器症候群(MARS)のエピデミックは記憶に新しい。
【0004】
そして、2019年に中国武漢市で発生したコウモリ又はセンザンコウが自然宿主と推定されるコロナウイルスによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のエピデミックは、1年後には世界的な大流行となり世界保健機関(WHO)によりパンデミックに認定された。2021年末で患者数は2億2千万人に達しており致死率は2%を超えている。
【0005】
現代においてもウイルス感染症の予防対策の中心は、ワクチン接種により液性及び細胞性免疫を誘導して生体防御力を高めることである。その有効性と安全性を両立したワクチンの開発には、数年単位の時間と多額の費用が必要となる。SARSやMARSのエピデミックでは、ワクチンの開発は試みられたが感染拡大が鎮静化したことや経済的な理由から実用化されなかった。
【0006】
SARSのエピデミック後には、ワクチンの他に予防や治療のための医薬組成物の開発も試みられている。例えば、特許文献1にはSARSの予防等のためのマンノース結合レクチン(MBL)オリゴマーを含む医薬組成物が開示されている。MBLは主にそのオプソニン化活性により抗SARS活性を発揮し、MBLの予防処置によりSARSを予防すること又は個体がSARSにかかるリスクを低減することが可能であるとしている。
【0007】
また、特許文献2にはMBL組み換えタンパク質を有効成分で含む補体系活性化組成物が開示されている。MBLはウイルス表面に結合して複合体を形成し、補体系を活性化して抗ウイルス活性を発揮し、SARSやB型肝炎の予防や治療用途に使用することができるとしている。実施例においては、MBL組み換えタンパク質で処理した場合に濃度依存的にSARS-CoVの感染が抑制され、2.5μg/mLで処理した場合にSARS-CoVの増殖が約15%以下に抑制されたと記載されている。
【0008】
一方、COVID-19のエピデミックは、未曾有のパンデミックに感染拡大したため、各国政府が多額の資金を投じて、製薬企業が遺伝子工学を駆使してワクチンの開発が進められた。その結果、mRNAワクチンなどの新しいワクチンが早期に実用化され、各国において大規模接種が実施され感染抑制に大きな成果をあげている。
【0009】
しかし、全ての国民に複数回のワクチン接種を実施するためには多大な労力と多額の費用が必要となる。また、免疫反応に伴う副反応は避けられず、新規なワクチンを接種することへの抵抗感も少なくない。そのため、ワクチン接種よりも簡便で安価であり、COVID-19の感染抑制に有効な補助的な予防対策も強く求められている。
【0010】
本発明者は、植物由来のMBLであるコンカナバリンA(ConA)の抗ウイルス効果と安全性に着目して、簡便で安価にウイルス感染症を抑制することができる予防用組成物の研究を行ってきた。例えば、特許文献3にはConAを有効成分として含有し、インフルエンザなどのウイルス感染症に罹患する前に気道や消化管等の上皮細胞に投与して処置することにより、ウイルス感染症を抑制することができる予防用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2006-522751号公報
【特許文献2】韓国特開2004-106194号公報
【特許文献3】特開2019-214555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示された医薬組成物では、ヒト血液由来のMBLや遺伝子組み換えヒトMBLを用いており、大量に安定して調製することが難しくコストが嵩んでしまう。また、実施例においてSARS-CoVに対するMBLの特異的結合能と、それによる感染力の抑制効果を評価する方法が記載されているが、実際の抑制効果は具体的に記載されておらず不明である。
【0013】
また、特許文献2に開示された補体系活性化組成物では、同様に遺伝子組み換えヒトMBLを用いており、大量に安定して調製することが難しくコストが嵩んでしまう。また、実施例においてSARS-CoVの増殖が最大で約15%以下に抑制されたと記載されているが、飛沫よりも小さなエアロゾルを吸入することによっても感染する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染予防では不十分と考えられる。
【0014】
15%以下の増殖抑制効果では、咽頭部や喉頭部においてウイルスの感染力を無力化することはできず、残存したSARS-CoV-2は気管支や肺胞に到達して増殖するおそれがある。また、咽頭部や喉頭部において増殖したウイルスを、咳やくしゃみ、会話により発生する飛沫やエアロゾルにより外部に拡散させてしまうおそれもある。よって、SARS-CoV-2の感染予防では、従来のSARS-CoVよりも高い増殖抑制効果が必要と考えられる。
【0015】
さらに、特許文献3に開示されたウイルス感染症予防用組成物は、宿主細胞側のウイルス受容体とConAの親和性に着目して開発されたものである。ウイルス外殻のスパイク蛋白質の構造や、その特異的受容体の構造が全く異なるコロナウイルスへの有効性は未知数である。
【0016】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、注射をする必要が無く簡便で安価に、感染力の強い新型コロナウイルス感染症等を効果的に抑制することができる予防用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、コロナウイルスの外殻から突出するスパイク蛋白質に親和性が高いコンカナバリンA(ConA)とアルカリ成分とを口腔内に投与して、口腔内、咽頭部及び喉頭部においてアルカリ環境下でConAを作用させ、ウイルスの感染力を無力化することによりコロナウイルス感染症を効果的に予防できる可能性を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、コンカナバリンA(ConA)とアルカリ成分とを含有し、口腔内に投与されることを特徴とする、コロナウイルス感染症予防用組成物である。
【0019】
ConAはコロナウイルスの外殻から突出するスパイク蛋白質と結合して、コロナウイルスが宿主細胞の表面のウイルス受容体に結合するのを物理的に阻害することができる。また、植物由来で安全性が高く大量に安定して調達することができる。ConAをアルカリ成分と共に口腔内に投与することにより、ConAでコロナウイルスを補足してアルカリ環境下で失活させる相乗効果により、非常に高い感染抑制効果を実現することができる。
【0020】
また、本発明の一実施態様は、口腔内、咽頭部又は喉頭部の一部又は全部において、コンカナバリンA(ConA)の濃度が20μg/mL以上、且つ、pHが9.0以上となるように用いられることを特徴とする、前記コロナウイルス感染症予防用組成物である。
【0021】
さらに、本発明の一実施態様は、コンカナバリンA(ConA)の濃度が20~80μg/mLの範囲、且つ、pHが9.0~11.0の範囲となるように用いられることを特徴とする、前記コロナウイルス感染症予防用組成物である。
【0022】
口腔、咽頭部又は喉頭部の一部又は全部を、上記所定のConA濃度、且つ、所定のpHとすることにより、鼻や口から侵入したコロナウイルスの大部分を口腔内、咽頭部又は喉頭部で失活させて感染力を無力化することができ、さらに高い感染抑制効果を発揮することができる。
【0023】
また、本発明の一実施態様は、コロナウイルス感染症が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)であることを特徴とする、前記コロナウイルス感染症予防用組成物である。
【0024】
本発明のコロナウイルス感染症予防用組成物は、口腔内、咽頭部又は喉頭部において極めて高いウイルス抑制効果を発揮できるため、空気中に漂うエアロゾルを吸入しても感染する感染力の強い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に特に効果的である。
【0025】
さらに、本発明の一実施態様は、コンカナバリンA(ConA)を含有するナタマメ粉末と、アルカリ成分として水酸化カルシウムとを含有することを特徴とする、前記コロナウイルス感染症予防用組成物である。
【0026】
ナタマメ粉末と水酸化カルシウムは、食品や健康食品の成分や添加物として用いられている安全性の高い原材料である。天然由来のものが容易に入手でき、これらを有効成分として配合することにより、食品や医薬品としての安全性を高め、製造コストを抑えることができる。
【0027】
また、本発明の一実施態様は、飴、ガム又はトローチであることを特徴とする、前記コロナウイルス感染症予防用組成物である。
【0028】
これらの製品形態とすることにより、簡便で安価に連続的又は断続的に投与することができ、口腔、咽頭部又は喉頭部の一部又は全部を、所定のConA濃度かつ所定のpHの範囲とすることができ効果的である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のコロナウイルス感染症予防用組成物を予め口腔内に投与して、鼻や口から侵入したコロナウイルスに対し、口腔内、咽頭部又は喉頭部においてアルカリ条件下でコンカナバリンA(ConA)を作用させることにより、その大部分を不活化することができ、注射をする必要が無く簡便で安価に感染を抑制することができる。
【0030】
特に、口腔内、咽頭部又は喉頭部の一部又は全部において、ConAの濃度が20μg/mL以上、且つ、pHが9.0以上となるように用いることにより、非常に高いウイルス抑制効果を実現することができるため、感染力が強い新型コロナウイルス感染症に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】新型コロナウイルスの構造とウイルス受容体との結合を示す説明図である。
図2】コンカナバリンA(ConA)の抗ウイルス効果の作用機序を示す説明図である。
図3】実施例1におけるSARS-CoV-2に対するConAの抗ウイルス効果を示すグラフである。
図4】実施例2におけるSARS-CoV-2に対する各pH条件下でのConAの抗ウイルス効果を示すグラフである。
図5】試験例1におけるナタマメ粉末中のConA含有量を算出するための検量線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のコロナウイルス感染症予防用組成物について詳細に説明する。なお、説明が省略されている成分、組成、製法等については、当該技術分野の当業者に知られているものと同一又は実質的に同一のものとすることができる。
【0033】
本発明のコロナウイルス感染症予防用組成物は主にヒトに用いられる。コロナウイルス感染症はヒトや動物において一般的な感染症であり、一部の株に関してはヒトと動物の間で伝播する人獣共通感染症であることから、剤形により犬や猫等の動物に用いてもよい。
【0034】
ヒトに感染するコロナウイルスには、従来から風邪の病原体として広く蔓延している4種類(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)と、動物から種の壁を越えてヒトに感染した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルス(SARS-CoV-2)が知られている。
【0035】
本発明の予防対象は感染抑制効果が認められるコロナウイルスであれば限定されないが、重症化のリスクが高いSARS-CoV、MERS-CoV及びSARS-CoV-2への予防効果が期待され、特にSARS-CoV-2への予防効果が期待される。
【0036】
なお、本発明の主な用途は予防であるが、感染が疑われる場合や感染初期の段階で、症状の発症や症状の悪化を抑制するため投与される治療の用途も含むものとする。
【0037】
コロナウイルスは、感染者の咳やくしゃみ、会話により排出されるウイルスを含む飛沫を吸入することにより感染することが知られている。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はさらに感染力が強く、飛沫よりも小さなウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸入することによっても感染する。口や鼻から侵入したコロナウイルスは、口腔や鼻腔、咽頭、喉頭を通り、さらに気管、気管支、細気管支を通って肺胞に達し、これらの組織の上皮細胞に侵入して増殖する。
【0038】
最近の研究では、血圧と血流を調整するレニン・アンジオテンシン系のACE2受容体が、SARS-CoV-2のウイルス受容体として機能することが解明されている。ACE2受容体は上気道等にも広く分布しており、SARS-CoVやHCoV-NL63のウイルス受容体としても知られている。図1はSARS-CoV-2の構造と宿主細胞表面のACE2受容体との結合を示す説明図である。ウイルス粒子の脂質二重膜からなる外殻(エンベロープ)には多数のスパイク蛋白質が突出しており、これが宿主細胞表面のACE2受容体に結合する。スパイク蛋白質とACE2受容体とは鍵と錠のように特異的に結合する。
【0039】
続いて、宿主細胞表面の酵素(TMPRSS2)がスパイク蛋白質を切断してその一部を露出させると、その部位からウイルスのエンベロープと宿主細胞の細胞膜との融合が始まる。ウイルスが細胞内に侵入すると脱殻してウイルスRNAが細胞質中に放出され、小胞体においてウイルス本体の複製が開始される。
【0040】
本発明のコロナウイルス感染症予防用組成物は、コンカナバリンA(ConA)とアルカリ成分とを有効成分として含有することが特徴である。コロナウイルス感染症に罹患する前に口腔内に投与して、気管支や肺胞にコロナウイルスが到達する前段階の、口腔内、咽頭部や喉頭部においてコロナウイルスの感染力を無力化し、簡便且つ効果的にコロナウイルス感染症を予防することができる。
【0041】
図2はConAの抗ウイルス効果の作用機序を示す説明図である。ConAはSARS-CoV-2のスパイク蛋白質と親和性が高く、これに結合することによりACE2受容体への結合を物理的に阻害することができる。スパイク蛋白質表面の糖鎖にマンノースリッチな側鎖があり、マンノース結合型レクチンのConAとの親和性が高いと考えられる。さらに、アルカリ成分によりアルカリ環境化とすることで、ウイルス本体を不活化させることができる。ConAで補足してアルカリ成分で確実に死滅させることができる。
【0042】
本発明が含有するコンカナバリンA(ConA)は、ナタマメ由来のマンノース結合型レクチン(Mannose binding lectin,MBL)である。低コストで製造でき安全性が高く、食品や医薬品に添加しても香りや味への影響が少ない。なお、ConAの一部の構造が置換や修飾により変更された誘導体、2量体や4量体等の多量体、凝集体であっても、作用効果においてConAと同一視できる場合には、本発明が有効成分として含有するConAの範囲に含まれるものとする。
【0043】
原料として精製されたConAを用いてもよく、ナタマメ粉末を用いてもよい。ナタマメ粉末には蛋白質のConAが豊富に含まれている。その他にも、アミノ酸のカナバニン及び酵素蛋白質のウレアーゼが豊富に含まれており、カナバニン及びウレアーゼによる抗炎症、血行促進、口臭予防等の効果も期待できる。
【0044】
本発明は口腔内に投与され唾液や粘液で希釈された後、口腔内、咽頭部又は喉頭部の表面の一部又は全部において、ConAが所定の濃度になるように用いられる。十分な感染抑制効果が発揮できるように半分以上の大部分の領域において所定の濃度となるように用いることが好ましいが、一定の感染抑制効果が期待できるため部分的な領域において所定の濃度となるように用いてもよい。
【0045】
本発明においてConAの濃度は、好ましくは10μg/mL(0.001重量%)以上、より好ましくは20μg/mL(0.002重量%)以上、さらに好ましくは40μg/mL(0.004重量%)以上、さらにより好ましくは20μg/mL(0.002重量%)~80μg/mL(0.008重量%)の範囲となるように用いられる。
【0046】
本発明の製品形態におけるConAの含有量は、口腔内に投与後に上記所定の濃度になり、食品や医薬品としての好適な香りや味が損なわれない範囲に設定される。例えば、口腔内投与時の形状・重量、口腔内での滞留時間、有効成分の徐放性、唾液の分泌量等を考慮して設定される。
【0047】
具体的には、製品がハードキャンディーの場合には、形状が略球状で重量4g、口腔内での溶解時間10分間、口腔内の唾液量2.5mL、口腔内投与後の唾液分泌量4mL/分の条件を想定すると、飴組成物の全体量に対してConAの含有量は、好ましくは0.016重量%以上、より好ましくは0.033重量%以上、さらに好ましくは0.065重量%以上、さらにより好ましくは0.033~0.13重量%の範囲とすることが例示される。
【0048】
後述する試験例1のナタマメ粉末中のConA含有量の定量試験において、ConA含有量は4.65重量%であった。この結果から計算すると、飴組成物の全体量に対してナタマメ粉末の含有量は、好ましくは0.35重量%以上、より好ましくは0.70重量%以上、さらに好ましくは1.40重量%以上、さらにより好ましくは0.70~2.80重量%の範囲が例示される。
【0049】
本発明が含有するアルカリ成分には、粘膜や組織への刺激が少なく安全性が高いアルカリ成分が用いられる。食品又は医薬品の添加物として認可され使用されているアルカリ化合物が好ましい。水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。石灰岩、貝殻等の天然由来のものが好ましく、水酸化カルシウムが最も好ましい。食品添加物品質規格に準拠した水酸化カルシウムが特に好ましく、FNPパウダー(フィーネナチュラル社製)などが挙げられる。
【0050】
本発明は口腔内に投与され唾液等で希釈された後、口腔内、咽頭部又は喉頭部の一部又は全部において、pHが所定の範囲になるように用いられる。一部又は全部の意味は上記と同様である。本発明においてpHの範囲は、好ましくはpH8.5以上、より好ましくはpH9.0以上、さらに好ましくはpH9.0~11.0の範囲となるように用いられる。アルカリ成分の電離度や溶解度にもよるが、一般的にpHが12.0以上になると蛋白質が変性することが知られており粘膜や組織への影響が考えられるため、pH12.0以上のアルカリ性は好ましくなく、pH11以下の弱アルカリ性が好ましい。
【0051】
本発明の製品形態におけるアルカリ成分の含有量は、口腔内に投与後に上記所定のpHになり、粘膜や組織への刺激が少なく安全性が高く、食品や医薬品としての好適な香りや味が損なわれない範囲に設定される。上記と同様に、口腔内投与時の形状・重量、口腔内での滞留時間、有効成分の徐放性、唾液の分泌量等を考慮して設定される。
【0052】
具体的には、製品が上記のハードキャンディーで、アルカリ成分が水酸化カルシウムの場合には、飴組成物の全体量に対してその含有量は、好ましくは1.9×10-4重量%以上、より好ましくは6.0×10-4重量%以上、さらに好ましくは6.0×10-4~6.0×10-2重量%の範囲とすることが例示される。
【0053】
本発明の製品形態は、所定の抗ウイルス効果を発揮でき、簡便で確実に効率よく口腔内に投与でき、安価に製造できる形態であれば限定されない。食品等に関する法律で規定される食品、健康食品又は特定保健用食品でもよい。医薬品等に関する法律で規定される医薬品又は医薬部外品でもよい。
【0054】
食品としては、連続的又は断続的に口腔内、咽頭部及び喉頭部の上皮細胞に、ConA及びアルカリ成分を投与できる形態が望ましく、飴、ガム、飲料及び粉末飲料が好ましく例示される。
【0055】
飴としては、糖原料(砂糖、ブドウ糖、水飴等)90~95重量%、香料(天然植物精油等)0.05~1重量%、着色料(天然色素等)適量、及び酸化防止剤(トコフェロール等)適量等、並びに有効成分としてConA0.1重量%(ナタマメ粉末2.15重量%)、及び水酸化カルシウム(FNPパウダーなど)0.05重量%を、常法により混合して飴生地を調製し所定量を成形したハードキャンディーが例示される。これを1日数回口腔内で溶かして、ConA及びアルカリ成分を口腔内、咽頭部及び喉頭部に投与する。
【0056】
ガムとしては、ガムベース(植物性樹脂、酢酸ビニル樹脂、エステルガム等)20~40重量%、甘味料(砂糖、ブドウ糖、水飴等)50~80重量%、香料(天然植物精油等)0.05~1重量%、軟化剤(水、グリセリンなど)適量、及び酸化防止剤(トコフェロール等)適量等、並びに有効成分としてConA0.1重量%(ナタマメ粉末2.15重量%)、及び水酸化カルシウム(FNPパウダーなど)0.05重量%を、常法により混合してガム生地を調製し所定量を成形して糖衣をコーティングした粒状ガムが例示される。これを1日数回口腔内で噛み、ConA及びアルカリ成分を口腔内、咽頭部及び喉頭部に投与する。
【0057】
また、医薬品又は医薬部外品としては、同様に連続的又は断続的に口腔内、咽頭部及び喉頭部の上皮細胞にConA及びアルカリ成分を投与できる形態が望ましく、トローチ剤、用時希釈又は溶解して用いる含嗽剤、口腔内洗浄剤、口腔内又は咽頭部へのスプレー剤、口腔から吸入するエアロゾル製剤(MDI)及びドライパウダー製剤(DPI)が好ましく例示される。
【0058】
上記各種製剤の製剤設計では、医薬品分野の当業者に知られている公知の手段を用いることができる。例えば、スプレー剤では組織への付着性を改善するために粘稠化剤の種類と含量により粘度と性状を調整してもよい。吸入剤では組織への伝達性を改善するために薬剤の粒径や粒度分布を最適化してもよい。
【0059】
トローチ剤としては、糖原料(砂糖、ブドウ糖、水飴等)90~95重量%、増粘剤(アラビアガム、キサンタンガム等)1~6重量%、香料(天然植物精油等)0.05~1重量%、着色料(天然色素等)適量、及び酸化防止剤(トコフェロール等)適量等、並びに有効成分としてConA0.1重量%(ナタマメ粉末2.15重量%)、及び水酸化カルシウム(FNPパウダーなど)0.05重量%を、常法により混合して生地を調製し所定量を成形したトローチが例示される。これを1日数回口腔内で溶かして、ConA及びアルカリ成分を口腔内、咽頭部及び喉頭部に投与する。
【0060】
含嗽剤としては、純水90~97重量%、界面活性剤(ポリソルベート80など)0.01~0.5重量%、保存剤(エタノールなど)0.5~5重量%、保湿剤(グリセリンなど)0.5~5重量%、香料(天然植物精油等)0.05~1重量%、酸化防止剤(エデト酸ナトリウム水和物等)0.01~0.5重量%、及び緩衝剤(リン酸水素ナトリウム水和物等)適量等、並びに有効成分としてConA0.5重量%、及び水酸化カルシウム(FNPパウダーなど)0.17重量%を、常法により混合して原液を調製し所定の容器に充填した用時希釈の含嗽剤が例示される。これを水で数倍に希釈し1日数回含嗽して、ConA及びアルカリ成分を口腔内、咽頭部及び喉頭部に投与する。
【0061】
上記本発明の食品、医薬品及び医薬部外品において、その原材料、各種添加物、組成比率、収容容器、製造方法等に関しては、ConAやアルカリ成分の作用を損なわない範囲内で適宜設定される。食品や医薬品分野等において汎用されている一般的なものを採用することができるが、ConA等のレクチンは温度が80℃を超えると生理活性が低下するおそれがあるため、80℃以下の工程で製造されることが望ましい。
【0062】
本発明のコロナウイルスウイルス感染症予防組成物の1日当たりの投与回数及び投与量は、本発明の効果を最大限に発揮させるために、性別、体重、年齢、症状等に応じて適宜増減される。また、商品として流通している予防用組成物を投与する場合と、自家調製の予防用組成物を投与する場合の両方を含むものとする。
【実施例0063】
以下、本発明のコロナウイルス感染症予防用組成物について、実施例及び試験例を参照して具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
[実施例1]
<コンカナバリンAの新型コロナウイルスに対する抗ウイルス試験1>
供試材料としてコンカナバリンA(ConA)(生化学用、富士フイルム和光純薬社製)を、供試ウイルスとして新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を、感受性細胞としてアフリカミドリザル腎臓継代細胞(VeroE6/TMPRSS2細胞)を用いた。
【0065】
ConAはPBSに溶解し、さらに最小必須培地(MEM)で希釈して、80、40、20、10、5μg/mLの5段階の濃度に調整した。これらのConA溶液を0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調整した。VeroE6細胞をMEM培地で希釈して1×10cell/mLの濃度に調整した。この細胞液をマイクロウェルプレートの各ウェルに2mL加え、37℃、COインキュベータで24時間培養してシートを形成させた。このシートをPBSで1回洗浄した。
【0066】
上記培養した細胞シートに、上記5段階の濃度のConA溶液を1mL添加して処理し、同時に感染多重度(MOI)=0.01となるようにMEM培地で調整したSARS-CoV-2を接種して感染あるいは偽感染させた。その後、37℃、COインキュベータで3日間培養した。
【0067】
各濃度のConAで処理したサンプルの細胞生存率を色素法(MTT法)で測定して、抗ウイルス効果の判定を行った。試験は1サンプルにつき3ウェルを使用した(in triplicate)。ConAの処理濃度が0μg/mLの時の、非感染細胞の細胞生存率を100%とし、感染細胞の細胞生存率を0%として、ウイルスによって誘導される細胞死に対するConAの阻害効果を算出した。結果を下記表1及び図3に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
上記結果より、ConAの処理濃度が40μg/mLでは感染細胞において100%のウイルス抑制効果を示すことが分かる。なお、ConAの処理濃度が80μg/mLでは非感染細胞の細胞生存率が低下していることが分かる。本発明者らの試験により天然物質由来のConAの細胞毒性は低いことが確認されており、本実施例において細胞生存率が低下した原因として、培養細胞に対する物理的な運動阻害(接触阻害)や培地成分の濃度バランスが影響した可能性が考えられる。
【0070】
[実施例2]
<コンカナバリンAの新型コロナウイルスに対する抗ウイルス試験2>
培養したVeroE6細胞にSARS-CoV-2を接種する際に、同時に添加するConA溶液のpHを0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて下記表2の6段階に調整したこと以外は、実施例1と同様にしてConAの抗ウイルス効果を確認した。結果を下記表2及び図4に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
上記結果より、ConAの濃度が高いほど且つpHが高いほど、SARS-CoV-2に対する感染抑制効果が高くなることが分かる。特に、ConA濃度20μg/mL以上且つpH9.0以上では抑制効果が非常に高く、ConA濃度20μg/mL以上且つpH10.5以上では100%抑制されることが分かる。ConA濃度80μg/mLでもpHが高くなるほど細胞生存率が向上していることが分かる。なお、ConA濃度20μg/mL以上且つpH11以上の条件では、100%抑制されることが確実のため試験を省略している。
【0073】
[試験例1]
<ナタマメ粉末中のコンカナバリンA含有量の定量試験>
ELISA法によりナタマメ粉末中のConA含有量を定量した。標準サンプルの吸光度測定結果から検量線を作成し、試験サンプルの吸光度測定結果を当てはめることでConA含有量を算出した。
【0074】
(試験サンプルの調製)
ナタマメ粉末1gに8mLの溶解用バッファを加え、室温で振盪攪拌して溶解した。この溶解液を低速遠心分離(200×g、3分、20℃)し、上清を回収して試験サンプルとした。
【0075】
(固相プレートの作製)
固相抗体として非結合ウサギ抗ConA抗体(EY Laboratories社製、Cat No.AL-1104-2)を用いた。これを固相液の0.005M炭酸バッファ(pH9.5)で0.5μg/mLに希釈した。この溶液を十分に攪拌した後、96ウェルプレート(Nunc社製、Cat No.468667)の各ウェルに100μLずつ分注した。4℃で一晩静置して固相した後、洗浄液(0.05M PBS,1.45M NaCl,0.5% Tween-20)で3回洗浄した。各ウェルにブロッキング液(1wt% Perfect-Block溶液、MOB社製、Cat No.PB01)を200μLずつ分注して固相プレートを作製した。
【0076】
(標識抗体の調製)
標識抗体としてヤギ抗ConAポリクローナル抗体(HRP標識)(OriGene Technologies社製、Cat No.AP21430HR-N)を用いた。バックグラウンドを低減するために、次のように標識抗体にウサギ血清を加えて吸収処理を行った。0.1%BSA/PBSにタンパク濃度が1mg/1mLになるよう正常ウサギ血清(タンパク濃度76.2mg/mL)を添加し、この溶液で標識抗体を100倍希釈した後、4℃で一晩静置した。
【0077】
(標準サンプルの調製)
検量線の作成のため、生化学用のConA(富士フイルム和光純薬社製、製品コード031-08774)を、PBSで下記表3の濃度になるように希釈して標準サンプルとした。
【0078】
【表3】
【0079】
(ELISA手順)
作製した固相プレートの各ウェルを300μLの洗浄液で3回洗浄した。次に各ウェルに希釈した標準サンプル及び試験サンプルのConA溶液を100μLずつ添加して37℃で30分間静置した。その後各ウェルを300μLの洗浄液で3回洗浄した。次に調製した標識抗体をPBSでさらに250倍に希釈(最終的に25000倍に希釈)し、各ウェルに100μLずつ添加して37℃で30分間静置した。その後各ウェルを300μLの洗浄液で3回洗浄した。
【0080】
次に各ウェルに発色液(TMB One Component HRP Microwell Substrate、SurModics社製、Cat No.TMBW-0100-01))を100μLずつ添加して20℃で15分間静置した。その後各ウェルに反応停止液(0.3M硫酸)を100μLずつ添加した。続いてプレートリーダで450nmの吸光度を測定した。標準サンプルの測定結果から検量線を作成し、試験サンプルの測定結果からナタマメ粉末中のConA含有量を算出した。検量線を図5に示す。2回の測定でナタマメ粉末のConA含有量は4.85及び4.46wt%であり平均値は4.65wt%であった。
【0081】
[実施例3]
<ナタマメ粉末配合飴溶解液の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス試験1>
水飴にナタマメ粉末(ConA含有量4.65wt%)が2wt%になるように配合し80℃以下の温度で混練して3gの飴生地を調製した。この飴生地3gを5mLのPBSで溶解した。この飴溶解液中のConA濃度は560μg/mLとなる。
【0082】
飴溶解液のConA濃度が40μg/mLになるように、さらにPBSで14倍に希釈した。この際、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて飴溶解液のpHを7.5~10.0の6段階に調製した。この各pHの飴溶解液を用いて実施例1と同様の方法でConAの抗ウイルス効果を確認した。結果を下記表4に示す。ナタマメ粉末を用いた試験においても精製したConAと同様に、新型コロナウイルスに対する高い感染抑制効果が認められた。また、pHが高いほど効果が高くなり、特にpH9.0以上では約95%以上の感染抑制効果が認められた。
【0083】
【表4】
【0084】
[実施例4]
<ナタマメ粉末配合飴溶解液の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス試験2>
実施例3で調製したナタマメ粉末を配合したConA濃度40μg/mLでpH10.0の飴溶解液を試験液Aとし、対照サンプルとして滅菌リン酸緩衝液を試験液Bとした。
【0085】
供試ウイルスとして新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、野外オミクロン株)を用いた。この供試ウイルスはヒト由来分離株であり、ヒト唾液よりVero細胞(アフリカミドリザル腎臓上皮由来株化細胞)を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2遺伝子の増幅確認(厚生労働省通知法)、及びL452R(-),G339A(+)の変更確認を行ったウイルス株である。
【0086】
試験液A及びBを各々9mLずつ分取し、ウイルス液1mLを添加した。ウイルス液添加後、混合液A及びBとして室温(25℃)にて所定の時間静置した。続いて混合液A及びBをそれぞれ10倍希釈して、96ウェルプレートに培養したVero細胞に100μLずつ接種した。判定は、37℃、CO(5%)インキュベータで5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、混合液A及びBのウイルス感染価(TCID50/mL)を算出した。
【0087】
観察時点ごとに、対照区に対する試験区の減少率(%)を算出し、抗ウイルス効果を確認した。なお、本試験において減少率は下記式で算出した。
減少率(%)=((対照区-試験区)/対照区)×100
【0088】
試験液Aでは、試験開始時は106.3TCID50/mLであり、開始120分後に<102.5TCID50/mL(定量限界未満)となった。試験液Bでは、試験開始時から開始後120までの間にウイルス量の自然減退(106.3→106.1TCID50/mL)が見られた。以上の結果より、試験資材を用いた試験区では試験資材を用いない対照区と比較して、新型コロナウイルス(オミクロン株)に対して120分の反応で99.97%以上のウイルス感染価の減少が認められた。結果を下記表5に示す。
【0089】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0090】
最近の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、各国でロックダウンが実施されるなど個人生活や経済活動が危機的な状況に追い込まれてしまった。mRNAワクチンなど新しいワクチンの開発とその接種の推進により感染拡大は抑制されつつあるが、ワクチン接種よりも簡便で安価であり誰もが実施できる補助的な予防対策も医療経済上重要である。
【0091】
本発明のコロナウイルス感染症予防用組成物は、天然由来の化合物を有効成分としており口腔内に投与して使用する。口腔、咽頭又は喉頭をConAとアルカリ成分で予め処置しておくことにより、注射をする必要が無く簡便で安価に安全に予防することができる。したがって、医療分野のみならず、食品、健康食品、特定保健用食品、医薬品、医薬部外品等の産業分野において特に有用である。そして、新型コロナウイルス感染症等を効果的に予防することで、経済活動の活性化に寄与するものである。

図1
図2
図3
図4
図5