(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014398
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】高機能殺菌すすぎ水及びすすぎ方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/358 20060101AFI20230119BHJP
A23B 7/157 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A23L3/358
A23B7/157
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194505
(22)【出願日】2022-12-05
(62)【分割の表示】P 2019076687の分割
【原出願日】2019-04-12
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】516053291
【氏名又は名称】大宮高圧有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111707
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】秋谷 和之
(72)【発明者】
【氏名】青田 平治
(57)【要約】
【課題】野菜等の食品を洗浄、殺菌水浸漬後、すすぐためのすすぎ水及びそのすすぎ水を使用する洗浄・殺菌・すすぎ方法を提供する。
【解決手段】所定の水質基準に適合する水であって、次亜塩素酸ナトリウムを含み、有効塩素濃度が、10ppmから199ppmの範囲内にあり、二酸化炭素濃度が、1GVから3.5GVの範囲内にあり、かつ、pHが、5から7.5の範囲内にある、殺菌水浸漬後のすすぎ水。並びに、そのようなすすぎ水を使用して、洗浄及び/又は殺菌水浸漬後の食品をすすぐ方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を処理後、水切り及び/又は乾燥することにより、その食品をそのまま出荷可能にできるすすぎ水であって、
当該すすぎ水は、平成27年4月1日施行の水質基準に関する省令で規定する水質基準を満たし、かつ、次亜塩素酸ナトリウムを含み、有効塩素濃度が、10ppmから200ppmの範囲内にあり、二酸化炭素濃度が、1GVから3.5GVの範囲内にあり、かつ、pHが、5.8から6.5の範囲内にあり、蒸発残留物が500mg以下である、高機能殺菌すすぎ水。
【請求項2】
前記有効塩素濃度が、20ppmから150ppmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のすすぎ水。
【請求項3】
蒸発残留物に含まれるナトリウム化合物の量が、0重量%から50重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のすすぎ水。
【請求項4】
更に、108個/ml以上のナノバブル又はマイクロバブルを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のすすぎ水。
【請求項5】
洗浄及び/又は滅菌若しくは殺菌処理後に、すすぎ工程を行う食品最終処理方法であって、前記すすぎ工程は、請求項1から4のいずれかに記載のすすぎ水を用いて行うことを特徴とする食品最終処理方法。
【請求項6】
前記すすぎ工程は、0℃から50℃の範囲内で行うことを特徴とする請求項5に記載の食品最終処理方法。
【請求項7】
前記すすぎ工程において、ナノバブル又はマイクロバブル発生装置によるナノバブル又はマイクロバブルの生成を同時に行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の食品最終処理方法。
【請求項8】
食品を洗浄及び/又は滅菌若しくは殺菌処理してから食品を包装する方法であって、実質的に無菌状態の包装材内に包装する直前に請求項5から7のいずれかに記載の食品最終処理方法を行うことを特徴とする食品包装方法。
【請求項9】
請求項5から7のいずれかに記載の食品最終処理方法を行うことを特徴とする食品保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カット野菜のような野菜等の食物の洗浄・殺菌後のすすぎ水及びすすぎ方法に関する。
【0002】
近年、例えばキャベツを刻んだもの及び葉をカットしたレタス等のように、便利性・簡便性を有するカット野菜の需要は急増している。また、外食産業においても、調理品の規格統一等のためにカット野菜の導入が伸びている。このようにカット野菜のような野菜を加工処理したり調理用素材として使用したりする場合には、衛生管理上の必要性から、一般に、洗浄→殺菌→(カット→殺菌)→すすぎ→水切り→包装の順に処理されて、適宜、殺菌処理が行われている。カット野菜等は加熱殺菌ができないことから、例えば所定濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液の中にカットした野菜を浸漬させて殺菌処理を行っている。このとき、野菜を次亜塩素酸ナトリウム溶液(例えば、200mg/Lで5分間、又は100mg/Lで10分間)に漬けることにより、同野菜には次亜塩素臭が付着する。次亜塩素酸ナトリウムには残留性があるので、殺菌処理後に野菜を濯いでも次亜塩素臭の除去が困難とされている。このため、殺菌処理後のすすぎ作業を入念に行う必要がある。
【0003】
通常のすすぎ工程は、清浄水として水道水が使用されている。水道水は、水道法第4条の規定に基づき、「水質基準に関する省令」で規定する水質基準に適合することが必要である。
【表1】
【0004】
しかしながら、このすすぎ作業の困難性から、電解質が添加された原水を電気分解して得られる強アルカリ性水に野菜を漬ける工程と、この強アルカリ性水を排出してから、同じく強酸性水に野菜を漬ける工程と、を備える殺菌工程及びその後の水洗処理工程が提案されている(特許文献1)。しかしながら、電解質(例えば、NaCl)を添加されることから、何らかの添加剤の残留が気になるだけでなく、電気分解という工程が必要であり、装置の大型化や、生産性の低下が懸念される。また、最終的には、水道水ですすがれるため、仮にその後に雑菌等のコンタミがあった場合に、それらの増殖を十分に防止することが困難である。
【0005】
また、仮にこのような殺菌工程がなされていても、野菜が加工場に入る段階ですでに原料1g当りの一般生菌数で106~108以上の汚染が認められるようで、従来の技術で原料を加工しても、加熱等の決定的な殺菌工程のないカット野菜については、長期の品質保持は非常に難しい。一方、食品の細菌数については、地方自治体においてそれぞれ基準が設けられ、大都市では、サラダ、生野菜について食品1g当りの一般生菌数を105以下と定め、また大手スーパー等の惣菜売場では取扱商品の基準を独自に一般生菌数104以下と厳しく設定している所が多い。
【0006】
そのため、カット野菜の鮮度維持のため原料収穫から製品出荷、配送に至るまで一貫した生菌数管理を行うカット野菜の製造方法において、(1)野菜を収穫後ビニール包装し、(2)3時間以内に4°C以下まで真空冷却を行い、24時間以内に4°C以下で工場へ搬入し、(3)一貫した温度管理条件下でカット野菜製造の下処理、一次殺菌、カット、洗浄、2次殺菌、脱水、包装、箱詰めの各工程を行い、(4)4°C以下の一貫した低温輸送で店舗まで配送し、(5)店舗において4°C以下の一貫した低温温度管理下で保存する一連の工程を含み、前記一次殺菌及び前記2次殺菌は、次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸漬することにより行い、前記2次殺菌の後で前記脱水の前に、バブリングにより前記次亜塩素酸ナトリウム溶液のすすぎを行った後、pH5.8~6.0に調整した水溶液中でpH調整処理を行い、脱水工程、そして、包装工程へと行うことが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-61574号公報
【特許文献2】特許第4368006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような複雑な工程の組合せでは、十分な生菌数の管理が可能であっても、手間がかかりすぎて、実効性が低い。また、多工程に渡るため、生産性を高めることが非常に困難である。そこで、生菌数の管理が容易な比較的単純な工程で、野菜等の洗浄、殺菌、すすぎができるようにすることを目的とする。ここで、すすぎとは、一般には、「水で洗い清めること」とされているが、本明細書においては、消費者に渡る迄の工程において、水を含む液体により、対象となる製品(野菜等の生鮮食品を含む食品を含むもの)を最終的に処理する工程(以下、「最終処理工程」という。)(例えば、対象製品の表面に付着しているものの一部又は全部を洗い流す工程)を意味することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
野菜等の食物の洗浄及び殺菌において、水道水等のような一般細菌の数が非常に少ない洗浄液により、洗浄し、水切り後、所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液中にその食物を直ちに浸漬し、所定の時間だけ浸漬状態で保持した後に、水切りし、所定の範囲内の有効塩素濃度を有するすすぎ水で十分な時間すすぐことにより、菌数を低く抑えることができる。特に、すすぎ後、水切りして、冷蔵状態で保存しても、一般細菌の増殖が低く抑えられる。ここで、すすぎ水とは、一般に、すすぐ際に用いる水を意味してよいが、ここでは、上記最終処理工程において、使用する液体を意味することができる。この使用する液体は、水を含んでよい。
【0010】
上述するすすぎ水は、次亜塩素酸ナトリウムを含有する水(例えば、水道水)を含んでよい。このときのすすぎ水は、表1の水質基準に適合する。このすすぎ水は二酸化炭素を含有していてもよい。二酸化炭素が含有される水は、酸性になり易く、通常pHが7より小さく、特に6以下或いは5以下となることもある。
例えば、溶存二酸化炭素は以下のようにイオン化するものと考えられる。
H2O・CO2 ⇔ H2CO3 ⇔ H++HCO3
-
K=[H+][HCO3
-]/[H2O・CO2]=4.45×10-7 (25℃)
仮に、他のカチオン等がないとすれば、[H+]=[HCO3
-]であり、pHは以下のように表される。
pH=(pK-log[H2O・CO2](溶存二酸化炭素濃度))/2
従って、溶存二酸化炭素濃度が高ければ、pHは低くなる。例えば、大気中の炭酸ガスの分圧は0.00035[atm]程度であるので、pHは、5.64と考えられ、更に溶存二酸化炭素濃度が増えれば(二酸化炭素分圧が増えれば)、pHはより低くなると考えられる。
【0011】
また、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌作用は、pHに依存することが知られている(例えば、福崎智司・浦野博水・高橋和宏・竹原淳彦「次亜塩素酸の洗浄・殺菌作用に及ぼす解離状態の影響」 岡山県工業技術センター報告 2008年07月、34巻、22-24頁)。
図1に同文献から引用された図を示す。この図で分かるように、pHが8から6に変化すると急速にHOClが増加する。仮に、上述するようなpHが5.6程度であれば、HOCl存在比率がほぼ100%となる。このとき、P.fluorescensの殺菌に及ぼすpHの影響は、HOClの存在比率に及ぼすpHの影響と等価であることが示されたと述べられている。つまり、非解離HOClが主たる殺菌因子であることが確証され得た。従って、pHを適宜コントロールできれば、HOCl濃度をコントロールでき、そして、殺菌能力を最適化することができると考えられ得る。
【0012】
一方、すすぎ水は、蒸発残留物が少ない方が好ましいので、残り易いカチオンや塩を形成するアニオンが少ない方が好ましい。溶存二酸化炭素は気体として脱離し易いと考えられ、pHを調整する成分として好ましい。
【0013】
ここで、使用される水道水、殺菌水、及び本発明の実施例のすすぎ水の特徴を対比すべく、表2にまとめる。
【表2】
【0014】
より具体的には、以下のようなものを提供することができる。
(1)所定の水質基準に適合する水であって、次亜塩素酸ナトリウムを含み、有効塩素濃度が、10ppmから199ppmの範囲内にあり、二酸化炭素濃度が、1GVから3.5GVの範囲内にあり、かつ、pHが、5から7.5の範囲内にある、すすぎ水。ここで、所定の水質基準とは、法令により、又は、行政機関等の通達を含む規定に基づく水質基準を含んでよい。例えば、表1又は表2の規格基準を含んでよい。前記有効塩素濃度は、その効果を考慮して、10ppm以上であってよく、15ppm以上であってもよい。更に、20ppm以上であってもよく、30ppm以上であってもよい。また、残留濃度を考慮すれば、200ppm以下が好ましく、180ppm以下が好ましい。更に、150ppm以下が好ましい。上述するGVは、一般には、飲料中の炭酸ガスの含有量を表す単位であり、標準状態(0℃、1気圧)において、1L(リットル)の液体に1L(リットル)の炭酸ガスが溶けている場合を1GVという。上記二酸化炭素濃度は、pHを考慮すれば、0.5GV以上が好ましく、0.8GV以上が好ましい。低いpH調整を考えれば、1GV以上が好ましい。また、1.5GV以上でもよい。維持の容易を考慮して、8GV以下が好ましく、7GV以下が好ましい。また、6GV以下でもよく、5GV以下でもよい。また、4GV以下でもよく、3.5GV以下でもよく、3GV以下でもよい。条件によれば、2.5GV以下でもよく、2GV以下でもよいこともある。上記pHは、4以上であってよく、4.5以上であってもよい。5以上が好ましく、5.5以上が好ましい。また、条件によれば、5.8以上でもよく、6以上でもよいこともある。また、pHは、8以下であってよく、7.5以下であってよい。7.2以下が好ましい。条件によれば、7以下であってもよい。
(2)前記有効塩素濃度が、20ppmから180ppmの範囲内にあることを特徴とする上記(1)に記載のすすぎ水。
(3)蒸発残留物に含まれるナトリウム化合物の量が、0重量%から50重量%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のすすぎ水。ここで、蒸発残留物とは、一般には、水中に浮遊したり溶解して含まれるものを蒸発乾固したときに残渣として得られた物をいい、総量をmg/リットルで表す。水道水等の蒸発残留物の主な成分は、カルシウム、マグネシウム、シリカ、ナトリウム、カリウムなどの塩類や有機物である。水道水質基準では、「500mg/リットル以下」と定められている(表2参照)。すすぎ水についての蒸発残留物に含まれるナトリウム化合物の量は、0重量%以上であってよい。すすぎ水は、次亜塩素酸ナトリウムを含んでいるので、1重量%以上であってもよく、10重量%以上であってもよい。20重量%以上であるかもしれず、30重量%であるかもしれない。また、100重量%以下であってよく、90重量%以下であるかもしれない。
(4)更に、108個/ml以上のナノバブル又はマイクロバブルを含むことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載のすすぎ水。ここで、ナノバブルとは、一般には、微細な気泡のことをいう。厳密な定義は応用分野や生成方法によって異なっているが、一般的には1μm以下のナノメートル単位のものがナノバブルと呼ばれる。気泡が極小のため、発生させても肉眼では透明な水に見えるとされている。マイクロバブルとは、一般に、微細な気泡のことである。ISO規格においてはISO 20480-1:2017により、ファインバブル(直径100μm以下全て)のうち、マイクロバブルは直径1~100μmの気泡と定義されており、通常の気泡とは、異なった性質が現れるとされる。このようなナノバブル又はマイクロバブルは、市販のナノバブル発生装置(例えば、株式会社共和製のマイクロバブル・ナノバブル発生装置。株式会社ナノクス製の超高密度ウルトラファインバブル(ナノバブル)発生装置。)又はマイクロバブル発生装置(例えば、森鉄工社製のPao-60型。有限会社OKエンジニアリング社製のマイクロバブル発生ノズル「OKE-MB01」。)により製造することができる。
(5)所定の有効塩素濃度を有する次亜塩素酸ナトリウムと、所定の二酸化炭素濃度を有する炭酸水と、水道水を混合し、有効塩素濃度が、10ppmから199ppmの範囲内、及び、二酸化炭素濃度が、1GVから3.5GVの範囲内にある、すすぎ水製造方法。ここで、次亜塩素酸ナトリウムは、通常、特定の有効塩素濃度を有する水溶液の状態で市販されている(例えば、株式会社オーヤラックス製のピューラックス(次亜塩素酸ナトリウム6%を成分とする。))。また、炭酸水は、特定の二酸化炭素濃度を有する水として一般に市販されている。水道水は、各地域で供給されている。これらの原料を混合することにより、すすぎ水を製造することができるが、所定の有効塩素濃度や、所定の二酸化炭素濃度は、製造されたすすぎ水が上述するような有効塩素濃度及び二酸化炭素濃度を有するように選択される。このすすぎ水の有効塩素濃度及び二酸化炭素濃度は、上述するように、種々の範囲の値を有することもできる。
(6)次亜塩素酸ナトリウム、炭酸水、及び水道水の混合は、混合直後の混合物温度が、0℃から50℃の範囲になるようにする上記(5)に記載の方法。混合物温度は、液体状態であることを考慮すれば、0℃以上であってよく、1℃以上であってよく、3℃以上でもよい。4℃近辺では、水の密度が最大となるが、4℃以上でもよい。溶存二酸化炭素の濃度を考慮すれば、60℃以下が好ましい。50℃以下でもよく、40℃以下でもよい。35℃以下でもよく、30℃以下でもよい。
(7)前記炭酸水は、0℃から50℃の水道水に、二酸化炭素雰囲気において、0.3MPaから0.6MPaの二酸化炭素圧力の下、二酸化炭素をバブリングすることにより製造されることを特徴とする上記(5)又は(6)に記載のすすぎ水製造方法。
(8)前記バブリング後、ナノバブル又はマイクロバブル発生装置により、ナノバブル又はマイクロバブルを生成させることを特徴とする上記(5)から(7)のいずれかに記載のすすぎ水製造方法。ナノバブル又はマイクロバブル発生装置により、溶存する二酸化炭素の大きさが小さくなることが期待される。
(9)洗浄及び/又は滅菌若しくは殺菌処理後に、すすぎ工程を行う食品最終処理方法であって、前記すすぎ工程は、上記(1)から(4)のいずれかに記載のすすぎ水を用いて行うことを特徴とする食品最終処理方法。ここで、食品最終処理は、消費者に渡る迄の工程において、水を含む液体により、対象となる製品(野菜等の生鮮食品を含む食品を含むもの)を最終的に行う処理のことを意味してよい。この食品最終処理を行う工程を最終処理工程という。
(10)前記すすぎ工程は、0℃から50℃の範囲内で行うことを特徴とする上記(9)に記載の食品最終処理方法。ここで、前記すすぎ工程は、0℃以上で行ってよく、1℃以上でもよく、2℃以上でもよい。対象となる食品によれば、3℃以上でもよく、4℃以上でもよい。一方、生鮮食品などを取り扱うことを考慮すると、60℃以下が好ましく、50℃以下が好ましく、45℃以下が好ましく、40℃以下が好ましい。また、35℃以下が好ましいこともあり、30℃以下であってもよい。
(11)前記すすぎ工程において、ナノバブル又はマイクロバブル発生装置によるナノバブル又はマイクロバブルの生成を同時に行うことを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の食品最終処理方法。
(12)前記すすぎ工程の前には、洗浄処理のみを行うことを特徴とする上記(9)から(11)のいずれかに記載の食品最終処理方法。洗浄は、一般に、水や洗剤などの洗浄液を用いて汚れを取り除く行為のことを意味するが、洗浄処理は、そのような洗浄を対象である食品に対して行う処理のことをいう。この洗浄により、表面などに付着する菌等を減少させることはあるが、必ずしも殺菌する必要はない。そして、洗浄液や洗浄液中に懸濁等する汚れを十分に除去するためにすすぎ工程は有力である。このすすぎ工程に用いられるすすぎ水は、このようないわゆるすすぎ効果を有し、かつ、殺菌効果を有し、更に、すすぎ水を切った後に、食品に不都合な残留物がない、若しくは、十分に少なく支障がない、状況を作り出すことができる。従って、このすすぎ工程の前に滅菌若しくは殺菌処理工程が必ずしも必要とされない。
(13)前記滅菌若しくは殺菌処理において、次亜塩素酸ナトリウムを含み、有効塩素濃度が、200ppmから1000ppmの範囲内にある滅菌水若しくは殺菌水を用いることを特徴とする上記(9)から(11)のいずれかに記載の食品最終処理方法。ここで、滅菌水若しくは殺菌水の有効塩素濃度は、200ppm以上でよく、220ppm以上でよく、250ppm以上でよく、300ppm以上でよい。条件によっては、400ppm以上がよく、500ppm以上でもよい。一方、不必要に残留しないことを考慮して、滅菌水若しくは殺菌水の有効塩素濃度は、2000ppm以下でよく、1200ppm以下でよく、900ppm以下でよく、800ppm以下でよい。条件によっては、700ppm以上がよく、650ppm以上でもよい。
(14)食品を洗浄及び/又は滅菌若しくは殺菌処理してから食品を包装する方法であって、実質的に無菌状態の包装材内に包装する直前に上記(9)から(13)のいずれかに記載の食品最終処理方法を行うことを特徴とする食品包装方法。ここで、実質的に無菌状態の包装材とは、真正細菌、ウイルス、菌類、寄生生物のような病原性の汚染生物とその生成物(コンタミナント)を除去した状態、又は、これら微生物と接触しない状態のことをいう無菌状態にほぼ等しい又はそれに準ずる状態にあるものであって、包装に供されるフィルム(例えば、プラスチック製フィルム等)、薄膜、厚膜、薄板等を含んでよい。
(15)前記食品最終処理方法後に水切り又は乾燥処理を行うことを特徴とする上記(14)に記載の食品包装方法。水切りとは、水を切ることであり、また、水分がなくなるようにすることであってよい。水分をなくなるようにするとは、その食品等を平面上に静置したときに、その平面に液体としての水が溜まらない程度に水を除くことを意味することができる。また、乾燥とは、一般には、目的のものから水分を除去し、乾いた状態にすることを意味することができる。しかしながら、本明細書では、そこまで水分を除去する必要はなく、液体としての水が、静置することにより、重力下でその目的物の下端に溜まることがない程度であってよい。
(16)上記(9)から(13)のいずれかに記載の食品最終処理方法を行うことを特徴とする食品保存方法。ここで、保存とは、そのままの状態を保つようにして、とっておくことを意味してよい。食品保存は、食品が数時間から数日の経過で劣化していない状態として保つこと意味することができる。劣化には、味、臭い、又は見た目等の人間の五感で把握できる変化を意味することができる。
【0015】
本発明の実施例におけるすすぎ水は、生鮮食品を含む食品のような対象物から、前工程の洗浄液、汚れ、殺菌液又は水を洗い流すことができるものを含む。また、すすぎ水によるすすぎ後に水切り又は乾燥した場合に、その対象物に、不都合な残留物が残らないものが好ましい。生鮮食品としては、レタス、キャベツ、ネギのような野菜類が含まれる。また、リンゴ、ミカン、オレンジ、キウイフルーツ(キュウイフルーツ)のような果物を含むことができる。ネギの内側の繊維状のものは、洗浄が容易ではなく、仮に、何らかの理由で雑菌等が付着した場合は、通常の洗浄又は殺菌では、十分にこの雑菌等を除去できないおそれがある。また、キウイフルーツのように表面の毛がある場合、洗浄液又は殺菌水又はすすぎ水等が表面を十分に濡らすことができない恐れがある。これは、その表面近傍に、気泡が残るためであり、かかる気泡を攪拌による水流等で除去してもよく、超音波等により気泡の表面からの離脱を促進してもよい。また、ナノバブル又はマイクロバブルを含む洗浄液又は殺菌水又はすすぎ水等を用いると効果的に、このような気泡を除去できると考えられている。更に、洗浄液又は殺菌水又はすすぎ水等にナノバブル又はマイクロバブルを発生させながら、洗浄液又は殺菌水又はすすぎ水等で処理をすると動的な効果が更に期待される。
【発明の効果】
【0016】
殺菌水は、殺菌が目的で作られており、殺菌成分が十分な濃度だけ含まれることが好ましい。しかしながら、殺菌成分は、人体にも良くない影響を与える可能性があるので、殺菌成分が対象物に残留したままでは好ましくない。従って、すすぎを行うことを前提である。上述するすすぎ水は、殺菌後の食材を長く実質的に無菌状態(菌の増殖が抑制されている状態をいう。或いは、菌数の増加が管理された状態をいう。)に維持することを目的とする。従来から用いられる水道水は、殺菌水を洗い流すことはできるが、残留した菌の増殖の防止や、新たに付着する菌の増殖を防止することができない。また、水道水の基準は、製造された場所での基準であり、宅内での基準ではないため、実際に使用している水道水がその基準を満たしているかが、不明な場合がある。故に、水道水と同レベルのpHと蒸発残留物を基準値以下にすることで、すすぎ水として使用した場合に、食材に付着したすすぎ水由来のものが体内に入っても問題を生じさせないことが重要である。上述のようにすることで、比較的単純な工程で、野菜等の生鮮食品を含む食品の洗浄、殺菌、すすぎを行っても、細菌等を減少させ、更に、処理後の増殖を抑制し、細菌等の数を管理可能な状態で、包装し、商品として出荷することができる。また、すすぎ水中に炭酸を溶存させることにより、pHが調整可能となるだけでなく、食材の表面の油分の除去を容易にすることができる。加えて、レタス等は、このようなすすぎ水中ですすぎを行うことにより、パリパリ感を一層引き出すことができ、そのまま食べた時の食感を向上させることができる。また、上述では、殺菌水による殺菌を前提としているが、野菜等の生鮮食品を含む食品の入荷状況によっては、必ずしも殺菌水による処理が必要とは限らない。元々付着する雑菌等の数(又は量)が小さければ(又は少なければ)、殺菌工程を省略することもできる。例えば、洗浄工程後に、本発明の実施例のすすぎ水によるすすぎを行うことにより、食品を包装し、出荷することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】有利有効塩素の化学平衡とpHの関係を示す図である。
【
図2】実施例1で用いた洗浄、殺菌、すすぎを行う装置の模式図である。
【
図3】実施例1の洗浄、殺菌、すすぎ工程を示すフロー図である。
【
図4】カット野菜の製造装置の概念をしめす模式図である。
【
図5】カット野菜の製造工程を示すフロー図である。
【
図6】本発明の別の実施例のすすぎ装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例0019】
[水道水、殺菌水、すすぎ水の準備]
表1の基準を満たす水道水を準備した。次に、有効塩素濃度が12%の市販の次亜塩素酸ナトリウム、市販の酢酸(試薬特級)、及び、水道水を混合して、有効塩素濃度が、約200ppm、pHが、約6.5の殺菌水を準備した。また、有効塩素濃度が6%の市販の次亜塩素酸ナトリウムと、水道水と、市販の炭酸水(二酸化炭素濃度3GV)とから、塩素濃度が100ppm、二酸化炭素濃度が、2GV、pHが、6.0のすすぎ水を準備した。尚、二酸化炭素濃度は、0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液による中和滴定法(JIS K 0101:1998)によった。
【0020】
[検体の準備]
市販のレタスを購入し、数センチの大きさに切断し、検体とした。
【0021】
[検体の洗浄及び殺菌]
図2に今回使用した野菜の洗浄・殺菌・すすぎを行う装置(以下、「洗浄装置」という。)の概念図を示す。また、
図3には、野菜等の食物洗浄・殺菌工程を示すフローを表す。ここでは、殺菌工程が必要か否かの選択工程(S107)を含むが、以下に述べる実施においては、常に殺菌工程が必要なものとしている。この洗浄装置10は、洗浄槽12、殺菌槽14、及びすすぎ槽16を備え、それぞれに、洗浄液槽18、殺菌水槽20、及びすすぎ水槽22から、洗浄液、殺菌水、すすぎ水が、配管24・バルブ26及び配管28を通ってドレインバルブ30を閉じた洗浄槽12に供給され、配管32・バルブ34及び配管36を通ってドレインバルブ38を閉じた殺菌槽14に供給され、そして、配管40・バルブ42及び配管44を通ってドレインバルブ46を閉じたすすぎ槽16に供給される。レール50が水平方向に延び、レール50に沿って移動可能なクレーン64がレタスなどの野菜が投入される(S102)、水等の液体が自由に出入り可能なメッシュにより構成される食物籠62を吊り下げる。そして、洗浄槽12に洗浄液が満たされた後にレール50に沿って洗浄槽12に相当するところにクレーン64を移動させ、吊り下げチェーンを延ばして、食物籠62を洗浄槽12内に投入する。この洗浄槽12内には、必要に応じて攪拌装置を配置してもよいが、洗浄液により野菜を洗浄する(S104)。洗浄後は、吊り下げチェーンをクレーン64に巻き取り、食物籠62を槽外に引き上げ、水切りを同時に行う(S106)。次に、クレーン64をレール50上で移動させ、殺菌槽14に相当するところまで移動させ、殺菌槽14に殺菌水が満たされた後に吊り下げチェーンを延ばして、食物籠62を殺菌槽14内に投入する(殺菌工程(S108))。これにより、野菜を殺菌水に所定時間浸漬する。この殺菌槽14内には、必要に応じて攪拌装置を配置してもよい。殺菌処理後は、吊り下げチェーンをクレーン64に巻き取り、食物籠62を槽外に引き上げ、水切りを同時に行う(S110)。ここでは、殺菌処理を行っているが(S107でYes)、行う必要が無ければ(S107でNo)、食物のすすぎ工程(S112)に移行してもよい。
【0022】
[検体のすすぎ]
次に、クレーン64をレール50上で移動させ、すすぎ槽16に相当するところまで移動させ、すすぎ槽16にすすぎ水が満たされた後に吊り下げチェーンを延ばして、食物籠62をすすぎ槽16内に投入する(すすぎ工程(S112))。このようにして、野菜から殺菌水をすすいで除去する。このすすぎ槽16内には、必要に応じて攪拌装置を配置してもよい。すすぎ処理後は、吊り下げチェーンをクレーン64に巻き取り、食物籠62を槽外に引き上げ、水切りを同時に行う(S114)。その後、所定時間自然乾燥させ、必要に応じて梱包工程に移行する。
【0023】
[検体の細菌1]
検体として、カットされたレタスを用いて、実施例に関するすすぎ水及び水道水(比較例)を用いたすすぎの効果を実験した。まず、検体を
図1の食物籠62に投入し、水道水を洗浄液として洗浄し、水切り後、次亜塩素酸ナトリウム、酢酸、及び水道水を混合して作った上述する殺菌水が満たされた殺菌槽14中に約3分間浸漬した。その後、水切りし、上述するすすぎ水が満たされたすすぎ槽16中に投入し、約1分間、槽内ですすぎ水を攪拌した。一方、比較例として用いたすすぎ水は、水道水であった。各工程後にいわゆる水切りを行った後の検体表面に残った水から細菌(いわゆる一般細菌)の数をカウントした。すすぎ後は、直後、及び約60時間冷蔵(5~10℃)後に、細菌の数をカウントした。結果を表3に示す。
【0024】
【0025】
実施例1及び2並びに比較例1及び2において、殺菌後の菌数は、4.5×103個及び6.2×103個並びに4.5×103個及び6.2×103個であった。比較例1及び2の水道水ですすいだ後は、5.2×104個及び4.8×104個と、一桁増えていた。そして、60時間冷蔵後には、8.5×106個及び9.8×106個と、二桁増えていた。一方、実施例1及び2のすすぎ水ですすいだ後は、2.2×102個及び4.6×102個と、一桁減っていた。そして、60時間冷蔵後には、4.6×102個及び8.3×102個と、殆ど変化しなかった。このことから、水道水ですすぐ間に、菌の増加が生じる一方、実施例のすすぎ水ですすぐと菌は更に減少したことが分かり、すすぎ水の滅菌効果が表れているものと推測される。また、冷蔵60時間後には、比較例の水道水において更なる菌の増殖が認められるところ、実施例のすすぎ水では、菌の増殖が殆ど認められなかった。これは、すすぎ過程で、十分に滅菌することができたことを意味するものと思われる。
【0026】
表4は、検体をキャベツに変えて、表3のレタスと同様な比較例及び実施例の試験を行った結果をまとめる。表5は、検体を長ネギに変えて、表3のレタスと同様な比較例及び実施例の試験並びにファインバブルの併用を行った別の実施例の試験を行った結果をまとめる。表6は、検体をキュウイフル-ツ(キウイフルーツ)に変えて、表5の長ネギと同様な試験を行った結果をまとめる。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
表4の結果(実施例3及び4並びに比較例3及び4)は、表3の結果とほぼ同等なものであることが分かる。即ち、レタスやキャベツのような葉物野菜については、何れも再現性のある結果を得られることが分かった。一方、表5の長ネギや表6のキュウイフル-ツについては、長ネギのいわゆる内側の表面は毛羽立ったようになっており、ここに汚れや菌が付着していたならば、洗浄・殺菌が難しそうであり、そして、キュウイフル-ツの表面には細かい毛のようなものがあり、水をその上にかけると表面が簡単には濡れずにはじきやすいようであり、やはり、ここに汚れや菌が付着していたならば、洗浄・殺菌が難しそうである。表5より、比較例5及び6並びに実施例5及び6並びに7及び8において、殺菌後の菌数は、6.2×104個及び3.8×104個並びに6.2×104個及び3.8×104個並びに6.2×104個及び3.8×104個であった。比較例5及び6の水道水ですすいだ後は、5.8×105個及び8.3×105個と、一桁増えていた。そして、60時間冷蔵後には、3.8×107個及び6.2×107個と、二桁増えていた。一方、実施例5及び6のすすぎ水ですすいだ後は、4.2×102個及び3.2×102個と、二桁減っていた。そして、60時間冷蔵後には、4.6×103個及び1.3×103個と、一桁増えていた。このことから、水道水ですすぐ間に、菌の増加が生じる一方、実施例のすすぎ水ですすぐと菌は更に減少したことが分かり、すすぎ水の滅菌効果が表れているものと推測される。また、冷蔵60時間後には、比較例の水道水において更なる菌の増殖が認められるところ、実施例のすすぎ水では、菌の増殖が僅かに認められる程度であった。これは、すすぎ過程で、十分に滅菌することができたことを意味するものと思われる。また、すすぎ工程で、実施例のすすぎ水に加えてファインバブルを併用した場合(実施例7及び8)、実施例7及び8のすすぎ工程後は、1.8×102個及び0.8×102個と、二桁減っていた。そして、60時間冷蔵後には、3.2×102個及び2.6×102個と、殆ど増殖していなかった。このことから、実施例のすすぎ水には、滅菌効果が認められるが、それがファインバブルを併用すると、菌が付着している表面に当該すすぎ水が到達し易くなり、滅菌効果が顕著になることが推測される。そのため、極めて低い菌数となるため、60時間冷蔵保存しても菌の増殖が極めて低く抑えられることが分かる。
【0031】
表6からは、表5の結果とほぼ同様となるため、重複する説明は省略するが、いずれも表面の状態により、殺菌のし易さ、並びに、実施例のすすぎ水による滅菌効果の確認、そして、この滅菌効果を更に向上させるファインバブルの併用の効果が明らかとなる。ここで、比較例及び実施例で用いた水道水及びすすぎ水は共に、表1及び表2の基準を満足していた。具体的には、用いたすすぎ水1リットルの蒸発残留量は、320mgであった。
【0032】
[レタス食感の評価]
比較例1及び実施例1のすすぎ後のレタスについて、食感を10人のモニターにより評価した。評価は、目隠しをした状態で、ランダムに選択されたいずれかのレタスを噛んで食感を評価した。10人のうち、8人が実施例1のレタスの方がパリパリ感が高いと評価した。また、残りの2人は、何れも同等のパリパリ感を有するとした。このように、次亜塩素酸ナトリウム+二酸化炭素+水道水からなるすすぎ水を使用した実施例のレタスは、よりパリパリ感が高いことが分かった。
【0033】
尚、実施例のすすぎ水について、表1に記載した基準を満足することも確認されていた。また、蒸発後の残留物の量は、水道水よりも若干多かった。残留物中のNa化合物(主に、NaCl)は、約40mgであり、実施例のすすぎ水中の有効塩素濃度から予想される範囲内であった。
上述する実施例においては、殺菌水による殺菌工程を含んでいるが、元々のレタスに付着する菌の数が少ない場合は、殺菌工程を省くことも可能である(S107、No(
図3))。その場合は、洗浄後の菌数は、何れも同等であるが、すすぎ後は、水道水の場合は、10倍以上増殖していたが、上記すすぎ水による場合は、10分の1程度に減少しており、更に、冷蔵保存後もあまり菌は増殖しなかった。
【0034】
図4は、カット野菜のような野菜の製造装置の1つの実施例を模式的に示す図である。また、
図5は、このような装置を使用して、カット野菜を製造する方法を表したフローチャートである。この実施例による野菜の製造装置100は、カット野菜片102を供給する供給装置104と、このようなカット野菜片が例えば重力充填される洗浄槽106と、この洗浄槽106からカット野菜片102を排出する粗いメッシュ面を有するベルトを備えるベルトコンベヤ108と、このベルトコンベヤ108により運び込まれるカット野菜片102が投入される殺菌槽110と、この殺菌槽110からカット野菜片102を排出する粗いメッシュ面を有するベルトを備えるベルトコンベヤ112と、このベルトコンベヤ112により運び込まれるカット野菜片102が投入されるすすぎ槽114と、このすすぎ槽114からカット野菜片102を排出する粗いメッシュ面を有するベルトを備えるベルトコンベヤ116と、このベルトコンベヤ116により運び込まれるカット野菜片102が投入されるホッパー118と、搬送コンベヤ120であって製品としてのカット野菜片102を包装する袋122を運ぶコンベヤ120と、このコンベヤ120により搬送されるカット野菜片102入りの袋122をシールして閉じ袋122aにするシール装置124と、同袋122aを収納し梱包する梱包装置126と、からなる。まず、準備されたカット野菜片102は、洗浄液供給口130から供給される洗浄液132が満たされ撹拌のための撹拌機134を備える洗浄槽106内に投入される(S502)。この洗浄槽106内で、カット野菜片102が洗浄された後(S504)、カット野菜片102が洗浄液の流れに乗って槽内に備えられるベルトコンベヤ108の出発位置(図中左側)に移動しそのままメッシュからなるベルト面に乗っかり右斜め上方向に搬出され、同時に、メッシュの孔から洗浄液136が排出され所謂水切りがなされる。ここで、仮に、殺菌処理が不要と判断されると(S505、No)、殺菌処理(S506)をせずにすすぎ処理(S508)を行う。この場合、
図4において、以下に述べるような殺菌処理のための処理装置が不要となり、ラインの短縮化が可能となる。殺菌処理が必要であれば(S505、Yes)、カット野菜は、隣の殺菌槽110に運ばれ、殺菌水供給口140から供給される殺菌水142が満たされ撹拌のための撹拌機144を備える殺菌槽110内に投入される。この殺菌槽110内で、カット野菜片102が浸漬殺菌された後(S506)、カット野菜片102が殺菌水の流れに乗って槽内に備えられるベルトコンベヤ112の出発位置(図中左側)に移動しそのままメッシュからなるベルト面に乗っかり右斜め上方向に搬出され、同時に、メッシュの孔から殺菌水146が排出され所謂水切りがなされる。そのまま、隣のすすぎ槽114に運ばれ、すすぎ水供給口150から供給されるすすぎ液152が満たされ撹拌のための撹拌機154を備えるすすぎ槽114内に投入される。このすすぎ槽114内で、カット野菜片102がすすがれた後(S508)、カット野菜片102がすすぎ水の流れに乗って槽内に備えられるベルトコンベヤ116の出発位置(図中左側)に移動しそのままメッシュからなるベルト面に乗っかり右斜め上方向に搬出され、同時に、メッシュの孔からすすぎ水162が排出され所謂水切りがなされる(S510)。そのままコンベヤ116上を右斜め上方向に移動する際に上に備えられる送風機160により簡易な乾燥が行われる(S510)。運ばれたカット野菜片102は、ホッパー118内に投入され、仕切弁を備えるノズル部分119から、上に開放端を備える、所謂口を開けた袋122内に投入される。搬送コンベヤ上を運ばれる口の開いた袋は、シール装置124により閉じられ(密封され)、梱包装置126に投入される(S512)。このようにして、袋詰めされたカット野菜片102は出荷される。このようなカット野菜の場合は、高温による殺菌工程を設けることができないので、全体として、2℃以上20℃以下の温度で工程が管理される。
【0035】
以上のような、一貫された製造工程において、洗浄液、殺菌水、及びすすぎ水の厳密な成分コントロール、温度コントロール、そして、空調なされた温度コントロール下で、カット野菜が製造されるので、細菌を含む雑菌のコントロールが可能である。また、各工程において、細菌の量を検査することができ、厳密な雑菌のコントロールが可能である。
図6は、更に、別の実施例である、野菜のすすぎを行う装置(以下、「すすぎ装置」という。)の概念図を示す。このすすぎ装置は、すすぎ槽212及びナノバブル又はマイクロバブル発生装置を備えるナノバブル又はマイクロバブル生成槽214を備え、すすぎ水槽218から、すすぎ水が、配管224・バルブ226及び配管228を通ってドレインバルブ230を閉じたすすぎ槽212に供給される。レール250が水平方向に延び、レール250に沿って移動可能なクレーン264が、レタスなどの野菜が投入される水等の液体が自由に出入り可能なメッシュにより構成される食物籠262を吊り下げる。そして、すすぎ槽212にすすぎ水が満たされた後にレール250に沿ってすすぎ槽212に相当するところにクレーン264を移動させ、吊り下げチェーンを延ばして、食物籠262をすすぎ槽212内に投入する。このすすぎ槽212内には、必要に応じて攪拌装置を配置してもよいが、すすぎ水により野菜を洗浄する。このすすぎ槽212は、太い管により接続されたナノバブル又はマイクロバブル発生装置216を備えるナノバブル又はマイクロバブル生成槽214に接続され、この管を通って、発生されたナノバブル又はマイクロバブルがすすぎ槽212内に流れ込み、より容易にカット野菜等の食物をすすぐことができる。このとき、ナノバブル又はマイクロバブルの発生が直ぐ隣の槽内で行われるので、ナノバブル又はマイクロバブルの発生期の動的なエネルギーが野菜等の表面の気泡を剥離させることに寄与すると考えられ、よりすすぎ効果が向上する。尚、ナノバブル又はマイクロバブル発生装置216’をすすぎ水槽218内に設けることもできる。この場合は、十分に発生したナノバブル又はマイクロバブルを備えるすすぎ水を準備でき、通常のすすぎ槽212だけで、ナノバブル又はマイクロバブルの効果を得ることが可能である。すすぎ後は、吊り下げチェーンをクレーン264に巻き取り、食物籠262を槽外に引き上げ、水切りを同時に行う。
【0036】
一般に、食材(野菜、肉、魚等)の加工時には洗浄・殺菌後、水道水又はその基準に準じた井戸水(以下、水道水という。)でのすすぎを行っており、国(保健所)でもそのような工程を推奨している。これは、水道水に雑菌等が皆無であるという前提によるものであるが、長年使用している配管等には水垢等があり決して無菌ではない。そのため、殺菌後にこのような水道水でのすすぎでは、菌の再付着が懸念される。そのため、すすぐ際には、本発明の実施例のようなすすぎ水を使用することが提案されている。このすすぎ水は、食品・添加物の規定基準に合格したものが含まれているにすぎない。このようなすすぎ水においては、次亜塩素酸ナトリウムと炭酸ガスを同時に混ぜ込んだ水道水が含まれてよい。次亜塩素酸ナトリウムは、アルカリ性であり殺菌効果より洗浄効果の方が注目される場合では、このままでもよいが、洗浄効果よりも殺菌効果が注目される場合は、弱酸性における使用が好ましい。尚、アルカリ性の次亜塩素酸ナトリウムに単に酸性のもの(酢酸、塩酸、硫酸等)を混ぜると塩素ガスの発生を招く恐れがあり、注意を要する。例えば、炭酸を混ぜる場合は、均衡作用があるので、塩素ガスを発生することが少なく、好ましい。特に、食品・添加物の規定基準に合格する弱酸性次亜塩素酸水からなるすすぎ水は、好ましい。このようなすすぎ水は、次のような特徴を備えると考えられる。
1.炭酸の効果で浸透性が高まり、使用量が少なくできる。
2.殺菌効果が約20倍(次亜塩素酸ナトリウム比)である為次亜塩素酸ナトリウムの注入量を減らせる為塩素の残留量が少ない(食品・添加物の規定基準をクリア)。
3.菌との接触後は通常の水道水に戻りやすく残留性が極めて少ない。
4.炭酸は大気中より作り出すリサイクル品であるため環境に優しい。
5.すすぎ水自体に殺菌効果があるので食品の残菌は水道水に比べ非常に少ない又は基準ギリギリ迄塩素濃度を上げることによりすすぎ水でありながら殺菌効果を期待できる。
6.上記効果により[洗浄→殺菌→すすぎ]から殺菌の工程を減らすことができる。
7.ファインバブルを併用することができる。
8.磁力を使い、水道水自体の界面活性力を向上させることができ、また、浸透効果を向上させることができる。