(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144040
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ひずみゲージ、センサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132344
(22)【出願日】2023-08-15
(62)【分割の表示】P 2020553353の分割
【原出願日】2019-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2018199285
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
(72)【発明者】
【氏名】足立 重之
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】美齊津 英司
(57)【要約】
【課題】高感度のひずみゲージを提供する。
【解決手段】本ひずみゲージは、可撓性を有する基材と、前記基材の一方の面に、Cr混相膜から形成された抵抗体と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基材と、
前記基材の一方の面に、Cr混相膜から形成された抵抗体と、を有するひずみゲージ。
【請求項2】
絶縁層と、
前記絶縁層の一方の側に長手方向を第1方向に向けて並置された複数の第1抵抗部、及び前記絶縁層の他方の側に長手方向を前記第1方向と交差する第2方向に向けて並置された複数の第2抵抗部、を含むCr混相膜から形成された抵抗体と、を有し、
測定対象物の状態を前記抵抗体の抵抗値の変化として検出するセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージ、センサに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に貼り付けて、測定対象物のひずみを検出するひずみゲージが知られている。ひずみゲージは、ひずみを検出する抵抗体を備えており、抵抗体の材料としては、例えば、Cr(クロム)やNi(ニッケル)を含む材料が用いられている。又、抵抗体は、例えば、絶縁樹脂からなる基材上に形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ひずみゲージを高い剛性を有する測定対象物に対して使用する場合には、高感度であることが要求されるが、従来のひずみゲージは感度が十分ではなかったため、高い剛性を有する測定対象物に対して使用することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、高感度のひずみゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本ひずみゲージは、可撓性を有する基材と、前記基材の一方の面に、Cr混相膜から形成された抵抗体と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、高感度のひずみゲージを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図である。
【
図4】第1の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図6】第2の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図7】第2の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図(その1)である。
【
図8】第2の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図(その2)である。
【
図9】第2の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図10】第2の実施の形態の変形例2に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図11】第3の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する断面図である。
【
図12】機能層の蛍光X線分析の結果を示す図である。
【
図14】基材の膨張係数と抵抗体の内部応力との関係を示す図である。
【
図15】基材の表面凹凸と抵抗体のピンホール数との関係を示す図である。
【
図16】第4の実施の形態に係るセンサを例示する平面図である。
【
図17】第4の実施の形態に係るセンサを例示する断面図である。
【
図18】第5の実施の形態に係るセンサを例示する平面図である。
【
図19】第5の実施の形態に係るセンサを例示する断面図である。
【
図20】第5の実施の形態に係るセンサモジュールを例示するブロック図である。
【
図21】第5の実施の形態に係るセンサモジュールの制御装置を例示するブロック図である。
【
図22】第5の実施の形態の変形例1に係るセンサを例示する平面図である。
【
図23】自動車が走行したときの空気の流れを例示する模式図である。
【
図24】自動車のスポイラーにひずみゲージ3を取り付けた例を示す斜視図である。
【
図25】自動車のアクセルペダルにひずみゲージ3を取り付けた例を示す斜視図である。
【
図26】自動車のステアリングに専用センサを取り付けた比較例を示す斜視図である。
【
図27】自動車のステアリングにひずみゲージ3を取り付けた例を示す断面図である。
【
図28】自動車のステアリングにひずみゲージ3を取り付けた例を示す平面図である。
【
図29】自動車のステアリングのグリップ力の検出について説明する模式図である。
【
図30】自動車のドアにひずみゲージ3を取り付けた例を示す斜視図である。
【
図31】自動車のドアにひずみゲージ3を取り付けた例を示す断面図である。
【
図32】ひずみゲージ3を有する6軸力センサの例を示す斜視図である。
【
図33】6軸力センサを配置する位置について説明する斜視図である。
【
図34】自動車のワイパーにひずみゲージ3を取り付けた例を示す模式図である。
【
図35】自動車のバンパーにひずみゲージ3を取り付けた例を示す模式図である。
【
図36】自動車のエンジン及び過給機近傍にひずみゲージ3を配置した例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図2は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、
図1のA-A線に沿う断面を示している。
図1及び
図2を参照するに、ひずみゲージ1は、基材10と、機能層20と、抵抗体30と、端子部41と、カバー層60とを有している。但し、機能層20及びカバー層60は必須の構成要素ではなく、性能向上等のため、必要に応じて設けることができる。なお、
図1では、抵抗体30を図示するために、便宜上、カバー層60は外縁のみを破線で示している。
【0011】
なお、本実施の形態では、便宜上、ひずみゲージ1において、基材10の抵抗体30が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体30が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体30が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体30が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0012】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、接着層等を介して基材10の下面に接合される起歪体表面からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0013】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0014】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0015】
機能層20は、基材10の上面10aに抵抗体30の下層として形成されている。すなわち、機能層20の平面形状は、
図1に示す抵抗体30の平面形状と略同一である。機能層20の厚さは、例えば、1nm~100nm程度とすることができる。
【0016】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層20は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層20は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0017】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体30がCr(クロム)を含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層20が抵抗体30の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0018】
機能層20の材料は、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0019】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
【0020】
抵抗体30は、機能層20の上面に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗値の変化を生じる受感部である。なお、
図1では、便宜上、抵抗体30を梨地模様で示している。
【0021】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0022】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。又、Cr混相膜に、機能層20を構成する材料の一部が拡散されてもよい。この場合、機能層20を構成する材料と窒素とが化合物を形成する場合もある。例えば、機能層20がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0023】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0024】
機能層20上に抵抗体30を形成することで、安定な結晶相により抵抗体30を形成できるため、ゲージ特性(ゲージ率、ゲージ率温度係数TCS、及び抵抗温度係数TCR)の安定性を向上することができる。
【0025】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、機能層20を設けることで、α-Cr(アルファクロム)を主成分とする抵抗体30を形成することができる。α-Crは安定な結晶相であるため、ゲージ特性の安定性を向上することができる。
【0026】
ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味する。抵抗体30がCr混相膜である場合、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0027】
又、機能層20を構成する金属(例えば、Ti)がCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性を向上することができる。具体的には、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0028】
なお、抵抗体30の内部応力をゼロ近傍として基材10の反りを低減する観点から、基材10の膨張係数は7ppm/K~20ppm/Kとすることが好ましい。基材10の膨張係数は、例えば、基材10の材料の選定、基材10に含有されるフィラーの材料の選定及び含有量の調整等を行うことにより、調整することができる。
【0029】
ところで、基材10上に抵抗体30を形成すると、抵抗体30にピンホールが発生する場合があり、抵抗体30に発生するピンホール数が所定値を超えると、ゲージ特性が悪化したり、ひずみゲージとして機能しなくなったりするおそれがある。発明者らは、抵抗体30にピンホールが発生する原因の1つが、基材10の上面10aから突出するフィラーであることを突き止めた。
【0030】
すなわち、基材10がフィラーを含有すると、フィラーの一部が基材10の上面10aから突出し、基材10の上面10aの表面凹凸を増大させる。その結果、基材10の上面10aに形成される抵抗体30に生じるピンホール数が増加し、ゲージ特性の悪化等の要因となる。
【0031】
発明者らは、抵抗体30の厚さが0.05μm以上である場合に、基材10の上面10aの表面凹凸が15nm以下であれば、抵抗体30に生じるピンホール数を抑制してゲージ特性を維持できることを見出した。
【0032】
すなわち、抵抗体30の厚さが0.05μm以上である場合に、基材10の上面10aに形成される抵抗体30に生じるピンホール数を低減してゲージ特性を維持する観点から、基材10の上面10aの表面凹凸は15nm以下であることが好ましく、表面凹凸が15nm以下であれば基材10がフィラーを含有してもゲージ特性の悪化にはつながらない。なお、基材10の上面10aの表面凹凸は0nmであってもよい。
【0033】
基材10の上面10aの表面凹凸は、例えば、基材10を加熱することにより低減することができる。或いは、基材10の加熱に代えて、基材10の上面10aに略垂直にレーザ光を照射して凸部を削る方法、基材10の上面10aと平行にウォーターカッター等を可動させて凸部を削り取る方法、基材10の上面10aを砥石を用いて研磨する方法、又は基材10を加熱しながら加圧する方法(ヒートプレス)等を用いてもよい。
【0034】
なお、表面凹凸とは、算術平均粗さのことであり、一般的にRaと表記する。表面凹凸は、例えば、三次元光学干渉法により測定することができる。
【0035】
端子部41は、抵抗体30の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体30よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部41は、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。抵抗体30は、例えば、端子部41の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の端子部41に接続されている。端子部41の上面を、端子部41よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗体30と端子部41とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0036】
カバー層60は、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように基材10の上面10aに設けられた絶縁樹脂層である。カバー層60を設けることで、抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体30を湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、端子部41を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0037】
カバー層60は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0038】
図3は、第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図であり、
図2に対応する断面を示している。ひずみゲージ1を製造するためには、まず、
図3(a)に示す工程では、基材10を準備し、基材10の上面10aに機能層20を形成する。基材10及び機能層20の材料や厚さは、前述の通りである。
【0039】
機能層20は、例えば、機能層20を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層20が成膜されるため、機能層20の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0040】
但し、これは、機能層20の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層20を成膜してもよい。例えば、機能層20の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層20を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0041】
次に、
図3(b)に示す工程では、機能層20の上面全体に抵抗体30及び端子部41を形成後、フォトリソグラフィによって機能層20並びに抵抗体30及び端子部41を
図1に示す平面形状にパターニングする。抵抗体30及び端子部41の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体30と端子部41とは、同一材料により一体に形成することができる。抵抗体30及び端子部41は、例えば、抵抗体30及び端子部41を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。抵抗体30及び端子部41は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0042】
機能層20の材料と抵抗体30及び端子部41の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層20としてTiを用い、抵抗体30及び端子部41としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0043】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体30及び端子部41を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体30及び端子部41を成膜してもよい。
【0044】
これらの方法では、Tiからなる機能層20がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層20を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0045】
なお、抵抗体30がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層20は、抵抗体30の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能、及び基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層20として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0046】
次に、
図3(c)に示す工程では、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するカバー層60を形成する。カバー層60の材料や厚さは、前述の通りである。カバー層60は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。カバー層60は、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。以上の工程により、ひずみゲージ1が完成する。
【0047】
このように、抵抗体30の下層に機能層20を設けることにより、抵抗体30の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体30を作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層20を構成する材料が抵抗体30に拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上することができる。
【0048】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、カバー層の下層に絶縁層を設けたひずみゲージの例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0049】
図4は、第1の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する断面図であり、
図2に対応する断面を示している。
図4を参照するに、ひずみゲージ1Aは、カバー層60の下層に絶縁層50を設けた点が、ひずみゲージ1(
図1、
図2等参照)と相違する。なお、カバー層60は、端子部41を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0050】
絶縁層50は、抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように基材10の上面10aに設けられている。カバー層60は、例えば、絶縁層50の側面の一部及び上面を被覆するように設けることができる。
【0051】
絶縁層50の材料は、抵抗体30及びカバー層60よりも高抵抗であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Si、W、Ti、Ta等の酸化物や窒化物を用いることができる。絶縁層50の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~1μm程度とすることができる。
【0052】
絶縁層50の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、スパッタ法や化学気相蒸着(CVD)法等の真空プロセスや、スピンコート法やゾルゲル法等の溶液プロセスを用いることができる。
【0053】
このように、カバー層60の下層に絶縁層50を設けることで、カバー層60単独の場合と比べて、絶縁性及び環境封止性を向上することができる。従って、絶縁層50は、絶縁性及び環境封止性の要求仕様に応じて、適宜設けることができる。
【0054】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、電極を積層構造としたひずみゲージの例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0055】
図5は、第2の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図6は、第2の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、
図5のB-B線に沿う断面を示している。
図5及び
図6を参照するに、ひずみゲージ2は、複数の層が積層された電極40Aを備えている。なお、カバー層60は、電極40Aを除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0056】
電極40Aは、複数の金属層が積層された積層構造である。具体的には、電極40Aは、抵抗体30の両端部から延在する端子部41と、端子部41の上面に形成された金属層42と、金属層42の上面に形成された金属層43と、金属層43の上面に形成された金属層44とを有している。金属層43は本発明に係る第1金属層の代表的な一例であり、金属層44は本発明に係る第2金属層の代表的な一例である。
【0057】
金属層42の材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cu(銅)を用いることができる。金属層42の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.01μm~1μm程度とすることができる。
【0058】
金属層43の材料は、Cu、Cu合金、Ni、又はNi合金を用いることが好ましい。金属層43の厚さは、電極40Aへのはんだ付け性を考慮して決定されるが、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上である。金属層43の材料としてCu、Cu合金、Ni、又はNi合金を用い、金属層43の厚さを1μm以上とすることで、はんだ食われが改善される。又、金属層43の材料としてCu、Cu合金、Ni、又はNi合金を用い、金属層43の厚さを3μm以上とすることで、はんだ食われが更に改善される。なお、電解めっきの容易性から、金属層43の厚さは30μm以下であることが好ましい。
【0059】
ここで、はんだ食われとは、電極40Aを構成する材料が、電極40Aに接合されるはんだの中に溶解し、電極40Aの厚みが薄くなったり、なくなったりすることである。はんだ食われが発生すると、電極40Aに接合されるリード線等との接着強度や引張り強度が低下するおそれがあるため、はんだ食われが発生しないことが好ましい。
【0060】
金属層44の材料は、金属層43よりもはんだ濡れ性の良好な材料を選択することができる。例えば、金属層43の材料がCu、Cu合金、Ni、又はNi合金であれば、金属層44の材料としてAu(金)を用いることができる。Cu、Cu合金、Ni、又はNi合金の表面をAuで被覆することにより、Cu、Cu合金、Ni、又はNi合金の酸化及び腐食を防止できると共に、良好なはんだ濡れ性を得ることができる。金属層44の材料としてAuに代えてPt(白金)を用いても同様の効果を奏する。金属層44の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.01μm~1μm程度とすることができる。
【0061】
なお、平面視において、金属層42、43、及び44の積層部の周囲に端子部41が露出しているが、端子部41は金属層42、43、及び44の積層部と同一の平面形状であっても構わない。
【0062】
図7及び
図8は、第2の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図であり、
図6に対応する断面を示している。ひずみゲージ2を製造するためには、まず、第1の実施の形態の
図3(a)と同様の工程を実行後、
図7(a)に示す工程では、機能層20の上面に金属層300を形成する。金属層300は、最終的にパターニングされて抵抗体30及び端子部41となる層である。従って、金属層300の材料や厚さは、前述の抵抗体30及び端子部41の材料や厚さと同様である。
【0063】
金属層300は、例えば、金属層300を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層300は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0064】
次に、
図7(b)に示す工程では、金属層300の上面を覆うように、例えば、スパッタ法や無電解めっき法等により、金属層42となるシード層420を形成する。
【0065】
次に、
図7(c)に示す工程では、シード層420の上面の全面に感光性のレジスト800を形成し、露光及び現像して電極40Aを形成する領域を露出する開口部800xを形成する。レジスト800としては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0066】
次に、
図7(d)に示す工程では、例えば、シード層420を給電経路とする電解めっき法により、開口部800x内に露出するシード層420上に金属層43を形成し、更に、金属層43上に金属層44を形成する。電解めっき法は、タクトが高く、かつ、金属層43として低応力の電解めっき層を形成できる点で好適である。膜厚の厚い電解めっき層を低応力とすることで、ひずみゲージ2に反りが生じることを防止できる。なお、金属層44は金属層43上に無電解めっき法により形成してもよい。
【0067】
なお、金属層44を形成する際に金属層43の側面はレジスト800に被覆されているため、金属層44は金属層43の上面のみに形成され、側面には形成されない。
【0068】
次に、
図8(a)に示す工程では、
図7(d)に示すレジスト800を除去する。レジスト800は、例えば、レジスト800の材料を溶解可能な溶液に浸漬することで除去できる。
【0069】
次に、
図8(b)に示す工程では、シード層420の上面の全面に感光性のレジスト810を形成し、露光及び現像して、
図5の抵抗体30及び端子部41と同様の平面形状にパターニングする。レジスト810としては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0070】
次に、
図8(c)に示す工程では、レジスト810をエッチングマスクとし、レジスト810から露出する機能層20、金属層300、及びシード層420を除去し、
図5の平面形状の機能層20、抵抗体30、及び端子部41を形成する。例えば、ウェットエッチングにより、機能層20、金属層300、及びシード層420の不要な部分を除去できる。なお、この時点では、抵抗体30上にシード層420が形成されている。
【0071】
次に、
図8(d)に示す工程では、金属層43及び金属層44をエッチングマスクとし、金属層43及び金属層44から露出する不要なシード層420を除去し、金属層42を形成する。例えば、シード層420がエッチングされ、機能層20及び抵抗体30がエッチングされないエッチング液を用いたウェットエッチングにより、不要なシード層420を除去できる。
【0072】
図8(d)に示す工程の後、
図3(c)に示す工程と同様にして、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し電極40Aを露出するカバー層60を形成することで、ひずみゲージ2が完成する。
【0073】
このように、電極40Aとして、端子部41上にCu、Cu合金、Ni、又はNi合金の厚膜(1μm以上)からなる金属層43を形成し、更に最表層に金属層43よりもはんだ濡れ性の良好な材料(AuやPt)からなる金属層44を形成している。そのため、はんだ食われを防止できると共に、はんだ濡れ性を向上できる。
【0074】
〈第2の実施の形態の変形例1〉
第2の実施の形態の変形例1では、第2の実施の形態とは層構造の異なる電極の例を示す。なお、第2の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0075】
図9は、第2の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する断面図であり、
図6に対応する断面を示している。
図9を参照するに、ひずみゲージ2Aは、電極40Aが電極40Bに置換された点がひずみゲージ2(
図6等参照)と相違する。又、カバー層60が、電極40Bを除く部分の略全体を覆うように設けられた点がひずみゲージ2(
図6等参照)と相違する。
【0076】
電極40Bは、複数の金属層が積層された積層構造である。具体的には、電極40Bは、抵抗体30の両端部から延在する端子部41と、端子部41の上面に形成された金属層42と、金属層42の上面に形成された金属層43と、金属層43の上面に形成された金属層45と、金属層45の上面に形成された金属層44とを有している。言い換えれば、電極40Bは、電極40Aの金属層43と金属層44との間に金属層45が設けられた構造である。
【0077】
金属層45の材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Niを用いることができる。Niに代えてNiP(ニッケルリン)やPdを用いても構わない。又、金属層45を、Ni/Pd(Ni層とPd層とをこの順番で積層した金属層)としても構わない。金属層45の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、1μm~2μm程度とすることができる。
【0078】
金属層45は、
図7(d)に示す工程で、例えば、シード層420を給電経路とする電解めっき法により、金属層43上に形成することができる。
【0079】
このように、電極の積層数は特に限定されず、必要に応じ積層数を増やしても構わない。この場合にも、端子部41上にCu、Cu合金、Ni、又はNi合金の厚膜(1μm以上)からなる金属層43を形成し、更に最表層に金属層43よりもはんだ濡れ性の良好な材料(AuやPt)からなる金属層44を形成している。そのため、第2の実施の形態と同様に、はんだ食われを防止できると共に、はんだ濡れ性を向上できる。
【0080】
〈第2の実施の形態の変形例2〉
第2の実施の形態の変形例2では、第2の実施の形態とは層構造の異なる電極の他の例を示す。なお、第2の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0081】
図10は、第2の実施の形態の変形例2に係るひずみゲージを例示する断面図であり、
図6に対応する断面を示している。
図10を参照するに、ひずみゲージ2Bは、電極40Bが電極40Cに置換された点がひずみゲージ2A(
図9参照)と相違する。又、カバー層60が、電極40Cを除く部分の略全体を覆うように設けられた点がひずみゲージ2(
図6等参照)と相違する。
【0082】
電極40Cは、複数の金属層が積層された積層構造である。具体的には、電極40Cは、抵抗体30の両端部から延在する端子部41と、端子部41の上面に形成された金属層42と、金属層42の上面に形成された金属層43と、金属層43の上面及び側面並びに金属層42の側面に形成された金属層45Aと、金属層45Aの上面及び側面に形成された金属層44Aとを有している。金属層44A及び45Aの材料や厚さは、例えば、金属層44及び45と同様とすることができる。なお、金属層44Aは、本発明に係る第2金属層の代表的な一例である。
【0083】
電極40Cを形成するには、まず、
図7(d)に示す工程で、例えば、シード層420を給電経路とする電解めっき法により金属層43を形成後、金属層44を形成せずに、
図8(a)に示す工程と同様にしてレジスト800を除去し、その後、
図8(b)~
図8(d)と同様の工程を行う。その後、例えば、無電解めっき法により、金属層43の上面及び側面並びに金属層42の側面に金属層45Aを形成することができる。更に、例えば、無電解めっき法により、金属層45Aの上面及び側面に金属層44Aを形成することができる。
【0084】
このように、電極は電解めっき及び無電解めっきを適宜併用して作製することができる。電極40Cの構造では、端子部41上にCu、Cu合金、Ni、又はNi合金の厚膜(1μm以上)からなる金属層43を形成し、更に最表層に金属層43よりもはんだ濡れ性の良好な材料(AuやPt)からなる金属層44Aを形成している。但し、最表層の金属層44Aは、金属層43の上面に加え金属層42及び43の側面にも金属層45Aを介して形成されているため、電極40Aや電極40Bと比べて、金属層43を構成するCu、Cu合金、Ni、又はNi合金の酸化及び腐食を防止する効果を更に向上できると共に、はんだ濡れ性を更に向上できる。
【0085】
なお、金属層45Aを形成せずに、金属層43の上面及び側面並びに金属層42の側面に直接金属層44Aを形成しても同様の効果が得られる。すなわち、金属層44Aは、金属層43の上面及び側面並びに金属層42の側面を直接又は間接に被覆していればよい。
【0086】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、ひずみゲージを用いたセンサモジュールの例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0087】
図11は、第3の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する断面図であり、
図2に対応する断面を示している。
図11を参照するに、センサモジュール5は、ひずみゲージ1と、起歪体110と、接着層120とを有している。なお、カバー層60は、端子部41を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0088】
センサモジュール5において、起歪体110の上面110aは、接着層120を介して、基材10の下面10bと固着されている。起歪体110は、例えば、Fe、SUS(ステンレス鋼)、Al等の金属やPEEK等の樹脂から形成され、印加される力に応じて変形する(ひずみを生じる)物体である。ひずみゲージ1は、起歪体110に生じるひずみを抵抗体30の抵抗値の変化として検出することができる。
【0089】
接着層120は、ひずみゲージ1と起歪体110とを固着する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂等を用いることができる。又、ボンディングシート等の材料を用いても良い。接着層120の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm~50μm程度とすることができる。
【0090】
センサモジュール5を製造するには、ひずみゲージ1を作製後、基材10の下面10b及び/又は起歪体110の上面110aに、例えば、接着層120となる上記の何れかの材料を塗布する。そして、基材10の下面10bを起歪体110の上面110aと対向させ、塗布した材料を挟んで起歪体110上にひずみゲージ1を配置する。又は、ボンディングシートを起歪体110と基材10との間に挟み込むようにしても良い。
【0091】
次に、ひずみゲージ1を起歪体110側に押圧しながら所定温度に加熱し、塗布した材料を硬化させて接着層120を形成する。これにより、接着層120を介して起歪体110の上面110aと基材10の下面10bとが固着され、センサモジュール5が完成する。センサモジュール5は、例えば、荷重、圧力、トルク、加速度等の測定に適用することができる。
【0092】
なお、センサモジュール5において、ひずみゲージ1に代えて、ひずみゲージ1A、2、2A、又は2Bを用いてもよい。
【0093】
[実施例1]
まず、事前実験として、厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる基材10の上面10aに、コンベンショナルスパッタ法により機能層20としてTiを真空成膜した。この際、複数の膜厚を狙ってTiを成膜した5個のサンプルを作製した。
【0094】
次に、作製した5個のサンプルについて蛍光X線(XRF:X‐ray Fluorescence)分析を行い、
図12に示す結果を得た。
図12のX線ピークよりTiの存在が確認され、X線ピークにおける各々のサンプルのX線強度より、1nm~100nmの範囲でTi膜の膜厚が制御できることが確認された。
【0095】
次に、実施例1として、厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる基材10の上面10aに、コンベンショナルスパッタ法により機能層20として膜厚が3nmのTiを真空成膜した。
【0096】
続いて、機能層20の上面全体にマグネトロンスパッタ法により抵抗体30及び端子部41としてCr混相膜を成膜後、機能層20並びに抵抗体30及び端子部41をフォトリソグラフィによって
図1のようにパターニングした。
【0097】
又、比較例1として、厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる基材10の上面10aに、機能層20を形成せずに、マグネトロンスパッタ法により抵抗体30及び端子部41としてCr混相膜を成膜し、フォトリソグラフィによって
図1のようにパターニングした。なお、実施例1のサンプルと比較例1のサンプルにおいて、抵抗体30及び端子部41の成膜条件は全て同一である。
【0098】
次に、実施例1のサンプルと比較例1のサンプルについて、X線回折(XRD:X‐ray diffraction)評価を行い、
図13に示す結果を得た。
図13は、2θの回折角度が36~48度の範囲におけるX線回折パターンであり、実施例1の回折ピークは比較例1の回折ピークよりも右側にシフトしている。又、実施例1の回折ピークは比較例1の回折ピークよりも高くなっている。
【0099】
実施例1の回折ピークは、α-Cr(110)の回折線の近傍に位置しており、Tiからなる機能層20を設けたことにより、α-Crの結晶成長が促進されてα-Crを主成分とするCr混相膜が形成されたものと考えられる。
【0100】
次に、実施例1のサンプルと比較例1のサンプルを複数個作製し、ゲージ特性を測定した。その結果、実施例1の各サンプルのゲージ率は14~16であったのに対し、比較例1の各サンプルのゲージ率は10未満であった。
【0101】
又、実施例1の各サンプルのゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRが-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内であったのに対し、比較例1の各サンプルのゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRは-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内には入らなかった。
【0102】
このように、Tiからなる機能層20を設けたことにより、α-Crの結晶成長が促進されてα-Crを主成分とするCr混相膜が形成され、ゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とするひずみゲージが作製された。なお、Cr混相膜へのTiの拡散効果がゲージ特性の向上に寄与していると考えられる。
【0103】
[実施例2]
実施例2では、膨張係数の異なる厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる複数の基材10を準備し、抵抗体30としてCr混相膜を成膜した場合の、基材10の膨張係数と抵抗体30の内部応力との関係について調べ、
図14に示す結果を得た。
【0104】
抵抗体30の内部応力は、評価サンプルの反りを測定し式(1)に示すストーニーの式により見積もった。なお、式(1)からわかるように、
図14に示す抵抗体30の内部応力は、単位厚さ当たりの値であり、抵抗体30の厚さには依存しない。
【0105】
【数1】
なお、式(1)において、E:ヤング率、ν:ポアソン比、D:基材10の厚さ、t:抵抗体30の厚さ、R:基材10の曲率半径の変化、である。
【0106】
図14より、基材10の膨張係数を7ppm/K~20ppm/Kの範囲内とすることで、抵抗体30の内部応力を±0.4GPaの範囲内に収めることができる。ここで、±0.4GPaは、ひずみゲージ1が機能する限界の反りを生じる値であり、発明者らが実験的に求めたものである。
【0107】
言い換えれば、基材10の膨張係数を7ppm/K~20ppm/Kの範囲外とすると、抵抗体30の内部応力が±0.4GPaの範囲を超えてひずみゲージ1の反りが大きくなり、ひずみゲージとして機能しなくなる。従って、基材10の膨張係数を7ppm/K~20ppm/Kの範囲内とする必要がある。なお、基材10の材料は、必ずしもポリイミド樹脂である必要はない。
【0108】
基材10の材料の選定、基材10に含有されるフィラーの材料の選定及び含有量の調整等を行うことにより、基材10の膨張係数を7ppm/K~20ppm/Kの範囲内とすることができる。
【0109】
このように、基材10の膨張係数を7ppm/K~20ppm/Kの範囲内とすることにより、基材10と抵抗体30との膨張率の違いや、その他の要因を吸収し、抵抗体30の内部応力を±0.4GPaの範囲に収めることができる。その結果、ひずみゲージ1の反りが低減され、良好なゲージ特性を維持した状態で、ひずみゲージ1を安定的に機能させることができる。
【0110】
[実施例3]
実施例3では、フィラーを含有する厚さ25μmのポリイミド樹脂からなる基材10を複数枚用意した。そして、加熱処理を施さないサンプル、100℃の加熱処理を施したサンプル、200℃の加熱処理を施したサンプル、300℃の加熱処理を施したサンプルを3個ずつ作製し、常温に戻った後、各々の基材10の上面10aの表面凹凸を三次元光学干渉法により測定した。
【0111】
次に、各々の基材10の上面10aに、マグネトロンスパッタ法により、膜厚が0.05μmの抵抗体30を成膜し、フォトリソグラフィによって
図1のようにパターニングした後、抵抗体30に生じるピンホール数をサンプル裏面より光を透過した光学透過法により測定した。
【0112】
次に、測定結果に基づいて、基材10の上面10aの表面凹凸と抵抗体30に生じるピンホール数との関係について、
図15にまとめた。なお、
図15に示す棒グラフが表面凹凸を示し、折れ線グラフがピンホール数を示す。又、横軸の100℃、200℃、及び300℃は基材10を加熱処理した際の温度を示し、未処理は加熱処理されていないことを示す。
【0113】
図15は、基材10を100℃以上300℃以下で加熱処理することで、基材10の上面10aの表面凹凸が未処理時の半分程度である15nm以下となり、その結果、抵抗体30に生じるピンホール数が1/7程度に激減することを示している。但し、ポリイミド樹脂の耐熱温度を考慮すると、250℃を超える温度で加熱処理を施すと変質や劣化が起こるおそれがある。従って、加熱処理は、100℃以上250℃以下の温度で行うことが好ましい。なお、加熱処理により表面凹凸が低減するのは、加熱処理による熱収縮の際に、基材10を構成するポリイミド樹脂が内部にフィラーを巻き込むためと考えられる。
【0114】
発明者らの検討によれば、
図15に示す未処理のピンホール数(約140)はゲージ特性を悪化させるレベルであるが、加熱処理後のピンホール数(約20)はゲージ特性に悪影響を与えないレベルである。すなわち、膜厚が0.05μmの抵抗体30を用いる場合、基材10の上面10aの表面凹凸を15nm以下とすることで、抵抗体30に生じるピンホール数をゲージ特性に悪影響を与えないレベルまで低減できることが確認された。
【0115】
なお、膜厚が0.05μmよりも厚い抵抗体30を用いた場合にも、基材10の上面10aの表面凹凸を15nm以下とすることで、抵抗体30に生じるピンホール数をゲージ特性に悪影響を与えないレベルまで低減できることは言うまでもない。すなわち、基材10の上面10aの表面凹凸を15nm以下とすることで、膜厚が0.05μm以上の抵抗体30を用いた場合に、抵抗体30に生じるピンホール数をゲージ特性に悪影響を与えないレベルまで低減することができる。
【0116】
このように、基材10に加熱処理を施すことにより、基材10の上面10aの表面凹凸を15nm以下にすることが可能であり、結果として膜厚が0.05μm以上の抵抗体30に生じるピンホール数を大幅に低減することができる。その結果、良好なゲージ特性を維持した状態で、ひずみゲージ1を安定的に機能させることができる。
【0117】
なお、抵抗体30に生じるピンホール数を低減するためには基材10の上面10aの表面凹凸を低減することが重要であり、表面凹凸を低減する方法は重要ではない。上記では加熱処理を施すことで表面凹凸を低減する方法を示したが、これには限定されず、基材10の上面10aの表面凹凸を低減できれば、如何なる方法を用いてもよい。
【0118】
基材10の上面10aの表面凹凸は、例えば、基材10の上面10aに略垂直にレーザ光を照射して凸部を削る方法、基材10の上面10aと平行にウォーターカッター等を可動させて凸部を削り取る方法、基材10の上面10aを砥石を用いて研磨する方法、又は基材10を加熱しながら加圧する方法(ヒートプレス)等を用いて低減することができる。
【0119】
又、抵抗体30に生じるピンホール数を低減するためには基材10の上面10aの表面凹凸を低減することが重要であり、必ずしもフィラーの存在に起因する表面凹凸には限定されず、フィラーの存在に起因しない表面凹凸についても、上記の様々な方法により低減することは有効である。例えば、フィラーを含有しない基材10の表面凹凸が15nmよりも大きい場合、上記の様々な方法により、基材10の上面10aの表面凹凸を15nm以下にすることで、膜厚が0.05μm以上の抵抗体30に生じるピンホール数をゲージ特性に悪影響を与えないレベルまで低減できる。
【0120】
[実施例4]
実施例4では、
図7及び
図8に示す工程を第2の実施の形態の変形例1のように変形して、電極40Bを備えたひずみゲージ2Aを作製し、はんだ食われの有無を確認した。具体的には、金属層42及び43としてCuを用い、金属層45としてNiPを用い、金属層44としてAuを用い、各金属層の厚さを変えたサンプルを10種類作製し(サンプルNo.1~No.10)、はんだ食われの有無を確認した。
【0121】
結果を表1に示す。なお、表1において、膜厚『0』は、その金属層を形成しなかったことを示している。又、『×』は、1回目のはんだ付けで、はんだ食われが発生したことを示している。又、『〇』は、1回目のはんだ付けでははんだ食われが発生しなかったが、2回目のはんだ付け(はんだの手直し等を想定)により若干のはんだ食われが発生したことを示している。又、『◎』は、1回目のはんだ付けでも2回目のはんだ付けでもはんだ食われが発生しなかったことを示している。
【0122】
【表1】
表1に示したように、Cuの厚さを1μm以上とすることで、はんだ食われが改善され、3μm以上とすることで、はんだ食われが更に改善されることが確認された。又、サンプル1とサンプル5の結果より、はんだ食われの有無はCuの厚さのみに依存し、NiPやAuの有無には依存しないことが確認された。但し、前述のように、はんだ食われを防止すると共に、はんだ濡れ性を向上するためには、Au又はそれに相当する材料(Pt等)からなる金属層が必要である。
【0123】
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態では、第1の実施の形態とは構造の異なるセンサの例を示す。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0124】
図16は、第4の実施の形態に係るセンサを例示する平面図である。
図17は、第4の実施の形態に係るセンサを例示する断面図であり、
図16のC-C線に沿う断面を示している。
【0125】
図16及び
図17を参照するに、センサ6Aは、個別センサ70(ひずみゲージ)の集合体である。本実施の形態では、一例として、センサ6Aは6個の個別センサ70を有しているが、個別センサ70の個数は6個には限定されない。
【0126】
センサ6Aは、各々の個別センサ70に共通の基材10と、各々の個別センサ70毎に設けられた抵抗体30及び端子部41とを有している。各々の個別センサ70は、同一の基材10の一方の側に配列されている。個別センサ70の特性は、ひずみゲージ1と同様である。
【0127】
各々の個別センサ70の抵抗体30を被覆し端子部41を露出するように基材10の上面10aに第1の実地の形態で説明したカバー層60を設けても構わない。カバー層60を設けることで、各々の個別センサ70の抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、各々の個別センサ70の抵抗体30を湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、端子部41を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0128】
センサ6Aは、例えば、測定対象物の表面に貼り付けてもよいし、測定対象物に埋め込んでもよい。
【0129】
このように、個別センサ70(ひずみゲージ)の集合体であるセンサ6Aを用いて、測定対象物の状態を検出してもよい。これにより、単体のひずみゲージ1を複数個用いる形態よりも利便性が向上する場合がある。なお、測定対象物の状態とは、測定対象物のひずみ、膨張、収縮、変形等である。
【0130】
〈第5の実施の形態〉
第5の実施の形態では、3次元情報を取得可能なセンサの例を示す。なお、第5の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0131】
図18は、第5の実施の形態に係るセンサを例示する平面図である。
図19は、第5の実施の形態に係るセンサを例示する断面図であり、
図18のD-D線に沿う断面を示している。
【0132】
図18及び
図19を参照するに、センサ6Bは、抵抗体30Bと、端子部41B及び42Bとを有している。
【0133】
抵抗体30Bは、基材10を介して積層された複数の抵抗部31B及び32Bを含んでいる。すなわち、抵抗体30Bは、複数の抵抗部31B及び32Bの総称であり、抵抗部31B及び32Bを特に区別する必要がない場合には抵抗体30Bと称する。なお、
図18では、便宜上、抵抗部31B及び32Bを梨地模様で示している。
【0134】
複数の抵抗部31Bは、基材10の上面10aに、長手方向をX方向に向けて所定間隔でY方向に並置された薄膜である。複数の抵抗部32Bは、基材10の下面10bに、長手方向をY方向に向けて所定間隔でX方向に並置された薄膜である。但し、複数の抵抗部31Bと複数の抵抗部32Bとは平面視で直交している必要はなく、交差していればよい。
【0135】
抵抗体30Bの幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm~1000μm(1mm)程度とすることができる。隣接する抵抗体30Bのピッチは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、1mm~100mm程度とすることができる。なお、
図18及び
図19では、抵抗部31Bを10本、抵抗部32Bを10本図示しているが、抵抗部31B及び32Bの本数は必要に応じて適宜変更することができる。抵抗体30Bの材料、厚さ、製造方法等は、抵抗体30と同様とすることができる。
【0136】
端子部41Bは、基材10の上面10aにおいて、各々の抵抗部31Bの両端部から延在しており、平面視において、抵抗部31Bよりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部41Bは、測定対象物の状態に応じた抵抗部31Bの抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部41Bの上面を、端子部41Bよりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部31Bと端子部41Bとは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0137】
端子部42Bは、基材10の下面10bにおいて、各々の抵抗部32Bの両端部から延在しており、平面視において、抵抗部32Bよりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部42Bは、測定対象物の状態に応じた抵抗部32Bの抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部42Bの上面を、端子部42Bよりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部32Bと端子部42Bとは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0138】
なお、基材10を貫通する貫通配線(スルーホール)を設け、端子部41B及び42Bを基材10の上面10a側又は下面10b側に集約してもよい。
【0139】
抵抗部31Bを被覆し端子部41Bを露出するように基材10の上面10aに第1の実地の形態で説明したカバー層60を設けても構わない。又、抵抗部32Bを被覆し端子部42Bを露出するように基材10の下面10bに第1の実地の形態で説明したカバー層60を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗部31B及び32Bに機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗部31B及び32Bを湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、端子部41B及び42Bを除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0140】
図20に示すように、センサ6B及び制御装置7によりセンサモジュール8を実現できる。センサモジュール8において、センサ6Bは、測定対象物に取り付けられ、制御装置7により測定対象物の状態を検出することができる。複数のセンサ6Bを測定対象物に取り付けてもよい。
【0141】
センサモジュール8において、センサ6Bの各々の端子部41B及び42Bは、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、制御装置7に接続されている。
【0142】
制御装置7は、端子部41B及び42Bを介して得られた情報に基づいて、例えば、センサ6Bが押圧された位置の座標や押圧力の大きさを検出することができる。例えば、センサ6Bの抵抗部31BはX座標の検出に用いることができ、抵抗部32BはY座標の検出に用いることができる。
【0143】
図21に示すように、制御装置7は、例えば、アナログフロントエンド部71と、信号処理部72とを含む構成とすることができる。
【0144】
アナログフロントエンド部71は、例えば、入力信号選択スイッチ、ブリッジ回路、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)等を備えている。アナログフロントエンド部71は、温度補償回路を備えていてもよい。
【0145】
アナログフロントエンド部71では、例えば、センサ6Bの全ての端子部41B及び42Bが入力信号選択スイッチに接続され、入力信号選択スイッチにより1対の電極が選択される。入力信号選択スイッチで選択された1対の電極は、ブリッジ回路に接続される。
【0146】
すなわち、ブリッジ回路の1辺が入力信号選択スイッチで選択された1対の電極間の抵抗部で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路の出力として、入力信号選択スイッチで選択された1対の電極間の抵抗部の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を得ることができる。なお、入力信号選択スイッチは、信号処理部72から制御可能である。
【0147】
ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、信号処理部72に送られる。アナログフロントエンド部71が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が信号処理部72に送られる。入力信号選択スイッチを高速で切り替えることで、センサ6Bの全ての端子部41B及び42Bの抵抗値に対応するデジタル信号を極短時間で信号処理部72に送ることができる。
【0148】
信号処理部72は、アナログフロントエンド部71から送られた情報に基づいて、センサ6Bが押圧された位置の座標や押圧力の大きさを検出することができる。
【0149】
又、複数の抵抗部31Bの抵抗値や複数の抵抗部32Bの抵抗値が変化した場合には、センサ6Bが複数位置で押圧されたことを検出できる。
【0150】
なお、押圧力の大きさが小さい場合等には、抵抗部31B及び抵抗部32Bのうち、押圧される側に近い方の抵抗部のみが押圧され、押圧される側から遠い方の抵抗部は押圧されない場合がある。この場合には、押圧される側に近い方の抵抗部の1対の電極間の抵抗値のみが押圧力の大きさに応じて連続的に変化するが、この場合も、信号処理部72は、押圧される側に近い方の抵抗部の抵抗値の変化の大小に基づいて、押圧力の大きさを検出することができる。
【0151】
つまり、抵抗部31B及び/又は抵抗部32Bが押圧されると、押圧された抵抗部(抵抗部31B及び/又は抵抗部32B)の1対の電極間の抵抗値が押圧力の大きさに応じて連続的に変化する。そして、信号処理部72は、抵抗部31Bと抵抗部32Bの一方が押圧されたか両方が押圧されたかにかかわらず、押圧された抵抗部の抵抗値の変化の大小に基づいて、押圧力の大きさを検出することができる。
【0152】
信号処理部72は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メインメモリ等を含む構成とすることができる。
【0153】
この場合、信号処理部72の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、信号処理部72の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、信号処理部72は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
【0154】
このように、第5の実地の形態では、長手方向を第1方向に向けて並置された複数の抵抗部31Bと、長手方向を第1方向と交差する第2方向に向けて並置された複数の抵抗部32Bとを含む抵抗体30Bを有するセンサ6Bを用いている。
【0155】
これにより、抵抗部31B及び32Bが押圧されると、押圧された抵抗部31B及び32Bが押圧力に応じて撓み、押圧された抵抗部31B及び32Bの1対の電極間の抵抗値が押圧力の大きさに応じて連続的に変化する。すなわち、センサ6Bを用いることで、3次元情報(押圧された位置の座標と、押圧力の大きさ)を得ることができる。すなわち、測定対象物全体の情報が得られ、測定対象物の状態が変化している箇所を詳細に把握できるので、測定対象物の状態を精度よく検出することが可能となる。
【0156】
特に、抵抗部31B及び32BがCr混相膜から形成されている場合は、抵抗部31B及び32BがCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、押圧力に対する抵抗値の感度(同一の押圧力に対する抵抗部31B及び32Bの抵抗値の変化量)が大幅に向上する。抵抗部31B及び32BがCr混相膜から形成されている場合、押圧力に対する抵抗値の感度は、抵抗部31B及び32BがCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗部31B及び32BをCr混相膜から形成することで、押圧された位置の座標の検出精度を向上できると共に、押圧力を高感度で検出できる。
【0157】
又、押圧力に対する抵抗値の感度が高いことで、押圧力が小であることを検出した場合には所定の動作を行い、押圧力が中であることを検出した場合には他の動作を行い、押圧力が大であることを検出した場合には更に他の動作を行うような制御の実現が可能となる。或いは、押圧力が小又は中であることを検出した場合には動作を行わず、押圧力が大であることを検出した場合にのみ所定の動作を行うような制御の実現が可能となる。
【0158】
又、押圧力に対する抵抗値の感度が高いと、S/Nの高い信号を得ることができる。そのため、アナログフロントエンド部71のA/D変換回路において平均化を行う回数を低減しても精度よく信号検出ができる。A/D変換回路において平均化を行う回数を低減することで、1回のA/D変換に必要な時間を短縮できるため、入力信号選択スイッチを更に高速で切り替えることが可能となる。その結果、センサモジュール8に入力される速い動きも検出することができる。
【0159】
又、抵抗体30BがCr混相膜から形成されている場合は、センサ6Bを小型化できるため、配置する場所の選択の自由度を向上することが可能となる。
【0160】
〈第5の実施の形態の変形例1〉
第5の実施の形態の変形例1では、センサの抵抗部をジグザグパターンにする例を示す。なお、第5の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0161】
図22は、第5の実施の形態の変形例1に係るセンサを例示する平面図であり、
図18に対応する平面を示している。
図22を参照するに、センサ6Cは、抵抗体30Bが抵抗体30Cに置換された点が、センサ6B(
図18及び
図19参照)と相違する。
【0162】
抵抗体30Cは、抵抗部31C及び32Cを含んでいる。抵抗部31Cは、1対の端子部41Bの間に形成されたジグザグのパターンである。又、抵抗部32Cは、1対の端子部42Bの間に形成されたジグザグのパターンである。抵抗部31C及び32Cの材料や厚さは、例えば、抵抗部31B及び32Bの材料や厚さと同様とすることができる。
【0163】
このように、抵抗部31C及び32Cをジグザグパターンにすることで、直線状のパターンにした場合と比べて、1対の端子部41B間の抵抗値及び1対の端子部42B間の抵抗値を高くできる。その結果、押圧された際の1対の端子部41B間の抵抗値の変化量及び1対の端子部42B間の抵抗値の変化量が大きくなるため、押圧された位置の座標の検出精度を更に向上できると共に、力を更に高感度で検出できる。
【0164】
又、1対の端子部41B間の抵抗値及び1対の端子部42B間の抵抗値を高くできるため、センサ6Cを低消費電力化することが可能である。
【0165】
〈第6の実施の形態〉
第6の実施の形態では、第1の実施の形態に係るひずみゲージにおいて抵抗体30の材料としてCr混相膜を用いた場合の応用例を示す。なお、第6の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0166】
第1の実施の形態に係るひずみゲージ1において、抵抗体30の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化(従来比500%以上)かつ、小型化(従来比1/10以下)を実現することができる。以降では、Cr混相膜を用いたひずみゲージ1を、便宜上、ひずみゲージ3と称する。
【0167】
例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、ひずみゲージ3では0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。又、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、ひずみゲージ3の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0168】
ひずみゲージは、一般的に、起歪体(金属等)に貼り付けて使用される。従来のひずみゲージは感度が低かったため、センサ特性を確保するために起歪体の材料選定に設計的な制限を受けていた。
【0169】
これに対して、ひずみゲージ3は、従来のひずみゲージよりも高感度化されているため、従来のひずみゲージを用いる場合のような設計的な制限を大幅に緩和でき、起歪体の材料選定の自由度を向上できる。
【0170】
又、ひずみゲージ3は、従来のひずみゲージよりも小型化されているため、今まで使用できなかった微細な測定箇所への設置が可能となる。
【0171】
又、ひずみゲージ3は、可撓性を有するフィルム型ゲージであるため、小型だけではなく、大小様々なサイズに適用して生産及び供給することが可能となる。
【0172】
又、ひずみゲージ3は、質量が軽く、測定したい場所へ貼り付けることができるため、同様な測定に用いる電子基板実装が必要なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)センサ等に比べ、測定したい場所を直接測定できるメリットがある。
【0173】
又、ひずみゲージ3は、非常に小さく、質量が無視できるので、慣性の影響がなく、感度・安定性・疲労寿命に優れている。
【0174】
又、ひずみゲージ3は、自己温度補償することも可能であり、この場合、金属、プラスチックを問わず、多様な熱膨張係数を持ったあらゆる測定対象物に対して使用できる。
【0175】
又、ひずみゲージ3は、高感度であり、小さい変位を検出できるので、高い剛性を有する測定対象物に対して使用することも可能である。
【0176】
以上のような特徴から、ひずみゲージ3は様々な応用が可能である。以下に、ひずみゲージ3の具体的な応用例を示す。
〈第1応用例〉
自動車の空気抵抗は目に見えず不安定で、測定が困難である。そのため、車体に発生するダウンフォースや、揚力の空気図等を把握することが困難である。第1応用例では、このような点に鑑み、ひずみゲージ3を用いて、走行中の自動車が受ける風圧等を検出する例を示す。
【0177】
図23は、自動車が走行したときの空気の流れを例示する模式図である。自動車500が走行すると、例えば、
図23の矢印で示すような空気の流れが生じる。このような空気の流れにより、自動車500が走行するスピードが速くなると、車体に揚力が働いて車体が浮き上がろうとし、走行が不安定となる場合がある。
【0178】
そこで、自動車500は、フロントスポイラー510、サイドスポイラー520、及びリアスポイラー(リアウィング)530を有している。自動車500は、フロントスポイラー510、サイドスポイラー520、及びリアスポイラー530を有することで、矢印方向にダウンフォースが働き、スピードを上げたときでも車体に働く揚力が削減されて車体の浮き上がりが抑制され、安定な走行が可能である。
【0179】
図24は、自動車のスポイラーにひずみゲージ3を取り付けた例を示す斜視図である。
図24に示す自動車500Aは、フロントスポイラー510A、サイドスポイラー520A、及びリアスポイラー(リアウィング)530Aを有している。フロントスポイラー510A、サイドスポイラー520A、及びリアスポイラー(リアウィング)530Aの少なくとも1つには、ひずみゲージ3が取り付けられている。
【0180】
ひずみゲージ3は、例えば、フロントスポイラー510A、サイドスポイラー520A、及びリアスポイラー(リアウィング)530Aの少なくとも1つの表面に貼り付けてもよいし、埋め込んでもよい。或いは、フロントスポイラー510A、サイドスポイラー520A、及びリアスポイラー(リアウィング)530Aの少なくとも1つに空気取込口を配置し、取り込んだ空気の流れが集中する個所にひずみゲージ3を貼り付けたり、埋め込んだりしてもよい。
【0181】
このように、スポイラーにひずみゲージ3を取り付けることで、スポイラーの表面の風圧を感知して、車体にかかる揚力やダウンフォースを検出することが可能となる。
【0182】
更に、検出した値をセンターインフォメーションディスプレイ(CID:Center Information Display)やEコックピットのディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等に表示させることで、車体にかかるダウンフォースの視覚化や、空気図の数値化が可能となる。
【0183】
スポイラーは軽量化のため、樹脂で形成される場合が多いが、可撓性を有する基材に形成されて軽量でフレキシブルなひずみゲージ3は貼り付けが容易である他、感度の高い風圧の検出が可能となる。
【0184】
又、スポイラーがモータ等により可変可能な構成である場合、ひずみゲージ3で検出した風圧に基づいてスポイラーを可変させることで、車体に働く揚力やダウンフォースを最適化し、より安定な走行を実現することも可能である。
【0185】
このように、ひずみゲージ3は高感度であるため、スポイラーにかかる風圧を容易に検出できる。又、検出結果をディスプレイに表示することで、ダウンフォース等の空気の流れの視覚化が可能となる。又、ひずみゲージ3の検出結果を可変スポイラーにフィードバックすることで、車体に働く揚力やダウンフォースを積極的に制御し、より安定な走行を実現できる。又、検出結果を空気抵抗に起因する燃費影響度に変換してディスプレイに表示することで、燃費情報の可視化が可能となる。なお、ひずみゲージ3は、エンジンで駆動される自動車だけでなく、電気自動車やハイブリッド自動車等に用いてもよい。
【0186】
なお、ひずみゲージ3は、1個用いても複数個用いても構わない。又、ひずみゲージ3に代えて、抵抗体の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ1A、2、2A、2B、センサ6A、6B、又は6Cを用いても構わない。
〈第2応用例〉
自動車のアクセルペダルは剛性力の高い材質(曲がり難い材質)で形成されており、従来のひずみゲージを用いたセンサでは踏み込み力の補助センサとして正確なセンシングができなかった。すなわち、従来のひずみゲージは感度が低いため、曲がり易い材質で形成された部材を対象とした計測しかできなかった。或いは、剛性力の高い材質(曲がり難い材質)で形成された部材を対象とした計測の場合には、剛性力の低い材質(曲がり易い材質)から形成された起歪体を介して測定対象物に貼り付けていた。第2応用例では、このような点に鑑み、ひずみゲージ3を用いて、アクセルペダルの踏み込み力を検出する例を示す。
【0187】
図25は、自動車のアクセルペダルにひずみゲージ3を取り付けた例を示す斜視図である。
図25では、自動車のアクセルペダル540の側面にひずみゲージ3を貼り付けているが、アクセルペダル540の裏面等にひずみゲージ3を貼り付けてもよい。或いは、アクセルペダル540に、ひずみゲージ3を埋め込んでもよい。
【0188】
アクセルペダル540にひずみゲージ3を取り付けることで、アクセルペダル540の踏み込み力の検出を行うことができる。高感度なひずみゲージ3を用いることで、アクセルペダル540が剛性力の高い材質(曲がり難い材質)で形成されている場合であっても、高感度なセンシングが可能となり、より正確な踏み込み力を検出できる。
【0189】
このように、ひずみゲージ3は高感度であるため、アクセルペダル540が剛性力の高い材質(曲がり難い材質)で形成されている場合にも、踏み込み力を高精度に検出可能となる。これにより、自動車の速度制御性の向上や燃費の向上が期待できる。
【0190】
なお、ひずみゲージ3は、1個用いても複数個用いても構わない。又、ひずみゲージ3に代えて、抵抗体の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ1A、2、2A、2B、センサ6A、6B、又は6Cを用いても構わない。
〈第3応用例〉
自動車のステアリングにかかるグリップ力は、例えば、ステアリングに配置された専用センサで検出することができる。例えば、専用センサをグリップされ易い左右対称の2個所に配置し、配置した箇所のグリップ力を検出することができる。専用センサは、例えば、ステアリングの芯材と外装の間に配置できるが、このような配置では、一部の高級仕様の自動車において、ステアリングのデザイン性を損ねる問題点もある。第3応用例は、このような点に鑑み、ひずみゲージ3を用いて、ステアリングのグリップ力を検出する例である。
【0191】
図26は、自動車のステアリングに専用センサを取り付けた比較例を示す斜視図である。
図26(a)では、ステアリングの斜視図に加え、ステアリングの内部構造を拡大して示している。
図26(b)は、
図26(a)のE-E線に沿う断面図である。
【0192】
図26に示す比較例に係るステアリング550Xは、金属製の芯材551の外周側をウレタン等の樹脂552で被覆し、樹脂552の外周側に貼り付けるようにグリップ力を検出する専用センサ3Xを配置し、専用センサ3Xの外周側を皮等からなる外装553で被覆した構造である。専用センサ3Xは、例えば、環状のステアリング550Xにおいて、グリップされ易い左右対称の2個所に配置されている。
【0193】
専用センサ3Xは、ひずみゲージ3と比べて感度が低いため、変形し難い金属製の芯材551の内部に貼りけるとセンシングが困難である。そのため、ステアリング550Xにおいて、専用センサ3Xは、変形し易い樹脂552の外周側に貼り付けられている。
【0194】
一方、ひずみゲージ3は高感度であるため、
図27の断面図に示すステアリング550のように、芯材551の内部にひずみゲージ3を貼り付けても、グリップ力のセンシングを行うことができる。すなわち、ひずみゲージ3は高感度であり、僅かなグリップ力でも確実な検出が可能であるため、芯材551の内部にひずみゲージ3を貼り付けても、グリップ力のセンシングを行うことができる。なお、
図27は、
図26に対応する断面を示している。
【0195】
又、
図28に示すように、ひずみゲージ3をステアリング550の全周方向に配置することで、360°方向でグリップ力の検出が可能となる。この場合、例えば、
図29(a)に示す通常運転中の場合はもちろんのこと、
図29(b)や
図29(c)に示すハンドルの切り返しを行う場合のように、ステアリング550の様々な位置をグリップする場合でも、グリップ力の検出が可能となる。但し、ひずみゲージ3は、必ずしもステアリング550の全周方向に配置する必要はなく、ステアリング550の少なくとも一部に配置されていればよい。
【0196】
このように、ひずみゲージ3は高感度であるため、剛性力の高い芯材551の内部に貼り付けてもグリップ力の検出が可能となる。又、ひずみゲージ3を芯材551の内部に貼り付けることで、ステアリング550のデザインに影響を与えることがないため、ステアリング550のデザイン性が向上する。
【0197】
又、高感度のひずみゲージ3をステアリング550の全周方向に配置することで、右折や左折、カーブ等、切換えを伴うハンドル操作においてもグリップ力の検出が可能となる。
【0198】
なお、ひずみゲージ3は、1個用いても複数個用いても構わない。又、ひずみゲージ3に代えて、抵抗体の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ1A、2、2A、2B、センサ6A、6B、又は6Cを用いても構わない。
〈第4応用例〉
自動車のドアノブ(ドアハンドル)は、ドアロックのキーの挿入口や開閉時の取っ手として利用されるが、一部の高級車では車体デザインのイメージダウンとなり、ドアノブレス化が検討されている。又、ドアノブは、凹凸形状であることから、傷つき易いといった欠点があった。第4応用例では、このような点に鑑み、ひずみゲージ3を用いてドアロック解除を行うドアノブレスのドアの例を示す。
【0199】
図30は、自動車のドアにひずみゲージ3を取り付けた例を示す斜視図である。
図31は、自動車のドアにひずみゲージ3を取り付けた例を示す断面図である。
図30及び
図31に示すドア560は、インナーパネル561と、アウターパネル562とを有しており、ドアノブを有していない。アウターパネル562の内側の所定位置にひずみゲージ3が貼り付けられている。或いは、アウターパネル562に、ひずみゲージ3を埋め込んでもよい。
【0200】
ドア560のアウターパネル562側の所定位置にひずみゲージ3を配置することで、所定位置が押されたことを検出できるため、ドアロックの解除を行うことができる。例えば、モータ等の動力を利用してドアの開閉を行う構造とし、ひずみゲージ3を貼り付けた所定位置が押されたことを検出したときに、モータ等の動力を利用してドアロックの解除を行いドアを開くことができる。
【0201】
ドア560のアウターパネル562側の所定位置にひずみゲージ3を配置することで、アウターパネル562の内側でのセンシングが可能となるため、車体のデザインを損なわずに済む。又、ひずみゲージ3は高感度であるため、確実にドアロック解除の検出が可能となる。
【0202】
例えば、ひずみゲージ3をアウターパネル562側の複数箇所に配置し、複数箇所に配置されたひずみゲージ3を予め定めた特定の順番で押した場合に、ドアロックの解除及びドアの開閉を行う構成としてもよい。これにより、誤検出を防止できると共に、特定の者だけがドアロックの解除及びドアの開閉を行うことができるため、ドアロック認証として用いることも可能である。
【0203】
或いは、センサ6B(
図18及び
図19参照)をアウターパネル562側の所定位置に配置し、センサ6Bが予め定めた特定の入力パターンが指等でなぞられたことを検出するようにしてもよい。この場合も、誤検出を防止できると共に、特定の者だけがドアロックの解除及びドアの開閉を行うことができるため、ドアロック認証として用いることが可能である。
【0204】
このように、ひずみゲージ3を用いることで、ドアの開閉にドアノブが不要となる他、車体デザインの自由度が向上するので、一部の高級車が目指す美しいフォルムの車体設計が可能となる。更に、ドア開閉時に傷がつきにくい新しい開閉システムの提案が可能となる。
【0205】
なお、ひずみゲージ3は、1個用いても複数個用いても構わない。又、ひずみゲージ3に代えて、抵抗体の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ1A、2、2A、2B、センサ6A、6B、又は6Cを用いても構わない。
〈第5応用例〉
自動車のオーバーステアやアンダーステア等、車両の姿勢の不安定な状態を検知するESC(Electronic Stability Control:横滑り防止装置)は、車の基本性能である「曲がる」を制御する予防安全(アクティブセーフティー)のシステムである。ESCには、例えば、傾斜センサが使用されていた。具体的には、重力方向に吊るした錘や液面と傾いた物体との偏差を検出する"振り子式"や"フロート式"の傾斜センサが用いられていた。又、MEMS方式の加速度センサやジャイロ(角速度センサ)等も用いられていた。しかし、傾斜センサは精度面で問題があり、加速度センサやジャイロ(角速度センサ)等は高額で価格面において問題があった。第5応用例では、このような点に鑑み、ひずみゲージ3を用いて、自動車の姿勢を検出する例を示す。
【0206】
図32は、ひずみゲージ3を有する6軸力センサの例を示す斜視図である。
図32に示す6軸力センサ570は、外枠572と4つの梁573とを含む起歪体571と、錘574と、複数のひずみゲージ3とを有している。
【0207】
4つの梁573は各々が四角柱であり、外枠572の内壁側に十字を形成するように配置されている。各々の梁573の各面にひずみゲージ3が2つずつ並置されており、ひずみゲージ3は合計で32個である。但し、起歪体571の外枠572や梁573の形状やひずみゲージ3の個数は一例であって、これらには限定されない。
【0208】
6軸力センサ570において、十字を形成するように配置された4つの梁573の交点が受感部となり、受感部には錘574が固定されている。これにより、6軸力センサ570では、3軸方向の併進力と偶力を一つのセンサで検出することができる。
【0209】
6軸力センサ570は、例えば、
図33に示す自動車500Bの重心Gの近傍に配置することができる。これにより、自動車500Bの姿勢に対応して6軸力センサ570の錘574が傾いて自動車500Bの上下運動、左右運動、前進運動、ヨーイング運動、ピッチング運動、及びローリング運動を検出できるため、車体の姿勢制御が可能となる。
【0210】
このように、ひずみゲージ3を有する6軸力センサ570を車体の姿勢制御用のセンサとして用いることで、簡便なESCを構築することができ、安価で安全なESCシステムの実現が可能となる。又、感度の高いひずみゲージ3を用いることで、オーバーステアやアンダーステアなどの僅かな姿勢ズレも検出可能となり、安価で安全なESCシステムを簡便に実現可能となる。
【0211】
又、第5応用例の姿勢制御は、第1応用例の可変スポイラーの制御と併用してもよい。例えば、6軸力センサ570で検出された車体の姿勢が安定するように可変スポイラーを制御することで、自動車500Bが強風を受けて横転するような事故を防止できる。
【0212】
なお、ひずみゲージ3は、1個用いても複数個用いても構わない。又、ひずみゲージ3に代えて、抵抗体の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ1A、2、2A、2B、センサ6A、6B、又は6Cを用いても構わない。
〈第6応用例〉
第6応用例では、ひずみゲージ3を用いて、ワイパーの動作状態を検出する例を示す。
【0213】
図34は、自動車のワイパーにひずみゲージ3を取り付けた例を示す模式図である。
図34において、380は2つのワイパーであり、各々のワイパー580の表面にはひずみゲージ3が貼り付けられている。或いは、ワイパー580に、ひずみゲージ3を埋め込んでもよい。
【0214】
ひずみゲージ3をワイパー580に取り付けることで、ワイパー580のスライド状態やワイピングムラ(拭きムラ)の状態の検出が可能である。
【0215】
又、ひずみゲージ3の検出結果に基づいて、ワイパー580の動作スピードを可変することが可能である。或いは、ワイパー580においてゴムの部分の角度を可変可能な構造としておき、ひずみゲージ3の検出結果に基づいて、ゴムの部分の角度を可変してスライド状態やワイピングムラの状態を改善することも可能である。又、ひずみゲージ3の検出結果に基づいて、ワイパー580のゴムの部分の摩耗を検知することも可能である。
【0216】
なお、ひずみゲージ3は、1個用いても複数個用いても構わない。又、ひずみゲージ3に代えて、抵抗体の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ1A、2、2A、2B、センサ6A、6B、又は6Cを用いても構わない。
〈第7応用例〉
第7応用例では、ひずみゲージ3を用いて、エアバッグを作動させる例を示す。
【0217】
図35は、自動車のバンパーにひずみゲージ3を取り付けた例を示す模式図であり、自動車が壁に衝突する様子を例示している。
図35において、自動車500Cのバンパー590にはひずみゲージ3が貼り付けられている。或いは、バンパー590に、ひずみゲージ3を埋め込んでもよい。
図35において、自動車500Cのバンパー590の左側が壁700に衝突している。
【0218】
バンパー590にひずみゲージ3を取り付けることで、自動車500Cの受ける衝撃を検出し、エアバッグを作動させることができる。或いは、エアバッグにひずみゲージ3を取り付けて、エアバッグが作動したときの圧力が適切か否かを検出することも可能である。
【0219】
なお、ひずみゲージ3は、1個用いても複数個用いても構わない。又、ひずみゲージ3に代えて、抵抗体の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ1A、2、2A、2B、センサ6A、6B、又は6Cを用いても構わない。
〈第8応用例〉
第8応用例では、ひずみゲージ3を用いて、エンジンや過給機の誤動作を検出する例を示す。
【0220】
図36は、自動車のエンジン及び過給機近傍にひずみゲージ3を配置した例を示す模式図である。
図36において、610は過給機、620は排気タービン、630は吸気バルブ、640は排気バルブであり、過給機610の近傍にひずみゲージ3が配置されている。
【0221】
ひずみゲージ3をエンジン、又はターボチャージャーやスーパーチャージャー等の過給機の近傍に配置することで、例えば圧力の変化によりエンジンや過給機の誤動作の検出が可能である。又、ひずみゲージ3の検出結果に基づいて、エンジンの回転数を減らしたり、エンジンを停止したりすることも可能である。
【0222】
エンジン内が高温になる場合には、ひずみゲージ3の基材10として樹脂ではなくセラミック(例えば、アルミナ、ジルコニア、サファイア)等の耐熱性の高い材料を用いることが好ましい。
【0223】
なお、ひずみゲージ3は、1個用いても複数個用いても構わない。又、ひずみゲージ3に代えて、抵抗体の材料としてCr混相膜を用いたひずみゲージ1A、2、2A、2B、センサ6A、6B、又は6Cを用いても構わない。
【0224】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0225】
1、1A、2、2A、2B、3 ひずみゲージ、5 センサモジュール、6A、6B、6C センサ、7 制御装置、10 基材、10a 上面、20 機能層、30、30B、30C 抵抗体、31B、31C、32B、32C 抵抗部、41、41B、42B 端子部、40A、40B、40C 電極、42、43、44、44A、45、45A 金属層、50 絶縁層、60 カバー層、70 個別センサ、71 アナログフロントエンド部、72 信号処理部、110 起歪体、120 接着層、500、500A、500B、500C 自動車、510、510A フロントスポイラー、520、520A サイドスポイラー、530、530A リアスポイラー、540 アクセルペダル、550 ステアリング、551 芯材、552 樹脂、553 外装、560 ドア、561 インナーパネル、562 アウターパネル、570 6軸力センサ、571 起歪体、572 外枠、573 梁、574 錘、580 ワイパー、590 バンパー、610 過給機、620 排気タービン、630 吸気バルブ、640 排気バルブ、壁 700