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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144045
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】経口ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/51 20060101AFI20230928BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230928BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230928BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61K31/51
A61K9/06
A61K47/36
A61P3/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132414
(22)【出願日】2023-08-16
(62)【分割の表示】P 2019068455の分割
【原出願日】2019-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】521357375
【氏名又は名称】アリナミン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】柳川 久美子
(57)【要約】
【課題】ビタミンB類を安定に含有し、且つゲル状形態も安定な経口ゲル状組成物を提供する。
【解決手段】ビタミンB類、及びジェランガムを含有し、且つビタミンB類の1質量部に対して、ジェランガムを10~2000質量部の範囲内で含有することなどを特徴とする経口ゲル状組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB類、及びジェランガムを含有し、且つビタミンB類の1質量部に対して、ジェランガムを10~2000質量部の範囲内で含有し、
ビタミンB類の配合量が、組成物全体に対して、約0.00005~0.5w/v%であり、
pHが2.5~3.4の範囲内であり、
ビタミンB類が、フルスルチアミン又はフルスルチアミン塩酸塩であること
を特徴とする経口ゲル状組成物。
【請求項2】
pHが2.5~3.1の範囲内である、請求項1に記載の経口ゲル状組成物。
【請求項3】
ジェランガムの含有量が3.0g/L未満である、請求項1又は2に記載の経口ゲル状組成物。
【請求項4】
医薬品または医薬部外品として用いられる、請求項1~3いずれか一項に記載の経口ゲル状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB類を含有する経口ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB類は、生体に対する様々な有用性を有することが知られており、経口摂取される医薬品、医薬部外品及び食品等において広く用いられている。
ビタミンB類を十分量で摂取可能にする形態としては、主に錠剤や飲料などの形態が好適に採用されているが、近年、流動性のある粘稠なゲル状の経口製剤もその形態として採用される場合が増加している。
このようなゲル状製剤が採用される背景には、特に先進国における高齢者の増加に伴う嚥下障害者の増加に関連して、投与若しくは摂取及び嚥下が容易である形態が消費者に好まれていることや、短時間で簡便に摂取が可能でありながら、空腹感を軽減できる形態が好まれていること等の理由が存在していると考えられる。
【0003】
ビタミンB類を含有する経口ゲル状製剤に近い公知技術としては、0.01~0.5重量%のビタミンB類、及び0.5~30重量%のコンドロイチン硫酸塩を含有する経口ゼリー剤(特許文献1)が挙げられるが、該経口ゼリー剤は、流動性の無い成形したゲル状の製剤であり、液状または流動性のある粘稠なゲル状の製剤ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-231051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、ビタミンB類を安定に含有する経口ゲル状組成物の実現、及びゲル状形態が安定な、特に酸性下における製造時の熱負荷においても、経時的な離水が少なく、所望の食感(硬さ)が安定なビタミンB類を含有する経口ゲル状組成物の実現はそれぞれ困難であり、ビタミンB類を安定に含有し、尚且つゲル状形態も安定な経口ゲル状組成物の実現は更に困難である。
【0006】
従い、本発明においては、ビタミンB類を安定に含有し、且つゲル状形態も安定な、特に酸性下における製造時の熱負荷においても、経時的な離水が少なく、食感(硬さ)が安定な経口ゲル状組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ビタミンB類、及びジェランガムを含有し、且つビタミンB類の1質量部に対して、ジェランガムを10~2000質量部の範囲内で含有することなどを特徴とする経口ゲル状組成物によって、前記した課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] ビタミンB類、及びジェランガムを含有し、且つビタミンB類の1質量部に対して、ジェランガムを10~2000質量部の範囲内で含有することを特徴とする経口ゲル状組成物。
[2] ビタミンB類、及びジェランガムを含有し、且つジェランガムの含有量が3.0g/L未満であることを特徴とする経口ゲル状組成物。
[3] ビタミンB類、及びジェランガムを含有し、且つpHが2.5~3.8の範囲内であることを特徴とする経口ゲル状組成物。
[4] 医薬品または医薬部外品として用いられる、上記[1]~[3]いずれか一項に記載の経口ゲル状組成物。
[5] ビタミンB類が、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、ビスチアミン硝酸塩、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩、ジセチアミン塩酸塩、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、及びベンフォチアミンからなる群より選択される1種以上である、上記[1]~[4]いずれか一項に記載の経口ゲル状組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビタミンB類を安定に含有し、且つゲル状形態も安定な経口ゲル状組成物が提供される。特に、本発明によれば、酸性下における製造時の熱負荷においても、経時的な離水が少なく、食感(硬さ)が安定な経口ゲル状組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語
本明細書中、用語「ゲル状組成物」とは、固体であるゲル組成物と区別して、流動性のある粘稠な液体組成物を意味する。
【0011】
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解される。
本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、特に限定されない限り、室温で実施される。本明細書中、室温は、10~35℃の範囲内の温度を意味する。
【0012】
経口ゲル状組成物
本発明の経口ゲル状組成物は、ビタミンB類、及びジェランガムを含有する。
以下、本発明の経口ゲル状組成物に含有する成分、及び含有してもよい成分について説明する。
【0013】
ビタミンB
本発明において用いられるビタミンB類の例は、チアミン、ビスチアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、及びベンフォチアミン、並びにそれらの塩、溶媒和物(例:水和物)、並びに塩の溶媒和物(例:水和物)を包含する。当該塩の例は、塩酸塩、硝酸塩、及びセチル硫酸塩を包含する。
【0014】
当該ビタミンB類は、好適に、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、ビスチアミン硝酸塩、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩、ジセチアミン塩酸塩、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、及びベンフォチアミンからなる群より選択される1種以上であることができる。
本発明において特に好適に用いられるビタミンB類は、フルスルチアミン又はその塩酸塩である。
【0015】
本発明の経口ゲル状組成物におけるビタミンB類の配合量は、組成物全体に対して、約0.00005~0.5w/v%、好ましくは約0.0002~0.25w/v%、より好ましくは約0.0005~0.05w/v%、さらに好ましくは約0.001~0.03w/v%である。
【0016】
ビタミンB 類以外の有効成分
本発明の経口ゲル状組成物においては、本発明の効果を阻害しない限り、ビタミンB類以外の有効成分、例えばビタミンB類以外のビタミン類、アミノ酸類等をはじめとする、医薬品、医薬部外品、保健機能食品(例:機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品)、又は一般食品(例:栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品)等において用いられる、その他の有効成分の一種以上をさらに含有してもよい。
【0017】
前記ビタミンB類以外のビタミン類の例は、ビタミンA類(例:レチノール、レチノイン酸、レチナール、レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル、ビタミンA油、肝油、強肝油)、ビタミンB類[例:リボフラビン、リボフラビン誘導体(例:リボフラビンリン酸エステル、リボフラビン酢酸エステル、リボフラビン酪酸エステル等のリボフラビンエステル;フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム等)及びその塩(例:リボフラビンリン酸エステルナトリウム)]、ビタミンB類[例:ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、それらの誘導体(例:ピリドキシンリン酸エステル、ピリドキサールリン酸エステル水和物、ピリドキサミンリン酸エステル、ピリドキシンパルミチン酸エステル)及びその塩(例:ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩)]、ビタミンB12類(例:コバラミン、シアノコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、ヒドロキソコバラミン塩酸塩、ヒドロキソコバラミン酢酸塩)、ビタミンC類(例:アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、酢酸トコフェロールアスコルビン酸エステル)、ビタミンD類(例:エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)、ビタミンE類(例:コハク酸d-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム、コハク酸d-α-トコフェロールカルシウム、コハク酸トコフェロールカルシウム、酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール)、ナイアシン類(例:ニコチン酸、ニコチン酸アミド)、パントテン酸類(例:パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム)、及びその他のビタミン類(例:ビタミンK類、ビオチン、葉酸、γ-オリザノール)、並びにそれらの組合せを包含する。
【0018】
前記アミノ酸類の例は、アスパラギン酸(例:L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物)、グルタミン酸(例:L-グルタミン酸)、アルギニン(例:L-アルギニン、L-アルギニン塩酸塩)、トリプトファン(例:L-トリプトファン)、リシン(例:L-リシン塩酸塩、L-リシン酢酸塩)、グリシン、ロイシン(例:L-ロイシン)、イソロイシン(例:L-イソロイシン)、トレオニン(例:L-トレオニン)、システイン(例:L-システイン、L-システイン塩酸塩、L-システイン塩酸塩水和物)、バリン(例:L-バリン)、ヒスチジン(例:L-ヒスチジン、L-ヒスチジン塩酸塩、L-ヒスチジン塩酸塩水和物)、及びメチオニン(例:DL-メチオニン)、並びにそれらの組合せを包含する。
【0019】
前記その他の有効成分の他の例は、タウリン(アミノエチルスルホン酸)、ウルソデスオキシコール酸、塩化カルニチン、オロチン酸、オロチン酸コリン、ガンマ-オリザノール、クエン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、クエン酸鉄アンモニウム、フマル酸第一鉄、グルクロノラクトン、グルクロン酸、グルクロン酸アミド、カフェイン、無水カフェイン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、イノシトール、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、重酒石酸コリン、炭酸マグネシウム、チオクト酸、チオクト酸アミド、デヒドロコール酸、パンテチン、ヨークレシチン、ルチン、及び生薬(例:アセンヤク、ウイキョウ、エゾウコギ、オウセイ、加工ダイサン、ガラナ、カンゾウ、クコシ、ケイヒ、コウジン、サフラン、サンザシ、サンヤク、シャクヤク、シュクシャ、ショウキョウ、ジョテイシ、セイヨウサンザシ、タイソウ、チョウジ、チンピ、トウキ、トシシ、トチュウ、ニクジュヨウ、ニンジン、ニンニク、ブクリョウ、ムイラブアマ、モッコウ、ヤクチ、ヨクイニン、リュウガンニク、ロクジョウ、カイバ、ニクジュヨウ、ハゲキテン、オウギ、ビャクジュツ、ローヤルゼリー)、並びにそれらの組合せを包含する。
【0020】
これらビタミンB類以外の有効成分の量は、その種類、及び目的等に応じて、適宜設定される。
【0021】
ジェランガム
本発明においては、様々なジェランガムを好適に使用することができる。例えば、ネイティブ型(HA)ジェランガム、脱アシル型(LA)ジェランガムなどを使用することができる。脱アシル型ジェランガムの場合、一般に脱アシル型ジェランガムをゲル化させるのに使用される適度な量のカルシウムイオンと併用して使用することが好ましい。
このようなジェランガムは、商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフエフアイから販売される各種ネイティブ型(HA)ジェランガム及び脱アシル型(LA)ジェランガム、ケルコゲル(R)(製品名、CP Kelco U.S., Inc.)などが挙げられる。
【0022】
本発明者らは鋭意検討の結果、ビタミンB類の1質量部に対して、ジェランガムを10~2000質量部の範囲内で含有することが望ましいことを見出した。
従い、本発明で用いられるジェランガムの含有量としては、ビタミンB類の1質量部に対して、10~2000質量部の範囲内が好ましく、15~1500質量部の範囲内がより好ましく、20~1000質量部の範囲内が特に好ましい。
【0023】
また、本発明の経口ゲル状組成物におけるジェランガムの含有量は、組成物全体に対して、好ましくは3.0g/L未満、より好ましくは2.8g/L未満、更に好ましくは0.5g/L~2.5g/Lである。
【0024】
ジェランガム以外の添加成分
本発明の経口ゲル状組成物においては、本発明の効果を阻害しない限り、前記成分に加えて、他の成分、例えば、一般的に経口ゲル状組成物に添加可能な成分(例:甘味剤、矯味剤、防腐剤、保存剤、着香剤、芳香剤、清涼化剤、界面活性剤、可溶化剤、乳化剤、溶剤、pH調節剤、緩衝剤、懸濁剤、着色剤、安定化剤、消泡剤、溶解補助剤、苦味マスキング剤、ジェランガム以外の粘稠剤)の一種以上を含有してもよい。
【0025】
甘味剤の例は、糖類(例:ブドウ糖、ガラクトース、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、異性化糖、液糖、転化型液糖、トレハロース)、多糖類(例:オリゴ糖、デンプン)、糖アルコール類(例:エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、還元麦芽糖水飴、粉末還元麦芽糖水飴)、高甘味度甘味料(例:アセスルファムカリウム)及び非糖質甘味料(例:スクラロース、ステビア抽出物、サッカリン、アスパルテーム)、並びにそれらの組合せを包含する。
矯味剤の例は、クエン酸又はその水和物、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸(例:DL-リンゴ酸)等の酸味剤、及び果汁、並びにそれらの組合せを包含する。
防腐剤又は保存剤の例は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、及びパラベン類(例:パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル)、並びにそれらの組合せを包含する。
着香剤、芳香剤又は清涼化剤の例は、オレンジ油、メントール、バニリン及びその誘導体(例:エチルバニリン)、及び各種香料(例:ストロベリーフレーバー、チェリーフレーバー、オレンジフレーバー、グレープフルーツフレーバー、アップルフレーバー、レモンフレーバー、グレープフレーバー、コーヒーフレーバー、ブラックティーフレーバー、ビターフレーバー、ハーブミントフレーバー、チョコレートフレーバー、薬味酒フレーバー)、並びにそれらの組合せを包含する。
界面活性剤の例は、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(ポロクサマー188)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類(例:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、ポリソルベート20、及びポリソルベート80、並びにそれらの組合せを包含する。
可溶化剤の例は、精製大豆レシチン、大豆レシチン、ダイズ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、マクロゴール4000、マクロゴール6000、流動パラフィン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、及びポリソルベート80、並びにそれらの組合せを包含する。
乳化剤の例は、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリソルベート20、ポリソルベート80、精製大豆レシチン、大豆レシチン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、及び流動パラフィン、並びにそれらの組合せを包含する。
溶剤の例は、水(例:精製水)、エタノール、プロピレングリコール、オリーブ油、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、及び流動パラフィンを包含する。
pH調節剤又は緩衝剤の例は、リン酸、乳酸、酢酸、炭酸及びそれらの塩、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸緩衝液(0.2M)、及び炭酸水素ナトリウム、並びにそれらの組合せを包含する。
懸濁剤の例は、アラビアゴム、結晶セルロース、ビーガム、キサンタンガム、グァーガム、ゼラチン、メトロース及びその塩、カルメロース及びその塩、並びにそれらの組合せを包含する。
着色剤の例は、カラメル、β-カロチン、及び各種食用色素(例:食用黄色1号、食用赤色2号)、並びにそれらの組合せを包含する。
安定化剤の例は、シリコーン樹脂、グリセリン、エデト酸の塩、塩化ナトリウム、及びピロ亜硫酸の塩、並びにそれらの組合せを包含する。
消泡剤の例は、シリコーン樹脂、シリコーン油、エタノール、グリセリン脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリル酸ポリオキシル、ソスルビタン脂肪酸エステル、トリオレイン酸ソルビタン、及びポリソルベート80、並びにそれらの組合せを包含する。
溶解補助剤の例は、プロピレングリコール、シクロデキストリン、及びアルギニン、並びにそれらの組合せを包含する。
苦味マスキング剤の例は、フォスファチジル類[例:BMI-60(製品名、花王)]を包含する。
ジェランガム以外の粘稠剤の例は、寒天、キサンタンガム、及びグァーガム並びにそれらの組合せを包含する。
【0026】
これらの添加成分の量は、その種類、及び目的等に応じて、適宜設定される。
【0027】
経口ゲル状組成物のpH
本発明者らは、ビタミンB類(例、フルスルチアミン又はその塩酸塩)を安定に含有し、尚且つゲル状形態を安定に保持する経口ゲル状組成物を提供するためには、該組成物のpHの上限を、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.5以下とすることを見出した。また、該組成物のpHの下限を、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.8以上、さらに好ましくは3.1以上、特に好ましくは3.3以上とすることを見出した。
即ち、本発明の経口ゲル状組成物におけるpHは、好ましくは2.5~3.8の範囲内、より好ましくは2.5~3.6の範囲内、さらに好ましくは2.8~3.1の範囲内である。
【0028】
pHの調整は、例えば、上記したpH調節剤又は緩衝剤の使用により行えばよい。
本発明における経口ゲル状組成物のpHを測定するにあたっては、当該組成物を市販の食品用ミキサーを用いて微細化し、均質な溶液とした上で、日局・一般試験法に記載のpH測定法に従い、試験を実施すればよい。
【0029】
経口ゲル状組成物の形態
本発明の経口ゲル状組成物は、例えば、第十七改正日本薬局方の製剤総則に規定される経口液剤、すなわち『経口投与する、液状又は流動性のある粘稠なゲル状の製剤』として好適に用いることができる。
製剤が、ゲル等の固形製剤ではなく、液状又は流動性のある粘稠なゲル状の製剤であることは、技術常識に照らして判断される。
【0030】
ゲル状組成物の粘稠さは、ゲル状組成物の硬さによって示すことができ、硬さが大きいゲル状組成物は、粘稠性が高いということができる。
本発明の経口ゲル状組成物は、例えば、後記の試験方法によって測定される硬さが、好ましくは0.05N以上、より好ましくは0.08N以上、更に好ましくは0.10N以上である。このような硬さを有することにより、本発明の経口ゲル状組成物は、誤嚥を防止できるし、投与又は摂取も容易である。
本発明の経口ゲル状組成物は、当該硬さが、好ましくは0.50N以下、より好ましくは0.35N以下、更に好ましくは0.30N以下である。このような硬さを有することにより、本発明の経口ゲル状組成物は、投与又は摂取が容易である。
本発明の経口ゲル状組成物は、当該硬さが、好ましくは0.05~0.50Nの範囲内、より好ましくは0.08~0.35Nの範囲内、更に好ましくは0.10~0.30Nの範囲内ある。
【0031】
本発明の経口ゲル状組成物は、経口投与、又は経口摂取される。
本発明の経口ゲル状組成物は、医薬品、医薬部外品、保健機能食品(例:機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品)、又は一般食品(例:栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品)等として用いることができる。
【0032】
本発明の経口ゲル状組成物は、そのゲル状形態が高い安定性を有する。
本発明において、ゲル状形態が高い安定性を有することとは、物性的には、
(1)苛酷な条件下(例:高温、酸性及び/又は長期間)での保存後も、離水が抑制されていること、及び/又は
(2)苛酷な条件下(例:高温、酸性及び/又は長期間)での保存後も、その硬さの低下が抑制されていること、を意味する。
また、官能的には、ゲル状組成物の食感が維持されていることを意味する。
【0033】
ここで、ゲル状組成物の離水量の測定、及び離水率の算出は、次の測定方法により、実施される。
<ゲル状組成物の離水の測定方法>
当該測定方法では、ふるいとして、目開き2mmのメッシュ[第十七改正日本薬局方、ふるい番号8.6号(2000μm)]、且つ直径200mmのふるいを使用する。
試験されるゲル状組成物を容器に入れて所定の保存条件に曝露した後、容器の内容物の全量を、ふるい下を敷いたふるい上に入れ、その質量を測定し、該質量をA(g)とする。次に、前記ふるいを45度傾けて1分間保持した後、当該ふるいから前記ふるい下に落ちた液体(離水)の質量を測定して、これをB(g)とし、次式により離水率を算出する。
離水率(%)=B(g)/A(g)×100
【0034】
本発明の経口ゲル状組成物において、ゲル状形態の高い安定性は、苛酷な条件下(例:高温、酸性及び/又は長期間)の保存後においても、ゲル状組成物の適当な硬さが維持されている。
【0035】
本発明の経口ゲル状組成物は、好ましくは、冷蔵庫内で(すなわち、約4℃で)8週間保存した場合の硬さに対する、50℃で同期間保存した場合の硬さの比(この定義から理解される通り、硬さの比は100%を超える場合がある。)が、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0036】
本発明の経口ゲル状組成物の硬さの測定については、前記ゲル状組成物の離水の測定方法で、ふるいに残ったゲル状組成物を試料として使用して、次の測定方法により、実施される。
<ゲル状組成物の硬さの試験方法>
当該試験には、材料試験機として、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な材料試験機 EZ-SX(製品名、島津製作所)(ロードセル:50N、試験治具:ユニバーサルデザインフード試験セット、ソフトウェア : TRAPEZIUM X テクスチャー、恒温装置 : 冷熱恒温器)、又はその同等品を使用する。
試料を容器(直径40mm、高さ20mm)に高さ15mmまで充填し、前記材料試験機を用いて、樹脂性の円形プランジャー(直径20mm、高さ8mm)により、圧縮速度10mm/秒、及びクリアランス5mmの条件で2回圧縮し、その時の圧縮応力を測定する。測定は、20±2℃で行う。
2回の圧縮における圧縮応力の最大値を、試料の硬さとする。
【0037】
当該試験における試料としては、前記ゲル状組成物の離水の測定方法で、ふるいに残ったゲル状組成物を使用して実施する。
従って、ふるいにゲル状組成物が残らない場合は、当該硬さを測定できないが、当業者が通常理解する通り、ふるいにゲル状組成物が残らない場合、その硬さは、ふるいに残ったゲル状組成物の硬さよりも低いことが合理的に推定される。
【0038】
本発明において、ゲル状組成物の硬さの高い安定性は、苛酷な条件下(例:高温、酸性及び/又は長期間)での保存後も、当該組成物の食感が維持されている。
当該組成物の食感は、前記離水の抑制、及び前記硬さの維持と、密接に関連する。
【0039】
経口ゲル状組成物の製造方法
本発明の経口ゲル状組成物は、公知の経口ゲル状組成物の製造方法を採用して製造すればよく、具体的には、例えば、
(1)前記ジェランガム及び水(例:精製水)を混合した後、加熱して、前記ジェランガムを溶解させる工程、
(2)前記ジェランガム及び水以外の成分を前記工程(1)で得られた液体と混合して液状組成物を得る工程、を含む製造方法により、製造できる。
前記ジェランガム及び水以外の成分は、適宜、前記工程(1)で得られた液体と混合する前に、予め混合されていてもよい。
【0040】
経口ゲル状組成物の包装
本発明の経口ゲル状組成物には、経口投与又は経口摂取されるゲル状組成物に通常採用される包装が施される。当該包装は、その形態に応じて、慣用の方法により実施すればよい。
特に、本発明の経口ゲル状組成物は、苛酷な条件下でも、ゲル状形態が高い安定性を有し、且つビタミンB類を安定に含有できるので、包装工程の条件の制限も小さい。
従って、本発明の経口ゲル状組成物には容易且つ好適に様々な包装方法を採用できる。
【0041】
経口ゲル状組成物の包装は、例えば、前記経口ゲル状組成物の製造方法で得られた液状組成物を容器に充填することにより、実施できる。
このような包装の好適な例として、パウチタイプの容器による包装が挙げられる。
【0042】
前記パウチタイプの容器としては、汎用されているものを使用でき、例えば、アルミ箔、及び樹脂フィルム(例:ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、及びポリエチレン、並びにこれらの組合せ)が積層されているフィルム素材から形成された容器を使用できる。
前記パウチタイプの容器は、レトルト殺菌可能な容器、すなわちレトルトパウチ容器である。
前記パウチタイプの容器は、スタンディング袋型、ガゼット袋型、又は三方袋型等の任意のタイプである。
前記パウチタイプの容器は、好適にスパウトを備えている。これによれば、簡便に、経口投与又は経口摂取できる。
1個のパウチタイプの容器に封入されている本発明の経口ゲル状組成物は、例えば、80mL~300mLの範囲内である。
【0043】
前記の説明から理解される通り、パウチタイプの容器に包装されている、本発明の経口ゲル状組成物もまた提供する。
特に、本発明の経口ゲル状組成物は、苛酷な条件下でも、ゲル状形態が高い安定性を有し、且つビタミンB類を安定に含有できるので、包装工程の条件の制限も小さく、容易且つ好適にパウチタイプの容器に包装される。
【0044】
これから理解される通り、本発明は、本発明の経口ゲル状組成物、及び当該経口ゲル状組成物を内封するパウチタイプの容器を備えるバック製剤(パウチ製剤、又はパウチ型製剤)もまた提供する。
【0045】
当該バック製剤は、好適には、液体を実質的に含有しない。
具体的には、当該パウチ製剤、パウチ型製剤、又はバック製剤においては、その内容物全体にする液体の量が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【実施例0046】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中、特に記載が無い限り、「%」は「w/w%」を意味する。
【0047】
[実施例1]
以下の表1に示した材料を用いて、経口ゲル状組成物を調整した。
【0048】
【表1】
【0049】
[ゲル状組成物の調製方法]
(1)1袋当たりの量として、表1に記載のフルスルチアミン塩酸塩(表中、「TTFD」)から塩化マグネシウムまでの材料を精製水に溶解した。次いで、得られた水溶液のpHを、塩酸と水酸化ナトリムを適宜使用して、pH2.5、pH2.8、pH3.1、pH3.4、及びpH3.8のいずれかに調整した。その後、これらの水溶液を50℃まで加温した。
(2)一方、表中のジェランガム(脱アシル型(LA)ジェランガム、三栄源エフエフアイ)からブドウ糖までの材料を同一の袋に添加して混合し、この混合物を、攪拌しながら精製水に添加し、溶解した。この水溶液を、電子レンジで沸騰するまで加温した。
(3)上記(1)で得られた各水溶液と、上記(2)で得られた水溶液を混合し、精製水を加えて100mLにした。
(4)得られた溶液を口栓付きアルミパウチに充填し、pH2.5、2.8、3.1、3.4、及び3.8の各ゲル状組成物を得た。
【0050】
[実施例2]
以下の材料を用いて、経口ゲル状組成物を調整した。
[材料]
・粘稠剤:
ジェランガム(脱アシル型(LA)ジェランガム、三栄源エフエフアイ)
寒天(カンテン末 PS-6 (製品名、伊那食品工業))
・フルスルチアミン塩酸塩(以下、TTFDともいう)
・クエン酸緩衝液 0.2M
【0051】
1袋当たりの量として、1.5mgのフルスルチアミン塩酸塩(TTFD)と、pH2.8、3.1、3.4、3.8の50mLのクエン酸緩衝液(0.2M)と、200mgのジェランガム(実施例2)または300mgの寒天(比較例1)を加熱および撹拌混合し、TTFDとジェランガムまたは寒天を溶解させ、精製水を加えて100mLにした。
得られた溶液を口栓付きアルミパウチに充填し、pH2.8、3.1、3.4、及び3.8の各ゲル状組成物を得た。
【0052】
[試験例1]フルスルチアミン塩酸塩(TTFD)の安定性
実施例1として製造した、pH2.5、2.8、3.1、3.4、及び3.8の各ゲル状組成物を、それぞれ60℃で、2週間保存した。
60℃、2週間保存後のTTFD量を測定し、その残存率(製造直後の初期含量と比較した残存率)を算出した。当該残存率(%)を表2に示した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果より、60℃で2週間の苛酷な条件での保存において、TTFD量はいずれのpHでも高い割合で残存した。
【0055】
[試験例2]ゲル状組成物の離水
各ゲル状組成物を、50℃および4℃(対照)で8週間保存後、後述する測定方法により、離水量を測定した後、離水率を算出し、これから[(50℃で8週間保存後の離水率)-(4℃で8週間保存後の離水率)]の差を算出した。
当該離水率の差を表3に示した。
【0056】
<ゲル状組成物の離水の測定方法>
当該測定方法では、ふるいとして目開き2mmのメッシュ[第十七改正日本薬局方、ふるい番号8.6号(2000μm)]、且つ直径200mmのふるいを使用した。試験されるゲル状組成物を容器に入れて所定の保存条件に曝露した後、容器の内容物の全量を、ふるい下を敷いたふるい上に入れ、その質量を測定し、当該質量をA(g)とした。
前記ふるいを45度傾けて1分間保持した後、当該ふるいから前記ふるい下に落ちた液体(離水)の質量を測定し、これをB(g)とし、次式により離水率を算出した。
離水率(%)=B(g)/A(g)×100
【0057】
【表3】
【0058】
表3の結果より、本発明のゲル状組成物では、いずれのpHでも離水が高度に抑制された。
【0059】
[試験例3]ゲル状組成物の硬さ
各ゲル状組成物の保存後[50℃又は4℃(対照)で8週間保存後]の硬さを以下の方法で測定し、その比(50℃/対照)を算出し、表4に示した。
【0060】
<ゲル状組成物の硬さの試験方法>
当該試験には、材料試験機として、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な材料試験機 EZ-SX(製品名、島津製作所)(ロードセル:50N、試験治具:ユニバーサルデザインフード試験セット、ソフトウェア : TRAPEZIUM X テクスチャー、恒温装置 : 冷熱恒温器)を使用した。
試料を容器(直径40mm、高さ20mm)に高さ15mmまで充填し、前記材料試験機を用いて、樹脂性の円形プランジャー(直径20mm、高さ8mm)により、圧縮速度10mm/秒、及びクリアランス5mmの条件で2回圧縮し、その時の圧縮応力を測定した。測定は、ゲルを20℃の恒温槽に入れ、20℃に安定させた後、20±2℃で行った。
2回の圧縮における圧縮応力の最大値を、試料の硬さとした。
【0061】
ゲル状組成物について、保存後[50℃又は4℃(対照)で8週間保存後]の硬さを上記方法により測定し、その比(50℃で8週間保存後/対照)を算出した。
当該硬さの比を表4に示した。
表中、「ND」は、ふるい上にゲル状組成物が残らず、その硬さを測定できなかったことを表す。このことは、ゲル状組成物のゲル様の形態、特にその適度な硬さが全く、又はほとんど維持されなったことを示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4の結果より、本発明の経口ゲル状組成物では、50℃で8週間の苛酷な条件での保存において、いずれのpHにおいても、比較例のゲル状組成物に比べて、その適度な硬さが高度に維持された。
【0064】
製剤例1
表5の処方に従い、ビタミンB類(フルスルチアミン塩酸塩)、及び1.5g/Lのジェランガム(脱アシル型(LA)ジェランガム、三栄源エフエフアイ)を含有し、ビタミンB類1質量部に対して、ジェランガムを100質量部含有する、経口ゲル状組成物(pHは3.1に調整)を調製した。
【0065】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、ビタミンB類、及びジェランガムを含有し、且つビタミンB類の1質量部に対して、ジェランガムを10~2000質量部の範囲内で含有することなどによって、ビタミンB類を安定に含有し、且つゲル状形態も安定な経口ゲル状組成物が提供される。