(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143966
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】風味送達部材を備えた喫煙物品
(51)【国際特許分類】
A24D 3/04 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A24D3/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126089
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2022038991の分割
【原出願日】2014-03-28
(31)【優先権主張番号】13161785.4
(32)【優先日】2013-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョルディル イヴ
(57)【要約】
【課題】喫煙物品(100)用のフィルター(103)が提供されている。
【解決手段】フィルター(103)は、フィルター材料を含むフィルターセグメント(201)を含み、フィルターセグメント(201)はフィルター(103)の長軸方向に直角に測定した断面積を持つ。フィルターは、フィルターセグメント(201)に埋め込まれ、フィルター材料(203)によってすべての側を囲まれる風味送達部材(205)をさらに含む。風味送達部材(205)は、フィルター(103)を備えた喫煙物品の喫煙中に煙の風味付けをするための液体風味剤を封じ込めた構造材料を含み、フィルター(103)が外力に晒されるときに風味送達部材(205)は液体風味剤の少なくとも一部分を放出する。フィルター(103)の長軸方向に直角に測定した風味送達部材(205)の断面積は、フィルターセグメント(201)の断面積の約30%以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品用のフィルターであって、前記フィルターが、
フィルター材料を含むフィルターセグメントであって、前記フィルターセグメントがフィルターの長軸方向に直角に測定した断面積を持つ、フィルターセグメントと、
前記フィルターセグメントに埋め込まれ、前記フィルター材料によってすべての側を囲まれた風味送達部材であって、前記風味送達部材が喫煙中に煙の風味付けをするための液体風味剤を封じ込めた構造材料を含み、前記風味送達部材が前記フィルターが外力に晒された時に前記液体風味剤の少なくとも一部分を放出する風味送達部材とを含み、
前記フィルターの前記長軸方向に直角に測定した前記風味送達部材の断面積は、前記フィルターセグメントの断面積の約30%以上であり、
また、前記フィルターセグメントの前記フィルター材料は、フィラメント当たり約5.0~約12.0デニール、約10000~約35000合計デニールの繊維を含む、フィルター。
【請求項2】
前記フィルターの直径が約6.5 mm未満である請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
前記フィルターの前記長軸方向に直角に測定した前記風味送達部材の断面積が、前記フィルターセグメントの断面積の約45%以上である、請求項1~2のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項4】
前記フィルターの前記長軸方向に直角に測定した前記風味送達部材の断面積が、前記フィルターセグメントの断面積の約55%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項5】
前記風味送達部材がカプセルを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項6】
前記カプセルの破裂強度が約5 N~約24 Nである、請求項5に記載のフィルター。
【請求項7】
前記フィルター材料がフィラメント当たり約5.0~約12.0デニールで、約12000~約30000合計デニールの繊維を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項8】
前記フィルターセグメントおよび前記風味送達部材の断面が円形であり、前記フィルターセグメントの直径が約3.6 mm~約6.5 mmで、前記風味送達部材の直径が約2.5 mm~約4.5 mmである、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項9】
前記フィルターセグメントおよび前記風味送達部材の断面が円形であり、前記フィルターセグメントの直径が約3.6 mm~約5.5 mmで、前記風味送達部材の直径が約3.0 mm~約3.5 mmである、請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項10】
前記フィルターセグメントおよび前記風味送達部材の断面が円形であり、前記フィルターセグメントの直径が約3.6 mm~約4.5 mmで、前記風味送達部材の直径が約3.0 mm~約3.5 mmである、請求項8に記載のフィルター。
【請求項11】
喫煙物品であって、
たばこ基質と、
請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルターとを備えた、喫煙物品。
【請求項12】
前記たばこ基質がたばこロッドである、請求項11に記載の喫煙物品。
【請求項13】
前記たばこ基質と前記フィルターを取り付けるチッピング材料をさらに含み、前記チッピング材料が前記チッピング材料を貫通する穿孔を含む換気ゾーンを含み、前記穿孔が前記風味送達部材の上流に位置する、請求項11または12に記載の喫煙物品。
【請求項14】
前記チッピング材料が前記風味送達部材の前記液体風味剤に対して実質的に不浸透性である、請求項13に記載の喫煙物品。
【請求項15】
前記液体風味剤が放出される前に前記喫煙物品のRTDが約130 mm H2Oを超える、請求項11~14のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙物品用のフィルター、およびフィルターを備えた喫煙物品に関連する。
【背景技術】
【0002】
紙巻たばこなどの可燃性喫煙物品は通常、たばこロッドを形成する紙ラッパーに囲まれた細かく切られたたばこ(普通はカットフィラーの形態)を備える。紙巻たばこは、その一方の端に点火し、細かく切られたたばこロッドを燃焼することにより、消費者によって使用される。次に、消費者は、紙巻たばこの反対側の端(口側の端またはフィルター端)で引き込むことによって主流煙を受ける。細かく切られたたばこは、一種類のたばこでも二種類以上のたばこの混合でもよい。
【0003】
たばこなどのエアロゾル形成基質が燃焼式ではなく加熱式である数多くの喫煙物品も、当技術で提案されてきた。加熱式喫煙物品では、エアロゾルはエアロゾル形成基質の加熱によって生成される。公知の加熱式喫煙物品には、例えば、エアロゾルが電気的加熱によるか、または可燃性燃料要素または熱源からエアロゾル形成基質への熱の移動によって生成される喫煙物品が含まれる。喫煙中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル形成基質から放出され、喫煙物品を通して引き込まれた空気中に混入される。放出された化合物が冷めるにつれて凝結してエアロゾルを形成し、これが消費者によって吸い込まれる。また、ニコチン含有エアロゾルがたばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン源から、燃焼することなく、また一部の場合には加熱することなく、例えば化学反応によって生成される、喫煙物品も公知である。
【0004】
喫煙物品、特に紙巻たばこは通常、端と端が接する関係でたばこロッドまたは別のエアロゾル形成基質と整列されたフィルターを備える。フィルターは通常、チッピングペーパーによってたばこロッドまたはエアロゾル形成基質に取り付けられた酢酸セルローストウのプラグを含む。主流煙の換気は、チッピングペーパー内のフィルターに沿った位置付近にある一列または複数列の穿孔によって達成できる。
【0005】
風味剤を紙巻たばこおよび喫煙物品に追加できる。一部の消費者は、短期的または長期的のいずれの場合でも、消費者の即時の願望に応じて、一つ以上の風味を選択的に提供できる紙巻たばこを好むことがある。ただし、一定の風味剤は揮発性であり、時間経過とともに蒸発または移動する傾向を持ち、これらの風味剤の効果が減少する。
【0006】
従って、煙への風味の移動を促進し、風味の拡散を最小限に抑えつつ、喫煙物品の望ましいその他の特性をなおも維持する、喫煙物品および喫煙物品用のフィルターを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、喫煙物品用のフィルターが提供されているが、そのフィルターは、フィルター材料を含むフィルターセグメントであって、そのフィルターセグメントがフィルターの長軸方向に直角に測定した断面積を持つものと、フィルターセグメント内に埋め込まれ、すべての側がフィルター材料によって囲まれた風味送達部材であって、その風味送達部材が喫煙時に煙に風味付けをするための液体風味剤を封じ込める構造材料を備えているものとを含み、風味送達部材は、フィルターが外力に晒された時に、液体風味剤の少なくとも一部分を放出し、またフィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積はフィルターセグメントの断面積の約30%以上であり、またフィルターセグメントのフィルター材料はフィラメント当たり約5.0~約12.0デニールで、合計約10000~約35000デニールの繊維を含む。
【0008】
外力は任意の方向に作用させうるが、フィルターの長軸方向と直角を成す方向に作用させることが好ましい。外力を適用する一つの好ましい方法は、フィルターを含む喫煙物品を喫煙する前またはその間に、ユーザーが風味送達部材を含むフィルターを圧迫するか、またはそのフィルターに外力を作用させることである。圧迫または圧縮の作用または外力の適用によって、風味送達部材が破壊され、これによって、液体風味剤の少なくとも一部分がフィルター内に放出されるようになることが好ましい。別の方法として、圧迫または圧縮の作用は、ある圧縮力の範囲にわたって液体風味剤の持続的な放出を提供しうる。液体風味剤は次に、フィルターを通過する煙を風味付けしうる。挟み込み装置、チューブ圧迫装置、ピンセットまたは圧縮力を適用するためのその他の任意の装置などの外部装置も、所定のフィルター位置に力を集中させるために使用しうる。
【0009】
風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積と比較して、先行技術のフィルターよりも広い。風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積の約30%以上であるため、フィルターセグメントの断面積の約70%未満は空気および煙に対して浸透性のままである。こうして、本発明のフィルターでは、風味送達部材は先行技術のフィルターよりも高い遮断効果を持つ。これは、先行技術のフィルターで見られるものと異なるいくつかの効果につながり、有利でありうる。まず、フィルターは、風味送達部材が液体風味剤を放出する前に、先行技術のフィルターよりも高い引き出し抵抗(RTD)を持つことができる。これはフィルターセグメントを通した空気および煙の流れが、風味送達部材の周りのフィルター材料の比較的小さな領域を強制的に通過させられるためである。こうした高いRTDは、消費者にとって新しく一風変わった感覚的経験を創り出しうる。第二に、フィルターが外力に晒され、風味送達部材が(例えば、風味送達部材が破壊されたときに)液体風味剤を放出すると、ガス流れに対して浸透性であるフィルターセグメントの断面積が増大し、その結果、フィルターを通した空気および煙の急激な流れが発生する。すなわち、RTDの(比較的高い開始RTDからの)低下があり、また液体風味剤によって風味に目立った変化もある。この場合も、消費者にとって気分を高める刺激的な感覚的経験が創出される。
【0010】
第三に、風味送達部材の寸法は、フィルターセグメントの寸法と比較して大きいため、製造時または取扱時に風味送達部材は損傷を受ける(風味送達部材がフィルターの外側に近いため)。ただし、本発明の発明者は、風味送達部材をフィルター材料内に埋め込むことにより、製造時および取扱時に風味送達部材はよりよく保護されることを理解してきた。風味送達部材はフィルター材料内に保持される。ただし、消費者がフィルター内の風味送達部材の場所を見つけて液体風味剤が放出されるように必要な外力をかけることが、依然として可能である。これにより、本発明のフィルターは、例えば「プラグ-スペース-プラグ」フィルターなどのフィルター内のくぼみ内で使用した場合にできるよりも、(フィルターの寸法に対して)大きな風味送達部材の使用が許容される。フィルターセグメントのフィルター材料内に風味送達部材を埋め込むことで、風味送達部材はフィルター材料トウの繊維間に組み込みうるため、製造をより簡単なものにできるという利点が追加されうる。こうして、風味送達部材が埋め込まれた連続的なトウ材料がフィルターセグメントに切断される、従来的な製造技術を使用しうる。風味送達部材を挿入するための別個の工程は必要とされない。
【0011】
本発明によれば、フィルターセグメントのフィルター材料は、望ましいRTDのバランス(液体風味剤が放出される前後のRTDを含む)、風味送達部材をフィルターセグメント内に適切に保持するための適切な材料の量、およびフィルター材料が風味送達部材の周辺で変形するのを防止するための適切な材料の量を達成するために、適切に選択される。
【0012】
特に、フィルターセグメントのフィルター材料は、フィラメント当たり約5.0~約12.0デニール、合計約10000および約35000デニールの繊維を含む。こうしたフィルター材料の合計密度は、先行技術で風味送達部材が埋め込まれているフィルター材料よりも低い。これによって望ましいRTDを提供できるが、その一方で風味送達部材を支持しながらも、風味送達部材の周辺のフィルター材料の膨れを回避する適切な量の材料を提供できる。
【0013】
フィルターセグメントは、約6.0フィラメント当たりデニール(dpf)以上の繊維を含むことが好ましい。一つの望ましい実施形態で、フィルターセグメントは約8.0 dpfの大直径の繊維を含む。フィルターセグメントの合計デニールは約30000未満であることが好ましく、約25000未満であることがより好ましい。さらに、または別の方法として、フィルターセグメントの合計デニールは約12000を超えることが好ましい。一つの望ましい実施形態で、フィルターセグメントの合計デニールが約15000の大直径の繊維を含む。フィルターセグメント内に存在する繊維数(合計デニール÷dpf)は約6,000未満としうるが、約5,000未満であることが好ましい。こうしたフィルター材料は、風味送達部材がフィルター材料内(RTDおよび風味送達部材サポートの間)に埋め込まれた時に適切なバランスを提供しつつ、フィルター材料の変形が回避されることがこれまでに分かっている。
【0014】
本発明によるフィルター材料を使用することにより提供されるさらなる利点は、それがフィルター材料内への風味送達部材の埋め込みを促進することである。発明者は、風味送達部材がフィルターの外側表面に近かったとしても、風味送達部材を相対的合計密度が低いフィルター材料内に埋め込むことによって、製造時および取扱時に風味送達部材が保護されることを理解してきた。合計密度の低いフィルター材料を使用することで、フィルターに変形(例えば、膨れ)が発生することなく、風味送達部材が埋め込まれるようになる。低密度の材料は、フィルター材料に組み込まれる風味送達部材のための空隙を効果的に提供する。同時に、フィルター材料はフィルターの外側先端で風味を逃がし、煙による風味の取り込みを促進する繊維を提供する。
【0015】
本発明によるフィルター材料を使用することにより提供されるさらなる別の利点は、直径が約6.0 mm以下のスリム紙巻たばこの場合に、低い密度のフィルター材料が、こうした喫煙物品に比較的少量のたばこしか含まれていない場合でも標準的なタール送達レベルを達成でき、かつ風味を最大化できることである。
【0016】
既に考察した通り、本発明のフィルターによれば、風味送達部材によって遮断されたフィルターの断面積は、先行技術でのそれよりも大きい。こうして、このようなフィルターを利用する喫煙物品は、液体風味剤が放出される前に先行技術の喫煙物品よりも高いRTDを持ちうる。こうした高いRTDは、消費者にとって新しく一風変わった感覚的経験を創り出しうる。喫煙物品のRTDは、液体風味剤が放出される前は約130 mm H2O以上としうるが、約150 mm H2O以上であることが好ましい。さらに、または別の方法として、喫煙物品のRTDは約210 mm H2O以上としうる。喫煙物品のRTDは約130 mm H2O~約210 mm H2Oであることが好ましく、約150 mm H2O~約210 mm H2Oであることがより好ましい。
【0017】
さらに、風味送達部材が潰された時にRTDの低下があり、これによって消費者にとって新しく一風変わった感覚的経験を創り出しうる。RTDの低下は、潰された時に風味送達部材の大きさが小さくなることに起因しうる。喫煙物品のRTDは、風味送達部材が潰された後は少なくとも約10 mm H2O減少しうるが、少なくとも約20 mm H2O減少することが好ましく、少なくとも約30 mm H2O減少することがより好ましい。
【0018】
本明細書では、「上流」および「下流」という用語は、主流煙が喫煙物品の点火する端部からフィルターを通して引き込まれるときの主流煙の方向に対する、フィルターまたは喫煙物品の要素間の相対的位置を描写するのに使用される。
【0019】
本明細書では、「すべての側が囲まれた」という表現は、風味送達部材が、上流および下流の方向(長軸方向)に、および横断する方向に、フィルターセグメントのフィルター材料に直に隣接していることを意味する。すなわち、風味送達部材はフィルター材料内に完全に埋め込まれており、別個のくぼみ内にあるのではない。風味送達部材は、フィルター材料の製造時にフィルター材料内に組み込まれることが好ましい。例えば、風味送達部材は、フィルター材料の連続的なロッドの繊維間に組み込んで、その後でフィルターセグメントに切断しうる。
【0020】
フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積は、同様にフィルターの長軸方向に直角に測定したフィルターセグメントの断面積の約30%以上である。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は約70%未満である。(フィルターにプラグラップやチッピングペーパーなどのラッパーが含まれる場合、フィルターセグメントの断面積は一般にラッパー内で測定される。) 風味送達部材の断面積はフィルターセグメントの断面積の約30%以上であることが好ましく、約80%未満ともしうる。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は、約20%以上約70%未満であることが好ましい。
【0021】
フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積の約45%以上であることがより好ましい。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は約55%未満である。風味送達部材の断面積はフィルターセグメントの断面積の約45%以上であることが好ましく、約80%未満ともしうる。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は、約20%以上約55%未満であることが好ましい。
【0022】
フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積の約55%以上であることがより好ましい。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は約45%未満である。風味送達部材の断面積はフィルターセグメントの断面積の約55%以上であることが好ましく、約80%未満ともしうる。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は、約20%以上約45%未満であることが好ましい。
【0023】
フィルターの直径は約6.5 mm未満であることが好ましい。フィルターの直径は約3.6 mm~約6.5 mmであることがより好ましい。(フィルターの直径は一般に、本明細書で別途指示のない限り、プラグラップまたはチッピングペーパーなどの任意のラッパー材料内で測定される。) フィルターの直径は約3.6 mm~約5.5 mmであることがより好ましい。フィルターの直径は約3.6 mm~約4.5 mmであることがさらに好ましい。
【0024】
フィルターの長さは約27 mmとしうるが、風味送達部材の中心はフィルターの下流端から約13.5 mmに位置しうる。その場合、フィルターセグメントがフィルターの唯一の構成要素である場合は、風味送達部材の中心はフィルターセグメントの下流端から約13.5 mmに位置するか、またはフィルターが追加的なフィルター要素を含む場合は、風味送達部材の中心はフィルターの下流端から約13.5 mmに位置し、これはフィルターセグメントの下流端であってもなくてもよい。あるいは、フィルターの長さは約32 mmとしうるが、風味送達部材の中心はフィルターの下流端から約16 mmに位置しうる。その場合、フィルターセグメントがフィルターの唯一の構成要素である場合は、風味送達部材の中心はフィルターセグメントの下流端から約16 mmに位置するか、またはフィルターが追加的なフィルター要素を含む場合は、風味送達部材の中心はフィルターの下流端から約16 mmに位置し、これはフィルターセグメントの下流端であってもなくてもよい。本明細書では、風味送達部材の「中心」は、風味送達部材の最下流部分と最上流部分の間の中点を意味する。
【0025】
風味送達部材は、フィルター内に対称的にまたは非対称的に位置させうる。風味送達部材がフィルター内に対称的に位置する場合、風味送達部材の中心はフィルターの上流端および下流端の間の等距離にある。フィルターは、フィルターセグメントの上流、フィルターセグメントの下流、またはフィルターセグメントの上流および下流の両方に一つ以上の追加的なフィルター要素を含みうる。フィルターが追加的な要素を含み、かつ風味送達部材の配置がフィルター全体に関して対称的である場合、風味送達部材の配置は、追加的なフィルター要素の位置および長さに応じて、フィルターセグメントに対して対称と非対称のいずれかでもありうる。風味送達部材がフィルター内に非対称的に位置する場合、風味送達部材の中心はフィルターの上流端および下流端の間で等距離ではない。例えば、風味送達部材は、フィルターの上流三分の一かまたはフィルターの下流三分の一に位置しうる。フィルターが追加的な要素を含み、かつ風味送達部材の配置がフィルター全体に関して非対称的である場合、風味送達部材の配置は、追加的なフィルター要素の位置および長さに応じて、フィルターセグメントに対して対称と非対称のいずれかでもありうる。
【0026】
好ましい一つの実施形態で、フィルターセグメントおよび風味送達部材は断面が円形であり、フィルターセグメントの直径は約3.6 mm~約6.5 mmであり、フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の直径は約2.5 mm~約4.5 mmである。例えば、フィルターセグメントの直径(任意のフィルターラッパーの内側)は約6.1 mmとしうる。例えば、風味送達部材の直径は約3.5 mmとしうる。この実施形態で、フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積の約33%である。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は約67%である。全体的な直径が約7.0 mmである「スリム紙巻たばこ」で、直径が約6.1 mmのフィルターを使用しうる。
【0027】
好ましい別の実施形態で、フィルターセグメントおよび風味送達部材は断面が円形であり、フィルターセグメントの直径は約3.6 mm~約5.5 mmであり、フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の直径は約3.0 mm~約3.5 mmである。例えば、フィルターセグメントの直径(任意のフィルターラッパーの内側)は約4.5 mmとしうる。例えば、風味送達部材の直径は約3.2 mmとしうる。この実施形態で、フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積の約51%である。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は約49%である。全体的な直径が約5.4 mm未満である「スーパースリム紙巻たばこ」で、直径が約4.5mm未満のフィルターを使用しうる。
【0028】
好ましい別の実施形態で、フィルターセグメントおよび風味送達部材は断面が円形であり、フィルターセグメントの直径は約3.6 mm~約4.5 mmであり、フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の直径は約3.0 mm~約3.5 mmである。例えば、フィルターセグメントの直径(任意のフィルターラッパーの内側)は約3.8 mmとしうる。例えば、風味送達部材の直径は約3.2 mmとしうる。この実施形態で、フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積の約71%である。あるいは、別の形で表現すると、風味送達部材がフィルター材料に埋め込まれた後に空気および煙に対して浸透性のまま残るフィルターセグメントの断面積の比率は約29%未満である。全体的な直径が約4.7 mmである「マイクロスリム紙巻たばこ」で、直径が約3.8 mmのフィルターを使用しうる。
【0029】
「風味送達部材」という用語は、風味を送達する任意の送達システムを意味するが、この場合には、液体風味剤を封じ込めた構造材料を含む。フィルターが外力に晒された時に液体風味剤を放出する風味送達部材を提供することで、消費者によって管理される形で液体風味剤が放出されるようになる。喫煙物品の使用前または使用中に外力をかけることができ、それによって液体風味剤が放出される。風味送達部材に対する外力により、液体風味剤が風味送達部材から逃れ、喫煙物品と相互作用してその特性を変化させることができ、こうしてそこから煙が導き出される。液体風味剤は外力がフィルターにかけられたときにのみ放出されるため、これによって、例えば保管中に、液体風味剤が拡散や分解をする可能性が低減される。
【0030】
フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積がフィルターセグメントの断面積の約30%以上である限り、風味送達部材は望ましい任意の大きさとしうる。例えば、風味送達部材は直径が約2.5 mm~約4.5 mmの球状としうるが、約3.0 mm~約3.5 mmであることが好ましい。あるいは、風味送達部材は直径が約3.4 mm未満の球状であるが、約3.2 mmであることが好ましい。
【0031】
小型の風味送達部材では、数多くの製造上の難題が提起されうる。フィルターセグメントの断面積の約30%以上の断面積を持つ風味送達部材を使用することにより、一部の実施形態において、こうした製造上の難題は回避しうる。フィルターセグメントに対して大きめの風味送達部材は、風味送達部材内に封じ込められる液体風味剤の量を最大化し、消費者は望ましい風味レベルを達成しうる。外側シェルおよび内部コアを備えた風味送達部材の場合には、大きめの風味送達部材はそれに比例して厚みのある外側シェルをも含む。こうしたシェルは、一貫性のある製造のために、および望ましい破裂強度を持たせて製造するために、比較的単純なものである。
【0032】
風味送達部材は、構造材料が液体風味剤を封じ込める適切な任意の構造を持ちうる。風味送達部材は多数の領域を規定する基質構造を備えうるが、液体風味剤は、フィルターに外力がかけられた時に放出されるまで領域内に閉じ込められる。ただし、風味送達部材はカプセルを備えることがより好ましい。カプセルは、外部シェルと、液体風味剤を含む内部コアとを備えることが好ましい。外部シェルは実質的に連続的であることが好ましい。外部シェルは、外力がかけられる前にシールされることが好ましいが、外力がかけられた時に液体風味剤が放出されるように脆く壊れやすい。カプセルは、物理的な様々な形成物で形成されうるが、これには、単一部分から成るカプセル、複数部分から成るカプセル、単一壁から成るカプセル、複数壁から成るカプセル、大型カプセル、および小型カプセルなどが含まれるが、これに限定されない。
【0033】
風味送達部材が液体風味剤を封じ込める複数の領域を規定する基質構造を備える場合、風味送達部材はフィルターが少なくとも力の範囲5 Nを超える外力に晒されるときに、液体風味剤を放出しうる。圧縮曲線に対する風味送達部材の力は約5 N~約24 Nのピークを持ちうる。別の方法として、フィルターが外力に晒された時に(例えば、カプセルがシェルおよび内部コアを備える場合であるが、これに限定されない)風味送達部材が破裂または破壊して液体風味剤を放出するよう配列されているカプセルである場合、カプセルは望ましいいくらかの破裂強度を持ちうる。破裂強度は、(フィルター外側からカプセルに作用する)カプセルが破裂する力である。破裂強度は圧縮曲線に対するカプセルの力におけるピークとしうる。カプセルは約5 N(0.5 kgf)~約24 N(2.4 kgf)の破裂強度を持つことが好ましい。カプセルは約8 N(0.8 kgf)~約20 N(2.0 kgf)の破裂強度を持つことがより好ましい。カプセルは約12 N(1.2 kgf)~約16 N(1.6 kgf)の破裂強度を持つことがさらに好ましい。
【0034】
風味送達部材は適切な任意の形状、例えば、球状、球状体、または楕円体を持ちうる。ただし、風味送達部材は一般的に球状であることが好ましい。これは、球形度の値が少なくとも約0.9である風味送達部材を含みうるが、球形度の値はおよそ1であることが好ましい。球形度は、物体がどの程度球状であるかの測定であり、完全な球形の球形度の値は1である。球形度の値は、最大直径と最小直径の平均を決定し、最大直径と最小直径の間の差を平均から差し引いて、その結果値を平均で割ることによって求められうる。一般的に球状の風味送達部材は、一般的に球状の外側シェルを備えることが好ましい。
【0035】
風味送達部材は、適切な任意の方法(例えば、同時押出し成形による)に従い製造されうるが、この点は当業者によって理解されるであろう。
【0036】
フィルター内には唯一の風味送達部材のみが埋め込まれることが好ましい。ただし、追加的な風味送達部材は、フィルターの長軸方向に提供されうる。追加的な風味送達部材が、同一のフィルターセグメントまたは追加的なフィルターセグメントに提供されうる。追加的な風味送達部材がフィルター内に提供される場合、互いに同一のまたは異なる属性を持たせうる。
【0037】
風味送達部材は、例えば薬物送達用のカプセル、液体を封入したカプセル、またはその他の封入材料に使用されるものなど、適切な任意の物質または材料の組み合わせを備えうる。一例として、風味送達部材は製薬産業で一般に利用されるものが使用されうる。こうした風味送達部材は、例えばゼラチン系とすることも、変性セルロースなどの重合体の物質で形成することもできる。使用しうる一つのタイプの変性セルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。ゼラチンまたは変性セルロースに加えて、またはゼラチンおよび変性セルロースの両方に加えて、外側シェルは多糖類を含みうる。
【0038】
液体風味剤は、フィルターを含む喫煙物品の喫煙時に生成される主流煙の味を高めるために、風味送達部材内に液体の形態で放出可能なように配置するのに適した任意の風味化合物またはたばこ抽出物を含みうる。適切な風味または香料には、メントール、ミント(ハッカおよびオランダハッカなど)、チョコレート、甘草、柑橘類およびその他の果物風味、γ八量体、バニリン、エチルバニリン、口臭消臭風味、スパイス風味(シナモンなど)、サルチル酸メチル、リナロール、ベルガモット油、ゼラニウム油、レモン油、ジンジャー油、およびたばこ風味などが含まれるが、これに限定されない。その他の適切な風味は、酸、アルコール、エステル、アルデヒド、ケトン、ピラジン、その組み合わせまたは混合物およびそれに類するものを含めた群から選択される風味化合物を含みうる。
【0039】
(フィルターセグメントまたは任意の追加的なフィルター要素の)フィルター材料は、適した任意の物質または材料を備えうる。適切な材料の例は、酢酸セルロース、セルロース、再生セルロース、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ナイロン、ポリヒドロキシ酪酸塩、ポリプロピレン、紙、熱可塑性物質(澱粉など)、不織布材料、およびその組み合わせを含むが、これに限定されない。一つ以上の材料を開放された細胞構造に形成されうる。フィルター材料は酢酸繊維素トウを含むことが好ましい。
【0040】
フィルターは、フィルターセグメント内またはフィルターに組み込まれた一つ以上の追加的な要素内のどちらにも追加的な材料を含みうる。例えば、追加的な材料をフィルターセグメントの繊維性フィルタートウまたは追加的なフィルター要素に組み込みうる。例えば、フィルターは吸収材材料を含みうる。「吸収材」という用語は、吸着剤、吸収材、またはこれらの両方の機能を果たしうる物質のどれかを意味する。吸収材材料は活性炭炭素を備えうる。吸収材は、風味送達部材が埋め込まれたフィルターセグメント内に組み込みうる。ただし、吸収材はフィルターセグメントの上流の追加的なフィルター要素に組み込まれることがより好ましい。別の方法としてまたは追加的に、フィルターは接着剤、可塑剤または風味放出剤またはその組み合わせを含みうる。
【0041】
吸収材材料(活性炭炭素など)がフィルター内、すなわち風味送達部材が埋め込まれているフィルターセグメント内、または追加的なフィルター要素内のいずれかに提供されている場合、風味送達部材は吸収材の下流であることが好ましい。こうした配列により、吸収材によって喫煙物品の濾過がなされ、液体風味剤が吸収材による吸収または吸着による液体風味剤の有効性に影響なく、フィルター内に放出されるようになる。
【0042】
フィルターは、風味付きセルロース糸、海泡石、分子ふるい、または風味浸透性の活性炭などの風味放出剤を含みうる。
【0043】
フィルターは、フィルターセグメントの上流、下流、または上流と下流の両方に一つ以上の追加的なフィルター要素を含みうる。フィルターが追加的な要素を含む場合、風味送達部材が埋め込まれたフィルターセグメントは、喫煙物品フィルター全体ではなく喫煙物品フィルターのフィルター構成要素の一つにすぎない。追加的なフィルター要素は、フィルターセグメントと軸方向に配置されうる。例えば、フィルターは、フィルターセグメントの下流にフィルター材料のプラグ(単数または複数)またはディスク(単数または複数)、フィルターセグメントの上流にフィルター材料のプラグ(単数または複数)またはディスク(単数または複数)、またはフィルターセグメントの下流および上流にフィルター材料のプラグまたはディスクをさらに含みうる。別の方法としてまたは追加的に、フィルターは、フィルターセグメントの下流に中空管(単数または複数)、フィルターセグメントの上流に中空管(単数または複数)、またはフィルターセグメントの下流および上流に中空管をさらに含みうる。一つ以上の中空管が提供される場合、中空管は同一または異なる寸法を持ちうる。別の方法として、または追加的に、フィルターはフィルターセグメントの下流または上流、またはその下流と上流の両方に空隙またはくぼみをさらに含みうる。こうした空隙またはくぼみは、フィルター材料を囲むフィルターラッパーによって規定されうる。空隙またはくぼみは、空であるか、または適切な任意の物質で充填されうる。
【0044】
一つ以上の風味送達部材が組み込まれうる様々なフィルターの構成を使用しうる。使用されうる模範的なフィルター構造には、モノフィルター、二重フィルター、三重フィルター、単一または多空洞フィルター、リセスドフィルター、フリーフローフィルター、およびその組み合わせが含まれるが、これに限定されない。モノフィルターは通常、酢酸繊維素トウまたはセルロース紙材料を含む。二重フィルターは通常、酢酸繊維素の口側端および純粋セルロースまたは酢酸繊維素のセグメントを含む。二重フィルター内のセグメントの長さおよび圧力降下を調節して、最適な吸着を提供しつつ、容認可能なRTDを維持しうる。くぼみフィルターは、少なくとも一つのくぼみで分離された少なくとも2つのセグメント(例えば、アセテート-アセテート、アセテート-紙または紙-紙)を含む。リセストフィルターは、口側端に開いたくぼみを含む。
【0045】
フィルターは、少なくともフィルター材料を囲むフィルターラッパーを含みうる。フィルターラッパーは、フィルターセグメントを含めたフィルターのための強度および構造剛性を提供する。フィルターが一つ以上の追加的なフィルター要素を含む場合、フィルターセグメントおよび一つ以上の追加的なフィルター要素は、フィルターラッパーで上から包まれることが好ましい。フィルターラッパーは適切な任意の材料を含みうる。フィルターラッパーは、風味送達部材がフィルター材料内に埋め込まれた場所でのフィルターセグメント外側の変形を阻止しうる。フィルターラッパーは、一列以上の接着剤を含む継ぎ目を含みうる。継ぎ目は2列の接着剤を含むことが好ましい。一列の接着剤はホットメルト接着剤を含みうる。一列の接着剤はポリビニルアルコールを含みうる。
【0046】
本発明によるフィルターは、フィルターたばこ、およびたばこ材料が燃焼されて煙を形成するその他の喫煙物品用のフィルターで有利に使用されうる。別の方法として、本発明によるフィルターは、たばこ材料が燃焼されるのではなく加熱されてエアロゾルを形成する喫煙物品で使用しうる。本発明によるフィルターはまた、燃焼または加熱なしに、たばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン源からニコチン含有エアロゾルが生成される喫煙物品で使用しうる。
【0047】
本発明の第二の態様によれば、エアロゾル形成基質と、本発明の第一の態様によるフィルターとを含む喫煙物品が提供されている。本発明の第二の態様によれば、たばこ基質と、本発明の第一の態様によるフィルターとを含む喫煙物品が提供されている。本発明の第二の態様によれば、たばこロッドと、本発明の第一の態様によるフィルターとを含む喫煙物品も提供されている。
【0048】
従来の紙巻たばこの場合に、エアロゾル形成基質はたばこを含む部分を備えうるが、これは時にはたばこロッドまたは紙巻たばこロッドと呼ばれることがある。従って、紙巻たばこは通常、たばこを含む部分およびフィルターの2つの部分を含む。チッピングペーパーは通常、フィルターを囲み、これが紙巻たばこの口側の端を形成する。チッピングペーパーは、フィルターおよびたばこロッドを一緒に保持するために、たばこロッドと重なる。たばこロッドは通常、たばこが包まれる紙ラッパーを含み、接着剤が紙ラッパーの継ぎ目をまとめて保持する。たばこロッドは、フィルターに取り付けられた第一の端と、たばこの喫煙のために点火または加熱される第二の端とを持つ。喫煙のためにたばこロッドが点火または加熱される時、煙は下流の点火された端からたばこロッドのフィルター端へ、そしてさらに下流へとフィルターを通って移動する。
【0049】
使用されうる適切なタイプのたばこ材料の例には、火力乾燥たばこ、バーレー種たばこ、メリーランド種たばこ、オリエント葉たばこ、希少たばこ、特殊たばこ、その混合物およびこれに類するものが含まれるが、これに限定されない。たばこ材料は、たばこラミナ、加工たばこ材料(ボリュームエクスパンデッドまたはパフトたばこなど)、加工たばこ茎(カットロールドまたはカットパフトステムなど)、再生たばこ材料、その混合物、およびこれに類するものを含め、これに限定されない適切な任意の形態で提供されうる。たばこ代用品も使用されうる。従来的な紙巻たばこ製造では、たばこは通常、カットフィラーの形態、すなわち約2.5 mm~約1.2 mmの範囲の幅またはさらには約0.6 mmの幅に切断した断片またはひもの形態で使用される。ひもの長さは約6 mm~約75 mmの範囲である。スリム紙巻たばこ(直径が約6.0 mm以下)は、エクスパンデッドたばこを必要としない。スリム紙巻たばこでは、紙巻たばこ内の合計たばこの約20%未満がエクスパンデッドたばこであることが好ましい。
【0050】
喫煙物品内のたばこのパッキング密度は約200 mgcm-3以上であることが好ましい。喫煙物品のたばこのパッキング密度は約220 mgcm-3以上であることがより好ましい。喫煙物品のたばこのパッキング密度は約240 mgcm-3以上であることがさらに好ましい。スリム紙巻たばこ(直径が約6.0 mm以下)は、比較的高いパッキング密度または充填密度約200 mgcm-3を許容しうる。
【0051】
喫煙物品は、たばこロッドまたはその他のエアロゾル形成基質およびフィルターに取り付けられたチッピング材料をさらに含むことが好ましい。チッピング材料はフィルターセグメントのための追加的な強度および構造剛性を提供し、風味送達部材がフィルター材料内に埋め込まれた場所でのフィルターセグメント外側表面の変形の可能性を低下させうる。
【0052】
チッピング材料は、チッピング材料を貫通する穿孔を含む換気ゾーンを含みうる。換気の度合いは約60%を超えることが好ましく、約70%を超えることがより好ましく、約80%を超えることがさらに好ましい。換気の度合いは約95%未満であることが好ましく、約90%未満であることがより好ましく、約85%未満であることがさらに好ましい。換気の度合いは約60%~約95%であることが好ましく、約70%~約90%であることがより好ましく、約80%~約85%であることがさらに好ましい。換気は、主流煙の微粒子相の成分とガス相の成分の両方を減少させうる。しかし、高レベルの換気度を持つ喫煙物品のRTDレベルは、消費者にとって許容可能と考えられるには低すぎる可能性がある。ただし、その断面積が比較的大きいことから、フィルター内に埋め込まれた風味送達部材を追加することで結果的にRTDがより大きくなり、フィルターのRTDレベルが望ましいものとなりうる。高い換気度とともに使用した場合、風味送達部材はRTDを高めることができ、その一方で主流煙の微粒子相の成分とガス相の成分の両方は減少される。
【0053】
チッピング材料は、主流煙の換気を提供するために少なくとも一列の穿孔を含みうる。フィルターがフィルターラッパーを含む場合、穿孔はフィルターラッパーを貫通して延びることが好ましい。別の方法として、フィルターラッパーは浸透可能としうる。チッピング材料は、標準的な予め穿孔されたチッピング材料としうる。別の方法として、チッピング材料は製造工程中に、穿孔の望ましい数、サイズおよび位置に従い(例えば、レーザーを使用して)穿孔しうる。穿孔の数、サイズおよび位置は、望ましい換気レベルを提供するために選択しうる。風味送達部材およびフィルター材料とともに、換気によって望ましいRTDレベルが生まれる。喫煙物品のRTDは、液体風味剤が放出される前(例えば、風味送達部材が潰される前)には、約130 mm H2O以上でありうる。
【0054】
換気ゾーンが風味送達部材の上流に提供されることが好ましい。これは、液体風味剤が放出された後で穿孔から液体風味剤が漏れる可能性を低減するためである。一つの実施形態で、フィルターの長さは約27 mmであり、風味送達部材の中心はフィルターの下流端から約13.5 mmに位置し、穿孔の列がフィルターの下流端から約18 mmの位置に提供される。その場合、フィルターセグメントがフィルターの唯一の構成要素である場合、穿孔の列は、フィルターセグメントの下流端から約18 mmに位置するか、またはフィルターが追加的なフィルター要素を含む場合、穿孔の列はフィルターの下流端から約18 mmに位置し、これはフィルターセグメントの下流端であってもなくてもよい。一つの実施形態で、フィルターの長さは約32 mmである。穿孔の列は、フィルターの下流端から少なくとも約11 mmに提供されうる。
【0055】
一つの実施形態で、喫煙物品はたばこ基質とフィルターを付着させるチッピング材料をさらに含むが、チッピング材料は、チッピング材料を貫いた穿孔を含む換気ゾーンを含み、穿孔は風味送達部材の上流に位置する。
【0056】
チッピング材料は、風味送達部材の液体風味剤に対して実質的に不浸透性であることが好ましい。低浸透性のチッピング材料によって、液体風味剤がチッピング材料に浸透して、チッピング材料の外側に見苦しい汚れが発生するのが妨げられる。適切な任意の物質が使用され、これには例えば、セロハンおよびポリ塩化ビニリデン塩化物などがあるが、これに限定されない。
【0057】
本発明の第三の態様は、喫煙物品用のフィルター内の風味送達部材の使用についてであるが、そのフィルターは、フィルター材料を含むフィルターセグメントであって、そのフィルターセグメントがフィルターの長軸方向に直角に測定した断面積を持ち、風味送達部材はフィルターセグメント内に埋め込まれてすべての側をフィルター材料によって囲まれており、その風味送達部材は喫煙時に煙に風味付けをするための液体風味剤を封じ込める構造材料を備え、ここで風味送達部材はフィルターが外力に晒された時に、液体風味剤の少なくとも一部分を放出し、またフィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積はフィルターセグメントの断面積の約30%以上である。
【0058】
本発明の第四の態様によれば、喫煙物品用のフィルターを製造する方法が提供されており、その方法は、風味送達部材がフィルター材料内に埋め込まれており、ロッドの長軸方向に間隙をあけたフィルター材料の連続的なロッドを提供する工程であって、それぞれの風味送達部材が液体風味剤を封じ込めた構造材料を含み、またロッドの長軸方向に直角に測定したそれぞれの風味送達部材の断面積がロッドの断面積の約30%である工程と、フィルター材料の連続的なロッドを長軸方向に間隔を置いた切れ目で切断してフィルター材料のフィルターセグメントを作製する工程であって、それぞれのフィルターセグメントがフィルターセグメント内に埋め込まれた風味送達部材を含み、かつフィルター材料によってすべての側が囲まれている工程とを含む。
【0059】
本発明の第四の態様の方法は、風味送達部材がフィルター材料に直接組み込まれているために簡単である。例えば、風味送達部材にはフィルター材料の繊維を組み込みうるが、これは束ねられてフィルター材料トウが形成されるためである。風味送達部材を挿入するための別個の工程は必要とされない。
【0060】
本発明の一つの態様に関連して説明した特徴は、本発明の別の態様にも適用されうる。
【0061】
本発明は、以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、本発明の一つの実施形態による喫煙物品の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施形態によるフィルターの断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の線III-IIIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、本発明の一つの実施形態による喫煙物品100の斜視図である。喫煙物品100は、通常的に円筒形のたばこロッド101および通常的に円筒形のフィルター103を含む。たばこロッド101およびフィルター103は、端と端が接した関係で軸方向に配置されており、互いに隣接することが好ましい。たばこロッドは、喫煙材料を囲む外側ラッパー105を含む。外側ラッパー105は、多孔性の包装材料または紙ラッパーとしうる。たばこは、細かく切られたたばこであるか、またはたばこカットフィラーであることが好ましい。たばこロッド101は、上流の点火側の端107と下流端109を持つ。フィルター103は、上流端111および下流の口側の端113を持つ。フィルター103の上流端111は、たばこロッド101の下流端109と隣接している。フィルター103のフィルター材料は、フィルターラッパー(図示せず)内に包まれる。
図1には示されていないが、カプセル形態での風味送達部材がフィルター103に埋め込まれる。
【0064】
フィルター103は、フィルター103の全長およびたばこロッド101の隣接した領域を囲むチッピング材料115によって、たばこロッド101に取り付けられている。明確にするために、チッピング材料115は、
図1では喫煙物品から部分的に取り外された状態で示されている。チッピング材料115は通常、紙様の製品である。しかし、適切な任意の材料を使用できる。チッピング材料は、カプセル内の液体風味剤に対して実質的に不浸透性の材料を含むことが好ましい。この実施形態で、チッピング材料115は、フィルター103と整列された穿孔117の円周列を含む。主流煙の換気用に穿孔が提供されるが、これはフィルター103内に埋め込まれたカプセル(図示せず)の上流に位置する。
【0065】
本明細書では、喫煙物品の構成要素間の「上流」および「下流」という相対的な位置は、主流煙がたばこロッド101から、およびフィルター103を通して引き込まれたときの主流煙の方向に関連して描写されている。
【0066】
図2は、本発明の一つの実施形態による
図1のフィルター103の断面図である。
図3は、
図2の線III-IIIに沿った断面図である。
図2および
図3で、フィルター103はフィルター材料203のフィルターセグメント201を含む。フィルター103は球状カプセル205の形態での風味送達部材をさらに含む。
【0067】
図2および
図3の実施形態で、カプセル205はフィルターセグメント201内に埋め込まれ、フィルター材料203によってすべての側が囲まれている。この実施形態で、カプセルは外部シェルおよび内部コアを備え、その内部コアは液体風味剤を含む。液体風味剤は、フィルターを備えた喫煙物品の喫煙中に煙の風味付けをするためのものである。カプセル205は、例えば消費者による圧迫などでフィルターが外力に晒された時に、液体風味剤の少なくとも一部分を放出する。
図2および
図3に示した実施形態で、カプセルは一般に球状であり、液体風味剤を含む実質的に連続した外側シェルを持つ。
【0068】
図3に示す通り、カプセル205は直径301を持ち、フィルターセグメント201は直径303(フィルターラッパーの内側)を持つ。従って、フィルターの長軸方向と直角を成す方向に測定したカプセル205の断面積は、環状の領域π(301)
2である。同様に、フィルターの長軸方向と直角を成す方向に測定したフィルターセグメント201の断面積は、環状の領域π(303)
2である。従って、フィルターセグメント201の断面積のパーセント値としてのカプセル205の断面積は
である。
【実施例0069】
本発明の第一の実施例によれば、カプセル205の直径301は約3.5 mmであり、フィルターラッパーの内側のフィルターセグメント201の直径303は約6.41 mmであり、フィルターラッパーの外側のフィルターセグメント201の直径は約7.21 mmである。フィルターを含む紙巻たばこ(スリム紙巻たばこと呼ばれることもある)の直径は、約7.35 mmである。この実施形態で、カプセルの断面積はフィルターセグメントの断面積の約30%である。この実施形態で、紙巻たばこの長さは約97 mmまたは約83 mmとしうる。この実施形態で、フィルターの長さは約27 mmまたは約32 mm、チッピングペーパーの長さは約32 mmまたは約36 mmとしうる。円周方向の穿孔の列は、口側の端から少なくとも約11 mmに提供しうるが、約18 mmであることが好ましく、またカプセルの中心は口側の端から約13.5 mmに提供しうる。
本発明の第二の実施例によれば、カプセル205の直径301は約3.5 mmであり、フィルターラッパーの内側のフィルターセグメント201の直径303は約6.19 mmであり、フィルターラッパーの外側のフィルターセグメント201の直径は約6.99 mmである。フィルターを含む紙巻たばこ(スリム紙巻たばこと呼ばれることもある)の直径は、約7.10 mmである。この実施形態で、カプセルの断面積はフィルターセグメントの断面積の約32%である。この実施形態で、紙巻たばこの長さは約97 mmまたは約83 mmとしうる。この実施形態で、フィルターの長さは約27 mmまたは約32 mm、チッピングペーパーの長さは約32 mmまたは約36 mmとしうる。円周方向の穿孔の列は、口側の端から少なくとも約11 mmに提供しうるが、約18 mmであることが好ましく、またカプセルの中心は口側の端から約13.5 mmに提供しうる。