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▶ 大阪硅曹株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144031
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】鋳物砂の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 5/00 20060101AFI20230928BHJP
   B22C 1/10 20060101ALI20230928BHJP
   B22C 1/18 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B22C5/00 Z
B22C1/10 C
B22C1/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023131584
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】520432129
【氏名又は名称】大阪硅曹株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 義明
(57)【要約】
【課題】珪酸ソーダを粘結剤として用いた使用済み鋳物砂の再生方法を提供する。
【解決手段】粘結剤として珪酸ソーダを用いた使用済み鋳物砂を再生処理する方法であって、高温の加熱により珪酸ソーダがガラス化する温度帯において、ガラス化する直前に加熱を停止し、その後研磨処理を行うことを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘結剤として珪酸ソーダを用いた使用済み鋳物砂を再生処理する方法であって、高温の加熱により珪酸ソーダがガラス化する温度帯において、ガラス化する直前に加熱を停止し、その後研磨処理を行うことを特徴とする鋳物砂の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み鋳物砂の再生処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粘結剤として珪酸ソーダを用いた使用済み鋳物砂の再生処理は様々な方法が提案されている。
例えば、珪酸ソーダの付着した使用済み鋳物砂を再生処理するために、900~1200℃程度の温度にて加熱焼成することにより、再生された鋳物砂が得られる方法が開示されている。(例えば、特開平06―344076号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06―344076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとしている課題】
【0004】
珪酸ソーダを粘結剤とした無機鋳型は注湯時に鋳型からのガス発生量が有機鋳型に比べ少ないため、ガス欠陥が少なくまた異臭もしないため作業環境も良く近年注目を浴びている。
しかし、鋳込み後の鋳型は珪酸ソーダの残留により崩壊性が低いため再生処理が難しく、この問題に対し簡便な方法での使用済み鋳物砂の再生方法が求められている。
【0005】
即ち本発明は、粘結剤として珪酸ソーダを用いた使用済み鋳物砂を再生処理する方法であって、高温の加熱により珪酸ソーダがガラス化する温度帯において、ガラス化する直前に加熱を停止し、その後研磨処理を行うことを特徴とする再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
粘結剤として珪酸ソーダを用いた使用済み鋳物砂を再生処理する方法であって、高温の加熱により珪酸ソーダがガラス化する温度帯において、ガラス化する直前に加熱を停止し、その後研磨処理を行うことを特徴とする再生方法によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガラス化する直前に加熱を停止することで使用済み鋳物砂に付着している珪酸ソーダのシリカ結合が切れ、粘結力がゼロに近づく為、容易に鋳物砂を再生することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0009】
(実施形態)
本実施形態では、結晶の珪酸ソーダがコーティングされている乾態の無機コーテッドサンドを鋳物砂として使用し試験片を作成し、高温の加熱により珪酸ソーダがガラス化する温度帯においてガラス化する直前に加熱を停止した試験片を作成し抗折強度を測定した。
【0010】
鋳物砂の種類としては、人工砂や珪砂を使用することができる。
例えばムライト砂やフラタリー砂がある。
【実施例0011】
本実施例では、結晶の珪酸ソーダがコーティングされている乾態の無機コーテッドサンドを使用し、190℃に加熱された金型に充填し、10mm×10mm×90mmの試験片を作成し、それぞれの試験片を500℃、600℃および700℃の各温度にて1時間加熱を行い、抗折強度を測定することで、珪酸ソーダのガラス化の有無を確認した。次にガラス化した温度帯においてガラス化直前で加熱を停止した試験片を作成し抗折強度を確認した。
【実施例0012】
結晶の珪酸ソーダがコーティングされている乾態の無機コーテッドサンドを使用し、鋳物砂にはムライト砂を使用した。無機コーテッドサンドを190℃に加熱された金型に充填し、10mm×10mm×90mmの試験片を作成し、抗折強度が2.8Mpaの試験片を使用した。それぞれの試験片を500℃、600℃および700℃の各温度にて1時間加熱を行い、抗折強度を測定することで、珪酸ソーダのガラス化の有無を確認した。次にガラス化した温度帯においてガラス化直前で加熱を停止した試験片を作成し抗折強度を確認した。
(評価方法)
1.抗折強度
実施例1にて作成した試験片を三点曲げ試験法にて測定を行った。
【0013】
(評価)
抗折強度について実施例1の結果を表1に示す。
【表1】
【0014】
(総合評価)
本発明の実施例1の結果から500℃で加熱した試験片は、1時間の加熱により強度が低下していることから、珪酸ソーダがガラス化していないことがわかる。600℃および700℃での加熱は、1時間の加熱により抗折強度が上昇していることから珪酸ソーダがガラス化していることがわかる。600℃および700℃での加熱において珪酸ソーダがガラス化する直前で加熱を停止した場合、詳細には600℃では5分および700℃では1分で停止した場合は、抗折強度が大幅に低減し容易に研磨処理が可能な状態になり砂の再生処理に良好な結果を得ることができた。