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特開2023-143957正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143957
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230928BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230928BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230928BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125247
(22)【出願日】2023-08-01
(62)【分割の表示】P 2020196013の分割
【原出願日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0037343
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジャンク ベー
(57)【要約】
【課題】正極活物質を構成するリチウム複合酸化物の構造的安定性が向上した正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物を含む正極活物質であって、前記リチウム系複合酸化物の表面にカチオン混合層が存在し、前記一次粒子の平均粒径(x1)に対する前記カチオン混合層の厚み(d1)の比(d1/x1)は、0.0008超過0.0052未満である、正極活物質。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウム系複合酸化物の表面にカチオン混合層が存在し、
前記一次粒子の平均粒径(x1)に対する前記カチオン混合層の厚み(d1)の比(d1/x1)は、0.0008超過0.0052未満である、正極活物質。
【請求項2】
前記正極活物質は、単結晶構造を有する前記リチウム系複合酸化物である一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含み、
前記カチオン混合層は、前記一次粒子および前記二次粒子から選ばれる少なくとも1つの表面に存在する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記カチオン混合層は、前記二次粒子の表面に存在し、
前記二次粒子の平均粒径(x2)に対する前記カチオン混合層の厚み(d2)の比(d2/x2)は、0.00014超過0.00281未満である、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記カチオン混合層は、前記一次粒子および前記二次粒子の表面に存在し、
前記一次粒子の表面に存在する前記カチオン混合層の厚み(d1)は、前記二次粒子の表面に存在する前記カチオン混合層(d2)の厚みより小さい、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記一次粒子の表面に存在する前記カチオン混合層の厚み(d1)と前記二次粒子の表面に存在する前記カチオン混合層(d2)の比(d1/d2)は、0.53超過1.0未満である、請求項4に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質を構成する複数の二次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である二次粒子の比率は、30%以上である、請求項1に記載の正極活物質。
結晶粒界の密度=(二次粒子内一次粒子間の境界面の数/二次粒子を構成する一次粒子の数)
【請求項7】
前記リチウム系複合酸化物の平均粒径は、1.0μm~5.0μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記二次粒子の平均粒径は、1.0μm~20.0μmである、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記リチウム系複合酸化物は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
LiNi1-(b+c+d+e)CoM1M2M3
ここで、M1は、MnまたはAlであり、
M2およびM3は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、W、NbおよびZrから選ばれ、
M1~M3は、互いに異なる金属である。
(0.90≦a≦1.05、0≦b≦0.20、0≦c≦0.20、0≦d≦0.05、0≦e≦0.05、1.0≦f≦2.0)
【請求項10】
前記カチオン混合層は、下記の化学式2で表される複合酸化物を含む、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式2]
LiNi1-(h+i+j+k)CoM4M5M6
ここで、M4は、MnまたはAlであり、
M5およびM6は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、W、NbおよびZrから選ばれ、
M4~M6は、互いに異なる金属である。
(0.0≦g≦1.05、0≦h≦0.20、0≦i≦0.20、0≦j≦0.05、0≦k≦0.05、1.0≦l≦2.0)
【請求項11】
前記化学式2で表される前記複合酸化物の結晶構造は、前記リチウム系複合酸化物と異なる、請求項10に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記カチオン混合層の厚みは、0.23nm超過12.04nm未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに1項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項14】
請求項13に記載の正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質を構成するリチウム複合酸化物の構造的安定性が向上した正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
他の再充電式電池システムと比較するとき、リチウム二次電池は、高運転電圧、軽量化、小型化、非メモリ効果、低い自己放電率、長いサイクル寿命、高エネルギー密度等のような利点があるので、モバイルフォン、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータおよびその他モバイル端末で広く使用される。
【0003】
また、最近、数年間、環境保護の観点から、政府および自動車製造社の広報下に電気車が急速に開発され、リチウム二次電池は、その優秀な性能のおかげで次世代電気自動車の理想的な電源として考慮されている。
【0004】
このようなリチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム系複合酸化物が使用されており、この中でも、作用電圧が高くて、容量特性に優れたリチウム-コバルト複合酸化物(LiCoO)が主に使用されている。しかしながら、LiCoOは、脱リチウムによる結晶構造の不安定化によって高温安定性が劣り、また、高価なので、電気自動車等のように大容量の電池システムを要求する分野の動力源として使用されるには限界がある。
【0005】
LiCoOを代替するための素材として、リチウム-マンガン複合酸化物(LiMnOまたはLiMn等)、リチウム-リン酸鉄(LiFePO等)またはリチウム-ニッケル複合酸化物(LiNiO等)等が開発されたことがあり、ここで、リチウム-ニッケル複合酸化物は、約200mAh/gの高い可逆容量を有するに従って大容量の電池具現が可能であるという点から研究および開発がより活発に行われている。
【0006】
ただし、LiNiOは、LiCoOと比較するとき、高温安定性が悪くて、充電状態で外部からの圧力等により内部短絡が発生すると、正極活物質が自ら分解したり、電解液と正極活物質の界面および表面間の副反応により電池の破裂および発火を招く問題がある。
【0007】
これにより、LiNiOの優れた可逆容量は維持しながらも、低い高温安定性を改善することが可能な正極活物質の開発が要求されるのが現状である。
【0008】
一方、リチウム二次電池は、電池ケースの形状によって電極組立体が金属缶に内蔵された缶タイプの二次電池と、電極組立体がアルミニウムラミネートのようなシートからなるパウチに内蔵されたパウチタイプの二次電池とに分類され得る。
【0009】
パウチタイプの二次電池は、軽くて、電解液の漏れの可能性が少なくて、相対的に小さい体積および質量で同じ量の二次電池を具現することができる長所がある反面、電池ケースの内部圧力が急激に増加する場合、爆発の危険性があって、電池ケースの内部圧力の主な上昇原因であるガス発生をコントロールすることによって、安定性を確保することが重要な課題の1つである。
【0010】
例えば、二次電池に限界以上の過電流(overcharge)が流れる場合、電池の内部温度が急激に上昇するに従って電解液の分解反応を引き起こして、ガスを発生させることもできるが、電解液と正極活物質の界面および表面間の副反応によってガスが発生し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2017-0048208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、LiNiOの優れた可逆容量は維持しながらも、低い熱的安定性乃至構造的安定性を改善することが可能な正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、電解液と正極活物質の界面および表面間の副反応が起こる可能性を減らすことによって、二次電池内ガス発生による電池膨張現象を防止することが可能な正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、一次粒子の表面をカチオン混合層をカバーすることによって、リチウム複合酸化物の構造的安定性を向上させた正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及されていない本発明の他の目的および長所は、下記の説明により理解され得、本発明の実施例によりさらに明らかに理解されるだろう。また、本発明の目的および長所は、特許請求範囲に示した手段およびその組合せにより実現され得ることを容易に知ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物を含む正極活物質が提供される。
【0017】
前記正極活物質は、前記リチウム系複合酸化物の表面に存在するカチオン混合層を含み、かつ前記カチオン混合層の厚み(d1)は、前記一次粒子の平均粒径(x1)に対して0.0008超過0.0052未満になる範囲内で存在し得る。
【0018】
また、本発明の他の態様によれば、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極が提供される。
【0019】
また、本発明のさらに他の態様によれば、前記正極を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0020】
リチウム系複合酸化物および/または少なくとも2つの前記リチウム系複合酸化物が凝集して形成された二次粒子の表面および粒界面は、正極活物質と電解液間の副反応が起こることが可能な領域である。
【0021】
本発明によれば、前記二次粒子を構成する一次粒子であるリチウム系複合酸化物が単結晶構造を有することによって、正極活物質と電解液間の副反応を減少させることが可能である。
【0022】
すなわち、前記リチウム系複合酸化物および/または前記二次粒子の表面積および粒界面を減少させることによって、正極活物質の高温安定性および貯蔵安定性等を向上させることができる。前記正極活物質の高温安定性だけでなく、貯蔵安定性が向上するに従って前記正極活物質の動作および/または保管中に前記正極活物質に起因したガス発生を低減することが可能である。
【0023】
また、本発明によれば、本願で定義された結晶粒界の密度条件を満たす正極活物質を構成するリチウム複合酸化物の表面に存在するカチオン混合層によりリチウム複合酸化物、ひいては、正極活物質の構造的安定性を向上させることができる。
【0024】
上述した効果と共に、本発明の具体的な効果は、以下に発明を実施するための具体的な事項を説明しつつ、一緒に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の多様な実施例による正極活物質に含まれ得る二次粒子の断面を概略的に示す模式図である。
図2】本発明の多様な実施例による正極活物質に含まれ得る二次粒子の断面を概略的に示す模式図である。
図3】本発明の多様な実施例による正極活物質に含まれ得る二次粒子の断面を概略的に示す模式図である。
図4】実施例1による正極活物質の断面SEM写真であり、前記正極活物質に含まれた二次粒子の結晶粒界の密度の測定結果を示すものである。
図5】実施例2による正極活物質の断面SEM写真であり、前記正極活物質に含まれた二次粒子の結晶粒界の密度の測定結果を示すものである。
図6】比較例1による正極活物質の断面SEM写真であり、前記正極活物質に含まれた二次粒子の結晶粒界の密度の測定結果を示すものである。
図7】実施例1による正極活物質のSEM写真である。
図8】実施例3による正極活物質のSEM写真である。
図9】実施例4による正極活物質のSEM写真である。
図10】実施例5による正極活物質のSEM写真である。
図11】実施例7による正極活物質のSEM写真である。
図12】実施例11による正極活物質のSEM写真である。
図13】比較例1による正極活物質のSEM写真である。
図14】比較例2による正極活物質のSEM写真である。
図15】実施例1による正極活物質のTEM写真である。
図16】実施例3による正極活物質のTEM写真である。
図17】実施例4による正極活物質のTEM写真である。
図18】実施例5による正極活物質のTEM写真である。
図19】実施例7による正極活物質のTEM写真である。
図20】実施例11による正極活物質のTEM写真である。
図21】比較例1による正極活物質のTEM写真である。
図22】比較例2による正極活物質のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明をさらに容易に理解するために、便宜上、特定の用語を本願に定義する。本願で別途定義しない限り、本発明に使用された科学用語および技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態をも含むものと理解されなければならない。
【0027】
用語の説明
本願で使用された用語「リチウム系複合酸化物」は、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な酸化物であって、リチウムおよび金属元素を含み、特に本願で使用されるリチウム系複合酸化物は、リチウムとニッケルを含むリチウム-ニッケル系複合酸化物でありうる。また、本願で使用された用語「リチウム系複合酸化物”は、正極活物質を構成する一次粒子として定義され得る。
【0028】
本願で使用された用語「単結晶」は、粒子の内部に結晶粒(grain)または結晶粒界(grain boundary)を含まない状態の結晶を意味する。また、本願で使用された用語「一次粒子」は、凝集体を形成せずに単独で存在する粒子を意味する。これにより、「単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物」は、リチウム系複合酸化物からなる一次粒子が複数の結晶粒からなるか、一次粒子の内部に結晶粒界が含まれない状態の粒子を意味する。
【0029】
本願で使用された用語「二次粒子」は、上述したリチウム系複合酸化物である一次粒子それ自体であるか、少なくとも2つの一次粒子が凝集した粒子を意味する。この場合、正極活物質内には、単一の一次粒子からなる二次粒子および/または少なくとも2つの一次粒子が凝集した二次粒子が共存することができる。少なくとも2つの一次粒子が凝集して二次粒子を形成する場合、二次粒子内には、2つの一次粒子の界面に形成される結晶粒界または粒界面が存在することになる。
【0030】
本願で使用された用語「結晶粒界の密度」は、二次粒子内に少なくとも2つの一次粒子が存在するに従って形成される結晶粒界または粒界面の数を意味し、二次粒子内に存在する一次粒子の数が多いほど結晶粒界の密度が大きくなり、二次粒子内に存在する一次粒子の数が少ないほど結晶粒界の密度が小さくなる。
【0031】
本願で結晶粒界の密度は、下記の式で計算され得る。
【0032】
結晶粒界の密度=(二次粒子内一次粒子間の境界面の数/二次粒子を構成する一次粒子の数)
【0033】
もし、前記二次粒子内に存在する一次粒子の数が1である場合、前記式により計算された結晶粒界の密度は、0であり、前記二次粒子内に存在する一次粒子の数が3以上である場合、前記式により計算された結晶粒界の密度は、0.5を超過する。
【0034】
一方、本願で二次粒子は、単結晶構造を有する単一の一次粒子からなる粒子であってもよいが、必ずこれに制限されるものではない。すなわち、本願で二次粒子は、単一の単結晶粒子からなるか、少なくとも2つの単結晶粒子が凝集して形成された粒子として理解され得る。このような二次粒子の定義は、後述する正極活物質の定義によりさらに明確に説明され得る。
【0035】
本願で使用された用語「正極活物質」は、上述した二次粒子を含む広義の概念であって、単一の二次粒子それ自体が正極活物質であってもよいが、本願では、互いに同じおよび/または異なる結晶粒界の密度を有する複数の二次粒子の集合体を正極活物質として定義することができる。
【0036】
したがって、後述する正極活物質の定義において複数の二次粒子の集合体の性格を有する二次粒子に関する説明と、前記正極活物質を構成する二次粒子および前記二次粒子を構成する一次粒子に関する説明とは、区分して理解される必要がある。
【0037】
以下、本発明による正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池についてさらに詳細に説明することとする。
【0038】
正極活物質
正極活物質に含まれた二次粒子の表面積および前記二次粒子内に存在する一次粒子により定義される粒界面は、正極活物質と電解液の界面および表面間の副反応が起こり得る領域である。ここで、前記二次粒子内に存在する前記一次粒子により定義される粒界面は、例えば、互いに隣り合った2つの一次粒子間の界面と理解され得る。
【0039】
この際、前記二次粒子の表面積および前記二次粒子内一次粒子により定義される粒界面を減少させることによって、正極活物質の熱的安定性を向上させると同時に、正極活物質の不安定性によってもたらされる問題(例えば、ガス発生等のような貯蔵安定性の低下)を予防または緩和することが可能である。
【0040】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池用正極活物質は、単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物である一次粒子からなる二次粒子を含む。
【0041】
特に、前記二次粒子を構成する前記一次粒子が単結晶構造を有するに従って前記二次粒子内前記一次粒子の表面積および前記二次粒子内に存在する前記一次粒子により区画される粒界面を減少させることが可能である。付加的に、前記二次粒子を構成する前記一次粒子は、長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有することによって、前記二次粒子内リチウムイオンを多方向に拡散させる代わりに、一方向に集中させて、前記二次粒子内リチウムイオンの伝導性を向上させることが可能である。
【0042】
図1図3は、本発明の多様な実施例による正極活物質に含まれ得る二次粒子の断面を概略的に示すものである。
【0043】
図1図3に示された正極活物質に含まれた二次粒子110、120、130は、1個~10個の一次粒子111、121、131が凝集して形成されることによって数十~数百個の一次粒子が凝集して形成された二次粒子に比べて相対的に小さい表面積を有して、電解液との副反応が起こる表面積を減らすことが可能である。また、二次粒子を形成する一次粒子の数が少ないことによって、結晶粒界の密度が小さくなって、二次粒子内粒界面における副反応も低減することができる。
【0044】
また、本発明によれば、正極活物質に含まれた複数の二次粒子を構成する一次粒子は、長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路を有する確率が高くなりえる。このように、二次粒子内長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路の比率が高くなるに従って正極活物質によるリチウムイオン伝導性および電子伝導性を向上させることが可能である。
【0045】
一実施例において、本発明による正極活物質は、互いに同じまたは異なる結晶粒界(grain boundary)密度を有する二次粒子の集合体でありうる。
【0046】
本願で結晶粒界の密度は、下記の式で計算され得る。
【0047】
結晶粒界の密度=(二次粒子内一次粒子間の境界面の数/二次粒子を構成する一次粒子の数)
【0048】
互いに異なる結晶粒界の密度を有する二次粒子は、物理的および化学的特性が異なり得る。結晶粒界の密度が異なることによって変わり得る物理的特性としては、例えば、二次粒子のプレス前/後の表面積の差異があり、化学的特性としては、例えば、二次粒子の表面および/または界面と電解液の間の副反応の比率の差異がありえる。
【0049】
具体的に、本発明による正極活物質は、正極活物質を構成する複数の二次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である二次粒子の比率が30%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、70%以上でありうる。
【0050】
例えば、二次粒子が単結晶構造を有する単一の一次粒子からなる場合、結晶粒界の密度は、0(二次粒子内一次粒子間の境界面の数=0/二次粒子を構成する一次粒子の数=1)になり、二次粒子が単結晶構造を有する2つの一次粒子からなる場合、結晶粒界の密度は、0.5となる。
【0051】
すなわち、二次粒子内一次粒子間の境界面の数が小さいほど結晶粒界の密度は、相対的に小さい値を示すことができる。この際、二次粒子を構成する一次粒子の数が増える場合、二次粒子内一次粒子間の境界面の数も増加するので、結晶粒界の密度が0.5以下になるためには、二次粒子が単結晶構造を有する単一の一次粒子からなるか、単結晶構造を有する2つの一次粒子からなるべきである。
【0052】
例えば、本発明による正極活物質は、1個~2個の一次粒子からなる二次粒子(以下、便宜上、「第1凝集体」という)、3個~6個の一次粒子からなる二次粒子(以下、便宜上、「第2凝集体」という)および7個~10個の一次粒子からなる二次粒子(以下、便宜上、「第3凝集体」という)を含むことができる。
【0053】
図1に示された第1凝集体110は、二次粒子を形成する一次粒子111の数が1個または2個であって、第2凝集体および第3凝集体に比べて二次粒子を形成する一次粒子の数が少ないので、相対的に小さい表面積を有して、電解液との副反応が起こる領域を減らすことが可能である。
【0054】
また、第1凝集体110内一次粒子111が形成する粒界面bの数は、1個以下である。これにより、粒界面の数が2個以上である場合に比べて、粒界面において電解液との副反応が起こる確率が少なくなり得る。
【0055】
このような第1凝集体は、正極活物質を構成する二次粒子の集合体のうち30%以上であることが好ましい。ここで、二次粒子の集合体のうち第1凝集体が存在する比率(%)は、集合体を構成する二次粒子の全体数のうち第1凝集体の数が占める比率(%)を意味する。
【0056】
正極活物質を構成する二次粒子の集合体のうち第1凝集体の比率が30%未満である場合、集合体のうち第1凝集体の比率が小さくなるに従って正極活物質を構成する二次粒子の平均表面積および結晶粒界の密度が高くなる。これにより、正極活物質の電解液との副反応可能性が高くなって、正極活物質の高温安定性および貯蔵性を低下させる原因として作用することができる。
【0057】
一方、焼成温度を高める場合、正極活物質を構成する二次粒子の集合体のうち第1凝集体の比率を増加させることが可能であるが、焼成温度が過度に高い場合、かえって正極活物質の劣化可能性が高くなりえる。
【0058】
また、図2に示された第2凝集体120は、二次粒子を形成する一次粒子121の数が3個~6個であって、このような第2凝集体120は、正極活物質を構成する二次粒子の集合体のうち70%以下、好ましくは、20%以上70%以下で存在し得る。
【0059】
また、図3に示された第3凝集体130は、二次粒子を形成する一次粒子131の数が7個~10個であって、このような第3凝集体130は、正極活物質を構成する二次粒子の集合体のうち10%以下で存在することが好ましい。
【0060】
この際、正極活物質は、第3凝集体(二次粒子を構成する一次粒子が7個~10個である二次粒子)より多数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子も含むことができる。この場合にも、二次粒子の集合体のうち第3凝集体と第3凝集体より多数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子の比率は、10%以下であることが好ましい。
【0061】
第1凝集体の比率が70%であり、第2凝集体の比率が20%未満に減少する場合、結果的に、第3凝集体に比べて第2凝集体の比率が小さくなるので、正極活物質を構成する二次粒子の平均表面積および結晶粒界の密度が高くなり、これは、正極活物質の高温安定性および貯蔵性を低下させる原因として作用することができる。
【0062】
一方、正極活物質を構成する二次粒子の集合体のうち第2凝集体の比率が30%を超過する場合、第1凝集体に比べて第2凝集体の比率が相対的に大きくなるので、同様に、正極活物質を構成する二次粒子の平均表面積および結晶粒界の密度が高くなりえる。
【0063】
また、単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物である一次粒子の平均粒径は、好ましくは、1.0μm~5.0μmでありうる。単結晶構造を有するリチウム系複合酸化物である一次粒子の平均粒径が1.0μm~5.0μmの範囲内に存在することによって、前記リチウム系複合酸化物で形成された正極活物質の最適密度を具現すると同時に、後述するカチオン混合層による構造的安定性の向上効果を最大化することができる。
【0064】
また、二次粒子の平均粒径は、凝集した一次粒子の数によって変わり得るが、1.0μm~20.0μmでありうる。好ましくは、前記二次粒子は、小粒二次粒子と大粒二次粒子を含むことができ、前記小粒二次粒子は、1.0μm~5.0μmの平均粒径を有し、前記大粒二次粒子は、10.0μm~20.0μmの平均粒径を有し得る。これにより、前記小粒二次粒子と前記大粒二次粒子が混合された前記二次粒子の集合体の平均粒径は、3.0μm~18.0μmでありうる。
【0065】
このように、本発明による正極活物質は、互いに同じまたは異なる結晶粒界の密度を有する二次粒子の集合体であると同時に、互いに異なる平均粒径を有する小粒二次粒子と大粒二次粒子が混合された集合体でありうる。このような二次粒子の集合体の性格によって前記正極活物質の構造的安定性を向上させることができ、ひいては、前記正極活物質を使用したリチウム二次電池の高温安定性および貯蔵安定性を向上することが可能である。
【0066】
本発明による正極活物質を構成するリチウム系複合酸化物は、下記の化学式1で表され得る。
【0067】
[化学式1]
LiNi1-(b+c+d+e)CoM1M2M3
【0068】
ここで、M1は、MnまたはAlであり、M2およびM3は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、W、NbおよびZrから選ばれ、M1~M3は、互いに異なる金属である(0.90≦a≦1.05、0≦b≦0.20、0≦c≦0.20、0≦d≦0.05、0≦e≦0.05、1.0≦f≦2.0)。
【0069】
この際、M3は、M1と異なる金属であって、化学式1で表されるリチウム系複合酸化物の製造時にfluxとして添加され得、このようなfluxは、融点を下げる役割をして粒子の成長を促進させることができ、これを通じて、後述するカチオン混合層が適切な割合で形成されるように誘導することが可能である。
【0070】
また、本発明による正極活物質は、前記化学式1で表されるリチウム系複合酸化物の表面に存在するカチオン混合層を含むことができる。
【0071】
具体的に、前記正極活物質は、単結晶構造を有する前記リチウム系複合酸化物である一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含むことができ、前記カチオン混合層は、前記一次粒子および前記二次粒子から選ばれる少なくとも1つの表面に存在し得る。
【0072】
この際、前記カチオン混合層は、下記の化学式2で表される複合酸化物を含むことができ、下記の化学式2で表される複合酸化物は、前記化学式1で表されるリチウム系複合酸化物と異なる酸化物である。
【0073】
[化学式2]
LiNi1-(h+i+j+k)CoM4M5M6
【0074】
ここで、M4は、MnまたはAlであり、M5およびM6は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、W、NbおよびZrから選ばれ、M4~M6は、互いに異なる金属である(0.0≦g≦1.05、0≦h≦0.20、0≦i≦0.20、0≦j≦0.05、0≦k≦0.05、1.0≦l≦2.0)。
【0075】
前記リチウム系複合酸化物の表面に前記化学式2で表される複合酸化物を含む前記カチオン混合層が存在するに従って、一次粒子である前記リチウム系複合酸化物の構造的安定性を向上させることができる。
【0076】
より具体的に、前記カチオン混合層に含まれた複合酸化物は、下記の化学式3で表され得る。
【0077】
[化学式3]
LiNi
(0.0≦m≦0.5、0.0<n≦1、1.0≦l≦2.0)。
【0078】
前記カチオン混合層に含まれた前記複合酸化物は、層状構造、岩塩構造およびスピネル構造から選ばれる結晶構造を有するか、層状構造、岩塩構造およびスピネル構造から選ばれる少なくとも1つの結晶構造を有する複合酸化物が混在された結晶構造を有し得る。ただし、この場合、前記カチオン混合層に含まれた前記複合酸化物は、前記化学式1で表されるリチウム系複合酸化物と異なる結晶構造を有することが好ましい。
【0079】
前記正極活物質を構成する一次粒子である前記リチウム系複合酸化物の表面に存在する前記カチオン混合層の厚みは、0.24nm~12.03nmであり得、前記一次粒子の平均粒径に対する前記カチオン混合層の厚みの比は、0.0008超過0.0052未満でありうる。
【0080】
前記一次粒子の平均粒径に対する前記カチオン混合層の厚みの比が0.0008以下である場合、前記カチオン混合層による前記リチウム系複合酸化物の構造的安定性の向上効果が不十分なことがある。一方、前記一次粒子の平均粒径に対する前記カチオン混合層の厚みの比が0.0052以上である場合、前記カチオン混合層の厚みが過度に厚くなるに従って前記リチウム系複合酸化物の電気的特性が低下する恐れがある。
【0081】
また、前記カチオン混合層は、前記二次粒子の表面にも存在し得る。この際、前記二次粒子の平均粒径(x2)に対するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d2/x2)は、0.00014超過0.00281未満であることを確認することができる。
【0082】
前記二次粒子の平均粒径に対する前記カチオン混合層の厚みの比が0.00014以下である場合、前記カチオン混合層による前記二次粒子の構造的安定性の向上効果が不十分なことがある。一方、前記二次粒子の平均粒径に対する前記カチオン混合層の厚みの比が0.00281以上である場合、前記カチオン混合層の厚みが過度に厚くなるに従って前記二次粒子の電気的特性が低下する恐れがある。
【0083】
一方、前記二次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚みは、前記一次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚みより厚いことがある。この場合、前記一次粒子および前記一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなる正極活物質の構造的安定性を低下させない範囲内で前記正極活物質の電気的特性を向上させることが可能である。
【0084】
この際、一次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d1)と二次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d1/d2)は、0.53超過1.0未満であることが好ましい。
【0085】
このように、前記一次粒子と前記二次粒子の表面に前記カチオン混合層がそれぞれ存在するとき、前記二次粒子の表面に存在する前記カチオン混合層の厚みが前記一次粒子の表面に存在する前記カチオン混合層の厚みより厚く形成することによって、前記一次粒子および前記二次粒子を含む正極活物質の電気的特性の低下を最小とすると同時に、前記カチオン混合層により誘導される構造的安定性の効果を向上させることが可能である。
【0086】
本発明の多様な実施例による正極活物質は、上記のように所定の範囲内一次粒子の平均粒径(x1)に対するカチオン混合層の厚み(d1)の比(d1/x1)、二次粒子の平均粒径(x2)に対するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d2/x2)および一次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d1)と二次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d1/d2)を満たすことによって、向上した電気化学的特性および構造的安定性を示すことができる。
【0087】
追加的に、前記二次粒子のX線回折によるリートベルト解析から得られるLi3aサイト内Ni占有率が0.53%超過、好ましくは、1.0%以上、より好ましくは、1.3%以上でありうる。また、前記二次粒子のLi3aサイト内Ni占有率は、6.44%未満であることが好ましい。3bサイトのNi3+は、高い温度範囲で熱力学的に安定したNi2+で存在しようとする傾向があり、この際、Ni2+(0.69Å)は、Li(0.76Å)と類似したサイズを有するので、Liの3aサイトを占有することができることになる。
【0088】
ここで、本発明による正極活物質は、前記二次粒子の3aサイト内Ni占有率が0.9%以上となることによって、前記二次粒子の表面に前記カチオン混合層が効果的に存在することを類推することができる。
【0089】
上述したことによって、本発明による正極活物質は、前記カチオン混合層により構造的安定性が向上することができ、これにより、前記正極活物質の熱的安定性および貯蔵安定性等が向上することができる。
【0090】
正極活物質を使用したリチウム二次電池用正極の製造時に正極活物質を含むスラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延(プレス)という過程を経ることになる。特に、高圧条件での圧延を通じてエネルギー密度が高い正極を製造することが可能である。この際、圧延密度が増加するに従って粒子強度が小さい正極活物質の場合、粒子が崩壊されて所望の電気的特性を期待することができないことになる反面、粒子強度が大きい正極活物質の場合、高い圧延条件でも粒子の崩壊なしに性能を維持することができることになる。
【0091】
特に、圧延条件で粒子の崩壊が起こる場合、相対的に小さい粒度分布範囲に含まれる二次粒子の比率が増加することになるが、本発明による正極活物質は、4.5トンのプレス時にプレス前/後の粒度分布の変化率は、13%に過ぎず、6トンのプレス時にもプレス前/後の粒度分布の変化率は、26%に過ぎない。これにより、本発明による正極活物質は、高い圧延条件でも粒子の崩壊を最小としながら性能を維持することが可能である。
【0092】
リチウム二次電池
本発明のさらに他の態様によれば、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含む正極が提供され得る。ここで、前記正極活物質層は、本発明の多様な実施例による正極活物質を含むことができる。したがって、 正極活物質は、前述したところと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明することとする。
【0093】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用され得る。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚みを有し得、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0094】
前記正極活物質層は、前記正極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造され得る。
【0095】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれ得る。上記した含量範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0096】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維等の炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体等の導電性高分子等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0097】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0098】
前記正極は、上記した正極活物質を利用することを除いて、通常の正極の製造方法により製造され得る。具体的に、上記した正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することによって製造することができる。
【0099】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトンまたは水等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚み、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以後、正極の製造のための塗布時に優れた厚み均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0100】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0101】
また、本発明のさらに他の態様によれば、上述した正極を含む電気化学素子が提供され得る。前記電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタ等であってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0102】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と前記負極との間に介在される分離膜および電解質とを含むことができる。ここで、前記正極は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成のみについて具体的に説明する。
【0103】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極および前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0104】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含むことができる。
【0105】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用され得る。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚みを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0106】
前記負極活物質層は、前記負極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造され得る。
【0107】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金等リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープし得る金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物等が挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素等がすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)等の高温焼成炭素が代表的である。
【0108】
前記負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準として80~99wt%で含まれ得る。
【0109】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の全体重量を基準として0.1~10wt%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等が挙げられる。
【0110】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全体重量を基準として10wt%以下、好ましくは5wt%以下で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が使用され得る。
【0111】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥することによって製造されたり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造され得る。
【0112】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥したり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0113】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありかつ電解液含浸能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等からなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれたコートされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0114】
また、本発明において使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0115】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0116】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をすることができるものであれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等のエステル系溶媒;ジブチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合の芳香環またはエーテル結合を含むことができる)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;またはスルホラン類等が使用され得る。これらの中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優秀に現れることができる。
【0117】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(C等が使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0118】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上等を目的として例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウム等の添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5wt%で含まれ得る。
【0119】
上記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)等の電気自動車分野等に有用である。
【0120】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(coin)形等になり得る。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0121】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよび/またはこれを含む電池パックが提供され得る。
【0122】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として用いられる。
【0123】
特に、本発明の多様な実施例による正極活物質を含む正極が使用されたパウチタイプのリチウム二次電池の場合、正極活物質と電解液の副反応が起こる可能性が少ないので、貯蔵および/または作動時に安定性が向上すると同時に、ガス発生を低減させることが可能であるという利点がある。
【0124】
これにより、本発明の多様な実施例による正極活物質を含む正極が使用されたリチウム二次電池の場合、例えば、0.2Cで4.25Vまで充電した後、60℃で14日間保管する間、リチウム二次電池の体積増加量が0.3cm以下になることによって、信頼性および安定性を確保することができる。
【0125】
以下では、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇がこれらの実施例により制限されるものと解されないと言える。
【0126】
製造例.正極活物質の製造
実施例1
共沈反応により製造されたNiCoAl(OH)(d(50)=3.0μm)とリチウム化合物としてLiCOおよびLiOH(Li/M ratio=1.05±0.05)を計量および混合した後、800℃で12時間の間第1熱処理して、Li1.0Ni0.9Co0.078Al0.022の組成のリチウム系複合酸化物を製造した。
【0127】
前記で製造されたリチウム系複合酸化物を蒸留水に投入して温度を維持させながら水洗した。脱水工程後、150℃真空雰囲気下で乾燥した。次に、乾燥したリチウム系複合酸化物を700℃で12時間の間第2熱処理して正極活物質を収得した。
【0128】
実施例2
実施例1で第1熱処理温度が850℃であることを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0129】
実施例3
実施例1で第1熱処理温度が900℃であることを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0130】
実施例4
実施例1で第1熱処理温度が730℃であることを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0131】
実施例5
実施例1で第1熱処理温度が750℃であることを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0132】
実施例6
第1熱処理前にBa含有化合物(Ba(OH))0.25モル%を追加的に混合した後、770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0133】
実施例7
第1熱処理前にBa含有化合物(Ba(OH))0.3モル%を追加的に混合した後770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0134】
実施例8
第1熱処理前にBa含有化合物(Ba(OH))0.4モル%を追加的に混合した後770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0135】
実施例9
第1熱処理前にSr含有化合物(Sr(OH))0.3モル%を追加的に混合した後770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0136】
実施例10
第1熱処理前にZr含有化合物(ZrO)0.05モル%を追加的に混合した後、770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0137】
実施例11
第1熱処理前にZr含有化合物(ZrO)0.1モル%を追加的に混合した後、770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0138】
実施例12
第1熱処理前にZr含有化合物(ZrO)0.2モル%を追加的に混合した後、770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0139】
実施例13
共沈反応により製造されたNiCoMn(OH)(d(50)=3.0μm)とリチウム化合物としてLiCOおよびLiOH(Li/M ratio=1.05±0.05)、KCl2.0モル%を計量および混合した後、770℃で12時間の間第1熱処理して、Li1.0Ni0.9Co0.078Mn0.022の組成のリチウム系複合酸化物を製造した。前記で製造されたリチウム系複合酸化物を蒸留水に投入して温度を維持させながら水洗した。脱水工程後、150℃真空雰囲気下で乾燥した。次に、乾燥したリチウム系複合酸化物を700℃で12時間の間第2熱処理して、正極活物質を収得した。
【0140】
実施例14
第1熱処理前にKCl2.0モル%の代わりにNHPO1.0モル%を追加的に混合した後、770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0141】
実施例15
第1熱処理前にKCl2.0モル%の代わりにNaCl2.0モル%を追加的に混合した後、770℃で第1熱処理することを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0142】
比較例1
実施例1で第1熱処理温度が650℃であることを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0143】
比較例2
実施例1で第1熱処理温度が990℃であることを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0144】
実験例1.正極活物質の構造分析
(1)正極活物質のSEM写真分析
図4図6は、順に実施例1、実施例2および比較例1による正極活物質の断面SEM写真であり、それぞれ、前記正極活物質に含まれた二次粒子の結晶粒界の密度の測定結果を示すものである。
【0145】
図4図6を参照すると、実施例1および実施例2による正極活物質は、比較例1による正極活物質に比べて正極活物質を構成する複数の二次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である二次粒子の比率が大きいことを確認することができる。
【0146】
このように、正極活物質を構成する複数の二次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である二次粒子の比率が大きいほど電解液と二次粒子内粒界面における副反応を減らすことができ、二次粒子内長軸方向に等方向のリチウムイオン拡散経路の比率が高くなるに従って正極活物質によるリチウムイオン伝導性および電子伝導性が向上することができる。
【0147】
下記の表1には、製造例によって製造された正極活物質に含まれた二次粒子の結晶粒界の密度の分率に対する測定結果を示す。
【0148】
【表1】
【0149】
図7図12は、それぞれ、実施例1、実施例3、実施例4、実施例5、実施例7および実施例11による正極活物質のSEM写真であり、図13および図14は、それぞれ、比較例1および比較例2による正極活物質のSEM写真である。
【0150】
まず、図7図10を参照すると、第1熱処理温度が上昇するに従って二次粒子の結晶粒界の密度が減少することを確認することができる。
【0151】
また、それぞれ、実施例7および実施例11による正極活物質のSEM写真を示す図11および図12を参照すると、リチウム系複合酸化物の製造時にfluxを添加しても、前記正極活物質を構成する複数の二次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である二次粒子の比率が大きく減少しないことを確認することができる。また、実施例7および実施例11における第1熱処理温度(770℃)が、実施例1における第1熱処理温度(800℃)に比べて低くなったにもかかわらず、fluxを添加するに従って粒子の成長を促進させて、実施例1と類似した水準の結晶粒界の密度分率を示すことを確認することができる。
【0152】
反面、比較例1による正極活物質のSEM写真を示す図13を参照すると、実施例による正極活物質とは異なって、正極活物質は、相対的に結晶粒界の密度が大きい二次粒子を含むことを確認することができる。一方、図14を参照すると、比較例2による正極活物質の場合、実施例と類似した水準の結晶粒界の密度を示す二次粒子を含むことを確認することができる。
【0153】
(2)正極活物質のTEM写真分析
図15図20は、それぞれ、順に実施例1、実施例3、実施例4、実施例5、実施例7および実施例11による正極活物質のTEM写真であり、図21および図22は、それぞれ、比較例1および比較例2による正極活物質のTEM写真である。
【0154】
図15図18を参照すると、前記カチオン混合層(岩塩構造)は、バルク(層状構造)部分と異なる結晶構造を有することを確認することができる。また、前記正極活物質を構成する複数の二次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である二次粒子の比率が増加するほど前記カチオン混合層の厚みも増加する傾向を示すことを確認することができる。
【0155】
また、それぞれ、実施例7および実施例11による正極活物質のTEM写真を示す図19および図20を参照すると、リチウム系複合酸化物の製造時にfluxを添加することによって、実施例1に比べて第1熱処理温度が低くなったにもかかわらず、かえってカチオン混合層の厚みが増加したことを確認することができる。
【0156】
反面、比較例1による正極活物質のTEM写真を示す図20を参照すると、実施例による正極活物質とは異なって、測定されたカチオン混合層の厚みが過度に薄いことを確認することができる。一方、図22を参照すると、比較例2による正極活物質の場合、表面に過度に厚いカチオン混合層が形成されたことを確認することができる。このように、過度に厚いカチオン混合層は、かえって正極活物質の電気的特性を低下させる恐れがある。
【0157】
下記の表2には、製造例によって製造された正極活物質に含まれた一次粒子および二次粒子の平均粒径と前記一次粒子および前記二次粒子の平均粒径に対する前記一次粒子および前記二次粒子の表面に形成されたカチオン混合層の厚みの比を示す。
【0158】
【表2】
【0159】
表2を参考にすると、実施例1~実施例15による正極活物質は、一次粒子の平均粒径(x1)に対するカチオン混合層の厚み(d1)の比(d1/x1)は、0.0008超過0.0052未満であり、二次粒子の平均粒径(x2)対比カチオン混合層の厚み(d2)の比(d2/x2)は、0.00014超過0.00281未満であることを確認することができる。また、一次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d1)と二次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d1/d2)は、0.53超過1.0未満であることを確認することができる。
【0160】
本発明の実施例による正極活物質は、上記のように所定の範囲内の一次粒子の平均粒径(x1)に対するカチオン混合層の厚み(d1)の比(d1/x1)、二次粒子の平均粒径(x2)に対するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d2/x2)および一次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d1)と二次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d1/d2)を満たすことによって、後述する向上した電気化学的特性および安定性を示すことができる。
【0161】
また、実施例1と実施例6~実施例15による正極活物質を比較してみると、正極活物質の製造時にfluxを使用した実施例6~実施例15による正極活物質がfluxを使用しない実施例1に比べて一次粒子の平均粒径(x1)に対するカチオン混合層の厚み(d1)の比(d1/x1)および二次粒子の平均粒径(x2)に対するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d2/x2)が増加したことを確認することができる。
【0162】
(3)正極活物質のXRD分析
製造例によって製造された正極活物質に対するXRD分析を通じて、X線回折によるリートベルト解析から正極活物質のLi3aサイトに挿入されたNi占有率(NiLi occupancy)を測定した。
【0163】
XRD分析時に使用したX-rayソースとしてCu-Kα radiation(λ=1.5406Å)を使用し、θ-2θ scan(Bragg-Brentano parafocusing geometry)方法で10-120°(2θ)の範囲で0.01°/minスキャン間隔で測定した。測定結果は、下記の表3に示す。
【0164】
【表3】
【0165】
表3を参照すると、正極活物質のLi3aサイトに挿入されたNi占有率は、前記表2に示すカチオン混合層の厚み(d1、d2)と類似した傾向を示すことを確認することができる。
【0166】
実施例1~実施例15による正極活物質のLi3aサイトに挿入されたNi占有率は、0.53%超過6.44%未満の範囲内に属し、本発明の多様な実施例による正極活物質は、前記正極活物質を構成する一次粒子および二次粒子の表面に適正厚みのカチオン混合層が存在すると同時に、これによる適正水準のLi3aサイト内Ni占有率を示すことによって、後述する電気化学的特性および構造的安定性等が比較例に比べて向上することができる。
【0167】
実験例2.正極活物質の電気化学的特性の測定
(1)リチウム二次電池の製造
本発明の実施例による正極活物質を使用してリチウム二次電池を製造する場合、従来の正極活物質と同等または類似な水準の電気化学的特性を示すことができるか否かを確認するために、本実験例では、実施例および比較例による正極活物質を使用して製造された正極が適用されたリチウム二次電池を用意した。
【0168】
製造された正極活物質と導電剤としてsuper-P、結合剤として、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)を92:4:4の重量比で混合してスラリーを製造した。前記スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0169】
前記正極とリチウムホイールを相対電極とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚み:25μmをセパレーターとし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で溶けている液体電解液を使用して通常的に知られている製造工程によってコイン電池を製造した。
【0170】
(2)リチウム二次電池の電池容量および寿命特性の評価
上述した方法で製造されたリチウム二次電池を電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を利用して25℃、電圧範囲3.0V~4.25V、0.5C~4.0Cの放電率を適用して充放電実験を実施して、初期充電容量、初期放電容量、初期可逆効率およびレート特性を測定した。
【0171】
また、上述した方法で製造されたリチウム二次電池を25℃の温度で3.0V~4.25Vの駆動電圧の範囲内で1C/1Cの条件で50回充・放電を実施した後、初期容量対比50サイクル目の放電容量の比率(サイクル容量維持率;capacity retention)を測定した。
【0172】
測定された電池容量および寿命特性の結果は、下記の表4および表5に示す。
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
表4を参考にすると、実施例1~実施例15による正極活物質を使用した場合、初期容量および可逆効率は、比較的優れた水準であることを確認することができる。また、実施例1および実施例7による正極活物質を使用した場合を比較してみると、正極活物質の製造時にfluxを使用した実施例7による正極活物質が、fluxを使用しない実施例1に比べて初期容量および可逆効率の観点から小幅向上したことを確認することができる。
【0176】
一方、比較例2による正極活物質の場合、初期可逆効率が他の実施例および比較例に比べて最も低くて、実際リチウム二次電池用正極活物質としての適用に適していないことを確認することができる。
【0177】
また、表5を参考にすると、実施例による正極活物質を使用した場合、比較例に比べて0.5C~4.0Cの放電率を適用した充放電実験の結果、レート特性および寿命特性が全般的に高いことを確認することができる。また、実施例1および実施例7による正極活物質を使用した場合を比較してみると、正極活物質の製造時にfluxを使用した実施例7による正極活物質が、fluxを使用しない実施例1に比べて寿命特性がさらに向上したことを確認することができる。
【0178】
一方、比較例1による正極活物質の場合、寿命特性が他の実施例および比較例に比べて最も低くて、実際リチウム二次電池用正極活物質としての適用に適していないことを確認することができる。
【0179】
実験例3.正極活物質および二次電池の安定性の評価
(1)熱的安定性の評価
実施例および比較例による正極活物質の熱的安定性を評価する熱重量分析装置(TA Instruments、Q20)を使用して常圧のAr雰囲気下25℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で重量損失を測定した。測定結果は、下記の表6に示す。
【0180】
下記の表6において、開始温度(on-set)は、TGA分析結果、正極活物質の重量損失(熱分解)ピークが現れる開始温度を意味し、最高温度(peak)は、重量損失(熱分解)ピークが最高点であるときの温度を意味する。
【0181】
実施例4、実施例5および実施例15を除いた残りの実施例による正極活物質の場合、約230℃以上で重量損失ピークが現れる反面、比較例1および比較例2による正極活物質の場合、約225℃以下の温度で重量損失ピークが現れることを確認することができる。ここで、実施例4、実施例5および実施例15による正極活物質は、約225℃以上で重量損失ピークが現れるので、比較例1および比較例2による正極活物質に比べて高温安定性が相対的に高いことを確認することができる。
【0182】
一方、重量損失ピークが最高点であるときの温度も、実施例1~実施例15による正極活物質が、比較例1および比較例2による正極活物質に比べて高い温度で現れるので、高温安定性が相対的に高いことを確認することができる。
【0183】
【表6】
【0184】
(2)リチウム二次電池の製造
本発明の実施例および比較例による正極活物質を使用してリチウム二次電池を製造する場合、従来の正極活物質と同等または類似な水準の電気化学的特性を示すことができるか否かを確認するために、本実験例では、実施例および比較例による正極活物質を使用して製造された正極が適用されたリチウム二次電池を用意した。
【0185】
具体的に、製造された正極活物質と導電剤としてsuper-P、結合剤としてポリビニリデンフルオライド(PVdF)を92:4:4の重量比で混合してスラリーを製造した。前記スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0186】
前記正極とリチウムホイールを相対電極とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚み:25μmをセパレーターとし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で溶けている液体電解液を使用して通常的に知られている製造工程によってコイン電池を製造した。
【0187】
(3)リチウム二次電池のガス発生量の測定
上述した方法で製造されたリチウム二次電池を定電流0.2Cで4.25Vまで充電した後、60℃で14日間保管して、リチウム二次電池内ガス発生に起因したリチウム二次電池の体積変化を測定した。体積変化の測定結果は、下記の表7に示す。
【0188】
【表7】
【0189】
表7を参照すると、実施例1~実施例15および比較例2による正極活物質を使用したリチウム二次電池の場合、比較例1による正極活物質を使用したリチウム二次電池に比べてガス発生量が減少したことを確認することができる。
【0190】
リチウム二次電池に限界以上の過電流(overcharge)が流れる場合、電池の内部温度が急激に上昇するに従って電解液の分解反応を引き起こして、ガスが発生することもあるが、本実験例では、リチウム二次電池に過電流が流れる条件でないので、電解液と正極活物質の界面および表面間の副反応によりガスが発生したものと予想することができる。
【0191】
表7の結果を考慮するとき、実施例1~実施例15による正極活物質の構造的安定性に起因した熱的安定性および貯蔵安定性等は、従来の正極活物質と類似しているか、それより優れていることを確認することができる。
【0192】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者なら、特許請求範囲に記載された本発明の思想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正および変更させることができ、これも、本発明の権利範囲内に含まれるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2023-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム系複合酸化物である一次粒子が複数個凝集した二次粒子を含む正極活物質であって、
前記二次粒子の平均粒径(x2)に対する前記一次粒子の平均粒径(x1)の比(x2/x1)は、1.9以上10.3以下であり、
前記二次粒子のX線回折によるリトベルト解析から得られるLi3aサイト内のNi占有率(NiLi occupancy)は0.53%超過6.44%未満である、正極活物質。
【請求項2】
前記一次粒子の表面にカチオン混合層が存在し、
前記一次粒子の平均粒径(x1)に対する前記カチオン混合層の厚み(d1)の比(d1/x1)は、0.0008超過0.0052未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記一次粒子の表面に存在する前記カチオン混合層の厚さ(d1)は、0.00023μm 超過0.01204μm 未満である、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記カチオン混合層は、層状構造、岩塩構造およびスピネル構造から選ばれる結晶構造を有する、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記二次粒子の表面にカチオン混合層が存在し、
前記二次粒子の平均粒径(x2)に対する前記カチオン混合層の厚み(d2)の比(d2/x2)は、0.00014超過0.00281未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記二次粒子の表面に存在する前記カチオン混合層の厚さ(d2)は、0.00043μm超過 0.01208μm 未満である、請求項5に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記カチオン混合層は、層状構造、岩塩構造およびスピネル構造から選ばれる結晶構造を有する、請求項5に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記正極活物質は、互いに異なる結晶粒界の密度を有する二次粒子の集合体である、請求項1に記載の正極活物質。
結晶粒界の密度=(二次粒子内一次粒子間の境界面の数/二次粒子を構成する一次粒子の数)
【請求項9】
前記正極活物質を構成する複数の二次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である二次粒子の比率は、30%以上である、請求項8に記載の正極活物質。
結晶粒界の密度=(二次粒子内一次粒子間の境界面の数/二次粒子を構成する一次粒子の数)
【請求項10】
前記正極活物質を構成する複数の二次粒子のうち結晶粒界の密度が0.5以下である二次粒子の比率は、84%未満である、請求項8に記載の正極活物質。
結晶粒界の密度=(二次粒子内一次粒子間の境界面の数/二次粒子を構成する一次粒子の数)
【請求項11】
前記正極活物質は、1個~2個の一次粒子からなる第1凝集体、3個~6個の一次粒子からなる第2凝集体、および7個~10個の一次粒子からなる第3凝集体を含む、
前記正極活物質中の前記第1凝集体の割合は30%以上である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記一次粒子の平均粒径は、1.0μm~5.0μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記二次粒子の平均粒径は、1.0μm~20.0μmである、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項14】
前記リチウム系複合酸化物は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
LiNi1-(b+c+d+e)CoM1M2M3
ここで、M1は、MnまたはAlであり、
M2およびM3は、それぞれ独立して、Al、Ba、B、Ce、Cr、Mg、Mn、Mo、Na、K、P、Sr、Ti、W、NbおよびZrから選ばれ、
M1~M3は、互いに異なる金属である。
(0.90≦a≦1.05、0≦b≦0.20、0≦c≦0.20、0≦d≦0.05、0≦e≦0.05、1.0≦f≦2.0)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0158
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0158】
【表2】
x1:一次粒子の平均粒径
d1:一次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み
x2:二次粒子の平均粒径
d2:二次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0159
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0159】
表2を参考にすると、実施例1~実施例15による正極活物質は、一次粒子の平均粒径(x1)に対するカチオン混合層の厚み(d1)の比(d1/x1)は、0.0008超過0.0052未満であり、二次粒子の平均粒径(x2)対比カチオン混合層の厚み(d2)の比(d2/x2)は、0.00014超過0.00281未満であることを確認することができる。また、一次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d1)と二次粒子の表面に存在するカチオン混合層の厚み(d2)の比(d1/d2)は、0.53超過1.0未満であることを確認することができる。 そして、一次粒子の平均粒径(x1)に対する二次粒子の平均粒径(x2)の比(x2/x1)が1.9以上10.3以下であることが確認できる。