(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023143991
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】経路生成システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127241
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2022069677の分割
【原出願日】2019-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹浦 寛之
(57)【要約】
【課題】最後まで適切に収穫作業を行うことが可能な走行経路を生成することができる経路生成システムを提供する。
【解決手段】自動走行システムは、作物を収穫可能な刈取部3(作業機)を有するコンバイン1(作業車両)を自動走行させる走行経路を生成する経路生成部101を備える。経路生成部101は、条間設定情報に基づいて走行経路を生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を収穫可能な作業機を有する作業車両を自動走行させる走行経路を生成する経路生成部を備える経路生成システムであって、
前記経路生成部は、条間設定情報に基づいて前記走行経路を生成する
経路生成システム。
【請求項2】
作物を収穫可能な作業機を有する作業車両を自動走行させる走行経路を生成する経路生成方法であって、
条間設定情報に基づいて前記走行経路を生成する
経路生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、圃場内に走行経路を生成し、生成した走行経路に沿って自動走行を行いながら収穫作業を行うコンバインが開示されている。ところで、コンバインで収穫作業を行うに当たっては、圃場幅(圃場内の条数)が収穫幅(刈取条数)で割り切れない場合、最終工程の条数が収穫幅よりも少なくなる。その際、収穫幅に対して残りの条数が著しく小さいと、穀稈の収穫残し(刈残し)が発生したり、収穫残しの株を取り込んでしまったり、収穫脱穀後に圃場へ排出した排藁(切り藁)を取り込んでしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、最後まで適切に収穫作業を行うことが可能な走行経路を生成することができる経路生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る経路生成システムは、作物を収穫可能な作業機を有するコンバインを自動走行させる走行経路を生成する経路生成部を備える経路生成システムであって、
前記経路生成部は、前記走行経路として、収穫対象幅が前記作業機の作業幅と等しい第1走行経路と、前記収穫対象幅が前記作業幅より狭い第2走行経路とを生成可能であり、
前記経路生成部は、前記第2走行経路として、前記作業幅に対する前記収穫対象幅が所定割合未満の走行経路を生成しない。
【0006】
かかる構成によれば、収穫対象幅が極めて狭い(所定割合未満の)走行経路を生成しないため、刈残しの発生や排藁の取り込みを抑制でき、最後まで適切に収穫作業を行うことが可能な走行経路を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、コンバイン1の全体構成を示す左側面図である。
図2は、コンバイン1の制御構成を示すブロック図である。コンバイン1は、自律して走行及び作業が可能なコンバイン(自律型コンバイン)である。
【0009】
コンバイン1は、自脱形コンバインである。コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8、及び、操縦部9を備える。
【0010】
コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3(作業機に相当)によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6のグレンタンク11に貯える。グレンタンク11に貯えられた穀粒は、排出オーガ12によって排出される。また、脱穀後の排藁は排藁処理部7によって処理される。動力部8のエンジン13から、これら走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7に動力が供給される。操縦部9は、運転席14やステアリングハンドル15等の運転操作具を内装するキャビン16を備える。
【0011】
コンバイン1は、測位衛星からの信号を受信して測位する測位ユニット20を備える。測位ユニット20は、移動測位アンテナ22と、データ受信アンテナ23と、を有する。移動測位アンテナ22及びデータ受信アンテナ23は、キャビン16に配置されている。一方、固定測位アンテナ32と、データ通信アンテナ33とが所定位置に配置されている。コンバイン1は、RTK-測位方式を用いて位置情報を取得している。
【0012】
コンバイン1の制御装置40は、CPU等のコンピュータからなる処理部41と、ROM、RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶部42とを有する。処理部41は、ROMに格納されているプログラム等をRAM上に読み出したうえで、これを実行することができる。記憶部42には、グレンタンク11の容量、刈取部3の幅等のコンバイン1の各諸元情報が記憶されている。
【0013】
制御装置40は、制御プログラムを処理部41が実行することにより、各種構成要件の作動制御を行う。具体的には、通信時における情報の送受信、各種の入出力制御及び演算処理の制御等を行う。また、制御装置40は、外部とのデータ通信用の通信部43を有する。制御装置40は、通信部43を通じて、他の作業車両(コンバインや、収穫物を搬送するトラック等)、携帯端末等の外部構成と通信可能である。
【0014】
コンバイン1は、制御装置40の入力側の構成として、測位ユニット20と、エンジン13の回転数を検出するエンジン回転センサ51と、コンバイン1の走行速度を検出する走行速度センサ52と、コンバイン1の機体の変位情報として3方向の加速度を検出するジャイロセンサ53と、コンバイン1の進行方向を検出する方位センサ54と、ステアリングハンドル15の回転角を検出するステアリングセンサ55と、グレンタンク11に貯留される穀粒の量を検出する穀粒センサ56と、を有する。
【0015】
制御装置40の出力側の構成は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とである。制御装置40は、入力される測位ユニット20からの位置情報及び各種センサによって検出される運転状況(例えばエンジン13の運転状態、機体の姿勢方位、グレンタンク11内の穀粒量等)に基づいて、適宜、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを制御する。このようにして、コンバイン1は、所定の経路に沿って自律的に走行及び作業を実行するように制御されている。
【0016】
以下、
図3~
図7を参照して、経路生成システムについて説明する。経路生成システム100は、経路生成部101と、通信部102と、を備えている。本実施形態では、経路生成システム100は、コンバイン1の外部に設けられるタブレット103に含まれている。
【0017】
経路生成部101は、コンバイン1を自動走行させる走行経路を生成する。経路生成部101には、走行経路を生成するための経路生成プログラムが格納されている。通信部102は、コンバイン1の通信部43と通信することができる。
【0018】
タブレット103は、コンバイン1の外部に設けられる携帯端末であり、コンバイン1を制御するアプリケーションソフトがインストールされている。タブレット103は、コンバイン1の通信部43と通信することで、コンバイン1の位置情報及び運転状況を取得し、表示することができる。また、タブレット103は、制御装置40に制御信号を送信してコンバイン1を操作することができる。
【0019】
図4のPk(k=1、2、・・・、n-1、n)は走行経路を示している。コンバイン1は、走行経路P1、P2、・・・、Pn-1、Pnの順に走行する。
【0020】
経路生成の手順について説明する。経路生成部101は、収穫対象領域となる圃場Fの形状を登録する。例えば、コンバイン1を手動で操作して、測位ユニット20を利用しながら圃場Fの外周を1周させることで、経路生成部101は、走行経路P1~P4を生成し、圃場Fの形状を取得する。走行経路P1~P4を生成する際には、排出位置(トラックの位置)、圃場Fの出入口位置等が考慮される。なお、コンバイン1が走行経路Pkの終点から次の走行経路Pk+1の始点へ移動するときの走行経路については特に限定されない。
【0021】
次いで、経路生成部101は、走行経路P1~P4の内側に外周側から中心へ向かって渦巻き状に走行経路P5~Pnを生成する。本実施形態では、n=19となっており、コンバイン1は、圃場Fの全域の刈取作業を完了するまでに、走行経路P1~P19をそれぞれ直進走行する。
【0022】
経路生成部101は、走行経路P1~Pnとして、収穫対象幅W1が刈取部3の刈幅W2(作業幅に相当)と等しい第1走行経路と、収穫対象幅W1が刈幅W2より狭い第2走行経路とを生成可能である。収穫対象幅W1と刈幅W2は、条数で定めることができる。例えば、6条刈りのコンバイン1であれば、刈幅W2は6条分であり、第1走行経路では収穫対象幅W1は6条分であり、第2走行経路では収穫対象幅W1は5条分以下である。
【0023】
通常、経路生成部101は、第1走行経路として走行経路P1~Pn-1を生成し、第2走行経路として走行経路Pn(本実施形態ではP19)を生成する。しかし、走行経路P1~P19のうち、仮に
図5に示すように最終の走行経路P19において刈り取る穀稈C(未刈穀稈)が1条、すなわち収穫対象幅W1が1条分の場合、6条刈りのコンバイン1で1条分の穀稈Cを刈り取ろうとすると、穀稈Cの姿勢が安定せず、刈残しが発生しやすく、また、左右で2条と3条分の排藁を取り込むことになってしまう。
【0024】
そのため、経路生成部101は、第2走行経路として、刈幅W2に対する収穫対象幅W1が所定割合未満の走行経路を生成しないように構成されている。例えば、6条刈りのコンバイン1の場合、第2走行経路として、収穫対象幅W1が3条分未満の走行経路を生成しない。すなわち、6条刈りのコンバイン1の場合、第2走行経路では、収穫対象幅W1が3~5条分となる。
【0025】
好ましくは、4条刈り以下のコンバイン1の場合、第2走行経路として、収穫対象幅W1が2条分未満の走行経路を生成しない。また、好ましくは、5条刈り以上のコンバイン1の場合、第2走行経路として、収穫対象幅W1が3条分未満の走行経路を生成しない。
【0026】
本実施形態では、経路生成部101は、走行経路P19に加え、隣接する走行経路P17も第2走行経路として生成する。具体的には、
図6に示すように、経路生成部101は、最終の走行経路P19で収穫対象幅W1が3条分、隣接する走行経路P17で収穫対象幅W1が4条分となるように走行経路P19及び走行経路P17を生成する。
【0027】
刈り取る条数を多くすることで刈残しの発生と排藁の取り込みを抑制することができる。排藁の取り込みを抑制できる理由としては、排藁はコンバイン1の全幅に亘って拡散するが、機体中心で機体両端よりも多い傾向にあり、隣り合う走行経路Pkの刈幅W2の端部同士が重複する部分では排藁の取り込みが少ないためである。
【0028】
以上のように本実施形態の経路生成システムは、作物を収穫可能な刈取部3を有するコンバイン1を自動走行させる走行経路Pkを生成する経路生成部101を備える経路生成システム100であって、
経路生成部101は、走行経路Pkとして、収穫対象幅W1が刈取部3の刈取幅W2と等しい第1走行経路と、収穫対象幅W1が刈取幅W2より狭い第2走行経路とを生成可能であり、
経路生成部101は、第2走行経路として、刈取幅W2に対する収穫対象幅W1が所定割合未満の走行経路Pkを生成しない。
【0029】
かかる構成によれば、収穫対象幅W1が極めて狭い(所定割合未満の)走行経路を生成しないため、刈残しの発生や排藁の取り込みを抑制でき、最後まで適切に収穫作業を行うことが可能な走行経路を生成することができる。
【0030】
経路生成部101は、圃場Fの形状情報と、刈幅W2と、移植機の条間設定情報とに基づいて、走行経路Pkを生成するようにしてもよい。移植機の条間としては、例えば30cm又は33cmである。経路生成部101が、圃場Fの形状情報と刈幅W2に加え、移植機(田植機)の条間設定情報とに基づいて、走行経路Pkを生成することで、収穫対象幅W1が極めて狭い(所定割合未満の)第2走行経路を含まない走行経路を適切に生成できる。
【0031】
例えば、圃場Fを幅24m×奥行き24mの矩形状とし、移植機の条間を30cmとすると、幅方向の条数は80となる。この圃場Fを6条刈りのコンバイン1で刈取作業を行うとき、80/6=13あまり2のため、12本分の走行経路として6条刈りの第1走行経路を生成し、残りの2本の走行経路としてそれぞれ3条刈り、5条刈りの第2走行経路を生成する。なお、残りの2本の走行経路としてそれぞれ4条刈り、4条刈りの第2走行経路を生成してもよい。
【0032】
また、制御装置40は、コンバイン1が第2走行経路を自動走行する際に、刈取部3の左右方向の姿勢を傾斜させるようにしてもよい。例えば、
図6において、コンバイン1が走行経路P17を自動走行する際に、刈取部3の左側が低く、右側が高くなるように傾斜させることで、右側の排藁の取り込みを効果的に抑制できる。コンバイン1が左方向に旋回しながら刈取作業を行う場合、刈取部3の左側を低くし、右方向に旋回しながら刈取作業を行う場合、刈取部3の右側を低くする。
【0033】
また、前述の実施形態では、経路生成部101は、走行経路P1~P4を生成し、圃場Fの形状を取得した後、走行経路P1~P4の内側に外周側から中心へ向かって渦巻き状に走行経路P5~Pnを生成する例を示したが、これに限定されない。
図7に示すように、経路生成部101は、走行経路P1~P4を生成した後、走行経路P1~P4の内側に往復するように走行経路P5′~Pnを生成してもよい。
【0034】
前述の実施形態では、タブレット103に経路生成システム100の機能を持たせたが、コンバイン1の制御装置40に経路生成システム200の機能を持たせても良い。また、経路生成システム100を外部サーバ等に実装してもよい。
【0035】
本実施形態では自脱型コンバインの例を示したが、これに限られず、本発明は普通型コンバインであってもよい。その場合、刈取部3の刈幅W2は左右の分草具の間隔に相当し、第2走行経路として生成しないのは例えば収穫対象幅W1が刈幅W2の1/3未満の走行経路である。
【0036】
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 コンバイン
3 刈取部
Pk 走行経路
W1 収穫対象幅
W2 刈取幅
40 制御装置
100 経路生成システム
101 経路生成部