(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143872
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ミキシングノズル装置
(51)【国際特許分類】
B05B 7/04 20060101AFI20230928BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20230928BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230928BHJP
B01F 23/45 20220101ALI20230928BHJP
B01F 23/47 20220101ALI20230928BHJP
B01F 25/431 20220101ALI20230928BHJP
【FI】
B05B7/04
E02D3/12 101
E04G23/02 B
B01F23/45
B01F23/47
B01F25/431
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047595
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2022049238
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502259469
【氏名又は名称】シンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】野原 光博
【テーマコード(参考)】
2D040
2E176
4F033
4G035
【Fターム(参考)】
2D040AA04
2D040AB01
2D040CB03
2D040DA01
2E176AA01
2E176BB17
4F033QA01
4F033QB03X
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD07
4F033QD15
4F033QE06
4F033QE14
4F033QF01X
4G035AB37
4G035AB41
4G035AC05
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】加圧状態で供給される複数の粘液物を吐出供給先に送りながら均一に混合させ、しかも連続的に安定した状態で短時間に処理できるようにする。
【解決手段】ミキシングノズル挿入筒7内に、加圧状態の複数種の粘液物を送り入れるミキシングノズル10を挿入配置する。ミキシングノズル10は、対峙して配置した支持壁11、支持壁11相互間で立脚配列して支持壁11相互を連結し、相互間が側方変更路17となっている柱壁12、柱壁12の一端縁の上部で左右のいずれか一方、下部で左右のいずれか他方に連設した阻止堰13、阻止堰13の上縁、下縁から延設して送り方向で隣接した柱壁12の他端縁に至る柱壁12相互の間隙内に設ける中央案内片14、隣接する柱壁12の左右部分の中間位置で、中央案内片14と支持壁11との間で一方は支持壁11側に、他方は中央案内片14側に傾斜して、対状に配置した傾斜片16を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧状態で送り入れられる複数種の粘液物を混合させて吐出供給するミキシングノズル装置であって、粘液物が送り入れられるミキシングノズル挿入筒内に着脱自在に挿入配置されるミキシングノズルを備え、このミキシングノズルは、粘液物の一部を堰き止めて流れの向きを変更させる複数の阻止堰を送り方向で適宜間隔毎に配列すると共に、隣接する阻止堰では流れを堰き止めて流れ方向を変更させる部位と、流れを堰き止めない部位とを送り方向で交互に形成してあることを特徴とするミキシングノズル装置。
【請求項2】
ミキシングノズル挿入筒は、断面ほぼ正方形を呈する角筒状に形成されている請求項1に記載のミキシングノズル装置。
【請求項3】
ミキシングノズルは、送り方向に沿って長尺帯状にして相対峙して配置されている支持壁と、この支持壁相互間の中央位置で適宜間隔毎に立脚配列して支持壁相互を連結していて、相互間に側方変更路が設けられている柱壁と、柱壁の一端縁における上部で左右のいずれか一方、同じく下部で左右のいずれか他方に連設した阻止堰と、この阻止堰の上縁あるいは下縁から側方変更路に位置させて設けられる中央案内片と、適宜間隔毎で隣接する中央案内片相互間における隣接する柱壁の左右部分の中間位置で、中央案内片と支持壁との間でいずれか一方は支持壁側に、いずれか他方は中央案内片側に傾斜して、送り方向で位置を違えて対状に配置されている傾斜片とを備えて構成することができる請求項1に記載のミキシングノズル装置。
【請求項4】
支持壁自体の幅員、支持壁相互の幅員は、ミキシングノズル挿入筒の内法幅員に比し大きくはないものとしてある請求項3に記載のミキシングノズル装置。
【請求項5】
阻止堰は、柱壁の前縁あるいは後縁で柱壁と一体状にして断面でL字状に連続しており、隣接する柱壁相互において、いずれか一方の柱壁では上部右側と下部左側とに、いずれか他方の柱壁では下部右側と上部左側とに交互に配されている請求項3に記載のミキシングノズル装置。
【請求項6】
中央案内片は、相対峙している支持壁相互間の中央位置で、かつ隣接する柱壁相互の間隙である前記側方変更路において、左右に沿って上下部分を分割するようにして設けられていて、前記阻止堰の下縁あるいは上縁に連続していることで、側面から見て阻止堰とはL字状あるいは逆L状となった一体状を呈している請求項3に記載のミキシングノズル装置。
【請求項7】
いずれか一方の支持壁側の阻止堰と連続する中央案内片の前端あるいは後端では、その支持壁側に向かって僅かに湾曲している第1案内湾曲部となっており、いずれか他方の支持壁側の阻止堰と連続する中央案内片の前端あるいは後端では、その支持壁側に向かって僅かに湾曲している第2案内湾曲部となっている請求項3,5,6のいずれかに記載のミキシングノズル装置。
【請求項8】
傾斜片は、柱壁の両側それぞれで配置形成されており、中央案内片における第2案内湾曲部に連続されて、左右に分割したいずれか一方に中央案内片から支持壁に向かう第1傾斜部分と、いずれか他方に支持壁から中央案内片に向かう第2傾斜部分とを備え、第1傾斜部分と第2傾斜部分とで形成する空隙は、前記側方変更路に連通している請求項3に記載のミキシングノズル装置。
【請求項9】
ミキシングノズルは、粘液物の流れ方向に対し、柱壁の前縁側に阻止堰が位置させてあるものとして、ミキシングノズル挿入筒内に挿入配置して成る請求項3または5に記載のミキシングノズル装置。
【請求項10】
ミキシングノズルは、粘液物の流れ方向に対し、柱壁の後縁側に阻止堰が位置させてあるものとして、ミキシングノズル挿入筒内に挿入配置して成る請求項3または5に記載のミキシングノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネル内における周囲壁その他におけるクラック等によって生じる出水箇所を補修すべく止水材を加圧状態で連続して供給するに際し、その主剤に混合させるよう所定割合に調整された硬化剤が各別に供給されるとき、吐出供給先に送りながらこれらを均一に混合させるミキシングノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、永年劣化その他によってコンクリート構造物から生じるクラック箇所からの漏水・出水等を防止し、補修するため、出水箇所に止水材を加圧注入し、出水域を凝固化することで補修処理を実施している。例えば特許文献1に示される止水剤、止水工法、及び注入装置である。これは、所定成分の樹脂エマルジョン(A液)とウレタン組成物(B液)を混合して止水剤とし、これらを混合するときにB液の送液量を調整して止水対象物にノズルによって注入するとする、いわゆるSTTG工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、この特許文献1による工法ではウレタン組成物を使用するため、それによる環境汚染、人体に対する好ましくない影響を防止する上で、安全管理に関するガイドラインが定められている。すなわち、ウレタン組成物として、特に2,4-ジイソシアトトルエン及び2,6-ジイソシアトトルエンが含まれていると、これが毒物劇物に指定されていることで、慎重な取り扱いが求められているのである。
【0005】
こうした毒物を含まない止水材とすることを本発明者は鋭意研究した結果、無毒水溶性エマルジョンを開発したのであり、これに基づき、石油樹脂とアクリル系樹脂をポリビニルアルコールによって水に乳化させた水分分散液(樹脂エマルジョン)を主剤とし、ヘキサメチレン=ジイソシアネートのポリイソシアネート(旭化成株式会社製「デュラネートWE50-100」)を硬化剤とし、またこれらと希釈水との混合による止水材の開発に成功した。
【0006】
また、これらの主剤、硬化剤、希釈水等は所定の割合で混合され、更には出水箇所において凝固されるまでの一定時間内で連続的に加圧注入する必要がある。この要請に対応して、本発明者は、更に、加圧状態にある主剤、硬化剤等を一定の割合で混合させる混合装置、出水箇所への連続注入のためのミキシングノズルそれぞれを新たに検討し、ここに本発明を得ることができた。
【0007】
また、これらの主剤、硬化剤、希釈水等は所定の割合で混合され、更には出水箇所において凝固されるまでの一定時間内で連続的に加圧注入する必要がある。この要請に対応して、本発明者は、更に、加圧状態にある粘度が水に近い主剤、粘度が高い硬化剤等を一定の割合で混合させる混合装置、出水箇所への連続注入のためのミキシングノズルそれぞれを新たに検討し、ここに本発明を得ることができた。
【0008】
本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、加圧状態で供給される上記のような一定の割合で供給される高粘度の主剤、硬化剤等を均一に混合させるとき、加圧状態で各別に供給されるそれらを吐出供給先に送りながら均一に混合させ、しかも連続的に安定した状態で短時間に処理できるようにしたミキシングノズル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、加圧状態で送り入れられる複数種の粘液物を混合させて吐出供給するミキシングノズル装置であって、粘液物が送り入れられるミキシングノズル挿入筒7内に着脱自在に挿入配置されるミキシングノズル10を備え、このミキシングノズル10は、粘液物の一部を堰き止めて流れの向きを変更させる複数の阻止堰13を送り方向で適宜間隔毎に配列すると共に、隣接する阻止堰13では流れを堰き止めて流れ方向を変更させる部位と、流れを堰き止めない部位とを送り方向で交互に形成してあることを特徴とする。
ミキシングノズル挿入筒7は、断面ほぼ正方形を呈する角筒状に形成されて構成することができる。
ミキシングノズル10は、送り方向に沿って長尺帯状にして相対峙して配置されている支持壁11と、この支持壁11相互間の中央位置で適宜間隔毎に立脚配列して支持壁11互を連結していて、相互間に側方変更路17が設けられている柱壁12と、柱壁12の一端縁における上部で左右のいずれか一方、同じく下部で左右のいずれか他方に連設した阻止堰13と、この阻止堰13の上縁あるいは下縁から側方変更路17に位置させて設けられる中央案内片14と、適宜間隔毎で隣接する中央案内片14相互間における隣接する柱壁12の左右部分の中間位置で、中央案内片14と支持壁11との間でいずれか一方は支持壁11側に、いずれか他方は中央案内片14側に傾斜して、送り方向で位置を違えて対状に配置されている傾斜片16とを備えて構成することができる。
支持壁11自体の幅員、支持壁11相互の幅員は、ミキシングノズル挿入筒7の内法幅員に比し大きくはないものとして構成することができる。
阻止堰13は、柱壁12の前縁あるいは後縁で柱壁12と一体状にして断面でL字状に連続しており、隣接する柱壁12相互において、いずれか一方の柱壁12では上部右側と下部左側とに、いずれか他方の柱壁12では下部右側と上部左側とに交互に配されて構成することができる。
中央案内片14は、相対峙している支持壁11相互間の中央位置で、かつ隣接する柱壁12相互の間隙である前記側方変更路17において、左右に沿って上下部分を分割するようにして設けられていて、前記阻止堰13の下縁あるいは上縁に連続していることで、側面から見て阻止堰13とはL字状あるいは逆L状となった一体状を呈して構成することができる。
いずれか一方の支持壁11A側の阻止堰13と連続する中央案内片14の前端あるいは後端では、その支持壁11A側に向かって僅かに湾曲している第1案内湾曲部15Aとなっており、いずれか他方の支持壁11B側の阻止堰13と連続する中央案内片14の前端あるいは後端では、その支持壁11B側に向かって僅かに湾曲している第2案内湾曲部15Bとなって構成することができる。
傾斜片16は、柱壁12の両側それぞれで配置形成されており、中央案内片14における第2案内湾曲部15Bに連続されて、左右に分割したいずれか一方に中央案内片14から支持壁11に向かう第1傾斜部分16Aと、いずれか他方に支持壁11から中央案内片14に向かう第2傾斜部分16Bとを備え、第1傾斜部分16Aと第2傾斜部分16Bとで形成する空隙は、前記側方変更路17に連通して構成することができる。
ミキシングノズル10は、粘液物の流れ方向に対し、柱壁12の前縁側に阻止堰13が位置させてあるものとして、ミキシングノズル挿入筒7内に挿入配置して構成することができる。
あるいは、ミキシングノズル10は、粘液物の流れ方向に対し、柱壁12の後縁側に阻止堰13が位置させてあるものとして、ミキシングノズル挿入筒7内に挿入配置して構成することができる。
【0010】
以上のように構成された本発明に係るミキシングノズル装置にあって、ミキシングノズル挿入筒7に挿入されるミキシングノズル10は、送り入れられた加圧状態の粘液物を送るとき、阻止堰13によって粘液物の一部を堰き止め、また流れ方向を変更させることで、送りながらこれらを均一に混合させる。
ミキシングノズル10における柱壁12、阻止堰13、中央案内片14は、ミキシングノズル10内を送り方向で上下部、左右側で4分割したものとして、柱壁12の左右両側において阻止堰13で堰き止めて上下方向に沿って流れを交互に変更させることによって蛇行させる。
ミキシングノズル10において、粘液物の流れ方向に対し、中央案内片14の前縁あるいは後縁に形成した第1案内湾曲部15A、第2案内湾曲部15Bそれぞれは、粘液物の流れを阻止させて側方変更路17を経て左右方向に転換させ、複数の粘液物の混合を一層促進させる。
また、ミキシングノズル10において、粘液物の流れ方向に対し、中央案内片14の後縁に形成した第1案内湾曲部15A、第2案内湾曲部15Bそれぞれは、粘液物の蛇行案内をスムーズにして、加圧されている粘液物の送り方向への流れを滞留させず、速やかに前方に送り込ませる。
傾斜片16は、柱壁12相互の間隙における柱壁12の両側に適宜間隔毎で配置され、
第1傾斜部分と第2傾斜部分とを備えることで、蛇行案内された粘液物を柱壁12の左右側で混合して流れ込ませ、複数種の粘液物を一層均一化して混合させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上説明したように構成されているため、例えば止水材として調製される主剤と硬化剤とが一定割合で各別に供給されるとき、それらを吐出供給先に混合させながら送ることができ、しかも高粘度であっても均一に混合でき、連続的に処理させて吐出供給先である、例えばクラックに生じている出水箇所に止水材を短時間で逐次注入させることができる。
【0012】
すなわち、これは本発明において、加圧状態の粘液物が送り入れられるミキシングノズル挿入筒7内に着脱自在に挿入配置されるミキシングノズル10を備え、このミキシングノズル10は、粘液物の一部を堰き止めて流れの向きを変更させる複数の阻止堰13を送り方向で適宜間隔毎に配列すると共に、隣接する阻止堰13では流れを堰き止める部位と、流れを堰き止めない部位とを送り方向で交互に形成してあるからである。
【0013】
また、ミキシングノズル10は、相対峙して配置されている支持壁11と、支持壁11相互間で配置され、隣接する相互間に側方変更路17が設けられている柱壁12と、柱壁12の上部左右のいずれか一方、同じく下部左右のいずれか他方に連設した阻止堰13と、阻止堰13の上縁あるいは下縁から側方変更路17に位置させて設けられる中央案内片14と、隣接する中央案内片14相互間における柱壁12の左右部分で、いずれか一方では支持壁11側に、いずれか他方では中央案内片14側に傾斜して対状に配置されている傾斜片16とを備えている。こうすることで、支持壁11相互間に送り込まれた複数の粘液物は、柱壁12の左右側で蛇行混合しながら前方に送られ、また傾斜片16部位で柱壁12の左右側の両方向に流れ、一層均一化されて混合させることができる。
【0014】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付した。本発明は、これらの記載、図面中の符号等によって示された構造・形状等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を実施するための一形態を示す粘液物が所定割合で供給されて本発明装置によって混合されて吐出させるときの混合装置を含めた概略平面図である。
【
図2】同じく本発明に係るミキシング装置の断面図である。
【
図4】同じくミキシングノズルをミキシングノズル挿入筒内に挿入するときの断面図である。
【
図5】同じくその(イ)はミキシングノズルの平面図であり、その(ロ)は(イ)におけるb-b断面図である。
【
図6】同じく
図5の(ロ)におけるc-c断面図である。
【
図8】同じくその(イ)は
図6におけるe-e断面図、(ロ)は
図6におけるf-f断面図、(ハ)は
図6におけるg-g断面図、(ニ)は
図6におけるh-h断面図である。
【
図9】同じく一部切欠分解斜視図で、流れ方向に対し、柱壁の前縁側に阻止堰がある場合の方向を流れ方向Aとし、逆に柱壁の後縁側に阻止堰がある場合の方向を流れ方向Bとして図示している。
【
図10】同じく粘液物の流れを説明する拡大断面図で、流れ方向Aの場合である。
【
図11】同じく粘液物の流れを説明する拡大断面図で、流れ方向Bの場合である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための一形態を説明すると、図において示される符号1はミキシングノズル本体であり、例えば第1粘液物、第2粘液物が導入される第1導入口2、第2導入口3を備える。このミキシングノズル本体1には、ミキシングノズル10が着脱自在に挿入されるミキシングノズル挿入筒7を保護すべく、これらを収納しているノズル収納筒6を固定した固定筒体5が締付ナット4によってネジ止めされている。そして、ネジ止めされた固定筒体5内に配置されているミキシングノズル挿入筒7の入口を経て第1粘液物及び第2粘液物それぞれが送り入れられるよう、第1導入口2、第2導入口3が連通されていて、導入された第1粘液物、第2粘液物がミキシングノズル10内に逐次送り込まれて順次混合されるようにしてある。
【0017】
第1導入口2と第2導入口3とは、ミキシングノズル本体1に対して対向させて設けてあり、それぞれに連通接続した第1導入路、第2導入路の出口側は、固定筒体5、締付ナット4によって連結されたときのノズル収納筒6内のミキシングノズル挿入筒7の後端に連通されるようにしてある。
【0018】
なお、第1粘液物、第2粘液物は、例えば止水箇所における止水材として混合調製される主剤として、石油樹脂とアクリル系樹脂をポリビニルアルコールによって水に乳化させた水分分散液(樹脂エマルジョン)が、また硬化剤としてヘキサメチレン=ジイソシアネートのポリイソシアネートが予定されている。例えば
図1に示すように、これらの第1粘液物を貯留している第1タンク101、第2粘液物を貯留している第2タンク102を備えた吐出混合装置100によって、例えば25℃±2程度に加温されている状態で第1粘液物に対して第2粘液物が所定割合となるように調整されて、前記第1導入口2、第2導入口3それぞれに各別に加圧状態で供給されるようになっている。
【0019】
第1導入口2、第2導入口3それぞれに各別に供給された第1粘液物、第2粘液物は、ミキシングノズル10によって均一に混合され、ノズル収納筒6の先端に連結した例えば止水用プラグ110から止水箇所であるコンクリート構造物のクラックに注入され、凝固させるようになっている。
【0020】
なお、ノズル収納筒6は金属製で断面ほぼ正方形を呈する角筒状に形成されていて、前端に設けたプラグ連結ネジ部9によって止水用プラグ110をネジ止め連結してあり、締付ナット4から取り外されることで、ミキシングノズル挿入筒7内のミキシングノズル10を着脱し、交換できるようにしている。
【0021】
ミキシングノズル挿入筒7は、例えば合成樹脂製で断面ほぼ正方形を呈する角筒状に形成されていて、ノズル収納筒6内に挿入接着されることでノズル収納筒6と一体化されている。そして、ミキシングノズル挿入筒7自体の入口は固定筒体5内部に位置されるようにしてラッパ状に拡開形成された粘液物導入口8が設けられていて、ミキシングノズル本体1に導入された第1粘液物、第2粘液物それぞれがミキシングノズル10内にスムーズに送り込まれるようにしている。
【0022】
ミキシングノズル10自体は、ノズル収納筒6内に挿入固定される断面でほぼ正方形の角筒状の前記ミキシングノズル挿入筒7の内部に着脱自在に挿入されることで収納構成されている(
図4参照)。そして、ミキシングノズル挿入筒7の粘液物導入口8を経て送り込まれる第1粘液物、第2粘液物を供給先である前端側の止水用プラグ110に送り込む間で、これらを均一に混合させる。その混合は、送り方向に直交する面で適宜に分割させた分割域において送り方向(あるいは流れ方向として表示することがある)と、この送り方向に対して直交する方向で隣接する分割域を跨いで送り方向を変更させることを繰り返すことにより混合させて均一になるようにしている。
【0023】
ミキシングノズル10自体は、支持壁11、柱壁12、阻止堰13、中央案内片14、傾斜片16を備えて成る。
【0024】
支持壁11(11A,11B/特にその位置を限定しない場合は単に符号11と表記する)は、送り方向に沿って長尺帯状にして相対峙して配置されている。
【0025】
柱壁12は、この支持壁11相互間の中央位置で適宜間隔毎に立脚配列して支持壁11相互を連結しており、柱壁12相互間の間隙は側方変更路17となっている。
【0026】
阻止堰13(13A,13B,13C,13D/特にその位置を限定しない場合は単に符号13と表記する)は、柱壁12の一端縁、送り方向の例えば前縁あるいは後縁における上部で左右のいずれか一方、同じく下部で左右のいずれか他方に連設されている。
【0027】
中央案内片14(14A,14B/特にその位置を限定しない場合は単に符号14と表記する)は、阻止堰13の上縁あるいは下縁から送り方向に延設して送り方向の後方あるいは前方に位置する隣接した柱壁12の他端縁、送り方向の例えば前縁あるいは後縁に至る柱壁12相互の間隙内に設けられている。
【0028】
傾斜片16は、適宜間隔毎で隣接する中央案内片14相互間における隣接する柱壁12の左右部分の中間位置で、中央案内片14と支持壁11との間でいずれか一方は支持壁11におけるいずれか一方の側の支持壁11Aあるいは支持壁11Bに、いずれか他方は中央案内片14側に傾斜して、送り方向で位置を違えて対状に配置されている。
【0029】
支持壁11自体の幅員及び支持壁11相互間の幅員は、断面でほぼ正方形状の前記ミキシングノズル挿入筒7における内法幅員に比し大きくはなく、ミキシングノズル10自体がミキシングノズル挿入筒7の内部に間隙を形成することなくしっくりと収納、挿入でき、また取り出されるようにしてある。
【0030】
前記柱壁12は、相対峙している支持壁11A,11B相互を連結しており、適宜間隔毎に支持壁11相互間を左右部分に2分割している。また、この柱壁12相互間は適宜幅員で隔てられていて、送り方向での左右で通じる間隙である前記側方変更路17となっている。送り込まれる粘液物が阻止堰3によって送りが阻止されると、この側方変更路17内に入り込み、送り方向に対し直交する向きに変更されることで、左右方向のいずれかに方向転換させて送るようにしている。
【0031】
前記阻止堰13は、
図8、
図9に示すように、柱壁12の前縁あるいは後縁で柱壁12と一体状にして断面でL字状に連続しており、隣接する柱壁12相互では、いずれか一方の柱壁12では上部右側(13A)と、下部左側(13B)とに、いずれか他方の柱壁12では下部右側(13C)と、上部左側(13D)とに交互に配されている。
【0032】
前記中央案内片14は、相対峙している支持壁11A,11B相互間の中央位置で、かつ隣接する柱壁12相互の間隙である側方変更路17に位置させて、送り方向の左右に沿って上下部分を分割するようにして設けられている。そして、前記阻止堰13における上部側に配置の阻止堰13A,13Dではその下縁から連続されている中央案内片14Aは、側面から見て阻止堰13A,13DとはL字状となった一体状を呈している。また、同様に阻止堰13における下部側に配置の阻止堰13B,13Cではその上縁から連続されている中央案内片14Bは、側面から見て阻止堰13B,13Cとは逆L字状となった一体状を呈している。
【0033】
上部右側に配されている阻止堰13Aと連続する中央案内片14Aの送り方向の例えば前端あるいは後端では、いずれか一方の支持壁11A側に向かって僅かに湾曲している第1案内湾曲部15Aとなっており、下部左側に配されている阻止堰13Bと連続する中央案内片14Bの送り方向の例えば前端あるいは後端では、いずれか他方の支持壁11B側に向かって僅かに湾曲している第2案内湾曲部15Bとなっている。
【0034】
また、同様に、下部右側に配されている阻止堰13Cと連続する中央案内片14Bの送り方向の例えば前端あるいは後端では、いずれか他方の支持壁11B側に向かって僅かに湾曲している第2案内湾曲部15Bとなっており、上部左側に配されている阻止堰13Dと連続する中央案内片14Aの送り方向の例えば前端あるいは後端では、いずれか一方の支持壁11A側に向かって僅かに湾曲している第1案内湾曲部15Aとなっている。
【0035】
ここで、複数種の粘液物をミキシングノズル1に送り込むとき、
図10においては、柱壁12に連設形成した阻止堰13が送り方向に対して柱壁12の前縁側に位置させて使用する流れ方向Aの場合が示されている。この
図10に示すように、上下部・左右側の阻止堰13A,13B,13C,13D、左右側の中央案内片14A,14B、第1案内湾曲部15A、第2案内湾曲部15Bによって、送り方向の右側では、ミキシングノズル10内に送り込まれた第1粘液物と第2粘液物とは、上部側に向かうと阻止堰13Dによって側方変更路17を経て一部は左側に流路が変更され、一部は下部側に向かった後、次の柱壁12の阻止堰13Bによって側方変更路17を経てその一部は更に左側に流路が変更され、一部は再び上部側に向かって送り込まれることを繰り返すのであり、このように左右に流路が変更されながら蛇行状となって送られる。一方、同様に、送り方向の左側では、上部側に向かった後は逆に下部側に向かったものとなり、阻止堰13A、13Cによって側方変更路17を経て一部が右側に送り込まれ、また、一部は下部側そして上部側に向かった蛇行状となって送られる。
【0036】
逆に、
図11においては、柱壁12に連設形成した阻止堰13が送り方向に対して柱壁12の後縁側に位置させて使用する流れ方向Bの場合が示されている。この
図11に示すように、上下部・左右側の阻止堰13A,13B,13C,13D、左右側の中央案内片14A,14B、第1案内湾曲部15A、第2案内湾曲部15Bによって、送り方向の右側では、ミキシングノズル10内に送り込まれた第1粘液物と第2粘液物とは、下部側に向かった後は逆に上部側に向かったものとなり、そして再び下部側に向かった蛇行状となって送られる。一方、同様に、送り方向の左側では、上部側に向かった後は逆に下部側に向かったものとなり、そして再び上部側に向かった蛇行状となって送られる。いずれも、送り方向に沿って柱壁12の左右側でこれを繰り返すようになっており、また、送り込まれて流れるときには隣接する柱壁12相互間の間隙によって、その一部でも左右側方向に変更されて送り込まれるものとなっている。
【0037】
傾斜片16(なお、後述するように、第1傾斜部分16Aと第2傾斜部分16Bに区別する場合を除き、これらを単に傾斜片16と表記する)は、柱壁12によって左右に区画されている右側部分、左側部分それぞれで配置形成されている。例えば右側部分では、中央案内片14の下面で、この中央案内片14における第2案内湾曲部15Bに連続されて、右側部分を更に左右に分割(その結果、支持壁11の幅員の約1/4の幅員となる)したいずれか一方に中央案内片14からいずれかの支持壁11Aあるいは11Bに向かう第1傾斜部分16Aと、いずれか他方に支持壁11Aあるいは11Bと第2傾斜部分16Bとで形成する空隙は、柱壁12相互間の間隙である側方変更路17に連通していて、粘液物が流動するようにしてある。
【0038】
また、同様に、例えば左側部分では、中央案内片14の上面で、中央案内片14における第1案内湾曲部15Aに連続されて、左側部分を更に左右に分割(その結果、支持壁11の幅員の約1/4の幅員となる)したいずれか一方に中央案内片14からいずれかの支持壁11Aあるいは11Bに向かう第2傾斜部分16Bと、いずれか他方に支持壁11Aあるいは11Bから中央案内片14に向かう第1傾斜部分16Aとを備える。そして、第2傾斜部分16Bと第1傾斜部分16Aとで形成する空隙は、柱壁12相互間の間隙である側方変更路17に連通していて、粘液物が柱壁12の左右側における粘液物を互いに流動するようにして一層均一に混合させるようにしている。
【0039】
この傾斜片16は、例えば図例のように、送り方向に沿って蛇行されるのを2回程度繰り返した後の阻止堰13相互間の位置に配置されており、柱壁12の左右側の上下に配置されていることで、左右側それぞれで送られる粘液物は傾斜片16によって柱壁12相互間の側方変更路17を経て左右側で交互に送り入れられて、第1粘液物、第2粘液物それぞれが一層混合されるようにしている。
【0040】
このように、ミキシングノズル10における柱壁12、阻止堰13、中央案内片14は、送り方向から見て、支持壁11相互間によって形成されているほぼ正方形状の空隙を送り方向に直交する横断面において上下部・左右側で4分割している。上下部・左右側で4分割された分割域のうち、斜めに配置されている2個の分割域では送り方向で閉塞している阻止堰13が柱壁12の左右に配されていて、他の2個の分割域では送り方向で通過させる空隙となっている。送り方向で例えば2個の柱壁12の間隔を隔てて対向状となった阻止堰13相互間では、結果として、阻止堰13に阻まれながら中央案内片14によって粘液物は蛇行しながらも、その一部は右側あるいは左側に、送り方向に直交する方向に向きが変更されて順次送られるようになる。
【0041】
なお、以上の説明における上下部、左右側は、
図2に示された配置構成に基づく便宜的なもので、90度回転されることで、上下部が左右側に、左右側が上下部に配置が変更されても同様である。
【0042】
次にこれの使用の一例を説明すると、
図1に示すように吐出混合装置100における第1タンク101内の第1粘液物と第2タンク102内の第2粘液物とが所定の割合、例えば100:7の割合で、第1導入口2、第2導入口3から供給され、送り入れられると、ミキシングノズル挿入筒7における粘液物導入口8を経てミキシングノズル10内に送り込まれる。
【0043】
ミキシングノズル10内に送り込まれた第1粘液物、第2粘液物は、ミキシングノズル10における右側部分、左側部分の阻止堰13、中央案内片14、第1案内湾曲部15A、第2案内湾曲部15Bによって送り方向で蛇行しながら流れる。また、蛇行しながらの流れにおいて柱壁12相互間の間隙を経て一部でも左右側での交互の流れが生じ、傾斜片16部位での柱壁12相互の間隙では左右側で流れている粘液物に対し左右側相互間での一層の交互の流れを生じさせる。その結果、蛇行しながらの更には左右側の交互の流れによって、第1粘液物、第2粘液物は均一になるように混合される。
【0044】
また、ミキシングノズル10のミキシングノズル挿入筒7内への挿入配置は、ミキシングノズル挿入筒7における粘液物の送り方向に対し、ミキシングノズル10の向きを選択できる。
【0045】
上述したように流れ方向Aとする場合には、粘液物の送り(流れ)方向に対して柱壁12の前縁側に阻止堰13が位置しているようにして配置する(
図2、
図4、
図9における矢印A、
図10参照)。この場合には、送り込まれた粘液物は、中央案内片14、第1案内湾曲部15A、第2案内湾曲部15Bによる蛇行案内中で、阻止堰13が粘液物の流れを大きく阻止し、その阻止と共に側方変更路17に導入させて左右方向での方向転換を一層促進させる。その結果、ミキシングノズル挿入筒7の前端にて得られる粘液物は均一な状態で混合生成される。
【0046】
このように流れ方向Aとなるように、ミキシングノズル挿入筒7内にミキシングノズル10を配置し、粘液物として粘度が水に近い主剤、粘度が高い硬化剤を加圧状態で供給したところ、阻止堰13では高粘度硬化剤を押し戻すような動きとなり、ミキシングノズル10の長さが300mmであるものとして実験したところ、ほぼ100%に混合することができた。
【0047】
また、流れ方向Bとする場合には、粘液物の送り(流れ)方向に対して柱壁12の後縁側に阻止堰13が位置しているようにして配置する(
図9における矢印B、
図11参照)。この場合には、送り込まれた粘液物は、中央案内片14、第1案内湾曲部15A、第2案内湾曲部15Bによって蛇行案内をスムーズにし、蛇行案内中の側方変更路17を経ての左右方向での方向転換は、流れ方向Aに比しやや少なくなるも、十分な距離を有するミキシングノズル10とすることで粘液物の均一な混合生成を可能にする。
【0048】
この流れ方向Bとなる配置で上記と同様な実験をしたところ、70%程度の混合状態しか得られなかったが、350~400mmの十分な長さとすることで同様な混合状態とすることとができた。
【0049】
こうして、例えば止水材とされる主剤たる第1粘液物と、硬化剤たる第2粘液物とは所定割合で混合されることで、ミキシングノズル10の前端に連繋した止水用プラグ110を介して、例えばクラックの止水箇所に注入され、出水域を凝固させる。また、吐出混合装置100から加圧供給される第1粘液物、第2粘液物が所定温度に加温され、その混合によって硬化する一定時間内に、ミキシングノズル10によって調整生成された止水材を出水箇所に連続供給することができた。
【0050】
なお、以上の実施の形態におけるミキシングノズル10は、第1粘液物、第2粘液物の2種の粘液物を混合させる場合として説明されたが、これは3種以上の粘液物であっても同様に均一に混合できるのは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1…ミキシングノズル本体
2…第1導入口
3…第2導入口
4…締付ナット
5…固定筒体
6…ノズル収納筒
7…ミキシングノズル挿入筒
8…粘液物導入口
9…プラグ連結ネジ部
10…ミキシングノズル
11…支持壁
12…柱壁
13(13A,13B,13C,13D)…阻止堰
14(14A,14B)…中央案内片
15A…第1案内湾曲部
15B…第2案内湾曲部
16…傾斜片
16A…第1傾斜部分
16B…第2傾斜部分
17…側方変更路
100…吐出混合装置
101…第1タンク
102…第2タンク
110…止水用プラグ