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特開2023-144018クロロトキシン領域を含むキメラ抗原受容体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144018
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】クロロトキシン領域を含むキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230928BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230928BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230928BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P35/00
C07K19/00 ZNA
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023129665
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2022007016の分割
【原出願日】2016-10-13
(31)【優先権主張番号】62/241,021
(32)【優先日】2015-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】598004424
【氏名又は名称】シティ・オブ・ホープ
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】バリッシュ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クリスティーン イー.
(72)【発明者】
【氏名】フォーマン スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ドンルイ
(57)【要約】
【課題】キメラ膜貫通免疫受容体(CAR)に関する。
【解決手段】ヒト神経膠腫又は他のヒト腫瘍細胞に結合する、クロロトキシン若しくは関連毒素又はクロロトキシンのバリアント若しくは関連毒素を含む細胞外領域、膜貫通領域、共刺激領域、並びに細胞内シグナリング領域を含む、キメラ膜貫通免疫受容体(CAR)に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号26~40のいずれか1つのアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を発現するT細胞を含む組成物を患者に投与することを含む、膠芽腫に罹患している患者を治療するための方法。
【請求項2】
T細胞が、配列番号26~40のいずれか1つのアミノ酸配列からなるキメラ抗原受容体を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
T細胞が、配列番号26、27、28、36、37及び38のいずれか1つのアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
T細胞が、配列番号26、27、28、36、37及び38のいずれか1つのアミノ酸配列からなるキメラ抗原受容体を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
キメラ抗原受容体が配列番号26のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
T細胞の少なくとも50%が、セントラルメモリーT細胞、ナイーブT細胞又は幹セントラルメモリー細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
T細胞の少なくとも60%が、セントラルメモリーT細胞、ナイーブT細胞又は幹セントラルメモリー細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
T細胞の少なくとも70%が、セントラルメモリーT細胞、ナイーブT細胞又は幹セントラルメモリー細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
T細胞の少なくとも80%が、セントラルメモリーT細胞、ナイーブT細胞又は幹セントラルメモリー細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
T細胞の少なくとも50%が、セントラルメモリーT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
T細胞の少なくとも60%が、セントラルメモリーT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
T細胞の少なくとも70%が、セントラルメモリーT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
T細胞の少なくとも80%が、セントラルメモリーT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
キメラ抗原受容体が配列番号26のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
キメラ抗原受容体が配列番号26のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
組換えT細胞を用いる治療を含む、腫瘍特異的T細胞に基づく免疫療法は、抗腫瘍治療のために研究されてきた。キメラ抗原受容体(CARs)は、細胞外腫瘍認識/標的化領域、細胞外リンカー/スペーサー、膜貫通領域、並びに細胞内T細胞活性化及び共刺激シグナル伝達領域で構成される。認識/標的化領域の設計は、有害な標的外効果(off-target effects)を回避するのに極めて重要である。CAR腫瘍標的化領域の大部分は、特定の抗原に結合する抗体の特異性を活用する、抗体配列に由来する一本鎖可変断片(scFvs)である。IL‐13受容体、IL13Rα2を発現する細胞を標的とするIL-13サイトカインCAR等の、通常の受容体リガンドに由来するCAR腫瘍標的化領域の例も存在する。いくつかの注目に値する成功に関わらず、新規なCAR腫瘍標的化領域の同定及び検証は、未だに本分野における主要な課題である。
【0002】
悪性神経膠腫(MG)は、未分化星状細胞腫(AA‐WHOグレードIII)及び神経膠芽腫(GBM‐WHOグレードIV)を含み、米国において毎年約20,000新規症例が診断されている。米国脳腫瘍学会(American Brain Tumor Association)によれば、米国の2010年の国勢調査データに基づく、悪性脳腫瘍に罹患する個人の総有病者数は概ね140,000人である。MGは希少疾患であり、その悪性挙動及び概ね致死性の高度に攻撃的かつ異質である。現在の高グレード(高悪性度)のMG用の標準治療法がもたらす利益は短期間で、これらの脳腫瘍は事実上治癒しえない。実際に、現代の外科的及び放射線治療技術でも、中枢神経系(CNS)内という部位により既に重度の病的状態がしばしば悪化し、5年生存率はかなり低い。さらに、疾患が再発する患者の大多数の治療の選択肢はほとんどない。したがって、特に初期治療法後に再発/進行した患者のより効果的な治療法が極めて望まれる。
【0003】
CARを発現する組換えT細胞を利用する養子T細胞療法(Adoptive T cell therapy)(ACT)は、CAR T細胞が抗原的に異なる腫瘍集団を特異的に認識するように組換えられ、MGの再発率を低下させる安全かつ有効な方法を提供することができる(非特許文献1~5)。また、T細胞は、脳実質(brain parenchyma)を通って移動して、浸潤性悪性細胞を標的とし、死滅させることができる(非特許文献6~9)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Cartellieri et al.2010 J Biomed Biotechnol 2010:956304
【非特許文献2】Ahmed et al.2010 Clin Cancer Res 16:474
【非特許文献3】Sampson et al.2014 Clin Cancer Res 20:972
【非特許文献4】Brown et al.2013 Clin Cancer Res 2012 18:2199
【非特許文献5】Chow et al.2013 Mo/ Ther 21 :629
【非特許文献6】Hong et al.2010 Clin Cancer Res 16:4892
【非特許文献7】Brown et al.2007 J Immunol 179:3332
【非特許文献8】Hong et al.2010 Clin Cancer Res 16:4892
【非特許文献9】Yaghoubi 2009 Nat Clin Pract Oncol 6:53
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、細胞外領域、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達領域を含む、キメラ膜貫通免疫受容体(キメラ抗原受容体又はCAR)が記載される。細胞外領域は、クロロトキシン(サソリ(Leiurus quinquestriatus)の毒液中に見出される36アミノ酸ペプチド毒素)、若しくは関連毒素、又はクロロトキシン若しくは関連する毒素の変異体、並びに、場合によっては、例えば、ヒトFc領域の一部分を含む、スペーサー、を含む。膜貫通部分は、例えば、CD4膜貫通領域、CD8膜貫通領域、CD28膜貫通領域、又はCD3膜貫通領域を含む。細胞内シグナル伝達領域は、ヒトCD3複合体のゼータ鎖(CD3ζ)からのシグナル伝達領域、及び一つ又はそれ以上の共刺激領域(costimulatory domain)、例えば4‐1BB共刺激領域、を含む。細胞外領域がT細胞の表面上に発現されると、CARが、T細胞活性を、クロロトキシンの受容体を発現する当該細胞に指向させうる。当該細胞としては、神経膠芽腫細胞があげられる。細胞内領域内にCD3ζと直列に、4‐1BB(CD137)共刺激領域等の共刺激領域を含むことにより、T細胞が共刺激シグナルを受容しうる。T細胞、例えば患者特異的な自己T細胞は、本明細書において記載されるCARsを発現するように組換えられてよく、組換え細胞は、ACTで増殖され、用いられてよい。アルファベータ(αβ)T細胞及びガンマデルタ(γδ)T細胞をともに含む、様々なT細胞サブセットが用いられうる。さらに、CARは、NK細胞等の他の免疫細胞においても発現されることができる。患者が本明細書に記載のCARを発現する免疫細胞を用いて治療される場合、その細胞は、自己(autologous)のT細胞又は同種(allogenic)のT細胞であってよい。いくつかの場合、用いられる細胞は、CD62L+、CCR7+、CD45RO+及びCD45RA-である、CD4+及びCD8+の両方のセントラルメモリーT細胞(TCM)を含むセル集団であり、または、用いられる細胞は、CD4+及びCD8+のTCM細胞、ステムセントラルメモリーT細胞及びナイーブT細胞を含むセル集団(すなわち、TCM/SCM/N細胞の集団)である。TCM/SCM/N細胞の集団は、CD62L+、CCR7+であり、CD45RA+細胞及びCD45RO+細胞の両方、並びに、CD4+細胞及びCD8+細胞をともに含む。そのような細胞を用いると、他の種類の患者特異的T細胞を用いるのと比較して、養子移植後の細胞の長期の持続性を改善することができる。
【0006】
本明細書で記載されるのは、CARをコードする核酸分子であって:クロロトキシン(MCMPCFTTDHQMAKRCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR;配列番号1)、又は、システイン残基は修飾されない条件で1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;膜貫通領域であり:CD4膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD8膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD28膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、及びCD3ζ膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、から選択される、膜貫通領域;共刺激領域(例えば、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体及び4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体の両方;並びに、CD3ζシグナル伝達領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、を含む、核酸分子である。
【0007】
ある実施形態では、CARは、クロロトキシンの代わりに、クロロトキシンに関連する毒素を含む。したがって、CARは、GaTx2、サソリ(Leiurus quinquestriatus hebraeus)由来の毒素(VSCEDCPDHCSTQKARAKCDNDKCVCEPI;配列番号56)、又は、システイン残基は修飾されない条件で1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;膜貫通領域であり:CD4膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD8膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD28膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、及びCD3ζ膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、から選択される、膜貫通領域;共刺激領域(例えば、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体及び4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体の両方;並びに、CD3ζシグナル伝達領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、を含んでもよい。
【0008】
ある実施形態では、CARは、一つより多くのクロロトキシン配列(例えば、連続的であるか又は1‐10個のアミノ酸によって分離されているかのいずれかの、二つ若しくは三つ又はそれ以上の配列番号1のコピー)、又は一つより多くのクロロトキシンに関連する毒素を含んでもよい。したがって、CARは、二つ又はそれ以上のクロロトキシン配列(例えば、配列番号1、続いて配列番号1、続いてその分子の残り)を含んでもよく、或いは、CARは、クロロトキシン配列に続いてクロロトキシンに関連する毒素の配列(例えば、配列番号57又は図25に示される他の毒素)を含んでもよい。
【0009】
CARは、GaTx1、サソリ(Leiurus quinquestriatus hebraeus)由来の毒素(CGPCFTTDHQMEQKCAECCGGIGKCYGPQCLCNR;配列番号57)、又は、システイン残基は修飾されない条件で1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;膜貫通領域であり:CD4膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD8膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD28膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、及びCD3ζ膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、から選択される、膜貫通領域;共刺激領域(例えば、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体及び4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体の両方;並びに、CD3ζシグナル伝達領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、を含んでもよい。
【0010】
CARは、AaCtx、サソリ(Androctonus australis)由来の毒素(MCIPCFTTNPNMAAKCNACCGSRRGSCRGPQCIC;配列番号58)、又は、システイン残基は修飾されない条件で1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;膜貫通領域であり:CD4膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD8膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD28膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、及びCD3ζ膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、から選択される、膜貫通領域;共刺激領域(例えば、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体及び4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体の両方;並びに、CD3ζシグナル伝達領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、を含んでもよい。
【0011】
CARは、BmKCT、サソリ(Buthus martensii)由来の毒素(CGPCFTTDANMARKCRECCGGIGKCFGPQCLCNRI;配列番号59)、又は、システイン残基は修飾されない条件で1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;膜貫通領域であり:表2に示される膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD4膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD8膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD28膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、及びCD3ζ膜貫通領域又は1‐10個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、から選択される、膜貫通領域;共刺激領域(例えば、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸修飾(例えば、置換)を有するその変異体及び4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体の両方;並びに、CD3ζシグナル伝達領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、を含んでもよい。
【0012】
ある実施形態では、CARは、クロロトキシン配列(配列番号1)が配列番号56‐59のうちのいずれか又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体によって置換された、配列番号26‐55のいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0013】
ある実施形態では、共刺激領域は:表3に示される共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、及びOX40共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、から成る群から選択される。特定の実施形態では、4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体が存在する。ある実施形態では、二つの共刺激領域、例えばCD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、並びに4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体がある。ある実施形態では、1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸修飾は、置換である。
【0014】
いくつかの場合、共刺激領域とCD3ゼータシグナル伝達領域との間及び/又は二つの共刺激領域の間には、1‐6個のアミノ酸の短い配列(例えば、GGG)がある。
【0015】
CARの追加的な実施形態は、以下を含む:クロロトキシン受容体(Cltx‐R)のための結合特異性又は免疫原性を高める1‐5個のアミノ酸が修飾されたクロロトキシンの変異体;クロロトキシン変異体は、1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾された配列番号1のアミノ酸配列を含む変異体である;二つの異なる共刺激領域であり:CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、及びOX40共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、から成る群から選択される、二つの異なる共刺激領域;二つの異なる共刺激領域であり:CD28共刺激領域又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、4‐1BB共刺激領域又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、及びOX40共刺激領域又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、から成る群から選択される、二つの異なる共刺激領域;クロロトキシン又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体;膜貫通領域であり:CD4膜貫通領域又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、CD8膜貫通領域又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、CD28膜貫通領域又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、及びCD3ζ膜貫通領域又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、から選択される、膜貫通領域;共刺激領域(例えば、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体及び4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体の両方;並びに、CD3ζシグナル伝達領域又は1‐2個のアミノ酸が修飾されたその変異体;クロロトキシン又はその変異体と膜貫通領域との間に位置するスペーサー領域(例えば、配列番号2‐12(表3)又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾されたそれらの変異体から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、スペーサー領域);スペーサーは、IgGヒンジ領域を含む;スペーサー領域は、1‐150個のアミノ酸を含む;スペーサーがない;4‐1BBシグナル伝達領域は、配列番号24のアミノ酸配列を含み、CD3ζシグナル伝達領域は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、3個から15個のアミノ酸のリンカーが、共刺激領域とCD3ζシグナル伝達領域又はそれらの変異体との間に位置する。二つの共刺激領域がある特性の実施形態では、一方は4‐1BB共刺激領域であり、他方は:CD28及びCD28ggから選択される共刺激領域である。ある実施形態では、1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸修飾は、置換である。
【0016】
ある実施形態では、核酸分子は、配列番号26‐55から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する;キメラ抗原受容体は、配列番号26‐55から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
また、キメラ抗原受容体をコードする発現カセットを含むベクターによって導入された(transduced)ヒトT細胞の集団も開示され、キメラ抗原受容体は:クロロトキシン又は1‐5個のアミノ酸が修飾(例えば、1個又は2個)されたその変異体、クロロトキシンに関連する毒素又は1‐5個のアミノ酸が修飾(例えば、1個又は2個)されたその変異体のいずれか;膜貫通領域であり:CD4膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD8膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、CD28膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、及びCD3ζ膜貫通領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、から選択される、膜貫通領域;共刺激領域(例えば、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体;又は、CD28共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体及び4‐1BB共刺激領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体の両方;並びに、CD3ζシグナル伝達領域又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体、を含んでもよい。ある実施形態では、ヒトT細胞の集団は、配列番号26‐55又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体から選択されるアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を発現するベクターを含む;ヒトT細胞の集団は、セントラルメモリーT細胞(TCM)を含み、例えば、細胞のうちの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%がTCM細胞であり、或いは、ヒトT細胞の集団は、セントラルメモリーT細胞、ナイーブT細胞及びステムセントラルメモリーT細胞の組み合わせ(TCM/SCM/N細胞)を含み、例えば、細胞のうちの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%がTCM/SCM/N細胞である。いずれの場合も、T細胞の集団は、CD4+細胞及びCD8+細胞をともに含む(例えば、CD3+T細胞のうちの少なくとも20%がCD4+であり、CD3+T細胞のうちの少なくとも3%がCD8+であり、少なくとも70%、80%又は90%がCD4+又はCD8+のいずれかであり;CD3+細胞である細胞のうちの少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%がCD4+であり、CD3+細胞のうちの少なくとも4%、5%、8%、10%、20がCD8+細胞である)。
【0018】
また、患者のがんを治療する方法であって、キメラ抗原受容体をコードする発現カセットを含むベクターによって導入された自己又は同種のヒトT細胞の集団(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)又はセントラルメモリーT細胞、ナイーブT細胞及びステムセントラルメモリーT細胞の組み合わせ(すなわち、T細胞はTCM/SCM/N細胞である)を含み、細胞のうちの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%がTCM/SCM/N細胞である、自己又は同種のT細胞)を、投与する工程(administering)、を含む方法も記載される。いずれの場合も、T細胞の集団は、CD4+細胞及びCD8+細胞をともに含み(例えば、CD3+T細胞のうちの少なくとも20%がCD4+であり、CD3+T細胞のうちの少なくとも3%がCD8+であり、少なくとも70%、80%又は90%がCD4+又はCD8+のいずれかであり;CD3+細胞である細胞のうちの少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%がCD4+であり、CD3+細胞のうちの少なくとも4%、5%、8%、10%、20がCD8+細胞である)、キメラ抗原受容体をコードする発現カセットを含むベクターによって導入され、キメラ抗原受容体は、配列番号26‐55又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体から選択されるアミノ酸配列を含む。ある実施形態では:がんは、神経膠芽腫(glioblastoma)であり;導入されたヒトT細胞は、患者からT細胞を採取する工程、セントラルメモリーT細胞を単離するためにT細胞を処理する工程、及びキメラ抗原受容体をコードする発現カセットを含むウイルスベクターを用いて、セントラルメモリーT細胞の少なくとも一部分に導入する工程であり、キメラ抗原受容体は、配列番号26‐55又は1‐5個(例えば、1個又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されたその変異体から選択されるアミノ酸配列を含む、工程、を含む方法によって調製された。
【0019】
また:配列番号26‐55から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%一致するアミノ酸配列を含む、ポリペプチドをコードする、核酸分子;5個以下のアミノ酸の置換、削除又は挿入の存在を除いて配列番号26‐55から選択されるアミノ酸配列と一致するアミノ酸配列を含む、ポリペプチドをコードする、核酸分子;5個以下のアミノ酸の置換の存在を除いて配列番号26‐55から選択されるアミノ酸配列と一致するアミノ酸配列を含む、ポリペプチドをコードする、核酸分子;並びに、2個以下のアミノ酸の置換の存在を除いて配列番号26‐55から選択されるアミノ酸配列と一致するアミノ酸配列を含む、ポリペプチドをコードする、核酸分子、も記載される。
【0020】
クロロトキシン又はその変異体を含むCARを発現するT細胞は、神経膠芽腫、及びクロロトキシンのための受容体を発現する他のがん等の、がんの治療において有用であり得る。そのようながんは:原発性脳腫瘍及び神経膠腫(多形神経膠芽腫 WHOグレードIV、未分化星状細胞腫 WHOグレードIII、低悪性度(低グレード)星状細胞腫 WHOグレードII、毛様細胞性星状細胞腫 WHOグレードI、他の等級を付けられていない神経膠腫、乏突起神経膠腫、膠肉腫、神経節膠腫、髄膜腫、上衣腫)、神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫、神経芽腫、神経節腫、黒色腫(転移性)、黒色腫(原発性)、褐色細胞腫、ユーイング肉腫、原発性神経外胚葉性腫瘍、小細胞肺がん、シュワン細胞腫)、他の脳腫瘍(類表皮嚢胞(類表皮腫)、未知の病理の脳腫瘍、脳下垂体の神経膠芽腫(pt.))未知の組織期限の脳への転移腫瘍)、並びに他のがん(乳がん、乳がん転移、腎臓がん、肝臓がん肺がん、リンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん)を含むが、これらに限定されない。
【0021】
本開示はまた、本明細書に記載のCARsのいずれかをコードする核酸分子(例えば、CARsのうちの一つをコードする核酸配列を含むベクター)及び本明細書に記載のCARsのいずれかを発現する単離されたTリンパ球を含む。
【0022】
本明細書に記載のCARは、クロロトキシン領域(すなわち、クロロトキシン又はその変異体)と膜貫通領域との間に位置するスペーサー領域を含んでもよい。様々な異なるスペーサーが用いられてよい。それらのいくつかは、ヒトFc領域の少なくとも一部分、例えばヒトFc領域のヒンジ部分若しくはCH3領域又はその変異体を含む。以下の表1は、本明細書に記載のCARsにおいて用いられうる様々なスペーサーを提供する。
表1:スペーサーの例
【表1】
【0023】
いくつかのスペーサー領域は、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)ヒンジ領域、すなわち、免疫グロブリンCH1領域とCH2領域との間に入る配列、例えばIgG4 Fcヒンジ又はCD8ヒンジの全て又は部分を含む。いくつかのスペーサー領域は、免疫グロブリンCH3領域又はCH3領域とCH2領域をともに含む。免疫グロブリンに由来する配列は、一つ又はそれ以上のアミノ酸修飾、例えば1、2、3、4又は5個の置換、例えば標的外結合(off-target binding)を低減する置換、を含んでもよい。
【0024】
「アミノ酸修飾」は、タンパク質若しくはペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入及び/又は削除をいう。「アミノ酸置換」若しくは「置換」は、元のペプチド若しくはタンパク質配列における特定の位置のアミノ酸の、他のアミノ酸による交換をいう。置換は、非保存的な方法で(すなわち、特定のサイズ又は特徴を有するアミノ酸の分類に属するアミノ酸から、他の分類に属するアミノ酸へコドンを変化させることによって)、或いは、保存的な方法で(すなわち、特定のサイズ又は特徴を有するアミノ酸の分類に属するアミノ酸から、同じ分類に属するアミノ酸へコドンを変化させることによって)、結果として生じるタンパク質中のアミノ酸を変化させるように行われてもよい。そのような保存的な変化は、概して、結果として生じるタンパク質の構造及び機能のより小さな変化につながる。以下はアミノ酸の種々の分類の例である:1)無極性R基を有するアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン;2)非荷電極性R基を有するアミノ酸:グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン;3)荷電極性R基を有するアミノ酸(pH6.0で負に帯電):アスパラギン酸、グルタミン酸;4)塩基性アミノ酸(pH6.0で正に帯電):リシン、アルギニン、ヒスチジン(pH6.0)。別の分類は、フェニル基を有するアミノ酸:フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンであり得る。
【0025】
特定の実施形態では、スペーサーは、修飾されていないスペーサーに存在するものと異なるアミノ酸残基によって置換された一つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含むIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来する。一つ又はそれ以上の置換されたアミノ酸残基は、位置220、226、228、229、230、233、234、235、234、237、238、239、243、247、267、268、280、290、292、297、298、299、300、305、309、218、326、330、331、332、333、334、336、339又はそれらの組み合わせの、一つ又はそれ以上のアミノ酸残基から選択されるが、これらに限定されない。以下で更に詳細に記載されるこの番号付け体系において、表1のIgGヒンジ配列及びIgG4ヒンジリンカー(HL)配列の最初のアミノ酸が219であるように、表1のIgG4(L235E、N297Q)スペーサーの最初のアミノ酸は219であり、表1のIgG4(HL‐CH3)スペーサーの最初のアミノ酸は219である。
【0026】
ある実施形態では、修飾されたスペーサーは、以下のアミノ酸残基置換の一つ又はそれ以上を含むがこれらに限定されない、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来する:C220S、C226S、S228P、C229S、P230S、E233P、V234A、L234V、L234F、L234A、L235A、L235E、G236A、G237A、P238S、S239D、F243L、P247I、S267E、H268Q、S280H、K290S、K290E、K290N、R292P、N297A、N297Q、S298A、S298G、S298D、S298V、T299A、Y300L、V305I、V309L、E318A、K326A、K326W、K326E、L328F、A330L、A330S、A331S、P331S、I332E、E333A、E333S、E333S、K334A、A339D、A339Q、P396L又はそれらの組み合わせ。
【0027】
特定の実施形態では、修飾されたスペーサーは、修飾されていないスペーサーに存在するものと異なるアミノ酸残基によって置換された一つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含むIgG4領域に由来する。一つ又はそれ以上の置換されたアミノ酸残基は、位置220、226、228、229、230、233、234、235、234、237、238、239、243、247、267、268、280、290、292、297、298、299、300、305、309、218、326、330、331、332、333、334、336、339又はそれらの組み合わせの、一つ又はそれ以上のアミノ酸残基から選択されるが、これらに限定されない。
【0028】
ある実施形態では、修飾されたスペーサーは、以下のアミノ酸残基置換の一つ又はそれ以上を含むがこれらに限定されない、IgG4領域に由来する:220S、226S、228P、229S、230S、233P、234A、234V、234F、234A、235A、235E、236A、237A、238S、239D、243L、247I、267E、268Q、280H、290S、290E、290N、292P、297A、297Q、298A、298G、298D、298V、299A、300L、305I、309L、318A、326A、326W、326E、328F、330L、330S、331S、331S、332E、333A、333S、333S、334A、339D、339Q、396L又はそれらの組み合わせ。ここで、修飾されていないスペーサーにおけるアミノ酸は、示された位置において上記の同定されたアミノ酸によって置換される。
【0029】
本明細書において論じられる免疫グロブリン中のアミノ酸位置について、番号付けは、EUインデックス又はEU番号付け体系(Kabatら、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版、米国公衆衛生局、国立保健研究機構、ベスセダ、参照により全体が本明細書に組み込まれる)に従う。EUインデックス若しくはKabatにおけるようなEUインデックス又はEU番号付け体系は、EU抗体の番号付け(Edelmanら、1969 Proc Natl Acad Sci USA 63: 78-85)を参照する。
【0030】
様々な膜貫通領域が用いられてよい。表2は、適当な膜貫通領域の例を含む。スペーサー領域が存在する場合には、膜貫通領域は、スペーサー領域に対してカルボキシ末端に位置する。
表2:膜貫通領域の例
【表2】
【0031】
本明細書に記載のCARの多くは、一つ又はそれ以上の(例えば、二つの)共刺激領域を含む。(複数の)共刺激領域は、膜貫通領域とCD3ζシグナル伝達領域との間に位置する。表3は、CD3ζシグナル伝達領域と共に、適当な共刺激領域の例を含む。
表3:CD3ζ領域及び共刺激領域の例
【表3】
【0032】
本明細書に記載のクロロトキシンを含むCARの中には、表4に要約されるものがあり、その中で、各CARについてのスペーサー領域、膜貫通領域及び(複数の)共刺激領域が示されている。
表4:クロロトキシンを含むCARの例
【表4】
*シグナル配列を含む配列についての配列番号/シグナル配列を除く配列についての配列番号
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】CLTX‐CAR発現T細胞の生成を示す図である。(A)クロロトキシン(CLTX)‐リダイレクト(redirected)キメラ抗原受容体(CAR)カセットをコードするレンチウイルス構築物の概要であり、CLTX‐CAR、並びにT2Aリボソームスキップ及び切断型CD19(CD19t)配列の転写がEF1プロモーター(EF1p)によって駆動される。(B)CLTX‐CARの図であり、細胞外36アミノ酸クロロトキシンペプチド及びIgG4Fc(EQ)スペーサー領域、CD28膜貫通領域、及び細胞内CD28及びCD3ζ細胞質シグナル伝達領域配列を含む。(C)CLTX‐CARを発現するように組換えられた健常ドナーT細胞(HD187.2 TCM/SCM/N)のフローサイトメトリー分析。示されているのは、CD8+及びCD4+(CD8-)T細胞サブセットの両方におけるCLTX‐CAR及びCD19t導入遺伝子の同時発現を表す、抗CD19抗Fc及び抗CD8染色である。CD3/CD28ビーズ刺激の18日後の導入された細胞(CLTX‐CAR)及び導入されていない細胞(モック)についての免疫反応性細胞の割合(Percentages)が示されて、ヒトT細胞をCLTX-CAR用いて形質導入する能力を実証している。
【0034】
図2】CLTX-CAR T細胞は、神経膠芽腫細胞株U251Tを特異的に認識することを示す図である。(A‐F)CLTXは、GBM細胞に結合し、非GBM細胞への最小の結合を示す。示されているのは、A、健常ドナー由来のヒト末梢血単核球(PBMC);B、ヒトEBV転換リンパ芽球細胞株、LCL;C、大型T抗原転換ヒト胎性腎臓細胞株293T;D、健常ドナー由来の誘導多能性幹細胞(iPSCs)から分化したヒト星状細胞;及びE、ヒト神経膠芽腫細胞株U251T、に結合する、クロロトキシン抱合(chlorotoxin-conjugated)Cy5.5(CLTX‐Cy5.5)の評価である。細胞株は、培地(未処置)中、又は1μMのCLTX‐Cy5.5を含む培地中、37℃で1時間にわたって培養され、次いでフローサイトメトリーによって評価された。(F)CLTX-CAR T細胞による、LCL、293T又は原発性のヒト星状細胞ではなく、神経膠腫腫瘍細胞株U251Tの特異的死滅。プロットされているのは、同じ期間にわたってモックT細胞と共培養されたものに対して正規化した後の、エフェクター:標的比=1:1(15,000T細胞、15,000標的細胞)で72時間にわたってCLTX-CAR T細胞と共培養された、生存標的細胞(LCL、293T、星状細胞及びU251T)の数である。**:p<0.01;ns:非特異的であり、スチューデントt検定は、図に示されるように群の間で行われた。
【0035】
図3】複数の低継代(low-passage)でヒト原発性脳腫瘍(PBT)株へのCLTX結合は、IL13Rα2発現から独立していることを示す図である。1μMのCLTX‐Cy5.5を含む培地中で1時間培養され、次いでPE抱合IL13Rα2抗体を用いて染色された、(A)4つのIL13Rα2‐low及び(B)4つのIL13Rα2‐high細胞株のフローサイトメトリー分析。
【0036】
図4】低継代PBTヒト神経膠芽腫細胞株CLTX‐CAR T細胞認識及び死滅は、IL13Rα2発現から独立していることを示す図である。(A)CLTX‐CAR T細胞は、原発性GBM株対胎性腎臓細胞株293Tのパネルの統計的に有意な死滅を示す。プロットされているのは、同じ期間にわたってモックT細胞と共培養されたものに対して正規化した後の、エフェクター:標的比=1:1(15,000T細胞、15,000標的細胞)で24、48及び72時間にわたってCLTX‐CAR T細胞と共培養された、生存標的細胞の数である。***:p<0.001であり、スチューデントt検定は、PBT細胞生存率と293T細胞との間で行われた。(B)生細胞画像化(live cell imaging)を用いて観察され、モック対照に比較した、CLTX‐CAR T細胞によるPBT003‐4及びPBT009腫瘍細胞の排除(Elimination)。エフェクター:標的比=1:4(4,000T細胞、16,000標的細胞)でモック又はCLTX‐CAR T細胞と共培養されたPBT003‐4及びPBT009細胞の代表的な画像であり、共培養直後(0時間)及び共培養の3日後(72h)に明視野顕微鏡によって撮影された。
【0037】
図5】GBM細胞を用いて刺激した後のCLTX‐CAR T細胞活性化を示す図である。T細胞は、タンパク質輸送阻害剤(protein transport inhibitor)の存在下、エフェクター:標的比=1:1(25,000T細胞、25,000標的細胞)で5時間にわたって標的細胞によって刺激された。脱顆粒を起こしているCAR‐T細胞の割合は、フローサイトメトリーを用いて、(A)CD107a免疫反応性、及び(B)細胞内染色によって決定されるサイトカイン産生によって決定された。**:p<0.01;***:p<0.001、293T細胞刺激されたT細胞と、PBT刺激されたT細胞の各々における脱顆粒/サイトカイン分泌を比較するシダク‐ボンフェローニ補正(Sidak-Bonferroni correction)を用いた一元配置分散分析(one-way ANOVA)。
【0038】
図6】異なるリンカー設計を有するCLTX‐CAR T細胞の抗腫瘍効果を示す図である。(A)IgG4Fc(EQ)、IgG4(HL‐CH3)、CD8h及び短いリンカー(L)を含む、リンカーが異なるCLTX‐CAR構築物の模式図(膜貫通領域は示されていない)。(B)異なるリンカーを有するCLTX‐CAR T細胞は、U251T GBM細胞を死滅させることが可能である。プロットされているのは、同じ期間にわたってモックT細胞と共培養されたものに対して正規化した後の、エフェクター:標的比=1:1(15,000T細胞、15,000標的細胞)で24、48及び72時間にわたって、異なるCLTX‐リダイレクト構築物を宿す(harboring)T細胞と共培養された、生存U251T細胞の数である。(C)異なるリンカーを有するCLTX‐CAR T細胞は、抗原攻撃(challenge)に続いて、異なるサイトカイン産生レベルを示す。異なるLTX‐リダイレクト構築物を用いて組換えられたT細胞は、エフェクター:標的比=1:1(20,000T細胞、20,000標的細胞)でU251T細胞を用いて刺激された。IFNγ分泌は、上清のELISAアッセイによって検出された。*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001、表示されたCAR T細胞とモックT細胞を比較するシダク‐ボンフェローニ補正を用いた一元配置分散分析。
【0039】
図7】異なる細胞内シグナル伝達領域を有するCLTX‐CAR T細胞の抗腫瘍効果を示す図である。(A)細胞内共刺激領域(CD28及び41BB)が異なるCLTX‐CAR構築物の模式図。(B)異なる共刺激領域を有するCLTX‐CAR T細胞は、U251T GBM細胞を死滅させることが可能である。プロットされているのは、同じ期間にわたってモックT細胞と共培養されたものに対して正規化した後の、エフェクター:標的比=1:1(15,000T細胞、15,000標的細胞)で24、48及び72時間にわたって、異なるCLTX‐リダイレクト構築物を宿すT細胞と共培養された、生存U251T細胞の数である。(C)異なる共刺激領域を有するCLTX‐CAR T細胞は、抗原攻撃に続いて、様々なレベルのサイトカインを産生する。異なるLTX‐リダイレクト構築物を用いて組換えられたT細胞は、エフェクター:標的比=1:1(20,000T細胞、20,000標的細胞)でU251T細胞を用いて刺激された。IFNγ分泌は、上清のELISAアッセイによって検出された。**:p<0.01;***:p<0.001、表示されたCAR T細胞とモックT細胞を比較するシダク‐ボンフェローニ補正を用いた一元配置分散分析。
【0040】
図8】CLTX‐CAR T細胞は、生体内で(in vivo)、確立されたU251T GBM腫瘍の成長を低減することを示す図である。(A)NSGマウスにおけるU251T異種移植の増殖及びT細胞処置を示す図式。皮下に移植されたU251T細胞を有するマウス(第-14日目から第0日目)は、PBS(腫瘍のみ)、モックT細胞、又はCLTX‐CAR T細胞を用いて処置された。(B)腫瘍進行は、CLTX‐CAR T細胞処置によって阻害される。T細胞注入の時から20日間(第0日目から第20日目)にわたって、腫瘍の成長がキャリパー測定によって測定された。***:p<0.001、腫瘍のみ又はモック処置された群と、CLTX‐CAR T細胞処置されたマウスにおける腫瘍体積を比較する、T細胞注入後20日目のデータについて行われたシダク‐ボンフェローニ補正を用いた一元配置分散分析
【0041】
図9】CLTX‐IgG4(L235E、N297Q)‐CD28tm‐CD28‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号26)図である。
【0042】
図10】CLTX‐IgG4(HL‐CH3)‐CD28tm‐CD28gg‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号27)図である。
【0043】
図11】CLTX‐CD8h‐CD28tm‐CD28gg‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号28)図である。
【0044】
図12】CLTX‐IgG4(hinge)‐CD28tm‐CD28gg‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号29)図である。
【0045】
図13】CLTX‐L‐‐CD28tm‐CD28gg‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号30)図である。
【0046】
図14】CLTX‐IgG4(L235E、N297Q)‐CD28tm‐4gg‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号31)図である。
【0047】
図15】CLTX‐IgG4(HL‐CH3)‐CD28tm‐CD28gg‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号32)図である。
【0048】
図16】CLTX‐CD8h‐CD28tm‐CD28gg‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号33)図である。
【0049】
図17】CLTX‐IgG4(hinge)‐CD28tm‐CD28gg‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号34)図である。
【0050】
図18】CLTX‐L‐CD28tm‐CD28gg‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号35)図である。
【0051】
図19】CLTX‐IgG4(L235E、N297Q)‐CD4tm‐CD28tm‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号36)図である。
【0052】
図20】CLTX‐IgG4(HL‐CH3)‐CD4tm‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号37)図である。
【0053】
図21】CLTX‐CD8h‐CD28tm‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号38)図である。
【0054】
図22】CLTX‐IgG4(hinge)‐CD28tm‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号39)図である。
【0055】
図23】CLTX‐L‐CD28tm‐4‐1BB‐zetaのアミノ酸配列を示す(配列番号40)図である。
【0056】
図24】T2A(リボソームスキップ配列及び切断型CD19;配列番号60)を備えた図21のCARを示す図である。切断型CD19は、CARと同時発現され、トランスフェクトされた細胞を同定及び定量化するための単純な方法を可能にする。
【0057】
図25】様々なクロロトキシン関連毒素(配列番号1、56~59及び61~73)及びそれらのアミノ酸配列のアライメントを示す(Dardevetら、2015 Toxins (Basel) 7:1079)図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に記載されるのは、クロロトキシン(CLTX)を含む様々なキメラ抗原受容体の構造、構築及び特徴付けである。キメラ抗原受容体(CAR)は、最低限、細胞外認識領域、膜貫通領域、及び細胞内シグナル伝達領域を含む組換え生体分子である。したがって、用語「抗原」は、抗体に結合する分子に限定されず、標的に特異的に結合することができるいかなる分子である。例えば、CARは、細胞表面受容体に特異的に結合するリガンドを含んでもよい。細胞外認識領域(細胞外領域又は単にそれが含む認識要素をいう場合もある)は、標的細胞の細胞表面上に存在する分子に特異的に結合する認識要素を含む。膜貫通領域は、膜中にCARをつなぐ。細胞内シグナル伝達領域は、ヒトCD3複合体のゼータ鎖由来のシグナル伝達領域を含み、場合によっては、一つ又はそれ以上の共刺激シグナル伝達領域を含む。CARsは、MHC拘束から独立して、抗原に結合すること及びT細胞活性化を誘導することである。したがって、CARsは、彼ら/彼女らのHLA遺伝子型にかかわらず、抗原陽性腫瘍を有する患者の集団を治療することができる「普遍的な(universal)」免疫受容体である。腫瘍特異的CARを発現するTリンパ球を用いる養子免疫療法は、がんの治療のための強力な治療戦略であり得る。
【0059】
本明細書に記載のクロロトキシンを含む一つのCARは、CLTX‐IgG4(EQ)‐CD28gg‐Zeta(ゼータ)という。このCARは、以下を含む様々な重要な特徴を含む:クロロトキシン;CH2領域内の二つの部位においてFc受容体(FcRs)による結合を低減するような方法で変異させられた(L235E; N297Q)、IgG4 Fc領域;領域、CD28共刺激領域、及びCD3ζ活性化領域。
【0060】
いくつかの場合、本明細書に記載のCARは、CARオープンリーディングフレームの後にT2Aリボソームスキップ配列、及び細胞質シグナル伝達テールがない(アミノ酸323で切断された)、切断型CD19(CD19t)が続くベクターを用いて産生されてよい。この配置において、CD19tの同時発現は、不活性で非免疫原性の表面マーカーを提供し、それにより、遺伝子修飾細胞を正確に測定でき、遺伝子修飾細胞の正の選択(positive selection)、並びに、養子移植に続いての生体内での効率的な細胞追跡及び/又は治療用T細胞が画像化できる。CD19tの同時発現は、治療用細胞を選択的に除去し、それにより自殺スイッチとして機能するための、臨床的に利用可能な抗体及び/又は免疫毒素試薬を用いる、導入された細胞の生体内における免疫学的標的化用マーカーを提供する。
【0061】
本明細書に記載のCARは、当分野で公知のいかなる手段によって産生されてよいが、好ましくは、それは組換えDNA技術を用いて産生される。キメラ受容体のいくつかの領域をコードする核酸は、便利には、当分野で公知の分子クローニングの標準的な技術(ゲノムライブラリースクリーニング、PCR、プライマー補助ライゲーション、部位特異的突然変異誘発など)によって、調製され、完全なコード配列に組み立てられてよい。結果として生じるコード領域は、好ましくは発現ベクターの中に挿入され、適当な発現宿主細胞株、好ましくはTリンパ球細胞株、最も好ましくは自己Tリンパ球細胞株を変換する(transform)ために用いられる。
【0062】
非選択のPBMC又は濃縮されたCD3 T細胞又は濃縮されたCD3又はメモリーT細胞サブセットを含む、患者から単離された様々なT細胞サブセット又はTCM又はTCM/SCM/Nは、CAR発現用のベクターを用いて導入されることができる。セントラルメモリーT細胞は、一つの有用なT細胞サブセットである。セントラルメモリーT細胞は、所望の受容体を発現する細胞を免疫磁気的に(immunomagnetically)選択するため、例えばCliniMACS(登録商標)装置を用いて、CD45RO+/CD62L+細胞について濃縮することで、末梢血単核球(PBMC)から単離されてよい。セントラルメモリーT細胞について濃縮された細胞は、例えば、CAR、並びに、生体内検出用及び潜在的な生体外(ex vivo)選択用の非免疫原性の表面マーカーである切断型ヒトCD19(CD19t)の発現を指示するSINレンチウイルスベクターを用いて導入された、抗CD3/CD28によって活性化されてよい。活性化/遺伝的に修飾されたセントラルメモリーT細胞は、IL-2/IL-15を用いて生体外(in vitro)で増やされ、次いで凍結保存されてよい。
【実施例0063】
実施例1:CLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zeta CARの構築及び構造
クロロトキシンを含む有用なCARの構造、CLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zetaを、以下に記載する。コドン最適化されたCAR配列は:クロロトキシン、Fc受容体媒介認識を大幅に減少させる変異(S228P、L235E)を含むIgG4 Fcスペーサー、CD28膜貫通領域、共刺激CD28細胞質シグナル伝達領域、及びCD3ζ細胞質シグナル伝達領域を含む。T2Aリボソームスキップ配列は、不活性で非免疫原性の細胞表面検出/選択マーカーであるCD19tから、このCAR配列を分離する。このT2A連鎖(linkage)は、単一の転写産物からのCAR及びCD19tの同調発現(coordinate expression)をもたらす。図1Aは、CLX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zeta‐T2ACD19tの翻訳領域の模式図である。この図において、CLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zeta CAR、並びにT2Aリボソームスキップ及び切断型CD19配列は、全て示されている。CAR及びCD19tカセットの発現は、ヒトEF1プロモーター(EF1p)によって駆動される。図1Bは、発現された、成熟CARを模式的に示す。
【0064】
CLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zeta配列は、ヒトGM‐CSF受容体アルファリーダーペプチドクロロトキシン、S228P/L235E/N297Q修飾IgG4 Fcヒンジ(ここで二重変異L235E/N297QはFcR認識を妨げる)、CD28膜貫通、CD28細胞質シグナル伝達領域、及びCD3ζ細胞質シグナル伝達領域配列の融合によって生成された。この配列は、コドン最適化後に新規合成された。T2A配列は、T2A含有プラスミドの消化から得られた。CD19t配列は、CD19含有プラスミドの膜貫通コンポーネントまで、リーダーペプチド配列にわたるもの(すなわち、塩基対1‐972)から得られた。全3つの断片、1)CLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zeta、2)T2A、及び3)CD19tは、epHIV7レンチウイルスベクターのマルチクローニングサイト中にクローニングされた。適当な細胞の中にトランスフェクトされると、ベクターは宿主細胞ゲノムの中に組み込まれる。CLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zetaのアミノ酸配列は、表示された様々な領域と共に図9に表わされる。
【実施例0065】
実施例2:CLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zetaの発現のために用いられたepHIV7の構築及び構造
pHIV7プラスミドは、臨床用ベクターCLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐zeta‐T2A‐CD19t_epHIV7がシティ・オブ・ホープ(COH)のT細胞治療研究所(TCTRL)で供給された、元のプラスミドである。CARの発現に用いられたepHIV7ベクターは、pHIV7ベクターから産生された。重要なことに、このベクターは、CARの発現の駆動にヒトEF1プロモーターを用いる。ベクターの5’配列及び3’配列はともに、以前にHXBc2プロウイルスから得られたように、pv653RSNから得られた。ポリプリントラクトDNAフラップ配列(cPPT)は、NIH AIDS Reagent RepositoryからのHIV‐1系統pNL4‐3から導き出された。ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)配列は以前に記載されている。
【0066】
pHIV7の構築は、以下のように行われた。簡潔に、介在SL3-ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(Neo)とともにgag-polプラス5’及び3’末端反復配列(LTRs)から653bpを含む、pv653RSNは、以下のようにpBluescriptにサブクローニングされた:工程1において、5’LTRからrev‐応答配列(RRE)までの配列はp5’HIV-151を作製し、次いで5’LTRがTATAボックスの上流の配列を除去して修飾され、最初にCMVエンハンサーに連結された後、SV40複製開始点に連結された(p5’HIV‐2)。工程2では、3’LTRをpBluescriptにクローニングしてp3’HIV-1を作製した後、3’LTRエンハンサー/プロモーターで400bpが削除され、HIV U3におけるシス調節エレメントを除去し、p3’HIV‐2を形成した。工程3では、pHIV‐3を作製するため、p5’HIV‐3及びp3’HIV‐2から単離された断片を結合した。工程4では、p3’HIV‐3を生成するため、p3’HIV‐2から余分な上流のHIV配列を除去してさらに修飾され、また、p3’HIV‐4を作製するため、WPREを含む600bpのBamHI‐SalI断片がp3’HIV‐3に加えられた。工程5では、pHIV‐6を作製するため、pHIV‐3RREはPCRでサイズを減少し、pHIV‐3からの5’断片(示さず)及びp3’HIV‐4に連結された。工程6では、pHIV‐7を作製するため、HIV‐1 pNL4‐3(55)由来のcPPT DNAフラップ配列を含む190bpのBglII‐BamHI断片は、pNL4‐3から増幅され、pHIV6のRRE配列とWPRE配列の間に配置された。この元のプラスミドpHIV7‐GFP(GFP、緑色蛍光タンパク質)を、4プラスミド系を用いて元のベクターをパッケージングするために用いた。
【0067】
パッケージングシグナル、psi(Ψ)、は、ベクターへのウイルスゲノムの効率的なパッケージングに必要である。RRE及びWPREは、RNA転写産物の輸送及び導入遺伝子の発現を増強する。フラップ配列は、WPREと組み合わせて、哺乳動物細胞におけるレンチウイルスベクターの導入効率を増強することが実証されている。
【0068】
ヘルパー機能(ウイルスベクターの産生に必要である)は、組換えによる複製コンピテントレンチウイルスの生成の可能性を低減するため、3つの別個のプラスミドに分割した:1)pCgpはウイルスベクターアセンブリのために要求されるgag/polタンパク質をコードする;2)pCMV‐Rev2は、効率的なパッケージングのためのウイルスゲノムの輸送を助けるためにRRE配列に作用する、Revタンパク質をコードする;3)pCMV‐Gは、ウイルスベクターの感染性に必要な、水疱性口内炎(vesiculo-stomatitis)ウイルス(VSV)の糖タンパク質をコードする。
【0069】
pHIV7にコードされたベクターゲノムとヘルパープラスミドとの間に最小限のDNA配列相同性が存在する。相同性の領域は、pCgpヘルパープラスミドのgag/pol配列中に位置する、約600ヌクレオチドのパッケージングシグナル領域;全3種のヘルパープラスミド中のCMVプロモーター配列;及び、ヘルパープラスミドpCgp中のRRE配列を含む。複数の組換えが必要なため、当該領域の相同性のために複製コンピテント組換えウイルスが生成される可能性は極めて低い。加えて、如何なる結果として生じる組換え体も、レンチウイルス複製に必要な機能的LTR及びtat配列がないであろう。
【0070】
CMVプロモーターがEF1α‐HTLVプロモーター(EF1p)で置換され、新しいプラスミドをepHIV7とした。EF1pは、563bpを有し、CMVプロモーターが切除された後に、NruI及びNheIを用いてepHIV7に導入された。
【0071】
野生型ウイルスの病原性に必要であり、標的細胞の増殖性感染に必要なgag/pol及びrevを除くレンチウイルスゲノムは、この系から除かれた。さらに、CLTX‐IgG4Fc(EQ)‐CD28‐ゼータ‐T2ACD19t_epHIV7ベクター構築物は完全な3’LTRプロモーターを含まず、そのため、標的細胞における、結果として生じる発現及び逆転写されるDNAプロウイルスゲノムのLTRsは不活性であろう。この設計の結果、すべてのHIV‐1由来の配列はプロウイルスから転写されず、治療用の配列のみが各プロモーターから発現されるであろう。SINベクターにおけるLTRプロモーター活性の除去は、宿主遺伝子の意図しない活性化の可能性を有意に減少させると予想される。
【実施例0072】
実施例3:患者T細胞の導入のためのベクターの産生
患者T細胞の導入のためのベクターは、以下のように調製されてよい。各プラスミド(すなわち、1)CAR、及び場合によっては切断型CD19等のマーカー;2)pCgp;3)pCMV‐G;及び4)pCMV‐Rev2を発現するプラスミド)について、十分な量のプラスミドDNAを産生するために発酵槽に接種する(inoculate)ために用いられる、シードバンクが生成された。プラスミドDNAは、レンチウイルスベクターの産生で用いる前に、同一性、無菌性及びエンドトキシンについて試験された。
【0073】
簡潔に、細胞は、無菌性及びウイルス汚染が存在しないこと確認するために試験された293T作業細胞(WCB)から増殖される。293T WCB由来の293T細胞のバイアルを解凍する。ベクター産生及び細胞トレイン維持のために適当数の10層細胞ファクトリー(CFs)を播種するために十分な細胞数となるまで、細胞は生育及び増殖される。単一の細胞のトレインを産生に用いてよい。
【0074】
レンチウイルスベクターは、10CFsまでのサブバッチで産生される。同じ週に2つのサブバッチが産生されてよく、約20Lのレンチウイルス上清/週の産生につながる。一つのロットの産物を産生するため、全てのサブバッチから生成された物質は、下流の処理段階の間プールされる。293T細胞は、293T培地(10%FBSを含むDMEM)中でCFs中に蒔かれる(plated)。ファクトリーは、37℃のインキュベーター内に置かれ、CFの全層上に細胞の均一な分布を得るために水平にならされる。2日後、細胞は、Tris:EDTA、2M CaCl、2X HBS、及び4つのDNAプラスミドの混合物を伴う、CaPO法を用いて、上記4つのレンチウイルスプラスミドを用いてトランスフェクトされる。トランスフェクションの3日後、分泌されたレンチウイルスベクターを含む上清は、回収され、精製され、濃縮される。上清がCFsから除去された後に、生産最終細胞が各CFから回収される。細胞は各ファクトリーからトリプシン処理され、遠心分離により回収される。細胞は凍結培地に再懸濁され、凍結保存される。これらの細胞は、複製コンピテントレンチウイルス(RCL)試験のために後に用いられる。
【0075】
ベクターを精製及び製剤化(formulate)するために、粗製上清は細胞片を除去するための膜濾過によって清澄化される。宿主細胞DNA及び残留プラスミドDNAは、エンドヌクレアーゼ消化(Benzonase(登録商標))によって分解される。ウイルス上清は0.45μmのフィルターを用いて細胞片から清澄化される。清澄化された上清は予め秤量した容器に回収され、その中にBenzonase(登録商標)を加えられる(最終濃度50U/mL)。残留プラスミドDNA及び宿主ゲノムDNAのエンドヌクレアーゼ消化は、37℃で6時間実行される。最初の接線流限外濾過(TFF)濃度のエンドヌクレアーゼ処理された上清は、ウイルスを約20倍濃縮しながら、粗製上清から残留低分子量成分を除去するために用いられる。清澄化されたエンドヌクレアーゼ処理ウイルス上清は、フラックス速度(flux rate)を最大化しながら、せん断速度を約4,000秒-1又はそれ以下に維持するように設計された流速で、500kDのNMWCOを有する中空繊維カートリッジを通して循環させられる。ヌクレアーゼ処理された上清の透析は、カートリッジの性能を維持するために濃縮プロセスの間に開始される。透析緩衝液としてのPBS中に4%ラクトースを用いて、80%透過物置換率が確立される。ウイルス上清は標的体積にされて、粗製上清の20倍濃度を示し、透析は100%の透析液置換率で4回の追加交換容量にわたって続けられる。
【0076】
ウイルス産物の更なる濃縮は、高速遠心分離技術を用いて達成される。レンチウイルスの各サブバッチは、Sorvall RC-26 plus centrifugeを6000RPM(6,088RCF)、6℃、16‐20時間で用いてペレット化される。次いで、各サブバッチからのウイルスペレットは、PBS中の4%ラクトースで50mL体積に再構成される。この緩衝液中の再構成されたペレットは、ウイルス調製のための最終製剤を代表する。ベクター濃縮プロセス全体は、約200倍の体積減少をもたらす。全てのサブバッチの完了に続き、次に物質は-80℃に置かれ、その間に各サブバッチからの試料が無菌性について試験される。試料無菌性の確認に続き、サブバッチを頻繁に撹拌しながら37℃で急速に解凍される。次いで、物質はプールされ、クラスII型A/B3バイオセーフティーキャビネット内にて手動で分注される。無菌USPクラス6、雄ネジOリングクリオバイアル内の、1mLの濃縮レンチウイルスの充填構成が用いられる。
【0077】
レンチウイルスベクター調製物の純度を確実にするために、それは、残留宿主DNA汚染物質、並びに残留宿主及びプラスミドDNAの移入について試験される。他の試験の中でも、正しいベクターが存在することを確実にするために、RT‐PCRによってベクター同一性が評価される。
【実施例0078】
実施例4:ACTにおける使用に適したT細胞の調製
CARを発現するためにTCMが用いられる場合、適した患者の細胞は、以下のように調製されてよい。最初に、Tリンパ球は、白血球フェレーシスによって患者から得られ、適当な同種又は自己のT細胞サブセット、例えばセントラルメモリーT細胞(TCM)がCARを発現するように遺伝的に変更され、次いで抗がん治療を達成するために、いかなる臨床的に許容される手段によっても患者に投与して戻された。
【0079】
適当なTCMは、以下のように生成されてよい。合意された研究参加者から得られたアフェレーシス産物は、フィコール処理され、洗浄され、一晩インキュベートされる。次いで細胞は、GMP等級の抗CD14、抗CD25及び抗CD45RA試薬(Miltenyi Biotec)及びCliniMACS(商標)分離装置を用いて、単球、調節性T細胞及びナイーブT細胞集団を枯渇させる。枯渇に続いて、陰性画分細胞は、CliniMACS(商標)分離装置上でDREG56‐ビオチン(COH臨床等級)及び抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて、CD62L+TCM細胞について濃縮される。
【0080】
濃縮に続いて、TCM細胞は、完全X-Vivo15プラス50IU/mLのIL‐2及び0.5ng/mLのIL‐15中に処方され、テフロン(登録商標)細胞培養バッグに移され、Dynal Clin(商標)Vivo CD3/CD28ビーズを用いて刺激される。刺激後の最大5日目まで、細胞は、1.0から0.3の感染多重度(MOI)で所望のCARを発現するレンチウイルスベクターを用いて導入される。培養は、細胞増殖のための要求に応じた完全X‐Vivo15並びにIL‐2及びIL‐15サイトカインの追加を伴い(細胞密度を3×10と2×10生存細胞/mLの間に保ち、サイトカイン補充は培養の毎週月曜日、水曜日及び金曜日)、最大で42日間維持される。細胞は、典型的には、21日以内にこれらの条件下で約10細胞まで増える。培養期間の終わりに、細胞は採取され、2回洗浄され、臨床等級の凍結保存培地(Cryostore CS5, BioLife Solutions)中に処方される。
【0081】
T細胞注入の日に、凍結保存及び放出された産物は、解凍され、洗浄され、再輸液のために処方される。放出された細胞産物を含む低温保存バイアルは、液体窒素貯蔵から取り出され、解凍され、冷却され、PBS/2%ヒト血清アルブミン(HSA)洗浄緩衝液で洗浄される。遠心分離後、上清は除去され、細胞は保存料無添加の通常生理食塩水(PFNS)/2%HSA輸液希釈液(infusion diluent)に再懸濁される。品質管理試験のために試料が取り出される。
【実施例0082】
実施例5:Cltx‐IgG4(EQ)‐CD28gg‐Zetaの発現
図1Cは、CLTX‐CARを発現するように組換えられた健常ドナーT細胞(HD187.2 TCM/SCM/N)のフローサイトメトリー分析の結果を示す。示されているのは、CD8+及びCD4+(CD8-)T細胞サブセットの両方におけるCLTX‐CAR及びCD19t導入遺伝子の同時発現を表す、抗CD19抗Fc及び抗CD8染色である。CD3/CD28ビーズ刺激の18日後の導入された細胞(CLTX‐CAR)及び導入されていない細胞(モック)についての免疫反応性細胞の割合が示されて、ヒトT細胞をCLTX-CAR用いて形質導入する能力を実証している。
【実施例0083】
実施例6:クロロトキシン及びCltx‐IgG4(EQ)‐CD28gg‐ZetaT細胞は、神経膠腫細胞株U251Tを特異的に認識する
蛍光ラベル、Cy5.5に抱合されたクロロトキシン(CLTX‐Cy5.5)は、様々な細胞種へのクロロトキシン結合を評価するために用いられた。この研究の結果は、図2A‐Eに表されている(A、健常ドナー由来のヒト末梢血単核球(PBMC);B、ヒトEBV転換リンパ芽球細胞株、LCL;C、大型T抗原転換ヒト胎性腎臓細胞株293T;D、健常ドナー由来の誘導多能性幹細胞(iPSCs)から分化したヒト星状細胞;及びE、ヒト神経膠芽腫細胞株U251T)。細胞株は、培地(未処置)中、又は1μMのCLTX‐Cy5.5を含む培地中、37℃で1時間にわたって培養され、次いでフローサイトメトリーによって評価された。
【0084】
図2Fに示されるように、CLTX-CAR T細胞は、神経膠腫腫瘍細胞株U251Tを特異的に死滅させたが、LCL、293T又は原発性のヒト星状細胞を死滅させなかった。プロットされているのは、同じ期間にわたってモックT細胞と共培養されたものに対して正規化した後の、エフェクター:標的比=1:1(15,000T細胞、15,000標的細胞)で72時間にわたってCLTX-CAR T細胞と共培養された、生存標的細胞(LCL、293T、星状細胞及びU251T)の数である。
【実施例0085】
実施例7:クロロトキシンは、IL13Rα2発現から独立して低継代PBT、ヒト原発性神経膠芽腫細胞株に結合する
クロロトキシン結合がIL13Rα2発現から独立しているかどうかを調べるために、1μMのCLTX‐Cy5.5を含む培地中で1時間培養され、次いでPE抱合IL13Rα2抗体を用いて染色された、IL13Rα2‐low細胞株及びIL13Rα2‐high細胞株のフローサイトメトリー分析が行われた。図3A‐Bに見られるように、クロロトキシンは、IL13Rα2発現から独立して低継代PBT、ヒト原発性神経膠芽腫細胞株に結合する。
【実施例0086】
実施例8:CLTX‐IgG4(EQ)‐CD28gg‐ZetaT細胞は、IL13Rα2発現及びTCGA分子サブタイプから独立して低継代PBTヒト神経膠芽腫細胞株を認識し、死滅させる
図4Aに示されるように、CLTX‐CAR T細胞は、原発性GBM株対胎性腎臓細胞株293Tのパネルの統計的に有意な死滅を示す。プロットされているのは、同じ期間にわたってモックT細胞と共培養されたものに対して正規化した後の、エフェクター:標的比=1:1(15,000T細胞、15,000標的細胞)で24、48及び72時間にわたってCLTX‐CAR T細胞と共培養された、生存標的細胞の数である。
【0087】
図4Bは、生細胞画像化を用いて観察され、モック対照に比較した、CLTX‐CAR T細胞によるPBT003‐4及びPBT009腫瘍細胞の排除を示す。エフェクター:標的比=1:4(4,000T細胞、16,000標的細胞)でモック又はCLTX‐CAR T細胞と共培養されたPBT003‐4及びPBT009細胞の代表的な画像であり、共培養直後(0時間)及び共培養の3日後(72h)に明視野顕微鏡によって撮影された、
【実施例0088】
実施例9:CLTX‐IgG4(EQ)‐CD28gg‐ZetaT細胞は、GBM細胞を用いた刺激によって活性化される
(モック又はCLTX CARを発現する)T細胞は、タンパク質輸送阻害剤の存在下、エフェクター:標的比=1:1(25,000T細胞、25,000標的細胞)で5時間にわたって標的細胞によって刺激された。脱顆粒を起こしているCAR‐T細胞の割合は、フローサイトメトリーを用いて、CD107a免疫反応性(図5A)、及び細胞内染色によって決定されるサイトカイン産生(図5B)によって決定された。
【実施例0089】
実施例10:異なるリンカー設計を有するCLTX‐CAR T細胞は、腫瘍細胞に対して有効である
図6Aは、IgG4Fc(EQ)、IgG4(HL‐CH3)、CD8h及び短いリンカー(L)を含む、異なるスペーサー(リンカー)を有するCLTX‐CAR構築物の模式図である。全てが、CD28膜貫通領域を有する(図示されていない)。図6Bに示されるように、異なるリンカーを有するCLTX‐CAR T細胞は、U251T GBM細胞を死滅させることが可能である。プロットされているのは、同じ期間にわたってモックT細胞と共培養されたものに対して正規化した後の、エフェクター:標的比=1:1(15,000T細胞、15,000標的細胞)で24、48及び72時間にわたって、異なるCLTX‐リダイレクト構築物を宿すT細胞と共培養された、生存U251T細胞の数である。図6Cに示されるように、異なるリンカーを有するCLTX‐CAR T細胞は、抗原攻撃に続いて、異なるサイトカイン産生レベルを示す。異なるLTX‐リダイレクト構築物を用いて組換えられたT細胞は、エフェクター:標的比=1:1(20,000T細胞、20,000標的細胞)でU251T細胞を用いて刺激された。IFNγ分泌は、上清のELISAアッセイによって検出された。
【実施例0090】
実施例11:異なる細胞内シグナル伝達領域を有するCLTX‐CAR T細胞の抗腫瘍効果
図7Aは、異なる細胞内共刺激領域CD28及び41BBを有するCLTX‐CAR構築物の模式図である。図7Bに示されるように、異なる共刺激領域を有するCLTX‐CAR T細胞は、U251T GBM細胞を死滅させることが可能である。プロットされているのは、同じ期間にわたってモックT細胞と共培養されたものに対して正規化した後の、エフェクター:標的比=1:1(15,000T細胞、15,000標的細胞)で24、48及び72時間にわたって、異なるCLTX‐リダイレクト構築物を宿すT細胞と共培養された、生存U251T細胞の数である。図7Cに示されるように、異なる共刺激領域を有するCLTX‐CAR T細胞は、抗原攻撃に続いて、様々なレベルのサイトカインを産生する。異なるLTX‐リダイレクト構築物を用いて組換えられたT細胞は、エフェクター:標的比=1:1(20,000T細胞、20,000標的細胞)でU251T細胞を用いて刺激された。IFNγ分泌は、上清のELISAアッセイによって検出された。
【実施例0091】
実施例12:CLTX‐CAR T細胞は、生体内で、確立されたU251T GBM腫瘍の成長を低減する。
図8Aは、NSGマウスにおけるU251T異種移植の増殖及びT細胞処置の研究の模式的な描写である。皮下に移植されたU251T細胞を有するマウス(第-14日目から第0日目)は、PBS(腫瘍のみ)、モックT細胞、又はCLTX‐CAR T細胞を用いて処置された。図8B、腫瘍進行は、CLTX‐CAR T細胞処置によって阻害される。T細胞注入の時から20日間(第0日目から第20日目)にわたって、腫瘍の成長がキャリパー測定によって測定された。
【実施例0092】
実施例13:追加的なCLTX CAR
図9‐24は、CLTX‐IgG4(EQ)‐CD28gg‐Zeta CARに関して上述されたように構築及び発現されることができる様々な追加的なCLTX‐CARのアミノ酸配列を提示する。図8‐24において、様々な領域(アミノ末端からカルボキシ末端までの各図の配列の下に列挙されている)は、下線部分及び非下線部分を交互にすること(alternating)によって示されている。したがって、図9において、GMCSFRaシグナルペプチドは下線が引かれており、クロロトキシン配列は下線が引かれておらず、スペーサー(IgG4(SmP)(L235E、N297Q))は下線が引かれており、CD28膜貫通配列は下線が引かれておらず、CD28cyto(LLmGG)共刺激領域は下線が引かれており、共刺激領域をCD3ζ配列から分離する(Gly)3配列は下線が引かれておらず、そしてCD3ζ配列は下線が引かれている。図9‐23において、CARと同時発現されるT2A及びT19t配列は示されていない。図24は、T2A(リボソームスキップ)及び切断型CD19)が含まれた図23のCARを示す。切断型CD19は、CARと同時発現され、トランスフェクトされた細胞の同定及び定量化を簡便な方法ですることができる。
【実施例0093】
実施例14:追加的な毒素配列
図25は、クロロトキシン及び様々なクロロトキシン関連毒素の配列アライメントを示す(Dardevetら、2015 Toxins (Basel) 7:1079)。これらの毒素は、いくつかの場合、本明細書に記載のCARのクロロトキシン用に置換されてよい。
図1
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【配列表】
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【外国語明細書】