(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143883
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】車両の車載電気システムの主スイッチ
(51)【国際特許分類】
H02H 3/32 20060101AFI20230928BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230928BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H02H3/32
B60R16/02 645A
H02H3/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023048718
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】10 2022 202 988.7
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】509031497
【氏名又は名称】エレンベルガー ウント ペンスケン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ ベルント
(72)【発明者】
【氏名】エンゲバルト マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ハンネス シュテファン ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】ミクリス マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ノイベルト クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュバルツ マティーアス
【テーマコード(参考)】
5G004
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB02
5G004BA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の好適な主スイッチであって、安全性が高く、取り付けが容易な主スイッチを提供する。
【解決手段】車両、具体的には農機の車載電気システムにおいて、第1のスイッチ(34)が挿入された第1の主電流路(30)と、第2の主電流路(32)と、を備える主スイッチ(12)は、制御ユニット(38)を含み、第1の主電流路(30)には第1の電流センサ(42)が割り当てられており、第2の主電流路(32)には第2の電流センサ(44)が割り当てられている。第1のスイッチ(34)は、制御ユニット(38)によって、両方の電流センサ(42,44)が測定した電流の差異に応じて動作する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)、具体的には農機、の車載電気システム(10)の主スイッチ(12)であって、
第1のスイッチ(34)が挿入された第1の主電流路(30)と、
第2の主電流路(32)と、
制御ユニット(38)と、を備える主スイッチ(12)において、
前記第1の主電流路(30)には第1の電流センサ(42)が割り当てられていると共に、前記第2の主電流路(32)には第2の電流センサ(44)が割り当てられており、前記制御ユニット(38)によって、前記第1のスイッチ(34)は、前記第1及び前記第2の電流センサ(42,44)によって測定された電流の差異に応じて動作する、主スイッチ(12)。
【請求項2】
前記第1のスイッチ(34)は、プリチャージ回路(36)によってバイパスされていることを特徴とする、請求項1に記載の主スイッチ(12)。
【請求項3】
前記主電流路(30,32)のうちの一方に繋がった放電回路(50)を特徴とする、請求項1又は2に記載の主スイッチ(12)。
【請求項4】
前記第2の主電流路(32)には、前記制御ユニット(38)によって動作する第2のスイッチ(40)が挿入されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の主スイッチ(12)。
【請求項5】
さらなる電流端子(60)であって、前記さらなる電流端子(60)を介して前記制御ユニット(38)が電流供給される、さらなる電流端子(60)を特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の主スイッチ(12)。
【請求項6】
前記さらなる電流端子(60)と前記制御ユニット(38)との間に、直流電圧変換器(62)が接続されていることを特徴とする、請求項5に記載の主スイッチ(12)。
【請求項7】
前記制御ユニット(38)に信号技術的に接続されたデータインターフェース(52)を特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の主スイッチ(12)。
【請求項8】
前記第1のスイッチ(34)、前記制御ユニット(38)、及び、前記電流センサ(42,44)が中に配置されたハウジング(28)であって、両方の前記主電流路(30,32)が、いずれも、前記ハウジング(28)の外側に設けられた2つの端子(33)間を延びている、ハウジング(28)を特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の主スイッチ(12)。
【請求項9】
前記ハウジング(28)は、凹部(74)を有する箱状の本体(66)を備え、前記凹部(74)の中には、プラスチック体(76)が嵌め込まれており、前記プラスチック体(76)に、前記第1の主電流路(30)の前記端子(33)と前記第1のスイッチ(34)とが固定されていることを特徴とする、請求項8に記載の主スイッチ(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車載電気システムの主スイッチに関する。この車両は、具体的には地上車であり、例えば商用車、又は、好ましくは農機である。
【背景技術】
【0002】
車両は、通常、電気モータによって動作する多数の付属装備品を備える。このような付属装備品は、車両が例えば農機又は建機である場合、さらなる作動装置を駆動させる油圧系である。換言すると、付属装備品は、車両の特定の機能を実施するように機能する。他にも、座席暖房機又はファンヒータといった、自動車のユーザの快適さに寄与する付属装備品が設けられている場合が多い。また、車両を農機として構成する場合、車両から、車両に結合された付属装備品を備えるトレイラーに、電気エネルギーを導線により直接伝導することが可能である。この付属装備品は電気エネルギーによって直接動作するので、損失が低減される。
【0003】
動作のたびに必要とされる電気エネルギーは、通常、構成に応じて12V、24V、又は48Vの直流電圧を有する電池によって提供される。この電池は、車両の燃焼機関によって駆動される発電機によって給電される。(付属)装備品の動作に比較的多くの電気エネルギーが必要であり、車両の動作時つまり燃焼機関が動作する場合にのみ、(付属)部品を動作させるのであれば、電池を省くこと、又は、直接(付属)装備品に発電機により電流供給することが可能である。これによって、製造コスト及び必要な構造空間が低減される。この際、重量及び製造コストを低減するために、48Vの直流電流が電流供給用に使用される場合が多い。したがって、各導線によって導かれる電流は低減される。しかしながら、電圧が高いため、人及び/又は別の部品が危険に曝されることも排除されない。ここで、燃焼機関の運転開始時に常に各装備品が動作しないようにするためには、発電機と装備品との間の導線に、発電機と装備品との間のエネルギーの流れを遮断可能な主スイッチを配置することが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両の好適な主スイッチであって、具体的には安全性が高く、取り付けが容易な主スイッチを提供することにある。
【0005】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴により解決される。有利な発展形態及び構成は、従属請求項の対象である。
【発明の効果】
【0006】
主スイッチは、車両の車載電気システムの一構成要素である。換言すると、主スイッチは、取り付け状態において、車両の車載電気システムの中に挿入されている。主スイッチは、このために適しており、具体的にはそのように提供及び構成されている。ここで車両は、動くように構成されており、つまり可動である。特に好ましくは、車両は、自動車であり、適切には地上車である。このために自動車は、具体的には、駆動装置によって駆動される多数の車輪を備えている。自動車は、好ましくは、レールに無関係のものとして構成されており、例えば、自動車の移動方向を設定可能な多数の駆動可能な車輪を備える。自動車は、具体的にはトラクタ、つまり農業用の牽引車両、コンバイン、種蒔き機、又は、肥料散布機といった農機である。これに対して代替的に、自動車は、具体的には、掘削機、ショベル機、ダンプトラック、サイドダンプカー、リフトトラックといった建機であり、又は、トラックやバスといった他の輸送用車両である。これに対して代替的に、自動車は、例えば乗用車である。さらなる一代替例では、車両は、例えば飛行機又はボートである。
【0007】
車載電気システムは、具体的には電気エネルギーを誘導するように機能する。このために車載電気システムは、取り付け状態において、適切には、電池又は好ましくは発電機といった車両の電気エネルギー源と、装備品との間を延びている。換言すると、装備品の動作に必要な電気エネルギーは、車載電気システムによって少なくとも部分的に導かれる。ここで装備品とは、例えば、車両の一構成要素であり、具体的には、特に車両を推進することではなく、さらなる機能を実施することに寄与する付属装備品である。例えば、付属装備品は、車両の運転手の快適さを向上させることに寄与する。しかしながら、具体的に言えば車両が農機又は建機である場合に、車両に設けられる所定の機能が、付属装備品によって実施されることが特に好ましい。例えば、付属装備品は、油圧回路を駆動させる油圧ポンプである。
【0008】
これに対して代替的に、装備品は、好ましくは、車両に結合されたトレイラーの一構成要素である。この場合、車載電気システムは、具体的には、例えば車両の車体に配置されてトレイラーまで延びる導線を含む。これに対して代替的に、導線は、例えば、車載電気システムの対応するプラグの中に差し込まれている。
【0009】
車載電気システムによって、動作時に直流電圧が導かれることが適切である。(電気)直流電圧は、例えば、12V又は24Vである。しかしながら、直流電圧が48Vであることが特に好ましい。主スイッチは、車載電気システムを通る電流の流れを遮断する、つまり具体的には電気エネルギーの伝送を遮断するように機能する。ここで好ましくは、主スイッチは、48Vの電圧、又は、少なくとも車載電気システムによって導かれる電圧が印加されることに適している。
【0010】
好ましくは、主スイッチは、直流電流を通すことに適しており、具体的にはそのように提供及び構成されている。好ましくは、主スイッチは、最大で100Aと1,000Aとの間、又は、200Aと500Aとの間の電流を通すことに適しており、適切にはそのように提供及び構成されている。こうして、車載電気システムによって、比較的高性能の装備品に電流供給することも可能である。
【0011】
主スイッチは、第1の主電流路及び第2の主電流路を有している。この場合、両方の主電流路の間には、車両の動作時に、具体的には車載電気システムの電圧が印加される。この電圧は、好ましくは、発電機又は電池によって提供される。したがって具体的には、両方の主電流路の間に、好ましくは48Vの直流電圧が印加される。この場合、各主電流路によって、動作時、好ましくは定格動作時に、好適には最大200A又は250A又は100Aの電流が導かれる。具体的には、各主電流路は、車載電気システムにおいて、発電機又は電池、つまり電気エネルギー源のすぐ後段に電気的に接続されるように配置されており、主スイッチは、具体的には安全機構として機能する。換言すると、主スイッチと電気エネルギー源との間には、例えば、電気エネルギーの案内だけを行う導線又は同様のもの以外には、他のいかなる構成部品も電気的に配置されてはいない。しかしながら、これらの間に構成部品があるとすれば、それは安全装置であることが適切である。
【0012】
主スイッチは、第1の主電流路に挿入された第1のスイッチを備える。第1のスイッチは、切替可能に構成されており、したがって第1のスイッチによって、設定に応じて、第1の主電流路を閉じるか又は分離することが可能である。換言すると、第1のスイッチ、したがって第1の主電流路を、導電状態又は非導電状態に移行させることが可能である。第1のスイッチは、例えばリレー、又は、半導体スイッチ、好ましくは、MOSFET、GTO、又はIGBTといった電界効果トランジスタである。これに対して代替的に、第1のスイッチは、例えば1つ又は複数のこのような半導体スイッチ及び/又はリレーを含む。これらは、互いに好適に接続されていること、例えば電気的に直列又は並列接続されていることが、都合が良い。したがって、具体的にいえば、第1のスイッチが開いた時に起こり得るアークの形成を回避すること、又は、少なくともその持続時間を短縮することが可能になり、第1のスイッチが導電状態にある時の電気抵抗は比較的小さくなる。第1の主電流路の残りの構成部品は、例えば、具体的には第1のスイッチの両側を延びる各バスバーによって形成される。第1のスイッチは、第1の主電流路のガルバニック絶縁が可能なように構成されていることが好ましい。
【0013】
主スイッチは、制御ユニットをさらに含む。制御ユニットは、例えば、1つの回路が実現されるように好適に接続された複数の電気及び/又は電子的な構成部品を含む。制御ユニットによって、第1のスイッチが操作される。このために、例えば制御ユニットによって、駆動装置用の信号が生成され、この信号により第1のスイッチが操作される。代替的に、第1のスイッチは、対応する信号に応じて操作される対応する駆動装置を有している。さらなる一代替例では、制御ユニットは駆動装置を含み、第1のスイッチの操作は、例えば、機械的操作、又は、電流供給、又は、所定の電圧を第1のスイッチに印加することを含む。
【0014】
したがって主スイッチによって、車載電気システムを通る電気エネルギーの伝送を遮断し、その後、場合によってはこれに電気的に接続された装備品の電流供給を、開始又は終了することが可能である。例えば、第1のスイッチは手動で操作可能であり、例えば、主スイッチは、例えば制御ユニットを介して第1のスイッチに機械的かつ電気的に結合されたレバーを備える。
【0015】
主スイッチは、第1の電流路に割り当てられた第1の電流センサをさらに含む。ここで例えば、第1の電流センサは、第1の主電流路に挿入されており、第1の主電流路によって導かれる電流も、第1の電流センサによって少なくとも一時的に導かれる。例えば、第1の電流センサは分路の方式で実施されている。これに対して代替的に、第1の電流センサは、第1の主電流路と機能接続されているだけであり、第1の電流センサは、例えば第1の主電流路から分離され、例えば第1の主電流路から離隔されている。これによって安全性が向上する。このために、第1の電流センサが、磁界センサ、例えばホールセンサを含むことが適切である。
【0016】
第1の電流センサによって、動作時に、第1の主電流路によって導かれる電流を特徴付ける測定データが生成される。第1の電流センサは、このために適しており、好ましくはそのように提供及び構成されている。具体的には、この測定データは、制御ユニットによって評価され、第1の電流センサ及び制御ユニットによって、第1の主電流路によって導かれる電流が測定可能である。
【0017】
第2の主電流路には、主スイッチの第2の電流センサが割り当てられている。第2の電流センサは、例えば分路の方式で構成されており、及び/又は、磁界センサを含む。第2の電流センサは、例えば、第1の電流センサと構造が同じであるので、同じ部品を使用可能である。代替的には、第2の電流センサは、第1の電流センサと異なって構成され、例えば別の構造を有しており、その結果、各要件への適用性が改善される。少なくとも第2の電流センサによって、具体的には制御ユニットを利用して、第2の主電流路によって導かれる電流を測定することが可能である。このために、第2の電流センサによって、有利には動作時に、対応する測定データが作成され、測定データは、好適には制御ユニットによって評価される。
【0018】
第1及び/又は第2の電流センサは、例えば信号技術的及び/又は電気的に制御ユニットと結合されている。好ましくは、両方の電流センサは、制御ユニットによって動作され、制御ユニットと好適に接続されていることが、都合が良い。
【0019】
制御ユニットによって、第1のスイッチが、両方の電流センサによって測定された電流の差異に応じて操作される。この場合、両方の電流間の違い、すなわちそれらの間の差異が所定の閾値よりも大きい場合、制御ユニットによって、具体的には第1のスイッチが開かれる。閾値は、例えば絶対値であり、例えば0.1A、0.5A、又は、1Aである。これに対して代替的に、閾値は、第1又は第2の主電流路によって導かれる電流の例えば10%、5%、2%、又は1%である。
【0020】
制御ユニットは、この動作のために提供及び構成されている。例えば、制御ユニットは、対応して電流センサ及び第1のスイッチに接続されており、及び/又は、制御ユニットは、対応するアルゴリズム又はルーチンを含む。具体的には、制御ユニットは、例えばプログラム可能に構成されたマイクロプロセッサを含む。制御ユニットが、コンピュータプログラム製品を含むことが好ましい。コンピュータプログラム製品は、マイクロプロセッサによるプログラムの実行時に、差異が閾値よりも大きい場合、第1のスイッチを開く信号を発出させる複数の命令を含む。
【0021】
両方の主電流路により導かれる電流が異なるのは、車載電気システムにおいてリーク電流が発生した場合、つまり、例えば車載電気システムの導線又は装備品の通電部品が、短絡を介してアース又は例えば別の車載電気システムに接続された場合、つまり、例えば車載電気システム又は装備品に絶縁異常が発生した場合である。この場合、第1のスイッチが操作されるので、電流供給やリーク電流も遮断され、これによって安全性が向上する。またこれによって、装備品の誤作動及び/又はさらなる損傷が排除される。この場合、主スイッチを取り付ければ良いだけであるので、取り付けが容易である。
【0022】
ここで、第1又は第2の主電流路によって導かれる電流が他の各閾値を上回った場合も同様に、制御ユニットによって第1のスイッチが操作されることが特に好ましい。例えば短絡時には、比較的高い電流が生じる。この場合、第1のスイッチの操作により電流供給ひいては短絡が終了するので、ここでも誤作動が阻止される。また、この方法により熱的過負荷が阻止される。例えば、両方の電流センサは、それぞれに割り当てられた主電流路によって導かれる電流を測定可能であるように構成されている。これに対して代替的に、両方の電流センサは、1つの構成ユニットを形成し、差動電流だけ、つまり両方の主電流路によって導かれる電流の差異だけを測定可能なように互いに接続されている。
【0023】
特に好ましくは、主スイッチは、例えば、第1の主電流路とグランドとの間、又は、第2の主電流路とグランドとの間、又は、特に好ましくは両方の主電流路の間に接続された電圧センサをさらに備える。第1のスイッチは、制御ユニットによって、測定された各電圧に応じて操作されることが好ましい。ここで具体的には、例えば両方の主電流路に短絡を生じさせることになる、測定された電圧が割り当てられた所定の閾値を上回るか、又は、所定の臨界閾値を下回る場合に、第1のスイッチは開かれる。これによって安全性がさらに向上する。主スイッチがこのような電圧センサを2つ含むことが好ましく、第1のスイッチは、これらの電圧センサの間に設けられる。したがって、測定された電圧によって、第1のスイッチの実際の切り替え状態を確認することが可能である。
【0024】
例えば、主スイッチは、第1のスイッチ、両方の主電流路、及び、制御ユニットだけから成る。しかしながら、機能範囲を拡大させるために、主スイッチがさらなる構成部品を備えていることが特に好ましい。この場合、主スイッチを取り付ければ良いだけであるので、取り付けがさらに容易である。
【0025】
具体的には、主スイッチは、第1のスイッチをバイパスするプリチャージ回路を含む。具体的には、プリチャージ回路は制御ユニットによって動作するか、又は、プリチャージ回路は別個の制御ユニットを含む。この場合、具体的にはプリチャージ回路は、各制御ユニットの具体的な構成とは無関係に、第1のスイッチをオンする前に、これを通って降下する電圧が低減されるように動作する。このために、プリチャージ回路は、具体的にはさらなるスイッチを備える。このさらなるスイッチは、例えば機械的及び/又は電気的に構成されており、例えば、リレー及び/又は半導体スイッチといった異なる開閉ユニットを含む。このさらなるスイッチには、具体的にはプリチャージ回路の抵抗器が、電気的に直列接続される。
【0026】
具体的には、主スイッチを閉じる必要がある場合、(まだ開かれている)第1のスイッチを通って生じる電圧が、例えば1V、0.5V、又は0Vといった所定値を下回るまで、さらなるスイッチを導電状態で維持する。このために、プリチャージ回路は、例えば時間制御されて動作するか、又は、例えば対応するセンサによって測定される、第1のスイッチを通って生じる電圧に応じて、動作する。第1のスイッチを通って生じる電圧が、例えば1Vの所定値を下回って初めて、第1のスイッチは閉じられる。したがって、プリチャージ回路によって、主スイッチをオンした場合に車載電気システムに生じるピーク電圧及び/又は電流スパイクが阻止される。ピーク電圧及び/又は電流スパイクは、例えば、主スイッチに電気的に接続された電気スイッチなどの構成部品の損傷、又は、機械スイッチの溶融を招き得る。
【0027】
これに対して代替的又は追加的に、主スイッチは、主電流路のうちの一方に繋がった放電回路を含む。ここで放電回路は、具体的には第1のスイッチの、電気エネルギー源に離反した側に配置される。放電回路は、追加的なスイッチを含むことが、都合が良い。この追加的なスイッチは、リレー又は半導体スイッチといった、好適に接続された例えば1つ又は複数のスイッチユニットを含む。この追加的なスイッチには、具体的には、放電回路の抵抗器が電気的に直列接続されている。
【0028】
第1のスイッチを開いた後、車載電気システムに引き続き存在する電気エネルギーが、放電回路によって分解される。このために、具体的には追加的なスイッチが閉じられ、これによって主電流路が、追加的なスイッチ及び好ましくは抵抗器を介して、グランドといったさらなる電位に繋がる。したがって、主スイッチの開放後少なくとも所定の時間が経過した後は、車載電気システム又は少なくともこれに接続された装備品に、さらなる電気エネルギーは存在しないので、安全性が向上する。例えば、放電回路は、第2の主電流路に、又は、第1の主電流路に繋がっている。放電回路によって、両方の主電流路が互いに接続され、追加的なスイッチの操作時に、両方の主電流路が短絡することが特に好ましい。放電回路は、制御ユニット又は別の制御ユニットによって操作されることが好ましい。この場合、第1のスイッチが開くように操作した後に、制御ユニットによって放電回路も操作され、具体的には追加的なスイッチが閉じられることが好ましい。
【0029】
特に好ましくは、第2の主電流路がグランドに電気的に繋がっており、第1のスイッチの開放時でも、具体的には車載電気システムに、電位つまりグランドが印加される。この場合、例えば、電気エネルギーの流れを遮断するために第1のスイッチだけが設けられており、単極の分離が行われる。したがって、車載電気システムによって動作する装備品を、狙いを定めてグランドに導くことによって所定の状態に移行させることが可能であり、これによって安全性が向上する。
【0030】
これに対して代替的に、第2の主電流路には、制御ユニットによって操作される第2のスイッチが挿入されている。第2のスイッチは、例えば、第1のスイッチと構造が同じであるか、又は、異なっている。具体的には第2のスイッチは、リレーによって形成されているか、又は、少なくともこれを含む。これに対して代替的又は追加的に、第2のスイッチは、半導体スイッチ、具体的には電界効果トランジスタを含む。ここで、半導体スイッチ及びリレーが備えられる場合には、これらは、具体的には好適に、例えば電気的に並列及び/又は直列に互いに接続されている。
【0031】
具体的には、第1のスイッチが操作された場合、第2のスイッチも操作される。換言すると、第2のスイッチも、両方の電流センサによって測定された電流の差異に応じて操作される。したがって、第2のスイッチによって、車載電気システムの、具体的には二極の分離が行われ、これによって安全性が向上する。例えば、両方のスイッチの操作が同時に行われる。これに対して代替的に、第1のスイッチが既に操作された後、又は、第1のスイッチの機能障害が起こった時に、第2のスイッチが操作される。第2のスイッチによって、車載電気システム又は少なくともこれによって電流供給される装備品は、車両の電気エネルギー源から安全に分離され、これによって安全性がさらに向上する。さらなる一代替例では、例えば、両方のスイッチに異なる閾値が割り当てられており、これらのスイッチは、それぞれに割り当てられた閾値が超過されると、操作される。
【0032】
例えば、制御ユニットは、主電流路のうちの一方、好ましくは両方を介して電流供給される。ここで具体的には、主電流路と制御ユニットとの間に、直流電圧変換器が接続されている。しかしながら特に好ましくは、主スイッチが、さらなる電流端子を有しており、このさらなる電流端子を介して、制御ユニットに電流供給されることである。したがって制御ユニットは、具体的には、このさらなる電流端子と電気接点を形成し、さらなる電流端子に対応して接続されている。さらなる電流端子には、具体的には車両の二次車載電気システムが、取り付け状態において隣接しており、したがってそこに接続可能である。二次車載電気システムは、好適には、車載電気システムからガルバニック絶縁されているか、又は、少なくとも1つの別の電圧レベルを有する。好ましくは、取り付け状態において、このさらなる電流端子に、場合によっては設けられる車両の電池が接続されており、反対に、主スイッチの両方の主電流路は、場合によっては設けられる車両の発電機に電気的に直接接続されている。好ましくは、二次車載電気システムでは、車両の車載電気システムよりも少ない量のエネルギーしか導かれない。
【0033】
車載電気システムによって48Vが導かれる場合、二次車載電気システムによって12V又は24Vの直流電圧が導かれることが好ましい。したがって、制御ユニットの実現に必要な、構成部品の耐電圧が低減され、これによって製造コストが低減される。第1のスイッチは、制御ユニットに電流供給された場合にのみ、導電状態に移行可能なように構成されていることが好ましい。したがって、例えば二次車載電気システムが故障すると、車載電気システムも遮断されるので、安全性が高まる。
【0034】
例えば、制御ユニットは、さらなる電流端子に印加される電圧によって電流供給される。しかしながら特に好ましくは、さらなる電流端子と制御ユニットとの間に、直流電圧変換器が接続されていることである。DC/DC変換器又はコンバータとも呼ばれる直流電圧変換器は、具体的には、制御ユニットに印加される電圧を安定化するように機能する。これに対して代替的又は追加的に、直流電圧変換器は、さらなる電流端子に印加される電圧を、制御ユニットを動作させるより低い電圧レベル、例えば5Vに低減させるように機能する。このようにして、必要とされる制御ユニットの耐電圧をさらに低減することによって、製造コストを減少させる。
【0035】
具体的には、直流電圧変換器は、車両が特定の状態にある場合のみ動作し、制御ユニットも同様に、その場合のみ動作する。ここで、車両のイグニッションが操作されると、又は、車両が少なくとも所定の動作状態に移行すると、動作が行われることが好ましい。このために、直流電圧変換器は、対応して適切に接続されており、例えば対応した入力部、具体的にはいわゆる端子15、が加えられる。このようにして、主スイッチのエネルギー必要量が低減され、クリープ電流が回避される。
【0036】
特に好ましくは、主スイッチは、制御ユニットに信号技術的に接続されたデータインターフェースを備える。換言すると、データインターフェース及び制御ユニットは、対応して互いに接続されている。データインターフェースは、例えばアナログ式、又は、好ましくはデジタル式に構成されている。データインターフェースは、印加される電圧/信号の安定化を行うキャパシタを含むことが好ましい。具体的には、データインターフェースは、好ましくはバスシステムの所定の基準に対応する。好適には、バスシステムとして、CANバスシステム、LINバスシステム、Ethernetバスシステム、又は、SENTバスシステムが使用される。取り付け状態では、データインターフェースに接続した制御ユニットによって、バスシステムのクライアント制御装置(従来の「スレーブ」制御装置)が実現されることが好ましい。これに対して代替的に、制御ユニットがマスター制御装置として機能する。これに対して代替的又は追加的に、データインターフェースは、USB端子又は他のシリアルポートを含む。好適には、データインターフェースは、このような端子を複数含み、これによって柔軟性が向上する。
【0037】
具体的には、動作時に、データインターフェースを介してリクエスト及び/又は命令が受信される。これは、具体的には、第1のスイッチ及び/又は場合によっては第2のスイッチを操作するためのものである。制御ユニットは、リクエスト/命令が受信及び/又は処理されるように動作することが好ましい。適切には、制御ユニットは、例えば測定された電流及び/又は場合によっては電圧といったデータがデータインターフェースを介して出力されるように動作する。これに対して代替的又は追加的に、主スイッチの故障状態又は他の状態が、データインターフェースを介して送信される。したがって、データインターフェースにより、例えば、車両の車載コンピュータによる第1のスイッチの操作が可能であり、及び/又は、主スイッチにより測定されたデータの評価が可能であり、これによって機能範囲がさらに拡大する。好適には、データインターフェースは、場合によっては設けられるさらなる電流端子と、共通のプラグにおいて機械的に一体化されているので、主スイッチの取り付けがさらに容易になる。
【0038】
適切には、主スイッチは、第1のスイッチが中に配置されたハウジングを備える。したがって第1のスイッチは、ハウジングによって保護されている。第2のスイッチ、プリチャージ回路、及び/又は、放電回路が設けられている場合、これらも同様にハウジングの内部に配置されていることが適切である。加えて、ハウジング内には、制御ユニット及び電流センサが配置され、これによって頑丈性がさらに向上する。
【0039】
ここで両方の主電流路は、それぞれ、2つの端子の間を延びている。例えば、これらの端子も同様にハウジングの内部に配置され、ハウジングによって機械的に保護される。しかしながら特に好ましくは、これらの端子がハウジングの外側に配置され、ハウジングが、具体的には複数の開口部を有していることである。ここで、各開口部を通って、いずれも、主電流路のうちの少なくとも1つの主電流路の一部が案内されている。ここでハウジングは、4つの開口部を有していることが好ましい。具体的には、各主電流路は、それぞれの開口部を通って案内される少なくとも1つのバスバーを含む。特に好ましくは、各開口部が液密に構成されており、これによって、異物粒子がハウジングの中に侵入することが阻止されることである。
【0040】
各端子は、例えば1つのケーブルラグ又は同様のものを接続可能なように構成されている。このために、各端子は、例えば平板導体によって形成されており、(ネジ)ボルトが、この平板導体の中に押し込まれるか、又はこれに溶接される。これに対して代替的に、各端子は、プラグの形態に形成されており、同じく電気接点を形成するために、車載電気システムの対応する係合用プラグの差し込みが可能となっている。ここで例えば、2つの係合用プラグが共通のプラグハウジングによって保持され、これによって取り付けが容易になっている。ここで特に好ましくは、主スイッチが1つの連動システムを備えていることである。この場合両方の端子に、それぞれ1つ又は複数の補助端子が割り当てられており、補助端子は、取り付け状態において、同じくプラグハウジングに保持された係合用補助プラグと電気接点を形成する。ここで、補助端子/係合用補助プラグによって、比較的小さい電流だけが導かれる、及び/又は、比較的小さい電圧だけがこれに印加される。プラグハウジングを取り外す場合、まず、係合用補助プラグを補助端子から分離し、その後、端子を係合用プラグから分離する。この場合、補助端子を取り外したことが検出されるとすぐに、制御ユニットによって第1のスイッチが操作されるので、端子にはもう電圧が印加されず、場合によっては存在する人の保護が行われる。これに対して代替的又は追加的に、警告が発出されて、主スイッチの周囲に居る人に、係合用プラグが取り外されたことに気づかせる。
【0041】
ハウジングは、例えばアルミニウムから製造されている。こうすることによって、ハウジングの内部に生じる熱の除去が容易になる。ここで好ましくは、ハウジングは、少なくとも部分的に放熱板の形式で構成されており、したがって外側において少なくとも部分的に冷却フィンを備える。冷却フィンは、具体的にはさらなる構成部品と一体に形成されている。したがって、熱の除去はさらに容易になり、ハウジングは液密である。これに対して代替的に、ハウジングは、少なくとも部分的にプラスチックから製造されている。これによって、重量及び製造コストが低減される。ここで好適には、ハウジングは、アルミニウム又は他の金属から成る放熱板が設置される領域を有している。これによって、余剰熱の除去もさらに可能となる。
【0042】
具体的には、ハウジングは、蓋で閉鎖される箱状の本体を備える。この方法では、主スイッチのハウジングと他の構成部品とを別々に製造することが可能である。また、この方法では、例えば、構成部品のメンテナンス及び/又は交換が可能である。本体と蓋との間に、シールが設けられていることが適切である。このシールは、例えば層状シール又は発泡シールである。これに対して代替的に、シールを、吹き付けシールとして構成するか、又は、蓋を本体の周りに接着するか、又は、蓋に布地を設ける。この方法では、ハウジングが複数の部品から構成されているにも関わらず、異物粒子がハウジングの中に侵入することが回避される。ハウジング又は少なくとも本体は、例えばプラスチック、又は、アルミニウム、つまり純粋なアルミニウム又はアルミニウム合金といった金属から製造される。
【0043】
具体的にいえば、ハウジングは、場合によっては設けられる本体に固定、好適には成形される複数の突起を含むことが適切である。突起によって、ハウジングを車両のさらなる構成部品に取り付けることが容易になる。具体的には、各突起は、1つの開口部を有する。車両のさらなる構成部品への固定のために、この各開口部に1つの取付ネジを通すことが可能であり、当該取付ネジは、取り付け状態でもそこに配置されている。好適には、各突起に圧縮力リミッタが設けられている。圧縮力リミッタは、例えば、各開口部に設置される金属ブッシュである。これによって、具体的には、ネジ締結時に加わる圧縮応力が確実に維持される。したがって、取付ネジの強度が確保及び維持される。具体的には金属ブッシュとハウジングとの間を好適に調節することにより、損傷から保護することが実現可能である。
【0044】
特に好ましくは、箱状の本体が凹部を有していることである。ここで具体的には、凹部の縁側が開口している。凹部の中に、凹部を具体的には完全に充填するプラスチック体が嵌め込まれている。好ましくは、プラスチック体は本体と接着されており、密封性とロバスト性を向上させている。プラスチック体は、例えば、PBT又はポリアミドといった電気工学式プラスチックから成る。例えばプラスチック体は、縁側にシールを備えるか、又は、プラスチック体に、例えばゴムから成るシールが固定されている。プラスチック体、及び/又は、場合によっては設けられるゴムシールは、例えば射出成形により製造されている。ここでこのシールにより、プラスチック体と凹部の縁部との間の移行部が充填されるので、取り付け状態では、プラスチック体は本体と液密に接続される。したがって、凹部が設けられているにも関わらず、粒子がハウジングの中に侵入することは回避される。具体的には、プラスチック体は、ハウジングの壁の少なくとも一部を形成する。
【0045】
プラスチック体に、第1の主電流路の端子が固定されている。ここで具体的には、場合によってはこれに接続されたバスバーが、プラスチック体を貫通しており、プラスチック体によって、端子は電気的にハウジングの内部に案内される。プラスチック体は、端子の間に配置された絶縁板を含むことが適切である。この絶縁板によって、導線を端子に接続する際の意図しない短絡が阻止される。加えて、プラスチック体には、第1のスイッチが固定されている。したがって、プラスチック体、端子、第1のスイッチ、及び、場合によっては設けられるバスバーを含み、好ましくはこれらによって形成された、1つのモジュールが提供される。したがって第1のスイッチ及び端子をハウジングに取り付けることを、1つの作業ステップで行うことが可能になる。第1のスイッチが故障した場合には、モジュールの交換が可能であり、この際に、第1のスイッチを制御ユニットに接続すること以外に、実質的に追加的な作業を行う必要が無いので、交換も、修理工場とは関係なく行うことが可能である。また、各モジュールを交換することによって、主スイッチを所望の各用途に適合させることが可能である。まとめると、モジュール化が可能であり、製造コストが低減する。
【0046】
第2のスイッチが備えられる場合、ハウジングは、第2のプラスチック体が嵌め込まれた第2の凹部を有することが好ましい。ここで第2のプラスチック体には、第2のスイッチ及び割り当てられてた端子が固定される。好ましくは、第2のスイッチは、第1のスイッチを有するモジュールと同じ構造の、対応するモジュールの一構成要素である。この方法では、同一部品を使用できるので、在庫管理が簡略化され製造コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【
図1】主スイッチを備える車両を概略的に示す図である。
【
図3】2つのモジュールを備える主スイッチを示す分解斜視図である。
【
図4】第1のスイッチを含む、モジュールのうちの一方を示す斜視図である。
【
図6】主スイッチの代替的な一実施形態を示す前面又は背面斜視図である。
【
図7】主スイッチの代替的な一実施形態を示す前面又は背面斜視図である。
【0048】
全ての図において、互いに対応する部材には、同一の参照番号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1には、農機、すなわちトラクタ、つまり牽引機の形の車両2が、概略的に簡略化されて示されている。車両2は複数の車輪4を含む。これらの車輪のうちの少なくとも幾つかが、燃焼機関6によって、詳細には図示されていない伝動装置を介して駆動される。燃焼機関6によって発電機8も駆動され、発電機8によって車載電気システム10に電気エネルギーが供給される。このために、発電機8によって、48Vの直流電圧が車載電気システム10に供給される。車載電気システム10は、発電機8のすぐ後段に接続された主スイッチ12を備えている。換言すると、発電機8と主スイッチ12との間には、接続導線13を除いて、車載電気システム10の他の構成部品は配置されていない。そこには、車載電気システム10と接点を形成する他の構成部品も存在しない。
【0050】
車両2は、二次車載電気システム16に給電する電池14をさらに含む。電池14によって、12Vの直流電圧が提供され、したがってこの直流電圧が、二次車載電気システム16によって導かれる。電池14は、必要に応じて、動作時に発電機8によって、詳細には図示されていない直流電圧変換器を介して充電される。二次車載電気システム16によって、主スイッチ12及び車載コンピュータ18に電流供給される。車載コンピュータ18及び主スイッチ12は、バスシステム20によって信号技術的に接続されているので、車載コンピュータ18と主スイッチ12との間で、データ/信号を交換することが可能である。
【0051】
車両2には、トレイラー22が連結され、取り外し可能に車両2に接続されている。トレイラー22は、車載電気システム10によって電流供給される装備品24を保持している。このために、装備品24は、主スイッチ12の後段に接続された車載電気システム10の導線26と電気的に接続された、詳細には図示されていないプラグを備えている。装備品24によって、動作時に所定の機能が実施される。つまりトレイラー22は、例えば定植機であり、装備品24によって、苗が適した位置に案内される。
【0052】
図2には、主スイッチ12の概略的に簡略化された回路図が示されている。主スイッチ12は、第1の主電流路30及び第2の主電流路32が貫通するハウジング28を備える。各主電流路30、32には、ハウジング28の外側に配置された2つの端子33が割り当てられており、これらの端子の間を、主電流路30、32が延びている。ここで、各主電流路30、32又は各端子33は、ハウジング28の対応する開口部を通って案内されている。
【0053】
第1の主電流路30の端子33のうちの一方、及び、第2の主電流路32の端子33のうちの一方は、直接、発電機8に繋がる接続導線13に接続されている。これに対して、残りの端子33は、これらに接続された導線26と電気接点を形成している。
【0054】
第1の主電流路30には、リレーとして構成された第1のスイッチ34が挿入されている。この場合第1のスイッチ34によって、250Aの電流を通すこと、及び、切り替えることが可能であり、第1のスイッチ34に印加される電圧は48Vであり得る。第1のスイッチ34によって、第1の主電流路30を流れる電流を遮断することが可能であり、つまり、第1のスイッチ34を開くことによって電流を遮断可能である。反対に、第1のスイッチ34を閉じると、電流が第1の主電流路30を通って流れる。第1のスイッチ34は、プリチャージ回路36でバイパスされている。プリチャージ回路36は、詳細には図示されていないさらなるスイッチを備える。このさらなるスイッチは、好ましくはリレー又は代替的に半導体スイッチであり、抵抗器に直列接続されている。
【0055】
第1のスイッチ34、及び、プリチャージ回路36つまりさらなるスイッチは、制御ユニット38によって作動し、したがって操作される。この場合、動作時の制御ユニット38によって、第1のスイッチ34及びこのさらなるスイッチ36の切り替えに必要な電気エネルギーが提供され、このため、対応するスイッチング電圧が各スイッチに印加される。
【0056】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、第2の主電流路32に、第1のスイッチ34と同じ構造の第2のスイッチ40が挿入されている。第2のスイッチ40が備えられている場合は、第2のスイッチ40も制御ユニット38によって操作される。したがって第2のスイッチ40によって、同様に、第2の主電流路32を分離し、第2の主電流路32を通る電流の流れを遮断することが可能である。主電流路32は、詳細には図示されていない方法で、電気的にグランドに接続されている。
【0057】
制御ユニット38によって、さらに、第1の電流センサ42及び第2の電流センサ44が動作する。これらの電流センサは、互いに同じ構造を有し、いずれも分路として構成されている。ここで、第1の電流センサ42は第1の主電流路30に割り当てられており、第2の電流センサ44は第2の主電流路32に割り当てられている。動作時に、両方の電流センサ42、44によって測定データが作成され、当該測定データは、制御ユニット38によって読み出される。この際、両方の電流センサ42、44及び制御ユニット38によって、主電流路30、32のそれぞれを通る電流が測定される。両方の電流センサ42、44によって測定された電流間の差異が、閾値である0.5Aよりも大きい場合、第1のスイッチ34が開かれて、第1の主電流路30を通る電流の流れが遮断される。このような差分が生じるのは、例えば、リーク電流をもたらす導線26の絶縁異常又は装備品24の機能障害が起こった場合である。したがってこの場合、第1のスイッチ34の操作によって、装備品24や車両2及びトレイラー22の周囲のさらなる損傷が回避される。第1のスイッチ34に加えて、第2のスイッチ40も操作されるので、導線26にはもう電圧は全く印加されない。詳細には図示されていない一変形例では、両方の電流センサ42、44は、共通の構成ユニットによって実現されており、すなわち差動電流センサとして構成されている。
【0058】
装備品24を操作する必要がある場合、まず第2のスイッチ40を閉じる。第1のスイッチ34を導電状態に移行させる前に、まず、プリチャージ回路36、すなわち、さらなるスイッチを操作する。これによって、まず、プリチャージ回路36を介して電流が流れ、この電流は、プリチャージ回路36の抵抗により制限される。加えて、導線26に対向する端子33に印加される電圧が制限されて、車載電気システム10における電流スパイクが回避される。第1のスイッチ34を介して発生する電圧が所定の閾値を下回ると、第1のスイッチ34が閉じられ、続いてさらなるスイッチが開かれ、プリチャージ回路36はもう通電状態ではなくなる。したがって、プリチャージ回路36には電気損失が生じず、第1の主電流路30の電気抵抗は比較的少ない。
【0059】
第1のスイッチ34を介して印加される電圧を判定するために、主スイッチ12は、第1の電圧センサ46及び第2の電圧センサ48を有している。これらの電圧センサによって、両方の主電流路30、32の間に印加される電圧が測定可能である。ここで両方の電圧センサ46、48間に、第1のスイッチ34及び第2のスイッチ40が設けられる。両方の電圧センサ46、48は、制御ユニット38に信号技術的に接続されている。
【0060】
第1のスイッチ34を介して印加される電圧を測定することに加えて、電圧センサ46、48及び制御ユニット38によって測定される各電圧を用いて、第1のスイッチ34及び場合によっては第2のスイッチ40も操作される。例えば、装備品24が短絡した場合に見られるような、第2の電圧センサ48によって測定された電圧が低下した場合も、同じく第1のスイッチ34及び第2のスイッチ40が操作され、さらなる機能障害が阻止される。
【0061】
主スイッチ12は、第1のスイッチ34の導線26に対向した側において第1の主電流路30に繋がる放電回路50をさらに含む。放電回路50は、電気的に直列接続された、抵抗器及び追加的なスイッチを備える。放電回路50の残りの端部は、電気的にグランドに導かれている。詳細には図示されていない一変形例では、放電回路50は、両方の主電流路30、32の間に接続されており、放電回路50は、第1のスイッチ34及び第2のスイッチ40の、発電機8に離反する側に設けられている。誤作動により、つまり、例えば測定された電流又は判定された印加電圧の差異が大きすぎることにより、又は、所定の条件が存在する場合に、第1のスイッチ34及び第2のスイッチ40が開かれると、放電回路50が操作される。この場合、追加的なスイッチが閉じられ、第1の主電流路30は電気的にグランドに導かれる。したがって、第1のスイッチ34の開放後は、装備品24に電位としてグランドが印加され、これによって、トレイラー22を安全に分離することが可能であり、誤動作の訂正が容易になる。
【0062】
主スイッチ12は、データインターフェース52をさらに備える。データインターフェース52は、USB端子54、アナログ端子56、及び、デジタル端子58を備える。デジタル端子58には、バスシステム20が接続されている。動作時に、制御ユニット38によって、データインターフェース52を介して状態データが提供されるので、例えば車載コンピュータ18から、両方のスイッチ34、40の実際の状態を読み出し可能である。また、データインターフェース52を介して、センサ42、44、46、48によって測定されたデータが提供され、当該データは、例えばUSB端子54に接続されたドライブに保存可能である。加えて、データインターフェース52を介して、制御ユニット38に命令を伝送可能であり、その命令に応じて、スイッチ34、40は開かれるか、又は、閉じられる。したがって、車載コンピュータ18によって、装備品24の電流供給に影響を与えることが可能である。
【0063】
制御ユニット38は、二次車載電気システム16と電気接点を形成するさらなる電流端子60を介して電流供給される。ここで、さらなる電流端子60と制御ユニット38との間には、直流電圧変換器62が接続されている。直流電圧変換器62によって、さらなる電流端子60において提供された12Vの直流電圧が、5Vの直流電圧に低減される。二次車載電気システム16を介した電流供給により、直流電圧変換器62の必要な耐電圧は低減される。
【0064】
ここで、直流電圧変換器62は、さらなる端子63を介して、車両2のイグニッションに接続されている。換言すると、さらなる端子63は端子15に相当する。ここで、直流電圧変換器62は、さらなる端子63に基準電位が印加された場合にのみ、動作する。したがって、イグニッションがオンされている場合のみ、直流電圧変換器62による電圧の提供が行われ、その後にしか制御ユニット38は動作しない。したがって、エネルギー必要量が低減される。
【0065】
第1のスイッチ34及び第2のスイッチ40は、制御ユニット38によって対応する信号が発信された場合にのみ、導電状態になるように構成されている。換言すると、スイッチ34、40は単安定に構成されている。したがって、制御ユニット38によってこのような信号が生成されず/電圧が印加されない限り、第1のスイッチ34及び第2のスイッチ40は、開かれた状態にある。したがって、制御ユニット38が故障した場合や、イグニッションがオフされている場合も、導線26に接続された、装備品24等の部品の動作は不可能となり、安全性が向上する。
【0066】
主スイッチ12は、制御ユニット38によって少なくとも部分的に動作する連動システム64をさらに含む。連動システム64は、詳細には図示されていない複数の補助端子を備え、これらの補助端子は、対応する導線26の係合用補助プラグに電気的に接続されている。ここで、補助端子/係合用補助プラグによって導かれる電流は、数ミリアンペアであり、印加される電圧は50Vよりも低い。導線26を主スイッチ12から取り外す際には、形状的構成により、まず補助端子を係合用補助プラグから分離する。この際、端子33はまだ、関連付けられた導線26の係合用プラグに電気的に接続されている。補助端子を係合用補助プラグから取り外したことが確認されると、第1のスイッチ34及び第2のスイッチ40が開かれ、導線26に割り当てられた端子33には、もう電圧が印加されない。したがってその後、導線26が完全に取り外されると、主スイッチ12又はこの主スイッチ12の後段に接続された車載電気システム10の構成部品に人が接触しても、危険はない。
【0067】
図3には、主スイッチ12の第1の実施形態が、分解斜視図に示されている。ハウジング28は、箱状の本体66を備える。本体66はアルミニウムから成り、
図4では、本体66の背面が斜視図に示されている。箱状又は鍋状の本体66の底において、外側に、複数の冷却フィン67が形成されており、本体66は、部分的に放熱板のように構成されている。
【0068】
本体66は、取り付け状態において、同じくアルミニウムから成る平坦な蓋68により液密に閉鎖されており、これらの間には、詳細には図示されていないシールが設けられている。詳細には図示されていない一変形例では、密閉作用が接着剤で実現されている。本体66の内部には、回路基板に固定された、又は、回路基板を含む制御ユニット38が配置されている。回路基板にはさらに、プリチャージ回路36、放電回路50、及び、センサ42、44、46、48、並びに、ハウジング28内に配置された主スイッチ12のさらなる部品が固定されている。
【0069】
本体66の外面には、外側に向けられた突起70が形成されている。突起70は、主スイッチ12を車両2のさらなる構成部品に固定するように機能する。このために、各突起70は開口部72を有する。開口部72の内部には、取り付け状態において、対応する取付ネジが配置される。また開口部72は、金属ブッシュによって提供される、詳細には図示されていない圧縮力リミッタで覆われている。
【0070】
本体66は、対向し合う(縁)側面に、それぞれ縁側に開いた凹部74を備えている。凹部74は、いずれもプラスチック体76で完全に充填されている。各プラスチック体76は、互いに同じ構造を有する2つのモジュール78のうちの一方の構成部品である。2つのモジュール78のうちの1つを、
図5において拡大斜視図に示す。この場合、モジュール78の一方によって第1のスイッチ34が提供され、他方によって第2のスイッチ40が提供される。各モジュール78のプラスチック体76には、第1のスイッチ34又は第2のスイッチ40が固定され、スイッチ34、40は、プラスチック体76のハウジング内部に対向する側に設けられる。プラスチック体76の対向し合う側において、各スイッチ34、40に割り当てられた端子33がプラスチック体76に固定される。これらの端子33は、各主電流路30、32の各バスバー80に移行している。これら両方の端子33間には、プラスチック体76の板状の絶縁体82が配置されているので、さらなる部品を接続する際に両方の端子33の間に意図しない短絡が生じることが回避される。
【0071】
バスバー80は、プラスチック体76のプラスチックでコーティングされているので、モジュール78は液密に構成されている。詳細には図示されていない一変形例では、バスバー80は、さらに封止材で封入されている。各スイッチ34、40は、プラスチック体76を通って突出するバスバーと電気接点を形成している。各端子33は、各バスバー80と一体に形成された平板導体によって形成されており、この平板導体に、接続導線13又は導線26のケーブルラグ86を接続可能なボルト84が押し込まれる。
【0072】
本体66には、部分的にプラスチックからなるプラグ88が固定されている。プラグ88には、データインターフェース52、さらなる電流端子60、及び、さらなる端子63が一体化されている。したがって、主スイッチ12の取り付けが容易になる。
【0073】
代替的な一実施形態の主スイッチ12が、
図6において前面図、及び、
図7において背面図に示されている。ここでも、主スイッチ12は、蓋68で閉鎖される箱状の又は皿状の本体66を有するハウジング28を備えているが、蓋68は
図7では示されていない。この実施形態では、箱状の本体66は、詳細には図示されていない蓋と同様に、プラスチックから成る。
【0074】
箱状の本体66は、その底に、アルミニウムから成る放熱板92がはめ込まれた四角形の部分90を備える。製造時に、放熱板92の周囲を、本体66のプラスチックでコーティングすることにより、これらの間に液密接続が生成される。代替的なさらなる一実施形態では、放熱板92は、シールの使用及び/又は接着により、本体66と密着して接続されている。放熱板92は、電気的に絶縁された熱橋94及び場合によっては導熱板を介して、本体66の中に配置された構成部品と熱的に接続されており、動作時にこれらの冷却を行う。この変形例でも、本体66には、開口部72を有する突起70が形成されている。各開口部72の中には、圧縮力リミッタのうちの1つが配置される。
【0075】
この実施形態では、モジュール78は備えられておらず、同様に構成された端子33が備えられている。端子33は、互いに平行に配置されており、直接本体66の中に到達し、製造時に、同じく本体66のプラスチックでコーティングされて液密な接続が実現されている。詳細には図示されていない一変形例では、端子33を封止する封止材がさらに設けられている。第2の主電流路32に割り当てられた端子33は、バスバー80のうちの1つによって直接電気的に接触し合っているので、この実施形態では、単極の分離だけが可能である。換言すると、第2のスイッチ40は設けられていない。
【0076】
この実施形態では外側の端子である残りの端子33は、対応するバスバー80によって第1のスイッチ34を介して互いに接続されている。第1のスイッチ34は、ここでは図示されていない制御ユニット38によって操作される。ここでもプラグ88が設けられているが、プラグ88は、本体66によって部分的に形成されたものである。この場合、プラグ88は本体66の底に設けられており、プラグ88によって、データインターフェース52だけでなく、さらなる電流端子60及びさらなる端子63も提供される。加えて、追加的なプラグ90が設けられている。追加的なプラグ90も、本体66の底に配置されており、その中に、必要に応じて例えばキャパシタ等のさらなる構成部品を差し込み可能である。キャパシタを外部から接続することにより、例えば故障時の交換が容易になる。
【0077】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。むしろ当業者であれば、本発明の対象から逸脱することなく、本発明の他の変形例を導き出すことも可能であろう。具体的には、また、個々の実施形態に関連して説明した個々の全ての特徴を、本発明の対象から逸脱することなく、別の方法で互いに組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
2 車両
4 車輪
6 燃焼機関
8 発電機
10 車載電気システム
12 主スイッチ
13 接続導線
14 電池
16 二次車載電気システム
18 車載コンピュータ
20 バスシステム
22 トレイラー
24 装備品
26 導線
28 ハウジング
30 第1の主電流路
32 第2の主電流路
33 端子
34 第1のスイッチ
36 プリチャージ回路
38 制御ユニット
40 第2のスイッチ
42 第1の電流センサ
44 第2の電流センサ
46 第1の電圧センサ
48 第2の電圧センサ
50 放電回路
52 データインターフェース
54 USB端子
56 アナログ端子
58 デジタル端子
60 さらなる電流端子
62 直流電圧変換器
63 さらなる端子
64 連動システム
66 本体
67 冷却フィン
68 蓋
70 突起
72 開口部
74 凹部
76 プラスチック体
78 モジュール
80 バスバー
82 絶縁体
84 ボルト
86 ケーブルラグ
88 プラグ
90 追加的なプラグ
92 放熱板
94 熱橋
【外国語明細書】